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ドイツ刑事訴訟法における 起訴法定主義成立史研究序説

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(1)

起訴法定主義成立史研究序説

池 田 秀 彦

はじめに

 被疑者が犯罪の解明・予防に協力した場合の量刑規定を定める,2009 年7月 31 日のドイツ刑法改正法は,同年9月1日に施行された

1)

。同改正法により導入され た刑法 46 条 b は,被疑者の協力的行動について量刑上考慮し,刑を減軽しまたは 刑を免除することを認める。この改正法は,学者のほか,実務家及び実務家団体か ら様々な点について厳しい批判を加えられているが,その一つが起訴法定主義との 関係である。

 ドイツ刑事訴訟法は,刑事訴追機関に,訴追可能な犯罪が存在する場合に,「事 実に関する十分な根拠」がある限り,全ての被疑者の起訴を義務づけている

(刑訴 法 152 条2項

2)

。もっとも,今日この原則を貫くことはできないため,数多くの例 外規定が設けられており,刑訴法 153 条 b は,裁判所が刑を免除できる要件があ る場合には,検察官は,裁判所の同意を得て,公訴を提起しないことができるとし ている。刑法 46 条 b が刑の免除を定めているため,この例外規定により,被疑者 は犯罪の解明等に協力した場合には,起訴されないことがあり得ることになる。こ れが許されるのかという批判である。議論の詳細はおくとして,被疑者が犯罪の解 明等に協力することの見返りとしての不起訴は,起訴法定主義の趣旨からは,疑問 符がつきかねないものを含んでいるのであろう。

 このような議論を通して,ドイツの刑事司法において起訴法定主義に如何に重き が置かれているか窺い知ることができる。そこで,本稿では,この法改正を契機と して,我が国では紹介されることのない,ドイツの刑事訴訟法の基本原則の一つで ある起訴法定主義の成立史について検討し,成立の経緯等を明らかにすることとし たい

3)

Ⅰ.ドイツの訴追原則

 訴追制度のあり様は,一国の刑事司法の根幹に関わる問題である。犯罪があれ

ば,必ず処罰されるべきだとしても,捜査機関の捜査力,それにかかる費用等の面

からみて,それを完全に実現することの難しさは想像に難くない。また,刑罰を科

するかどうかという点について,政策的考慮を認める今日の刑罰観のもとにおい

(2)

て,その判断を裁判官にだけ委ねるのか,或いは訴追段階において検察官にもそれ を行わせるのかは,一つの問題である。さらに,検察官にその役割が付与されたと して,その判断を検察官かぎりの裁量によるものとするか,或いは司法コントロー ルの可能性を認めるかどうか,またさらに,その裁量の範囲・基準を明定するかど うかという点も極めて重要な問題である。こうした制度のあり方は,国によって異 なり,多様である。

 わが国の刑事訴訟法は,起訴便宜主義

(248 条)

を採用し,起訴・不起訴の判断 につき検察官に広範な裁量権を認めており,これに対する司法コントロールの可能 性は,極めて限られた範囲でしか認められていない

4)

。 これと著しい対照をなすの がドイツにおける訴追制度である。

 ドイツでは,起訴法定主義

(152 条2頂)

が採用され,一定の嫌疑のある事件の 訴追に関する検察官の裁量は原則として排除されている。そして,これを担保する ために起訴強制手続の制度

(172 条)

も設けられている

5)

 このような保障措置の施された法定主義は,被疑者の社会的地位に関わりなく訴 追が行われるという意味での法の下の平等をもたらすものとして,多くの学者によ って,その意義は極めて高いものとされている

6)

。しかし,他面法定主義を厳格に 実施することの難しさが次第に明らかとなり,1924 年に例外規定が設けられるに 至った。その後,例外規定の数は,漸次増加し,現在では,刑訴法 153 条から 154 条 e に定められている。例外規定は,大まかにいえば,4つの類型,即ち①犯罪が 軽微であり刑事訴追の利益が存在しない場合,②刑事訴追利益が他の方法で充たさ れる場合,③優越的な国家利益が存在する場合,④被害者自身が刑事訴追を行い得 る場合から成るが,具体的には,次のような場合である

7)

 ⒜ 軽罪につき,責任が軽微で訴追することについて公益が存しない場合

(153 条)

 ⒝ 軽罪につき,一定の賦課または順守事項を被疑者に課することによって,刑 事訴追に存する公益に代えることができる場合

(153 条 a)

 ⒞ 裁判所が刑の免除をなしうる要件が存する場合

(153 条 b)

 ⒟ 外国でなされた犯罪

(153 条 c)

 ⒠ 一定の政治犯罪に対する手続の遂行により著しい不利益がもたらされるおそ れのある場合

(153 条 d)

 ⒡ 一定の政治犯罪において,いわゆる行為による悔悟

(tätige Reue)

が認めら れる場合

(153 条 e)

 ⒢ 重要でない余罪

(154 条)

 ⒣ 一罪の一部

(154 条 a)

 ⒤ 被疑者が外国政府へ引き渡される場合及び国外へ追放される場合

(154 条 b)

