室 町 さやか
はじめに
今日の大学は、研究機関及び教育機関として機能するのみならず、その学術的背景 や専門性を生かして地域に貢献することを期待されていることは論を待たない。学 問、すなわち文化の発信地として大学が果たすべき役割のひとつに、芸術文化の振興 があると考えられる。音楽や美術を通じた地域貢献事業の例は枚挙にいとまがなく、
2008年に林が行った調査においても大学による音楽を通じた地域貢献活動が盛んに行 われていることが明らかである
(林 2008)
。大学が地域との繋がりを重要視し、地 域貢献事業を行うことは一般的に浸透していると考えられるが、それらの文化事業が 提供する側の自己満足に留まらず、地域や学生にとって有意義なものとなるためには どのようにあるべきであろうか。本研究では、これまでに行われてきた様々な音楽を 介した地域貢献事業について論じ、そこから得た知見から大学組織による音楽関連地 域貢献事業のあり方について考察している。さらにこれらの考察を踏まえて実施した 幼児向け音楽ワークショップから学生がどのような学びを得たかを明らかにしている。1. 音楽による地域貢献事業の実例
本項では、大学や音楽機関がどのように音楽を通じた地域貢献事業を行っているか について論じることとする。
1 )音楽大学又は音楽学部を有する大学による音楽アウトリーチ(1)事業
東京音楽大学「ACT Project」は、2005年から文部科学省の「現代的教育ニーズ取 り組み支援プログラム
(現代 GP)
、「実践的総合キャリア教育の推進」に採択された取 り組みである。このプロジェクトでは参加学生を多学年、多専攻から成る小編成の チームに分けている。学生たちはホールコンサートの企画・実施を行うホールコン サートチーム、行政等と連携して福祉施設や地域での演奏活動を行う エリアコン サートチーム、学内のロビーを利用して公開のサロンコンサートを行うJ
ロビーコン サートチーム、インターネットを通じてプロジェクトの情報を発信するサイバーチー大学による音楽を通した地域貢献事業の あり方についての考察
──幼児向け音楽ワークショップの開発と実践──
ムの 4 つに分かれ、教員の指導のもと企画・運営・演奏を行っている。本プロジェク トは演奏者以外の立場での音楽業務体験を通して社会における音楽の位置づけを認識 させるとともに、卒業後に自らが実社会にアプローチできる力をつけることを目指し ている。このプロジェクトの特徴は、サイバーチームを据え、インターネットでの情 報発信に力を入れている点にあると考えられる。学生が運営するサイトや
昭和音楽大学「アーツ・イン・コミュニティ」は同じく2006年度に現代
GP
に採択 され、翌年より開始されたものである。本プログラムは「地域と学ぶ」、「地域をつな ぐ」を二つの柱としており、「地域と学ぶ」は大学教員による講座や大学主催の演奏 会などをと一般公開し、大学と地域社会とが芸術文化を通じて学ぶというものであ る。「地域をつなぐ」は、学内のオーディションに合格した学生が小中学校や福祉施 設に派遣され音楽活動を行ったり、学生が企画した演奏会を地域に提供したりすると いうものである。プログラム構築やコミュニケーション能力についても教育されてお り、従来の出前演奏会やボランティア活動に留まらず、学生の教育に主眼を置いたも のとなっている。また本プログラムでは大学と行政との連携が実質的なものとなって おり、学生が地域の小中学校に赴いて演奏を行う際には行政が大学と小中学校との仲 介を行っている(赤木 2008)
。音楽大学及び音楽学部を有する大学が実施する音楽を通じた地域貢献事業では学生 が運営・企画・演奏を行うため、地域に質の高い音楽を提供できているか、多角的な 視点から芸術振興に向けてアプローチできているかという点を考慮する必要がある が、これらの活動は学生のキャリア支援と地域貢献を目的としており、学生は活動を 通じて演奏経験を積み、社会の中でどのように音楽を生かしていくかを学ぶ上で大き な効果を上げていると考えられる。
2 )教育学部を有する大学による音楽文化推進事業
