一41一
マッシュポテトのテクスチャー*
渋谷歌子 本間伸夫 石原和夫 菅原恵美子
Texture of Mushed Potato
Utako Shibuya, Nobuo Honma, Kazuo Ishihara and Emiko Sugawara
緒 言
食品の有するレオロジカルな諸性質については,テクスチャー測定装置の開発によp逐次解明さ れ,食品の物理性と食味との関連が種々の立場から検討されている。
私共は調理する際の加熱条件が食品のテクスチャーに及ぼす影響について系統的に検討を行うこと を意図し,先に「煮物調理におけるいも類のテクスチャーの変化1)」, 「煮加熱調理による牛肉のテ
クスチャーの変化2)」, 「焼加熱調理による牛肉のテクスチャーの変化3)」について報告をして来た。
今回はジャガいもをマッシュする時の諸条件がマヅシュポテトのテクスチャーに影響するものと考え 検討を加えることとした。マッシュポテトはジャガいもを加熱後粉砕して細胞単位に分離して作る が,一般に食味としては粉状のものが口当り良くより好まれる。その反面粘着性のものは嫌われる傾 向にある。この食昧を左右するものにジ+ガいもの品種,貯蔵期間,加熱条件,マッシ=までの放置 条件などが影響することが橋谷,平野ら4)5)により報告されているが,煮たいも及びそれより得られ たマッシュポテトのレナロジカルな諸物性については検討されていない。本報ではレナロメーターを 用いて検討し若干の知見を得たので報告する。
試料及び実験方法
実Wt 1 ジャガいもの種類,加熱時間およびマッシュ時期がマッシュポテトのテクスチャーに及ぼ す影響
1)試料の調製
ジャガいもは男爵,1ケ月貯蔵のもの(以下Aとする)と同じ品種の1年貯蔵のもの(以下Bとす る)を試料として用いた。サソプルはいもを剥皮してから25x25x45㎜のブPックを多数切り出し,
無作為に10ケ(計約250 9>を選び実験に供した。
加熱は前報1)に準じて行い,リフラックスをつけた三角コルベソにサソプル重量の2倍の純水を入
*加熱による食品の香味,色,テクスチvl ・ 一の変化に弱する研究 唱
一42一 県立斬潟女子短期大学研究紀要 第13集 1976
れ,灘後いもを入れて酬1脳警後5,1・,15, 2・分の一定時Pdi1加熱した・そして繍鹸のいもと・
加轍6。分1 Ml2。℃で撚しt・ものについて3…シュの卿しr2 Sを用いてマ必したものを2°℃で 30分閥放置後,テクスチャー測定用サソプルとした。
Bi・・1 1 「 2)テクスチャー特性の測定法
八/15分加熱B、、。、 1灘蕪灘瓢謬氣
5分力ll A8
にできるだけ均一になるように詰めた後蓑面を 平らにしたものをサンプルとし,クリアラソス 2111m,運動速度24サイクル/分,チャート速度 1500usrn/分,運動回数2回,電圧5v,プラソ ジャー・は径17mmのルサイト製円柱を用いて行っ た。測定結果はレオロメーター単位6)で表示 し,レナロメーターカーブを図1に例示した。
図1 マ・}シュポテトの標準的レオロメーター
カーブ(いもA,加熱直後マッシュ) 3)沈降体積の測定法
ジャガいもを?。 : xする際,細胞力〜微さ泌が,7(の酸蜘る鞍として懸濁液の麟体積 の測定が行われる7)s)。静置時間30,60,120分で測定した結果,30分以降沈降体積の変化がほとんど なかったので120分の静置時澗でもって測定した。
4)官能テスト
パネルは共同研究都人で行い,評価は購の順位法及び鍛齢付法で行った・瀦の尺度は・
非常に好む又はあるを+3,かなり好む又はあるを+2,好む又はあるを+1どちらでもないを+
O. 5,好ましくない又はないをOとした。
実験2 顕微鏡によるマvシュポテトの観察
サソプルAのいもについて加熱時間をle,20,40,60分とし,それらを加熱直後にマヅシ=したも の,及び6紛放置後マ。シュしたものにつv・て顕微鏡で観察した・
実験3 加熱後の放置時間がジャガいもおよびマッシュポテトのテクスチャーに及ぼす影響,
1)試料の調製およびテクスチャーの測定
ジ+ガいもは脳6ケ月燃のもの(以下C)を恥た・25・25・45㎜瞠形したものを鍋の中の 三鯉の灘水に入れ,再沸騰後15分間力嚥した後・一部は齢礁し・うちにいもの状態でテクスチ
ャーを齪するとともにマ。 ・xした.残りの煮熟・もは20℃で3G・60・120・240分放置し洛欄 毎いもの状態でテクスチャーを測定するとともee・一・・シュした・でき炉・シュポテトは20℃で30分 躍後テクスチャーを測定した.テfi・7・チャー Ill定条件喉験・に遡 るが庵圧・・v・径1°㎜のル サイト円柱を用いた。
