二重労働市場と国際労働移動
島田章
Abstract
In this paper, we deal with international labor movement in a two- country macroeconomic model where we assume each country has dual labor markets -primary and secondary- and real consumption wage differentials affect labor supply flows. We investigate cases where workers move between primary labor markets and between secondary labor markets of two countries. In both cases, we find that workers usually move from countries with higher to lower tax rates on wages.
We also find that international labor movement between primary labor markets usually increases the sum of the two countries' output, while international labor movement between secondary labor markets does not seem to affect the sum of the two countries' output. This implies that the sum of two countries' output is larger with international labor movement between primary labor markets than with international labor movement between secondary labor markets.
1節 はじめに
本論文の目的は,2国マクロ経済モデルに二重労働市場を仮定して,非競 争的な労働市場での国際労働移動と競争的な労働市場での国際労働移動が2 国経済におよぼす影響を明らかにすることである.具体的には政策変更が国 際労働移動におよばす影響,非競争的な労働市場での国際労働移動が2国経
済におよぽす影響と競争的な労働市場での国際労働移動が
2
国経済におよぼ す影響の違い,国際労働移動をともなう労働市場と国際労働移動をともなわ ない労働市場の関係などを明らかにする.国際労働移動はこれまでさまざまな側面から分析されたが,為替レート,
l国経済の生産能力,政府間の政策協調などと密接に関係しているにもか かわらず,マクロ経済モデルをもちいた分析はほとんどおこなわれなかっ
f
こ1 )
A g i o m i r g i a n a k i s ( 1 9 9 6
,1 9 9 8
,1 9 9 9 )
は,マクロ経済モデルをもちいた国際 労働移動の数少ない研究である.A g i o m i r g i a n a k i s ( 1 9 9 6 )
は,マクロ経済モ デルで国際労働移動を分析するために,労働はすべて非競争的な労働市場で 取引されると仮定した.またA g i o m i r g i a n a k i s( 1 9 9 8 )
は国際労働移動をとも なう2
国経済をモデル化するさい,すべての労働者が組合に所属し企業と組 合の交渉によって名目賃金率と雇用量が決定されると仮定した.そのため彼 の分析では,競争的な労働市場の存在やそのような労働市場に属する労働者 の他国への移動は考えられなかった.しかし国際間で移動する労働者の大部分は不熟練労働者であり,不熟練労 働は多くのばあい競争的な労働市場で取引される.したがってマクロ経済モ デルをもちいて国際労働移動を分析するならば,すべての労働市場が
l
つの 非競争的な市場からなると仮定するよりも,労働市場が二重構造をもち非競 争的な市場と競争的な市場からなり,非競争的な労働市場だけでなく競争的 な労働市場でも国際労働移動がおこりうると仮定したほうが現実的である.労働市場が二重構造をもつことは以前から指摘されており,二重労働市場 を仮定したマクロ経済モデルも存在する
2 )
二重労働市場の考え方によれば,1 ) M o l l e and Mourik
(19 8 8 )
は,国際労働移動にかんする研究を展望している.2
)尾高(19 8 4 )
は,日本の労働市場の二重構造にかんする代表的な研究のl
つである.また マクロ経済モデルに二重労働市場を取り入れた研究には,McDonald and Solow
(19 8 5 )
や 吉川(19 8
7)などがある.労働市場は
p r i m a r yl a b o r market
とs e c o n d a r yl a b o r market
からなり,名 目賃金率や雇用量は前者では非競争的に決定され,後者では競争的に決定さ れる.ただし二重労働市場を仮定したこれまでのマクロ経済モデルは,おも に閉鎖、経済を分析対象とした.これにたいし本論文は,二重労働市場を
2
国マクロ経済モデルに取り入れ,それぞれの国が非競争的な労働市場と競争的な労働市場からなると仮定し,
両国の
p r i m a r yl a b o r market
間での労働移動と両国のs e c o n d a r yl a b o r m a r ‑ k e t
間での労働移動を分析する.本論文のこのような特徴は,国際労働移動 を取り扱った既存の研究にはみられない特徴であるの.本論文では,おもにつぎの結果が得られる.まず
p r i m a r yl a b o r market
とs e c o n d a r yl a b o r market
のどちらで国際労働移動がおこっても,労働者 は賃金に課せられる税率の高い国から低い国へ移動する.両国の政策当局が 協調的に政策変数を決定するならば,国民所得の目標値の大きい国の税率が 国民所得の目標値の小さい国の税率よりも低くなり,目標値の小さい国から 目標値の大きい国へ労働者が移動し,その結果,目標値の大きい国の国民所 得は目標値の小さい国の国民所得よりも大きくなる.しかし国際労働移動は,両国の名目貨幣ストックから独立である.また
p r i m a r yl a b o r market
での 国際労働移動は両国の国民所得の和を増加させるが,s e c o n d a r y l a b o r m a r ‑ k e t
での国際労働移動は両国の国民所得の和を変化させない.このためp r i ‑ mary l a b o r market
で国際労働移動が存在するばあいの両国の国民所得の和 は,s e c o n d a r y l a b o r market
で国際労働移動が存在するばあいの両国の国 民所得の和よりも大きい.さらに国際労働移動をともなわない労働市場の名 目賃金率は国際労働移動をともなう労働市場の名目賃金率に影響をおよぽす3) Massey e t a l . ( 1 9 9 3 )
は,二重労働市場と国際労働移動の関係について言及している.しかしモデル分析はおこなっていない.彼らによれば
s e c o n d a r yl a b o r marketの労働条
件はp r i m a r yl a b o r marketの労働条件に劣り, s e c o n d a r y l a b o r marketの労働需要をみ
たすためには外国人労働者に頼らざるを得ない.が,国際労働移動をともなわない労働市場の名目賃金率は国際労働移動をと もなう労働市場の名目賃金率から独立である.
