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著者 荒井 政治

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Academic year: 2021

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(1)

[新刊紹介] J.D.チェインバーズ、G・E・ミンゲイ 共著『農業革命1750〜1880年』The Agricultural Revolution, 1750‑1880. By J.D. Chambers and G.E. Mingay, London: Batsford, 1966.

vii+222pp.

著者 荒井 政治

雑誌名 關西大學經済論集

巻 17

号 4

ページ 669‑672

発行年 1967‑10‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/15249

(2)

『農業革命1750‑1880年』 (荒井)

669 

章)は難解ゆえ一番後に廻し,先ず,第

I I

編すなわち第

3

章から読み始め,最後に第

I

編 に入る方が理解しやすいのでないかと思われる。また,本書では比較生産費説とか貿易乗 数とか国院経済学の基本的な概念は既知のこととして書かれてあるので,それらについて は国際経済学,貿易論などの書物で充分な用意をしておく必要がある。(千倉書房, 昭和

4 2

4

月刊,

A 5

版,

2 8 8

ページ,

9 8 0

円) ― ‑ 山 本 繁 綽 ー 一

J•D ・チェインバーズ

G•E•

ミ ン ゲ イ 共 著

『 農 業 革 命 1750‑1880 年』

The  A

c u l t u r a lR e v o l u t i o n ,   1 7 5 0 ‑ 1 8 8 0 .   By  J . D .   Chambers and G . E .  M i n g a y ,   London: B a t s f o r d ,   1 9 6 6 .  v i i + 2 2 2 p p .  

農業革命は古くからイギリス経済史における最も重要な課題の一つとなっているが,近 年,工業化あるいは産業革命に対する関心が高まるにつれて,あらためて注目されつつあ る。これまで歴史家はイギリス農業革命の二つの面に関心をもってきた。一つは農業組織 と農業技術の改革によって土地の生産性が急速に向上するという経済的側面であり,もう 一つは囲込(エンクロージャー)という土地所有関係の変革によって農民の多くがプロレ

クリアに転化していく過程,いわば社会的側面である。これら二つの側面はともに工業革 命あるいはテイク・オフの論理的前提と考えられるが,現実には互に刺戟しあいながら並 行して進んだ。ちょうどメダルの表と裏の関係にあたる。わが国の学界では,これまで,

どちらかといえば,その社会的側面に注意が向けられてきたが,最近の経済成長史学の立 場では,むしろ経済的側面にいっそう強い関心が寄せられている。本書のウェイトも経済 的側面におかれている。

著者の一人チェインバーズはイギリス中部ノッティンガム大学の経済史教授であったが 最近退いて名誉教授。早くから大学所在の州の地方史研究に没頭,

1 9 5 3

年『エコノミック

・ヒストリー・レヴュー』誌にのった「産業革命における囲込と労働力供給」の論文はと くに有名。わが国でも昨年彼の

TheW o r k s h o p  of t h e  World  ( 1 9 6 1 )の訳本(宮崎・米

川訳『世界の工場』)が出たから彼の学風を知る人も多いだろう。 もう一人の著者ミンゲ イ(ロンドン大学)は農業史の専門家で

E n g l i s h ・ L a n d e d S o c i e t y   i n   t h e   E i g h t e e n t h   C e n t u r y   ( 1 9 6 3 )

の近著がある。

1 7 1  

---—---

(3)

本書は,まず序論で「農業革命の展望」を行なったのち,

1 8

世紀の初めから

1 9

世紀の

7 0

年代(このとき外国農業の競争によって,イギリスは農業恐慌に見舞われ,穀物中心から 選択的拡大作物一特に畜産ーヘの転換にふみきる)までの間を次の7章に分けて述べる。

1

1 8

世紀初期の農業,第

2

1 8

世紀と農業改良,第

3

章新農業,第

4

章囲込(エンク ロージャー)第

5

章繁栄と不況,

1 7 5 0 ‑ 1 8 4 6

年,第

6

章穀物法と地主階級,第

7

章集約農 業。そして最後に結論として「農業革命と国民経済」について論じている。

次に本書のメリットについて

3

つの点をあげておく。第

1

は本書が戦後の新しい地方史 研究によって哀打ちされていることである。戦後イギリスの農業史研究は極めて活発で,

1 9 5 3

年いらい

A g r i c u l t u r a lH i s t o r y  R e v i e w

という専門雑誌が出ているほどで,文献の ストックは加速度的にふえている現状である。したがって戦前の古い概説書は当然書き改 めねばならなくなっていた。ところで,イギリス農業史の標準書といえば,今でもアーン ルの

E n g l i s hFarming P a s t  and P r e s e n t  ( 1 s t  e d .  1 9 1 2 )  

(この書物は版を重ねて

1 9 6 1

年 にはフッセルとマックグレーガーのコメンクリーを付して第6版が出た)があげられるで あろうが,本文は既に時代遅れの個所が少くない。チェインバーズとミンゲイは自らの研 究を含む戦後の地方史研究の成果をとり入れて,一時代についてアーン)Mの書物に代る概 説を試み,新しい農業革命史像を提示した。