2) 煮熟いもの品温測定
20℃の気温中に獺され燃熟し・もの品温舶記澱計(大倉電気製DR・IM・TC−1・IC)でもって
マッシュポテトのテクスチャー −43一
長軸中央の端から%,9f6,}i6の位置で測定を行った。
3)官能テスト
実験1の方法に準じて行った。
実験結果および考察
1 ジャガいもの種類,加熱時間およびマ・yシュ時期がマ xシュポテトのテクスチャーに及ぼす影 響(実験1)
時間を変えて加熱し終ったA,Bいもをその直後または60分後にマッシュしたポテトのテクスチャ ー測定値を平均して図2に示した。ガム性は硬さx凝集性により求められる二次パラメーターであ
り,半固形食品をのみ込めるまでに砕くに必要なエネルギーに対応する。
硬さ 〜疑集{生 琴単力{生
︑
05101520
付着性
o.7 0.6
0、5 、q
::;i輿
::1
05101520
加熱時澗(分)
0.9 0.9 0.8 0.8 e.7・ o.ア
::1麟:::
0.4・ O.4
⑪.3 03 0.2・ o.2 0.1 0.1
0 5 10 15 20
ガム性 7 6 久
、・o.−L 4
●一一e
2
05ユ⑪152{〕
加熟時悶(・分)
カ4
ドら ぴ
ロ リ 奇 ●
05101520
__
怐QA,直往マツシュ ー尋一A,60分佳マッシェ
・一・
潤│・−B,直後マッシュ ーO−.B,60分後マッシェ
図2 加熱時間をかえたジャガいもからつくったマvシュポテトのテクスチャー
一・ 魔S−一 県立新潟女子短期大学研究紀要 第13集 1976
得られた結果を分散分析により解析した結果が表1である。このうち主効果では,いもの種類(P)
が硬さとガム性に高い有意性を示している。即ちBはAよりも硬く,のみこむまでに必要なエネルギ ーが大であることが推察される。これは水分含飛がB:75.7%,A:80.1%とBがAより固形分が多 いことも一照をなすものと考えられる。
マッシュ時期(M)を変えた場合のテクスチャーの変化は大きく,加熱後60分を経てからマッシュ したものは薩後にマッシ馬したものよりすべての測定要素のテクスヤチー値が大きい。これはいもの 熱いうちは細胞間の可溶性ペクチソが流動的であって細胞が離れ易く5),細胞をあまり損傷すること なくマツ・;=によって細胞をバラバラにすることができるためと考えられるeこれに対して60分経過 すると漏度が低下してペクチソの流動性を失いマッシュにより細胞が無理にパラパラにさせられるの で細胞が損傷し澱粉が流出する。このためとくに付着性と弾力性に高い有意性を示している。
マッシ。、のテクスチャーに及ぼすいもの加熱時間(T)の影響は大きく,とくに硬さは加熱時間の 変化によっていちぢるしく変化する。
表1 じゃがいもの加熱時問及びマッシュ時期がテクスチャー・一{:及ぼす影響 一平均雁の比較と分赦分析一
︷
項 目 1硬 さい単力性睡集倒付着倒ガム性
主
効
果 交互作絹
じφがいも 腫顛 (P)
マツシユ時 期 (M)
加熱時間
(T)
鰍率lp<・・… P>0.⑪5 P>O.05 P>…51pく・・…
平均値 比 較
A<<<B
6.60 8.20 A= B
⑪.42 0.39 A= B
O.58 0.59 A =B
O.36 0.40
A<<<B
3.79 4.77
鰍率lp−e・。5−e・。・ip〈・・。。・ P>・・。51p〈G・。・・iP<㈱・
比 較 平均値 直後く60分
7.12 7.68
直f妾くくく60分
⑪.36 0.45
直後=60分
O.58 0.59
直{麦くくく60分 0.31 e. 45
直後く《60分 4.01 4.55
危険率1圏゜1五。。、P>e・⑪51p−9・・5一咽p>e・・51P鼠。、.一。.。。、
平均嬉
比 較
5分=10分
7.09 7.工5
・=:15分く20分 7,29 8.08
5分==王o分 O.04 e.40
=15分=20分 e.40 0.喋3
5牙>10分
0.63 0.57
=:15分=:20分 0.57 0.57
5分雷10分
0. 2 0.38
=15分=20分
0、37 0.35
5分=10分
4.3呂 4.08 盟:15分くく2⑪分 4,11 4,55
P・Ti危険率いくe・。・・1 ip == e.・5−e・。・1 いくe・。⑪エ、
MXT「鰍剃 i iP>。・・51 ip>e…s
P・M i危険率i ip<e・。・・lip・・e・⑪5−・・。・1 Ip−・・。5−o・・e・
