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六 力国協議 の仲介者 としての中国の役割

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33

〈論 説〉

六 力国協議 の仲介者 としての中国の役割

目 次 は じめ に

国 際紛 争 にお け る仲 介 の 役割 と機 能 外部 中立 モ デ ル と内部 参加 モ デル 六 力 国 協議 をめ ぐる東 アジ ア の地 域 的 状況

北朝 鮮 の核 開 発 を め ぐる国際 交 渉 過 程 と中国 の 関 わ り 六 力 国 協議 の 仲介 者 として の 中国 の 役割 の 評 価

は じめ に

1949年 の 国 家 成 立 以 来 、 長 年 に わ た っ て 中 国 は 、 そ の対 外 政 策 に お い て 多 国

間 交 渉 よ り も二 国 間 交 渉 を原 則 と して き た 。 とこ ろ が 近 年 、 胡 錦 濤 政 権 下 にお け る 中国 は 、 多 くの 多 国 間 交 渉過 程 に お い て 重 要 な役 割 を演 じ る よ うに な って

z)

きて い る。 特 に、2002年10月 の 第 二 次 北 朝 鮮 核 危 機 勃 発 以 来 、 中 国 は北 朝 鮮 の 核 開 発 を め ぐ る六 力 国協 議 の 枠 組 み に お い て不 可 欠 と も言 うべ き役 割 を果 た し て きた 。 中 国 の 台 頭 に懸 念 を示 して きた ブ ッシ ュ政 権 下 の ア メ リカ も、 六 力 国 協議 の 招 集 者 と して の 中 国 の 役 割 に 対 して は 、 そ の 重 要 性 を は っ き り と認 め て

7)

い た。 現 実 に は 多 くの 困 難 と停 滞 を繰 り返 して きて い る六 力 国 協議 で は あ るが 、 その 全 過 程 を通 じて 中国 は 、 協 議 の発 案 者 ・主 催 者 ・根 回 し と調 整 を通 じた合 意 形 成 の 促 進 者 ・他 の 協 議 当 事 者 間 の調 整 者 等 々 、 相 互 に 関連 した 多面 的 な役

1)中 国 の 伝 統 的 な 二 国 闘 外 交 の ス タ イ ル に つ い て は 、HarryHarding ,Cノ 〜"2傭Foreigzz Relationsinthe1980s(YaleUniversityPress:NewHeaven)1987.

2)佐 々 木 智 宏 胡 錦 濤 時 代 の 中 朝 関 係 」 中 川 雅 彦 編 『金 正 日 の 経 済 改 革 』 ア ジ ア 経 済 研 究 所(2005年2月)、55頁

(2)

割 と機 能 を果 た して きて い る。

この 小 論 で は 、 六 力 国 協 議 に お い て 中 国 が 果 た して き て い る多 くの 役 割 の 中 で 、 仲 介 者 と して の役 割 に注 目す る。 言 う まで もな く六 力 国 協 議 の 過 程 は 、相 互 に不 信 感 を抱 い て い る 当事 国 間 、 特 に 北 朝 鮮 と米 国 の間 に 、 最 低 限 の 信 頼 関 係 を築 い て 交 渉 の テ ー ブ ル に 着 か せ る こ とか ら始 ま る。 六 力 国 協議 の 仲 介 者 と して の 中 国 は 、 多 くの 困 難 に逢 着 しな が ら も、 交 渉 当 事 者 を テ ー ブル に着 か せ 、 北 朝 鮮 の 核 兵 器 放 棄 に 向 け て い くつ か の 重 要 な 国 際 的 合 意 を導 き 出 す こ とに成 功 して きた 。 しか しな が ら、 この小 論 を書 く2010年 春 の時 点 で は 、 そ れ らの 合 意 は ほ とん ど履 行 に は移 され て お らず 、 北 朝 鮮 以 外 の協 議 参 加 国 は 、 そ の 当初 の 目 的 で あ っ た 北 朝 鮮 の核 開 発 阻 止 を達 成 す る ど ころ か 、 か え っ て 核 実 験 と ミ サ イ ル 発 射 実 験 を強 行 し続 け る北 朝 鮮 に直 面 して い る。 な ぜ 、 中 国 は、 多 国 間 交 渉 に お け る合 意 形 成 に は仲 介 者 と して い くつ か の成 功 を収 め る一 方 で 、 その 履 行 の 段 階 で は 有 効 な役 割 を果 た せ て い な い の で あ ろ うか 。 国 際 関 係 論 の 分 野 で提 示 され て きた 多 国 間 交 渉 の理 論 研 究 成 果 に よ れ ば 、 多 国 間 交 渉 の仲 介 者 に は しば しば 、 合 意 形 成 を 促 進 す る役 割 と、 そ の 合 意 内 容 の 誠 実 な 履 行 を促 す 働 きか け の双 方 が 同時 に 求 め られ る。 しか しな が ら、 この 二 つ の 期 待 さ れ る機 能 は 、 必 ず し も相 互 補 完 的 とは 言 えず 、 む し ろ仲 介 者 を困 難 な ジ レ ン マ の 位 置 に 置 く場 合 が あ る。 本 稿 で は 、 六 力 国 協 議 にお け る有 効 な合 意形 成 促 進 者 と して の 中 国 の 立 場 が 、 返 って 中 国 の 圧 倒 的 な 北 朝 鮮 に 対 す る影 響 力 の 行 使 を妨 げ 、 結 果 的 に合 意 履 行 の 促 進 者 と して の機 能 を果 たせ ず に来 て い る こ とを 示 す 。

国際 紛 争 に お け る仲 介 の役 割 と機 能

も し あ らゆ る国 際 紛 争 が 当 事 国 間 の 直 接 交 渉 を通 じて 平 和 裏 に 解 決 され るの

3)第2期 目 の ブ ッ シ ュ 政 権 下 に お い て 六 力 国 協 議 に お け る 米 国 代 表 を 務 め た ク リ ス ト フ ァ ー ・ヒ ル 国 務 次 官 補 は 、 米 議 会 の 公 聴 会 に お い て 中 国 は 六 力 国 協 議 の 招 集 者 と し て 新 し く、 か つ 極 め て 建 設 的 な 役 割 を果 た し て き て い る 」 と述 べ た 。Christopher1‑lill,

"NorthKoreaandtheCurrentStatusofSix ‑PartyAgreement,"Assistant SecretaryforEastAsianandPacificAffairsStatementbeforetheHouse

ForeignAffairsCommittee,February28,2007.

(3)

六 力 国協 議 の 仲介 者 と して の 中国 の 役割

3S

で あ れ ば、 交 渉 にお け る第 三 者 の 役 割 を研 究 す る必 要 は な い。 しか しな が ら、

安 全 保 障 の ジ レ ンマ 」 や 「囚 人 の ジ レ ンマ」 の例 え は、 主 権 国 家 が並 存 す る無 政 府 状 態 の 国 際 社 会 に お け る 国家 間協 力 の 困 難 さ を示 す 。 自助 の原 則 が 貫 か れ る 国 際 社 会 で諸 国 家 は 、 相 互 協 力 に よ る利 益 の 拡 大 よ り も、 裏 切 りに よ る損 害 を避 け よ う とす る。 そ の傾 向 は、 他 国 の パ ワ ー や 意 図 を不 確 実 に しか 知 る こ と が 出来 な い 状 況 にお いて 、 更 に大 き くな る。 国 際 紛 争 に お け る仲 介 者 の 役 割 は 、 こ の よ うな 不 確 実 性 を減 じ る と ころ に 本 質 が あ り、 以 下 の よ うな三 つ の 具 体 的

4)

な機 能 を果 た す こ とが 期 待 され る。

(1)情 報 提供 機 能:交 渉 へ の誠 実 な 期 待 感 の 醸 成

互 い に 不 信 感 を 抱 き合 っ て い る 当事 国 の 間 に交 渉 を可 能 とす る信 頼 関 係 を築 くた め に 、 まず 仲 介 者 は 、交 渉 に付 く国 家 の パ ワー 、 影 響 力 、 そ して 意 図 等 に 関 す る情 報 を相 手 国 に提 供 して 、 当事 国 間 の コ ミ ュニ ケ ー シ ョン を 容 易 に しな けれ ば な ら な い。 相 手 国 のパ ワ ー等 に 関 す る情 報 が 不 確 実 な 状 況 下 で は 、 国 家 は交 渉 して 相 互 の安 全 を保 障 す る よ り も、 自国 の安 全 の確 保 へ と駆 られ る もの で あ る。 しか しな が ら、 一 見 果 て しな く思 え る安 全 保 障 の ジ レ ン マ の状 況 下 に お い て も、 安 全 確 保 の た め に 国 家 が 負 え る コス トに 限 界 が あ る以 上 、軍 拡 の 費 用 負 担 増 よ りも合 意 に よ る軍 拡 の 阻 止 を 求 め る よ うな 限 界 点 は 必 ず 存 在 す る。

