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第 445 回東京医科大学臨床懇話会

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(1)

445 回東京医科大学臨床懇話会

インフリキシマブ治療中断後、神経症状が顕性化した Behçet Behçet’s disease with neurological symptoms after Infliximab interruption

日   時

: 2014

12

16

日(火)18 : 30〜19 : 30 会   場

:

東京医科大学病院 6階 臨床講堂 当 番 分 野

:

東京医科大学 眼科学分野

関連診療科

:

東京医科大学病院 脳神経外科

      東京医科大学病院 リウマチ・膠原病内科 司   会

:

毛塚 剛司(眼科学分野 准教授)

発 言 者

:

三橋 良輔(眼科学分野)

      秋元 治朗(脳神経外科 教授)

      沢田 哲治(リウマチ・膠原病内科 准教授)

      後藤  浩(眼科学分野 主任教授)

東医大誌 73(3)

: 308

-

318, 2015

臨床懇話会

毛塚(司会)

:

時間となりましたので、第

445

東京医科大学臨床懇話会を開催したいと思います。

司会は、私、眼科の毛塚が担当いたします。

本日の臨床懇話会では、ベーチェット病の症例を 取り上げる予定です。

ベーチェット病は、眼科的側面のみならず、膠原 病的な側面、神経学的な側面等、多岐にわたります。

学生の諸君は、特に多方面から見た疾患というイ メージで捉えてほしいと思います。

今回は、まず初めに症例プレゼンを眼科の三橋良 輔先生に講演していただき、その後にリウマチ・膠 原病内科の沢田哲治先生にベーチェット病の一般的 な解説をしていただきます。さらに脳神経外科の秋 元治朗先生に神経学的な側面からお話ししていただ く予定です。まず初めに、症例プレゼンをよろしく お願いします。

三橋(眼科)

:

ベーチェット病に関しては、イン フリキシマブ(抗ヒト

TNFα

抗体)の使用が認可さ れて以来、難治性のベーチェット病に対しての治療 選択肢が増えました。

インフリキシマブは、既存の治療法に比べてベー

チェット病による眼炎症発作を強力に抑制すること は明らかですが、治療を中止するための基準等につ いては、いまだ確立したものはありません。

今回、我々はインフリキシマブ治療を自己中断後 に神経ベーチェット病と思われる症状を呈した一例 を経験したので、報告いたします。

症例は、

38

歳男性。

2005

年に左眼の視力低下を 自覚し、近医を受診。網膜静脈閉塞症の診断で治療 施行されたが増悪と寛解を繰り返し、右眼にも同様 の所見を繰り返すため、ベーチェット病が疑われ、

2006

2

月に東京医大眼科に紹介となりました。

既往歴は特になく、眼外症状としては、口腔内アフ タ、関節痛、頭痛、かみそり負けなどが見られまし た。

初診時の眼所見です。右眼の矯正視力は

0.1

、左 眼矯正視力

0.2。眼圧は正常です。前眼部所見は、

角膜後面沈着物がみられ、隅角には

pigment pellet

が見られました。中間透光体には異常はみられませ んでした。眼底所見には、両眼ともに視神経乳頭の 発赤と黄斑部の浮腫がみられました。

経過ですが、当院受診後間もなくベーチェット病

(2)

と診断し、コルヒチンの内服を開始しました。治療 経過中、黄斑浮腫に対しては、トリアムシノロンの テノン嚢下注射を施行しています。治療開始後にも 網膜静脈分枝閉塞症様の出血と滲出性変化を伴った 黄斑浮腫を認めました。必要に応じてプレドニゾロ ンの短期内服治療なども併用しましたが、発作と寛 解を繰り返していたため、

2007

年に使用可能となっ たインフリキシマブ療法を開始しました。その後、

インフリキシマブは

2012

2

月の

34

回目まで施行 しました。経過中、小発作を起こすこともありまし たが、両眼ともに視力

0.6

を維持していました。し かし、

2012

4

月に倦怠感を理由に来院せず、以後、

インフリキシマブ治療は中断していました。

インフリキシマブ自己中断から

4

カ月後、突然の 右の片麻痺と構音障害が出現したため、近医の脳神 経外科を受診し、MRIで脳幹部に腫瘤と思わせる 病変が発見されました。脳浮腫改善のために、同院 でグリセオールとベタメタゾンの点滴が行われまし た。神経病変発症時の造影

MRI

所見では、脳幹部 に高信号のリング状の造影効果を呈する腫瘤が見ら れました。前医での診断は、何らかの脳腫瘍とのこ とでしたが、精査加療目的のため、当院の脳神経外 科に転院となりました。改めて

MRI

を撮像したと ころ、前医受診時と比べ腫瘤の明らかな縮小が確認 されました。既往歴やステロイドに対する反応から 神経ベーチェットが疑われたため、ベタメタゾンの 治療を継続し、インフリキシマブも再開となりまし た。なお、髄液検査は、本人が拒否されたため、施 行していません。