本論文の構成は,以下のとおりである.
2
節は,それぞれの国が二重労働 市場をもち国際労働移動が可能な2
国経済を定式化する.具体的には2
国経 済の構造方程式,国際労働移動をしょうじさせる要因および組合の目的関数 と政策当局の目的関数を仮定し,内生変数を名目賃金率と政策変数の関数と して表す.3
節は,p r i m a r y l a b o r market
に属する労働者だけが他国へ移動 するばあいを分析する.4
節は,s e c o n d a r y l a b o r market
に属する労働者だ けが他国へ移動するばあいを分析し,3
節で得られた結果との比較をおこな う.5
節は,本論文をまとめ,今後改善すべき点をあげる.2
節 モ デ ル本節は,それぞれの国が二重労働市場をもち
2
国間で労働移動が可能な2
国経済をモデル化する.2 . 1
節は2
国経済の構造を仮定する.2 . 2
節は,組合の目的関数と政策当局の目的関数を仮定する.
2 . 3
節は2
国間の労働 移動がどのような要因によってしょうじるかを仮定する.2 . 4
節は,2 . 1
節 で仮定した構造方程式を解く.2 . 1
節2
国経済の構造経済は, ]国と
A
国の2
国からなる. ]国とA
国は対称的であり,財の取 引と労働移動をつうじて相互に依存しあっている.それぞれの国の経済主体 は , 複 数 の 労 働 者 つ の 企 業 お よ び1
つの政策当局からなる.それぞれの国の労働市場は
2
つの市場からなる.2
つの市場のいっぽう をp r i m a r yl a b o r market
とよび,たほうをs e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
とよぶ.個個の労働者がどちらの労働市場に属するかは,あらかじめ定められている.
本論文は,労働の国際移動が
2
国経済におよぼす影響を分析する.このため労働の国内移動を仮定しない
4 )
すなわちそれぞれの国の国内で,p r i m a r y l a b o r market
に属する労働者がs e c o n d a r yl a b o r market
へ移動したり,s e c o n d a r y l a b o r market
に属する労働者がp r i m a r yl a b o r market
へ移動す ることはない.いっぽう労働は2
国間で移動可能である.すなわちJ国(A
国)の
p r i m a r yl a b o r m a r k e t
の労働者がA
国 (J国)のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
に移動したり, ]国(A
国)のs e c o n d a r yl a b o r market
の労働者がA
国( J
国) のs e c o n d a r yl a b o r market
に移動することができる.ただしJ国(A
国)のp r i m a r y l a b o r market
の労働者がA
国 (J国)のs e c o n d a r yl a b o r market
に 移動したり, ]国 (A国)のs e c o n d a r yl a b o r market
の労働者がA
国 (J国) のp r i m a r yl a b o r market
に移動することは不可能である5 )
P r i m a r y l a b o r market
とs e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
は,名目賃金率と雇用 量の決定方法において異なる.それぞれの国のp r i m a r yl a b o r market
のす べての労働者は lつの組合に所属し,名目賃金率と雇用量は企業と組合の交 渉によって決定される.交渉は,monopoly u n i o n model
にしたがっておこ なわれる.すなわち組合は,企業の利潤を最大にする名目賃金率と雇用量の 複数の組合せのなかから,組合の効用を最大にする名目賃金率と雇用量の組 合せを選ぶ6 )
いっぽうs e c o n d a r yl a b o r market
では,名目賃金率と雇用 量は競争的に決定される.すなわちs e c o n d a r yl a b o r market
では,労働需 要と労働供給が等しくなるように名目賃金率と雇用量が決まる.J
国企業 (A国企業)は, ]国 (A国)のp r i m a r yl a b o r market
およびJ
国(A
国)のs e c o n d a r yl a b o r market
から労働者を雇って1
種類の財を生産す る. ]国企業 (A国企業)によって生産される財は, ]国 (A国)で需要される4
)閉鎖経済モデルでは,労働がp r i m a r yl a b o r m a r k e t
とs e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
の間で 移動できるばあいとそうでないばあいがある.たとえばM c D o n a l da n d S o I o w ( 1 9 8 5 )
は, 圏内労働移動が可能であると仮定している.いっぽう吉川(19 8
7)は,国内労働移動が不 可能であると仮定している.5
)国際労働移動をしょうじさせる要因については.2 . 3
節を参照せよ.6
)組合の目的関数については.2 . 2
節を参照せよ.ばかりでなく,輸出をつうじて
A
国(]国)でも需要される.それぞれの国の貨幣市場はつである.本論文は,貨幣が唯一の金融資 産であり, ]国通貨 (A国通貨)はJ国居住者 (A国居住者)によってのみ保有
されると仮定する.