交 渉 者 相 互 の 状 況 が 、 そ の よ うな 限 界 点 に 近 づ い て い る場 合 、 仲 介 者 は そ れ ぞ れ の 国 家 に 対 して 、 相 手 側 の 国 が 交 渉 を通 じて 必 要 な譲 歩 を す る用 意 が あ る と 伝 え る こ とに よ り、 両 者 の 交 渉 の 開 始 を促 す こ とが 出 来 る。 北 朝 鮮 の核 開 発 問 題 を め ぐっ て は 、 米 国 と北 朝 鮮 双 方 の 不 信 が 非 常 に強 く、 常 に 双 方 が 相 手 か ら 一 方 的 に裏 切 られ、 出 し抜 か れ る可 能 性 を 懸念 す る とい う状 態 が 続 い て き た 。 この よ うな状 態 にお い て は、 交 渉 を始 め させ よ う とす る仲 介 者 は 、 まず 双 方 が 交 渉 に対 して誠 実 な期 待 感 を持 っ て い る とい う こ とを確 認 す る こ とか ら始 め な

4)Chung‑ChienTeng,"Introduction:Security,ConflictManagementand ResolutioninEastAsia,"ChapterlinJacobBercovitch,Kwei‑BoHuang,

andChung‑ChianTengeds.,Conflictル 血 ηα80〃zθπ4secacrityθ η4

1nterventioniuEastAsia:ThirdPartyMediationinRegiorurlCozzflict, Routledge:London,2008,p.6.

(4)

けれ ば な らな い。

(2)戦 術 的機 能:合 意 形 成 へ 向 け た 諸 原 則 の 提 示

一 旦、 当 事 者 間 に 交 渉 へ の 誠 実 な期 待 が 醸 成 され た の で あれ ば 、 次 に仲 介 者 は、 当該 問 題 を衡 平 に解 決 す る た め の 客 観 的 な 諸 原 則 を見 出 し、提 示 す る こ と に よ っ て 、 当事 者 間 の合 意 形 成 を促 す こ とが期 待 され る。 一 般 に 交 渉 に お け る 戦 術 に は 、 相 手 の 立 場 を 考 慮 す る 「ソ フ ト」 な 交 渉 方 法 と、 自 身 の 立 場 を 強 く 訴 え る 「ハ ー ド」 な 交 渉 態 度 の二 種 類 が あ る。 しか しな が ら、 交 渉 方 法 が 「 フ ト」 か 「ハ ー ド」 か の 違 い は、 交 渉 を通 じて も た ら され た結 果 が 賢 明 か っ 効 率 的 で あ る か 否 か 、 交 渉 を通 じて 交 渉 者 間 に 良 好 な関 係 が もた ら され るか と言 う本 質 的 問 題 の決 定 要 素 で はな い。 た とえ交 渉者 が全 員 「ソフ ト」 な態 度 を取 っ た と して も 、 そ れ ぞ れ の 当 事 者 が 、 互 い に 相 容 れ な い 利 益 の実 現 を交 渉 の 目的 と して い る場 合 、 結 局 の と ころ 、 交 渉 を続 け る に従 い 、 交 渉 者 間 に は対 立 的 な 関係 が 生 じ、 交 渉 に よっ て 得 られ る結 果 は 常 に、 い ず れ の 当事 者 に も、 あ る程 度 の 妥協 と不 満 を強 い る もの とな る。 も ち ろん 、 いず れ か 一 方 の交 渉 者 が100%

の 満 足 を得 る交 渉 結 果 の 実 現 も可 能 で は あ るが 、 そ の 結 果 は 、 も う一 方 の 交 渉 者 に大 き な 不 満 足 を 強 い る もの で あ り、 そ の よ うな 結 果 は しば しば暴 力 や 威 嚇 を背 景 と して の み可 能 で あ る こ とか ら、 交 渉 者 間 の 友 好 的 な 関 係 を 帰 結 す る こ と は あ りえ な い。 そ して 、 そ の よ うな 一 方 的 な交 渉 結 果 は 、 相 手 に 復 仇 の念 を 抱 か せ 、 状 況 が 少 しで も変 化 す れ ば交 渉 結 果 も反 故 とさ れ る場 合 が 多 く、 再 び

らラ

交 渉 の労 を 取 らざ る を得 な くな る とい う意 味 で効 率 的 で も な い。

この よ う に互 い の 立 場 を ぶ つ け合 うゼ ロサ ム 状 況 か ら交 渉 過 程 を 脱 却 さ せ る に は 、 当 事 者 が 交 渉 に従 事 す る 目 的 を、 自身 の 利 益 の実 現 だ け で は な く、 共 有 され た 問 題 を解 決 す る た め の 客 観 的 な 諸 原 則 を見 出 す こ とに 向 け させ る必 要 が あ る。 交 渉 に 対 す る この よ うな対 処 方 法 は、 「原 則 に基 づ い た交 渉 術 」 と呼 ばれ

6)

る。 そ して 、交 渉 が 基 づ くべ き諸 原 則 は、 交 渉 当 事 者 だ け で は な く、 仲 介 者 が 提 示 す る こ と も可 能 で あ る。 特 に 仲 介 者 が 、 交 渉 当事 者 の そ れ ぞ れ の主 張 内容

5)拙 著 「 国 際 交渉 理 論 と 日本 の外 交 政策 研 究 」 『創価 法 学 』 第39巻 第1号(平 成21年8

月)、153ペ ー ジ。

(5)

六 力国 協議 の仲 介 者 と しての 中 国 の役 割 37

や 、 争 点 と な っ て い る問 題 点 に 関 して十 分 な理 解 と知 識 が あ る場 合 、 交 渉 当箪 者 に とっ て 妥 当 と思 わ れ る原 則 を示 せ る可 能 性 は 高 くな るで あ ろ う。 六 力 国 協 議 に お け る米 国 と北 朝 鮮 の よ う に、 相 互 の 求 め る利 益 が 相 反 して い る よ うに見 え る状 況 に お い て は 、 初 め か ら両 者 が受 けい れ 可 能 な 合 意 内 容 を提 案 す る こ と は きわ め て 困 難 で あ る。 しか し、 こ の よ うな 場 合 に も、 仲 介 者 は、 共 有 され た 問 題 を解 決 す る た め の 諸 原 則 を 示 す こ とで 、 交 渉 の 促 進 に 貢献 す る こ とが 可 能 で あ り、 特 に 中 国 の よ うに 、 米 国 と北 朝 鮮 の 双 方 と'対話 の チ ャ ンネ ル を 維 持 し て い る立 場 に あ る国 に は、 そ の よ うな役 割 を果 た す こ とが 期 待 され る 。

(3)監 督 機 能:達 成 され た 合 意 の誠 実 な 履 行 の 保 証

仲 介 者 の 役 割 は交 渉 を開 始 させ 、 合 意 を促 す こ とに 止 ま らな い 。 特 に 、 米 国 と北 朝 鮮 の よ う に相 互 に対 す る不 信 が 強 い場 合 、 た と え交 渉 を 通 じて首 尾 よ く 合 意 に至 り共 同 文 書 が 発 表 さ れ た と して も、 その 合 意 の 履 行 と言 う更 に 困 難 な 仕 事 が 残 っ て い る。 特 に 軍 縮 に 関 す る国 家 間 合 意 の履 行 の 場 合 、 当 身葬国 は 囚 人 の ジ レ ン マ の悪 循 環 に再 び陥 り易 い 。 米 国側 は、 北 朝 鮮 が 経 済 援 助 を受 け 取 り な が ら、 約 束 した 核 放 棄 へ の 取 組 を 遅 らせ て い る の で はな い か と疑 う一 方 で 、 北 朝 鮮 は、 そ の 安 全 を確 実 に して 、 見 返 り と して の経 済 的 援 助 を 受 け取 らな い 限 り、 核 武 装 を 緩 め る こ とに不 安 を 感 じ る。 この よ うに 合 意 の履 行 段 階 で 当 癖 国 間 に ジ レ ンマ が 発 生 した 時 、 仲 介 に当 た る中 国 は、 米 朝 両 国 の 合 意 履 行 状 況 を監 視 し、 必 要 な場 合 に は適 切 な タイ ミ ング で 両 者 を説 得 した り影 響 力 を 行 使

した り して 、 行 き詰 ま り状 態 を克 服 す る こ とが 求 め られ る。

合 意 内 容 の履 行 を確 保 す る仲 介 者 の 監 督 機 能 は 、 中立 性 の 確 保 と同II'pに、 時 宜 を得 た 影 響 力 の 行 使 も求 め られ 、仲 介 者 を ジ レ ン マ の立 場 に追 い 込 む こ とが あ る点 で 、 交 渉 開 始 を促 す 情 報 提 示機 能 や 合 意 形 成 を促 進 す る戦 術 的 機 能 と異 な る。 まず 、 合 意履 行 状 況 の 監 督 は 、 合 意 に参 加 した そ れ ぞ れ の 国 に 対 して 中 立 ・公 平 な 立 場 か ら行 うべ き こ とは論 を 待 た な い で あ ろ う。 こ の仲 介 者 の 監 督 機 能 は 、 交 渉 者 の そ れ ぞ れ か ら あ る程 度 の 「距 離 」 を置 い た 立 場 に い る第 三 者

6)RogerFisher&WHIiamUry,ed.Gθ 〃ing'o}'esNegotìsting14gree〃20121 WithoutGivingIn,SecondEditio7a,NewYork:Penguin,1991.