 ⒥ 被強要者または被恐喝者がその犯した犯罪を暴露するとの脅迫により,強要 または恐囑をうけた場合

(154 条 c)

 ⒦ 民事法上または行政法上の先決判断を必要とする場合

(154 条 d)

 ⒧ 虚偽告訴または侮辱に基づく刑事手続または懲戒手続が継続している場合

(3)

(154 条 e)

 このように,多くの例外規定の存在を前にして,最近では,実証的研究に基づい て,法定主義そのものの実効性にも疑いの目が向けられ,法定主義による均一の法 適用ということを「政治的迷信」にすぎないと断ずる者も現れている

8)

。またさら に,起訴法定主義は,刑罰思潮の変化により「一部,その本来の理論的基礎を失っ た」とする声も聞かれている

9)

。しかしながら,かかる論者も,必ずしも法定主義 の意義自体を批判しているわけではない。

Ⅱ.ドイツ刑事訴訟法制定の経緯

 現行ドイツ刑事訴訟法典は,1987 年4月7日のそれであるが,その源泉は,

1877 年2月1日のドイツ刑事訴訟法である。この 1877 年の刑事訴訟法は,その形 式においても,その内容においも,度重なる改正が行われてはいるが,しかし体系 的乃至全面的改正は行われてはいない。殊に,本稿で取り扱う起訴法定主義につい ては,前述のように,その例外規定は,著しく増加しているものの,法定主義とい う原則は,少なくとも規定の上では,今日に至るまで,何等の変更もなされていな い。即ち,ドイツにおける起訴法定主義は,1877 年の刑事訴訟法によってその確 立をみたわけである。そこで,1877 年の刑事訴訟法における法定主義採用の経過,

その過程でなされた論議等について考察することにする。 しかし,この考察にあた っては,刑事訴訟法そのものの制定の過程の大要を知る必要があるので,以下で は,まず,刑事訴訟法そのものの制定の経過の大要をみた上で,次に,その中で,

起訴法定主義がどのような経過及び論議を経て採用されたか検討してみることにす る。

 なお,本稿において,その取り扱う問題は,1800 年代のことであり,これに関 する文献は相当あるにはあるようであるが,それを入手し或いはこれを閲覧するこ とさえ,極めて困難である。そこで,以下では,専ら,Hahn の Materialien と Glaser の Handbuch 等に拠りつつ叙述をすすめることにする。

 1 刑事訴訟法草案作成の経緯

 ⑴ 1877 年のドイツ刑事訴訟法の制定は,19 世紀の中頃から起こった統一法制 定の動きの一環としてなされたのであるが,その全体についての観察は,容易なこ とではないし,また本稿ではその必要もないので,単に刑事訴訟法の制定について だけ

(但しこれと密接に関連する他の法規に全くふれないわけにはいかないが)

叙述する ことにする。

 ⑵ 刑事訴訟法制定のための活動は,1868 年4月 18 日の帝国議会

(Reichstag)

及び同年6月5日の連邦議会

(Bundesrat)

の決議に基づいて行われることになり,

その準備段階として,最初の草案及びその理由書の作成がプロイセンのプレジデン

トである Friedberg と,その補助者である Löwe,von Lente,Erler 等によってな

された。この草案は,1873 年の年頭に,その理由書及び付嘱文書と共に,連邦議

会に提出され,且つ公にされた。これは,一般の著書において第1草案

(erster

(4)

Entwurf)

と呼ばれた

10)

 ⑶ このいわゆる第1草案に対して多くの批判が寄せられた。そこで連邦議会 は,1873 年3月 12 日に,改めて 11 人の法律家によって構成された委員会を設け,

草案を作成させることにした

11)

 この委員会は,1873 年5月 17 日から7月3日まで 39 回の会議を開き,3次に 亘る読会を経て,草案を作成し,これを連邦議会に提出し,この草案はその理由書 と共に公にされた。これは,第2草案または修正された草案

(revidierter Entwurf)

と呼ばれた。そして,この草案と併行して裁判所構成法の草案の作成も行われ た

12)

 ⑷ ところが,この裁判所構成法の草案について種々の問題

(中でも特に Schwur- gericht についての問題)

があり,その関係から刑事訴訟法についても,なお検討を 加える必要が生じた。このため,連邦議会は,4人の委員からなる委員会を作り,

この委員会は,前記の第2草案について2点の修正を施した上,これを 1874 年5 月 12 日に連邦議会に提出した。この間,裁判所構成法にも変更が加えられ,両法 についての最終的な草案は,1874 年 10 月 29 日に帝国議会に提出された。刑事訴 訟法についてのこの最終草案は,第3草案と呼ばれた。そして,この第3草案と呼 ばれたものが,帝国議会における審議の対象となった草案である

13)

