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中国における企業保険需要に関する 実証研究

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(1)

中国における企業保険需要に関する 実証研究

陳 大 為

■アブストラクト

本研究では,中国における企業保険需要の決定要因について,2011年の中 国の上海株式市場における上場企業(金融企業を除く)を対象として実証的 に検討している。その結果,第1に,企業が支払った保険料は企業資産の増 大にともなって増加しているが,1単位の付保できる資産に掛ける保険料は 逆に減少していることが確認された。第2に,中国において,国有企業の保 険需要は強いことが確認された。第3に,中国において,倒産リスクが高い 企業の保険需要は強くなっている。他方,将来性の高い企業は安定的な発展 を確保するため,保険需要をより強くしていることが分かった。第4に,固 定税率であれば租税は企業保険需要に影響を与えないことがわかった。第5 に,コーポレート・ガバナンスは企業保険需要に影響していることが確認さ れた。さらに,監査役より社外独立役員のほうが企業保険需要の促進に貢献 していることが分かった。

■キーワード

中国損保市場,企業保険,保険需要

1.はじめに

近年,中国の損害保険市場は大きく成長してきた。図1が示すように,中

*平成25年2月16日の日本保険学会関西部会報告による。

/平成25年6月24日原稿受領。

(2)

国における損害保険総収保は2000年の598.39億元から2009年の2875.83億元 までに,約4.8倍に上がった。一方,損保総収保の急増に対して,企業保険 収保の増加スピードはそれほどではない。また図1によれば,企業保険収保 は2000年の117.16億元から2009年の221.43億元までに増え,1.89倍しか上が らなかった。

さらに,図2を見れば,2000年から2009年までの10年間において,中国損 害保険総収保は毎年10%以上の伸びを見せており,最も高い年には30%以上 に達していることが分かる。一方,企業保険収保について,10%の伸び率を 超えた年は2007年及び2008年しかない。特に,2002年の伸び率は0%に近づ いている。また,この10年間の平均伸び率は,損害保険総収保の18.70%に 対して,企業保険収保は6.68%にしか達していない。

図1. 2000〜2009年中国における損害保険総収保及び企業保険収保の推移

2001年〜2010年中国保険年鑑により作成

(3)

確かに,近年自動車販売の好調にともなって自動車保険市場も大きく伸び てきたのが,中国損害保険市場の拡大の主因と考えられる。しかし,図3に よれば,2000年から2009年までの中国において,企業保険収保の伸び率は工 業総生産の伸び率を下回っている。明らかに,中国工業総生産の急成長に対 して,企業保険の伸び率は遅くなっている。

図2. 2000〜2009年中国における損害保険総収保及び 企業保険収保の伸び率の推移

2001年〜2010年中国保険年鑑により作成

図表が入らないためアキを作成しています

(4)

言うまでもなく,企業にとって,火災,台風や地震などの災害に直面して いる固定資産の価値を保全するのに保険は不可欠な手段である。さらに,企 業の生産活動にともない,様々な損害の発生は不可避である。それらの損害 を補償するのに保険はもっとも重要な役割を果たす。しかし,中国における 工業発展のスピードに対して,企業保険の伸びは遅くなっている。したがっ て,企業にかかわる損害を有効に補償できるのか懸念がある。こうした現状 を考えれば,中国における企業保険需要の伸びを阻害している要因を検討す ることは非常に重要である。本稿では,この問題点を踏まえ,まず中国損害 保険および企業保険市場を調査し,その立ち遅れの原因を考察する。そのう えで,先行研究に基づいて中国における企業保険需要の決定要因を調べるた め,実証研究を行う。

本稿の構成は以下のとおりである。第2章では,中国の損害保険および企 業保険市場の概要を検討する。第3章では,企業保険需要に関する先行研究 を議論する。第4章では分析方法およびデータについて説明した上で実証モ デルと実証分析の結果を紹介するとともに,その解釈を試みる。最後に,第

図3. 2000〜2009年中国における工業総生産及び 企業保険収保の伸び率の推移

2001年〜2010年中国統計年鑑および中国保険年鑑により作成

(5)

