奈良教育大学学術リポジトリNEAR
攻撃性と共感による攻撃行動と向社会的行動の予測 −児童用の新攻撃性尺度を用いて−
著者 桜井 茂男
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 40
号 1
ページ 223‑233
発行年 1991‑11‑25
その他のタイトル Prediction of Aggressive and Prosocial
Behaviors by Aggressiveness and Empathy Using a New Aggressiveness Scale
URL http://hdl.handle.net/10105/1802
奈良教育大学紀要 第40巻第1号(人文・社会)平成3年
Bull. Nara Univ. Educ. Vol. 40. No. 1 (Cult. & Soc. ,1991
攻撃性と共感による攻撃行動と向社会的行動の予測
‑児童用の新攻撃性尺度を用いて‑
りv! II /し 男 (奈良教育大学心理学教室)
(平成3年4月5[]受理)
Wicker (1969 は、態度とその態度に対応する行動の一貫性についての研究で、両者間の相 関が高くても.30程度であり、態度による行動の予測がむずかしいことを指摘した。また、パー
ソナリティ研究において、 Mischel (1968 も、性格特性の測定によってその特性に対応する行 動の予測ができるかいなかについて、疑問を投げかけた。彼は、どのような社会的行動において
も、状況を越えての性格特性と行動の一貫性は、相関係数で.30をほとんど越えないことを明ら かにした。このように内的状態としての態度や特性とそれに対応する行動との関係は、高くても 相関係数で.30程度であり、低い相関しか得られていないといえよう。この方面の実証的研究(た
とえば、 Bern & Allen, 1974; Koestner, Bernieri, & Zuckerman, in press; Zuckerman, Bernieri, Koestner,& Rosenthal, 1989)は、成人を対象としたものばかりであり、こどもを対象とした研 究は見当たらない。そこで、本研究では児童を対象にして、内的状態とそれに対応する行動との 関係を検討する。取り上げる内的状態(行動)としては、攻撃性(攻撃行動)と共感(向社会的 行動)の2つで、これらは教育現場で比較的よく取り上げられるものであり、非行、いじめ、思 いやり、仲間づくり、等の教育問題と密接に関連している。
攻撃性と攻撃行動の関係についての研究では、攻撃性の測定が必ずしも「内的な攻撃性」に限 定されていないようである(たとえば、 scheier,Buss,&Buss,1978)。すなわち、性格検査を用
いて攻撃性を測定するような場合には、外顕的(overt)な行動まで含まれてしまう。そのために、
厳密な意味における内的な状態としての「攻撃性」を測定していない可能性が高い。そこで、本 研究では、 Buss and Durkee (1957)を参考にして、内的状態としての攻撃性だけを測定する尺 度を作成して、この問題に対処する。
共感と向社会的行動の関係については、近年、共感が向社会的行動を動機づけるとして (Hoffman, 1982)、両者の関係をみた研究が増えている。 Eisenberg and Miller (1987)によるメ タ分析によると、共感を描画や物語を用いた方法(多くは幼いこどもを対象とした感情マッチン グ)で測定しない場合には、一応両者の関係は正の関係として結論出来るとしている。しかし、
Eisenbergand Miller (1987)により、質問紙で共感を測定し向社会的行動との関係をみた研究 を総覧すると、 .30以上の相関係数が得られているのは、 1つの研究(Stayer & Roberts, 1984:
Eisenberg & Millerより引用)を除き実験室実験であるか、向社会的行動の測定に自己報告型の 質問紙を用いた研究である。したがって、日常的な広い範囲の向社会的行動を対象にした場合や 向社会的行動を他者が評定した場合には、 Mischel (1968)が指摘した通り.30以上の相関が得ら れる可能性はかなり低いようである。わが国では、桜井(1986 が小学5、 6年生を対象に Bryant (1982)の共感尺度の日本語版を作成し、仲間評定(peer nomination)による向社会的行 動との相関を検討している。性や学年による影響を取り除くと、両者の相関係数は.20程度であっ
223
224
K '」・ 4]た。有意ではあるが、かなり低い相関である。本研究では、桜井(1986)と同じ共感尺度を用い てこの間題を再検討するが、向社会的行動の指標には、仲間評定の他に、教師による評定を追加 する。
