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Development of the Scale About a Sense That There Is No “Ibasho” at Home Mai H

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(1)

       

*茨 城 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科( 〒 310-8512  水 戸 市 文 京 2-1-1; Graduate School of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan) .

**茨城大学教育学部学校心理学研究室(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1; Laboratory of Psychology, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan) .

問題と目的

1.居場所とは何か

本来,居場所という言葉は物理的な「居る場所」を表すものであった。しかし,

1980

年代以降 から不登校やいじめ,非行などの社会問題を背景に居場所という概念が扱われるようになると,心 理的な意味で用いられたり,物理的なものと心理的なものの両面を表すものとして用いられたりす るようになった(則定,

2006

;石本,

2010a

)。しかしながら「居場所」の定義は研究者によって さまざまであり,「居場所」とは何かをはっきり述べるのは難しいのが現状である。例えば,学校 不適応対策調査研究協力者会議は「登校拒否(不登校)問題について ―児童生徒の『心の居場所』

づくりをめざして―」を報告し,「心の居場所」を「自己の存在感を実感し精神的に安心していら れる場所」であるとしている。そして,学校がその役割を果たすことを求めている(文部科学省国 立政策研究所,

2012

)。さらに,則定(

2008

)は「居場所」の中の心理的な側面を,物理的居場所 の有無と区別して考えることを明示するために「心理的居場所」という言葉を用いている。「心理 的居場所」は「心の拠り所となる関係性,および,安心感があり,ありのままの自分を受容される 場」と定義され,「心理的居場所がある」という感覚は「心理的居場所感」と名付けられた。この他,

石本(

2010b

)は教育臨床や心理臨床の領域での視点から「居場所」を捉え,「ありのままでいられる」

ということと「役に立っていると思える」という

2

つの感覚が心理学における居場所の中心的な内 容であるとしている。このように「居場所」の定義を一概に定めることは困難ではあるが,心理的 な側面に着目すると共通点も多く見られる。

また,居場所の中でも,家庭における居場所は特に重要であると考えられる。「家族のいる居場 所」はさまざまな心理的機能を安定して備えている居場所だと言うことが可能であり,児童期には

家庭に居場所がない感覚に関する尺度作成の試み

北條真衣

*

・丸山広人

**

(2020 年 8 月 31 日受理)

Development of the Scale About a Sense That There Is No “Ibasho” at Home

Mai H

OJO

* and Hiroto M

ARUYAMA

**

(Accepted August 31, 2020)

(2)

心理的安定の基礎になるとされる。思春期を迎えると親からの精神的な自立に伴い,すべてを満た してくれる安定した「家族のいる居場所」から離れ,それに代わる「居場所」を求めるようになっ ていくとされる(杉本・庄司

, 2006

)。しかし,家庭は帰りたいときに帰れる場所として必要とさ れる拠点であり(小野田・吉岡

, 2017

),家庭が主要な居場所でなくなったとしても,心理的安定 をもたらしてくれる重要な居場所でありつづける。以上より,本研究では居場所を心理的な意味を 含んだものとして扱い,居場所の中でも特に重要とされる「家庭」に着目し,「家庭における居場所」

に関して調査していきたいと考える。

2.これまでの居場所研究

居場所をテーマにした先行研究の中で,居場所はその性質により分類されることがある。例えば,

居場所を〈他者との関わり〉の視点によって,「社会的居場所」と「個人的居場所」に分類するも のがある。石本(

2010a

)が精神的健康との関連を通して個人的居場所と社会的居場所の違いにつ いて検討したところ,社会的居場所の確保は精神的健康と関連があるが,個人的居場所の確保は精 神的健康とほとんど関連がないことが明らかとなった。石本(

2010a

)の結果からは,居場所づく りや,居場所を通して精神的健康を考えていく際には,「関係性を育む」という視点を持ち,空間 を用意することだけにとどまらない居場所づくりを目指す必要があることが示唆された。

さらに,「居場所」の心理的機能の構造の解明を試みた研究がある。杉本・庄司(

2006

)は他者 の存在という視点から,居場所を「自分ひとりの居場所」「家族のいる居場所」「家族以外のいる居 場所」の

3

つに分類し,この

3

つの居場所の比較検討を行った。その結果,居場所の心理的機能は「被 受容感」「精神的安定」「行動の自由」「思考・内省」「自己肯定感」「他者からの自由」の

6

つであると 明らかになった。加えて,居場所によって心理的機能が異なり,それぞれの居場所が固有性を持つ ことが示された。中でも家族のいる居場所はさまざまな機能を備えた安定した場所であるとされた。

