アニオン活性剤の相乗効果に関する研究
石崎ダイ 石橋聰子
A study on The Synergism of Anion Active Detergent
Dai Ishizaki Husako Ishibasi
緒言
ビルダーの効果については,既にアニオン活性剤の指肪酸石ケン,高級アルコrル系洗剤, 石油系洗剤,及び非イオ:/活性剤にC.M.C.を配合した場合について検討し,‑)2)更に33年 度家政学会総会に於て,基本的な高級了ルコ‑ル系洗剤の純晶に,脱水荘硝を配合した場合の 効果を発表3)したが,今回更に標準石ケンにNa2C03を配合比6水準,濃度6水準について 相乗効果の詳細な検討を行ったところ,興味ある結果を得たので報告する。
実験方法及び結果
洗剤はJISの標準マルセル石船にNa2C03を表‑1に示したような配合比率で添加し,濃度 も表‑lに示した6水準について繰返し数3の二元配置法によって実験計画を立てたo佃温度
表‑ 1石鹸とNa2C03の配合比及び濃度
Soap:Na2Co3 D, Do D, DE D,
(土OO:0) (80:20) (60:40) (40:60) (20:80) (0:100)
C‑ (0.0⊥%) C2 (0.03%) C3 (0.1%) C4 (0.3%) Cs cO.5%) C6 (1.0%)
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U/t
は40土loCとし洗浄時間は30分として洗浄試験を行った。洗浄試験に供した汚染布は洗浄力 試験委員会の規定4)にもとづいて調製し,塩化カルシュ‑ム入りのヂシケ‑ク‑中に入れ1週 間冷蔵庫(0‑C‑5‑C)内に保存したものを試布とした。
洗浄方法は恒温槽内に200ccのピ‑カを12個入れ,所定濃度の洗剤IOOccを各ビ‑カ可こ入
10 長崎大学学芸学部自然科学研究報告 第11号(1960)
れ・その中に汚染布(5×10じm)1枚を入れ,10分おきにピγセットで20回の振り洗いを行 い30分間洗浄した。その後汚染布を取り出し100ccの蒸溜水で2回の振り洗を行い,自然乾燥 をさせ常法に従一)て日立の光電反射率計で洗浄布の表面反射率を測定し,洗浄効率を出した。
その結果は表一2の通りで之を分散分析すると表一3のようになる。
表一2 洗浄試験結果(%)
C1
C2
C3
C4
C5
C6
DI
24.3 26.0 26.0 25.6 25.3 22.5 39.7 38.9 38.2 55.0 51.4 54.8 48.3 49.6 45.6 42.9 44.7 44.0
D2 21.8 21.0 21.9 25.2 25.0 29.8 46.7 44.7 47.7 44.3 43.6 41.5 38.5 40.8 40.9 41.6 36。1 41.8
D3 21.4 23.8 24.1 25.2 26.7
,26.8
45.7 42.7 44.0 40.2 41.7 39.0 43.2 40.8 43.8 38.0 40.9 39.4
D4
20.0 28.3 20.0 24.8 27.2 20.4 39.6 45.0 40。0 34.4 32.1 40.9 36.6 33.0
37.工
3δ.5
37.0 35.6
D5
20.4 17.4
]8.2
24.8 21.1 23.8 31.6 32.6
・33.5
42。5 43.2
3δ.7
38.4 41.4 33.2 34.7 36.2 37.1
D6 15.7 17.4
L7.8
19.9 20.3 17.6 18.7
21..3
23.8
工8.5 1.8.4
].8.4
17.8 14.8
]、4.8
15二5 14.8 17.3
表一3 分散分析表
Source of Variance
D C
D×CDC E
Total
Sum of Square
SD Sc
SD×G
SDG SE
s・1
5008.03 5005.68 734.02 1暫1756.53 963.54
・2725・・7 φ
5 5
25 35 72 108
Mean Square
100!.61
!001.1.4
29.36
335.SO l3.45
ll7.83
Fo Variance Ratio
74.5**
74.4**
2.18**
**…Significant at l%1evel
Significantatl%level F72・・
Significantat5%levcl F72・・
・3.29
・2.35
F ・2.0772●25
F 。・1.677225
石崎・石橋:.アニオン活性剤の相乗効果に関する研究 1ユ 即ち洗剤・濃度共に高度の有意差が認められた。 次に洗剤Dの綜合効果を平均値の差の信 頼限界より判定すると表一4の通りでD,の洗剤100%の時が最も洗浄力が大で,D,とb、D、
表一4 洗剤Dの綜P合効果
洗 剤
D1 D2 D3 D4 D5 D6 Diff for significance1%ls%
瀞効率(%)139・・i36・3135・9132・gl3L5iユ7・614・712・5