 2 帝国議会での審議及び刑事訴訟法制定までの経過

 ⑴ この第3草案について,帝国議会の審議が開始されたのは,1874 年 11 月 24 日のことであり,それは単に刑事訴訟法ばかりでなく,裁判所構成法及び民事訴訟 法を加えた,いわゆる司法3法の審議として行われた。そして,議会において,各 議員の若干の意見の陳述があった後,Gneist の提案によって 28 人の委員からなる 委員会によって先議がなされることになった。そして,この委員会は,その中に文 言検討のための委員会

(Redaktionskommission)

を設けた後,1875 年6月 11 日から 翌年の2月 2 日まで 82 回に亘り第1読会を開き,草案についての検討を行った

14)

。  ⑵ しかし,その後連邦議会の決議があった関係等から,同委員会の第2読会が 1876 年5月2日から開始され,最初に連邦議会の決議の報告があり,続いて裁判 所構成法についての審議を含めて,逐条的審議が 1876 年7月3日まで続けられ,

さらにいわゆる編集上の変更をなした上,委員会としての報告書が作成された

15)

。  この報告書の提出の後,委員会で再度の審議がなされたが

(1876 年 11 月6日─ 14 日まで)

,これで委員会での検討は終わり,帝国議会での全体会議

(Plenum)

の第2 回の審議が開かれるに至った。

 ⑶ 帝国議会での全体会議における第2回の審議は,1876 年 11 月 27 日から 12

月2日までの6日間に亘って行われ,一応の結論を得たが,若干の条文につき,連

邦議会から異議が述べられたため,帝国議会での第3回の審議が 1876 年 12 月 20

日,21 日の両日に亘って行われ,その結果ここに 1877 年2月1日のドイツ刑事訴

訟法の内容が確定したのである

16)

(5)

Ⅲ.起訴法定主義の成立の経緯

 前記Ⅱにおいて,1877 年のドイツ刑事訴訟法制定の経過の大要を述べた。以下 では,この一連の立法過程の中で起訴法定主義が,どのようにして成立し,どのよ うな論議を経て確立されたかという点についてみることにする。

 1 刑事訴訟法草案における起訴法定主義の成立

 1877 年の法律においては,その 152 条2項が起訴法定主義を認めた規定であり,

この条文は,そのナンバーも,内容・文言も現行刑事訴訟法と全く同じである。し かし,前記の第3草案即ち後に帝国議会における審議の対象となった草案において は,それは 134 条2項に規定されており,その内容は次のようなものであった。

 即ち,同条2項は1項の「Zur Erhebung der öffentlichen Klage ist die Staats- anwaltschaft berufen」という規定の後をうけて「Dieselbe ist, soweit nicht ge- setzlich etwas Anderes bestimmt ist, verpflichtet, wegen aller gerichtlich straf- baren und verfolgbaren Handlungen einzuschreiten, wofern zureichende thatsächliche Anhaltspunkte vorliegen」と規定していた。

 これをみても判るように, 1項は現在の法律と全く同様であるが,2項について は,その文言に若干の相違がある。即ち,この草案規定中「etwas Anderes」が

「ein anderes」に,また[wofern]が「sofern」にと字句の変更がなされた。

 これは,議会における委員会の第2読会において

(前出⑵参照)

なされたもので あるが

17)

なぜそのように変更されたかについては明らかでない。おそらくは,単 なる文言の適否の問題であり,規定の実質には変わるところがないと思われる。

 また,この草案の 134 条2項の規定が,その準備段階における草案作成の際いつ 挿入されたかについては,Glaser によると第3草案においてはじめて入れられた ものとされている

18)

 2 起訴法定主義についての議論

 準備段階における草案作成の際に,これについてどのような論議がなされたのか については,さしあたって知る材料がない。しかし,帝国議会に第3草案が提出さ れた段階以後における説明,論議等については,ある程度これを知ることができる ので,以下その大要を述べることにする。

 ⑴ まず,草案理由書中

(Motive des Entwurfs)

,134 条2項について「罰せられ るべき行為がなされた場合,親告罪の場合を除いては,たとえ被害者が処罰の申立 てをしなくとも,犯人を処罰することが国家の一般的義務であるということがこの 第2項によって確認されたのであり,これによって,いわゆる起訴法定主義が明確 な承認をえたのである」との記載がある

19)

 ⑵ 次いで,1874 年 11 月の帝国議会の全体会議での最初の審議において,法務

大臣 Mittnacht により,草案に関する概要説明かおり,そこで Mittnacht は,法定

主義を導入する理由について大要次のように述べている。即ち,刑事訴追権を,優

先的に或いは排他的に検察官に委ねることに対しては,それによって公的秩序が脅

(6)

かされ,また個人の権利が侵害されるという疑念が表明されており,そしてその理 由は,検察官は原則として,上位の司法行政府に従属するという関係にあるからだ とされるのが常である。しかし,この疑念は,国家訴追主義と並んで,検察官の職 務行為について,いわゆる起訴法定主義が定立され,検察官は法律上別段の定めの ある場合は別として,犯罪についての十分な事実上の根拠の存する限り,全ての犯 罪行為に介入する義務を負うものとされる場合には,ある程度減じられるであろ う,と。