杉本・庄司(

2006

)は「居場所がない」子どもたちについて言及しており,彼らが居場所の心理 的機能を得られないという点において危機的であると述べている。

また,居場所に関する尺度も多く作成されており,その一つに「青年版心理的居場所感尺度」(則 定,

2007

)がある。則定(

2007

)は青年期の心理的居場所感に関して「安心感」「被受容感」「本来感」

「役割感」の

4

概念を仮定し,重要な他者として母親・父親・親友の三者について,それぞれ同一 の項目で別々に回答を求めた。その後,岡本・口田(

2013

)は,則定(

2007

)の青年版心理的居 場所感尺度は二者間の関係性における心理状態であるため,所属集団において自分の居場所がある と感じている程度を測定することを目的として,新たに居場所感尺度を作成している。この他,尺 度作成を主要な目的とせずとも,居場所研究では目的に応じてさまざまな独自の尺度が作られてい る。

3.居場所研究の問題点

居場所研究はさまざまな視点から行われているが,清水(

2012

)は「これまでの先行研究では,『居 場所とは何か』を調べることが『居場所があるとは何か』を調べることとイコールになる傾向があり,

『居場所がある』という点に焦点が当てられてきた」と述べ,「これまで『居場所』に関して様々な 研究がされてきたにも関わらず,実際に『居場所がない』と感じている個人には焦点が当てられて

(3)

こなかった」という問題を提示している。堤(

2002

)は「『居場所』の感覚は,ここが自分の『居場所』

だという肯定感覚よりは,むしろここは自分の居場所ではないという否定的意識を通してこそ実感 されている」と述べ,高橋・米川(

2008

)も同様に「日常生活では特に『居場所』は意識されず,

環境に対して違和感や疎外感を持ったとき初めて人は『居場所がない』と感じる」と述べている。

このように,「居場所がある」という視点のみによって居場所研究を行うことには限界があると考 えられる。そこで本研究では,「居場所がある」ではなく「居場所がない」感覚に着目して調査を 進めていきたいと考える。

4.本研究の目的

杉本・庄司(

2006

)が児童期には「家族のいる居場所」は心理的安定の基礎になると述べてい るように,子どもにとっては家庭における居場所が重要であるとされる。しかし,青年期の大学生 にとっても家庭は重要な居場所だと言えるのではないだろうか。アイデンティティの形成過程にあ る大学生は,「自分は何者なのか」と探求する中で自己に向き合い,自らの出自やこれまで育って きた環境を見つめ直すことになる。青年は自身の家庭環境や親子関係の在り方による多大な影響を 受けており,それを嫌でも意識することになるだろう。だからこそ,青年期の若者においても家庭 という居場所に関して調査することには意義があると考えられる。

さらに,堤(

2002

)はアイデンティティ確立が発達課題である青年期後期にあたる大学生を対 象に「居場所」がアイデンティティ確立とどのように関わっているのか検討し,その結果同一性混 乱の度合いの高さと居場所がないと感じる傾向の高さに有意な正の相関があることが明らかになっ ている。このことから,青年期の若者における「居場所がない」という感覚に焦点を当てることは 重要であると考えられる。

以上より,本研究では家庭における居場所に着目し,青年期の若者の「家庭に居場所がない感覚」

に関して調査を行いたいと考えている。青年期の若者が「家庭に居場所がない」と感じることは心 理的にどのような影響があるのだろうか。「家庭に居場所がない」と感じる青年は,どのようなプ ロセスを経てその状況を脱するのだろうか。これらのことを明らかにしたいと考えているが,現段 階ですべてを研究するのは困難である。そこで本研究では,まず「家庭に居場所がない感覚に関す る尺度」を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とする。

方 法

1.調査対象者

国立

A

大学に通う学生

231

名に調査を行った。その内,回答に明らかな不備がある

32

名を除き

199

名(男性

88

名,女性

111

名)の回答を有効とした。平均年齢は

19.64

歳(SD

=1.19

)であった。

2.調査期間・手続き

2019

10

月下旬から

11

月下旬に調査を実施した。調査は,集団講義の一部で質問紙を配布し,

その場で回収する形式をとった。教示の際,倫理的配慮として「調査は無記名であるため個人は特 定されないこと」「回答はすべてコンピューターで処理するため回答が外部に漏れることはないこ

(4)