政策当局は政策目的の達成を目指して,名目貨幣ストックと税率を操作す る.本論文は,両国の政策当局が協調的に行動すると仮定する
7 )
われわれは
2
国経済の構造をつぎの方程式によって記述する.変数は特 に断らないかぎり,自然対数表示である.y= α lh+ α 2 / 2
,y*= α I l t
十a2n
,a
l>a2>O
,a l
十a 2
く1. ( 唱EEA︑ ︑ ︐ ︐ ︐ ︐
h =ln a l
占三α ;
パョ;‑11‑αL(Wl l‑al
一α 2
ーが一τ G 2 ̲ ‑ ( W 2
一ρ).・ l‑al
ーの̲a̲l̲
‑‑‑..!二号1 ‑ α
L ¥U
, ( ̲1 2 =lnαl
トa l ‑ a 2 a 2 ' ‑ a l ‑ a 2
一市( W 2
一ρ)ー唱α
,‑‑( W l
一ρ).l‑al‑ α 2 ・ l‑a
,‑a2
l t = l n
al占三;αFtz- 唱トα~(W't -p*)l‑al‑a2
,‑一G̲2
_(ω~-p*).α l‑a2
( 2 )
I~=lnα「士a,
a 2
己三z
ー唱1‑αL( 尚一 ρ * )
,‑0̲1 ‑ ̲ (W t ' ‑ p * ) .
l‑al‑ α
一α l‑a2
Z
三 e
十ρ
牢 一ρ . y‑y*=bz
,b>O.
q 三 ρ +cz , q * 三
D牢 一α, 0
くC
く1 / 2 .
Wjc
十l n
(l‑t)三 wj‑q+ln
(l‑t),
wt
十l n
(l‑t*)三 wr‑q*+ln
(l‑t*)
,O
豆t
,t * く
,1i=
,12 . m = ρ +y
,m*= ρ *+y ヰ.
( 3 ) ( 4 ) ( 5 )
( 6 )
( 7 )
(1)式は,]国企業の生産関数と
A
国企業の生産関数である.資本ストック は,一定(自然対数表示で0)
と仮定されている.ここで11
,12
および、yはそ
7)政策当局の目的関数については,
2 . 3
節を参照せよ.れぞれJ国の
p r i m a r yl a b o r m a r k e t
とs e c o n d a r yl a b o r market
の雇用量お よびJ
国企業の生産高(J
国の国民所得)であり,z t
, l~ および f はそれぞ れA
国のp r i m a r yl a b o r market
とs e c o n d a r yl a b o r market
の雇用量およびA
国企業の生産高(A
国の国民所得)である.αlとα 2
は自然対数表示されて いない定数である.( 2 )
式は, ]国企業の労働需要関数とA国企業の労働需要関数である.これ らはそれぞれ, ]国企業の利潤最大化と A国企業の利潤最大化から導出され る.ここでWjoω2およびρ
はJ
国のp r i m a r yl a b o r market
とs e c o n d a r y l a b o r
market の名目賃金率および J 国企業の生産物価格であり wj, w~ およびD牢は
A
国のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
とs e c o n d a r yl a b o r market
の名目 賃金率およびA
国企業の生産物価格である. ]国企業のp r i m a r yl a b o r m a r ‑ k e t
での労働需要とs e c o n d a r yl a b o r market
での労働需要はともに, ]国 のp r i m a r yl a b o r market
の実質生産物賃金率引‑p
およびJ国のs e c o n d a r y l a b o r market
の実質生産物賃金率的‑p
の減少関数である.またA
国企業 のp r i m a r yl a b o r market
での労働需要とs e c o n d a r yl a b o r market
での労働 需要はともに ,A
国のp r i m a r yl a b o r market
の実質生産物賃金率ωj‑p*
および
A
国のs e c o n d a r yl a b o r
market の実質生産物賃金率 w~-p* の減少 関数である.( 3 )
式は,実質為替レートz
の定義式である.ここでe
は,A
国通貨l
単位 あたりのJ国通貨の単位数で測った名目為替レートである.J
国企業の生産物にたいする需要とA
国企業の生産物にたいする需要は,実質為替レートの変化や
y‑y*
の変化によって変化する.2
国間で資本が移 動しないので,貿易収支がつねに均衡しなければならない.( 4 )
式は, ]国の 貿易収支均衡条件式(またはA
国の貿易収支均衡条件式)である8 ) b
は自然 8)z
の上昇は , ]国の競争力を高めJ
国企業の生産物の輸出を増加させ ,A国の競争力を 低めA国企業の輸出を減少させる.またy‑y*の上昇は
, ]国の輸入を増加させ ,A
国 の輸入を減少させる.したがって貿易収支が均衡するためには,z
の上昇はy‑y*
の上昇 を伴わなければならない.Z e r v o y i a n n i
(19 9 7 ) p . 6 1 および A g i o m i r g i a n a k i s( 1 9 9 8 ) 脚 注 9
を参照せよ.対数表示されていない定数である.