 この説明からは,検察官に訴追権を認めることに対する当時の懸念は,今日わが 国の公訴権濫用論にみられるような起訴が相当でない場合であるにも関わらず,公 訴の提起がなされることの懸念よりはむしろ,主として反対の場合,即ち起訴すべ き場合に起訴がなされない場合にあったということを窺い知ることができるであろ う。このことは,同草案が,検察官の不起訴処分についての不服の申立てや

(草案 145 条,146 条)

,私訴

(草案 335 条,336 条)

を認めている点などを考え併せると一層 明白になる。

 

 1874 年 11 月 26 日に帝国議会が設置した 28 人の委員からなる委員会は

(前 出Ⅱの2の⑴参照)

,1875 年6月 26 日の第1読会において,草案 134 条について討 議を行った。

 ここで Gneist は,法定主義について疑念を表明し,次のように説いた。即ち,

本条文が承認され,法定主義が厳格に実施されるなら,検察官は,現在の2倍の事 件に介入せざるをえなくなるであろう。しかし,プロイセンでは,検察官が無視す る告発の数は,年間 14 万件にも上る。響きのよい「法定主義」という文言のため に,何人もその訴追に関し利益を有しないような軽微な事件にまで介入することを 検察官に強いるなら,検察制度の効用の大方が失われよう。また,本問題と私訴の 地位とは,極めて密接に関係しているが故に,本条文を無条件に承認することはで きない,と。

 これに対し,ザクセンの検事総長で議員でもあった Schwarze は,Gneist と反対 の立場に立ち,ザクセンでの 20 年来の法定主義による好ましい経験を引き合いに 出したうえで,便宜主義によった場合に生ずる弊害を論難した。即ち,便宜主義に よれば,本来国家の元首にしか属さない広範な判断が検察官に委ねられることにな る。また,便宜主義によれば,区域ごとでの実務上の著しい差異がもたらされると 同時に,全ては検察官の個性や,時として気分にすら依存することになる。公衆 は,訴追に関する決定を検察官がいかなる理由をもってしたのか察すべくもないの であるから,検察官がすべての事件に介入しないことに不満を感じるであろう。検 察官自体も,明確で均一の指示を欠くため,確信がもてなくて迷うであろう。ま た,本問題と私訴の問題とは全く別の事柄である。補充的私訴は,補助手段でしか なく,それと法定主義の問題とは関係がない。そうでなくても,法定主義が実施さ れた場合には,検察官が公訴提起を拒否したにも関わらず,被害者が私訴を提起し たときには, 裁判所は,検察官の判断を信頼して,この訴を斥けるであろう,と。

 ここで,Puttkamer は,やはり私訴がいかかる範囲で許されるかが確定しない

(7)

限り,本条文についての最終的決定を行うことはできないとし,検察官の起訴独占 を維持するなら,法定主義が妥当しなければならないであろうし,これに対して,

私訴が広範囲において認められるなら,検察官がとるに足りない事件を無視しうる ような構成を行うことが実務の要請である,とした。

 続けて Gneist は,先の発言を敷衍して次のように述べた。即ち,便宜主義が支 配したプロイセンのような大きなラントにおいて,その結果は望ましいものであっ たし,公衆も,裁判所,検察官もこの原則を承認している。20 年来,プロイセン では,便宜主義につき,さしたる異議は唱えられていない。確かに,検察官に排他 的訴追権を与える場合には,便宜主義は,検察官にある種の不安をもたらすであろ う。しかし,この排他性がなくなれば,それもなくなるであろう,と。

 これに対し,Struckmann は,Schwarze の立場を支持し,Gneist の見解を逐一 論難した。彼は,ザクセンのような小さなラントでの経験を権威あるものと認めな い Gneist の態度が理解できないとし,プロイセンで1年間に無視される 14 万件の 中に,十分な証拠の欠如を理由に起訴の見送られた事件が非常に多くの数に上るで あろう,と説き,また極めて軽微な事件を訴追することに公益は存しないとする Gneist の見解をとりあげ,これは,刑法典を正しく理解するものではなく,刑法 が一定の行為を刑罰を以て威嚇しているのは,こうした行為を処罰することにつき 公益が存することを認めているからである,と批判した。さらに,私訴の問題をと りあげ,私訴の提起と維持により,種々のめんどうなことや出費が伴うのであるか ら,私訴を提起しうる可能性は,被害者にとって役に立たない,と説いた。

 また,Reichensperger に,原則として法定主義に賛成しつつも,それを徹底的 に貫くことを妥当でないとし,この立場から,Struckmann の主張に対して,刑法 典だけが問題となるのではなく,警察命令等も問題となる,と述べた。

 さらに,Völk も Gneist を論難し,Gneist がザクセンでの経験を権威あるものと 認めなかったのに対して,550 万の人口を有し,法定主義の支配したバイエルンの 例を引き合いに出し,バイエルンにおいては,予審判事

(Untersuchungsrichter)

が 告発されたすべての犯罪行為につき職権で取調を開始し,検察官の義務もこれと同 様であったが,別段不都合は生じなかった,とし,さらにプロイセンで年間 14 万 件の告発が無視されていたとするなら,それは刑法典を改正する差し迫った事態に あることを示すものにすぎない,とした。