判定D一>D2〜D3>D4一一D5《D6
との問には5%水準の有意差がありNa2Co・の添加が増すにつれて除々に洗浄力は低下し,D・
のNa2Co・100%では殆ど洗浄力はみられない。
次に濃度の綜合効果をみると表一5の通りでC・(0.3%)C・(0.1%)C。(0.5%)の間に
表一5 濃度Cの綜合効果
濃 度
C置 C2 C3 C4 C5 C6 Diff for Significance1%15%
欝効率(%)12・・5124・・!37・5138・6i36・7135・214・712・5 判定C4〜G3〜C5一・C6《C2〜C1
C4>C6
は有意差はなくC・(0。3%)とC6(1.0%)の間には5%水準の有意差で0.3%の洗浄力が高く,
0.05% 0.01%の間では有意差は認められなかった。
更に個々の洗剤及び濃度について有意差の数値を検討するため表一6及び表一7を作成した。
表一6 洗剤間の洗浄力平均値の差 表一7 濃度問の洗浄力平均値の差
D1
D2 D3 D4 D5 D6
D一 D2
← *
2。7
D3
← *
3.1
←0.4
D4
←**
6.工
← *
3.4
← *
3.0
D5
←**
7.5
←**
4.8
← *
4.4
←1.4
D6
←**
2工.工 C1
←**
18.4 C2
←**
18.0 C3
←**
15.0 C4
13.6
C5C6
C1 C2
↑ 2.5
C3
↑**
]、6.7
↑**
13.5 C4
↑**
17。1
↑**
14.6
↑ 1。1
C5
↑**
15.2 伴*
工2.7
←0.8
1.9
C6
↑**
13.7
↑**
ll.2
←2.3
←3.4
*
1.5
矢印の方向がその数値だけ優位である。
12 長崎大学学芸学部自然科学研究報告 第11号(1960)
即わ表一6より洗剤問の洗浄力の差を検討すると・D2とD・・D・とD5の間には有意差はみ
られず,D1とD2,D1とD3,D2とD4,D3とD4,D3とD5の間には夫々5%水準で有意
差が認められ,他は1%水準で有意差が認められた。叉表一7より濃度間の洗浄力の差を検討するとC1とC2に対し,C・C・C・C・共に1%水準 の有意差で洗浄力がすぐれ,C・とC・の間にも5%水準で有意差が認められた。
次に各洗剤に於ける濃度別の洗浄効率を図示すると図一1の如くなる。
図一 1
洗5,___ メ\
,/ 盆\、
浄 効
一一一一一口 ローD6
2。 〉 l
l 1一_鉱
0.01 0.05 0.1 03 Q・5
→濃度(%)
1,0
即ち洗剤100%のD・が0.3%以上の濃度では他の何れの洗剤より勝れた洗浄性を示し,殊に 0.3%に洗浄力のmaximumが見られた。之に反し0.1%,0。05%の低濃度ではD2D3D4のよう に洗剤:Na2Co。を80:20,60:40,40:60,と配割した場合が,洗剤100%より高い洗浄力 を示している。即ち石鹸にNa・Co・を添加した場合は低濃度に於てその効果が認められ,0.3
%以上の高濃度になるとNa・Co・の配合比率が高まるにつれて洗浄力が逐次低下してゆく事 は注目に値する事実である。
更に各配合比について濃度効果を詳紬に調べてみると図一2より図一5までの通りで何れも C・(0.05%)C・(0.1%)の濃度では相乗効果が著われ,D1の洗剤100%より遙かに上回る洗浄 力を示す。このNa・Co・を配合したD・〜D・までを洗剤の絶対量に換算して図示すると点線の ようになりその効果が尚顕著に認められる。
石崎・石橋:アニオン活性剤の相乗効果に関する研究 13
図 一 2
洗
S
浄
効40
率 ハ%
) 30
20
窃・一Soap5Na西03 SO:20
ノ 令 ノ1 − X
.4匪
婁〜
1一 一』
! \ / \
凝番 \\
/ \乎 /
↓、 1 ホ 、苓、 5
, 壷 、、
斗 ノ/
ノ 1 ノ
/ _.._D職剤…%)の洗勧
ノ/ 一●一D2(80=20)の洗浄カ ー一噸一一Dzの効果を洗剤の絶対 量に換算した洗浄力
0,0080,01 ・0.05 0.1 0。3 0。5 1。0
峠濃度(%)
図
3
洗 浄
50
効
率40
露
)
30
D3…Soap=Na2Co3 60霊40
←一 甲 I x ロ20・ ↓
! ノ !{
一 , ノ
一
ノ 、
ノ 、、
ノ
/ \、
ノ ヘ
1掃≠蕊、.\
1 / ↓ \*
ノ ↓ ノ
/ ノ
/ 燭_..一_一噂_D1(洗剤100%)の洗浄力 ノノ _憩_8__D3(60340)の洗浄力 ___V_一。×一一一r D3の効果を洗剤の絶対 量に換算した洗浄力
0,006 0.01 0。05 0.1 0.3 0.5 1,0
→濃 度(%)
14 長崎大学学芸学部賞然科学研究報告第11号(1960)
図 一 4
洗
50浄 効 率
( 40%
)
30
20
D4・甲・SOap=Na2Co3
40;60
, ノ ノ ノ ,A
f一} 酢
/
/
/
/1
ノ! \
■ 、
、
小 1
*
!τ、、
、 ム
・↑\_, 小↑
/羊」 一椀
/ 7
ノノ
!