5章では本研究から得られた結論と今後の課題について述べる。

2.中国の損害保険市場および企業保険市場の概要

2.1. 中国損害保険市場の概要

2009年に中国では,34社の国内損害保険会社と18社の外資系損害保険会社 の52の損害保険会社が営業していた。2009年時点の中国における損害保険業 の総資産は4,893億元であり,前年度末に比べ4.3%上昇した。また,損害保 険収入保険料は2,876億元まで上昇し,前年度末に比べ23%上昇した。

一方,図4が示すように,2009年の自動車保険収入保険料は損害保険総収 保全体の約4分の3を占めている。したがって,自動車保険は中国の損害保 険の最も主要な種目となっていることが分かる。すなわち,中国において自 動車保険以外の損害保険種目の発展は自動車保険ほど著しくなく,中国損害 保険業における各保険種目の発展段階に大きなばらつきがみられることが分 かる。

中国保険年鑑2010により作成 図4. 2009年中国における損害保険収入保険料の保険種目別構成比

(6)

2.2. 中国企業保険市場の概要

図5によれば,中国において企業保険収保の割合は2000年の約19%から 2009年の約7%までに落ちている。たしかに,近年自動車保険収保の大きな 増加は企業保険収保の割合の低減に導く。しかし一方,企業保険収保の伸び 率はより低いのが事実である。2000〜2009年の10年間の中国において,工業 総生産の平均伸び率は22.73%に達した一方,企業保険収保の平均伸び率は 6.68%にしか過ぎなかった。この状況の原因に関して,需要と供給の2つの 面から考察できる。

まず,需要サイドである一般企業はリスクに対する認識を深める必要があ る。中国において,国民はリスクと保険を認識する際には,保険の経済合理 性を理解せず,日本社会における 掛け捨て嫌い という指摘が同様に存在 する。このような考えを背景にすれば,おそらく企業管理者もリスクへの認 識があまくなってしまうだろう。たとえば,2007年中国公安消防部が行った 全国火災危険検査活動は,約120万の店舗のなか,合格したのが5万に過ぎ

図5. 2000〜2009年中国の損害保険総収保における 企業保険収保の割合の推移

2001年〜2010年中国保険年鑑により作成

(7)

ず,休業整頓の約2.2万,約1.7万は営業資格が取り消された。さらに,中小 企業だけではなく,国有企業などの大企業もリスクへの認識が不足している。

たとえば, 中国保険報(2013年1月28日) によれば,2011年に勃発したリ ビア戦争は中国企業に巨大な損失を与えた。13社の国有企業を含めて,約75 社の中国企業は約188億米ドルを損失した。しかし一方,保険会社による保 険金は7億米ドルに達していない。実際,2010年までに,中国の直接海外投 資額は約3047.5億米ドルであるが,保険に掛けた資産は173億米ドルしかな い。明らかに,中国経済が急速に発展している一方,多様化している企業リ スクへの対応は不十分である。

一方,供給サイドの損害保険企業はより短期の利益を追求しており,企業 保険業務の推進は不足している。図4を見れば,2009年の損保総収保におけ る自動車保険の割合は75%に達した一方,企業保険は8%しか過ぎなかった。

中国損保市場のアンバランスは明らかである。中国において,損保企業は短 期の市場シェアを狙うために,自動車保険業務に集中し,ほかの保険種目を 軽視し,現在の状況を導く。さらに,企業保険商品も少なく,新商品の創造 能力も足りず,企業の発展に追いつかない。実際,中国に進出した東京海上 日動,三井住友,損保ジャパンおよび日本興亜の4社は,営業中断保険商品 を提供している一方,中国損保企業はこの商品を提供していないである。

3.企業保険需要に影響する要因

3.1. 企業規模

企業規模が保険需要に与える影響について,2つの可能性が指摘されてい る。まず,大規模企業に比べて小規模企業のリスクの対処・分散能力が不足 するため,保険需要は強くなる。一方,エージェンシーコストは反対の役割 がある。なぜなら,大規模企業はより複雑な構造をもっており,利害関係者 は企業管理を十分に監視できないため,保険需要に正の影響を与えるからで ある。例えば,O