(5)式は,消費者物価指数の定義式である . ]国の消費者物価指数
qは
,J
国企業の生産物価格(非自然対数表示)とJ
国通貨表示のA
国企業の生産物 価格(非自然対数表示)の幾何平均に(3)式をもちいて定義されたものである.A
国の消費者物価指数どは ,A
国企業の生産物価格(非自然対数表示)とA
国通貨表示のJ国企業の生産物価格(非自然、対数表示)の幾何平均に(3)式をも ちいて定義されたものである .c
は自然対数表示されていない定数である.(6)式は,税引後の実質消費賃金率の定義式である.ここで
t
はJ国の名目 賃金に課せられる比例税率であり , t* はA
国の名目賃金に課せられる比例 税率である.これらは自然対数表示されていない .W1 cとW 2 c
はそれぞれ,J国の
primaryl a b o r market
の実質消費賃金率とJ国のs e c o n d a r yl a b o r market
の実質消費賃金率を表す .w ' ¥ ' c
とz u Z
はそれぞれ ,A
国のp r i m a r y l a b o r market
の実質消費賃金率とA
国のs e c o n d a r yl a b o r market
の実質消 費賃金率を表す .t
とfは政策変数である.( 7 )
式は , ]国の貨幣市場の均衡条件式とA
国の貨幣市場の均衡条件式であ る.ここでm
はJ国の名目貨幣ストックでありm
牢はA
国の名目貨幣ストックである
m
とm*
は政策変数である.2 . 2
節組合の目的関数と政策当局の目的関数J国の
p r i m a r yl a b o r market
に属する労働者によって組織される組合の 目的関数とA
国のp r i m a r yl a b o r market
に属する労働者によって組織され る組合の目的関数をそれぞれ,つぎのように仮定する.u= ‑(1
1 ‑ 1 { ) 2 十 g { W 1 c 十 l n
(1‑t)},
げ = ー C l i ‑ l γ )2+g{
川c+ l n
(1‑t*)},g>O.
ここで,
l {
はJ
国のp r i m a r yl a b o r market
の完全雇用量でJ
国組合の雇用量の目標値,
r V
はA
国のp r i m a r yl a b o r market
の完全雇用量でA
国組合の 雇用量の目標値である9 )
それぞれの国のp r i m a r yl a b o r market
に属する 労働者によって組織される組合は,それぞれの国の企業によるprimary l a b o r market
に属する労働者にたいする需要をあたえられたものとして,自分たちの名目賃金率を操作することにより,現実の雇用量を完全雇用量に 近づけることと税引後の実質消費賃金率を高めることを目指す
.g
は自然対 数表示されていない定数で,雇用量にかんする目的と税引後の実質消費賃金 率にかんする目的のp r i m a r yl a b o r market
に属する労働者によって組織さ れる組合にとっての重要性の違いを反映している.J国の政策当局の目的関数と
A
国の政策当局の目的関数をそれぞれ,つぎ のように仮定する.v= ‑ ( y ‑j)2‑h(q‑q)2
,V*=
一( y
牢‑j*)2‑h( q
牢̲q*)2
,h>u.
ここで,タはJ国の国民所得(J国企業の生産高)の目標値,
q
はJ国の消費 者物価指数の目標値, fはA
国の国民所得 (A国企業の生産高)の目標値,r
はA
国の消費者物価指数の目標値である .h
は自然対数表示されていな い定数で,国民所得にかんする目的と消費者物価指数にかんする目的の政策 当局にとっての重要性の違いを反映している.本論文は, ]国の政策当局と
A
国の政策当局が協調的に行動すると仮定す る.すなわち両国の政策当局は,政策当局の目的関数の和の最大化を目指し て,名目貨幣ストックと税率を操作する.両国の政策当局にとっての最適化 問題は,max V+ V * .
t , t * , m , m*
である.
9) 両国の p r i m a r yl a b o r market および s e c o n d a r yl a b o r market の完全雇用水準は, 2 . 3
節で定義する.
2 . 3
節 国際労働移動をしようじさせる要因本論文は,税引後の実質消費賃金率の差によって
2
国のprimaryl a b o r market
の閉またはs e c o n d a r yl a b o r market
の間で労働移動がしょうじると 仮定する1 0 )
まず
p r i m a r yl a b o r market
に属する労働者が他国のp r i m a r yl a b o r market
に移動できるばあい,p r i m a r y l a b o r market
の税引き後の実質消費賃金率 の差によって国際労働移動がしょうじると仮定する.すなわちJ国のp r i m a r y l a b o r market
の税引後の実質消費賃金率がA
国のp r i m a r yl a b o r market
の 税引後の実質消費賃金率よりも高ければ(低ければ),A
国(J国)のp r i m a r y l a b o r market
に属する労働者がJ国(A
国)のp r i m a r yl a b o r market
に移動 する.これによりJ
国(A
国)のp r i m a r yl a b o r market
の完全雇用量は,国 際労働移動がおこるまえよりも大きくなる. ]国およびA
国のprimary l a b o r market
の完全雇用量をそれぞれl{,lγ
とすると,l { = 7
1+d
1{ W 1 c + 1 n
(I ‑t)‑w
'1c ‑ 1 n
(I ‑t*)},
n
f =71'+d1 {w
'1c + l n
(I ‑t*)‑w1c‑1n
(I ‑t)},d1
2:0
,である
1 1 )
ここで,7 1
は国際労働移動がないばあいのJ
国のp r i m a r yl a b o r market
の完全雇用量,7
1'は国際労働移動がないばあいのA
国のprimary l a b o r market
の完全雇用量である.五=71'を仮定する.1 0 )
労働移動のおもな要因が賃金格差であるという考え方は.H i c k s ( 1 9 6 3 ) 4
章5
節にも示 されている.本論文は,国際労働移動にともなうコストを無視する.本論文が仮定する 税引後の実質消費賃金率の差は,家族とともに外国に移り住んで労働供給をおこなうば あいに労働者が問題にする賃金率の差である.しかし国際労働移動をしょうじさせる要 因は,本論文が仮定する税引後の実質消費賃金率の差にとどまらない.家族を自国に残 して送金を目的に外国で働くばあい,労働者が問題にする賃金率の差は,自国通貨で表 した税引後の外国の名目賃金率を自国の消費者物価指数で割った値と自国通貨で表した 税引後の自国の名目賃金率を自国の消費者物価指数で割った値(すなわち自国の実質消費 賃金率)の差である.1 1 ) P r i m a r y l a b o r m a r k e t
の間での国際労働移動の可能性を仮定するばあいd1>Oであり,p r i m a r y l a b o r m a r k e t
の間での国際労働移動の可能性を仮定しないばあいd1=O
である.本論文は,
A g i o m i r g i a n a k i s ( I 9 9 8 )
と同様,外国人労働者は組合への参加 と雇用において自国人労働者と等しく扱われると考える.このことは組合の 目的関数と完全雇用量の仮定から明らかである.外国人労働者が流入するば あい,組合は外国人労働者も含めたすべての労働者が雇用されることを目指す.