教育学部を有する大学による音楽文化推進事業としては、国立大学の教育学部音楽 科が様々な活動を行っている
(林 2006)
。滋賀大学教育学部音楽教育講座で2005年 から開始されたアウトリーチ事業では、(1)地域の学校園への出前コンサート、(2)学内コンサ
-
トの地域開放、(3)地域へ出て行くための学生対象の講座、ワーク ショップの開催、(4)地域の学校との音楽による交流授業、(5)地域の教員向け講習 会・ワークショップ、(6)公共ホール等,
地域の施設や機関と連携した活動、(7)プ ロによる学校でのコンサート見学など、幅広い活動が実施されている。これらのアウトリーチ活動は地域に貢献する人材を育成するためのものとして位置づけられてお り、大学自身がアウトリーチを生み出し受容するという試みがなされている
(図 1 )
。 前述の大学による音楽文化事業では、地域への貢献のみならず学生の教育をも重要 視しており、 4 年間のカリキュラムの中でアウトリーチに関する講義を設けていると ころも多い。たとえば東京音楽大学の「Act Project」に参加する学生は「音楽キャリ ア実習Ⅰ・Ⅱ」の履修者であり、宇都宮大学教育学部では「音楽アウトリーチ研究A」
履修者によって保育所や小学校での訪問コンサートが実施されている
(新井、木下 2013)
。広島文化学園大学音楽学科ではアウトリーチの理論やプログラム構築などを 学ぶ「音楽アウトリーチ概論」が必修となっており、選択必修である「音楽アウト リーチ演習」で学外でのアウトリーチ活動を行っている(髙橋 2013)
(2)。アウトリー チ活動の準備・実践には多くの時間と人手を要するため、学生が中心となってアウト リーチ活動を行う場合は学生側の負担を考慮し、講義として理論と実践の双方を学ぶ ことのできる環境を整えることが必要とされる。学生ではなく、教員個人の専門性を生かした音楽文化事業としては、埼玉大学教育 学部の2003年の「はじめてのピアノ」が挙げられる。これは地域から成人のピアノ初 心者を対象として大学で教員が全 7 回のレッスンを行い、好きな曲を一曲マスターす るというものである
(図 2 )
。背景には企画が実施された当時の熟年層のピアノ学習 者の増加があり、大学による地域貢献の方法も模索のひとつとして企画された。本企 画ではピアノの学習以外にも地域住民同士の交流や参加者の大学への関心の高まりな図 1 )滋賀大学の音楽的アウトリーチ
どの効果が生まれており、教員の専門性という大学の利点を生かした地域貢献の一例 となっている
(川村、八木 2003)
。3 )個人の演奏家と NPO 等の中間支援による音楽文化推進事業
音楽アウトリーチ事業について論じるうえで忘れてはならないのが、個人の演奏家 による活動及び個人の演奏家が
NPO
等の中間支援を受けて展開するアウトリーチ事 業である。個人の演奏家が福祉施設などで演奏を行うなどの活動をする例は多いが、文化推進事業を行う
NPO
団体などの中間支援を受けることで、幅広い活動が可能と なる場合がある。長年に渡って地域と個人の芸術家を繋ぐ活動を行ってきたNPO
法 人「芸術家とこどもたち」は、音楽、美術、演劇など幅広い分野のアーティストを学 校に派遣する事業を実施している。NPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク
(TAN)
では、ホールでの公演事業と地 域でのコミュニティ事業を二本の柱としており、コミュニティ事業では教育機関や福 祉施設でのアウトリーチ活動や、ロビーコンサートで地域の人々が音楽を楽しむこと のできる企画を実施している。毎年行われている「アウトリーチセミナー」では、オーディションを経て選ばれた若手演奏家が半年以上かけてアウトリーチの企画立 案、プログラム構築、実施先へのヒアリング、 3 つの施設でのアウトリーチ活動実践 などを無料で学ぶことができ、若手の演奏家が音楽を通じて社会と繋がっていくため の支援事業となっている。また近年では学校教育機関と連携して学習指導要領に沿っ たプログラムの開発を行っており、授業と専門家によって提供される音楽の関連付け に取り組んでいる。専門家によるアウトリーチ活動は、学校教育の範囲に収まらない 学びの機会を子どもたちに提供する機会となると考えられるため、必ずしも学習指導 要領の内容に準拠しなければならないと言うことはできないが、演奏家が学校教育の ニーズを知り、専門家によるアウトリーチ活動と子どもたちの日常である授業を繋ぐ 図 2 )「はじめてのピアノ」の流れ