(6)

の 方 が 、 よ り容 易 に果 た す こ とが 出来 る。 特 に 、 合 意 の履 行 状 況 の 監 督 に 当 た り、 科 学 的 ・専 門 的 な見 地 か らの 客 観 的 モ ニ タ リ ン グ が 求 め られ る場 合 に は、

敢 え て仲 介 者 か ら も独 立 した 専 門 家 グル ー プ を設 置 して 、 モ ニ タ リン グ の 結 果 を仲 介 者 に対 して報 告 させ る よ うな場 合 も あ る。 北 朝 鮮 が 核 放 棄 を 進 め て い る か 否 か は、 その核 兵 器 や 関連 施 設 を科 学 的見 地 か ら専 門 家 が 査 察 す る こ とに よ っ て 判 断 され るの で 、 その モ ニ タ リン グに はIAEAの 査 察 官 な ど、専 門 的 技 術 者 の 参 加 が 求 め られ る。 この よ う な客 観 的 デ ー タ に よ る履 行 状 況 の モ ニ タ リ ン グ に よ っ て 、 合 意 内容 の 履 行 促 進 が 期 待 され る。

しか しな が ら、 こ の よ うな 中立 的 モ ニ タ リ ン グ に期 待 され る論 理 と機 能 は、

そ もそ も交 渉 者 が 合 意 内容 を誠 実 に履 行 す る意 思 を欠 い て い る場 合 や 、 合 意形 成 後 の 状 況 の変 化 で 、 交 渉者 が 合 意履 行 の意 思 を失 い つ つ あ る よ うな 場 合 に は 働 か な い 。 この よ う な場 合 、 仲 介 者 は、 再 度 の 交 渉 を促 す か 、 そ れ と も達 成 さ れ た合 意 内 容 を仲 介 した 立場 か らそ の 合 意 内 容 を誠 実 に 履 行 す る よ う に 当 事 国 に働 きか け るか 、 困 難 な選 択 を迫 られ る。 この選 択 が 特 に困 難 な 理 由 は 、 も し 合 意 内 容 の 履 行 を強 硬 に 求 め た場 合 、 そ もそ も仲 介 者 と して の 中 立 的 な立 場 を 損 ね う るか らで あ る。 さ ら に、 一 度 失 わ れ た 中 立 性 は 回 復 しが た い 点 も、 この 選 択 を い っ そ う困 難 な もの とす る。

六 力 国 協 議 の 過 程 で仲 介 の 役 割 を 果 た して きた 中 国 は、 米 朝 ニ カ 国 を姶 め と す る関 係 国 を交 渉 の テ ー ブル に着 か せ る こ と に は あ る程 度 成 功 を 収 め て きて い る。 さ ら に 、六 力 国 協 議 は、 北 朝 鮮 の 核 放 棄 に向 け た 共 同 文 書 の 採 択 に も成 功 して い る。 この こ とか ら、 中 国 が 仲 介 者 と して 情 報 提 供 機 能 と戦 術 的 機 能 を果 た して きた こ と は伺 え る。 しか し、 六 力 国協 議 は 、北 朝 鮮 の核 武 装 の 阻 止 に は 失 敗 し、 い くつ か の合 意 を得 な が ら も、 北 朝 鮮 の 核 放 棄 に 向 けて の プ ロセ ス は 一 向 に進 展 を 見 せ て い な い。 この こ とは、中国が監督 機能 の面 において は、十 分 な 役 割 を果 た せ て い な い こ とを 示 唆 す る。

外 部 中 立 モ デ ル と 内部 参 加 モ デ ル

六 力 国協 議 に お け る仲 介 者 と して の 中 国 の 役 割 は 、 仲 介 に 期 待 さ れ る機 能 の 面 か ら だ け で は な く、 北 朝 鮮 の核 開 発 問題 に対 す る中 国 の 利 害 と地 位 か ら も分

(7)

六 力国 協 議 の仲 介 者 と しての 中 国 の役 割 39

析 で き る。 安 全 保 障 と経 済運 営 の両 面 に お い て北 朝 鮮 の 中 国 へ の 依 存 は明 らか で あ り、 古 典 的 な パ ワ ー リ ソー ス の見 地 か ら見 る限 り、 中 国 が 北 朝 鮮 に対 して

有 す る潜 在 的 影 響 力 は きわ め て大 きい。 しか しなが ら、 この よ うな 中 国 の パ ワー が 、 上 で 述 べ た よ う な仲 介 の 機 能 を効 果 的 に果 た す 地 位 を保 証 す るか ど うか に つ い て は 、 仲 介 が成 功 す る条 件 に関 す る二 つ の対 照 的 な モ デ ル が 、 そ れ ぞ れ正

8)

反 対 の 意 見 を 導 く。

第 一 の モ デ ル は 、 仲 介 が 成 功 す る条 件 と し て 、 仲 介 者 の 外 部 性 と 中 立 性 を 強 調 す る 外 部 中 立 モ デ ル(theOutsider‑NeutralModel)で あ る。 こ の モ デ ル が 要 求 す る 仲 介 者 の 条 件 は 以 下 の よ う に ま と め ら れ る 。

1.仲 介 者 は紛 争 当 衷 国 とほ とん ど、 また は全 く関 係 を持 た な い 2.仲 介 者 は紛 争 の 解 決 結 果 に利 害 関係 を持 た な い

3.仲 介 者 は専 門 的 ・技 術 的 な 役 割 と機 能 を果 た す

一 方 、 成 功 す る 仲 介 の 条 件 と し て 、 仲 介 者 が 紛 争 に 係 る 箏 情 に 通 じ て い る側

而 を 強 調 す る 内 部 参 加 モ デ ル(theInsider‑PartialModel)も 存 在 す る 。 こ の モ デ ル の 仲 介 者 の 特 徴 は 以 下 の よ う に ま と め ら れ る 。

1.仲 介 者 は紛 争 当 事 国 とつ な が りを持 ち、 且 つ 信 頼 関 係 を 有 して い る 2.仲 介 者 は交 渉 を通 じて得 られ た結 果 に、 交 渉 後 に お い て もか か わ りを持 つ 3.仲 介 者 は紛 争 の 歴 史 的 、 伝 統 的 ・文 化 的 背 景 に関 す る理 解 を持 つ

7)大 韓 貿 易 振 興 公 社 の 発 表 に よ る と、中 朝 の 貿 易 額 は 、2006年 に7.5%、2007年 に16.1%、

2008年 に4L2%、 そ れ ぞ れ 増 加 した 。2006年]0月 の 北 朝 鮮 の 核 実 験 以 来 、 国 連 安 保 理 決 議 に よ る 経 済 制 裁 の 下 で 、 北 朝 鮮 と 日本 そ の 他 の 国 との 貿 易 は 縮 小 して い る こ とか ら 、 北 朝 鮮 貿 易 の 中 国 へ の 依 存 度 は 、 ま す ま す 高 ま っ て い る と考 え ら れ る 。

8)Chung‑Chien'1'eng,"ConflictManagementinEastAsia:TheChina‑

Taiwan‑NorthKoreaConundrum,"Chapter3inJacobBercovitch,Kwei‑

BoHuang,andChung‑ChianTengeds.,Co1ψfdル 名̀〃躍80〃10,2',Secacrityθ,〜̀1 侃 ε7びεη'foηinEastAsia:ThirdPartyルlediation777RegionsalCo,幽01,

Routledge:London,2008,pp.90‑42.

