・一一J44−
第37巻 第1号
144研究ノート
米国自動車保険約款免責条項論(1)
坪 井 昭 彦
私ほかねてより戦後大きくクローズ・アップされてきた新種保険・就中自動車保険に興 味を持ち,将来機会を見てこの分野に関する研究を行って−みたいと考えていたのである
が,今後の貿易自由化の進展とともに,資本九再保険消化力,引受技術等において一日本 の損害保険会社を遥か紅凌鴛する英米の一・流会社が多数且本格的にわが国の保険市場へ進 出して−くるこ.とも充分予想されるので,わが国の損害保険業者もこれらの優れたサービス
をもつ外国の損害保険会社に立向うために国際競争力をつけ,激烈な競争に幻勝つこと
(1) 必要であると考え,そのためにほ,担保危険の拡張,経営の合理化による保険料の引7
その他保険技術の向上を図ると同時紅,わが国の自動車保険普通保険約款をより一層完備 し,外国の諸自動車保険約款に優るとも劣らないものを作成することが必要であることを 痛感し,その一一・助にもと考えて,米国の損害保険会社が現在わが国において使用しつつあ
、=■ る自動車保険約款を,仮令少しづつでも解説してみようと考えるに至った。そこで私は,
(3)
さきに,′、「米国自動車保険約款第一・条について」という小論において,自動車保険約款の
(1)わが国で営業を行っている外国の損害保険会社の元受収入保険料のなかでほ,新種保 険が最大の比藷を占めており,その中でも,自動蟄保険の保険料が圧倒的に多いといわ れる。これは彼等が駐留軍関係者,外国商社等の自動車保険契約を独占していたため と,最近では日本人物件にも手を延ばし,日本の損害保険会社が行っていない条件,
率を提示して契約を撹得せんとする傾向が次第に強まり,しかも着々と日本人物件につ
いての契約を増大しているためである。従ってわが国の損害保険会社もこれに対抗する ため,何らかの手を早急に打つことが必要であると考え.る。
(2)米国の自動車保険約款紅ほ, Domestic or Home Automobile Policy(米本国lで 使用する国内用の保険証券)と Foreign Automobile Policy(本国外において使用す べきものとして作成せられた国外用の保険証券)との二層類があり,両者の内容には多
少の相異がみられるが,我々日本人がわが国において利用するのはFoIeign Palicyの 方であるので,本稿ではFo工eign Policyを採り上げること紅した。
(3)香川大学経済論叢 第35巻第1号。なお私はこ年前本稿の結びにおいて,わが国の自
動車損害賠償選任保険における賠償額の飛躍的増額実現の必要性を強調したのである
が,最近の新聞等の報ずるところによれば,自動車損害賠償責任保険(強制保険)の夢
議会(大蔵大臣の諮問機関)は昭和38年12月19日に大蔵省で総会を開き,自動車事故の
米国自動車保険約款免茸条項論(1) ー㌧ね等・−
ぅち・特にInsuringAgreezDentIのみを採り上軌担保危険について極めて簡単に検 紳加えたのであるが,今回は兵務上しばしば問題となる免責条項(Exclusion)につい
て吟味を加えてみたいと考える0米国の自動車保険約款免責条項は,全部で十力粂から成っているため,−‥ニ回でこれ らの全免賓条項を解説することほ無理であるので,今後何回に分けて逐条解説を試みるつ
もりモある0ただ遺憾なことにほ,保険のこの分野紅関する資料が他の分野に比較して極 めて少ないために,独断的な見解となるところが多々あるのではないかと恐れる。その反
面わが国に この種の論文が少ない現在・私のこの小論が保険学界及び業界紅いささかでも 稗益するところがあれば睾である0先輩諸氏の今後の御叱正・御教示をお願いしてやまな
t、。なお本論文の執筆紅際しAmeIicanInternationalUnd?ZWriters,JapanInc・・,新種 部の皆様より多数の資料を提供して戴いたことを記して衷心より感謝の意を表したいと 思う◇
1
世界の先進国における交通事故による損害ほ,近年における自動皐の驚異的な増加と共 に益々深刻な社会問題となってきつつあるが,特に米国=こおいて−ほその感がひとしお強
(4) (5) (6)
く,1958年,1960年及び1962年紅おける交通事故による死傷者数及び物的損害(PIOpeIty damageloss)の額ほ,下表の通りであり,これらの数字ほ今後も逐年増加するものと思 われる。
害者にたいする賠償金の支払い最高額を現行の50万円から最高130万円(死亡の場合は 現行の二億の100万円)に引き上げるなど,同保険制度の改善案を決め大蔵大臣に答申 し,本年2月1日から実施に移すことになったとのことであるが,これは正にわが恵を 得たりの感が強い。ただ今少し欲をいうならば,もっと早く実施して−もらいたかったこ とと,諸外国における賠償金の最高額と比較すれほまだまだわが国のそれほ偲すぎると いうことであるが,人命尊重の意識の低いわが国において−ほ−・時に多くを望むことの方 が無理かもしれない。できる丈早い機会に再度最高賞任額の増額が行われることを切望 する次第である。
(4)UhSBureatlOf the Census,StatisticalAbstract of the United States,1959