ことのできるプログラムの開発は、子どもたちが音楽をより身近に感じ、音楽に親し む習慣を身に付けるために有意義であると考えられる。
財団法人地域創造による公共ホール音楽活性化事業
(通称おんかつ)
は、地域の施 設を利用し、演奏家と地域とをつなぐ活動である。オーディションで選ばれた登録 アーティストが財団から地域のホールに派遣され、地方公共団体等と協力してコン サート及び地域交流プログラムを実施するというものである。実施に係る経費のう ち、出演料、交通費、宿泊費、日当、楽器運搬費、出演者に係る損害保険料、マネジ メント料等の演奏家派遣経費、実施市町村等が支出した地域交流プログラムに係る経 費は財団によって支払われ、2017年度には15の地域でこの事業を利用した芸術文化推 進活動が行われている。2 .大学による幼児向け音楽ワークショップの試み
1 )大学による音楽を通じた地域貢献事業のあり方についての考察
前項では、音楽大学及び音楽教育学科を持つ大学による音楽文化推進事業、NPO 法人等の中間支援による活動について述べた。ここでは音楽に特化した学部及び学科 を持たない大学による音楽を通じた地域貢献事業は、どのように行われるべきかを考 察したい。すでに述べた大学による事業には、以下のふたつの特徴がみられた。
ひとつは大学の特色を生かしている点である。ここでいう特色とは、大学の理念、
有している学部や学科、大学が立地する地域、教員の専門性、学生の存在等である。
大学は有している特色を活用することで、質の高い地域貢献事業が可能となると考え られる。ふたつ目の特徴は、事業が地域に貢献するのみならず、大学で学ぶ学生の教 育にも活用されているという点である。学生たちは事業を通じて演奏だけではなく、
演奏活動に付随する様々な力を身に付け、自分が培ってきた音楽の力を社会の中で生 かす術を学ぶことが可能となっている。また教育学部の学生にとって、学校や保育所 などでの演奏活動は子どもと触れ合うことのできる貴重な機会であり、将来自分が教 育の現場に立った際に役立つ経験となることは疑いない。大学はその公共性の高さか ら規模の大きな地域貢献事業が可能な機関であるが、実施される地域貢献事業は教育 という形で学生に還元されることが望ましいといえる。またここでいう「教育」とは 現場の指導法や教育法に留まるものではなく、現場を支える学術的背景や広域的な文 化・学問及び一般的なマナーや社会経験をも含むものであることを明記しておく。
前述の二点を踏まえ、音楽に特化した学部及び学科を持たない大学による音楽を通 じた地域貢献事業のあり方として、以下の図 3 が導き出された。音楽を専門に学ぶ学 生がおらず、音楽専門の教員の数も少ないため、大学はプロの演奏家やオーケストラ
と提携して専門家としての技術、アイデア、作品
(演奏)
の提供を受ける。一方音楽 家側は大学から専門性を生かしたプログラムの提案や、地域貢献事業の機会を得るこ とができる。これにより、地域には大学の専門性とプロの音楽家による質の高いプロ グラムを提供することが可能となる。また大学の大きな特色である「学生」は、企画 の運営や実施を行ったり、ワークショップのアシスタント等のスタッフとして参加し たりすることで地域に貢献すると同時に、事業から様々な学びを得ることが考えられ る。図 3 )大学が音楽を通じて実現しうる社会貢献 2 )幼児向け音楽ワークショップの開発と実施
2017年11月に山梨学院生涯学習センター及び山梨学院短期大学地域連携研究セン ターによって実施された「音楽とあそぼう
!