つぎに
s e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
に属する労働者が他国のs e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
に移動できるばあい,s e c o n d a r y l a b o r m a r k e t
の税引き後の実質消 費賃金率の差によって国際労働移動がしょうじると仮定する.すなわち , ]国の
s e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
の税引後の実質消費賃金率がA
国のs e c o n d a r y l a b o r m a r k e t
の税引後の実質消費賃金率よりも高ければ(低ければ),A
国( J
国)のs e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
に属する労働者がJ国(A
国)のs e c o n d a r y l a b o r m a r k e t
に移動する.これによりJ
国(A
国)のs e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
の完全雇用量は,国際労働移動がおこるまえよりも大きくなる . ]国およびA
国のs e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
の完全雇用量をそれぞれl {
,l~f とすると,l{= 1 2 +d 2 { W 2 c + l n ( I ‑
t) -w~c-ln (I‑
t*) ,} nf
=乃 +d2{w~c+ln (I‑t*)‑ω 2 c ‑ln ( 1 ‑
t) ,}d2
~三 0 ,である
1 2 )
ここで ,12
は国際労働移動がないばあいのJ国のs e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
の完全雇用量,n
は国際労働移動がないばあいのA
国のs e c o n d a r y l a b o r
market の完全雇用量である.九 =I~ を仮定する.2 . 4
節実質消費賃金率,雇用量,国民所得,実質為替レート および消費者物価指数(1)式から (7)式をもちいて , ]国と
A
国のprimaryl a b o r market
およ1 2 ) S e c o n d a r y 1 a b o r m a r k e t
の問での国際労働移動の可能性を仮定するばあいの>0
であり , s e c o n d a r y l a b o r m a r k e t
の間での国際労働移動の可能性を仮定しないばあいの=0
である.び s e c o n d a r yl a b o r market
の実質消費賃金率, ]国とA
国のp r i m a r yl a b o r market
およびs e c o n d a r yl a b o r market
の雇用量, ]国とA
国の国民所得,実質為替レート , ]国と
A
国の消費者物価指数をJ国とA
国のprimary l a b o r market
およびs e c o n d a r yl a b o r market
の名目賃金率をJ国とA
国の 名目貨幣ストックの関数として表す.卸 1 c =
一(I‑a1+
千)(m‑w1) ー (‑a2+
竿)(m‑w2 )
+ザ (m*-w'l') +千 (m*-w~)
+
(I ‑a1一向)A ( 8 . 1 ) W2c=‑(‑a1+
ザ)(m‑w1)
ー(トα2+竿)(m‑w2)
+竿(が
‑w
t)+竿(が一的)+
(I ‑a1ーの) A ( 8 . 2 )
川c=‑
(I‑a1+
千)(が ‑w!)
一(‑a2
十字)(が -w~)+年
(m‑w1)
+竿(m‑w2) +
(I‑αl一向)A ( 8 . 3 )
叫 一
(‑a1+
千)(が‑w!)
ー(I‑a2
十字)(が一的)+ザ
(m‑w1)
+竿(m‑ ω2)
+ (I ‑a1一向)A ( 8 . 4 )
l‑a , a 2
1 1 =ln a 11 ‑ a , ‑
出 向l‑a , ‑a2 ‑ A +m‑ ω1 ・ ( 8 . 5 )
a , l‑a ,
1 2 = l n a 11 ‑ a
,‑a
,a 2 l‑a
,ーの ‑A+m‑w2
・( 8 . 6 )
l‑a2 a ,
l i = l n a 1
トa
,‑a2 a 2 l‑a
,一 向‑A+m
牢‑w!. ( 8 . 7 )
l~=ln a l 1‑a , ‑a2 a 2 1 ‑a , ‑a 2 ‑A +m*- ω~. ( 8 . 8 )
y= α l(m‑Wl) + α 2(m‑W2) + ( I ‑al‑a2)A. ( 8 . 9 )
y牢 =αl(m牢一 ω:0+α2(m 宇一 ω~) + ( I ‑al‑a2)A. ( 8 . 1 0 )
z=
号{m‑Wl
一(が‑w i ) }
ヴ{m‑W2 ー (m*‑w1)}'
(8.11)q=(‑al+ 千 ) (m‑wl)
+(‑a2+
亨)(m‑w2) + m
一千
(m*‑wi)
一竿(m*‑w!)