̀ Sullivan

(1997)によると,イギリスにおいて大規模企業 は小規模企業より多くの保険を購入している。

(8)

3.2. 規制

Mayers and Smith

(1982)および

Edwards

(1977)は被規制企業の保 険需要がより強くなっていることを示している。なぜなら,市場からの競争 圧力がより弱いので被規制企業が豊富な資金をもっているからである。一方,

Grillet

(1992)によれば,もし規制機構に厳しく監督されておれば,被規制 企業の倒産リスクが軽減されるために,被規制企業の保険需要が弱くなって いる可能性がある。

3.3. 租税

会社が保険を購入するのに,税制に関わる動機付けはいくつがある。まず,

保険料の支払いは課税所得から控除できるため,企業の税金負担を軽減する。

一方,自家保険の場合,損失が発生した場合にしか所得から控除できない。

したがって,保険の購入が会社の期待租税債務の軽減に導く可能性がある。

3.4. 倒産リスク

Mayers and Smith

(1982)は,企業の規模が小さい割に,倒産リスクが 高い点に,小規模企業は保険需要を強くする傾向を示すと解釈している。さ らに,企業の規模に関わらず,相対的に流動資産が少ない,あるいは高いレ バレッジをもつ企業であれば,倒産の可能性はより高いから,保険を購入す る意欲が強くなる。なぜなら,それらの企業は損失を被るときに,キャッシ ュフロー,借り入れおよび資本マーケットの利用をいっそう制限されるから である。

3.5. ステークホルダー

株主,債権者,および従業員などの利害関係者は自己利益のために,企業 の 保 険 需 要 を 促 進 す る 可 能 性 が あ る。MacMinn(1987)と

Garven and MacMinn

(1993)は保険が過少投資問題を軽減できると提言している。た

 

とえば,財産損失が発生する場合,大株主は被害の対応手段を選択しなけれ

(9)

ばならない。このとき,もし企業が危険な負債状況であれば,大株主は必ず 資金を投入するとは限らない。そして債権者はこのような状況を予想してい るためより高い利率を要求する可能性がある。Mayers and Smith(1982)

は保険がこのような問題を解決できることを示している。

3.6. エージェンシー理論

エージェンシー理論は企業の所有形態が保険需要に影響すると主張してい る。所有者たちはリターンを期するために企業に資金を投下する。しかしな がら,投資者は資金を無駄にしないため,監視メカニズムを構築しなければ ならない。Mayers and Smith(1982)によれば,もしも所有者の資金が1 つの企業に集中しており,さらに企業別に投資を分散していなければ,投資 された企業の保険需要はより高くなる。一方,Gillian and Starks(2003)

によれば,いくつの大機関投資家が企業を所有している場合,保険会社より 機関投資家の直接的な監視は有効であるから,保険需要はより弱くなってい る。

4.実証モデルと分析結果

4.1. 本研究のデータおよび方法

本研究は2011年の中国の上海株式市場における上場企業(金融企業を除 く)を対象とする。本研究で用いたデータは上場企業のディスクロージャー

(2011)および 上海証券取引所統計年鑑2011 によっている。

4.2. 実証モデル モデル1

lnY = α+ β lnasset + β regulation + β exports + β state +

β liquidity + β debt1 + β debt2 + β topshare + β lntax

β holding +β auditor +β independence +β industry +ε

(10)

モデル2

Z = α+ β lnasset + β regulation + β exports + β state + β liquidity + β debt1 + β debt2 + β topshare + β lntax

β holding + β auditor + β independence + β industry + ε

モデル3

X = α+ β lnasset + β regulation + β exports + β state + β liquidity + β debt1 + β debt2 + β topshare + β lntax

