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会社法と監査: 資本の会社債権者保護機能と関連し て

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(1)

会社法と監査: 資本の会社債権者保護機能と関連し

著者 大野 浩

雑誌名 金沢大学経済論集 = The Economic Review of Kanazawa University

巻 20

ページ 37‑50

発行年 1983‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/2297/37289

(2)

− 3 7 −

会 社 法 と 監 査

一 資 本 の 会 社 債 権 者 保 護 機 能 と 関 連 し て −

1 序

2 資 本 に つ い て 3 資 本 と 資 本 準 備 金 4 資 本 準 備 金 と 財 務 5 法 定 資 本 と 監 査 6 結 語

大 野 浩

1 序

株式会社の資本に係わる規定,すなわち商法第二百八十四条ソ二第一項,

以下三項にいたる改正は,資本の株式発行価額主義と額面株式の実質的な無 額面株式化思考を指向したものである。かかる株式の発行価額主義と額面株 式の無額面化思考及び資本組入率の変更は法定資本思考及び構造にいくつか の問題を提起したのである。

当該稿においては,そのうち資本組入率の変更にともなう法定資本の拡大 化策の意義及び監査との関連について論究することとする。

2 資 本 に つ い て

株式会社における資本は,一般的には資本金として認識される計算上の数 額である。有限責任制の下における抽象的なる「資本金」なる概念の確立は,

商法の本旨にもとづき,会社債権者保護に対する担保額の範囲を抽象的に表 示したものである。かかる抽象的数額としての法定資本の効果は,株式会社 制度における資本の端緒的認識の下では,その主要なる資本源泉の総てを出 資資本に求められ,出資資本それ自体に債権者保護機能の法定資本効果が認 められたのである。又それらは,資本の具体的運用形態要因として,換価能 力のある価値物に限定された財産法的会計理論に導かれた財産価値物として

具現化した資本維持機能として展開されたのである』 》

(3)

これに対して,動態会計理論の下における資産性の認識による法定資本は,

資産の換価能力に重点がおかれず,財産価値物としての資産性を認識するこ とは不可能となったのである。かかる会計構造を前提として認識される「法 定資本」には財産価値物との対時の下における法定資本認識による債権者保 護機能は崩壊をよぎなくされてきたのである。すなわち財産価値性に裏付け された「資産一負債=資本」なる公式が資産それ自体の換価能力性から用役 量(能力)性に転換され,ここに資産の価値性と用役(能力)量との相関関 係が崩れ,資産の財産価値と資産の表示数値の乖離がなされてくるのである。

その結果,法定資本の抽象数額に対する財産価値性を基礎とする債権者保護 機能の実効性は失われ,新なる法政策へと展開してゆくこととなったのであ

る 。

動態会計思考の下における法定資本の債権者保護策は資産の担保性から脱 却 し て , 具 体 的 に は 資 本 と 利 益 の 区 分 を 明 確 化 す る と 同 時 に 利 益 の 留 保 を 強 制する法定準備金制の導入と配当可能利益算定規制として導入され,法定資 本の債権者保護機能を補完することとなったのである。こ.こに法定資本と債 権者保護機能の関係を財産価値性をもって論理化していた思考は,企業の収 益性をもって論理化する債権者保護機能の展開となってきたのである。

( 注 )

(1)資本の会社債権者保護機能は,財産法理論では,会社財産の維持をあらわす。

これに対して,損益法理論での資本維持は,資本取引と損益取引とを区別するだけ で,それに基づいて一定期間内における費用と収益を考慮に入れた配当可能利益の 算定が行われる。すなわち,財産法理論では資本が重要視されるが,損益法理論で はそれ程重要視されるものでもない。山本忠弘「資本の会社債権者保護機能につい て」『法政論集』92.288頁。

3 法 定 資 本 と 資 本 準 備 金

商法第二百八十四条ノー「会社ノ資本ハ本法二別段ノ定アル場合ヲ除クノ 外発行済株式ノ発行価額ノ総額トス」と規定し,原則的には発行払込総額主 義をとり,株式の発行価額の全額を以って資本(法律上)とすることを建前 としているのである。かかる思考は旧商法(改正前)第二百八十四条ノー「…

…発行済額面株式ノ株金総額及発行済無額面株式ノ発行価額ノ総額トス」規

定による,額面株式における券面価額主義(資本組入額は額面株式において

(4)