と」「成績とは一切関係がないこと」「回答は強制ではないため途中でやめても構わないこと」を口 頭にて伝えた。教示から回収までを含め,回答にかかる時間は

10

分~

15

分程度であった。

3.調査内容

質問紙は,(

1

)フェイスシート,(

2

)家庭に居場所がない感覚に関する尺度の暫定項目,(

3

孤独感尺度,(

4

)自尊感情尺度,(

5

)共同体感覚尺度(所属感・信頼感)で構成され,表紙を含 めて合計

6

枚であった。内容は以下の通りである。

1

)フェイスシート

表紙において,年齢,性別(男・女),「きょうだいはいますか」(はい・いいえ),「現在,実家 で暮らしていますか」(はい・いいえ)の

4

項目について尋ねた。

2

)家庭に居場所がない感覚に関する尺度の暫定項目

家庭に居場所がない感覚に関する尺度を作成するにあたり,はじめに項目の作成を行った。「家 庭に居場所がない」と感じる要因について,先行研究や自身の経験,および事前に

Web

上で行った アンケートの回答内容から暫定的な項目を作成し,ゼミ内で検討した。項目には,「家に自分がい なくても良いと感じる」などの心理的な側面と,「家に経済的余裕がない」などの物理的な側面の 両方が含まれる。

50

項目の質問に対し,「あてはまる」

4

点),「ややあてはまる」

3

点),「あまり あてはまらない」

2

点),「あてはまらない」の

4

件法で回答を求めた。

3

)孤独感尺度

「家庭に居場所がない」と感じることと孤独感との関連を調査するため,孤独感尺度を用いた。

工藤・西川(

1983

)が作成した

Russell, Peplau & Cutrona

1980

)の改訂版

UCLA

孤独感尺度の邦 訳版(信頼性・妥当性が十分確認されている)を使用した。この尺度は,反応バイアスを避けるた めに尺度項目の表現内容をポジティブとネガティブの各

10

項目をこみにして無作為に配列し,社 会的関係での満足感と不満足感がそれぞれに反映されるように構成されている。

20

項目の質問に対し,本来は,「しばしば感じる」

4

点),「時々感じる」

3

点),「めったに感じない」

2

点),「決して感じない」

1

点)の

4

件法であったが,より分かりやすい表現にするため,「はい」

4

点),「どちらかといえばはい」

3

点),「どちらかといえばいいえ」

2

点),「いいえ」

1

点)で回 答を求めることとした。

孤独感尺度は,家庭に居場所がない感覚に関する尺度との正の相関が予想される。

4

)自尊感情尺度

家庭に居場所がない感覚と自尊感情との関連を検討するため,自尊感情尺度を用いた。調査には,

桜井(

2000

)が作成したローゼンバーグ自尊感情尺度日本語版(信頼性・妥当性が十分確認され ている)を使用した。自尊感情には

2

つの側面があり,一つは,個人が自分は「とてもよい(

very good

)」と感じる側面であり,もう一つは,自分は「これでよい(

good enough

)」と感じる側面で あるという。

Rosenberg

1965

)は自らの尺度作成をするにあたり,前者の他人に対する「自信」

や「優越感」を意味するような自尊感情ではなく,後者の「自己受容」を意味するような自尊感情

(5)

を対象にしている。本研究で使用する自尊感情尺度も同様に,自己受容的側面を反映している。

自尊感情尺度は

10

項目で構成されており,逆転項目が半数(

5

項目)含まれている。「はい」(

4

点),「どちらかといえばはい」

3

点),「どちらかといえばいいえ」

2

点),「いいえ」

1

点)の

4

法で回答を求めた。

自尊感情尺度は,家庭に居場所がない感覚に関する尺度との負の相関を示すことが予想される。

5

)共同体感覚尺度(所属感・信頼感)

髙坂(

2011

)が作成した共同体感覚尺度の,「所属感・信頼感」に関する項目を使用している。

共同体感覚とは,野田(

1998

)によると「『私は共同体の一員だ』という感覚」である「所属感」,「『共 同体は私のために役に立ってくれるんだ』という感覚」である「信頼感」,「『私は共同体のために 役立つことができる』という感覚」である「貢献感」,そして「『私は私のことが好きだ』ということ」

である「自己受容」の

4

つの側面によって構成されている感覚である。髙坂(

2011

)は,野田(

1998

4

側面を用いて,共同体感覚尺度を作成した。尺度作成にあたり因子分析を行った結果,「信頼 感」の項目と「所属感」の項目が一つの因子に集まっており,

3

因子構造が妥当であると判断された。

そして,この因子の内容は,「現在所属している集団やその成員を信頼できている感覚,または信 頼できる集団に所属できている感覚」であると考えられるため,「所属感・信頼感」と命名された。

本研究では,「家庭に居場所がない」感覚が集団に対する所属感や信頼感と関連があるのかについ て検討するため,髙坂による「所属感・信頼感」因子の項目を使用した。「所属感・信頼感」因子