第2に,本書は歴史的変化に対する理論的分析に一段の進歩を示していることである。

これまでの農業革命の取扱いでは, しばしばジェスロ・タル, 「ターニップ」タウンゼン ド,アーサー・ヤングといった農業革命史の英雄の業績が大部分を占めたが,本書では市 湯価格,コスト,技術等,農業変化に作用する諸要因の分析を通じて農業革命を理論的 に説明する。とくに第5章では最も多くのページをさいて,それをもたらした諸要因の複 合作用を論じている。

3は囲込は「農民から土地を収奪」 し工業革命のための工場労働者群を創出したと いう,マルクスいらいの古典的見解に史実でもって反駁したことである(第4章)。この個 所はチェイバーズが

1 9 5 3

年に発表した前掲の論文と同じ主旨で,ノッティンガムシャーの 多数の村について行なった綿密な人口動態調査に基づいて,囲込まれた村の人口は囲込前 の人口よりいずれも増加している事実を確認し,囲込をもって農村の失業と農民離村の原 因と考えることに反対した。では,囲込によって農村人口はなぜ減少しなかったのか。著 者によれぱ,囲込によって労働需要が増加したために村内で雇用の機会が得られ,工業地 帯に出ていく必要がなかったからだという。すなわち共同地・荒蕪地の開墾によって耕地

1 7 2  

(4)

" ‑ ‑

『農業革命1750‑1880年』 (荒井) 671 

が拡大した地方では雇用は増加したであろうし,囲込それ自身が生垣作り,道路作り,農 舎や納屋作りの仕事を生む。それにノーフォーク4輪栽のごとき改良農法の下では決して 省力ではなく,むしろいっそう労働集約的になったから,耕地の拡大によって伝統的な農 村の手作業は増加したはずである

(98‑99

ページ)。

しかし本書にも問題点が無いわけではない。まず気にかかるのは農業革命の対象期間を

1750‑1880

年としている点である。従来,多くの歴史家は農業革命と工業革命はパラレル に進行したと考え,その終期は工業革命と同様,

1 8 3 0

年代におくか,せいぜい1

8 5 0

年に止 めた。しかし著者はそれを1

8 8 0

年まで延ばしている 。農業変化はその性質上,工業変化よ りもテンポが緩慢であるという特殊性があるとしても,これでは農業革命の意義をあいま いにするおそれがある。ことに農業革命における社会構造の変化を重視する者にとって は,

1 9

世紀半ば以降の「集約農業」

(HighFarming)

の時代まで含めることには異論が あろう。

もう一つの問題点は農業革命の社会的影響について著者の見解は楽観的に過ぎないだろ うか,という点である。たしかに農業革命は「それに見合うような労働力の供給増加を求 めずして,より大きな生産を可能ならしめた」

(3

ページ)し,「囲込は増加する人口のた めにより多くの食糧,より多くの耕地,そして差引すれば,農村におけるより多くの雇用 をもたらしたことを意味し,囲込まれた農場は1

9

世紀の新しい発展のための枠組を用意し た」

( 1 0 4

ページ)が,これには相当の代価が支払われていること,いいかえれば農村の最 下層(小屋住農,スクォッター)がその犠牲となっていることを,見落してはならない。著 者は農村における貧困の増大について,その根本的原因を囲込にではなく,

1 8

世紀後期に 速度を早めた人口増加に求める

(102‑103

ページ)が,この解釈に不満を抱く者は少くな いであろう。この時代に救貧対策の一環として,労働者に再びわずかの土地を与えんとす る土地割当運動が提案されたこと(農業資本家の強硬な反対のために普及しなかったが)

を想えば,囲込が貧困の一因でなかったとはいいきれないであろう。

移しい地方史研究のストックをふまえて,著者はかなり大胆に新しい農業革命史像を画 き上げた。それだけに問題もあろうが,ともあれ,本書がイギリス農業革命史研究の新し い出発点となることは間迩いない。この主題に興味をもたれる初学者は,例えば矢口孝次 郎『産業革命史研究序説』(昭4

2 )などによって,

まず産業革命の研究史を展望し, 問題 の所在を捉えた上で本書を読まれることが望ましい。椎名重名『イギリス産業革命期の農 業構造』(昭3

7 ) ,

飯沼二郎『農業革命論』(昭4

2 )

は本書の理解に役立つ。更に突込んだ

1 7 3  

(5)

研究に入るには本書各章の末尾に付された文献目録が最も良い手掛になるであろう。

ー 荒 井 政 治 _

執 筆 者 紹 介

有 田 本学助教授 (経済学部)

鶴 嶋 雪 嶺 本学助教授 (経済学部)

貞 木 展 生 本学助教授 (経済学部)

小 田 正 雄 本 学 助 手 (経済学部)

本 多 新 平 近畿大学法学部専任講師 岩 井 浩 本 学 助 手 (経済学部)

杉 原 四 郎 本 学 教 授 (経済学部)

山 本 繁 綽 本学助教授 (経済学部)

荒 井 政 治 本 学 教 授 (経済学部)

1 7 4  

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