 これに対し,Marquardsen は,絶対的な法定主義に反対の立場をとり,例えば,

5,60 人が関与した違警罪において,全員ではなく,一人だけが処罰される場合で も刑罰法規の目的が達成される,と論じた。

 以上のように,134 条2項につき,相当はげしい議論が展開されたが,結果的に

はその削除を求める明確な申立てがなかったため,票決に付せられることなく,承

認されたものとみなされた

20)

(8)

Ⅳ.起訴法定主義成立に関わる諸要因

 上記の審議内容からは,訴追原則として法定主義をとるか否かという問題が実務 上の考慮と並んで,私訴をいかなる範囲で認めるかという問題や,刑法の目的或い は実体法と訴訟法との関連性,さらには検察官の性格づけ等の問題と密接に絡みあ っていたことを窺い知ることができる。

 これを,前記審議内容を基に要約すれば,次のようにいうことができるであろ う。即ち,法定主義に反対する者は,法定主義を実施した場合に検察官の負担加重 がもたらされるという実務上の不都合を問題とし,また,刑罰理論として,犯罪が あったとしても必ずしも罰する必要はなく,またこのようなものについては起訴す るまでもない,という刑法の一般予防主義に立つ傾向にあり,さらに私訴をできる だけ広く認めようとする傾きがあった。これに対して,法定主義を支持する者は,

便宜主義によった場合には,訴追判断が検察官の主観的裁量に依存し,それによっ て訴追判断に地域的差異が生したり,恣意が入ったりするという実務上の問題を注 視し,また,刑罰理論としては,絶対主義の立場に立つ傾向にあり,さらに国法 上,当罰的なものとして定立された行為については,その軽重の如何を問わず全て 訴追のうえ,裁判所の判断をうけるべきだとの実体法に重点をおいた思想に立って いた,と考えることができる。そして,検察官による起訴独占を維持する限り当然 のことであるが,法定主義を支持する者は,私訴に重きをおいていない。

 それはそれとして,先にみたような Gneist に代表される有力な反対説があった にも関わらず,結局票決に付することもなく,134 条2項が承認されたことの背後 には,前に述べたように,当時においては,不当な不起訴処分の可能性に対する懸 念が非常に強かったことによるものと考えてよいであろう。

おわりに

 以上,1877 年の刑事訴訟法の草案における起訴法定主義の立法過程について若 干の考察を加えた。

 この原則の成立から 130 年以上経過した今日,この原則に関してどのような議論 が展開されているか,またどのような改正論

21)

が展開されているかといった点は 興味ある事柄であるが,これについては,稿を改めて検討することとしたい。

1)BGBl,. I, 2009, 2288.

2)因みに,刑訴法 152 条2項は「検察官は,法律に特別の定めのある場合を除き,訴追 可能なすべての犯罪に対して,事実に関する十分な根拠が存在する限り,手続をとら なければならない」と定める。本条の訳は,松尾浩也監修『ドイツ刑事訴訟法典』

(2001 年)によっている。他の条文の訳についても同様である。

(9)

3)本稿は,2009 年7月 31 日の刑法改正法の制定を機に,拙稿「ドイツ刑事訴訟法におけ る起訴法定主義の確立過程について」『創価大学創立 15 周年記念論文集』347 頁(1985 年)で論じた事柄を,新たに入手できた資料を基にさらに検討を加えたものである。

4)不起訴については,職権濫用罪につき,準起訴手続(刑訴法 262 条)が認められてい るほか,検察審査会の審査の対象となるが,不当起訴と目される場合の措置について は,法制上特別の手立てはない。ただし,検察官の訴追裁量権の逸脱が著しく,公訴 の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合には,公訴の提起は無効となり うる,とするのが判例の立場である。最決昭和 55 年 12 月7日刑集 34 巻7号 672 頁参 照。

5)因みに,刑訴法 172 条及び関連規定である 171 条は,次のとおりである。

第 172 条(起訴強制手続) ① 請求をした者が被害者であるときは,前条の通知を受け た時から2週間以内に,上級の検察官に対して抗告をすることができる。検察官に対 する抗告の申立てにより,前記の期間は,遵守される。この期間は,前条第2文の教 示がなかったときは,進行しない。

② 上級の検察官が抗告を棄却したときは,申立人は,その告知を受けた時から1月以 内に,裁判所の裁判を求めることができる。この請求ができる旨及びその方式につい ては,申立人に教示するものとし,この教示がなかったときは,前記の期間は,進行 しない。被害者が私人起訴の方法で訴追することができる犯罪のみに関する事件,又 は検察官が第 153 条第1項,第 153 条 a 第1項第1文,第7文若しくは第 153 条 b 第 1項の規定により公訴を提起しなかった事件については,本項の請求はすることがで きない。第 153 条 c から第 154 条第1項まで,第 154 条 b 及び第 154 条 c の場合も同 じである。