β holding + β auditor + β independence + β industry + ε

ただし, は各上場企業,それぞれの変数は以下のとおり定義する。

被説明変数

Y

保険料

Z

保険料/固定資産

X

保険料/総資産 説明変数

asset

総資産

regulation

規制されている企業を1とするダミー変数

industry

製造企業を1とするダミー変数

exports

輸出がある企業を1とするダミー変数

state

国有企業を1とするダミー変数

liquidity

流動比率=流動資産/流動負債

debt

1 負債比率=負債/総資産

debt

2 負債/時価総額

topshare

1位の大株主のシェア

tax

税金

holding

トップ管理層が持っているシェア

auditor

監査役員数/役員数

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independence

独立役員数/役員数

4.2.1. 被説明変数

本研究は3つの被説明変数を用いる。まず,Yamori(1999)にしたがい,

企業の支払保険料( )の自然対数を被説明変数とする。次に,Regan and

Hur

(2007)は企業の支払保険料を付保できる財産(固定資産から土地の価

 

値を引いた値)で割った値を被説明変数とする。しかし,上海株式市場にお ける上場企業の土地に関するデータが公表されていないため,ここで企業の 支払保険料をその固定資産で割った値を被説明変数( )とする。3つ目に,

企業が支払う保険料のなか,運送保険,信用保険および責任保険などの固定 資産に関わらない保険種目があるはずなので,本研究において,企業の支払 保険料をその総資産で割った値を被説明変数( )とする。一方,被説明変 数( )と( )とは保険需要より,企業のリスク認識あるいはリスク管理 の手段を反映される。たとえば,小規模な企業より,大規模な企業はリスク に対して豊富な対応手段をもっている。すなわち,企業規模の増大に伴い,

保険以外のリスクマネジメント手法をより多く利用するから,1単位の付保 できる財産にかける保険料は逆に減少する可能性も十分ある。

4.2.2. 説明変数

⑴ 総資産

多くの欧米の先行研究は企業総資産の自然対数を企業規模の代理変数とし ている。本研究においても先行研究にしたがい,企業総資産の自然対数を企 業規模の代理変数とする。

⑵ 規制

Yamori

(1999),Regan and Hur(2007)は被規制企業を1とするダミ ー変数を用いており,結果はプラスかつ有意である。一方,中国において電 気・ガス・水道などの公益事業およびエネルギーや鉱業などの規制されてい る産業に対しては,保険料率の設定が規制されているから,被規制企業が支

← and

を 入 れ る た め に イ レ ジ ュ ラ ー 処 理 し て います。

(12)

払った保険料は逆に少なくなる可能性もある。

⑶ 租税

保険の購入は企業の税金を軽減するが,中国において企業の所得税は累進 税率ではなく,固定税率であるから,保険需要を強く促進することが考えに くい。しかし一方,赤字企業は所得税を免除されるから,相対的に赤字企業 より黒字企業にとって保険の購入は企業の期待租税を軽減する可能性がある。

Yamori

(1999)は日本の上場企業を対象として,租税が企業保険需要に与 える影響を分析したが,対象企業はすべて黒字であるからこの点に対して検 証できなかったが,本研究のサンプルには,赤字企業も多数あるため,租税 の影響をさらに検証できる。

⑷ 業種

業種によって企業の保険需要は異なっているため,本研究において,製造 業を1とするダミー変数を用いる。

⑸ 倒産リスク

高い倒産可能性は保険需要を強めるため,本研究においてまず負債比率を 倒産リスクの1つの代理変数とする。この変数と保険需要とは正の関係であ ると予想される。また,将来性が高い企業は株価に反映されるため,負債と 時価総額との比率も倒産リスクの1つの代理変数とする。さらに,企業の経 営活動において,短期の財政逼迫も倒産リスクを高めるため,保険需要に影 響する可能性がある。そのため,流動比率を用いて短期のリスクが保険需要 に与える影響を分析する。

⑹ 1位の大株主のシェア

株主は分散投資によってリスクを回避できるため,保険への需要が弱くな っている。逆に大量の資金を少数の企業に集中すれば保険に対する需要は強 くなる。したがって,本研究では,1位の大株主のシェアを説明変数とする。

