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大学生の親子関係と経済意識に関する日中比較

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大学生の親子関係と経済意識に関する日中比較

著者 尾島 恭子, 王 彩霞

雑誌名 金沢大学教育学部紀要.人文・社会科学編

56

ページ 67‑75

発行年 2007‑02‑28

URL http://hdl.handle.net/2297/4000

(2)

67

大学生の親子関係と経済意識に関する日中比較

尾島恭子。王彩霞

AStudyofParents-ChiHdRelationshipandEconoHnicConsciOusnessof JapaneseamdCImneseStudents

KyokoOJIMA,CaiXiaWang

Lはじめに

近年,日本は少子高齢化の進行によって人口 構造が大きく変化し続けている。とくに日本の 女性の合計特殊出産率は,1960年代後半にはほ ぼ2.1台で推移していたが,その後低下を続け,

2005年には1.26となって,子どもの数は減り 続けている。

また,中国でも通称「一人っ子政策」の実施 以降,子どもの数は少なくなり,2000年の第5 次全国人口調査によれば,0~14歳の人口が 22.89%,15~64歳が70.15%,65歳以上は 6.96%であり,第4次全国人口調査(1990年7 月1日)と比べると,O~14歳が人口全体に占 める割合は4.80ポイント減少した一方,65歳 以上が1.39ポイント増加している1.

そのような中で,子どもに関わる経済環境も 変化している。とくに,子どもの教育にかかる 支出は,日本でも中国でも増加しており,日本 では,家計の消費支出額全体に占める教育関係 費の支出割合は,2003年時には1L8%となり,

過去10年間年々高まっているh・

中国でも,子どもの養育費。教育費は年々増 える傾向にありiii,「2005年中国統計年鑑」によ れば,2005年の中国の教育費指数は,前年に対

して103.4という数値となっているⅣ。

このように,子どもの数が少なくなるものの,

子どもにかかる費用は減ってはいかない中で,

子どもの自立性や協調性等を含めて社会性の欠 如も指摘されるようになってきた。日本では,

親の過保護・過干渉による弊害についても多く 議論されているvoまた,中国では数少ない子

どもが過保護・溺愛の中で育てられることで,

「小皇帝」と呼ばれる自己中心的な若者が増え てきていることも社会問題となっており,とく に今後の消費社会にも大きな影響を及ぼすこと が指摘されているⅥ。

そこで,本研究では,子どもが現代の消費社 会に見合った経済意識を身につけていくために は,親と子の関係を見直す必要があるのではな いか,との視点から検討を進めることにした。

本稿では日本と中国で実施した調査をもとに,

子ども自身の経済意識と親子関係とのかかわり を考察する。

それらにより,日本及び中国における親子関 係のあり方,さらには,金銭管理意識等も含め た経済意識の育成を検討する手だてとしたい。

Ⅱ調査の概要

本研究では,上述のように,親子関係と経済 意識の育成に関して日中両国の傾向を探ること を目的としているが,そのために下記の要領で 調査を行った。

1)対象者

対象者としては,日中両国の大学生を挙げた。

大学生という時期は,社会人期の前段階であり,

高校生までの段階と比較すると,経済的にも精 神的にも自立が図られる時期だからである。ま 平成18年10月2日受理

(3)

金沢大学教育学部紀要(人文科学・社会科学編) 第56号平成19年

68

た,、それまでの親子関係を客観的に判|新するこ ともできると思われたからである。そこで,日 中両国で大学生を対象に調査を行った。

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2)調査期間・方法及び内容

調査期間は2006年5月末~2006年6月上旬 であり,調査方法は,配票調査である。回収数 については,日本においては,金沢大学で160 票配布,158票を回収(有効回収率98.7%),中 国においては,蘭州大学,西北師範大学,蘭州 商学院で合計160票配布,143票回収(有効回 収率89.38%)であった。

調査内容は,親子のコミュニケーションのと り方や,親子関係への満足度等の‘親子関係に 関する項目,と,お金の使い方や使用の計画性 など‘経済意識に関する項目’である。なお,