(8)

外 部 中立 モ デ ル が 、 普 遍 的 な 原 則 や ル ー ル に 沿 った 解 決 を得 よ う とす る の に 対 し、 内部 参 加 モ デ ル は 当事 者 間 の交 渉 を通 じた コ ン セ ンサ ス 作 りにY点 を置 く。 す な わ ち 、 前 者 が 、 お互 い に従 うべ き原 則 や ル ー ル が 明 確 に確 立 した社 会 で 惹 起 す る紛 争 の仲 介 に有 効 で あ る の に 対 し、 後 者 は、 そ の よ うな原 則 や ル ー ル 自体 が 紛 争 の対 象 とな っ て い る場 合 に 有 効 で あ ろ う。 更 に 、 この よ うな違 い の 一 つ の 帰 結 で あ る とも い え るが 、 外 部 中 立 型 の 仲 介 者 は 、 交 渉 当 壌 者 間 に合 意 が 形 成 され た後 、 そ の 履 行 状 況 を監 視 す る役 割 も しば しば果 た す こ とに な る。

一 方、 内 部 参 加 型 の 仲 介 者 は 、 交 渉 結 果 に継 続 的 な 利 害 関 係 を有 して い る が 故 に、 中立 的 ・客 観 的 な モ ニ タ リン グ の機 能 を果 た す に は、 必 ず し も適 当 で は な い。

以 上 の 二 つ の仲 介 の モ デ ル の 中 で 、 六 力 国 協議 にお け る中 国 の役 割 は典 型 的 な 内 部 参 加 モ デ ル の 例 と言 え よ う。 す な わ ち、 六 力 国 協 議 にお け る中 国 の仲 介 者 と して の 能 力 と有 効 性 は 、 以 下 の三 つ の 条 件 に 依 存 して い る。 第 一 に 、過 去 20年 以 上 に わ た る中 国 経 済 の 急 速 な発 展 に 伴 い深 化 した 東 ア ジ ア地 域 に お け る 経 済 的 相 互 依 存 で あ る。 中 国経 済 を 中心 と した 相 互 依 存 ネ ッ トワー クの 出現 は 、 東 ア ジ ア の 国 際 関 係 に お け る 中国 の影 響 カ ー 般 を 高 め る こ とに な っ た 。 特 に 、

その 地 理 的 近 接 性 か ら伝 統 的 に大 きな 影 響 力 を保 持 して きた 朝 鮮 半 島情 勢 に 対 して は 、 韓 国 ・日本 ・米 国 との 経 済 関 係 の 拡 大 と共 に 、更 に大 きな 影 響 力 を行

使 し う る立 場 に な った 。

次 に 、 東 ア ジ ア に お い て 急 速 な経 済 発 展 を続 け る 中 国 自身 に と って 、 北 朝 鮮 の核 問 題 の 帰 趨 は、 従 来 に増 して 重大 な 関心 を寄 せ な けれ ば な らな い問 題 とな っ て き た。 既 に 、 現 在 の 胡 錦 濤 の 指 導 体 制 が 確 立 す る 以前 か ら、 中 国 の 指 導 部 は 、 中 国経 済 の近 代 化 に集 中 す る た め の 前 提 条 件 と して、 平 和 的 で 安 定 した 国 際 環

io)

境 の 実 現 を 、 外 交 政 策 上 の1S要 な 目標 と して 掲 げ て きた 。 この 目標 を達 成 す る た め 、 中 国政 府 は一 貫 して 繰 り返 し、 北 東 ア ジ ア に お け る新 た な 軍 拡 競 争 を不 可 避 的 に招 来 す る こ とに な る北 朝 鮮 の 核 兵 器 開 発 に は 、 反 対 の 立 場 を 明 らか に

9)加 々 美 光 行 編 『rl・1国内 外 政 治 と 相 互 依 存 』 日本 評 論 社 、2008年

lo)益 尾 知 佐 子 郡 小 平 期 中 国 の 対 朝 鮮 半 島 外 交 」 『ア ジ ア 研 究 』Vo1.48,No.3,July 20020

(9)

六 力 国 協議 の 仲 介者 と して の 中国 の 役割41 u)

して き た。

この よ うな 朝 鮮 半 島 の 非 核 化 に 対 す る 中 国 の 確 固 と した 立 場 は 、 核 兵 器 の 不 拡 散 を そ の 国 際 テ ロ 対 策 に お け る最 重 要 課 題 の 一 つ と して い る米 国 の 利 害 に一 致 して い る。 そ の よ う な利 害 の 一 致 は、 六 力 国 協議 の 仲 介 者 と して の 中 国 の 役 割 に米 国 が 寄 せ る信 頼 性 を高 め て い る。 一 方 、 北 朝 鮮 に とっ て も、i日ソ連 邦 崩 壊 後 の 国 際 的 孤 立 、 なか ん ず く米 国 との 厳 しい外 交 的 対 立 の 中 で 、 自 身 の 後 ろ 盾 とな りう る大 国 は 中 国 しか な い。 既 に 、 中 国 と北 朝 鮮 との 間 の 同盟 関 係 はか な り以 前 か ら形 骸 化 して い るが 、 依 然 と して 中 国 は 北 朝 鮮 との 関 係 を 「唇 歯 の

1"L)

間 柄 」 と表 現 す る。 中 国 と同 じ よ うな経 済 の 改 革17放 路 線 を採 用 す る こ と に は 強 固 な抵 抗 を見 せ つ つ も、北 朝 鮮 は 、六 力 国 協議 参 加 国 の 中 で 中 国 に だ け は、

自身 の政 治 経 済 体 制 へ の 理 解 を 期 待 す る こ とが 出 来 る。

以 上 の よ うな 中 国 の 立 場 は 、 米 国 が望 む 北 朝 鮮 の核 兵 器 の 廃 棄 と、 北 朝 鮮 が 望 む体 制 の 安 全 と保 証 を 、 中 国 政 府 自身 も求 め て い る こ とを 示 して い る。 さ ら

に重 要 な こ とは 、 これ らの 外 交 目標 を 、 中 国 は 、 北 朝 鮮 と米 国 の い ず れ か 一 方 に対 す る共 感 や 支 持 とい う観 点 か ら よ りも、 自身 の 国 益 とい う観 点 か ら求 め て い る点 で あ る。 この よ うな 中 国 の立 場 は 、 内部 参 加 型 の仲 介 者 と して の 役 割 を 六 力 国 協 議 で 果 た す こ とを 可 能 に して い る。

六 力 国協 議 をめ ぐる東 ア ジ アの 地 域 的 状 況

六 力 国 協 議 の仲 介 者 と して の 中 国 の 役 割 は 、 冷 戦 後 の東 ア ジ ア並 び に国 際 社 会 の状 況 に よ っ て も左 右 され る。 特 に 、 六 力 国 協 議 を め ぐ る脈 絡 と して 、 冷 戦 後 の東 ア ジ ア に お け る不 確 実 性 の増 大 、 東 ア ジ アの 国 際 関 係 に お け る多 国 間主 義 の高 ま り、 そ して 国 際 的 な 核 拡 散 へ の 懸 念 の 高 ま りが重 要 と思 わ れ る。

先 に 述 べ た よ う に、 不 確 実 さ と言 う もの は 、 国 際 紛 争 の 主 要 な原 因 で あ る。

北 朝 鮮 の核 開発 問 題 につ い て も、 冷戦 時代 の イ デオ ロ ギ ー 的 対立 の 終 焉 に伴 い、

lD平 岩 俊 司 「朝 鮮 半 島 核 危 機 を め ぐ る 北 朝 鮮 ・ 中 国 関 係 」 http://www2.jiia.or.jp/pdf/asia ̲centre/h16̲anzenhosyou/hiraiwa.pdf 12)QuanshengZhao,"China'sNewApproachtoConFlicfManagement:The

CasesofNorthKoreaandTaiwan,"SilkRoadPaper(May2006),p.16.

(10)

東 ア ジ ア の 国 家 間 関 係 に お い て増 大 した不 確 実 性 が 、 その 解 決 を困 難 に して い る。 半 世 紀 に及 ん だ 米 ソ間 の イ デ オ ロ ギ ー 対 立 とそ の 対 立 を反 映 した 国 際 社 会 の分 断構 造 は 、1991年 末 の ソ連 の崩 壊 以 降 、 急 速 に崩 れ て い っ た。 北 朝 鮮 の 同 盟 国 で あ っ た 中 国 とロ シ ア は 、1990年 代 初 頭 に相 次 いで 韓 国 と外 交 関係 を 樹 立 す る。 しか しな が ら、 これ に呼 応 す る形 で の 、 北 朝 鮮 と米 国 ・日本 の外 交 関 係 は依 然 と して樹 立 さ れ て い な い。 この よ うな 、 言 わ ば バ ラ ン ス を欠 く国 際 関 係 の状 況 は、 北 朝 鮮 の 国 際 的 孤 立 感 と安 全 保 障 上 の 懸 念 を 深 め、 北 朝 鮮 が核 兵 器 開発 を強 行 す る主 要 な原 因 とな っ て い る。 六 力 国 協 議 の 真 の課 題 は、 この 北 朝 鮮 の安 全 保 障 上 の 懸 念 を払 拭 させ る東 アジ アの 地 域 秩 序 を構 築 す る こ とに あ り、