− 3 9 −

は額面額とする)と無額面株式における同法第二百八十四条ノニノ②「無額 面株式二付テノ其ノ発行価額ノ四分ノーヲ超エザル額ヲ資本二組入ザルコト ヲ得……」規定による法定資本組入額による法定資本構成が,新株式引受権 の弾力的な運用による額面株式の時価公募増資形態の定着による調達資金の 資本組入率の低下と法定資本と資本準備金の逆転化現象をかもし出す結末と となったのである。かかる事象に対処した改正一法定資本の本旨にもとず き,債権者保護機能の充実という観点より改正されたのである。

改正商法による法定資本の構成は,払込総額主義を原則とし乍ら,改正前 商法の資本剰余金思想を尊重しつつ,調達資金(株式による)の法定資本化 率を高める改正である。

資本組入率の変更,すなわち株式発行価額中における資本組入率の変更は,

現在株主に対する新株式引受権による額面割当を基本とする資本調達方式か ら,時価発行による公募増資方式への移行にともない,額面超過金総てを資 本準備金(資金コストの安い資金を大量に調達)積上げ手段として作用し,

結果として,法定資本の対社会的機能の低下を招く要因となったのである。

すなわち法定資本と資本準備金の本来あるべき姿とは逆の形となり,その修 正がよぎなくされた改変といえよう。

法定資本と資本準備金の関係は,有限責任制の下において,法定資本それ 自体の機能は,債権者保護施策に対応した抽象的な数額として表示されるも

のにしかすぎない次)法定準備金は,本来,損益取引を源泉とする留保利益

をもって,間接的に「法定資本」の補強を任務として生成してきた論理であ る。一方資本準備金は資本取引を源泉とし,法定資本と淵源を同じくするも

のである力4,2)企業会計上における資本と利益の区分原則に起因し分類される。

資本準備金その主なる生成因素は商法の分類に準じてみると,商法第二百 八十八条の二「左二掲グル金額ハ之ヲ資本準備金トシテ積立ツルコトヲ要ス

ー 株 式 ノ 発 行 価 額 中 資 本 二 組 入 レ ザ ル 額

四資本ノ減少ニ依り減少シタル資本ノ額ガ株式ノ消却又ハ払戻二要シタ ル金額及欠損ノ填補ニ充テタル金額ヲ超ユルトキハ其ノ超過額

五 合 併 ニ 依 り 消 滅 シ タ ル 会 社 ヨ リ 承 継 シ タ ル 財 産 ノ 価 額 ガ 其 ノ 会 社 ヨ リ

承継シタル債務ノ額及其ノ株主二支払ヒタル金額並二合併後存続スル会社ノ

増加シタル資本ノ額又ハ合併ニ因り設立シタル会社ノ資本ノ額ヲ超ユルトキ

ハ 其 ノ 超 過 額

(5)

②第二百八十条ノ九ノー第二項ノ規定ニ依り株主ヲ募集シタル株式二付 テハ前項第一号ノ額ハ之ヲ資本準備金卜為スコトヲ要セズ

③第一項第五号ノ超過額中合併ニ因り消滅シタル会社ノ利益準備金其ノ 他会社二留保シタル利益ノ額二相当スル金額ハ之ヲ資本準備金ト為サザルコ トヲ得此ノ場合二於テハ其ノ利益準備金ノ額二相当スル金額ハ之ヲ合併後存 続スル会社又ハ合併ニ因り設立シタル会社ノ利益準備金ト為スコトヲ要ス」

と規定し,又その使途については,商法第二百八十九条「前二条ノ準備金ハ 資本ノ欠損ノ填補二充ツル場合ヲ除クノ外之ヲ使用スルコトヲ得ズ但シ第二 百九十三条ノ三第一項(準備金の資本組入)二規定スル場合ハ此ノ限二在ラ

ズ②利益準備金ヲ以テ資本ノ欠損ノ填補ニ充ツルモ1乃不足スル場合二非ザ レバ資本準備金ヲ以テ之二充ツルコトヲ得ズ」と規定し資本の欠損填補或い は法定資本への組入れにその使途が限定されているのである。かかる法定準

隠隠壽菫撫鰯蝋鰯鰯壽窺騨鬘菫霞

定準備金(資本準備金)は,有限責任制の下に設立された物的会社における 債権者保護,強いては社会的責任論において展開される株式会社の利害関係 者保護機能を分担するものであって,法定準備金は法定資本機能に対する間 接的,補完的機能を賦与された性格を有するものである。法定資本と法定準 備金は対企業内においては目的指向性において類似性を有するものであるが,

対社会的には法定資本に対する従属的意義しか有せず,今回の改正は,かか る観点から,法定資本の債権者保護機能の強化を指向し,資本金組入率の拡 大がなされたのである。

( 注 )