11

項目構成であったが,因子負荷量が

.50

を超えている

10

項目を採用した。

この

10

項目に対し,「とてもあてはまる」

5

点),「ややあてはまる」

4

点),「どちらともいえない」

3

点),「あまりあてはまらない」

2

点),「まったくあてはまらない」

1

点)の

5

件法で回答を求めた。

共同体感覚尺度の「所属感・信頼感」に関する項目は,家庭に居場所がない感覚に関する尺度と の負の相関が予想される。

結 果

1.家庭に居場所がない感覚に関する尺度の検討

作成された家庭に居場所がない感覚に関する尺度暫定項目の項目分析と因子分析を行った。暫定 項目の合計得点の平均とSDを表

1

に示す。集計にあたり,フェイスシートの「きょうだいはいますか」

の質問に「いいえ」と答えた人に関して,「

38.

親は他のきょうだいをかわいがる」「

43.

きょうだい とあまり仲が良くない」の

2

項目は,回答の内容にかかわらず欠損値として扱い,合計点を出す際 には平均値を代入した。また,「

16.

一人部屋がない」の項目に関して記すべきことがある。この 項目は,一人部屋が「ある」か「ない」かの

2

択で答える質問になっており,

4

件法で回答を求め るのは不適切であったと判断した。そのため,分析を行う前に当項目を削除することにした。しかし,

一人部屋の有無によって「家庭に居場所がない」感覚に違いが出ることも考えられたため,当項目 は「一人部屋はありますか」という質問に置き換える判断をした。「

16

.一人部屋がない」の項目 に「①あてはまらない」もしくは「②あまりあてはまらない」で回答したものは「一人部屋がある」,

「④あてはまる」もしくは「③ややあてはまる」で回答したものは「一人部屋がない」とそれぞれ

(6)

回答したものとして扱った。この時点で,項目数は

50

項目から

1

項目を抜いた計

49

項目となった。

逆転項目の処理は集計の際に同時に行い,例えば「あてはまる」を

1

点,というように処理した。

その処理を行った後,家庭に居場所がない感覚に関する尺度の項目分析を行った。平均の最低値 は「

48.

家族とあいさつをしない」の

1.40

であり,最高値は「

44.

定期的に家族旅行に行く」の

2.84

であった。フロア効果・天井効果を確認したところ,平均値-

1SD

1

以上の項目は

15

項目に限 られ,

49

項目中の

34

項目にはフロア効果が見られた。これは本尺度にあてはまる人が少数である ために引き起こされた結果である。本尺度は「家庭に居場所がない」と感じる人を抽出することを 目的としていることから,あえてフロア効果の見られる項目を残したまま分析を行うこととした。

次に,家庭に居場所がない感覚に関する尺度の暫定

49

項目に対して,因子分析を行った。主因 子法により

10

因子が抽出されたが,初期の固有値の変化によって

4

因子構造を仮定した。続けて 主因子法・

Promax

回転による因子分析を行い,因子負荷量が

.35

に満たない項目,および複数の 因子に同程度に負荷する項目を基準に削除した。しかし,項目の削除と因子分析を繰り返すうち に,第

4

因子の負荷量が大きい項目が

4

項目のみとなってしまった。その時の第

1

因子・第

2

因子・

3

因子の

Cronbach

のα係数はそれぞれ

.80

以上で十分な内的整合性が認められたことに対し,第

4

因子は

.70

を切っていたため,内的整合性が十分であるとは言えなかった。

以上の結果から,

3

因子構造を仮定して再度因子分析を行った。その際,項目数が多いため削除 の基準を因子負荷量

.50

未満の項目に改めた。最終的に

23

項目を削除し,

26

項目を残した。

26

目の中には因子負荷量が

.50

未満の項目も含まれているがいずれも

.40

を超えており,採用するに は十分な値であると判断した。以上より,家庭に居場所がない感覚に関する尺度は

26

項目,

3

子構造が妥当であるとされた(表

2

)。

1 各尺度における合計得点の平均およびSD

平均

SD

最小値 最大値 暫定項目(49項目)

89.12 23.56 49 158

孤独感(20項目)

36.50 10.54 20 78

自尊感情(10項目)

25.41 6.20 10 40

共同体感覚(10項目)

36.17 8.54 10 50

家庭に居場所がない感覚(26項目)

45.99 13.27 26 84

家庭環境・家族関係の悪さ(11項目)

20.50 6.63 11 41

家族関係の稀薄さ(9項目)

15.90 5.02 9 31

家への嫌悪感(6項目)

9.65 3.66 6 23

(7)

1

因子は

11

項目で構成され,

28.

家に経済的余裕がない」

3.

親は私にすがりついてくる」

26.