発症

2

カ月後の

MRI

所見では、脳幹部の腫瘍は 明らかに縮小していました。その後、現在に至るま で、眼症状、中枢神経症状ともに落ちついています。

ここまでの経過のまとめです。不全型ベーチェッ ト病の既往、インフリキシマブ中断後に出現した中 枢神経症状、さらにステロイドの全身投与により症 状が改善したことにより、神経ベーチェットと診断 しました。

考按です。神経ベーチェットは、ベーチェット病 の約

10%

に発生するとされ、ベーチェット病の発 症後、約

6

年〜

7

年で発症することが多く、性差で は男性に多く、男性のほうが重症化しやすいと言わ れています。症状としては、初期に頭痛、発熱、対 麻痺、構音障害などが出現し、後期には抑鬱、不安、

人格水準低下などの精神症状を来すことがありま

す。

検査所見としては、髄液検査で髄液圧の上昇、好 中球、リンパ球の増加、

IL

-

6

の上昇が見られます。

MRI

所見としては、

T1

(低信号〜等信号)、

T2

(高 信号)で大脳皮質、脳幹、脊髄等、さまざまな部位 に出現することが報告されています。

治療としては、ステロイド、インフリキシマブと いったものが挙げられます。

今回、脳幹部に腫瘤性病変が発生した要因として

2

つの可能性が考えられました。1つはインフリキ シマブの副作用によるもの、もう

1

つがインフリキ シマブの中断による影響です。中長期的なインフリ キシマブの副作用の

1

つに悪性腫瘍が挙げられま す。今回の症例における神経病変発症時の

MRI

真では、脳幹部に高信号でリング状の造影効果を呈 する腫瘤が見られました。脳幹にリング状の造影効 果を示す腫瘤の鑑別疾患としては、悪性リンパ腫、

膠芽腫が挙げられますが、いずれもステロイドが奏 効しないことから否定的と考えます。

次に、インフリキシマブ中断による影響ですが、

インフリキシマブが神経ベーチェットに奏効した症 例はこれまでにも数多く報告されていることから、

本症例は、それまでマスクされていた神経症状がイ ンフリキシマブ中断によって顕性化された可能性が 高いと考えています。

また、本症例の眼外症状に注目すると、当初から 頭痛の訴えがありました。この頭痛が神経ベー チェットとしての初期症状であった可能性も否定で きません。

結語です。現在のところ、眼症状に対するインフ リキシマブ中止の判断に明確な基準はありません が、治療の中止あるいは中断に際しては、眼症状の みならず、眼外症状の再燃や顕性化にも注意を払う 必要があると考えます。

以上です。

毛塚

:

ありがとうございました。

この後にまた一般的な解説をお願いする予定です が、ここで聞いておきたいということはございます か。

沢田先生、どうぞよろしくお願いします。

沢田(リウマチ・膠原病内科)

:

リウマチ内科の 沢田と申します。インフリキシマブの中断に至った 倦怠感の理由について何か情報はありますか。レミ ケードの中止に至った、倦怠感のために来院を中断

(3)

されたとお聞きしたのですが、倦怠感の理由、例え ばだるくて来るのが面倒くさかったなど、何かあり ますか。

三橋

:

そのことに関しては、ちょっと情報があり ません。

毛塚

:

その件に関しては私がお答えいたします。

倦怠感は確かにあったようですが、体がだるいから サボってもいいやという感じで行かなかったようで す。その後、しばらく調子がいいからいいだろうと 本人は思ってしまい、そのままずっと

4

カ月以上受 診せず、突然このようなことが起きてしまいました。

沢田

:

もし測定されておられたらで結構なので すが、HLA-

B51

等は陽性だったのでしょうか。

三橋

: B51

は陰性で、

A26

が陽性でした。

沢田

: CRP

の動きなどは、レミケードをされて

ずっと正常だったのでしょうか。

毛塚

:

レミケードを投与してからよかったので すが、時々、冬場になると、CRP

1.0

ぐらいまで は上がることがありました。

沢田

:

現在、ステロイドを使われて神経症状はよ くなっているのですが、レミケードは、その後、再 開されておられるのでしょうか。

三橋

:

現在、再開しております。

沢田

:

あと、秋元先生にお伺いしたほうがいいの かもしれませんが、リング状のエンハンスメントと いいますと、腫瘤が知られていると思いますが、

MRI

所見で脳血管障害の可能性はあるでしょうか。

秋元(脳神経外科)

:

後で

MRI

のことは話そうと 思います。リングライクエンハンスメント(

ring

-

like

enhancement

)されるものとして、学生さんに教え

ている中で、悪性リンパ腫もありますが、比較的ま れです。ですから、リングライクエンハンスメント されるものとしては、通常は膠芽腫と転移性脳腫瘍 と教えています。それから、悪性リンパ腫は、ステ ロイドは急性期にはよく効くものですから、「奏効 せず」と書かないほうがよかったかもしれない。血 管障害の可能性も否定できません。

毛塚

:

今のプレゼンは一旦これでおしまいにい たしまして、引き続き、ベーチェット病について、

またいろいろお話をお聞きしたいと思います。

では、沢田先生、よろしくお願いいたします。

沢田

:

私のほうからは、ベーチェット病一般につ いて説明させていただきます。

ベーチェット病は、いわゆる再発性口腔内アフタ

性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍、あと眼病変を

4

のメジャー、4大主症状とする原因不明の炎症性疾 患です。

代表的な膠原病、あるいはその類縁疾患の

1

つで ありますが、ご存じのように、ベーチェット病では 自己抗体は出現しませんので、病態という観点から は、膠原病のなかでは、自己免疫というか、獲得免 疫が関係していないというイメージですので、自己 免疫性疾患というより、最近では自己炎症症候群と いうカテゴリーの中で議論されることが多い疾患で あります。

ベーチェット病は、通常、特殊な場合を除いて、

一定部位の炎症が慢性に持続するのではなく、急性 炎症が反復して、再発と寛解を繰り返しつつ、遷延 した経過をとる疾患です。

例えば関節リウマチですと、

1

個の関節が腫れて、

それが持続的に炎症を起こしたまま次の関節が腫 れ、またそこが持続したまま次の関節が腫れるとい うように

chronic and persistent

な経過をとりますが、

ベーチェット病では毛嚢炎も口内炎もできたら引き ます。各部位にできた炎症が慢性に持続するのでは なく、急性炎症が反復して、再発と寛解を繰り返す というパターンをとる疾患です。

我が国では、

4

大主症状を示す完全型と、そうで ない不全型に分類されます。今回の症例は不全型に なります。

そして、特殊病型として、腸管の潰瘍性病変を来 す腸管ベーチェット、大小の動静脈病変を来す血管 ベーチェット、そして今回のように脳幹、あるいは 小脳・大脳白質病変を来す神経ベーチェットの

3

が我が国では定義されています。

ベーチェット病の原因は不明ですが、その病態形 成には幾つかのサイトカインが重要な役割を果たす ことが明らかにされています。今回の患者さんでは 承諾が得られなかったのですが、髄液中のインター ロイキン

6

が高いなど幾つかのサイトカインがその 病態形成に重要な役割を果たすと言われています。

特 に

TNFα

は 重 要 と 言 わ れ て い て、 実 際、 こ の

TNFα

を分子標的とした薬剤により、ベーチェット 病治療に大きな進歩がもたらされています。

ベーチェットの疫学に関してですが、本邦の推定 患者数は、そう多くなくて、

15

万人。全体で見る と男女比はほぼ

1 : 1

。発症のピークは

30

代と言わ れています。この方も

31

歳発症ということでした

(4)

ので、典型的なパターンかもしれないです。

原因は不明と申し上げましたが、病因としては、

もちろん多因子疾患で、遺伝要因と環境要因が関与 する多因子疾患です。

ベーチェット病の原因遺伝子としては、古くから

HLA

-

B51

が知られています。ベーチェット病は、

トルコから中東、中国、韓国、日本を結ぶシルクロー ド沿いに多い、Silk Road diseaseと言われています。

欧米では少ないですが、これはこのシルクロード沿 いに

HLA

-

B51

を持っている方が多いということと 関連していると言われています。

今回の症例では、

B51

は陰性でしたが、最近、

B51

とは独立した原因遺伝子として

A26

も注目さ れており、この患者さんは

A26

が陽性でした。

最近では、いろいろな多因子疾患について、ホー ルゲノムでいろいろな原因遺伝子を解析する

GWAS

(ジーバス)という手法が用いられて、このベー チェット病の遺伝子研究においてもそれが適用さ れ、インターロイキン

10

という免疫を抑制する遺 伝子やインターロイキン

23

受容体-インターロイキ

12

受容体

β2

遺伝子がベーチェット病の原因遺伝 子として同定されてきています。

環境に関してはいろいろなことが言われていて、

後で申し上げる慢性進行型神経ベーチェット病では 喫煙が関与していますが、ほかにも様々な環境因子 が関係しています。恐らく日本の衛生環境がよく なっていることが関係しているのかもしれません が、近年、日本のベーチェット病患者さんというの は軽症化の傾向が見られていると言われています。

軽症化しているとは申し上げましたけれども、も ちろん重症の方もいらっしゃいます。そういう重症 化を来す要因は何か、あるいはベーチェット病の予 後不良因子は何かということに関しまして言います と、男性・若年発症、あと人種と交絡しているかも しれないですが、

HLA

-

B51

を有していること、こ れらがベーチェット病の予後不良因子、重症化の要 因と報告されています。

ベーチェット病そのものによる死亡率は約

5

10%

と成書に記載されています。若年者ほどベー チェット病による死亡が多いと言われています。日 本では、血管ベーチェットによる肺動脈瘤は少ない ですが、世界全体で見ると、死因の第