一( l ‑ a l
一向)A ( 8 . 1 2 ) q*= (‑al+
竿)(m*‑w i ) + (‑a2+
竿)(が一川)+が一千
(m‑wl)
一千(m‑w2)
一(I‑al
向一)A ( 8 . 1 3 )
‑az a 2 1‑a , a ,
ただしA 三 α 1l n a l !‑a
,‑a2 a 2 !‑a
,ーの +a 2 1 na l !‑a
,‑a2 a 2 !‑a
,‑a2
である.3
節Primary l a b o r market
に属する労働者の移動本節は,
p r i m a r y l a b o r market
に属する労働者が他国のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
へ移動できるばあいを議論する.いいかえれば,d
1>O
,d
2=O
である ばあいを議論する.3 . 1
節は,国際労働移動をともなわないsecondary l a b o r market
の名目賃金率と雇用量を求める.3 . 2
節は,国際労働移動をともなう
p r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率と雇用量を求める.3 . 3
節は,政策当局による目的関数の最大化から,名目貨幣ストックと税率を決定する.
3 . 1
節国際労働移動をともなわないs e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
はじめに
J
国のs e c o n d a r yl a b o r market
に属している労働者はJ
国で労 働を供給し,はじめにA
国のs e c o n d a r yl a b o r market
に属している労働者 はA
国で労働を供給するから ,l~= ιlγ= 乃である.したがって両国のs e c o n d a r y l a b o r market
の需給均衡条件は,( 8 . 6 )
式と( 8 . 8 )
式から,al l‑al
1 2 = l n al l‑a
1‑a 2a2 l‑al‑a
,‑A +m‑w2'
a [ l ‑ a [
l~=lnα 11-al-a2 a21‑al‑a2 ‑
A+m 牢 -w~ ,
である.
12=n=ln al τ a l ‑ a
,a2 τ a l ‑a 2 ‑A
を仮定すると,国際労働移動をともなわな いs e c o n d a r yl a b o r market
の名目賃金率および雇用量は,W2=m
,( 9 . 1 )
w~=m*,
( 9 . 2 )
l z = l z
, (10 . 1 )
l~=n , (1
0 . 2 )
である.
S e c o n d a r y l a b o r market
では名目賃金率と雇用量が競争的に決定される ため,雇用量は完全雇用量に等しい.またJ
国(A
国)のsecondaryl a b o r market
の名目賃金率や雇用量がA
国(J
国)の名目貨幣ストックや完全雇用 量に依存しないのは , ]国 (A国)のs e c o n d a r yl a b o r market
の需給均衡条 件がA
国(J
国)のs e c o n d a r yl a b o r market
の需給均衡条件から独立だから である.3 .
2節国際労働移動をともなうp r i m a r yl a b o r m a r k e t
J
国組合は , ]国企業による労働需要をあたえられたものとして,自分たちの目的関数を最大にするようにJ国の
p r i m a r yl a b o r market
の名目賃金 率を決定する.このときJ
国組合にとって ,A
国のp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率やJ国およびA
国のs e c o n d a r yl a b o r market
の名目賃金率は 所与である . ]国組合の最適化問題は,つぎのように表される.max‑[h ‑h
一d 1 { W l c 十 l n
(1‑ t ) ‑wic‑1n
(1‑t*)} J 2 + g{ ω l c + l n
(1‑t)}
s u b j e c t t o ( 8 . 5 )
,( 8 .
1),( 8 . 3 ) .
J国組合の目的関数最大化の l階条件は,{1
+d
1 (1‑al +
竿)}(m‑wl)
一d
1(1寸1 +
竿)(m*
一川)吋叫州
1
(←一α
向附2
汁十2竿 苧 ? 子 予 互 令 )
(ωm 一 叫ω
的ω2)
一d め朴 1 g
〆凶
( α l
一 叫α
向1 + 空 竿 t
子許争 E 町
)=d 1
{ln
(1‑t ) ‑ln
(1‑t * ) } ‑ u A
2
{l +d1
(1‑al +
千)}︑ ︑
ESノ
唱BEA
•
EEA
噌'i /' t¥
である.ただし
11=ln
α11‑al ‑ a 2
α2 1 ‑ a l ‑ a 2 ‑ A
が仮定されている.( 1
1. 1)式は , ]国のp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率の反応関数であ る.これによればA
国のp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率の上昇は , ] 国のp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率を上昇させる( a W l /a ω1>0)
.いっ ぽうJ
国のs e c o n d a r yl a b o r market
の名目賃金率がJ
国のp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率におよぼす影響(aW t ! aW 2 )は,一般的には定まらな
い1 3 )
またJ国の税率の上昇はJ国のp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率d 1 C
ーα2+ 並立)
ω
也 = ‑
k 附 <1 / 山
,b>lなG'f
,dj(‑a2
十竿)<0
したがdW2 1 +d 1
(l‑a1
+ギ)
っ て わ
1
な ら ば , 件>0
‑CC!5る いっぽう bが十分0
ほ け れ ば , 朴a2+
竿)>0
dW2
.