(5)The Wo工1d Almanac1962and book of facts
伯)1963年一年間における全米の交通事故による死亡者総数ほ43,400人であり,全損害額
ほ77億ドル(2兆7,720億円)にのぼった。なおわが国における交通事故は,昭和38年皮
紅ほ,発生件数528,909恥死亡者総数12,297人,負傷者数356,363人であった。
第37巻 第1号
1958年 1960年 1962年
死 者 37,000 37,16q 41,000 重 傷 者 1,350,000 1,450,000 1,500.000 物的損害額 19billion 2 5 billion
仙・J46岬これらの自動貴事故及びそれに因って生ずる損害紅対し保険の与え得る援助ほ,事故減 少のための活動(activities)を行うこと及び保険活動(insuIanCe aCtivities),即ち出
(7)
来る丈広範囲のグル−プに危険を分散させることの二つである。
自動亀保険における保険事故発生の防止及び軽減のための活動は,運転技術の改善,還 転の際の注意,過失の防止,適当な事故防止設備の利用,交通取締り及び交通規制におけ
(8) る技術の向上,交通安全教育の普及,を促がすなどの所謂啓発的作用と,保険者の側にお
ける保険料の増減による調整及び被保険者の選択等によってこれを達成することができ る。例えば保険証券保持者の事故件数によりまたは自動車の年・型等を−・定の基準と比較
(9)
することによって保険料を調整すること,即ち事故件数の多い運転者の場合また
■ll)l
場合には保険の引受を拒否するかまたは割増保険料を徹して引受けるなどの方法がこれ ある。またある−・定期間(通常一年間)無事故であった場合には,安全運転匿対する
(11)
の報酬として,次期保険期間に対する保険料の何パーセン1・かを割引き,将来における安
(7)RJ.Hensley,NonlifeInsurance,1962,p.118
(8)保険業者ほ率先して交通安全協議会のような組織(米国にほ全米安全協議会なる組織
がある)を作り,交通道徳に関する教育運動(educationalcampaigns)を行ったり,
あるいほ運転者訓練計画(driveItraining prograns)等を実施して,交通事故防止 に協力することが望ましい。また検察庁や裁判所は,「交通数人」をひき起す悪質な遜 転者紅対しては,「未必の故意」として殺人罪を以て断ずるなど,厳罰主義でのぞむこ とを希望する。
(9)G.W.Gilbert,MotorInsurance,1949,pI4;J.HMagee,GeneralInsurance,
1955,pり373;JH.Magee,PropertyInsurauce,1947,p492;RI,Mehr and E・
Cammack,Principle ofInsurance,1960,P 390;R=RiegelandJ。S.Miller,Insur・
ance Principle and Practices,1954,p‖639;W‖H Rodda,Fire and Property
Insurance,1956,p,382(10)A Ⅰu一,.Tapan杜においては,事故件数の多い外人被保険者の場合,NameCaId及 びExpiraton Cardに赤字で Flag の字を書込み,次回からの更新(Renewal)又は 延長(Extension)を拒否することが行われている。但し自動車損害賠償保障法紅よる
「自動車損害賠償喜任保険」(強制保険)はこれを拒否し得ない。
肌 A・ⅠU・,√Japan社紅おいてほ,一年間無事故で通した日本人被保険者(但し米国の自
動蕃保険約款に基き保険契約を締結した著紅限る)に対し,無事故割引(Nocla植
ゎOn11S)を行い,次期保険料の10ノミ−・セントを割引くことにしている。わが国払おいて
も昭和38年7月15日より無事故割引取扱規定が適用されることになった。
米国自動車保険約款免責条項論 廿
−ム打一一全逓転匿対してT…つの刺激を与えることなども考えられる0
以上ほ交通事故防止に対する保険の技術的な面における操作についてのことであるが,
約款上 でも,保険者は負担する危険について種々の制限を設け,通常支払われる「走の保
「12)
段料を以ってはカバ−することのできない特定の危険を除外することれている0これは もしある小数の特種な危険によって大きな事故が頻発することになれば,結局は少数の保
検証券保持者のために多数の保険契約者が高い保険料の支払いを余儀なくされやことにな (13)
り,不合理な結果を生ぜしめることになるからである0従って保険者の担保する危険ほ通 償予想されたもののみに限定されるべきであり,保険契約上の特別の合意がない限り1保
廠者鱒特種な危険紅よって生じる損害については填補の責を負うぺきでほない0
2
米国自動車保険約款(第一・灸)ほ,保険者が原則として負担す−る危険を定めるに当っ
tト;\
て,AllRisks担保の形式を採り,自動津に関する一応一切の危険を保険者に負担せしめ ることにした。そして別に免責条項(Exclusion)を設けて,保険者の負担危険を制限し.