さらに、特性とそれに対応する行動との間の正の関係だけでなく、攻撃性と向社会的行動およ び共感と攻撃行動の間の負の関係についても分析し、予測の可能性を検討する。
以上、本研究の目的をまとめると、以下の通りである。
(1) BussandDurkee (1957)を参考にして、児童の「内的な状態としての攻撃性」を測る尺 度を新たに作成し、信頼性と妥当性を検討する。
(2)攻撃性および共感と攻撃行動および向社会的行動との関係を検討し、どの程度の予測が可 能かを明らかにする。なお、行動の測定には、仲間評定と教師評定の2指標を用いる。
方 法
被調査者(1)和歌山県下の公立I小学校の児童で、 5年生4クラス162名(男子76名、女子86名) と6年生4クラス160名(男子74名、女子86名)の合計322名と(2)新攻撃性尺度の妥当性の検討た めに、奈良県下の公立S小学校の児童で、 5年生3クラス97名(男子52名、女子45名)と6年 生3クラス104名(男子60名、女子44名)の合計201名、であった。
攻撃性尺度 Buss and Durkee (1957)の敵意に関する尺度を参考に作成された。彼らの質問 紙は、敵意についての下位尺度として、 「暴力」、 「間接的攻撃」、 「いらだち」、 「反抗」、 「恨み」、
「疑惑」、 「言語的攻撃」の7つを想定し、 66項目から作成されている。因子分析によると、 2因 子が抽出され、それらは攻撃因子(主に「暴力」、 「間接的攻撃」、 「いらだち」、 「言語的攻撃」、 「反 抗」の5下位尺度を含む)および敵意因子(主に「恨み」と「疑惑」の2下位尺度を含む)と命 名された。前者は、攻撃反応の強さを反映する運動成分に関する因子であり、 「手が早い」とか「短 気である」などの暴力的特徴を示す攻撃反応傾向をさしている。後者は、人や物に対する負の感 情や評価を表す情緒的態度成分に関する因子であり、 「疑い深い」とか「すぐ劫ねる」など、他 者の言動を邪推して敵意を抱きやすい性質をさしている(Buss, 1961)c
本研究では、このBussandDurkeeの尺度、特に第一因子のうちの「いらだち」に関する項目 と第二因子の敵意に関する項目を参考に、攻撃の意図や動機、あるいは攻撃行動に向かいやすい 性格特性に関する項目が集められ、攻撃性尺度(Aggressiveness Scale for Children: ASC)原案 16項目が作成された(付録参照)。その際とくに注意したことは、 (1)あくまでも内的状態として の攻撃性を表現していること、 (2)比較的日常的な場面設定であること、 (3)児童用の尺度というこ とで、わかりやすい表現であること、の3点であった。回答形式は5段階評定(「はい」、 「どち らかといえばはい」、 「どちらともいえない」、 「どちらかといえばいいえ」、 「いいえ」)で、各項 目において攻撃性の高い反応から5、 4、 3、 2、 1点と得点化された。
共感尺度 桜井(1986)の児童用共感測定尺度(Empathy Scale for Children二ESC) 22項目の 中から社会的望ましさの影響を受けにくい9項目が用いられた。 ESCは、 MehrabianandEp‑
stein (1972)の情動的共感(emotional empathy)尺度の児童版であるBryant (1982)の尺度と、
加藤と高木(1980)の尺度(Mehrabian and Epstein (1972)の修正日本語版)を参考にして作
成されたものである。情動的共感とは、 Mehrabian and Epstein (1972)によれば、 「他者によっ
て知覚された情動経験に対する自己の想像的な情動反応」と定義されている。回答形式は、 5段
攻撃性と共感による攻撃行動と向社会的行動の予測 225
階評定(「はい」、 「どちらかといえばはい」、 「どちらともいえない」、 「どちらかといえばいいえ」、
「いいえ」)で、各項目において共感の高い反応から5、 4、 3、 2、 1点と得点化された。
攻撃行動の測定 クラス単位の仲間評定と担任教師による教師評定の2つが行われた。
(1)仲間評定 質問紙により日常場面における具体的な攻撃行動を4つ挙げ、クラスごとにそれ に該当する男女それぞれ2名を答えさせたoいわゆる仲間によるノミネート(peernomination) である。 4つの項目とは、 「よくいぼる人はだれですか」、 「こわい人はだれですか」、 「乱暴なこ とをする人はだれですか」、 「よくともだちをいじめる人はだれですか」である。男女それぞれ2 名挙げよ、という教示は、該当する人がいない場合は挙げなくてもよいとした。得点法は、名前 が挙げられた人に対して、 1点が与えられた。