なぜなら,もし1位の大株主のシェアが高くなればなるほど,投資を分散す る度合いは小さくなる可能性があるからである。したがって,この変数の符 号はプラスであると予想される。

(13)

⑺ 監査役員および独立役員

役員会における監査役および社外独立役員の割合の係数の符号はプラスで あると予想される。他方,監査役の役割と社外独立役員と同様に期待されて いるが,上海株式市場における上場企業が社外独立監査役をほとんど設置し ていないから,この説明変数の効果は社外独立役員の変数より弱いのではな いかと予想される。

⑻ 管理層の持株

管理層の持株もコーポレート・ガバナンスの1つの要素として議論されて きた。Jensen and Meckling(1976)は管理層の持株がマネージャーと株 主との利益を一致させると主張している。また,

Morck, Shleifer and Vishny

(1988),McConnell and Servaes

 

(1990)に よ れ ば,管 理 層 の 持

株が企業価値を増大する一方,管理層の保守的な戦略の採用を導く。すなわ ち,管理層の持株が企業リスクを軽減する効果があると考えられる。したが って,この係数の符号はプラスであると予測される。

⑼ 輸出

世界工場 とよばれる中国において,毎年巨大な輸出額がある。2012年 8月の中国統計局の報告によれば,中国は3年連続で世界最大の輸出国とな っている。輸出にかかわる信用保険(貿易保険など)は輸出企業のリスクを 軽減できるため,輸出のある企業の保険への需要はより強くなると考えられ る。Regan and Hur(2007)は各韓国上場企業の輸出額と総販売額の比率 を用いているが,本研究において上海株式市場の上場企業のなかで輸出のな い企業は少なくないから,輸出がある企業を1とするダミー変数として用い る。この変数の符号はプラスであると予測される。

図表が入らないためアキを作成しています

名 前 の 泣 き 別 れ を 防 ぐ た め イ レ ジ ュ ラ ー 処 理 を し て い ま す。訂 正 時注意

(14)

4.3. 分析結果

は1%水準で有意, は5%水準で有意, は10%水準で有意,( )内はt値 係数のlnは自然対数値を表している 表1 実証結果

サンプル数 345

調整済決定係数 independence

  ln asset

モデル1

0.84

(10.64)

0.74 (1.36)

0.4048 0.0107 0.69

(1.88)

−0.06

(−2.06)

0.0206 0.04 (1.52)

−0.007

(−3.17)

モデル3 モデル2

ln 被説明変数

説明変数

0.003

(0.53)

(−0.63)

0.01 (0.22)

(0.07)

0.32 (1.63)

−0.13 (−0.69)

regulation   industry

  state

 

exports 0.03

(0.20)

0.29

(1.82)

0.09

(1.67)

0.06 (1.18)

0.007

(1.71)

0.003

(0.80)

debt 1  

liquidity −0.10

(−1.59)

0.35

(2.24)

0.02 (0.36)

0.00

(−0.02)

(−0.04)

0.00

(−0.09)

top share  

debt 2 −0.50

(‑3.64)

−0.33 (−0.98)

−0.18 (−1.52)

−0.00 (−0.05)

−0.005

(−0.56)

0.002

(0.56)

holding  

ln tax −0.005

(−0.11)

0.25 (0.20)

0.48 (1.12)

0.01 (0.76)

0.03 (0.93)

0.001

(0.87)

0.16 (0.01)

0.16 (0.97)

0.24 (0.52)

auditor

 

(15)

ln  asset

の係数はモデル1においてプラスかつ1%水準で有意である一方,

モデル2およびモデル3において,マイナスでありそれぞれ5%および1%

水準で有意である。すなわち,企業が支払った保険料が総資産とは正の関係 がある一方,企業規模の増大にともなって1単位の固定資産に掛ける保険料 は逆に減少している。これは