親と祖父母の中が悪い」などの項目に対して負荷量が高かったため,「家庭環境・家族関係の悪さ」

に関する因子と命名した。第

2

因子は

9

項目で構成され,「親と話をしない」「家族は自分を必要と

2 家庭に居場所がない感覚に関する尺度の因子分析結果(主因子法・Promax回転)

家庭に居場所がない感覚に関する尺度(26項目)

1

因子 家庭環境・家族関係の悪さ(11項目) α=.866

28.

家に経済的余裕がない。

.710 -.005 -.111 11.

親は私に侵入的だ。

.648 -.122 .060

3.

親は私にすがりついてくる。

.635 -.174 .016

26.

親と祖父母の仲が悪い。

.609 -.259 .149 25.

親は怒りっぽい。

.602 .109 -.089 19.

親は私を否定することが多い。

.581 .216 -.039

7.

他人の家庭がうらやましく感じる。

.530 .127 .108

10.

親は私が困っている時に助けてくれない。

.527 .144 .103

8.

親を頼れない。

.494 .262 .076

39.

親のことを尊敬している。(R)

.492 .190 .020 33.

両親の仲が悪い。

.410 .041 .094

2

因子 家族関係の希薄さ(9項目) α=.835      

18.

親と話をしない。

-.222 .817 .084 32.

親と連絡を取らない。

-.100 .643 .110 35.

家族は自分を必要としてくれる。(R)

.153 .641 -.207

5.

家にいても孤独だ。

-.096 .619 .250

30.

家族と共通の話題がない。

.166 .598 .039

1.

家に自分がいなくても良いと感じる。

.171 .588 -.205

36.

親に愛されていると実感する。(R)

.227 .553 -.121 48.

家族とあいさつをしない。

-.184 .547 .219 13.

家では食事を別々にとることが多い。

-.099 .434 -.021

3

因子 家に対する嫌悪感(6項目) α=.871      

22.

家に落ち着ける場所がない。

.050 -.092 .835 42.

家に帰るのが苦痛だ。

-.104 .076 .823 40.

家では自由に過ごせない。

.088 -.054 .637 21.

自分の家が好きになれない。

.342 .032 .542 14.

家に居場所がないと感じる。

-.001 .311 .516 23.

家では自分のプライバシーが守られない。

.407 -.152 .484

因子間相関

1

因子

2

因子

3

因子

1

因子:家庭環境・家族関係の悪さ

-   .628 .630

2

因子:家族関係の希薄さ

- .572

3

因子:家に対する嫌悪感  

-

※(R)は逆転項目を表す。

(8)

してくれる(

R

)」「家に居ても孤独だ」などの項目に対して負荷量が高かったため,「家族関係の希 薄さ」に関する因子と命名した。そして第

3

因子は

6

項目で構成され,「家に落ち着ける場所がない」

「家に帰るのが苦痛だ」「自分の家が好きになれない」などの項目に対して負荷量が高かったため,「家 に対する嫌悪感」に関する因子と命名した。因子間相関は,第

1

因子と第

2

因子の間で

.628

,第

1

因子と第

3

因子の間で

.630

,第

2

因子と第

3

因子の間で

.572

を示した。

尺度の信頼性を検討するために,家庭に居場所がない感覚に関する尺度の下位尺度別に

Cronbach

のα係数を算出した結果,各因子のα係数は,第

1

因子では

.866

,第

2

因子では

.835

,第

3

因子

では

.871

であった。これより,第

1

因子,第

2

因子,第

3

因子それぞれに十分な内的整合性が確

認された。

2.家庭に居場所がない感覚に関する尺度と各尺度との関連

家庭に居場所がない感覚に関する尺度の妥当性を検討するため,「孤独感尺度」「自尊感情尺度」「共 同体感覚尺度(所属感・信頼感)」それぞれとの相関係数を算出した(表

3

)。

1

)孤独感尺度との関連

3

の通り,家庭に居場所がない感覚に関する尺度の合計得点と孤独感尺度得点との間には,中 程度の有意な正の相関が得られた(r

= .545, p < .001

)。さらに,それぞれの下位尺度得点との間に も有意な正の相関が得られた。下位尺度の中では,第

2

因子の「家族関係の希薄さ」との相関が最 も強く表れた(r

= .542, p < .001

)。

2

)自尊感情尺度との関連

3

に示すように,自尊感情と家庭に居場所がない感覚に関する尺度の合計得点との間に中程度 の有意な負の相関が得られ(r

= -.405, p < .001

),各下位尺度との間にも,弱程度の有意な負の相 関が得られた。下位尺度の中では第

2

因子「家族関係の希薄さ」に最も強い負の相関が得られ(r

= -.388, p < .001

),第

3

因子「家に対する嫌悪感」において最も弱い負の相関が得られた(r

= -.264, p < .001

)。

家庭に居場所が ない感覚

1

因子

2

因子

3

因子 家庭環境・

家族関係の悪さ

家族関係の 希薄さ

家に対する 嫌悪感

孤独感

.545*** .421*** .542*** .453***

自尊感情

-.405*** -.351*** -.388*** -.264***

共同体感覚

-.404*** -.300*** -.415*** -.345***

***p < .001

3 家庭に居場所がない感覚に関する尺度および下位尺度と各尺度との相関分析結果

(9)