一応保険者が負担すると定めた危険のうちから免責条項において規定された特定の危険を 免責し,これらの除外された諸危険によって巷じた損害については保険者填補の茸を負わ
ないことにして−いる。本稿においてほ米国の損害保険会社が現在わが国において使用しつ つある自動車保険約款の免資条項について論ずることを主たる目的とするが,同時に,わ
カ潤の自動車保険普通保険約款の免責条項との比較を試みたい0
まず最初に,米国自動車保険約款免責条項(以下軍艦免責条項という)第1灸a項の原 文及び訳文を掲げる。
This Policy Does Not Apply:
ⅠUndeIany Of the Coverages,
(a)while the automobileis used as a public orlivery conveyance,unless
亀2)Mehr and Ca皿maCk,Op.Cit.,p179
闇 大きい危険は,小さい危険よりも,大きい負担(保険料)を課せられるように定めら れるぺきであり,それが保険料公正の原則に一激することになる(白杉三郎博士・保険 学総論・p32)。もしも特定の保険契約者に対して−のみ通常支払われる保険料を以て,
特種の危険を引受けること紅なれは,保険の団体的関係における被保険者平等の要請に 反することになるからである。
舶 拙稿,「米国自動皐保険約款第一桑について」香川大学経済論叢第36巻第1号p‖28
参照。
第37巻 第1号
148−−りぶ一
such useis specifically declareユand describedin this policy and pre−
mium charged theIefor;
「本保険証券は,下記のものに対しては,これを適用しない。
Ⅰ 仝担保を通じ,
(a)自動車が公衆用または賃貸用として使用されている問。ただし,かかる使用が 特紅申告され,かつ,本保険証券に記載され,これに対して保険料が徹されてい
るときは.この限りでない。」免貴条項第1条は,a,bの二項から成り,保険約款第1灸(Insuring AgreenentsI)
の全ての担保条項を通じて保険者を免責とする諸危険を列挙しているのであるが,今回は 免責条項第1条a項のみを採り上げて論じることにしたい。
3
免責条項第1条a項は,自動皐が旅客運送等の公衆用に使用されるか又ほ賃貸されてい
(15) (16)
る間に生じた損害紅対しては保険者填補の窟を負わない旨規定したものである。けだし自 動車がかかる目的に使用されるときは,「娯楽用及び業務用」(Pleasureand Business)
(1丁)
又ほ「商業用」(CommeICial)に使用される場合と比較して,危険発生の可能性が大とな
(18) (三9)
り,また狼害も高額となる場合が多いからである。
自動車が公衆運送に使用される場合,記名被保険者またほ.その使用人が運転者となり,
u5)Rodda氏は, Useof theautomobile to carry passengers for hireorasadriver 1essfor rent caris considered to be use asa publiclivery. (Rodda,Op。Cit・・
p.373)と述べ/ている。
(10 S。RAckerman,Insurance,1948,pp547,555;C A.Kulp,CasualtyInsurane・
1956,pp,168,190;P,Gordis,Property and CasualtyInsurance,1953,pp。401・
448;S.S.Huebner,PropertyInsurance,1938,p.532;Magee,GeneralInsurance,
1955,pp,368,388,392;Magee,PropertyInsurance,1947,pp.452,476;
Mehr and Cammack,OP」Cit・.pp180,385;Riegeland Miller,OplCit・,pp626・
636;Rodda,OpCit.,p,373;
(17)自動車の周途の区別についてほ,A・HlMowbrayandRH・Blanchard,Insurance・
1955,p.187;Magee,PropertyInsurance,p446;内外約款研究会・「内外自動薄保 険普通保険約款の比較」〔〕損害保険研究第17巷第2号p169参兼。
仕切 自動車を賃貸した場合,賃借人ほ,自動車が自己の所有物でないため,無謀な運転を したり,手入れを怠るなど,オクナーー‥ドライバ−・の場合よりも事故を起す可能性が大 きいことが考えられる。
8功 旅客運送の場合,被保険者ほ乗客から料金を受取るから,事故が発生した場合にほ適
常の乗客の場合よりも高額の損害賠償金を支払わねばならない可能性が大である。
米国自動車保険約款免貴条項論(1) ーJ尋9−
眉働車をハイヤー(bi工・e)として使用し,その対価として乗客から料金を取得するから,乗
