様式3
論文審査の結果の要旨
氏フ リ ガ ナ名 鈴木ス ズ キ 美代子ミ ヨ コ 学 位 の 種 類 博士(看護学)
学 位 記 番 号 甲第 10 号
学 位 授 与 年 月 日 平成 26 年 3 月 20 日
学 位 授 与 の 根 拠 岩手県立大学学位規則第3条第3項
学 位 論 文 題 目 在宅後期高齢者のスピリチュアリティを支える 看護における対話援助に関する研究
A Study on Interactive-care of Nursing to Support the Spirituality of Late-elderly at the Home
論 文 審 査 委 員 主査 教授 白畑 範子 副査 教授 土屋 陽子 副査 教授 伊藤 收
審査結果の要旨
超高齢社会を迎え,後期高齢者は有病率,介護認定率ともに上昇し,多様な職種が高齢者 ケアにかかわる中,看護職はあらゆる健康ステージの多様な療養・生活の場で,最も身近な 存在として高齢者の健康問題に最期まで継続的にかかわることができる.老年期の発達課題 をふまえ,最期までその人らしく全体的な健康のバランスをとりながら人生を全うしていけ るよう健康や
QOL
を支える看護支援が重要である.コミュニケーションは看護の基本であ り,普段のケアの中で日常行われていることであるが,スピリチュアリティを意識した意図 的・計画的な対話援助として確立することは,今後ニーズが高まる在宅高齢者ケアを視野に おいた看護職のスピリチュアリティへの理解を深め,看護の独自性を発揮するべく在宅看護 を考える上で意義あるものと考えられる.本研究は,全人的視点で後期高齢者の健康を支える重要なケアとして,日本人高齢者のスピリ チュアリティの特性を明らかにし,看護における在宅後期高齢者のスピリチュアリティを支える対話援 助の在り方について検討することを目的としたものである.
日本の看護文献レビューによるメタ統合分析により後期高齢者のスピリチュアリティを支える対話 援助の看護介入の枠組みを構築した研究
1
とBruner(1986)のナラティブモードの姿勢で,参加者
の潜在的なスピリチュアリティを外在化する個人態度別分析(PAC 分析)の援用による介入を行い,変容過程についてナラティブ分析を行った研究
2
から構成される.対話援助のプログラムは,関心を寄せて理解する態度と人生の振り返りを通して意味を再構築・
再構成する過程を支える援助で組み立てられ,在宅後期高齢者のスピリチュアリティの「病い」の体 験との相互関係から生じた意味づけの変容プロセスとして
2
つの様相を明らかにした.また日本人 高齢者のスピリチュアリティの特性として,在宅後期高齢者が抱く家族の役割意識や生き方 を導く力の意味づけは,高齢者個々人の歴史的時代背景に基づく戦争などの多難な人生体験 や,日本固有の家父長・家制度の文化の重視,先祖や子孫の永続的存在との関係が影響して いたことを明らかにした.そして,病いの体験の意味づけこそが,高齢者の生き方を導く力 になって人生の統合のプロセスを支えており,「無知の姿勢」と病いの体験の意味を理解す る「専門的姿勢」の態度の重要性が示された.コンサルテーションや看護カウンセリングとは異なる,また入院生活という環境ではない高齢者が 住み慣れた家族や先祖とのつながりを強く意識する在宅での日々の生活の中での後期高齢者の スピリチュアリティの特徴と意味づけの統合プロセスに則した相互主観化をもたらす対話援助の重 要性を明らかにした.今後増加が見込まれる後期高齢者の病いの体験をスピリチュアルな強さに置 き換え全体的な健康のバランスをとりながら最期まで自分らしく生きることにつなげることのできる看 護の可能性についてケア実践を通して示したことは,今後の看護学の発展に寄与すると考える.
以 上 の こと か ら, 本 論文 は 独 創性 , 発展 性 ,看 護 実 践へ の 寄与 が 十分 考 え られ , 博士(看護学)に値するものと判定された.