-≪おどるこねこ≫のワルツ」は、図 3 の考えを元に企画を試みたものである。本企画は、公益財団法人日本フィルハーモ ニー交響楽団(以下、日本フィルハーモニー)
と協力し、幼児向けの音楽ワークショッ プを行うというものであった。日本フィルハーモニーは教育機関への訪問コンサート や参加型学習プログラムである音楽創造ワークショップの開発と推進を行うなど、教 育部門に力を入れている団体である。今回の試みでは、大学とオーケストラとが下記 図 4 のように役割分担を行い、保育科の特性を生かして幼児向けの音楽ワークショッ プを開発・実施した。今回のワークショップでは、開発段階から童謡などのいわゆる「子ども向け」を器 楽演奏するだけではなく、質の高い音楽作品を子どもや音楽に馴染みのない大人が自 分のものとして受容しうるための教育的意義のあるワークショップとすることを目的
とした。音楽を聴くという経験を始めたばかりの子どもたちには大人が考える子ども 向けの楽曲ではなくとも、演奏家が想いを込めて演奏する音楽を受容する力があると 考えたためである。幼児向けプログラムは子どもの発達段階によって配慮が必要とな るため、ターゲット設定の段階から難しさがあったが、 3
-
4 歳児を主な参加者とし て想定してプログラムを構築した(表 1 )
。メインとなる楽曲はアンダーソンの≪お どるこねこ≫であり、子どもたちは楽曲に合わせて体を動かし、リトミックやわらべ うたの活動で用いられるシフォン布を振ることで体の動きと視覚の双方から三拍子を 感じるという構成となった。ワークショップの後半では、子どもたちが楽曲内で猫を 驚かす犬のロールプレイを行ったが、これは子どもが音楽で描かれる物語に気づき、自らも登場人物として参加することで、より主体的な音楽受容ができるよう考案した ものである。本プログラムには使用する楽曲やファシリテーターを中心としたフェル マータ体形、子どもたちの日常と音楽接点を近づけるために演奏家やスタッフがカ ジュアルな服装をすることなど、演奏家側からの提案を採り入れており、演奏家の視 点と音楽教育の視点双方から作られたものであるといえる。
図 4 )大学とオーケストラの協力によるワークショップ実施の役割分担の例
表 1 )「音楽とあそぼう !」プログラムの概要
演奏家 子どもたち・保護者 スタッフ(○は特に学生の動き)
・リハーサル
・学生との顔合わせ、打ち 合わせ
・場内には入らず待機 〇出演者との顔合わせ、最終打ち合わせを行う。
・出演者に確認してから開場を行う
・舞台上以外で待機 ・受付をする
・ラベルに子どもの名前を 書き、胸のあたりに貼る
・赤青黄のラベルシールを貼った名札を渡し、子 どもの名前を書いて胸のあたりに貼ってもらう。
○名前を書いたりラベルを貼ったりするのを援助 すること
○笑顔で話しかけるなど、子どもたちが安心でき るようにアットホームな雰囲気作りを心がける。
・ホールの前方の客席のみ を 使 用(自 由 席)して、親 子で待つ
○場内配置の学生は、ホールの前方の客席のみを 使用するよう言葉がけをする。
○化粧室の案内などを行う
・ファシリテーター(以 下 ファシリ)が舞台に登場し、
子どもたちに舞台に来るよ う 呼 びかける。焦 らなくて 良 いのでトイレを 済 ませる こと、走 らないで 舞 台 まで 来ることをお願いする。
・トイレを 済 ませ、舞 台 に 上がる。
○子どもたちが舞台に上るのを援助する。必ず階 段のそばに一人ずつつくこと。走らないよう注意 すること。ゆっくりで良いので安全に留意して行 う。
○受付したばかりの保護者、トイレを急ごうとす る保護者には「まだ時間があるので大丈夫ですよ」
等と言葉をかけて安心させる。
○なかなか来ない子どもがいたら迎えに行って一 緒に舞台まで上る。保護者と離れたくない子ども 等は無理に舞台に上げなくて良い。「一緒にやりた くなったら来てね」などと言葉がけをする。