客の身分ほ通常の客(0Idinaryguest)から料金を支払う客(payingguest)紅変更され・ (20) 成って乗客の傷害又は死亡紅対する被保険者の賓任ほ著しく増加することとなる0しかし
磯辟険者による申告がある場合を除いて,自動車がかかる目的に使用されている間に生じ 允乗客の傷害については・保険者ほ填補の責任を負わないから,被保険者はかゝる場合の
避保を粛聾するときにほ,予めその旨保険者に通知し,日割計算(pI0Ⅰ・ata=こよる割増保 (21) 験料を支払って襲寄(endoISement)をしてもらわねほならない0またかかる目的に自動車
を使用する場合,損害賠償責任額が通常の場合よりも原則として高額となることが予想さ
(22)
煎るからCoverageD(身体傷害賠償責任担保)のもとにおける支払貴任限度額(Limit のfLiability)の引上げをなすことが望ましい。
次に眉勤番を賃貸するということほ,対価(consideI・ation)の支払を条件把,自動車の
(28)
.占有(poss車On)を一噂他の者紅移転させることを意味する。従って賃貸料を取得して 貞勤番を質資する場合は勿論,被保険者が契約によ、り,その−・使用人に,自動車の費用
・(cost)及び維持費(upkeep)の−・部を支払うことを条件に,営業時間外に随時自動車の
(ヱ4)
使用を認める場合,これほ賃貸を構成するものと思われる。
以前本免責条項は for carIying personsfor a consideration という言葉を使用し
QO),.A」Appleman,Automobile LiabilityInsu工anCe,1938,p157;Magee,General rnSuraZICe,p388;MehrazldCammack,OP.Cit巾,p181;E.W Sawyer,Automobile
LiabilityInsurance,1936,p.108
馴 普通条項(Conditions)罪18条ほ次の如く規定している。
18Changes・Notice to any agent or knowledge possessed byanyagent Or by j、rany Qther person shallnot effect a waiver ora Changein any part of this
poユicy or estop the Co皿Pany from asse工ting any right under the ter皿S Of this pOlicy;nO工ShalltheノtermS Of this policy be waived or changed,eXCept by en・
dorsementissued to foIm a part thereof,Slgned byanauthorized repzesentative
O董the Company.「変更・代理店に対する通知,または代理店もしくはその他の者の 了知によって,本証券のいかなる部分も放棄またほ変更されることなく,また当会社が
∴本証券の条項にもとづく梅利を・主張することを妨げられないものとする。本証券の条項 埠,・本証券の山部をなすものとして一発行され,かつ,当会社の正当なる権限を有する代
理人によって署名された裏書によるものでなければ,放棄または変更されないものとす る」。従って如何なる変更も,全て会社を代表する権限を与えられた者の署名する表音
,の発行によってのみ有効となる。
舶 拙稿,前掲,p・30以下参照。なお支払責任限度額の詳細紅ついてほ,pp31,32参照。
83)Appleman,OpCit.,p168
舶Ibid−,p169
第37巻 第1号
−−j5クー
(25) (2¢ノ (27)
ていたが,りconsideI・ation という言葉ほあまりにも広義であるので,その後 cha柑e て という言葉に置き代えられ,今日でほ used as a public oIliHry COnVeyanCe とい
(28)
う言葉のみが使用されている。
また数人の自動車の所有者及び運転者がカー・プール(CaI−pOOl)において自動車への・
搭乗(ridel)及び費用(expenses)を分担する約束をなすことほ,料金を取得して一乗客な
(29)
運送す・ることとは見なされない。特定の事態がカー・プールを構成するか,あるいは旅客
遅速を構成するかという問題ほ,費用の現実の分担が存在するか,あるいほ自動車の運魔
(30ノ
者が利潤獲得の目的をもって乗客に対し料金の請求をなすか否か,にかかっている。
4
被保険者が自動車を旅客運送に使用するかまたほ賃貸することを希望する場合にほ,そ の旨保険者に碑名し割増保険料を支払わねぼならない。例えば長期間日本に滞在している 外国人(被保険者)が外国人観光客のガイドを引受け,彼自身かまたほ彼の使用人が運転
(25)Ibid…P,153;Sawyer,Op.Cit.,p.106;Magee,GeneIalInsurance,p…392;
Magee,PropertyInsurance,P.476