■
\¥
\
\
___一__D1(洗剤100%)の洗浄カ ー一→』 ←一一D4(4G=60)の洗浄カ
ー一一 一一一一 一一一一 4の効果を洗剤の絶対 量に換算した洗浄力
0,004 Q,01 0.05 1.0 0.3 0.5 0,1
→濃度(%)
図 一 5
洗50
浄 効 率
40
ハ%
)
30
20
D5…Soap rNazGo3 20=80
■ 小 ! 丈!
γ !↓
/ / / ! ノ
《」____
/−1 − 苓 ノ ↓
書
↓
ノ! ¥
/ \、
ノ ¥
/ \
/ \
/。
/ 」._一_島(洗剤1。。%)の洗浄力 ノ ! 一〇一〇一D5(20180》の洗浄力 / , 一 一一X一一X一一一D5の効果を洗剤の絶対 量に換算した洗浄力
0,002 0.01 0.05 0.1 0.3 0,5 1.0
→濃度(%)
石崎・石橋:アニオン活性剤の相乗効果に関する研究
考 察
15
以上の実験結果より明かになった事は石鹸にアルカリビノレダーのNa2Co・を添加した場合,
配合比が石鹸:Na2Co380:20,60:40の0.1%及び0.05に於て石鹸100%より遙かに洗浄力がよ い。即ち石鹸のみを用いた時は0.3%に洗浄力のmuximumがあるのに対し,配合した場合はそ れより低濃度に効果が著われた。之は前実験の高級アルコール系洗剤にNa2So4を配合した場 合も同様の効果が見られた。この事はNa2Co・の添加によってミセル臨界濃度が低下し。更に 汚れの除去に必要なイオγの吸着によりミセルを帯電させ洗浄性を改善させるのだと思われる。
0.3%0.5%11 0%の濃度になると配合した事により石鹸100%のその濃度より非常に洗浄力 が低下し殊にNa・Co・の量が増すにつれてその傾向は大きい。この事は洗剤濃度の増加と共に 洗剤分子の凝集,界面電位の低下等の負の効果が反応系の洗浄効果を左右するようになりこの
ような傾向が現われたものと思われる。一
.①
②
1.
2.
3.
4.
総 括
洗剤100%の時は濃度0.3%に於て極大の洗浄効果を示す Na2Co3,の配合の効果は
0.1%以上の濃度ではむしろ認め難く,配合によって却って洗浄効果が低下する。
0.1%,0。05%の濃度では石鹸:Na2Co3が80:20,60:40に於て配合効果が著しく,
殊に洗剤濃度の絶対量に換算すると効果が明かに認められる。
石鹸:Na2Co・が40:60になると0.1%で洗剤100%より僅か上回った効果を示すが 0.05%以下では殆ど認められない。
配合比が20:80,0:100とNo2Co・の量が増加するにつれて洗浄力は著しく低下し Na2Co・100%の時は全然効果はみられない。
本実験の逐行にあたりお茶水女子大学矢部教授の御助言に深く感謝する。
術石鹸は第一工業製薬KKの寄贈によったもので併せて感謝する。
文 献
1)石崎 長大学芸紀要自然科学5.2L 1956 2)石崎 同 上 7.49.1958 3)石崎,矢部 日本家政学会総会発表 1958
4)洗浄力試験委員会:合同実験報告書(第一回〜第四回)日本油化学協会 B55
16
)
)
d : jj) : + fp ;n " (1960)
Summary
When Soap is 100 , the most powerful d,etergency effect is procl,uced, in the concentration of 0.3 .
The d,etergency effect, When Na=Co. is mixtured, varies accord,ing to its pro‑
portion:
1. In ths case of the concentration of more than 0.1 4 it is hardly manifested., and by the mixture of Na2Co. it rather decreases.
2. In the case of the concentration of 0.1 or 0.5 . When the mixture Pro‑
portion of Soap us.
Na=Co. is 80:20 or 60:40, it is striking, and, especially When the d,etergent concent is converted to the absolute volume of detergent concentration it
is clearly re*^ognized.
3. When Soap:Na.Co. is 40:60, the 0.1 solution gets a little better than the Soap 100 solution; but in the less than 0.05 solution it is hard.1y recognized.
4. As the mixture proportion of Na.Co. increases e. g. 20:80 or O:100, it shows a remarkable decrease, and especially in the case of Na2Co. 100 , it is not produced at all.
(H : 35. /. 26 ,f r)