③ 裁判所の裁判を求める請求には,公訴の提起を理由づける事実及び証拠を示さなけ ればならない。また,この請求には,弁護士の署名がなければならない。訴訟費用の 扶助については,民事上の争訟の場合と同一の規定を適用する。請求は,裁判につき 管轄を有する裁判所に対してこれをしなければならない。

④ 第2項の請求に対する裁判は,高等裁判所が管轄する。裁判所構成法第 120 条の規 定は,性質上可能な限り,これを準用する。

第 171 条(告訴人・告発人に対する通知) 検察官は,公訴の提起を求める請求に応ぜず,

又は捜査を終結した後に手続を打ち切ったときは,請求をした者に対し,理由を付し てその旨を通知しなければならない。請求をした者が被害者であるときは,この通知 において,不服申立てが可能であること及びその期間(第 172 条第1項)を教示する ものとする。

6)Roxin/Schünemann, Strafverfahrensrecht, 26. Aufl., 2009, S. 71; Meyer-Goßner, Strafprozessordnung, 52. Aufl., 2009, S. 679.

7)以下,条文をあげる。

第 153 条(軽微な犯罪) ① 手続の対象が軽罪である場合,検察官は,行為者の責任が

微弱であり,刑事訴追に公の利益が存しないと認めるときは,公判開始に関し管轄を

有する裁判所の同意を得て,公訴を提起しないことができる。法定刑の下限が加重さ

(10)

れていない軽罪の場合で,犯罪行為により惹起された結果が軽微であるときは,裁判 所の同意は,必要でない。

② 公訴が提起された後は,裁判所は,手続のどの段階においても,前項に定める要件 の下に,検察官及び被告人の同意を得て,手続を打ち切ることができる。被告人の同 意は,第 205 条に定める事由により公判手続を行うことができないとき,又は第 231 条第2項,第 232 条若しくは第 233 条の場合で,公判手続が被告人の出頭なしに行わ れるときは,必要でない。裁判は,決定により行う。この決定に対しては,不服を申 し立てることができない。

第 153 条 a(賦課事項又は遵守事項の履行) ① 検察官は,軽罪の事件につき,所定の 賦課事項又は遵守事項が刑事訴追による公の利益を消滅させるのに適しており,かつ 責任の程度がこれを妨げないと認めるときは,公判の開始に関し管轄を有する裁判所 及び被疑者の同意の下に,公訴の提起を暫定的に猶予し,被疑者に対して賦課事項又 は遵守事項を課することができる。賦課事項又は遵守事項としては,特に以下のもの が考慮される。

1.犯罪行為によって生じた損害を回復するために,特定の給付を行うこと。

2.公共の施設又は国庫のために金員を支払うこと。

3.その他公共に役立つ給付を行うこと。

4.一定額の扶養義務を履行すること。

5.被害者との和解に真剣に努力し(行為者と被害者との和解 Täter-Opfer-Ausgleich),

その際自己の犯罪による損害の全部若しくは大部分を回復すること,又は損害回復

(Wiedergutmachung)のための努力をすること。

6.道路交通法第2条 b 第2項第2文又は第4条第8項第4文に基づく講習に参加す ること。

検察官は,賦課事項又は遵守事項の履行のため,第2文第1号から第3号まで,及 び第5号,第6号については6月以下,第2文第4号については1年以下の期限を 付する。検察官は,賦課事項又は遵守事項を事後的に取り消すこと,又は1回に限 り履行期限を3月間延長することができる。被疑者の同意があるときは,賦課事項 又は遵守事項を事後的に課すること及びこれを取り消すこともできる。被疑者が賦 課事項又は遵守事項を履行したときは,その犯罪行為を軽罪として訴追することは できない。被疑者が賦課事項又は遵守事項を履行しないときは,履行のため既に行 った給付は,返還しない。第 153 条第1項第2文は,第2文第1号から第5号まで の場合に準用する。

② 公訴が提起された後は,裁判所は,事実の確定を最終的に審査できる公判段階の 終結に至るまで,検察官及び被告人の同意を得て,手続を暫定的に中止し,同時に 前項第1文及び第2文に定める賦課事項又は遵守事項を被告人に課することができ る。この場合には,前項第3文から第6文までの規定を準用する。第1文に定める 裁判は,決定により行う。この決定に対しては,不服を申し立てることができない。

第1文により課した賦課事項又は遵守事項が履行された旨の認定についても同じで

ある。

(11)

③ 賦課事項又は遵守事項の履行のために付された期間の進行中は,時効は,停止す る。

第 153 条 b(刑の免除ができる場合) ① 裁判所が刑を免除できる要件がある場合,検 察官は,公判手続について管轄を有する裁判所の同意を得て,公訴を提起しないこと ができる。

② 公訴が提起された後は,裁判所は,公判手続の開始に至るまで,検察官及び被告人 の同意を得て,手続を打ち切ることができる。

第 153 条 c(外国において行った犯罪) ① 次に掲げる犯罪行為については,検察官は,

公訴を提起しないことができる。

1.本法の適用地域外で犯した罪,又は本法の適用地域外で行われた行為の共犯とし て本法の適用地域内で犯した罪

2.国内であっても,外国人が外国の船舶又は航空機内で犯した罪3.その罪につき 外国において既に刑の執行を受け,これを通算すれば国内において科すべき刑が重 要性を持たないとき,又は被疑者がその罪につき外国において無罪の確定判決を受 けているとき。