C6) Consideration という言葉ほ,乗客の身分を変更させ,その結果乗客に対する運転 者の注意の程度を変果させる報酬(emolument)を意味する。従って契約者の一斉に対 する損失(detriment)の一切のものを含み,また契約者の他方に対する恩恵(benefit)
、 の一・切のものを含むから, COnSide工・ation は現金紅よる支払以外のものを意味するも のと解す・る。例えば,被保険者自身はある特定の場所に行く用事はないが,他人から依
頼を受け,その場所に行くまでに支出せられた貴用(expensesincuz・red)の−I部又ほ 全部を支払うという約束のもと紅,その依頼人を運送した場合,その際にその依頼人か
ら支払われる費用ほ consideIation 紅該当するものと解する。この場合,対価の支払 は乗客自身紅よって−なされることを要せず,支払が乗客のため紅第三者(any tl由 peI■SOn)によって−なされればそれで十分である。しかしもし被保険者が,他人の依頼の 有無に拘ら・ず,彼自身ある特定の場所に行くことが必要である場合,同乗の依頼人匿よ
ってなされた費用の一・部の支払は対価とほ.見なされない。費用の支払ほ現金払(ca血 payment)のみならず,gaSOline又はOil等の現物による支払でも差支えない。
即 cbaI・ge とほ,自動車の所有者と乗客の間で約束をなし,乗客が彼の運送紅対して 支払いをなすことを意味する。この場合,運送の費用を友好的紅分担しても,それが 実に支出された費用(actualexpenses)を超えないか,または自然消耗(Wear and tear)及び一切の雑費(al1incidentals)等をカバ・Tする目的でされなれない場合払 は, CbaIこge とは見なされない。
C28)Magee,GeneralInsurance,pp.392,393;Magee,PropertyInsuranCe,pp‖476 477;MehI and Cammack,Op.Cit,,p・181
e9)Rodda,Op..Cit。,p。373;Gordis,Op Cit.,p.401
(30)Rodda,Op.Cit.,pl373
米国自動車保険約款免責条項論(1) ・−ヱ5J−−
者となり,自己所有の自動車を使用して−各所を案内し,その対価として料金を取得する場 各または機械据付け指導のたあ把ある−雇期間日本に滞在する販売担当技師(sales
e点画eeI・)等に自己所有の車を,契約により,月決めで賃貸する場合,被保険者はその旨 保険者紅申貸し保険者の同意を得,割増保険料を支払って自動車を使用または賃貸しなけ
ればならない0保険者はかかる場合・通常,○年○月○日から○年○月○日まで自動車が 旅客逆送紅使用されるかまたは賃貸されることを認める旨の裏書を発行して,日割計静に
まる励増保険料を徴収する0もし被保険者が保険者の許可を得ないで,自動車をかかる目
(3l、
的に使用した場合,その使用期間中,保険者の責任は休止(suspend)する0旅客運送の 場合,たとえ数人の乗客のうちの一人のみが料金を支払い,他の者は支払わない場合で
(S2)
も,保険者の責任は休止するものと解する0この場合の suspend という言葉は,通常 チ・suspenSionendoISement において使用されている suspend の意味とは若干異なる
(33)
ものであると思う。米国の自動皐保険約款ほ. suspension については何ら規定を設けて いないが,かなり要要な事項であるので,詳述する。例えば駐日米大使館員である被保険
者が休暇中に−・時帰国するかまたほ海外旅行のために自動車を30日以上使用せずにガレー汐に入れておく場合には,その旨保険者に通知して,再び自動車を使用するまでの期間,
傑険を休止させることが出来る。この場合,保険者は被保険者から休止(suspension)の B力 Rodda氏ほ, Use of the automobile as a p11bliclivery or conveynance sus−
pendstheinsurance during usel・ (Fireand Property hsurance,p.373)と述べ,
Appleman氏ほ, The exclusion operates only to suspend cove工age during that intervalい (A11tOmObile LiabilityIusurance,p164)と述べている。Cf.American Lumbermen s Mut11al Casualty Co.,VWilcox(1936)16 Fedr Supp.799.また Gordis氏は, Any carIyingofpassengeIS forhir?・Orrentingthe automobile
to others for their use would opeIate tO uSpend coverage under the policy,
unless such use was statedin the policyハ (Propertyand CasualtyInsurance,