3

)共同体感覚尺度との関連

共同体感覚尺度の「所属感・信頼感」因子得点もまた,家庭に居場所がない感覚に関する尺度得 点との間に中程度の有意な負の相関が得られた(r

= -.404, p < .001

)。各下位尺度との間にも,有 意な弱い負の相関が算出された。下位尺度同士で比較すると,第

1

因子はr

= -.300

,第

3

因子はr

=

-.345

であるのに対し第

2

因子はr

= -.415

であったことから,「所属感・信頼感」因子は第

2

因子「家

族関係の希薄さ」との間に最も強い負の相関があることが確認された。

3.差の検討

家庭に居場所がない感覚に関する尺度における,男女差,きょうだいの有無による差,実家暮ら しか否かによる差,一人部屋の有無による差,そして家庭に居場所がない感覚に関する尺度の高群・

低群における差について検討したい。分析はすべて

t

検定によって行われた。

1

)男女差

性別によって家庭に居場所がない感覚に差があるのかついて

t

検定を行ったところ,有意差は見 られなかった(t

(197) = -.67, p = .505

)。同様に,下位尺度においても有意差は見られなかった。

2

)きょうだいの有無による差

きょうだいがいるか,いないかによって家庭に居場所がない感覚に差があるかについて

t

検定を 行ったところ,男女差と同様に有意差は見られなかった(t

(197) = .26, p = .797

)。下位尺度におい ても有意差はなかった。

3

)実家暮らしか否かによる差

実家暮らしか否か別の平均値とSD,および

t

検定の結果を表

4

に示す。現在実家で暮らしている か,暮らしていないかによって家庭に居場所がない感覚に差があるのか検討したところ,有意差は ないものの,実家で暮らしている人の方がその他よりも「家庭に居場所がない」と感じる傾向があ ることが読み取れた(t

(197) = 1.81, p = .072

)。加えて,下位尺度のうち,第

1

因子「家庭環境・

家族関係の悪さ」には,有意な差が見られ(t

(197) = 2.12, p = .035

),実家暮らしの人の方がより「家 庭環境・家族関係の悪さ」を感じることが明らかとなった。

実家

(N = 97)

その他

(N = 102 )

t値

有意確率 平均

SD

平均

SD

(両側)

家庭に居場所がない感覚

47.72 12.91 44.34 13.45 1.81 .072

家庭環境・家族関係の悪さ

21.51 6.48 19.51 6.76 2.12* .035

家族関係の希薄さ

16.22 4.77 15.67 5.27 .77 .442

家に対する嫌悪感

10.00 3.58 9.17 3.65 1.62 .106

*p < .05

4 実家暮らしか否か別の平均点とSD,およびt検定の結果

(10)

4

)一人部屋の有無による差

一人部屋の有無によって家庭に居場所がない感覚に差があるのか検討したところ,有意差は見ら れなかった(t

(197) = -.94, p = .350

)。同様に,下位尺度のいずれにおいても有意差はなかった。

5

)家庭に居場所がない感覚に関する尺度高群・低群における差

家庭に居場所がない感覚に関する尺度

26

項目の平均得点は

45.99

であったため,

47

点以上を 高群,

46

点以下を低群に群分けし,高群・低群によって「孤独感尺度」「自尊感情尺度」「共同体感 覚尺度(所属感・信頼感)」に差があるか検討した。高群・低群それぞれの平均値とSD,および

t

検定の結果を表

5

に示す。その結果,孤独感は高群が低群よりも有意に高く(t

(197) = 6.97, p <

.001

),自尊感情は高群が低群よりも有意に低く(t

(197) = 4.40, p < .001

),所属感・信頼感は高群 が低群よりも有意に低いことが示された(t

(197) = 4.94, p < .001

)。

考 察

1.家庭に居場所がない感覚に関する尺度の特徴

本研究は,家庭に居場所がない感覚に関する尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討すること が目的であった。因子分析結果より,本尺度は「家庭環境・家族関係の悪さ」「家族関係の希薄さ」「家 に対する嫌悪感」の