(注)>>>:P〈O.⑪01, 〉>:P<O,el,〉:P〈0、05で有意の差があることを示し;:は有意の差がないこ とを示す。
各要函の交互作用は図3に示した通りである。マッシ轟ポテ}の硬さに及ぼすいもの加熱時間の影
響の仕方はいもの種類によっていちぢるしく異なっている(PxT)が,官能的に適当と思われる15
分前後の加熱でほぼ近似した数値をこ近づいて来ている。漿集性,ガム姓も硬さと同じく加熱時間の影
響の仕方はいもの種類によって異なるe弾力錐…に及ぼすマッシx時期の影響の仕方はいもの種類によ
っていちぢるしく異なっており(PXM).これは凝集控およびガム性においても同様である。一般
マシ=ツボテトのテクスチャー 一45一
にAの方がBよりもマッシュ時期の影響を受けにくい傾向にある。
j)いもの穂類と加熱時間(PXT>
硬さ PくO.001 }疑集1韮P=O.OJr−O.Ol
05101520
o。9
0,8
0.7
0.6
0.5
0.4
0 5 10 15 20 加 熱 時 間 (分〕
ii)いもの種類とマッシュ時期(PXM)
弾力性PくO,OOI
O.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
]]・・ iiiii
凝集性P=0.05−0』工
O.8
0.7
0.6
0.5
0.4
直後酬麦・壕一蔽
マッシュ時期 いもの種類 十:A −G−:B
ガム性 PくO.OO工 7・
6・
5 4 3 2
工
0
05ユ01520,
54321⑪ ガム性P=⑪.O「o−O.01
直接 60分接
図3 マvシュポテトのテクスチャー一いもの樋類,加熱時間,マ ッシュ時期の交互作用
沈降体積の測定結果を図4に,それを分散分析し蓑2に示したe沈降体積もマッシュポテト製造条 件によっていちぢるしく変動することが認められる。
主効果ではマッシュ時期および加熱時間に有意の差があり,加熱時間を長くした場合と冷却後マヅ シ した場合に沈降体積が大きくなっている。
交互作用では(P×M)に有意の差が認められ,沈降体積に対するマッシュ時期の影響の仕方はい もの種類によって異なることを意味し,Bの方がいちぢるしく変化するのに対してAはマッシュ時期 の影響を受けにくい。この傾向はマッシ=の弾力性,凝集性,ガム性の場合と同一である。
沈降体積の大きいことは沈降しにくいことを意味し,細胞が破壊されて内容物がより多く溶出して
いるものと考えられる。
一一
рU一 県立i新潟女子短期大学研究紀要 第13集 1976
120 沈
100 降
BO 休
t)曲
毛孟
40 伺 顕e
い も A
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, 5 10 十:1 筏マツン.z
−o−; 1;ut,}lfi ・?ツン:t
い も B
嘔 2e e 5 ユo I5 2{,
加 鮎 tl、穿澗 (分}
図4 油降体積1こ及ぼす加熱時間,マッシュ時 期,いもの種類の影響
表2 マッシュポテトの沈降体積 一平均値の比較と分散分析一
1項目i 沈 降 体 積
主
効
果
交 互 作 用
いもの種 類 (P)
訂寺期(M) マッソユ
加熱侍瞬 (T)
危険率[
髭均纏1 A = B
86.13 82.13
危険率1 P==O.05−0,01
髭均翻 直後く60分
78.OO 9⑪.31
危険率[ P<O. OO 1
灘駐識藷弩欝8
P・Tl危険率1
M>くT i危険率1 P>0,05
P・Ml危険率i P=0.05
表3 マッシュポテトのいもの種類,加熱時間,マッシュ時期と官能検査
51・31 ・1・3巨51 71 ・・1 21 生組織残存して生 奥あり
直 後
1。
・517i G 81司4・・51 816
A 2。i・ei 9i・6 i司3・・5 i・・1 5
粘りあるが,粉状 で食味良好
5}si 1 61…514・・51 6
60分後 ・・i6i O 61 2・・13
3i生組織残存
6i251鶴あるカ㍉餓
・5巨21 。Imi・。19・・sl z2i o 291・61 ・1・61 8 。i・6[ o
非常に粘り夫で粉 状ほとんどなし,
写 16 …51・6{ 1 6i・6 i 41 生組織残り舌にザ
ラoく
直 後
・。i 8{ 1 81⑪i8i 8{5
B 291・。1 ・1・・1 2 31・ei 7
昼 9巨5
・ei 7i 1
81 9・si引 4i。し5 t
8
6紛後
4
・5[・9i
5i生繍麟
gi・2i 8瞬嚇麟