中 国 の仲 介 努 力 の 成 否 もそ の よ うな 地域 秩 序 を見 出せ るか否 か にか か っ て い る。

次 に、 東 ア ジ ア に お け る多 国 間 主 義 の 高 ま りが 、 多 国 間 の協 議 を通 じた 北 朝 鮮 核 問 題 の平 和 的 解 決 へ の 期 待 を 高 め て い る。 冷 戦 時 代 の 東 ア ジ ア は、 政 治 的 な意 義 を有 す る包 括 的 な地 域 的 国 際機 構 が 欠 けて い た が 、 今 日の 東 ア ジ ア 地 域 に は 、APEC、ASEANプ ラス3、ARF等 、 各 国 首 脳 や 閣 僚 レベ ル の 指 導 者 が 集 ま る地 域 的制 度 や 枠 組 み が 重 層 的 に存 在 す る。 この よ う な地 域 的 制 度 や 枠 組 み を 通 じ て、 地 域 の 問 題 を処 理 す る経 験 が 積 み 重 ね られ て き た こ とで 、 北 朝 鮮 の核 問 題 に つ い て も、 強 制 的 措 置 で は な く多 国 間 交 渉 を通 じて平 和 的 に解 決 す る こ とが 、 国 際 的 期 待 と して 高 ま っ て き た。 この よ うな 期 待 意 識 の 形 成 は 、 北 朝 鮮 問 題 の解 決 に向 け て 仲 介 の労 を 取 る 中 国 の 努 力 の権 威 と正 当性 を高 め る よ

うに 作 用 す る。

最 後 に、 北 朝 鮮 危 機 を め ぐる仲 介 努 力 の 国 際 的 脈 絡 と して、 核 兵 器 ・技 術 の 拡 散 に対 す る国 際 的 な懸 念 が 高 ま っ て い る こ とが指 摘 され る。2001年9月 に米 国 で 同 時 多 発 テ ロ事 件 が 発 生 して 以 来 、 テ ロ リス ト組 織 が 核 兵 器 を獲 得 す る こ とは 、 国 際 社 会全 体 に と って の悪 夢 で あ り脅 威 とな っ た 。 この脈 絡 に お い て 、 北 朝 鮮 の 核 兵 器 開 発 は、 地 域 的 紛 争 の 原 因 で あ る と同 時 に、 国 際 的 な核 不 拡 散 体 制 へ の 脅 威 と見 倣 さ れ る。 この こ とは、 北 朝 鮮 の核 問題 が 東 ア ジ ア の地 域 的 問題 と して六 力 国 協 議 で 扱 わ れ る と同 時 に 、 国 際 の平 和 と安 全 へ の 脅 威 と して 国連 安 保 理 やIAEAで も取 り上 げ られ る こ とに繋 が って 来 た。 北 朝 鮮 の 核 開 発 問 題 を 扱 う主 要 な 場 を六 力 国協 議 とい う地 域 的枠 組 み に 求 め るか 、 それ と も国 連 の よ うな 普 遍 的 国 際 機 構 に 求 め るか は、 中 国 と米 国 の どち らが この 問 題 解 決 で

(11)

六 力 国 協議 の 仲介 者 として の 中国 の 役割

43

リー ダ ー シ ッ プ を握 るか と言 う問 題 に直 結 す る。 す な わ ち 、 六 力 国 協 議 に お け る中 国 の仲 介 の 役 割 は 、 冷 戦 後 の 国 際 秩 序 に お い て 、 台 頭 す る中 国 と唯 一 の 超 大 国 で あ る米 国 との 間 の 関 係 調 整 とい う脈 絡 に置 い て も理 解 す る必 要 が あ る。

以 上 の 脈 絡 を 踏 ま え つ つ 、 以 下 で は 北 朝 鮮 の核 開 発 を め ぐる 国 際 交 渉 過 程 で の 中 国 の 役 割 に つ い て概 観 す る。

北 朝 鮮 の核 開発 を め ぐる国 際 交 渉 過 程 と中 国 の 関わ り

(1)1994年 の 第 一 次 北 朝 鮮 危 機 と米 朝 枠 組 み 合 意 の形 成

冷 戦 後 の 国 際 関係 の 流 動 化 の 中 で 、 か ね て か ら核 開 発 疑 惑 の 目 を 向 け られ て い た 北 朝 鮮 は1993年3月 に核 不 拡 散 条約(NPT)か らの脱 退 を表 明 した。 この 動 き に対 す る制 裁 決 議 を 非公 式 に協 議 す る国 連 安 保 理 が1994年6月 に 開 催 され る と、 反 発 を強 め た 北 朝 鮮 は 国 際 原 子 力 機 構(IAEA)か ら も脱 退 を宣 言 した 。 この 危 機 的 状 況 を 打 開 す る た め 、 米 国 の カ ー タ ー 元 大 統 領 が 、 事 実 上 の 米 国 の 特 使 と して 北 朝 鮮 を訪 問 し、 金 日成 主 席(当 時)と の会 談 を経 て、 同年10月 に 米 朝 間 で成 立 した の が 「枠 組 み 合 意 」 で あ る。

この枠 組 み合 意 で 、 北 朝 鮮 は プ ル トニ ウム の 抽 出 が 容 易 な黒 鉛 減速 炉 の 建 設 ・ 運 転 を 凍 結 す る一 方 、 米 国 は 軽 水 炉 建 設 支 援 を約 し、 さ らに その 完 成 まで 代 替 エ ネ ル ギ ー と して年 間50万 トン の重 油 を供 給 す る こ とを合 意 した 。 次 いで 、 こ の 枠 組 み 合 意 を受 け て 、1995年3月 、u米 韓3か 国 は 朝 鮮 半 島 エ ネ ル ギ ー 開発 機 構(TheKoreanPeninsulaEnergyDevelopmentOrganization、

KEDOと 略)設 立 協 定 に署 名 し、北 朝 鮮 に お け る軽 水 炉 プ ロ ジ ェ ク トの 資 金 手 当 て及 び そ の供 与 並 び に 暫 定 的 な代 替 エ ネ ル ギ ー の 供 与 等 を 目的 と した 国 際 コ ン ソー シ ア ム を発 足 した 。 当初 の 枠 組 み 合 意 に よれ ば 、2003年 を 目標 に、 北 朝 鮮 の黒 鉛 減 速 炉 及 び 関 連 施 設 の 軽 水 炉 へ の 転 換 を 完 了 す る予 定 で あ っ た 。

(2)枠 組 み 合 意 の崩 壊 と第 二 次 北 朝 鮮 危機 の 勃 発

しか しな が ら、 こ の枠 組 み 合 意 の履 行 は 当初 の 予 定 か ら大 幅 に遅 れ 、 米 朝 の 相 互 不 信 の 深 ま りの連 鎖 を もた らす。 そ もそ も、 北 朝 鮮 は 当初 か らKEDOが 供 を予 定 した軽 水 炉 が 韓 国 型 とな る こ とに猛 烈 な 反 発 を 示 して 合 意 破 棄 の可 能

(12)

13)

性 に まで 言 及 して お り、KEDOの 前 途 は 不 安 視 さ れ て い た。 そ の後 、 北 朝 鮮 労 働 者 に対 す る高額 な賃 金 要 求 の 調 整 も難 航 し、 軽 水 炉 の 提 供 事 業 は2002年 夏 の 段 階 で 基 礎 工 事 の セ メ ン ト注 入 まで しか 進 まず 、 完 成 の 目処 は全 く立 た な か っ た。 また 、 北 朝 鮮 は、枠 組 み合 意 で要 求 され たIAEAの 完全 な査 察 の 受 け 入 れ も 拒 否 し続 け た 。2001年 に成 立 した 米 国 の ブ ッ シ ュ政 権 は 、 北 朝 鮮 へ の 疑 念 を 強 め 、 同年6月 に は 「北 朝 鮮 政 策 の 包 括 的 見 直 し」 を 発 表 し、 米 朝 枠 組 み 合 意 の 履 行 の改 善 と北 朝 鮮 の ミサ イ ル 開 発 ・配 備 な どに つ い て 、 検 証 可 能 な 規 制 と輸

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出 の 禁 止 を 求 めた 。 そ して 、2001年9月 の 米 国 に お け る同 時 多 発 テ ロ事 件 の 発 生 を経 て 、2002年 の 年 頭 教 書 で ブ ッ シ ュ大 統 領 は、 核 兵 器 を含 む大 量 破 壊 兵 器 開 発 の疑 惑 が 寄 せ られ て い た イ ラ ク、 イ ラ ン と並 べ て 北 朝 鮮 を 「悪 の枢 軸 」 と