Mayers and Smith

(1990)の主張とは一致 している。つまり,企業規模の増大にともなって,保険需要の上昇は逓減し ている。その理由は,企業の規模が大きい割に,倒産リスクが低くなるから である。また,規模の増大につれて企業のリスク分散および処理の能力も高 くなっていると考えられる。

stateの係数は3つのモデルにおいてプラスであり,それぞれに5%,10

%,5%水準で有意である。すなわち,国有企業の保険需要は強くなってお り,1単位付保できる資産に掛けた保険料もより多い。その理由は,おそら く国有企業はより豊富な資金をもっているからである。

debt 1

の係数はモデル1においてプラスであり,5%水準で有意である。

よって,負債比率が高い企業の倒産リスクは高くなっており,保険需要を強 くしている。一方,debt 2の係数はモデル1においてマイナスであり,か つ1%有意である。すなわち,負債が一定であれば,時価総額が高い企業の 保険需要はより大きい。つまり,将来性が高い企業はよりリスク回避的であ り,保険需要を強くしている。

independenceの係数はモデル2においてプラスであり,10%有意である。

つまり,役員会における独立役員の比率が高くなれば,1単位の固定資産に かける保険料はより高くなる。一方,監査役の係数は有意でない。したがっ て,監査役に比べて社外独立役員のほうがより強い監視機能をもっている。

regulation

の係数はすべてのモデルにおいて有意でない。その理由は,中

国において料率が制限されているからである。したがって,企業保険需要の 促進には料率の自由化が重要である。

サンプルのなかに赤字企業が多数あるにもかかわらず,Yamori(1999)

の結果と一致して

ln  tax

の係数は有意でない。すなわち,固定税率(中国と

(16)

日本とは同じ,企業の所得税は固定税率である)であれば租税は企業保険需 要に影響しないことがわかった。

5.終わりに

本研究の目的は,中国の企業保険における保険需要の各要因を定量的に分 析することである。さらに,コーポレート・ガバナンスの企業保険需要への 影響を明らかにすることも1つの目的である。その結果,以下の3点を明ら かにすることができた。

第1に,企業が支払った保険料は企業資産の増大にともなって増加してい るが,1単位の固定資産に掛ける保険料は逆に減少していることが確認され た。つまり,企業規模の増大にともなって保険需要の上昇は逓減しているこ とが分かった。第2に,中国において,国有企業の保険需要は強いことが確 認された。第3に,中国において,倒産リスクが高い企業の保険需要は強く なっている。一方,将来性の高い企業は安定的な発展を確保するため,保険 需要をより強くしていることが分かった。第4に,固定税率であれば租税は 企業保険需要に影響しないことがわかった。第5に,コーポレート・ガバナ ンスは企業保険需要に影響していることが確認された。さらに,監査役より 社外独立役員のほうが企業保険需要の促進に貢献していることが分かった。

そもそも,現在中国において,金融市場はまだ成熟しておらず,金融シス テムも不健全であるから,企業は資本市場を通じてリスクを分散およびヘッ ジすることができないだろう。さらに,冒頭に述べたように,中国企業のリ スクへの対応は非常に不足しているので,保険以外のリスクマネジメント手 法を充分に運用することは考えにくい。実際,中国において大手金融企業以 外,CRO(Chief Risk Officer)を設置する企業はまれである。したがっ て,現段階において中国企業にとって最も重要なのは,リスクを認識・評価 するうえで,リスクコントロールを着実に実行すると同時に,保険を十分に 利用することではないか。他方,競争の激しい自動車保険市場より,企業保 険市場では優れたノウハウをもっている外資系損保が優位性を発揮しやすく

(17)

なるだろう。それゆえ,収益性の面から言えば,外資系損保は自動車保険市 場へ進出するより,企業保険業務をいっそう強化・拡大すべきであろう。

以上が本研究の結果をまとめたものであるが,いくつかの課題も残されて いる。まず,企業保険需要の代理変数,そして中国のおける企業のリスク認 識に影響する要因をさらに探索・分析する必要がある。また,サンプル数の 制限のため,今後はパネルデータでの検証が重要である。

(筆者は神戸大学大学院経営学研究科研究員)

参考資料

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参照

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