5 1 2L 5 1 12 i ]L 5 1 粘bや中あり
2eI i41 ei・6 6 2・51;6 gl粘り大
マvシュポテトのテクスチャー 一47一
以上の実験結果に併行して行った官能検査の結果を表3に示した。硬さ,粘りの婦みの順位と総合 おいしさの好みの順位はWU 一一傾向を示し,プPフィールから粉状の程度の大なるものほど好まれてい る。60分後マッシュは粘性が強く好まれていない。これらの傾向はマッシ=のテクスチ学一および沈 降体積の測定結果とよく一致している。
2 顕微鏡によるマΨシュポテトの観察(実験2)
観察の結:果を写真に示した。長時間加熱により破壊される細胞が多くなり,不定形の内容物が多く 溶出しているe60分後マッシュのものは直後マッシ=のものよりこの傾向がいちぢるしくなってい
る。
この結果から加熱時間が長くなるとともにいもの細胞の機械的強度の低下が起り,マッシュにより 破壊され易くなり,とくに低温状態でマッシュした場合は,よりいちぢるしく破壊されるものと考え
られる。これらの細胞の形態がマッシュのテクスチャーに影響を与えるものであろう。
3 加熱後の放置時間がジャガいもおよびマvシュポテトのテクスチャーに及ぼす影響(実験3)
以上の実験から最も適当と思われる加熱時間を15分とし,その加熱直後の熱いいもをマッシュした ものと30分,1,2,4時間20℃の恒温で放置した後のいもをマッシaしたもののテクスチャーを 図5に示した。どのテクスチャー値もマッシュがいもより高く,とくに付着性,ガム性,そしゃく性 が高くなっている。20℃に放置したジャガいもの品温経過を図6に示したが30〜40分でほぼ気温まで 下り平衡となった。
できたマッシュポテトのプロフィールは表4の如くで,放置後マッシュしたものは粘り,弾性がで て好ましくなくなっている。
いもは放置されることにより,硬さ,凝集性,ガム性,そしゃく性(硬さ×凝集性×弾力性)が増 加している。とくにそしゃく性は固形食品をのみ込むことができるまでにかみ砕くに要するエネルギ ーであるから,この数値が大きいものほどマッシaしにくくなり無理にマッシュすることになる。そ の結果細胞の損傷破壊が起き,細胞内容物の流出により,できたマッシュに粘りと弾性を生ずるもの と考えられるeいもの品温経過と諸テクスチ+一値はその傾向が一致するものが多いことから,マッ シz時のいもの晶温が重要であり,温度が高いほど細胞がバラバラになり易く,その結果良いマッシ ュができるものと考えられる。
要
約
マッシュポテトのテクスチャーに及ぼす諸条件の影響をレオロメーターを用いて検討し下記の結果
をえた。
1) マッシュポテトのレオロメーターカー一ブでは脆さは示されないが,かなりの付着性,0・5〜α7 の凝集性,および弾力性を示した。マッシュポテトの諸テクスチャー・値はそれが対応する煮熟いもの テクスチャー値より大ぎい。
2)加熱時間を変えたt ll・ガいもから作ったマッシュポテトのテクスチャー値は変化が大きく,マ
・al置/c
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写真加熱時間およびマ 60分
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品 80
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40 30 20 10
マッシュポテトのテクスチャー −49一
硬さ 凝集性 弾力性
8 0.8 0.8 7 0.7 0.7 6 0.6 0.6 5 0.5 0.5 4 0.4 0.4 3 0.3 0.3 2 0.2 0.2
1 0L1 0.1
0 0
01234 01234 01234
付茨性 ガム性 そしゃく性 0.8 4 1.6
0.6 3 1.2 0.5 1.0 0.4 2 0。8 0.3 0.6 0.2 0.4 0。1 0.2 0 0
01234 01234 01234
放置時間(時間)
一◎・一ジャガいも 働●一マッシュポテト
図5 加熱後の放置時間がいもおよびマッシュポテトのテクスチャーに 及ぼす影響
表4 加熱後の放置時間がいもおよびマッシュポ テトのテクスチャーに及ぼす影響と官能検査
加熱後の放
置時間(分) プロフィール
0 サラサラとして粉状を呈し食味極めて 良好
30 少し粘りを有しもたっくが食味良好
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90