非 難 した 。 この ころ まで に、 米朝 間 の枠 組 み 合 意 の 基 礎 とな る信 頼 関 係 は ほ ぼ 失 わ れ た と言 っ て よい 。

2002年10月 初 旬 に訪 朝 した 米 国 の ケ リー 国務 次 官 補(当 時)が 、 姜 錫 柱 外 務 次 官 との協 議 の席 上 で 、 北 朝 鮮 が ウ ラ ン濃 縮 に よ る核 兵 器 開 発 計 画 を 進 め て い る証 拠 を つ か ん で い る と糺 した と ころ 、 姜 次 官 は 高 濃 縮 ウ ラ ン計 画 を 認 め る発

Ifi)

言 を行 っ た 。 こ の北 朝 鮮 に よ る明 らか な枠 組 み 合 意 違 反 の 行 為 を受 け、KEDO

m

理 衷 会 は北 朝 鮮 へ の重 油 供 給 の 停 止 を決 定 し、IAEA理L3会 は非 難 決 議 を採 択 し

ie)

た 。 この 動 き に対 し、 北 朝 鮮 は、 ウ ラ ン濃 縮 計 画 は 米 国 政 府 の 言 い が か りで あ る と批判 し、12月 下 旬 に寧 辺 の核 施 設 の 監視 カ メ ラを撤 去 し、IAEAの 査 察 官 を

国 外 退 去 さ せ た 。 さ ら に 、2003年1月10日 に は 核 不 拡 散 条 約(NPT)か ら の 脱

退 を宣 言 し、 同年2月 下 旬 に は 日本 に 向 け て地 対艦 ミサ イ ル の 発 射 実 験 を実 施

13)「 探 眼 複 眼KEDO、 き ょ う発 足 前 途 に 不 安 を 抱 え 「船 出 」(そ の1)」 毎 日新 聞 、1995 向三3月9EI。

14)「 米 、 北 朝 鮮 と 協 議 再 開 表 明 」 朝 日 新 聞 、2001年6月7r̲i夕 刊 。 15)朝EI新 聞 、2002年1月30日 夕 刊 。

16>「 北 朝 鮮 の 秘 密 核 開 発 は 深 刻 な 合 意 違 反 米 国 務 省 が 声 明 を 発 表 」 読 売 新 聞 、2002年10 月17日 夕 刊 。

17)朝 日 新 聞 、2002年u月15日 夕 刊 。 [8)朝 日 新 聞 、2002年11月30日 19)朝 日 新 聞 、2003年1月1日

20)「 北 朝 鮮NPT脱 退 」 読 売 新 聞 、2003年1月11日

(13)

六 力国 協議 の仲 介者 と して の 中 国 の役 割

2q

す る な ど 、 そ の 行 動 を エ ス カ レ ー トさ せ て い っ た 。

45

(3)中 国 の態 度 の 変 化 と六 力 国 協 議 の 開 始

第 二 次 北 朝 鮮 危 機 の 勃 発 に 際 し、 当初 の 中 国 の 態 度 は、 あ くまで 問題 の 当 事 者 は米 朝 で あ り、 まず 両 国 の 直 接 対 話 が な され るべ き とい う もの で あ っ た 。 北 朝 鮮 の ウ ラ ン濃 縮 計 画 が 米 国 務 省 に よ り非 難 され た直 後 の2002年10月17E1に 国 外 交 部 は 、 「朝 鮮 半 島 の非 核 化 及 び 平 和 と安 定 を一 貫 して 支持 し、 対 話 に よ っ

zz)

て 核 開発 問 題 を解 決 す るべ きで あ る」 との 談 話 を発 表 した が 、 その 内容 は 、 北 朝 鮮 核 問 題 に対 して 中 立 的 な 立 場 を取 りつ つ 、 衷 態 の 強 制 的 な 解 決 に は 反 対 す

za>

る とい う従 来 の 姿 勢 を繰 り返 す も の で あ った 。

北 朝 鮮 に は、94年 危機 の時 と同 様 に米 朝 二 国 間 の 交 渉 を 求 め、 核 開 発 問 題 を

za)

米 朝 不 可 侵 条 約 の締 結 と引 き換 え に し よ う とす る意 図 が あ っ た 。 一 方 、 米 国 の ブ ッシ ュ政 権 は この 時 、 イ ラ ク問 題 へ の 対 応 が よ り重 要 な 外 交 案 件 で あ り、 北 朝 鮮 との 二 国 間 交 渉 に応 じ る余 裕 は無 か った 。 さ らに 米 国 は 、 北 朝 鮮 へ の 不 信 感 か ら米 朝 交 渉 に は 懐 疑 的 で あ り、 周 辺 国 を参 加 させ る地 域 的 な枠 組 み に よ る 対 応 を求 め た 。2003年2月24日 に はパ ウ エ ル 国務 長 官 が 訪 中 し、 江 沢 民 国 家 主 席 を含 む 中 国 首 脳 に 対 して 、 北 朝 鮮 問題 に 関 す る 多 国 間 協議 を 望 む米 国 政 府 の 立 場 を伝 え 中 国 の協 力 を求 め た 。 しか しな が ら、 この 時 も中 国 は、 北 朝 鮮 の 核

25)

開 発 は 、 米 朝 二 国 間 の 問 題 とす る従 来 の 主 張 を変 え な か っ た。

中 国 が そ の 伝 統 的 な朝 鮮 半 島 に対 す る外 交 姿 勢 を 大 き く転 換 し、 多 国 間 協議 へ 向 け た仲 介 に積 極 的 に乗 り出 す 契機 とな った の は 、2003年3月20日 に始 ま る 米 国 の対 イ ラ ク軍 事 行 動 で あ る。 す な わ ち 、 イ ラ ク戦 争 の 開戦 後 わ ず か 数 週 間 で フ セ イ ン政 権 が崩 壊 した と言 う事 態 に 中 国 は衝 撃 を 受 け 、北 朝 鮮 へ の 影 響 力

2i)1a日 新 艮H、2003{移217251≡1。

22)「 中 国 改 め て 朝 鮮 半 島 の 非 核 化 支 持 」 読 売 新 聞 、2002年 且0月i8日

23)寓 田 圭 一 郎 核 開 発 問 題 を め ぐ る 中 国 の 北 朝 鮮 政 策 一2002年10月 〜2005年11月 」 『調 査 と情 報 』 第507号(2006勾 三1月311≡1)、2頁

24)「 北 朝 鮮 米 に 不 可 侵 条 約 提 案 核 開 発 問 題 の 打 開 狙 う?」 朝 日 新 聞 、2002年[0月25 夕 刊 。

25)「 対 イ ラ ク 安 保 理 新 決 議 案 中 国 と平 行 線 パ ウ エ ル 米 長 官 、 江 沢 民 主 席 ら と会 談 」 毎 日新 聞 、2003年2月25日

(14)

26)

を行 使 して、 多 国 間 協議 の 受 け 入 れ を働 きか けた と理 解 さ れ て い る。 ブ ッ シ ュ 大 統 領 の 「悪 の 枢 軸 」 演 説 に よれ ば、 北 朝 鮮 問 題 は イ ラ ク 問題 の 「極 東 版 」 で あ り、 イ ラ ク戦 争 が 米 国 の 勝 利 に 終 わ っ た 以 上 、 原 理 的 に は米 国 の 次 の 目標 は 北 朝 鮮 で あ り、 北 朝 鮮 に 対 す る 「先 制 攻 撃 」 を米 国 が 適 用 し よ う と して い る と

27)

中 国 が 考 え た と して も不 思 議 で は な い。

しか し、 多 国 間 協 議 開 催 に 向 け た 中 国 の 北 朝 鮮 に対 す る働 きか け は 、 単 な る

28)

圧 力 の行 使 で は な く、 きわ め て 慎 重 な外 交 努 力 を通 じて 行 わ れ た 。 特 に 中 国 は 、 米 国 か ら攻 撃 され る とい う安 全 保 障 上 の 懸 念 を解 消 しな け れ ば 、 北 朝 鮮 が 核 開

発 放 棄 に応 じ る可 能 性 が 無 い こ とを 理 解 して い た 。2003年4月 に北 京 で 開 催 さ れ た 米 ・中 ・朝 の三 者 協 議 ま で に 中国 が北 朝 鮮 の指 導 者 と水 面 下 で 接 触 し交 渉

ヨの

した 回 数 は60回 に及 ん だ と言 わ れ て い る。 だ が 、 この 接 触 と交 渉 の 過 程 で 、 北 朝 鮮 は使 用 済 み核 燃 料 棒8000本 の再 処 理 を明 らか に し、核 兵 器 を既 に 保 有 して

31)

い る こ とを 示 唆 す る。 北 朝 鮮 の核 兵 器 保 有 に一 貫 して 反 対 して き た 中 国 は この

az)