本稿では,集計結果のなかでもとくに取り上げ るべき項目について報告する。

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2.考察内容および結果

1)お金の使い方についての親の厳しさと予算 の計画意識

「お金の使い方について親は厳しいと思う か」という質問に対し,「大変厳しい」「まあ厳

しい」と答える学生は,日本ではそれぞれ1.9%,

28.7%であり,中国では6.3%,37.1%である。

中国の学生の方が,「親はお金の使い方について 厳しい」と感じている割合は多い(図1)。

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Ⅲ、調査結果及び考察 1.対象者の属性

対象者の属性は表1に示す。

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という質問に対して,「大変そう思う」と答える 学生は,日本では,32.5%,中国では46.2%で あり,中国の学生の方が,-ヶ月の予算を決め ておきたいと強く思う学生は多い(図2)。

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(4)

尾島・王:大学生の親子関係と経済意識に関する日中比較 69 0102030405060101090100 IlIllIOl0iI6I10IOⅡ|Ⅱ

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いて厳しいほど予算の計画意識は高く,一方,

中国では,親がお金について厳しくないほど予 算の計画意識は高いという事実が明らかになっ てくる。この相反する結果からは,後述するよ

うに,いくつかの課題が考えられる。

そして,上述の2項目についての関連を検討 したところ,図3にあるように,日本側では,

「お金の使い方について親は厳しいと思う」学 生ほど,「-ヶ月の予算を決めておきたい」と答 える学生が多くなっている。しかし,中国側で は,日本とは逆の傾向が見られ,「お金の使い方 について親は全く厳しくない」とする学生の 73.7%は「-ケ月の予算を決めておきたい」と 答える一方,「厳しい」と答える学生のうち,

「-ヶ月の予算を決めておきたい」とする者は,

38.7%である(図4)。

2)レジャー・娯楽費の親への依存度と親子関係 への満足度

「レジャー。娯楽費を親に頼っているか」と いう質問に対し,「大変頼っている」と答える学 生は,日本では12.2%であるが,中国では 51.0%であった(図5).

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(5)

金沢大学教育学部紀要(人文科学・社会科学編) 第56号平成19年

70

生は14%と少ないという背景がある。

また,「親子関係に満足しているか」という 質問に対しては,「非常に満足している」と答え る学生は,日本では32.1%,中国では41.3%で あった(図6)。

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である。日本側では,レジャー。娯楽費を親に あまり頼っていないとする学生の1.6%,全く 頼っていないとする学生の178%は親子関係 に満足していないと答えているが,レジャー・

娯楽費をかなり頼っている,あるいはまあ頓っ ているとする学生には,親子関係に満足してい ないと答える者はいない(図7)。また,中国側 でも,レジャー・娯楽費を親に「大変頼ってい る」とする学生の親子関係の満足度は47.9%と 最も高くなっていることも興味深い(図8)。

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3)親子関係の満足度と質素な生活の志向性 質素な生活が好きかどうかについて,「質素 な生活が好きではない」という項目には,図9 のような回答がみられた。

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(6)

尾島・王:大学生の親子関係と経済意識に関する日中比較 7I

それを上記図6に見た親子関係の満足度と関 わらせたものが図10,図11であるが,日本側 では,「質素な生活が好きではない」に対し「大 変そう思う」と答える割合が,親子関係に満足 していると答える学生よりも,満足していない と答える学生の方に多くなっている。

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4)親子のコミュニケーションとお金の計画的 な使用意識

「親と話すことは好きか」という質問に対し て,日本では「大変好きである」(25.3%)と「ま あ好きである」(63.3)と答えた学生を合わせる と88.6%となった。中国では,それぞれ14.0%,

62.9%であり,合計76.9%となって日本よりや や少ない(図12)。また,「お金を計画的に使い たいか」という質問に対しては,日本では「大 変そう思う」(50.6%),「まあそう思う」(45.5%)

をあわせると96.1%である。中国では日本より はやや少ないものの,それぞれ57.3%,280%

であり,あわせると853%となる(図13)。こ こで,日本と中国とを比較すると,親と話すこ とが好きではない(あまり好きではない,全く 好きではない),とする中国の学生は,23.1%に なり,日本より多い割合となっていることを挙 げておきたい。