. . . . ...G.---.l...L-.. l ..l.~ OWl./' 1\-1"':~ ‑ ? ' d'7~,l;J... I"'"
したがって
b が十分Ol~ 近けれは,一一 <0 である.実証的 L は実質為替レートが貿易収
。ω2支におよぽす影響のほうが,両国の国民所得の差が貿易収支におよぽす影響よりも大き い
C A g i o m i r g i a n a k i s 1
附 脚 注9 参照)
このようなばあい ,b>lか ら 与>0
であるU W 2
を上昇させ
(awdat>O)
,A
国の税率の上昇はJ国のp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率を低下させる(awdat* く 0 ) . ]
国の名目貨幣ストックの増加 はJ国のp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率を上昇させ(aw1 /am>0)
,A
国の名目貨幣ストックの増加はJ
国のp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率 を低下させる(aw1 /am 牢く 0 ) 1 4 ) .
A
国組合も J国組合と同様の最適化問題を解く. A
国組合の目的関数最大 化の 1階条件は,{ l +d 1
(1ーα l
十字) } ( m * ‑ w ' [ ' )
一d1
(1‑al+
竿)(m‑wl )
十d1 (‑az
十字)(m*
一的)一d1 (‑az+
苧)(m‑wz)
g
(1‑al 十年)
=d j
{ln
(1‑t*)‑ln
(1‑t)}‑ u
')~" (11.2 ) 2 { 1 +d
j (1‑al + 千)}
である.ただしハ
=ln a j l ‑ a
,‑ a
,a z 1 ‑ a
,ーの ‑A
が仮定されている.( 9 .
1)式,( 9 . 2 )
式と(11.1)式, (11.2 )
式から明らかなように,s e c o n d a r y l a b o r market
の名目賃金率はp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率に影響を およぼすが,s e c o n d a r y l a b o r market
の名目賃金率はp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率から独立である.したがってp r i m a r yl a b o r market
に属する労 働者が移動するばあい,s e c o n d a r y l a b o r market
からp r i m a r yl a b o r market
への賃金波及は存在するが,p r i m a r y l a b o r market
からs e c o n d a r yl a b o r market
への賃金波及は存在しない.またすでに反応関数の性質として述べ たように, ]国のprimaryl a b o r market
の名目賃金率とA
国のprimary
凶 包 吋
l ( 1‑al+
苧)十d 1 (‑a2+
苧)処一一d 1
(l‑al+
竿)十d1 (‑a2+
竿)dm 1 +d 1
(l‑ a l
十字dm*
十d1(l‑al+
苧)a l 十 α2<1 か ら 与 > am 0
,失am <0
である巴
l a b o r market
の名目賃金率はたがいに影響しあっている.このような性質 は,国際労働移動をともなわないばあいと対照的である.J国組合の目的関数最大化の
l
階条件((11.1)式)およびA
国組合の目的関 数最大化のl
階条件(( 1
1.2 )
式)にJ国のs e c o n d a r y1 a b o r market
の名目賃 金率( ( 9 .
1)式)およびA
国のs e c o n d a r yl a b o r market
の名目賃金率( ( 9 . 2 )
式) を代入した式を連立させ ,W l
とω ?
を名目貨幣ストックおよび税率の関数と して解く.川 n
(1‑ t * ) ‑ l n
(1‑ t ) } , g
(1‑α1+
千)1 = m+ ‑ ' C ‑ ‑ ‑
,‑')~
, , ' / /+ U')
(12 .
1)1+
川d l
{ln
(1‑t)‑ln
(1‑ t * ) }
, g(l‑α1+
ザ)ω i=m*+
~っ 十 日 っ .
(12 . 2 )
ノlC
1 +2d
1 (1‑al十三!?)2{l+dl(1 ー α1+γ)}
(1
2 .
1)式および(12 . 2 )
式は,国際労働移動をともなうp r i m a r yl a b o r m a r ‑ k e t
と国際労働移動をともなわないs e c o n d a r yl a b o r market
を同時に均衡 させるp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率である.P r i m a r y l a b o r market
の名目賃金率は,自国の名目貨幣ストックの増加によって上昇する( a w l / a m
>0
,awilam
牢>0)
.いっぽう他国の名目貨幣ストックからは独立である( a w 1 /am*=0
,awilam=O).
自国の税率の上昇はp r i m a r yl a b o r market
の 名目賃金率を上昇させ(awdat>o
,a ω 1 l a t * > O )
,他国の税率の上昇はp r i ‑ mary l a b o r market
の名目賃金率を低下させる( a w d a t * く o
,a ω i / a t く 0 ) . ま
たg
が大きければp r i m a r yl a b o r market
の名目賃金率が高いのは,組合が 税引後の実質消費賃金率を高めることを完全雇用の達成よりも相対的に重視 するからである.Primary l a b o r market
の税引後の実質消費賃金率の差は,l n
(1‑t ) ‑ln
(1‑t * ) W l c +1 n
(1‑ t )
一ω
れ‑ l n
(1‑t
勺 = 凸1
+2d
l (1‑al +千)
であるから,
もし
t>t*
ならば,W'c+ l n
(1‑t ) ‑wlc‑ln
(1‑t * ) く 0
, であり,もし
t く f
ならば,w'c+1 n
(1‑ t )
一ω
も‑ln
(1‑ t * )>0
,である.したがってJ国
(A
国)の税率がA
国 (J国)の税率よりも高ければ,J
国(A国)のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
の労働者がA
国(J
国)のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
へ移動する.またJ国の税率とA
国の税率が等しければ,国際労働 移動はしょうじない.さらにp r i m a r yl a b o r m a r k e t
の税引後の実質消費賃 金率の差は,名目貨幣ストックから独立である.このため名目貨幣ストック の変更は,p r i m a r y l a b o r m a r k e t
の間での国際労働移動の影響をあたえな¥ .