1

位は肺動脈 瘤の破裂による血管病変と言われており、次いで多 いのが神経ベーチェットと言われています。

スライドには、我が国で用いられているベー チェット病の診断基準を参考のために示しました

(表

1)。主症状としてのアフタ性潰瘍、皮膚症状、

ぶどう膜炎──眼症状、そして外陰部潰瘍、この

4

つが主症状です。

副症状として、関節炎、あまりないですが副睾丸 炎、あと特殊型である消化器病変、血管病変、神経 病変、これらが副症状になっています。

学生の方は覚える必要はないと思いますが、

4

の主症状がそろえば完全型、そうでないものを不全 型と言っています。

参考所見として、針反応が有名ですが、近年、こ の針反応の陽性率は下がってきていると言われてい ます。炎症反応は炎症性疾患ですので陽性になりま

1 厚生労働省ベーチェット病診断基準(2003

年改定)

(A) 主症状 (B)

 副症状

① 口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍 ① 変形や硬直を伴わない関節炎

② 皮膚症状 ② 副睾丸炎

a) 結節性紅斑

③ 回盲部潰瘍で代表される消化器病変

b) 皮下の血栓性静脈炎

④ 血管病変

c) 毛嚢炎様皮疹、痤瘡様皮疹

⑤ 中等度以上の中枢神経病変

③ 眼症状 (C) 病型診断の基準

a) 虹彩毛様体炎

① 完全型 主症状

4

b) 網膜ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)

② 不全型

c) a, b

を経過したと思われる眼病変

a) 主症状 3(または主症状 2

と副症状

2)

④ 外陰部潰瘍

b) 眼症状と主症状 1(または副症状 2)

(D) 参考所見

① 針反応

② 炎症反応(CRP↑赤沈↑白血球↑)

③ HLA-

B51

陽性

(5)

すし、

HLA

-

B51

が陽性ということを参考にして、

それでベーチェット病の診断、分類を行うのがこの 基準です。

次に、治療に関してですが、我が国ではベーチェッ ト病の重症度を

Stage I、II、III、IV、V

と分けてい ます(表

2

)。それに従って治療方針を大まかに示 しますと、症状が皮膚粘膜にとどまっている場合を

Stage I

と称して、その場合にはステロイドの外用

療法に必要に応じてコルヒチンが追加されます。

Stage II

が前部のぶどう膜炎、あるいは関節炎と

か副睾丸炎。眼症状の場合には、コルヒチン、ステ ロイドの外用、あと散瞳剤等が用いられます。この 方の関節炎がどういうパターンか聞き漏らしました が、通常は多関節炎で、

2

4

個までの関節炎が一、

二週間起きて引くという、急性の関節炎を繰り返す パターンが多いと思います。その予防にコルヒチン、

発作のときは非ステロイド系の抗炎症薬が投与され ます。

Stage III

IV

が後部のぶどう膜炎では、程度に応 じて、軽い場合にはコルヒチン、シクロスポリン、

ステロイドの外用が用いられ、ひどくなってくると ステロイドの外用、あるいはステロイドの全身投与 が行われて、発作予防にはコルヒチンとかシクロス ポリンが使われます。最近はインフリキシマブの登 場によって急性炎症の発作が著明に改善されていま す。

Stage IV

V

は重症ですが、特殊病型に対しては、

一般的には中等量以上のステロイドの全身投与に加

えて、個々の病態に応じた治療が用いられます。生 命にかかわるような場合には、大量ステロイドとと もに免疫抑制薬が用いられ、抵抗性であれば、

TNF

阻害薬の投与を考慮します。そして、ちょっと特殊 ですが、神経ベーチェットの中で、急性型ではなく て、いわゆる認知症が持続的に悪化していくような 慢性進行型神経ベーチェットというサブタイプが あって、それに対しては少量のステロイドに加えて、

関節リウマチで使うメトトレキサート少量間歇療法 が有効で、抵抗性の場合にはインフリキシマブの有 用性が報告されています。

このようにベーチェット病の治療は進歩してきま したが、いわゆる

EBM

は、あまり、ベーチェット 病には行われておらず、文献を見ましても、ランダ ム比較試験はあまり行われていませんが、コルヒチ ンが皮膚粘膜症状等に効くというプラセボ比較対象 試験は行われていますし、あと、ぶどう膜炎の治療、

あるいは眼発作の予防に対してシクロスポリンとか アザチオプリンにはエビデンスがあります(表

3

)。

そのほか、日本では使えないですが、サリドマイド の有用性、あとムコスタとかインターフェロンとか ダプソン、エタネルセプト、幾つかの薬剤に関して はランダム比較試験が行われています。しかし、何 分、ベーチェットの難治性病態に対して、そういう プラセボを用いた試験というのはなかなか行うこと が難しいという問題があります。

ベーチェット病治療の今後の課題としては、こう いう難治性病態、眼ベーチェットであるとか、ある

2 Behcet

病の重症度と治療方針(廣畑俊成 最新医学 68

6

月増刊号 92-

103 2013

年より作成)