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また,中国側でも,同様に,「質素な生活が 好きではない」に対し「大変そう思う」と答え る割合が,親子関係に満足していると答える学 生よりも,満足していないと答える学生の方に 多くなっている。

この結果から,親子関係の満足度と,質素な 生活を好むか否かについては,何らかの関連が あるのではないかと考えることができる。

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(7)

金沢大学教育学部紀要(人文科学・社会科学編) 第56号平成19年

72

5)親の経済状況への認知度とお金の計画的な 使用意識

「親の経済状況を知っているか」という問い に対しては,日本では「よく知っている」

(12.7%),「まあ知っている」(59.2%)と答え る学生の割合は,合計71.9%であるが,中国側 では「よく知っている」(60.8%)「まあ知って いる」(36.4%)と答える学生の割合を合計する と,97.2%となる(図16)。

IIIlI1IIIIIII1IIIMlI1 次にそれら2項目の関連を検討すると,日本

側では,親と話すことが好きと答える学生ほど,

お金を計画的に使いたいとする意識が高く,親 と話をすることが好きではない,と答える学生 の11.8%は,お金を計画的に使いたいとはあま り思わない,と答えている(図14)。中国側で は,日本側ほど顕著な違いは見られないが,親 と話すことが好きな学生ほど,「お金を計画的に 使いたいか」に対して「大変そう思う」と答え る割合が多くなっている(図15)。これらの結 果をみれば,親とのコミュニケーションがお金 の使用意識に与える影響はあると考えることが できるのではないだろうか。

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また,お金の使用意識については,上記図13

に示したとおりであるが,その2項目の関わり を検討したところ,日本側では,親の経済状況 をあまり知らないとする学生のうち,9.3%はお 金を計画的に使いたいとは思っていないが,親 の経済状況をよく知っていると答える学生で,

お金を計画的に使いたいとは思っていない者は いない(図17)。さらに,中国では親の経済状 況への認知度と学生のお金の計画的な使用意識 のかかわりは非常に強く,親の経済状況を「よ く知っている」学生のうち67.8%の者はお金を 計画的に使いたいと思っている(図18)。

親の経済状況をよく知っているということ は,日頃から家計の問題,あるいは経済的な話 題について関心をもっているということであろ うか。家庭教育における金銭教育のあり方1こつ

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(8)

尾島・王:大学生の親子関係と経済意識に関する日中比較 73 0102030405060708090100

いて検討の余地がありそうである。

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ii鵬OIIlMi(''1M これら2項目から,親のしつけ方と学生の経

済的な自立意識についての関連を見れば,日本 側では,顕著な差はみられないものの,「親の価 値観を押し付けられる」に対し,「そう感じる」

とする学生のうち,16.3%の者は,社会人になっ ても必要であればお金を親に頼りたいとしてい る(図21)。しかし,中国側では,「親の価値観 を押し付けられる」に対し,「そう感じる」と答 える学生のうち,30.5%が社会人になっても,

必要であればお金を親に頼りたいとしているが,

「全くそう感じない」とする学生のうち,頼り たいとする者は,9.1%,逆に「全く頼りたくな い」とする学生は66.7%であった(図22)。

6)親の価値観の押し付けと学生の自立意識

「親に自分の価値観を押し付けられると思 うか」という質問に対して,「そう思う(大変そ う,思う+まあそう思う)」と答える学生は,日本 では27.9%,中国では40.3%である。また,「社 会人になっても,必要があればお金を親に頼り たいか」という質問に対して,日本では「そう 感じる」と答える学生は9.6%,中国では18.2%

であった(図19,図20)。

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(9)

第56号平成19年 金沢大学教育学部紀要(人文科学・社会科学編)

74

の予算の計画意識は高く,中国では,親がお金 について厳しくないほど子の予算の計画意識は 高いという,相反する事実が明らかになった。

この結果からは,日本では親がお金のことを子 どもに厳しく言うことで,子どももお金に対し て関心をもち,また金銭管理の重要性を身につ けていくことができるのではないかと推察され る一方で,中国では親が厳しすぎるほど,反発 して‘好きなように生活したい,という意識が 芽生えてくることも考えられる。