(1)今日の株式会社はわずかな資本でその数倍あるいは数十倍の取引を行なう。

このような状態において,従来の資本が有限責任制のもとにおいて会社債権者を保 護してきた機能を果たせるかどうかが問題である。

山本忠弘「資本の会社債権者保護機能について」『法政論集』92.257頁。

(2)法定準備金制度の創設は,1867年7月24日のフランス会社法(36条)をもっ

てロ葛矢とする。これはその後多くの大陸諸国法に継受され,わが商法典にも当初か

ら定められていたが,その導入の経緯や理由は必ずしも明白でない。ただ,その制

度が株式会社制度にとって有意義なものと考えられ,健全な慣行として行われてい

た準備金積立の長所に着目して立法化されたことは疑いない。一般に利益の内部留

(6)

‑ 4 1 ‑

保である準備金は,企業の資本調達の目的において,新たに外部から調達する場合 や,新たに稼得する場合に比べ,はるかに有利なものとされている。それに準備金 は,将来の損益変動ないし価格変動,偶発的損失などを十分に見越した会計処理を なしえない現在の企業会計の制約を補完するものとしても機能する。尾崎安央「法 定準備金制度の発展と機能的変化」『早稲田法学』第57巻第2号67頁。

(3)企業の経営破綻は,当該企業自体に限らず,その債権者・株主等の利害関係 人にも重大な損害をもたらす。とくに社員の責任がその出資額に限定されるいわゆ る物的会社の場合には,会社債権者はその弁済を会社資産に求める以外にないので,

会社資産の社外流出を制限してその維持・充実をはかる準備金の積立は,企業自体 の維持にも貢献するが,それに劣らず会社債権者にとっても重大な意義をもつ。更 に企業自体や株主の利益保護のみを目的とするのであれば,任意準備金を積立てる ことでもこと足りるはずである。加えて,会社の意思決定に直接関与しえない債権 者のためには何らかの強制が必要とされる。経済社会の進展とともに資本集中に適し.

た株式会社形態を利用する度合が高まる一方で,この形態に対する大衆の信頼を維 持・高揚する必要があったと考えられるが,そのためには会社債権者の保護が不可 欠であったといえる。そこに準備金の積立を法をもって物的会社に強制すべき理由 があったと思われる。尾崎安央「前掲論文」68頁。

(4)神崎克郎「商法における貸借対照表の資本の部について」『企業会計』

第33巻第8号26頁。

4 資 本 準 備 金 と 財 務

改正商法において,額面株式の無額面化思考と資本組入率の変更がなされ た。かかる変更は企業会計に如何なる効果を及ぼすものかについて論究する こととする。

商法第二百八十四条ノー(資本,払込剰余金)会社ノ資本ハ本法二別段ノ 定アル場合ヲ除クノ外発行済株式ノ発行価額ノ総額トス

②株式ノ発行価額ノー分ノーヲ超エザル額ハ資本二組入レザルコトヲ得 但シ額面株式二付テハ券面額,会社ノ設立二際シテ発行スル無額面株式二付

テ ハ 五 万 円 ヲ 超 エ ル 部 分 二 限 ル

旧 商 法 第 二 百 八 十 四 条 ノ ー 会 社 ノ 資 本 ハ 本 法 二 別 段 ノ 定 ア ル 場 合 ヲ 除 クノ外発行済額面株式ノ総額及発行済無額面株式ノ発行価額ノ総額トス

② 無 額 面 株 式 二 付 テ ハ 其 ノ 発 行 価 額 ノ 四 分 ノ ー ヲ 超 エ ザ ル 額 ヲ 資 本 二 組

入 レ ザ ル コ ト ヲ 得 設 立 二 際 シ テ 無 額 面 株 式 ヲ 発 行 ス ル ト キ ハ 其 ノ 最 低 発

(7)

− 4 2 −

行価額ヲ超エル部分ニシテ其ノ発行価額ノ四分ノーヲ超エザル額二付亦同ジ 法定資本の構成は,

額面株式のみによる場合 旧 商 法 額 面 額 一 法 定 資 本

額面超過額一株式発行差金(資本準備金)

現行法発行総額又は発行価額の‑告が券面額以下の場合は券面額を又券面 額以上の場合は発行価額の‑告額を法定資本とすることができる。

その他の部分は払込剰余金(資本準備金)

無額面株式のみによる場合

旧商法発行価額の‑差を超えざる額を払込剰余金とすることができる。法 定資本は発行価額又は発行価額の‑号以上をもって構成される。

現行法発行価額総額又は発行価額の一合以上額をもって法定資本は構成さ れる。但し,会社設立時においては,資本金組入最低額は5万円 とする。最低発行価額5万円を超える額は払込剰余金とすること が で き る

資本組入率の変更は,株式発行における払込価額(発行価額)の絶対額に おいては同一である力§,株式会社における法定資本額の相違として表示さる るのである。図示すると

旧法 法定資本 資 本 準 備 金

新 法 法 定 資 本 資本準備金

かかる変更にかかわる促進因素は,時価発行公募増資方式の定着化にとも なう増資プレミアムの資本化率に対する法定資本の本旨からの改正である。

増資プレミアムの実態及びプレミアム思考についてみると,例えば昭和57年 10月商法改正前に起った公募増資ラッシュートヨタ自動車(株)7,000万株 (956億円)東芝電気(株)2億株(716億円)を筆頭に昭和56年度有償増資1.