重症度 症状 治療

Stage I

皮膚粘膜症状のみ ステロイド外用療法±コルヒチン

Stage II

虹彩毛様体炎 コルヒチン+ステロイド外用療法+散瞳剤

関節炎・副睾丸炎 コルヒチン+非ステロイド系抗炎症薬

Stage III

網脈絡膜炎 コルヒチン、シクロスポリン、ステロイド外用療法

Stage IV

重度の網脈絡膜炎 急性炎症にステロイド外用療法またはステロイド全身投与、

発作予防にコルヒチン、シクロスポリン、インフリキシマブ 特殊病型 中等量以上のステロイドの全身投与に加えて、個々の病態に

応じた治療

Stage V

生命予後に危険ある特殊病型 大量ステロイドにステロイドパルス療法、あるいはシクロホ

スファミド、アザチオプリンなど免疫抑制薬を追加、抵抗性 ならばインフリキシマブ

慢性進行型神経ベーチェット(認

知症) 少量のステロイドに加えてメトトレキサート少量間歇療法、

抵抗性の場合にインフリキシマブ併用

(6)

いは特殊型に対して、先ほどお話があったように、

TNF

阻害薬の休薬基準、やめられるかどうかとい うのも問題ですし、他の疾患に使っているいろいろ な生物学的製剤があります。例えばトシリズマブ(イ ンターロイキン

6

阻害薬)がベーチェットに効くの かどうかということの検証も今後進められていく必 要があると思います。

また、主に皮膚粘膜症状ですけれども、例えば

Apremilast

と い う よ う な 乾 癬 で 用 い ら れ て い る

PDE4

(phosphodiesterase type 4)阻害薬がベーチェッ ト病の皮膚粘膜症状に効くかどうかというランダム 比較試験も海外では行われており、今後ベーチェッ ト病のエビデンスが集積されていくことが必要であ ると思います。

以上です。どうもご清聴ありがとうございます。

毛塚

:

ありがとうございました。先ほどの、ベー チェット病で、インフリキシマブ(抗

TNF

療法、

抗サイトカイン療法)をして、眼科領域では効果が ありました。薬をやめた途端に全身の調子が悪くな ることがありますが、この抗サイトカイン療法は、

眼には効果的ですが、ほかの眼外症状には効きにく い可能性があります。そう考えると、眼以外の症状 というのは、病態としてほかの悪い因子が入ってい ることはあるのでしょうか。

沢田

:

なかなか難しいかと思うのですが、例えば 神経ベーチェットに関して言いますと、慢性進行型 等でインフリキシマブが有効であると言われてます が、例えば別の症例では、インフリキシマブを投与

中に神経ベーチェットを発症する方もいらっしゃい ますので、それがパラドキシカルな反応なのか、

ちょっとわからないです。恐らく急性型と慢性型で 少し病態が違うのかもしれないですし、患者さんに よって遺伝要因とか環境要因が少し違っていて、一 応同じ疾患の中でカテゴライズされてしまいますけ れども、反応性は違うということかもしれません。

毛塚

:

わかりました。ありがとうございました。

ほかにございませんか。では、先生、ありがとうご ざいました。

引き続き、脳外科の秋元治朗先生にお願いしたい と思います。よろしくお願いします。

秋元

:

神経ベーチェットというのは、脳幹部に好 発することは知識として知っているのですが、今朝、

脳神経外科の症例検討会で脳外科の専門医が七、八 人いる中でプレゼンテーションをしたら、「初めて 見た」という人がほとんどでした。それだけこの病 態を我々脳外科医が診るチャンスはないので、非常 に貴重な症例を診せていただいたなと思います。ま た、振り返ってみて、もしこの既往歴を知らなかっ たら私も診断できなかっただろうなと思います。

症例は

38

歳の男性です。主訴は呂律障害、嚥下 障害、右半身不全麻痺で、既往歴は紹介がありまし た。

2012

3

月ごろから発症し、徐々に増悪してい ます。先ほど沢田先生が血管障害の可能性はとおっ しゃいましたが、卒中様の発症ではありません。徐々 に呂律障害、右半身の違和感が出て、3カ月後に嚥

3 ベーチェット病のランダム比較試験

(廣畑俊成 最新医学 68

6

月増刊号 92-

103 2013

年より作成)

Intervention Outcome Results

報告者

コルヒチン 口腔潰瘍・外陰部潰瘍・毛嚢炎・結節

性紅斑 改善

Davatchi

(2009)

外陰部潰瘍 改善(女性)

Yurdakul

(2001)

結節性紅斑・関節炎 改善

シクロスポリン ぶどう膜炎 改善

Ozyazgan

(1992)

眼発作 改善

Masuda

(1989)

眼発作 改善

BenEzra

(1988)

アザチオプリン ぶどう膜炎 改善

Yazici

(1990)

新規眼病変 抑制

サリドマイド 口腔潰瘍・外陰部潰瘍・毛嚢炎・結節

性紅斑 改善

Hamuryudan

(1998)

 その他

:

レバミピド、インターフェロン

α

-

2a、ダプソン、エタネルセプト、リツキシマブ

(7)

下困難が出て初めて本人が救急車を呼び、近くの病 院に搬送されています。その病院では、先ほど出た ような脳梗塞と診断されました。念のため、その病 院の近くの都立病院で