p401)と述べている。
㈲ Appie皿an,Op。Citい..p..163
133)GilbeIt,Op Cit.,ppl28,29,67;Magee,GeneralInsurance,ph367;Magee,
PIOpeItyInsurance,p488;Gordis,Op.Cit。p‖454;MowbIay,Op.Cit..,p。188 なおわが約款第15条は,「本保険期間中保険ノ目的力引続キ30日以上運転ヲ休止セラレ
タル場合二於テハ保険契約者又ノ\被保険者力運転ノ休止及再開二際シ予メ書面ヲ以テ其
ノ旨当会社へ通知レ且保険期間中当会社ノ填補スへキ損害力発生セサリン場合二限り当
会杜ハ運転休止期間毎30日ヲ一期トレ其ノ期間二鳳スル日割計算二依ル保険料ノ五割ヲ
保険期間満了後保険契約者二返還ス但シー期二満タサル日数二対ソテハ之ヲ返還セス」
と規定している。従って雪国等把おいて冬期の運転休止が引続き30日以上に亘る場合
虹は,保険期間中保険者の填補すべき損害が発生しなかった場合に限り,被保険者は保
険期間満了後保険料の返還を受け得るものと解する。
−→ヱ丘2−
第37巻 第1号
152請求があると,休止衷寄を発行して保険を休止させ,被保険者から再び自動車を使鳳する 旨の通知があると,保険契約を復活させ(Ⅰ・einstate)る。しかしこの場合,被保険者は通 常全てのCoverages(すなわちCoveragesA,B,D,E及びF)につき休止の請求をな
($4)
す場合は少なく,Coverage A(綜合危険担保)についてほ保険者の危険負担継続を索望 することが多いのでTCoveIage B(衝突,赦覆),CoveragesD,E(対人及び対物損 害賠償貸任担保)及びC0VeI・age万一(医療費担保)については,自動車を使用しない場合,
板書発生の可能性は全く考えられないので仙−−CoveIageAを除く他の全てのCoverages を休止させるとすれば,その休止されたCoveragesについてほ休止された期間中保険事 故が発生しなかった場合に限り,保険を復活させる際に日割計算による保険料を被保険者 軋返還することにしている。もし保険がその後復活されない場合には.,保険休止発効の
日(effectivedateofsuspension)において−契約ほ解除されたものと見なし,短期料率
(SboI−t−Ⅰate basis)に基づき返還保険料を計静し,被保険者軋返還すること忙している。
保険契約が復活される場合にも,保険契約は頭初に定められた満了日(0毎inaトexpiI・a・
(35)
tion date)をこえて延長されることはない。
保険が休止している間,ガレージに入れて−おいた自動車が盗難にあい,賊が逃走中に他 の自動車紅衝突せしめて大破させた場合,CoverageAを保険に付している瘍合に限 り,被保険者は車体損害につき保険金を回収することができる。この場合,休止された Coveragesについての保険料の返還がなされないことは先述した通りである。
以上が保険の休止の場合に使用される suspend の意味であるが,自動車が本免責条 項紅おいて除外されている用途に使用されている期間中,保険が休止するということは,
その期間中については,発生する如何なる損害についても保険者ほ免賞であることを意味
( s6)
する。しかし申告欄紅記漉され{:いる目的に使用している間のCoveragesは無効とはなら
(ST)
ず,これ紅関しては保険者に填補責任がある。
(%)
次に申告欄第6項紅予め記被されている用途以外の用途に自動車が使用された場合に払
伽)拙稿,前掲,p.27以下参照。
05)Magee,Generalhsurance,p,367
(姻 但しこの場合保険が−・時休止しても,保険契約またほ保険契約期間そのものは存続し ていることに.注意すべきである。
(37)Rodda,Op..Cit.,p.373
餓 保険条項第8粂(Insuring Agreement VIII)は自動車の用途等について次のごと
く規定している。
米国自動革保険約款免責条項論(1) −▲J53−
policyPeriod,TerTitoIy,PurposesofUse
ThispOlicyappliesonlytoaccidentswhich occur・and todirectandacciden・
tallosseS tO the automobilewhich are sustained・du工ing the policy peIiod,
whiletheautOmObileisowned,maintainedand used for the purposes stated
?S8pplicabletheretointheDec】aIationsandis(1)withinthegeographicalarea specifiedinItem70fthe Declarations,0Ⅰ(2)if坤enamedinsured,sdomicile ontheeffectivedateofthepolicy periodisoutsidetheUnitedStatesofAme・