兆7,932億円のうち1兆1,528億円がプレミアムとして資本準備金に計上され

(1)(2)

た 。

(8)

表 1

増 資 概 況 ( 全 国 上 場 会 社 )

l︽いI

o菓計雑準は①株主割当一申込期日,②公募および第̲ミ者削当一払込日,③無償交付一資本組入日。ただし,②,③について①と併用の場合は申込期日で集計。抱合せ墹資

のうち有償払込分ば株主荊当に,無償分は無償交付額に計上(①の集計催準は墹懇ベース)。

o公募累計には失権株.端株および海外公募は含まない。株主優先募入は一般公募として集計。

○集計対象の範囲は,全国上場会社を原則とするが,30年4月から36年9月(第2部市場開設時)までは店頭売買銘柄を含む。

年 度 有償増資総調達額

う ち プ レ ミ ア ム 株主配当 構 、 成 比 うちプレ

ミ ア ム 公 募 構 成 比 うちプレ ミ ア ム

第 三 者

割 当 構 成 比 うちプレ

ミ ア ム 無 償 交 付 金

8901234567890123456789012345622333333333344444444445555555

320 192

157

476 276 180 322 419

644

590 536 421 101 224

234

230 390 375 252 429 316 323 219 234 330 250 253 256 258

億円 1,037

823 685 2,228 1,825 1,523 3,144 4,475 6,716 5.430 4.445 4,475 1,429 1,939 2,528 3,241 5,297 6,613 5,411 12,982 7,314 6,126 9,024 8,234 7,094 10,329 6,605 11,601 17,932

億円 8

1 1

●b

36 17 17 81 57

0013

473

157 70 28 2 25 36 101 513 1,063 1,144 8,078 3,591 2,118 2,267 4,729 4,300 6,016 4,654 9,008 1,528 1

億円 994 804 656 2,128 1,775 1,478 2,865 3,968 6,059 5,228 4,275 4,427 1403 1,182 2,419 3.080 4,651 5.289 3,885 3,457 3,021 3,570 6,493 2,800 2,145 3,079 1,280 1,761 4,807

% 95.9 97.7 95.8 95.5 97.3 97.0 91.1

88.7

90.2 96.3 96.2 98.9 98.2 93.9

95.7

95.0 87.8 80.0 71.8 26.6 41.3 58.3 72.0 34.0 30.2 29.8 19.4 15.2 26.8

億円

3

20

28 24

39 31 14

132 35

億円 17

5

1

76 44 45 69 2 502 644 193 97 18 1 23

77

17 1 595 1,260 990 8,610 3,921 2,496 2,436 5,326 4,660 6,621 4,643 9,063 12,799

% 1.6 0.6

0.1

3.4 2 . 4 , 3.0 8.6 11.2 9.6 3.6 2.2 0.4 0.1 1.2

3.0

3.6 11.2 19.1 18.3 66.3 53.6 40.7 27.0 64.7 65.7 64.1

70.3

78.1 71.4

億円 8 1

1

●●

23 16 17 81 55 69 54 69

85

12 35 87 97

00134104

1,046 815 7,267 3,272 2,083 2,163 4,628 4,096 5.603 4,122 8,213 11,217

億円 26 14

29

25 6

1

10 6 13

9 73 30 26 95

32 44

50 63 36 5 915 372 60 96 108 290 629 682 777 326

% 2.5 1.7

4.2

1.1 0.3 0.1 0.3 0.1

0.2

0.2 1.6 0.7 1.8 4.9 1.3 1.4 0.9 1.0 9.9 7.0

5.1

1.0 1.1 1.3 4.1 6.1

10.3

6.7 1.8

円0003400212442 ︒■■今● cc

●意000

13

1

467111

329 793 295 35 65 70 191 413

531

663 276

社汚的略

1

419 152 134 286 240

290

256 257 214 73 08

82

98 1

129 152 179 208 385 414 384 390 416 330 381 400 413

億円 146 232

169

619 170 205 669 448 540 559 374 384 229 231

106

301 242 516 531 763 428 613 251 198 551 219 233 056 008

99りり︒9りり? 112211121

(9)