MRI

を行ったところ、そこ の脳外科医がその

MRI

を見て、脳幹部グリオーマ だと診断しました。その病院にも

8

日間入院してお り、脳幹部グリオーマと診断して、ステロイド(ベ タメタゾン)の点滴が

1

週間行われています。

紹介いただいたときの症状としては断綴言語とい う小脳性の言語障害に脳幹性の構音障害が出ていま した。右の半身不全麻痺は顔面を含み、上肢に失調 が目立ちました。

本人に「症状、どうですか」と聞くと、「いやー、

入院したときの半分ぐらいまでよくなりました」と 言っており、これはおかしいなと思ったわけです。

1

に前医で撮った

MRI

を示します。見ていた だくとおり、左の橋底部

T2

高信号が広がっていて、

コアがあるように見えます。FLAIR画像では中小 脳脚のほうまで病変は広がっている。造影すると、

先ほど眼科の先生がおっしゃったように、リングラ イクエンハンスメントが見えるわけです。

学生さんも今日たくさんいらっしゃいますので、

このリングライクエンハンスメントを見たときに は、やはり先ほどから出てくる特徴的な病態を幾つ か考えなければいけないというように指導してきま

した。ただ、このリングライクエンハンスを見て ちょっと違和感があり、このリングの一部があいて いるのです。

ここをもうちょっと拡大しますと、このリングラ イクエンハンスメントは、この部分が口をあけてい て、矢状断で見ても冠状断で見ても下が抜けていま す。こういうリングライクエンハンスメントのこと をオープンリングサインと呼んでいます。

オープンリングサインを見たときに、最初に考え る の は 脱 髄 で す。 同 時 に

MRI

で 拡 散 強 調 画 像、

ADC

というものを撮りますと、

ADC

は極めて低信 号、拡散強調は高信号を呈しまして、この中のコア には、かなり細胞成分が多いのだ、拡散が制限され ているということがわかるわけで、これを見たとき に急性の脱髄を一般的には考えるわけです。

画像上の鑑別ですが、このリングライクエンハン スメントが出た場合には、まず、悪性グリオーマ、

転移性脳腫瘍を考えるべきです。今日の朝のカン ファレンスでも、脳外科医、専門医がいましたが、

ほとんどの人は、これは悪性グリオーマと診断しま した。右側は、私が最近治療した悪性グリオーマの 患者さんですが、見ていただくとわかるように、非 常に似ています。この画像だけでは悪性グリオーマ との鑑別は困難です。

次に考えるべきは、オープンリングサインを見て、

1 A

-

D :

本例の前医で行われた

MRI

像(A : T2強調画像、

B : Gd

造影

T1

強調画像、

C :

拡散強調画像、

D : ADC

画像)

E、F :

脳幹部グリオーマの自験例の

MRI

像(E : T2強調画像、F : Gd造影

T1

強調画像)

(8)

炎症か脱髄ということになってきますが、炎症の場 合は、脳幹部の脳幹脳炎や、リングライクエンハン スメントが出たときに鑑別しなければいけないのが 脳膿瘍です。それから、ベーチェット病の既往があ るから、脳幹が好発部位である神経ベーチェットは 鑑別すべきです。それから、似たような病態で

Sweet

病がありますが、

Sweet

病の場合は、脳幹病

変はあまり多くありませんが、出てきます。ですか ら、

Sweet

や、それから特殊な病態の

Sarcoidosis

こういうものも鑑別しなければいけない。

それから、先ほど言いましたように、脳腫瘍に見 える多発性硬化症。私も、実は最初に見たときに、

これは多発性硬化症ではないかと。この既往歴を知 らなければ、そう診断したと思います。

先ほど沢田先生がおっしゃったような血管障害の 可能性も否定できませんが、このようにリングライ クに造影される時期になってくると、ほとんど拡散 強調画像で中の高信号が消失してくるのが通常なの で、発症が脳卒中様ではないこと、画像上、拡散強 調像とリング造影の時期が合わないということか ら、血管障害は否定的と判断しました。

注目すべきは、ステロイドの治療で

1

週間で症状 が半減したということです。どうしてもこういう病 態を考えていくべきだろうと思ったわけです。

そこで、すぐその日に

MRI

を撮りました(図

2

参照)。先ほどの画像と比べると極端にこの病変が 改善している。

T2

強調画像では、先ほど脳幹の橋 底部が中小脳脚まで高信号域が広がっていました が、明らかにその高信号域も消失しており、造影さ れるリングのパターンも縮小しています。さらに、