・挨 拶、子 どもを 座 らせ、
軽く自己紹介をする(名前 のみなど)。学生バイトも紹 介 し、トイレに 行 きたい 時 や 何 か 困ったことがあった ら 言 うようにアナウンスす る。ゆっくりと話す。
・子 どもを 立 たせ、ラベル の色別にグループ分けする。
・それぞれの色を担当する 演奏者を紹介する。
・全 体 をフェルマータ 隊 形 にする
・ファシリの自己紹介後、
指示に従ってラベルの色ご とに分かれる。
・それぞれの 担 当 者 とフェ ルマータ隊形になる。
○場外の学生はスタッフに声をかけて場内へ
○子どもたちをラベルの色別に分ける。
○担当ラベルのグループに入る。
○担当グループがフェルマータ隊形になるように 援助する。
・三拍子の導入へのリズム 叩きワークを行う。
・みんなでワークを行う。 ○ファシリの指示に従ってワークを行う。
・「今から三拍子の曲を演奏 します。 準 備 をするので ちょっと待っててね。」
・座って大待機 ○もし子どもが座っていなかったら専攻科生が座 らせること。
○学生は全体の中心に外向きに椅子を 4 つ並べ、
それぞれに譜面立てを置く。子どもたちが椅子や 譜面台から 1mほど離れるよう注意すること。
○演奏家と担当学生が椅子の準備している間、場 を繋ぐ。「今から演奏してくれる曲は、動物さんの 曲 なんだって。みんな 動 物 園って 行ったことあ る?(子どもとやり取り)あ、準備ができたみたい。
何の動物なんだろうね。聴いてみようね。」
・《ぞうさん》前奏を演奏し て曲あてを行う
・演奏を聴く
・曲あてをする
○ 子 どもたちと 曲 を 聴 き、「わかった?」「何 の 曲?」などと関わりを持つ。
・《ぞうさん》を 2 番まで演 奏
・《ぞうさん》を歌う
・歌いながら三拍子を叩く、
[足 踏 み・手・手]をした り移動したりする。
○子どもたちと歌いながらワークを行う。
・子どもたちを座らせる。
1 .ねこの声あて(Vn)
2 .演奏楽器の紹介。使用 楽器の名前を教え、それぞ れがソロで演奏して楽器の 音色や特徴を子どもたちに 聴かせる。説明はごく簡単 にすること。
3 .四 人 で 同 じフレーズを 演奏し、三拍子であること に気づかせる。
4 .「次はこの布を使って三 拍 子 であそんでみようね」
と布を示し、子どもたちに シフォン布を配るよう学生 に指示する。
5 .全員に布が渡ったこと を確認した後、布の質感や 色を子どもたちが味わえる よう言葉がけをする。
6 .ファシリは他三人の演 奏 に 合 わせ、シフォンの 布 を振る。
7 .子どもたちを立たせる。
「今みたいに音楽に気持ち よく乗って布を振りながら 自由に動いてみようね」
8 .子 どもたちがシフォン 布を振りながら動く
9 .演 奏 者 は 犬 の 部 分 で
「ワンワン」と吼える。
10.《おどるこねこ》の情景 を話し、犬の部分を全員で やることを提案する。
11.移 動 はせず、その 場 で 立ってシフォンを 振 り、犬 の場面は全員でやる。
・声あてをする
・学生から布を受け取り、
布の感触や色、透けて見え る景色などを楽しむ。
・ファシリのお手本を見な がら布を振ることが予測さ れる。
・布を振りながら自由に舞 台を動く。三拍子を体で感 じ、視覚化する。
・驚いて演奏家に注目する ことが予測される。
・楽曲の情景を思い浮かべ、
自分も登場人物として参加 することでより音楽を主体 的に楽しむことが期待され る。
○子どもたちと関わりながら演奏を聴く
○ファシリの指示で子どもたちに布を配る。学生 たちも布を持つこと。
○布の質感や色を子どもたちが味わえるよう言葉 がけをする。
○子どもたちと同じように座り、ファシリのお手 本に合わせて布を振る。
○子どもたちと一緒に布を振りながら気持ち良く 動く。子どもの安全に注意すること。
○子どもたちと演奏を味わう。
○子どもたちと音楽を楽しむ。犬の場面は思いっ きり!