無 償 交 付 状 況 ( 全 国 上 場 会 社 ) I今吟I

集計基準は原則として資本組入日。ただし併行増資,抱合せ増資については申込期日ベース。

資=資本準備金,利=利益準備金,再=再評価積立金,有償併行=有償・無償併行増資,抱合せ増資=有償・無償抱合せ増資,無償単独=無償交付のみの増資。

年度

無 償 交 付 額 社 数 合 計

資本準備金 構 成 比

資 内 利 益 準 備 金 構 成 比

再評価積立金 構 成 比

原 資 別 無 償 交 付 実 施 会 社 数

資利 資再 利 再 資利再

有償 併 行

抱 合 せ 増

単 独

456789.01234567890123456 33333344444444445555555

286 240 290 256 257 214 73 108 82 98 129 152 179 208 385 414 384 390 416 329 381 400 413

百 万 円 66,895 44,802 54,042 55,930 37,381 38,411 22,861 23,095 10,561 30,059 24,166 51,561 53,100 76,253 142,807 161,323 225,137 219,812 155,117 121,895 123,280 205,636 190,816

百 万 円

0 11

2,947 3,730 5,441 4,203 1,135 4,451 3,724 6,905 11,548 30,655 26,911 56,191 142,387 161,135 225,057 219,761 154,917 121,895 123,280 204,436 190,816

0.0 5.4 6.7 14.6 10.9 5 . . 0 19.3 35.3 23.0

4Z.8

59.5 50.7 73.7 99.7 99.9 99.9 99.9 99.9 100.0 100.0 99.4 100.0

百 万 円

0 188

27 11 0 144 198 325 278 450 596 95 585

1,027

420 188 80 51 200 0 0

1,200

0

000001212011000000

400494655213310OJll6

百 万 円 66,895 44,603 51,069 52,189 31,940 34,064 21,528 18,320 6,559 22,703 12,022 20,812 25,604 19,034

0 0 0 0 0 0 0 0 0

100.0

99.6 94.5 93.3 85.4 88.7 94.2 79.3 62.1 75.5 49.7 40.4 48.2 25.0 一一一一一一一一一 社喝蛇卿幻四調犯弱沌

109 145 191 383 410 383 389 415 329 381 399 413

社11114215141241111

286 236 269 212

209 1 332979896656333321 社1111 社22111 1263

1

2

1

1

1

社386666 3433

7 35 33 37 62 45 56 48 24 30 38 44 35 19 17 18 19

社的弱沌妬鯉弱加配配刀調記皿 111 606

22 623231

114

73

81

114

157

119

56

50

27

44

38

81

109

154

361

378

324

340

379

307

362

379

393

(10)

− 4 5 −

増資 プレ ミア ムー 資 本 準備金一は株式市場を介し た時価 発 行公募 増 資 という方式による財務資金の調達で,市価という基準を利用した低コスト資 金の調達である。額面株式の時価発行は低い資本組入率と高い資本準備金組 入率となり,その結果法定資本の債権者保護機能を稀釈することとなった。

今回の改正は,かかる資本取引によって提起される法定資本と資本準備金間 における組入額の逆転化現象に歯止めをかけると同時に法定資本本来の機能 を維持させることに意味を求めたものである。

かかる法律制度上の改変,すなわち資本取引にかかわる資本組入率の変更 は会計及び監査又企業財務政策上いくつかの問題を提起することとなったの である。会計学的には,資本組入率は株式発行価額における区分(資本の部)

の問題として提起され,資本と利益の区分原則の下における会計処理問題と して認識されるのである。唯,単位株制の導入にともなう端数株式の買取及 び売却,自己株式の売買における自己株式の資産性の問題及び自己株式取引

( 3 )

における売買損益の会計上の性格及び取扱い問題が提起される。その他明瞭性の 原則との関連において区分表示(例えば,有価証巻と自己株式の区分表示)

原則の適用問題がある。

資本組入化率の財務政策的意義は,旧商法上における時価発行公募増資は

「わが国企業の国内外の資本市場を通ずる資金調達(株式・事業債・転換社 債等)は昭和56年度には五兆円に達し,前年までの三兆円前後と大幅に上回 る最高額となった。このうち国内株式発行市場における全国上場会社の有償 増資による調達資金額は一兆七千九百三十二億円であり,このうち時価発行

増資分は一兆二千七百九十九億円であり……ず)株式による資金調達が株高を

反映して量的に拡大化し,それらは特に額面株式の時価発行にともなうプレ ミアムの資本準備金の蓄積として調達されたのである。かかる資本取引によ る資本準備金の蓄積は,「株式の発行価額中資本準備金とされたものは,配当