3

つの要素から「家庭に居場所がない感覚」を測定することが明らかとなった。

さらに,本尺度の信頼性を検討するために下位尺度得点について

Cronbach

のα係数を算出した結 果,

3

因子すべてにおいて高い数値が得られ,内的一貫性の観点における信頼性は十分であること が確認された。本尺度の妥当性を検討するため孤独感尺度,自尊感情尺度,共同体感覚尺度の所属 感・信頼感に関する項目との相関分析を行ったところ,それぞれ予想通りの結果が得られ,本尺度 の妥当性も確認された。

孤独感と家庭に居場所がない感覚との間に正の相関が見られたことから,家庭において居場所が ないと感じることと,社会において孤独を感じることには関連があることが明らかとなった。工藤・

西川(

1983

)が孤独感尺度作成の際に実験協力者とその家族との愛情関係を分析したところ,「孤 独感の強い人はそれの弱い人に比べて,父母との関係を不愉快で疎遠な冷たいものと考えており,

両親に不信感をいだき,自分をつき離された存在としてとらえる傾向がみられる」ことを明らかに している。本研究において,孤独感と第

2

因子との間に最も強い相関が見られたことからも,家庭

高群

(N = 91)

低群

(N = 108)

t値

有意確率 平均

SD

平均

SD

(両側)

孤独感尺度

41.55 10.61 32.03 8.60 6.97*** .000

自尊感情尺度

23.43 5.92 27.19 6.05 4.40*** .000

共同体感覚尺度(所属感・信頼感)

33.26 8.61 38.95 7.62 4.94*** .000

***p < .001

5 家庭に居場所がない感覚高群・低群別の平均点とSD,およびt検定の結果

(11)

に居場所がない感覚の構成概念の中でも「家族との関係が希薄であること」が社会関係における孤 独感と最も関連することが示唆された。

さらに,自尊感情と家庭に居場所がない感覚との間に有意な負の相関が算出されたことから,家 庭に居場所がないと感じることと自尊感情の低さ,ひいては自己受容の困難さとの間に関連がある ことが示唆された。下位尺度の中では第

3

因子が自尊感情尺度と最も弱い相関であったことから,

自尊感情と関連するのは家に対するネガティブイメージよりも,むしろ家族との関わりであると考 えられる。家族との関係が悪い人や家族と疎遠である人は,そうでない人よりも自尊感情が低く,

ありのままの自分を受け容れることができない傾向にあると言えるだろう。一方で,家族との良好 な関わりがあることが自尊感情を高めることや自己受容のしやすさと関連することも推察される。

加えて,共同体感覚尺度の所属感・信頼感に関する項目は本尺度と有意な負の相関を示したこと から,家庭に居場所がない感覚が強いことと,集団においてそこに所属できていると感じられない ことや,集団の中の他者を信頼できないこととの間には関連があると考えられる。さらに,第

2

子との相関が最も強かったという結果から,家に自分がいる必要がないと感じるような人は家庭以 外の集団においても他者との交流に困難を感じる傾向があると推察される。

2.家庭に居場所がない感覚における関係性の影響

t

検定によって差の検討を行った結果,性別,きょうだいの有無,一人部屋の有無による有意差 は見られなかったが,現在実家で暮らしている人はそうでない人よりも家庭に居場所がない感覚に 関する尺度得点が高くなる傾向が見られた。下位尺度においては,第

1

因子「家庭環境・家族関係 の悪さ」に関する因子の得点が有意に高かった。実家暮らしの人は,それ以外の人と比べて家族と 接する時間が長いため,家族や家庭に関する嫌な部分が目に付きやすく,不満を感じやすくなると 考えられる。一方で実家から離れて生活している人は,家族と常に共同生活をしているわけではな いため,家庭環境や家族関係の悪さを感じる機会が相対的に少なくなると予測される。物理的に離 れて生活することで,それまで気にしていた家族の嫌な部分が気にならなくなったり,むしろ家族 のありがたさを実感したりする人もいると考えられる。

性差に関して,本研究では有意差は見られなかった。先行研究では中学生において家族に対する 居場所感は女子の方が男子より高いという結果や(小野田・吉岡

, 2017

),青年期において母親と 親友に対する心理的居場所感は女性の方が有意に高いといった結果(光本・岡本

, 2010

)が得られ ていた。しかしこれらはいずれも「居場所がある」という立場からの研究であるため,本研究との 単純な比較はできないだろう。本研究では対家族や対母親,親友といった特定の他者を想定してお らず,家族関係や家庭環境・物理的側面などをすべて包含した意味での「家庭」という居場所につ いての調査であったため,性差が反映されにくかったとも考えられる。本研究の結果からは家庭に 居場所がないと感じることには性別による差があるとはいえないことが示された。