事 態 に不 信 感 を あ らわ に し、 北 朝 鮮 に 強 く抗 議 した と伝 え られ る。7月 中 旬 に は戴 乗 国 外 務 次 官(当 時)が 訪 朝 し、胡 錦 濤 国家 主 席 の 「柔軟 な政 策 を拒 否 し 続 け て い る と重 大 な 結 果 を招 く」 とい うメ ッセ ー ジ を伝 え 、 多 国 間 協 議 へ の参

33)

加 を説 得 した 。 その 後7月31日 に 、 ニ ュ ー ヨ ー ク で 米 朝 が 接 触 し、4月 に協 議 した 米 ・朝 ・中 に 、 日本 ・韓 国 ・ロ シ ア を加 え た 多 国 間 協 議 へ の参 加 を北 朝 鮮 が 受 諾 す る。 この 時 期 、 中国 は、 体 外 的 に は 北 朝 鮮 の 核 保 有 を否 定 す る一 方 で 、

中国 共 産 党 の 統 一 見 解 と して 北 朝 鮮 の核 開 発 に反 対 す る立 場 を確 認 した 。

26)寺 林 裕 介 北 朝 鮮 の 核 開 発 問 題 と六 者 会 合(上)〜 北 東 ア ジ ア に お け る 多 国 間 枠 組 み の 形 成 〜 」 『立 法 と 調 査 』257号(2006年7月7日)、3頁

27)小 此 木 政 夫 北 朝 鮮 問 題 の 現 段 階 」9頁 http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/tyousa/chousen‑hantou‑1.pdf

28)「 北 朝 鮮 幹 部 と 中 国 共 産 党 、 核 問 題 協 議 」 読 売 新 聞 、2003年4月2日 29)富 核 開 発 問 題 を め ぐ る 中 国 の 北 朝 鮮 政 策 」、3頁

30)窟 前 掲 論 文 、3頁

31)「 北 朝 鮮 核 兵 器 保 有 表 明 再 処 理 完 了 と 主 張 」 朝 日 新 聞 、2003年4月25日 32)窩 前 掲 論 文 、4頁

33)『 朝1.1新 聞 』2003年7月16日

34)「 北 朝 鮮 核 開 発 中 国 は 反 対 」 「関 与 せ ず 」」 東 京 新 聞 、2003.5.21.

(15)

六 力 国 協議 の 仲 介者 と して の 中国 の 役 割 47

(4)六 力 国 協 議 の 展 開 と初 の 共 同 声 明(2003年8月 〜2005年9月) 表1:六 力国協議の開催と成果

合1期 間1結

第 一 回

2003年8月27日 〜8月29日

議長総 括の口頭 発表

第 二 回

20(牌2月25日 〜2月28日

作業部 会の設置合 意 と議長 総括の口頭発表

第三回 2004年6月23日 〜6月25日

議長 声明の発表

第四回

第1フ ェ ー ズ 2005年7月26日 〜8月7日

北朝 鮮以外 の五 力国が共 同文書 草案に合意

第2フ ェ ー ズ 2005年9月13日 〜9月19日

北朝鮮 が核兵 器の放棄に合 意す る共同声明発表

第五回

第1フ ェ ー ズ 2005年11月9日 〜11月11日

議長 声明の発表

第2フ ェ ー ズ 2006年12月18日 〜12月22日

次 回協議 の早期 開催 を確認 す る議長声明発表

第3フ ェ ー ズ 2007年2月8日 〜2月13日

共 同文書 の採択

第六回

第1フ ェ ー ズ 2007年3月19日 〜3月2旧

実質 的協議 に入れず休会

第2フ ェ ー ズ 2008年12月8日 〜12月1旧

核放棄検証手続 の合意に失 敗、休会

表1に 示 す とお り、2003年8月 の 第 一 回会 合 以 来 、 現 在(2010年5月 末)ま で に六 力 国 協議 は六 回 の 会 合 が 開催 され て い る。な お 、第 四 回会 合 は二 つ の フ ェー ズ を 経 て 、 第 五 回 会 合 は 第3フ ェー ズ ま で 開 催 され て 共 同 文 轡 が採 択 さ れ た 。 第六 回 会 合 は、 今 の と ころ2008年12月 の 第2フ ェ ーズ が 開 か れ た後 、休 会 が 続 い て い る。 会 合 場 所 は全 て 北 京 の 魚 釣 台迎 賓 館 で あ り、 また 全 て の 会 合 で 中 国

35)

の 外 交 部 副 部 長 が 議 長 を 務 め て い る。

過 去 の 六 力 国 協 議 の結 果 が 示 す とお り、 北 朝 鮮 は そ の 開 催 に は応 じ た が 、 実 際 の 協 議 で は ほ とん ど譲 歩 を示 して こ なか っ た 。 第 一 回 目の 会 合 か ら北 朝 鮮 は mし て 、 そ の核 放 棄 に 向 け て の 過 程 を い くつ か の 段 階 に 分 け 、各 段 階 の達 成 に応 じて 米 国 と その 他 の 協 議 参 加 国 か ら の見 返 りを 同 時 に 求 め る 「ウ ク ラ イ ナ

3f)

方 式 」 を主 張 して き た。 一 方 、 米 朝 枠 組 み合 意 の 崩 壊 の経 験 か ら北 朝 鮮 へ の 不 信 感 が 深 い米 国 は、 核 兵 器 や 核 施 設 を保 持 した 状 態 の ま まで 、 北 朝 鮮 に安 全 保

35)第 一 回 か ら第三 回 まで は王毅 外 交 部副 部 長。 第 四 回以 降 は武 大 僚外 交 部 副部 長 。 なお 、 2010年1月 に武 大 偉 氏 は定 年 で外 交 部 副 部長 を退 任 した が 、 中国 政府 の朝 鮮 半 島問 題 特 別 代 表 に 就 任 し、 引 き続 き六 力 国 協議 の 中 国代 表 と して議 長 を務 め る こ とが 期待 され て

い る。1朝日新 聞 、2010年1月22日 。

36)「 北 朝 鮮 核 譲 歩 な し」 読 売新 聞、2003年8月22EI。

(16)

障 上 ・経 済 上 の見 返 りを与 え る こ とを 拒 否 し、 核 放 棄 の先 行 を求 め る 「リ ビ ア

37)

方 式 」 を 主 張 した 。 双 方 の 妥協 の 糸 口 は つ か め な い ま ま、 中 国 代 表 が 議 長 総 括 を 口頭 で 発 表 して 、 第 一 回 の 会 合 は終 了 した 。 この 際 、 中 国 の 王 毅 副 部 長 は 、

今 後 議 論 す べ き問 題 は 、北朝鮮 の安全 に対 す る懸念 の内容や その解決方 式だ」

38)

と語 り、 北 朝 鮮 へ の 配 慮 を 示 した 。

第2回 会 合 で 米 国 は 、 完 全(complete)且 っ 、 検 証 可 能(verifiable)で 不 可 逆 的(irreversibIe)な 核 の放 棄(dismantlement)、 す な わ ちCVIDを めて 、 さ ら に そ の 姿 勢 を硬 化 させ た 。 北 朝 鮮 との 合 意 可 能 な文 書 の 作 成 は見 送 られ 、再 び 中国 代 表 に よ る議 長 総 括 の み が 発 表 され た 。 第3回 会 合 で も、 当初 米 国 はCVIDと い う表 現 を合 意 文 書 に 入 れ る こ とを求 め た。 しか し、 最 終 的 に 、 北 朝 鮮 が 核 凍 結 を 非 核 化 へ の 「第 一 段 階 」 と して 行 う こ と を受 け 入 れ 、 核 廃 棄 に い た る具 体 的 な プ ロ セ ス を 提 案 した が 、 この案 は結 局 北 朝 鮮 に よ って 拒 絶 さ

39)

れ た。 第3回 会 合 後 、 韓 国 に よ る過 去 の 高 濃 縮 ウ ラ ン抽 出 の 試 み が 明 らか に な り、 北 朝 鮮 は続 けて 予 定 され て い た 第4回 会 合 へ の 参 加 を 拒 否 して 、 協 議 は 一

40)

年 以 上 中 断 す る こ とに な っ た 。

2005年 に成 立 した 第 二 期 ブ ッ シ ュ政 権 は北 朝 鮮 を 「圧 制 の拠 点 」 と名 指 し し

41)

て、 強硬 姿 勢 を 強 め た。 ア メ リカ の敵 視 政 策 に 反 発 した 北 朝 鮮 は 、 同 年2月 六 力 国 協 議 へ の 参 加 を無 期 限 に 中 断 す る と発 表 し、 さ らに 自衛 の た め に核 兵 器

421

を製 造 した と表 明 した。 事 態 を エ ス カ レー トさせ る北 朝 鮮 に 対 し、 中 国 政 府 は 、 核 実 験 は超 え て は な らな い一 線 で あ る こ とを 強 調 し、 も し核 実 験 を行 っ た 場 合

43)