rica Or theI)0minionof Canada,Whilewithin the United States of America ortheDominionofCanadafor a period not exceedingthirtydaysduringthe policyPeriodcommencingwiththedate ofthe arrivalof the namedinsured
orof theautomobile,Whicheversha11firstocc11r 保険期間,地域,用途0
本保険証券は保険期間中自動遠が申告欄一第6項を指す一に記載された目的のた め匿所有,管理,使用せられる間に生じた事故並びにその虐接にしで且つ偶然なる損害 紅対してのみ適用せられる。また,(1)申告欄第7項に記載された地域内か又ほ(2)保険 期間開始の時における記名被保険召の住所が米合衆国かカナダ以外の地紅在るときは,
記名被保険者か自動車のいずれか−・方が米合衆国又ほカナダに到達した日から開始す之
保険期間内の30日を超えない期間に対して適用される。」
この規定により,申告欄に・記徹された目的(第6項)又は地域(第7項)以外の目的 又は地域で使用されている間紅生じた自動車の損害及び損害賠償賃任等については保険 者免穿と解すペきである。
申告欄第6項にほ,日本で使用される保険証券の場合,The purposeforwhichthe automobileis to be used are Pleasure and Business: unless otherwise sateted
her・ein:BUSINESS AND PLEASURE BUT EXCLUDING MOTOR CONTESTS
OFAuLⅨINDS の印刷文言があるので,「娯楽用及び業務用」以外の用途に使用す る場合には,その旨保険者に通知し,必要な場合には割増保険料を支払わねばならな い。またト切の種類の自軌車競争を除く」と規定しているので,自敷革競争に因って 生じる損害については保険者免苛であることはいうまでもない。しかし被保険者が競争 のために自動車を使用することを希望した場合,保険者は,割増保険料を徹して\競争の 危険を引き受けることがある。(ここに云う競争とは,競争それ自体(例えばオート・レ
−ス)を目的として自動車を使用することを意味し,他車を追披いたりあるいほハイウ
ェイで他車と−・時的に並んで競争する場合を含まない)申告欄第7項にほ本保険証券が適用される地域を記載するよう紅なっており,わが国 で使用される保険証券には「本保険証券が適用される地域正目本国内のみとする。」(Tbe geographicalareain which this policy appliesisJAPANONLY)と印刷されて
いる。米合衆国又ほカナダ以外の地域(例えば日本)で保険契約を締結した被保険者が保険 期間満了前に米合衆国又ほカナダに帰国するか又ほ移動する場合,被保険者か自動車か
いずれかのうち早き方の−・方が米国又はカナダに到達した日より起算して保険期間中の
30日を超えない期間につき保険者の填補責任は継続する。例えば軍人,大使館員又ほ駐日 米国軍事顧問団(MAAG∴丁)の要員が米本国に帰国を命ぜられた場合,被保険者かま
たは彼の自動車のいずれか一方の早き方が米国に到達した日から起算して30日間保険者
は危険を負担しなけれはならない。しかし保険期間の終了と同時に保険者の危険負担竃 任は当然終了するから,自動車の到達前に保険契約が終了することの明らかなる場合に
は被保険者は通常3ケ月間の更新か延長を保険者に要求し,米国到剰後30間日の危険を
−・J54−
第37巻 第1.号
154その使用期間中,保険者は填補の費を免がれること紅なる。例えば被保険者が自動車を
「娯楽用及び業務用」のために使用すると申告しておきながら,タクV−(taxicab)とし
($9)
て使用した場合,か⊥る用途に使用中発生した損害についてほ保険者は無芸である。またタ ンク・ローリー(tankloI■ry)を「商業用」に使用すると申告して−も,それが危険物運搬 のために使用される場合にほ,保険者の承認を得ることを要する。例えば以前化学肥料運 搬のため紅使用していたタンク・ロ−リー・を燈油(keIOSene)運搬のために.使用する場合
(40)
にほ・,保険者にその旨通知して承認を得なければならない。もし保険者の許可を得ないで 燈油運搬に使用した場合,その使用期間中の爆発に因る車体損害は勿論,損害賠償責任に
(41) ついても,保険者ほ填補の貴に任じない。従って被保険者は「危険の著しき増加あり」と
見る場合には.,その旨保険者に通知することを要する。けだしこ∴れは危険の変更と認めら れる場合であるからである。
危険の変更なる制度は,保険技術上の必要から生れたもので,その基盤ほ普知義務制度と 共通のものである。もし保険契約成立後,危険事情の変更に因り,保険者の予期しない危険 の変更が生じ,危険率に変動が生じたときは,ここに保険契約の基礎紅動揺を来し,保険契