‑ ¥.
( 1 2 .
1)式と( 1 2 . 2 )
式をそれぞれ , ]国企業のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
での 労働需要関数( ( 8 . 5 )
式)とA
国企業のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
での労働需要関 数( ( 8 . 7 )
式)に代入する.国際労働移動をともなうp r i m a r yl a b o r m a r k e t
の 雇用量は,d
dln
(1‑t)‑ln
(1‑ t * ) } g(l‑a
,+竿)h=h 十 i A ‑ v n
, (13 .
1)1+ 削
京 王
d 1
{1n
(1‑t * ) ‑ln
(1‑t ) } g
(1ー α
,+ザ)l i = l i +
凸 一 一 0~. ~1 +2d
, (1‑al
+千2 { 1 +d
, (1‑a
, +千)} (13 . 2 )
である . ]国
(A
国)の税率がA
国 (J国)の税率より低ければ,A
国(J国)のp r i m a r y l a b o r m a r k e t
からJ国(A
国)のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
への国際労 働移動がしょうじ ,A
国 (J国)のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
の雇用量は両国の 税率が等しいときよりも小さくなり , ]国 (A国)のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
の雇用量は両国の税率が等しいときよりも大きくなる.さらにh
,t i
は,p r i ‑
mary l a b o r m a r k e t
の完全雇用量l
,{t i
f,‑ . , ddln
(1‑t)‑ln
(1‑t*) } l 1'= l t + 且 内
1
+2d 1
(1‑al +
王子︑
••
︾t '
一
Aり 一 1 j
‑一P し一
[ 一 向 一
b
/ t九 百ノ 一
h
一
+
二 向
*一 一
ト 一 似
/ t t 一
nL
h 一
+
︐
G一 +
刊 ハ
l
ザ 一 一
よりも小さい.これは組合が完全雇用の達成ばかりでなく税引後の実質消費 賃金率を高めることも目指しているからである.ただし
g
がO
に近づくに つれ ,l j
とliはそれぞれl {
とγ l
に近づく.なぜならg
の減少は,組合が 完全雇用の達成を税引後の実質消費賃金率を高めることよりも相対的に重視 することを意味するからである.3 . 3
節P r i m a r y l a b o r m a r k e t
に属する労働者が移動するばあいの 政策変数の決定( 9 .
1)式と(12 .
1)式を( 8 . 9 )
式に代入し,( 9 . 2 )
式と(12 . 2 )
式を( 8 . 1 0 )
式に 代入し,両国の国民所得を政策変数の関数として表す.M1
{ln
(1ーの‑ln
(1‑ t * )} 叫
(1‑ a l
+千)y=
凸 一
白 + ( 1‑ α
j ‑a
2)A.l
川+サ2 仰 d
b " (1
4 .
1) y*=~1 dj
{ln
(1‑t*)‑ln
(1‑t)1 ̲ a l g
(1‑ a l
十字)内 十(1
‑aj‑a
2)A.1 +2d
(1‑aj+
竿2 { 1 +d 1
(1‑ a l +
千) } l
(1
4 . 2 )
(1
0 .
1)式および(10 . 2 )
式によれば,両国のs e c o n d a r yl a b o r market
の雇用 量は等しい.しかし(13 .
1)式および(13 . 2 )
式によれば税率の高い国のp r i m a r y
l a b o r market
から税率の低い国のp r i m a r yl a b o r m a r k e t
へ労働者が移動す るため,税率の低い国のp r i m a r yl a b o r market
の雇用量は税率の高い国のp r i m a r y l a b o r market
の雇用量よりも大きい.その結果,税率の低い国の国民所得が大きくなるのである.名目貨幣ストックが国民所得に影響をあた えないのは,
p r i m a r y l a b o r m a r k e t
およびs e c o n d a r yl a b o r m a r k e t
の雇用 量が名目貨幣ストックから独立だからである.04.
1)式と(14 . 2 )
式から明らかなように , ]国の国民所得とA
国の国民所 得の和は,両国の税率や名目貨幣ストックから独立である.いいかえればp r i m a r y l a b o r m a r k e t
に属する労働者だけが移動するばあい , ]国とA
国 は,y+y*=
a1g(l‑a1 十竿)
J二 ~+2(I-a1 一 α2)A,
l+d 1
(1‑a1+
す)を越えて生産をおこなうことができない.
( 9 .
1)式,( 9 . 2 )
式,02.
1)式および( 1 2 . 2 )
式を( 8 . 1 2 )
式と( 8 . 1 3 )
式に代入 し,両国の消費者物価指数を政策変数の関数として表す.つ a l c ¥ d 1
{In
(1‑t)一l n
(1‑t*)}q=(‑al+'"'U
l.I " ) . . . . j l .u L¥... 0/ LLL\~
b'
1 +2d 1
(1 ‑a 1 + 千)
M
(1‑a1
十年)+ 日 + m
一(l‑a1‑a2 ) A . 2 { 1 +d 1
(1‑a1
十字)}つ
n・ c
,d 1
{In
(1 ‑t*)‑ l n
(1 ‑t)}q*= (‑a1 +,",u~") 内
b'
1+2d 1
(1‑α1+ 千)
M (1
‑a1+ 竿)
十 日 + m
牢 ー(1‑a1‑az)A.
2 { 1 +d1
(1 ‑a1 +千 ) }0 5 .
1)(1
5 . 2 )
(1