拡散強調画像も縮小しており、オープンリングの傾 向は残っていますが、病変は確実に縮小しました。

ステロイドで縮小するというのは、やはりグリオー マではあり得ない、腫瘍ではあり得ないことです。

先ほど悪性リンパ腫ではあると言いましたけども、

ここまで縮小することは普通ありません。

それを確認するために、3テスラの

MRI

MR

spectroscopy

という方法で鑑別しました。これは、

ROI

をとって、この中の成分が何かというスペクト ルを引くのですが、コリンは、腫瘍成分が出てくる と必ず上がってきます。神経細胞が壊れると

NAA

は下がってきます。ところが、この患者さんを見る と、コリンも

NAA

も特に変化なく、ここに出てく

lactate

、嫌気性代謝が亢進している像が出てきて

います。いろいろな条件でとっても

lactate

だけが ピークを持ってくるということで、これは腫瘍では なくてやはり何らかの嫌気性代謝、炎症とか、脱髄 とか、梗塞、そういうものが起きたものとしか考え

2 本例の治療と画像の経過 :

初回

MRI(D 0)の 10

日後(D 10)の

MRI

で脳幹病変は著明に縮小、45日後(D 45)、

80

日後(D 80)と漸次消失していった。 2年後(2 y、)においては病変の瘢痕のみ認められる。

(9)

られないということになります。

こちらでいろいろな部位を、Multi Voxelでたくさ んの

ROI

をとって比較しても、腫瘍パターンが出 てこなかったので、この時点で腫瘍は否定されます。

それから、NAAも残っているということで、まず 脳梗塞でもないだろうと。活動性炎症、壊死といっ たものがキーワードになると思ったわけです。

実際、毛塚先生にどうも脳腫瘍ではなくて、やは り神経ベーチェットではないでしょうかということ をお伝えしましたら、髄液検査をやってほしい、

IL

-

6

を見たらいかがでしょうかというコメントを いただきました。ご本人にどうしても髄液を調べさ せてほしいと申し上げたのですが、半分も症状がよ くなって、今の治療で効いているのだからやりたく ないと言われまして、残念ながら腰椎穿刺ができな かったという経緯があります。

ただ、そのかわり、私のところに必ず定期的に来 てください、画像を見せてくださいという話をして、

その後もしっかり来てくれました。

この間は、ステロイド(ベタメタゾン)が入った のですが、その後は眼科でレミケードによる分子標 的療法が始まったわけで、経時的に病変が改善、発 症から約

1

カ月半でほぼ消失、2カ月以降には全く 病変も見えなくなりました。それ以降もメンテナン スとしてレミケードの治療を眼科で行い、その後、

1

年、2年と外来で観察しました。最終的には拡散

強調像で病変の瘢痕が残りました。

症状として強直性の右麻痺が

MMT4/5

程度残り ましたが、現在は杖無しで歩いていますし、生活は 自立しています。

この様な脳腫瘍を思わせる神経ベーチェットの報 告を過去十数年遡って検索したのですが、ほとんど ありません。

幾つかケースレポートがありました。Brain tumor-

like lesion in Behçet disease

と呼ばれていますが、実 は脳幹部の神経ベーチェットで脳腫瘍を疑ったケー スレポートは

1

つもありませんでした。そういう意 味で、この症例は非常に貴重な症例になると思いま す。

報告例はいずれも大脳基底核で、視床と被殻の病 変です。両方とも生検をしていました。果たして生 検の意味はあるのかということで、よくこの論文の 病理像を見たのですが、基本的に神経ベーチェット というのはリンパ球の浸潤に伴う静脈炎なので、非 特異的な静脈炎としか出ないはずだろうと思いまし たが、明らかな特異的な所見はなかったと記載され ており、やはり生検の意義はほとんどないと思いま す。

昨年の

12

月に「神経ベーチェット病の診療のガ イドライン」が厚労省から出ています(図

3

参照)。

この診断基準は、急性型と慢性進行型と分けられて いるのですが、基本的にはベーチェット病の明らか

3 急性型、慢性進行型を問わず、髄液検査が診断には必須である。

(10)

な診断がついていることが必須で、急性に発症した 頭痛、発熱、局所神経症状を示すこと、さらには髄 液の所見が重要で、この全てを満たすことが診断の 基準です。

慢性進行型のほうを見ても結局同じで、髄液の所 見で

IL

-

6

高値を認める、全てを満たして初めて神 経ベーチェットと診断されるということで、やはり どうしても髄液検査が必須だったわけです。

ですから、今考えると、患者さんの希望で髄液検 査をしなかったので、この診断基準から言うと、こ の症例は確定診断ではないことになります。

治療に関しても、先ほど沢田先生がおっしゃいま したが、急性期の神経ベーチェットはステロイドの パルス療法がメインです。その後、発作の予防的な ものとしてこのレミケード、インフリキシマブが出 てくるということですが、現状のガイドラインでは、

推奨度

C

、勧めるだけの根拠がまだ明確ではないと いうことです。今後、症例の集積によって恐らく将 来的には推奨度が上がっていくものだろうと思いま す。

慢性進行型の病気にはメトトレキサートを使っ て、

IL

-

6

、髄液検査の鎮静化を見て、その効果が不 十分な場合にはレミケードを併用するということで す。やはりレミケードの立ち位置というものがこの 神経ベーチェットの治療に関してはまだ不十分とい うことで、こういうエビデンスを重ねることが重要 ではないかと思った次第です。