きょうだいの有無に関しては,きょうだいがいる人の方が親の関心が分散されて寂しさを感じた り,家における物理的に落ち着ける場所や時間が少なかったりすることによって家庭に居場所のな さを感じるのではないかと予想されたが,有意差は得られなかった。その理由として,家庭におけ るきょうだいの存在はマイナスだけでなくプラスの面も持ち合わせていることが考えられる。たと え両親との折り合いが悪かったとしても,きょうだい仲が良ければ結果として居場所のなさを感じ

(12)

にくいこともあるだろう。この結果から,単純にきょうだいがいるかいないかによって家庭に居場 所がない感覚に差が生じるとはいえず,きょうだいとの関係性によって結果が変化する可能性が示 唆された。しかし,本研究はきょうだいのいる人(N

= 175

)といない人(N

= 24

)のデータ数に 偏りがあったため,正確な結果が得られていない可能性も残っている。

一人部屋の有無に関して,一人部屋を持たない人は個人の物理的居場所が確保されていないため に,より居場所のなさを感じやすいのではないかと予想されたが,有意差はなかった。この結果か ら,家庭において居場所のなさを感じるか否かは,物理的に自分が居られる場所があるかどうかよ りもむしろ,家族との疎遠さなどによる心理的な居場所のなさによって左右され得ることが示唆さ れた。加えて,きょうだいの有無による差と同様に,一人部屋がある人(N

= 150

)とない人(N

= 49

)のデータ数の偏りも要因として考えられる。

相関分析および

t

検定の結果より,青年期の若者における家庭に居場所がない感覚の高さ・低さ は,物理的な要因よりも,本人が家族とどのような関係性を築いているか,どの程度関わりを持っ ているかとの強い関連があることが明らかとなった。家庭における居場所のなさを低減させるため には,石本(

2010a

)も述べるように,関係性を育むという視点が必要になることが示唆された。

3.本研究の意義

本研究では,これまで研究されていなかった青年期における「家庭に居場所がない感覚」に関し て調査を行った。結果として,青年期の大学生が「家庭に居場所がない」と感じることは,自身の 孤独感の高さや自尊感情の低さ,集団における所属感や信頼感の低さといった内的な面と強く関連 していることが示された。思春期を迎えると親からの精神的な自立に伴い,すべてを満たしてくれ る安定した「家族のいる居場所」から離れ,それに代わる「居場所」を求めるようになっていくと される(杉本・庄司

, 2006

)。しかし本研究の結果からは,青年期においても家庭の居場所は重要 であり,家庭に居場所がないことは心理的に多大な負の影響を及ぼすことが示された。

また,本研究において作成された「家庭に居場所がない感覚に関する尺度」の平均得点は顕著に 低い方に偏っていたが,本尺度に高得点を示す人が存在することも事実である。家庭に居場所がな いと感じている若者がいることを知り,そのような人たちが抱える悩みや葛藤に目を向けていくこ とが必要であると考えられる。本研究の結果から,青年期に起こり得るさまざまな問題を考える際 には,その背景に家庭における居場所のなさがある可能性も視野に入れておくべきことが示唆され た。

4.今後の課題

本研究では「家庭に居場所がない」感覚が強いから孤独感が高まるといった因果関係については 言及することができない。それらが双方向的に関連し合っているのか,原因と結果の関係となって いるのかについては,今後の研究において検討すべき課題である。

さらに,本研究の問題点として調査対象者の性質の偏りが挙げられる。本研究の対象者は大学生 に限られていたが,大学生の家庭は比較的経済的困窮の度合いも低く,家庭の荒れ具合も少ないと 予測される。そのため,同年代である専門学生や社会人まで目を向けていくことが求められるだろ う。さらに,本研究では同じく青年期にあたる中学生や高校生の年代を反映できていない。大学生

(13)

よりもむしろ,親に依存しなければ生きていけない中学生や高校生の方が「家庭に居場所がない」

と感じ,悩むことがあると予想される。今後の研究では,広く青年期の性質を反映するために,大 学生以外にも調査を実施することが必要だと考えられる。

本研究において,家庭に居場所がない感覚に関する尺度を作成したが,本尺度は「家庭に居場所 がない」と感じる人を抽出するための使用に留まる。本研究の目的において述べたが,今後の展望 として,本尺度によって抽出された「家庭に居場所がない」と感じる若者たちが,どのようなプロ セスを経てその状況を脱するのか,そのための要因について明らかにしたいと考えている。

引用文献

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286.

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入手).

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2001).

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34.

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