② 検察官は,本法の適用地域内の犯罪であっても,地域外における実行行為により犯 されたもので,これに対する手続の遂行がドイツ連邦共和国に重大な不利益をもたら すおそれがあるとき,その他著しく公益を害すると認めるときは,公訴を提起しない ことができる。

③ 検察官は,第1項第1号,第2号及び前項の場合においては,公訴を提起した後で あっても,手続の遂行がドイツ連邦共和国に重大な不利益をもたらすおそれがあると き,その他著しく公益を害すると認めるときは,手続のどの段階においても,公訴を 取り消し,手続を打ち切ることができる。

④ 本条の権限は,裁判所構成法第 74 条 a 第1項第2号から第6号まで及び同法第 120 条第1項第2号から第7号までに掲げる罪については,連邦検事総長に属する。

第 153 条 d(国家の安全等に関する犯罪) ① 連邦検事総長は,裁判所構成法第 74 条 a 第1項第2号から第4号まで及び同法第 120 条第1項第2号から第7号までに掲げる 罪については,手続の遂行がドイツ連邦共和国に重大な不利益をもたらすおそれがあ るとき,その他著しく公益を害すると認めるときは,公訴を提起しないことができる。

② 連邦検事総長は,公訴を提起した後であっても,前項に定める要件の下に,手続の どの段階においても公訴を取り消し,手続を打ち切ることができる。

第 153 条 e(積極的な悔悟) ① 裁判所構成法第 74 条 a 第1項第2号から第4号まで及 び同法第 120 条第1項第2号から第7号までに掲げる罪について,犯人が犯行後その 発覚を知らないで,ドイツ連邦共和国の存立若しくは安全又はその憲法秩序に対する 危険を防止するのに寄与したときは,連邦検事総長は,裁判所構成法第 120 条の規定 により管轄を有する高等裁判所の同意を得て,公訴を提起しないことができる。犯人 が内乱の罪,民主的法治国体制を危険にする罪,外患の罪又は対外的存立を危険にす る罪の実行の企てについて,犯行後関連する情報を官に申告したときも,同じである。

② 公訴が提起された後は,裁判所構成法第 120 条により管轄を有する高等裁判所が,

(12)

前項に定める要件の下に,連邦検事総長の同意を得て,手続を打ち切ることができる。

第 154 条(重要でない余罪) ① 検察官は,次の各号の場合には,公訴を提起しないこ とができる。

1.その罪の訴追により科せられるべき刑又は改善保安処分が,当該被疑者に対し,

別の罪のため既に確定判決により言い渡され,又は言い渡される見込みの刑又は改 善保安処分に比して重要でないと考えられるとき。

2.前号の場合のほか,その罪に対する判決が適切な期間内になされることが期待で きず,かつ,当該被疑者に対し,別の罪のため既に確定判決により言い渡され,又 は言い渡される見込みの刑又は改善保安処分が本人に対する効果及び法秩序維持の 上で十分なものと考えられるとき。

② 公訴が提起された後は,裁判所は,検察官の申立てにより,手続のどの段階におい ても,手続を仮に打ち切ることができる。

③ 別の罪のため既に確定判決により刑又は改善保安処分が言い渡されたことを考慮し て手続を仮に打ち切った場合,その刑又は改善保安処分が後に効力を失ったときは,

手続を再開することができる。ただし,時効が完成しているときは,この限りでない。

④ 別の罪のため刑又は改善保安処分が言い渡される見込みであることを考慮して手続 を仮に打ち切った場合は,その罪に対する判決の確定後3月以内に限り,手続を再開 することができる。ただし,時効が完成しているときは,この限りでない。

⑤ 裁判所が手続を仮に打ち切った場合,手続の再開は,裁判所の決定を必要とする。

第 154 条 a(訴追の限定) ① 検察官は,1個の罪の可分的な一部,又は1個の行為に よって数個の罪名に触れる場合のその一部が次の各号の一に当たると認めるときは,

罪のその余の部分又はその余の罪名に限定して訴追することができる。この限定は,

記録上明らかにしなければならない。

1.これにつき見込まれる刑又は改善保安処分が重要でないとき。

2.当該被疑者に対し,別の罪のため既に確定判決により言い渡され,又は言い渡さ れる見込みの刑又は改善保安処分に比して重要でないとき。

② 起訴状が提出された後は,裁判所は,手続のどの段階においても,検察官の同意を 得て,前項の限定を加えることができる。

③ 裁判所は,手続のどの段階においても,前2項の規定により除外された部分又は罪 名を追加することができる。検察官が追加を申し立てたときは,これを許すものとす る。除外されていた部分又は罪名が追加されたときは,第 265 条第4項を準用する。