・子どもたちを座らせる
・WSのふりかえりをする。
・アンコール
モーツァルト《ディヴェル ティメント》変ロ長調 K.137 第 3 楽章より
・間近で楽曲を楽しむ
・WSを通じて主体的な鑑 賞 がしやすくなっているこ とが期待される。
・日常と芸術との接続を体 感する
○子どもたちが演奏者に近づきすぎないよう注意 する
○終了後にシフォン布を回収する
3 )ワークショップにおける学生の学び
ワーショップには、学生スタッフとして短期大学保育科で学ぶ学生 9 名が参加し た。学生には事前にレクチャーを行った上で子どもたちや演奏家たちと舞台に上が り、音楽と子どもを繋ぐファシリテーターのアシスタント役を務めた。ワークショッ プ終了後に参加した学生に質問紙調査を行い、ワークショップで得られた学びや経験 について尋ねたところ、表 2 のような結果が得られた。
表 2 )音楽を通じた地域貢献事業における学生の学び
回答は複数回答可としたが、全ての学生が複数の項目に回答していた。「保育や教 育の場における音楽についての興味が深まった」「生の演奏を楽しむことができた」
と回答している学生が最も多く、学生たち自身の音楽への関心が高まったことがわか る。自由記述欄で顕著であったのが、「雰囲気作り」や「保護者との関わり」につい ての記述である。雰囲気作りに関しては、「笑顔や明るい雰囲気作りを心がけること で子どもたちの反応が良くなった」、「学生が楽しむ雰囲気、落ち着く雰囲気を作り上 げることが大切だと思った」等と書かれており、実践を通じて子どもたちが音楽を楽 しむことのできる場の空気を作ることの重要性を学んだことが見受けられた。保護者 との関わりに関しては、「保護者の方とゆっくり話す機会は今まであまりなかったの で、今回このような機会が持てて良かった」、「保護者のいる前で子どもたちと会話す るのは緊張してしまうと感じた」、「元気がなさそうな子どもと一緒にいたら終わった 後に保護者の方からお礼を言われて嬉しかった」等、保育者には必要不可欠な保護者 とのコミュニケーションについても気づきがあったことが明らかとなった。上記の結 果から、学生たちはワークショップの参加を通じて音楽への関心を高めると同時に、
子どもたちが活動を行うための環境構成や保護者との関わりなど、保育者として必要
な学びを得たことがわかった。
結語
本研究では大学による音楽を通じた地域貢献事業のあり方について論じ、実際に 行った事業から学生が多くを学んでいることを明らかにした。大学が有する特色
(地 域、公共性、教員の専門性、学生等)
を生かして芸術文化を推進し、それらの事業を学 生の学びの場として活かすことで、地域に貢献すると同時に将来地域に貢献する人材 の育成も可能となる。文化的発信地としての大学が音楽を通じて果たすことのできる 役割について考察し、大学と地域とが学び合えるような実践を模索することが今後の 課題である。⑴ 近年のアメリカでは、聴衆と音楽活動者との間に上下関係を生じさせるのではなく、相 手との繋がりを大切にするプログラムであるという考えからパートナーシッププログラ ムという呼称が用いられている(砂田 2007:96)。
⑵ 論文中の科目名は「アウトリーチ活動Ⅰ・Ⅱ」となっているが、2017年度のシラバスで は「音楽アウトリーチ概論・演習」とされている。
【引用・参考文献】