負担してもらうことにしている。米約款の場合,保険契約を締結し得る最短期間ほ通常 3ケ月であるから,被保険者の希望する日数が3ケ月より少い場合であっても3ケ月間 の更新又は延長を必要とする。
次に「到達した日から開始する保険期間内の30日を超えない期間」という期間制限の
起静時は何時かということが問題となるが,英法では或る「日から」という場合,一腰 紅初日ほ算入しないから,被保険者か又ほ彼の自動車のいずれか早き方の到達した「日 から」30日を超えない期間と言えば,「被保険者が上陸した日」か又は「自動亜の陸揚
が完了した日」の午後12時から起算して30日を超えない期間につき保険者の責任は継続するものと解する。
(39)Rodda,Op小 Cit.,P‖371
舶 保険者は,燈油運搬に自動車を使用することを許可した場合,通常次のような裏書を 発行する。
It is understood and agIeed that as Iespects the vehicle insured undeI this
policy:
(a)the company shallbeliable forloss or damage caused by While the vehicleis being used for conveyance of kerosene
(b)theinsurance under this policy appliesonly whileth6ins11red vehicleisr being operated by the employee of the ass11red
阻)危険の変更,殊に危険の著しい増加紅ついて−は,青山博士「保険契約法」p.145;加
藤博士「火災保険論」p134以下「海上危険新論」p.831以下;葛城博士「海上保険研
究」下p,123以下;野津博士「保険契約法論」p.425;大森博士「保険法」p.194以下;
犬丸博士「改正.商法保険法論」p.113参照。
米国自動車保険約款免責条項論(1) ーヱ5β−
がその効力に影響を受けることとなり,保険者の負担危険と保険料の均衡が破れ,その 慮呆保険の合理的経営が阻害されることになる0かかる技術的理由紅より,保険者は・危 険変更後自動車に生じた損害については,填補の貢に任じない0
ここ紅危険の変更とは,保険契約成立後発生した保険者の負担危険即ち危険率の増加を
選味し・しかも著しい程度の危険の増加を意味・する0何が「危険の著しき増加」であるか
払告知義務の場合における重要な事実(mateIialfact)又は重要な事項とその関係ほ同
じであって,保険契約締結の当時,自動車が将来かかる危険物運搬のために使用されるこ とを予想したとしたら,保険者は全然契約を締結しなかったか,あるいほ少くとも同一償 顔料で契約を締結しなかったであろうと認められる場合である。
危険が減少した場合,例えば燈油運搬用のタンク・ローリ」−を化学肥料運搬のため紅使 用する場合には,被保険者ほ,保険者にその旨通知することを要しない。けだしかかる場
合匿は,保険者は,保険契約上の義務を履行する際に何等の不都合を感ぜず,保険契約も 々の効力に重大な影響を受けることがないからである。危険の減少の場合にほ,被保険者
が保険者にその旨通知した場合に限り,保険者ほ,残存の保険期間に対して,日割計算濫 よる保険料を被保険者に返還することにしている。
5
わが国の自動車保険普通保険約款にも本条項帯1粂a項と同旨の規定が設けられて−お
● 自動車が予め承認された用途,使用地域以外の用途又ほ地域で使用された場合,また 渾込書記戟以外の場所に格納された場合にほ保険者は無量である旨規定しているが,これ
(43)
についてほ中村一・郎氏及び内外約款研究会の論文があるので詳しくほそちらを参照された
・(4功 わが自動蚤保険約款第4条第2号は,「保険ノ目的力当会社ノ承認レタル以外ノ用途,
使用地域又ノ、格納場所二於テ使用又ハ格納セラルルトキ」に生じたる損害に対してほ,保 険者填補の買を負わない旨規定している。しかしこ.の規定に関しては,わが約款第8条 は,「保険契約者又ノ、被保険者ノ、保険ノ目的ノ用途,使用地域,格納場所又ノ、運転者ヲ 変更セントスルトキハ予メ当会社へ・申出テ当会社ノ番面二依ル承認ヲ受クヘン此ノ場合 二於テ危険ノ著レキ増加アリト認メタルトキハ当会社ハ割増保険料ヲ徴収レ又ハ本保険 契約ヲ解除スルコトヲ得但レ其ノ解除ハ将来二向チノミ効力ヲ生ス」と規定し,危険の
変黄匿ついて被保険者に通知義務を課しており,従って保険者がこれらの変更を承認し
た場合にほ保険者ほ損害の填補把応じる。また保険者が危険の著しい増加ありと認めた 場合は割増保険料を徹して引続き危険を負担するか又ほ保険契約を解除することができ ること紅なってし、る。
嘲 中村−・郎氏,「自動車保険」板書保険実務講座第6巻 p56以 ̄ ̄F;内列約款研究会,
前掲p・168参照。
川
岬J56−
第37巻 第1号
い。また自動草が競争,練習又は試験のために使用された場合には,保険者無賃となる旨
(44)