に は 食 糧 そ の他 の 援 助 の 停 止 を含 む 「強 烈 な 反 応 を す る」 と伝 え た 。 しか し、

同 時 に 中国 政 府 は六 力 国 協 議 に復 帰 した 場 合 の エ ネ ル ギー 支 援 の 拡 大 も北 朝 鮮 に提 案 して い る。 さ らに 中 国 政 府 は 、 ア メ リカ 政 府 に 対 して も、 六 力 国協 議 再

37)「 米 と北 朝 鮮 核 巡 り真 っ 向 対 立 へ 」 読 売 新 聞 、2003年8月25日 38)「 六 力 国 協 議 閉 幕 中 国 、 継 続 は成 果 」 読 売 新 聞 、2003年8月30日 39)「 検 証 六 力 国 協 議 」 読 売 新 聞 、2004年6月27日

40>読 売 新 聞 、2004年9月14日 41)読 売 新 聞 、2005年1月19日 42)読 売 新 聞 、2005年2月II日

43)「 中 国 核 実 験 容 認 せ ず 」 産 経 新 聞 、2005年6月5日

(17)

六 力国 協議 の仲 介 者 と して の 中 国 の役 割 49

開 に 向 け た 努 力 を す べ き で あ る と主 張 し、 米 朝 の 非公 式 な接 触 を通 じて 相 互 の

44)

不 信 感 を 払 拭 す べ きで あ る と促 した。

中 国 の 仲 介 努 力 の結 果 、 第4回 会 合 が2005年7月 末 に再 開 さ れ た 。 中 国 の作 成 した 共 同 文 書 草 案 は、 北 朝 鮮 に対 して 「現 在 あ る」 全 て の核 兵 器 と核 計 画 の 放 棄 を 求 め て お り、NPTとIAEAに 北 朝 鮮 が 復 帰 した 場 合 の核 の平 和 利 用 の可 能 性 を示 して い た 。 この 草 案 に米 ・露 ・日 ・韓 は支 持 を表 明 した が 、 北 朝 鮮 は、

核 の平 和 利 用 の権 利 を具 体 化 す る た め の 軽 水 炉 建 設 供 与 を 求 め て譲 らず 、 結 局

45)

8月 に 一 旦 会 議 は 休 会 とな る。 中 国 は 、 草 案 の修 正 と意 見 調 整 を璽 ね 、9月 再 開 され た 第4回 会 合 の 第2フ ェ ー ズ に お い て 、 六 力 国 協 議 の 初 の 共 同 声 明 が

4fi)

採 択 され た 。 この 声 明 で は 以 下 の よ うな 内容 が 同 意 さ れ た 。

北 朝 鮮 は全 て の核 兵 器 及 び既 存 の 核 計 画 を放 棄 し、NPT及 びIAEAに 早 期 に復 帰 す る

米 国 は朝 鮮 半 島 に核 兵 器 を配 備 せ ず 、 北 朝 鮮 に対 して核 兵 器 及 び 通 常 兵 器 に よ っ て攻 撃 ま た は侵 略 を行 う意 図 を有 しな い こ とを確 認 す る

米 国 と北 朝 鮮 、 並 び に 日本 と北 朝 鮮 は、 そ れ ぞれ 国 交 を正 常 化 す る た め の 措 置 を取 る こ とを約 束 す る

北 朝 鮮 以 外 の 五 力 国 は、 適 当 な 時 期 に北 朝 鮮 へ の軽 水 炉 提 供 問 題 につ い て 議 論 を行 う こ とに合 意 す る

(5)北 朝 鮮 の 核 武 装 と六 力 国 協 議(2005年9月 〜2008年12月)

第 四 回 会 合 で の 共 同声 明 は議 長 国 で あ る 中 国 の 仲 介 努 力 の 大 き な 成 果 で あ っ た。 しか し、 同 時 に この 共 同 文 書 は 、 他 の外 交 文 書 と同 じ く、 曖 昧 の ま ま に 残 した部 分 に 大 き な問 題 を抱 え る合 意 で もあ った 。 特 に、 北 朝 鮮 の核 放 棄 が 先 か 、 そ れ と も北 朝 鮮 へ の 軽 水 炉 提 供 が 先 か と言 う点 は 、 共 同 声 明 発 表 の 直 後 か ら、

47)

米 朝 間 で 解 釈 の 違 い を見 せ て い た 。 この 米 朝 間 の 火 種 は 、 第4回 会 合 と同 時期

44)"ChinaSaysU.S.CriticismsImpededNorthKoreanArmsTalks,"New

YorkTimes,May13,2005.

45)読 売 新 聞 、2005年8月4日 46)読 売 新 聞 、2005年9月20日

47)「 六 力 国 共 同 声 明 核 の 先 行 放 棄 北 も 承 服 」 読 売 新 聞 、2005年9月21日

(18)

に、 米 財 務 省 が マ カ オ の バ ン コ ・デ ル タ ・ア ジ ア(BDA)を マ ネ ー ロ ンダ リン グの 主 要 懸 念 先 と指 定 して 、 全 米 の金 融 機 関 との 取 引 を 禁 止 して い た こ とで 思 わ ぬ 展 開 を見 せ る。 こ の 米 財 務 省 の措 置 の 後 、 取 り付 け騒 ぎの 混 乱 を 起 こ した BDAは マ カ オ 政 府 の管 理 下 に置 か れ 、BDAに 開 設 され て い た 約2400万 ドル の 北 朝 鮮 関 連 口座 が 凍 結 さ れ た 。 こ の動 き を、 北 朝 鮮 は米 国 に よ る意 図 的 な制 裁 と捉 え反 発 した。 さ ら に 、 第5回 会 合 の 直 前 に ブ ッシ ュ大 統 領 が 金 正 日総 書 記

48)

を 「暴 君 」 と呼 ん で 非 難 した こ とも あ り、 第4回 会 合 の 共 同 声 明 の履 行 策 を 協 議 す るた め に2005年ll月 に 開催 され た 第5回 会 合 は 、 わ ず か 二 日で 休 会 とな っ

49) た 。

その 後 も、 米 国 の 金 融 制 裁 の 解 除 を 求 め る北 朝 鮮 は 、 共 同 声 明 履 行 へ の 協調 姿 勢 を全 く見 せ る こ とな く、2006年7月7日 に は 弾 道 ミサ イ ル 発 射 実験 で 危 機 を煽 り、 さ ら に同 年10月9日 に は地 下 核 実 験 を実 施 した 。核 実験 の実 施 に よ り、

北朝 鮮 の核 開 発 問 題 の議 論 の場 は 、 六 力 国 協 議 と言 う東 ア ジ ア 地 域 の 多 国 間 協 議 体 か ら、IAEAと 国連 安保 理 と言 う核 不 拡 散 を 目指 す 普 遍 的 な国 際 機 構 へ と移 り変 わ る こ とに な る。 既 に、7月 の ミサ イ ル 発 射 に 対 し、 国連 安 保 理 は 北 朝 鮮 非難 決 議1695を 採 択 して い た 。 この 際 、 中 国 は北 朝 鮮 へ の 制 裁 を強 め る こ とに つ い て は 、地 域 の 緊 張 を 高 め る と して 否 定 的 な態 度 を と り、 米 国 に対 して も外

SU)

交 努 力 を重 視 す る こ とを 求 め た。 しか しな が ら、 北 朝 鮮 は、 交 渉 を通 じて 米 国 か ら金 融 制 裁 解 除 を取 り付 け る よ りも、 む し ろ核 実 験 を実 施 して 、 核 保 有 国 と して 自国 を 国 際 社 会 に認 知 させ る こ とで 米 国 との 関 係 を質 的 に 変 化 させ る戦 略

51)

を描 い て い た 。10月3日 に核 実 験 の実 施 予 告 宣 言 を行 っ た北 朝 鮮 に対 し中 国 は

冷 静 さ と自制 を保 つ だ ろ う と希 望 して い る」 との声 明 を発 表 し、更 に10月8日

 ラ

の 日本 の 安 倍 首 相 との首 脳 会 談 で は胡 錦 濤 国 家 主 席 が 「北 朝 鮮 が核 実 験 を 自制

48)読 売 新 聞 、2005年ll月7日 49)読 売 新 聞 、2005年ll月12日

50)2006年9月6日 に 訪 中 した ヒ ル 国 務 次 官 補 と武 大 偉 中 国 外 務 次 官 の 会 談 で の 武 外 務 次 官 の 発 言 。 読 売 新 聞 、2006年9月7日

51)寺 林 裕 介 北 朝 鮮 の 核 実 験 と 国 連 安 保 理 決 議1718核 不 拡 散 を 目 指 す 米 国 の 布 石 」 『 法 と調 査 』No.262(2006年12月)、8頁

52)読 売 新 聞 、2006年]0月4日 夕 刊 。

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