どうもありがとうございました。

毛塚

:

ありがとうございました。秋元先生の今の お話を聞いて、私も思い出したことがあります。脳 外科にこの患者さんが来院した時に、秋元先生から 脳腫瘍かもしれないけれども、腑に落ちないことが あるので、いろいろ調べてみると言われました。私 はインフリキシマブという、腫瘍致死因子である

TNF

を阻害している薬を投与しているおかげでグ リオーマが出たのではないか、また、米国では悪性 リンパ腫をきたしやすいという報告もありますの で、悪性リンパ腫が出現したのではないかと恐ろし く思いました。さらにインフリキシマブを投与して も多発性硬化症では無効か、もしくは悪化するとい う報告もありますので、もしや多発性硬化症が出た かもしれないと非常に不安になりました。その後、

秋元先生からやはりこれは神経ベーチェットに近い だろうという話を聞いて、ほっとした覚えがありま

す。

ほかに何かご質問等ないでしょうか。

後藤

:

眼科の後藤です。ありがとうございまし た。非常にクリアカットでわかりやすかったです。

この方は、本当にいろいろ偶然が重なってこうい ういい結果になったからよかったのですが、「もし も」を考えると非常に恐ろしい話がいっぱいあると 思います。先生の第一印象だった多発性硬化症なら ばステロイドを使うだろうから同じような経過をた どったと思いますが、もしそうではなくて、前医、

あるいは先生のところの専門医

8

人も全員思った悪 性のグリオーマだったら、治療はそもそも何をする のでしょうか。

秋元

:

脳幹グリオーマに関しては、手術適応がな いと言われています。まれに脳幹グリオーマでも脳 幹の外に出てくるタイプがあって、その場合に限り 生検の意義があると言われていますが、脳幹グリ オーマと診断された場合には、すぐ放射線治療と抗 ガン剤治療を行うことが世界のエビデンスです。

後藤

:

この方、もし構音障害がもっとひどくて しゃべれなかったとか、あるいは東京医大で眼科に ベーチェットでかかっているということがうまく表 現できなかったら、グリオーマとなった可能性もあ りますか。

秋元

:

最初の病院は脳梗塞と診断していますの で、もしその病院が

MRI

を撮ろうと思わなかった ら脳梗塞で済んでいたわけです。その病院が

MRI

を調べようということで近くの都立病院で

MRI

やったから初めてグリオーマと診断されたというこ とです。

後藤

:

グリオーマだろうが、とりあえずステロイ ドおよびグリセロールで脳圧を下げる、これはルー チンでしょうか。

秋元

:

ルーチンではありません。悪性リンパ腫を 疑った場合にはステロイドを使いません。あの画像 を見たときには悪性リンパ腫も否定できません。で すから、ステロイドを使ったのはいいことではあり ません。

後藤

:

たまたま使っていたからということはあ りませんか。

秋元

:

私は、関連病院の先生に脳腫瘍を紹介して いただくときには、「ステロイドは絶対使わないで ください」といつも言っています。

後藤

:

前医はなぜ使ったのでしょうか。

(11)

秋元

:

脳浮腫が強くて、症状を少しでも軽くして あげたかったとおっしゃっていました。

後藤

:

でも、それは一般的ではない。

秋元

:

一般的ではないです。

後藤

:

わかりました。

秋元

:

結果的にその先生にこの症例が神経ベー チェットの可能性が高かったと連絡したら、「勉強 になりました」とおっしゃっていました。

後藤

:

それが大事なことですね。ほとんど診るこ とないということですから、それを学生さんにもぜ ひ聞いてほしいなと思いました。結局、脱髄という のが我々にはよくわからないです。さっきの病理も 何だかよくわからなかったですが、眼局所では、好 中球だけではなくて

T

細胞といった炎症細胞が集 まっていると思うのですが、あの中枢神経にはそう いう炎症細胞の浸潤というのはあまりみられないの でしょうか。

秋元

:

おきています。脱髄の場合は、T細胞優位 のリンパ球浸潤があって……

後藤

:

それがあってからの脱髄と考えるので

しょうか。

秋元

:

いや、脱髄のリアクションです。

後藤

:

脱髄が先でしょうか。

秋元

:

はい。

後藤

:

そういうことですか。

秋元

:

いろいろな病理を持っていますが、きれい な脱髄があって、その周辺の血管にリンパ球浸潤が 伴ってくるということが特徴です。

後藤

:

そこだけとったら多発性硬化症ともよく 似ている。

秋元

:

似ています。

後藤

:

わかりました。ありがとうございました。

毛塚

:

ほかにございませんか。

先生、非常に私も勉強になりました。ありがとう ございました。

では、これで

445

回東京医大臨床懇話会を終了し たいと思います。皆さん、ありがとうございました。

(拍手)

(大屋敷一馬編集委員査読)

図 1 A - D : 本例の前医で行われた MRI 像(A : T2 強調画像、 B : Gd 造影 T1 強調画像、 C : 拡散強調画像、 D : ADC 画像)

参照

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