(5)(6)

負担がない,いわばただの金と考える。風潮があるといわれる……」財務 政策的には株式の時価公募増資により低コスト資金を積極的に調達し財務利

(7)(8'(,敬正商法における資本組入率の変更は,

得の稼得を指向したものである。

利益配当基準としての発行済株式数に増減変化を及ぼすものでない限り,調

達資金とは直接的な関係は存しないのである。財務論は調達資金の資金フロ

ーの問題であり,又コストの問題として提起されるのである。企業財務の健

全性という観点からは,株式の時価発行増資による低コスト資金の調達と,

(11)

− 4 6 −

配当負担の軽減を指向した利益による株式数の減少(株式消却)を積極的に 推進すべきであろう。

( 注 )

(1)『商事法務』NQ944.4頁,44頁。

(2)改正商法の施行前に公募増資をして多くの資本準備金を積み上げておこうと するいわゆる「かけ込み増資」なのかそれとも株高を利用した濡れ手に粟式の時価 発行だったのか,いずれとも断定できない。前者であれば,改正商法による資本金 組入れが二分の一へ増大することからくる配当負担を忌避しての行動であったとい

うことになる。しかしこれが上記の時価発行による公募増資の主要原因であったと は思えない。むしろ主要な原因は株高を利用してのコストのやすい資金を大量に調 達することにあったものと思われる。とはいってもこれ改正商法が拍車をかけたこ

とは否定できないであろう..…・・河本一郎「改正会社法と企業金融」『民商法雑誌』

第87巻第2号,153頁。

(3)拙稿「会社法と会計一自己株式に関連して−」『経済学部論集』第3巻 第2号参照。

(4)『商事法務』「時価発行公募増資の諸問題とその改善策」No.958.855頁。

(5)稲葉威雄『政正会社法』358頁。

(6)株高を利用してのコストのやすい資金を大量に調達することにあったと思わ れる……河本一郎「改正会社法と企業金融」『民商法雑誌』第87巻第2号,153頁。

(7)時価発行公募増資は量的に拡大し,有償増資全体の70%(昭和54年)を超え 昭和55年度においては78.1%の高水準に達した。

(8)時価発行公募増資による資金調達の利点として,①国際競争力の強化,省力・

省エネルギー及び技術革新のための設備投資需要が高まっていること,②配当負担 の急激な上昇を招くことなく,財務体質の改善が図れ,安定成長下の企業の資金調 達手段として望ましいと考えられたこと。『商事法務』No.958,855頁。

(9)『商事法務』NQ944.19頁。公募増資による調達資金の概況。

(12)

表 3 公 募 増 資 状 況 ( 全 国 上 場 会 社 )

l︽﹃I

公募会社の全調達額(B)は,株主割当または第三者割当と公募を併用した増資による調達額。

全株公募調達額(E)は新株発行に際し株当割当による有償増資を併用せず全株公募のみで行った増資による調達額で,公募額1,000万円(額面分)以下は除いている。

51年度の(A),(B),(C),(E)の各調達額には日立造船の優先株公募120億円を含む。

年 度

(A) 総 調 達 額

(B) 公 募 会 社 の 全 調 達 額

(C) 公 募 調 達 額

(D)うち プレミ

ア ム

(E) (C).のうち全株 公 募 調 達 額

(F)うち プ レ ミ

ア ム

(B)/(A) (C)/(A) (E)/(A) (D)/(C) (F)/(E) l社当 り公募 調 達 額

56789012345678901234563333344444444445555555

419 644 590 536 421 101 224 234 230 390 375 252 429 316 323 219 284 330 250 253 256 285

億円 4,475 6,716 5,430 4,445 4,475 1,429 1,939 2,528 3,241 5,297 6,613 5,411 12,982 7,314 6,126 9,024 8,234 7,094 10,329 6,605 11,601 17,932

社妃

1 271 188 133 70 14 44 67 82 157 198 142 321 233 160 107 215 204 206 198 218 239

億円 2,259 2,345

690 762 580 1 427

1,022

781

1,621 2,896 2,575 11,095 6,209 3,131 3,145

6,520

6,327 9,531 5,295 10,302 15,881

億円

502 644 193 97 18 1 23 77 17 1 595

1,260

990

8,610 3,921 2,496 2,436

5,326

4,660 6,621 4,643 9,063 12,799

億円

355 469 154 69 8 0.5 12 35 87 497 046 815 267 272 083 163 628 096 603 122 213 217