これらには,日中の子育て観の相違が大きく 影響しているものと思われるが,今回の結果か

ら,「親の厳しさ」について今後の詳細な検討が 必要であるとの課題が挙げられよう。

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2.本調査で明らかとなった「レジャー。娯楽 費を親に依存している学生は,親子関係に満足 している」という結果は,逆にみれば,親子関 係の満足度は経済的な援助に大きくかかわって いる,という見方もできる。この結果から,親 子関係の満足度とはいかなるものであるか,そ の内容についての詳細な検討が課題として挙げ られる。

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3.親子関係に満足している学生は,質素な生 活は好きではないとは強く思っていないといえ る。これは,上記2の結果とあわせて,今後は 親子関係と生活の質素さ,倹約さ’また,経済 観念などを含めた「生活観」について関わらせ てみていくことも重要であろう。

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この結果から,親の価値観を押し付けられて いると感じる学生は,いつまでも親に頼ってい たいと考えていること,すなわち,経済的な自 立意識は確立されていないことが明らかとなっ

た。 4.親と話すことが好きと答える学生ほど,計

画的にお金を使用したいという意識が高く,親 子のコミュニケーションは,学生のお金の計画 的な使用意識に重要な影響を与えるといえる。

今後は,単に話すのが好き・嫌いということで はなく,コミュニケーションをどのようにとっ ていくことが望まれるのか,その方法について も検討していくことが必要であろう。

Ⅳ.まとめと課題

今回の調査から,親子関係と経済意識とのか かわりについて,いくつかの関連性およびそれ を踏まえた課題を指摘できる。要約すると下記 のようである。

L日本では,親がお金について厳しいほど子

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(10)

尾島・王:大学生の親子関係と経済意識に関する日中比較 75

5.親の経済状況を知っているものは,お金を 計画的に使用したいという意識をもっている,

ということがいえた。親の経済状況をよく知っ ているということは,日頃から家計の問題,あ るいは経済的な話題について関心をもっている ということであろうか。経済状況を伝える際の 具体的な方策について確認すべき必要があろう。

子どもの金銭管理意識等適正な経済意識の育成 に影響を与えているということである。

ただ,今回の調査結果から,「厳しい親」に 関して日中間ではとらえ方の相違があるのか否 か,また,親子関係の満足度と経済的な依存度 とはどれほどのかかわりがあるのか,等の課題 も挙げられた。

今回提示したいくつかの課題を更に検討し ていくことで,日本と中国それぞれの親子関係 と子どもの経済意識の育成との関わりについて,

具体的な方向性を示唆していきたい。

6.親の価値観を押し付けられていると感じる 学生は,いつまでも親に頼っていたいと考えて いること,すなわち,経済的な自立意識は確立 されていないことが明らかとなった。

子どもの数が少ないということは,それぞれ の子どもに親の養育観・教育観が反映されやす い状況になるということも考えられる。経済的 自立との関わりも踏まえた養育観。教育観の検 討が求められる。

i「中華人民共和国国家統計局編「中国統計年鑑 2005」p95,2005.

m内閣府「国民生活白書平成17年版」p」47,2005 ,森美奈子「変化する中国における家計の消費支 出構造」「ASlAMONTHLY」日本総合研究所 2004年11月(No.44)p3.

jv中華人民共和国国家統計局編「中国統計年鑑 2005」p312,2005.

V例えば原田隆史「子どもの自立を促す親の過保 護や過剰な干渉が自立を妨げる」週刊ダイヤモン

ド94(34〕,p,42,2006など

vi例えば「「フォーチェン」誌特約世界の金持ち も舌を巻く「小皇帝」の消費パワー-億人I中 国の一人っ子は「金満肥満傲慢」プレジデ ント42(22)p144-147,2004.など

以上,親と話すことが好きであったり,親の 経済状況を知っていたりする学生は,学生本人 のお金の計画的使用意識は高くなっていること が挙げられる一方,親が自分に価値観を押し付 けていると感じる学生は,経済的な自立意識は 確立されていないことも挙げられた。親子のか かわりがあるか否かではなく,親が子どもとど のように関わっているかによって,すなわち,

一方通行ではない親とのコミュニケーションが、

参照

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