第 154 条 b(犯罪人引渡し及び国外追放) ① 被疑者がその罪に基づいて外国政府に引 き渡されるときは,公訴を提起しないことができる。

② 被疑者が別の罪に基づいて外国政府に引き渡されるときも,国内における訴追によ り科せられるべき刑又は改善保安処分が,別の罪のため既に外国で確定判決により言 い渡され,又は言い渡される見込みの刑又は改善保安処分に比して重要でない場合は,

前項と同じである。

③ 被疑者が,本法の適用地域外へ追放されるときは,公訴を提起しないことができる。

④ 前3項の場合において,公訴が既に提起されているときは,裁判所は,検察官の申

(13)

立てにより手続を仮に打ち切ることができる。第 154 条第3項から第5項までの規定 は,この場合に準用する。ただし,第4項に定める期間は,1年と読み替えるものと する。

第 154 条 c(強要又は恐喝の被害者) 犯罪行為を暴露する旨の脅迫を手段として強要又 は恐喝(刑法第 240 条,第 253 条)が行われた場合においては,検察官は,脅迫の内 容とされた犯罪行為を訴追しないことができる。ただし,その行為が重大で,腰罪を 免れさせることができないときは,この限りでない。

第 154 条 d(先決問題の裁判) 軽罪に基づく公訴の提起が民事法又は行政法により判断 されるべき問題の裁断に係るときは,検察官は,民事又は行政争訟手続による問題の 解決のため,期間を定めることができる。告訴人又は告発人に対しては,この旨を通 知しなければならない。解決が得られないまま期間が過ぎたときは,検察官は,手続 を打ち切ることができる。

第 154 条 e(虚偽告訴又は侮辱に基づく刑事手続又は懲戒手続の係属) ① 虚偽告訴又 は侮辱(刑法第 164 条,第 185 条から第 188 条まで)を理由とする公訴は,告訴若し くは告発され,又は主張された行為に対する刑事手続又は懲戒手続が係属している間 は,提起してはならない。

② 既に公訴が提起され又は私人起訴がなされているときは,裁判所は,告訴若しくは 告発され又は主張された行為に対する刑事手続又は懲戒手続の終結まで,手続を打ち 切るものとする。

③ 告訴若しくは告発され又は主張された行為に対する刑事手続又は懲戒手続の終結ま で,虚偽告訴又は侮辱の公訴時効は,その進行を停止する。

8)Serve, Kriminalistik, 1970, S. 377.

9)Roxin / Schünemann, a. a. O., S. 71.

10) Julius Glaser, Handbuch des Strafprozesses, Bd. 1, 1883, SS. 188-190.

11) この 11 人の委員の氏名は,Glaser, a. a. O., S. 191 に注6として記されている。これら の委員は,ドイツの各地方から選ばれており,起訴法定主義の熱心な主張者とみられ る Schwarze が加わっている。

12)Glaser, a. a. O., SS. 190-192.

13) 第1草案及び第2草案の内容は,これを知る資料が今手元にないので,わからないが,

第1草案については Kritische Vierteljahrschrift für Gesetzgebung und Rechtswissen- schaft, Bd. 15, 1873 に掲載された Geyer の Bemerkung zu dem Entwurf einer Deut- schen Strafprozessordnung と題する論文によって,その構成, 各条文の内容等の大要 を知ることができる。これを第3草案と対比してみると,その条文数,条文の内容等 について若干異なるところがあるが,その編別,構成等においてはあまり相違はない。

なお Birkmeyer, Deutsches Strafprozeßrecht 1898, S. 20 は,この草案について,それ がドイツのどのラントの法律をも基本とせず,全ドイツの,さらにはドイツ以外の国 の訴訟法をも考慮して,これらの長所をとり入れた新しい訴訟法を作成することを企 図したものと評価している。

 また,Birkmeyer は,第2草案については,その体系及び基本原則において,第1

(14)

草案によったものであり,内容的にも,第1草案に若干の変更を加えただけであるが,

用語については重要な改正が加えられたものとしている(a. a. O., . 21) 。

14) Glaser, a. a. O., S. 193, 194. なお,この議会における審議の内容は,Hahn, Materialien zu den Reichs-Justizgesetzen, Bd. Ⅲ, 1, 2 Aufl., 1885, SS. 541-1144 に詳しい。

15)この記録は,Hahn, a. a. O., Bd. Ⅲ, 2, SS. 1175-1618 に掲載されている。

16) 帝国議会における審議については,Hahn, a. a. O., Bd. Ⅲ, 2, SS. 1693 ─ 2132 に速記録の 形で掲載されているので,これによってその詳細を知ることができる。

17)Hahn, a. a. O., Bd. Ⅲ, 2, S. 2209.

18)Glaser, a. a. O., S. 221. Anm. 10.

19)Hahn, a. a. O., Bd. Ⅲ, 1, S. 146; Glaser, a. a. O., S. 221. Anm. 10.

20)Hahn, a. a. O., Bd. Ⅲ, 1, SS. 707-709.

21)Deiters, Legalitätsprinzip und Normgeltung, 2006, 195ff.

参照

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