9199197︐79︐ 1 732244548

11

203240229

33 47 29 62 1 107

79 60 151 137 168 157 181 211

億円

20324023

29 294 807 383

5,866 2,381 2,064 2,054 4,360 3,655 5,270 4,111 8,387 11,116

円1021301348 26

億02

718 336

5,139 2,064 1,764 1,853 3,833 3,322 4,829 3,717 7,702 10,238

50.0 34.9 12.7 17.1 13.0 0.1 22.0 40.4 24.1 30.6 43.8 47.6 85.5 84.9 51.1 34.9 79.2 89.2 92.3 80.2 88.8 88.6

11.2

9.6 3.6 2.2 0.4 0.1 1.2 3.0 3.6 11.2

191

18.3 66.3 53.6 40.7 27.0 64.7 65.7 64.1 70.3 78.1 71.4

0.1

0.1 0.04 0.1

0.1 0.1 0.9 5.5 12.2 7.1 45.2 32.5 33.7 22.8 53.0 51.5 51.0 62.2 72.3 62.0

70.8 72.8 80.1 71.5 42.8 72.3 53.2 45.2 74.1 83.5 83.0 82.3 84.4 83.5 83.5 88.8 86.9 87.9 84.6 88.8 90.6 87.6

56.8

53.0 73.9 6.7

69.3 78.7 82.9 91.3 88.9 87.9 87.6 86.7 85.5 90.2 87.9 90.9 91.6 90.4 91.8 92.1

億 円

3339

2.38

1.03

0.73

0.25

0.05

0.53

1.15

1.43

3.79

6.36

6.97

26.82

16.83

15.59

2.277

24.77

22.84

32.14

23.45

41.57

53.55

(13)

5 法 定 資 本 と 監 査

商法改正にともなう資本調達手段としての株式発行増資における払込価額 中の資本組入率の変更は,時価公募増資形態の定着化にともなう,増資プレ

ミアムの法定資本組入率の増大を指向した。

株式発行増資における払込価額は,法定資本と払込剰余金(資本準備金)

に区分されが,その絶対額は配分の如何を間はず同一額である。今回の改正 は,本来法定資本の増加として認識される資本取引が払込剰余金(資本準備 金)として蓄積され,法定資本と払込剰余金(資本準備金)間における組入

( 1 )

率及び額に逆転化現象が顕著となり,その是正としての修正である。今回の 改正は,質の規制としての「法定資本」の充実を指向し,又資本維持原則の 強化と債権者保護機能の実効性を高めることに重点をおく,「法定資本」の本 旨に則とったものである。

しかし株式会社の経営活動における法定資本は,その運用形態においては 具体化するにしても,法定資本それ自体は抽象的なる数額にしかすぎないの である。又具体的運用形態としての,例えば物それ自体の認識においても,

一定時点における実体価値の表示を意味しないという理論構造の下に計数化 されている現状に鑑み,法定資本としての抽象的数額を実体換価能力とは乖 離した価値額を以って保全維持することは不可能となってきたのである。

すなわち抽象的数額としての法定資本に対応する資本維持一債権者保護 一機能は実体財産価値物による保護の下において,その機能性力ざ確保され ていたのである。しかし会計思考の変遷は,法定資本の財産価値的保証を撤 去することとなったのである。すなわち継続企業の下における一定時点にお ける財産価値は,投下資金の未費用化額を表示するものであって,未費用化 額は財産価値を表示しているものではない。ここに財産価値性に法定資本の 資本維持,債権者保護機能を求めた論理の転換をよぎなくされたのである。

動態会計の下における法定資本の維持は,財産価値の増減変化による直接 的維持策ではなく,期間損益計算に基礎をおいた間接的維持策として展開さ れ,それらは主として,資本取引と損益取引の明確な区分原則の確立,法定 準備金制度の導入及び動態会計構造それ自身の特質に由因する引当金の設定,

配当可能利益の算定規制として12)期間損益計算による企業の収益性を基礎と

した資本維持策として展開されるのである。

法定資本への資本組入率の変更は,払込価額における法定資本と資本準備

(14)

− 4 9 −

金組入額の変更であると同時に,法定資本への組入れは,制度的には資本の 質的変換として把えられるのである。それらは又法定資本の量的増大をもた らすのである。その結果,法定資本による資本維持機能及び債権者保護機能 の強化として機能することとなるのである。

法定資本の資本維持機能を原則とする債権者保護機能に対して,企業の経 営活動の計数化による財務資料の適否について,第三者が評定し,財務資料 の信頼性と客観性を付与し,利害関係者保護を指向する社会的機能として監 査制度が存する。かかる利害関係者保護を指向する監査と法定資本の債権者 保護機能との関係についてみると,

株式払込価額における法定資本組入率の変更は,資本準備金(払込剰余金)

と法定資本の組入額の変更であり,法定資本又は資本準備金への組入は,制 度的には資本の質的転換として把えられる。その結果法定資本組入率の拡大 は,資本維持機能を介した債権者保護機能の強化として認識される。

かかる払込価額の資本組入率の変更と監査機能についてみると,資本組入 率の変更は法定資本組入率の拡大であり,資本維持機能と債権者保護機能の 質量的充実を指向するものである。かかる機能の指向性は監査機能と同一の 指向性を有するのである。しかし株式会社制度に係わる補正策は,株式会社 それ自体の本質との関連における制度の改変の域に止まるものであり,如何 に資本取引における法定資本組入率の強化による「法定資本」の充実を指向 しても,そこに展開される機能は,監査における利害関係者保護機能(監査 の社会的機能)と置換することは不可能である。

すなわち法定資本化率の改変による債権者保護策は監査という観点からは 被監査対象会社における内部統制組織の整備及び運用度の改変と同じ効果を 有するにしかすぎず,それらは飽迄「法定資本」機能の本源的機能としての 独自性を有する債権者保護機能である。かかる本源的保護機能に対して客観 性と信頼性を付与する評定機能として作用する機能が監査機能である。かか る債権者保護機能の多層化による利害関係者保護の強化策として監査が位置 付けられているのである。

( 注 )

(1)資本組入率是正の目的は,企業それ自体の観点より考察すると,資本取引に

よる資金の区分(法定資本と資本準備金)問題より,資金コストにその重要性が存

(15)

し,払込価額それ自体の区分に重要な意味を有しないのである。法定資本に債権者 保護機能を付与する場合においても,法定資本と資本準備金の比較において資本準 備金の蓄積度の大なる方が,法定資本の担保力を補強し,法定資本の資本維持機能 を充実させる効果を有すると考えることも可能である。法定資本の充実が則,債権 者保護機能の優位性を認識するものとばかりは考えることは妥当ではない。

(2)例えば資本取引と損益取引の区分,資本準備金制度一法定資本組入率の増 減は資本準備金額と連動する。今回の改正は法定資本率を高める改正である。

利益の内部留保一法定準備金として,法定資本率を高めることにより内部留保 額は大きくなり,その結果,債権者保護機能は強化されることとなる。

配当可能利益算定における諸規制一一例えば,商法二百八十条(利益の配当)四 繰延資産一開業準備費,試験研究費及び開発費における限度額の設定。

引当金,保守主義原則の適用等の諸規制。

6 結 語

資本調達手段として株式の時価発行増資の定着化は,配当その他における 低コストの資金調達手段として企業財務の観点より優位性が認められる。一 方増資後における株価の低落(喰い逃げ増資)又は資本組入率に係わる法定 資本化率の低下は,資本金と資本準備金間における逆転化現象を現実化させ,

ここに,商法における法定資本の本旨,目的に照し,法定資本充実の軽視と いう結果を招くこととなり,同時にそれらは,法定資本の債権者保護機能を 低下させることとなった。今回の改正は,株式発行価額(払込額)中におけ る法定資本化率を高めることにより,法定資本の資本維持機能を媒介とした 債権者保護機能の実効性を高める効果に目的がおかれた改正指向である。

(昭和58年1月10日)

表 1 増 資 概 況 ( 全 国 上 場 会 社 ) l︽いI o菓計雑準は①株主割当一申込期日,②公募および第̲ミ者削当一払込日,③無償交付一資本組入日。ただし,②,③について①と併用の場合は申込期日で集計。抱合せ墹資 のうち有償払込分ば株主荊当に,無償分は無償交付額に計上(①の集計催準は墹懇ベース)。 o公募累計には失権株.端株および海外公募は含まない。株主優先募入は一般公募として集計。 ○集計対象の範囲は,全国上場会社を原則とするが,30年4月から36年9月(第2部市場開設時)までは店頭売買銘柄を含
表 3 公 募 増 資 状 況 ( 全 国 上 場 会 社 ) l︽﹃I 公募会社の全調達額(B)は,株主割当または第三者割当と公募を併用した増資による調達額。 全株公募調達額(E)は新株発行に際し株当割当による有償増資を併用せず全株公募のみで行った増資による調達額で,公募額1,000万円(額面分)以下は除いている。 51年度の(A),(B),(C),(E)の各調達額には日立造船の優先株公募120億円を含む。年 度(A)総 調 達 額(B)公 募 会 社 の全 調 達 額(C)公 募 調達 額(D)うちプレ

参照

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