(2)教師評定 担任教師によりクラスの児童全員について、身体的攻撃行動、言語的攻撃行動の 2項目に、 5段階評定(「そういった行動が多い」、 「やや多い」、 「どちらともいえない」、 「あま りみられない」、 「ほとんどみられない」)で評定してもらった。得点化は、攻撃行動の多い方から、
5、 4、 3、 2、 1点とされた。
向社会的行動の測定 攻撃行動の測定と同じように、仲間評定と教師評定の2つを用いた。
(1)仲間評定 仲間によるノミネート法で、次の4項目の質問に対して、男女2名の人を選んで、
名前を記入するように求めた。これは、桜井(1986 の向社会的行動質問紙(ProsocialBe‑
haviorlnventory:PBI)を修正したものである。 4項目とは、 「元気のない人をみると、よく心配 してくれる人はだれですか」、 「自分かってなことをしないで、みんなと協力できる人はだれです か」、 「こまっている人をみると、よく助けてあげる人はだれですか」、 「小さいこどもや弱い子の 牡話をよくする人はだれですか」であった。得点法は、名前が挙げられた人に対して、 1点が与 えられた。
(2)教師評定 担任教師によりクラスの児童全員について、援助行動と協力(行動)の程度を5 段階(「そういった行動が多い」、 「やや多い」、 「どちらともいえない」、 「あまりみられない」、 「ほ
とんどみられない」)で評定してもらった。得点法は、当該行動の多い方から、 5、 4、 3、 2、
1点とされた。
MG攻撃性尺度 新攻撃性尺度の妥当性の検討のために用いられた。10項目で構成されており、
内的な状態としての攻撃性と攻撃行動の両方を含む。本研究では、内的状態としての攻撃性に関 する項目のみ4項目を用いた。 5段階評定であり、他の尺度と同じように得点化された。
手続き(1)の322名の児童には、 1985年9月下旬に上記の質問紙がクラス単位で実施された。
実施者は、担任教師であり、実施方法はあらかじめ詳しく説明されていた。特に、こどもの本音 を聞き出すために、本調査は大学での研究であること、結果は担任教師には知らせないことが明 碓にされた。また、再検査法によって信頼性を確かめるために、 2か月後に5年生1クラス40名 (男子18名、女子22名)に攻撃性の質問紙が再実施された。攻撃行動と向社会的行動についての 教師評定も担任教師により同時期に行われた。さらに、 (2)の201名の児童には攻撃性尺度の妥当 性の検討のために、 1990年5月下旬、新攻撃性尺度とMG攻撃性尺度(4項目)が実施された。
実施者は心理学専攻の大学生2名であり、先の教示と同じような内容が児童に教示され、集団実
施された。
226 桜 井 茂 男
結果と考察 (1)攻撃性尺度について
a.基礎統計 各項目の平均、標準偏差、項目一全体相関係数が求められた。その結果は表1 に示されている。これによれば、項目平均は1.9から3.8、標準偏差は1.2から1.5であった。項目
表1 ASCの項目平均、項目SD、項E]‑全体相関および因子分析結果
因 子 項目No.
l n ra
h2 項目‑全体相関 M SD
N C O
・
* I O ( C
竺 竺 c
^
︒
<
r
>
i n l t d l o
.56
I D i n O i N T
‑ i C M C M C M C M C O C O
.‑︒
ヱ L
︒ M C I N
︒
‑
‑ C M
‑
‑
t ﹂ > C ‑ L O O O i
N m c O
^ N
^ l r t r f
OO tO‑^ O CTl cO CO O
蝣
^
n
r
t
n
i
f
i
CO t* <﹂> <LD 00 CTi nJ 0
M N C O C O M
N N C O I D O i n O C V ] N N N N M N O J W
in ^r ^ Tt ro co N in 1 1 1 1 1 1 1 1 i n m u 5
^
^ i n N T t 1 1 1 1 1 1 1
寄与率 12.7 12.1 6.S 31.6 1
注1 )項目No.は付録の尺度項目番号と対応する。
注2 )因子負荷量は.40以上を示した。
注3 No.11は因子分析から除かれた。
注4 )項目一全体相関係数はNo.11を除き0.1%水準で有意である。
一全体相関係数ではNo.11が.14と著しく低いので、この項目を除くことにした。その他の15項 目の項目‑全体相関係数は.26から.56で、 0.1%水準で有意であったので、この15項目をもって 最終的な「児童用攻撃性尺度(ASC)」とした。攻撃性尺度の平均は40.0、標準偏差は11.1、得 点範囲は15から72であった(詳しい統計は表2参照)。
b.因子分析15項目について因子分析が行われた。主因子法により固有値1以上の3因子が
抽出され、その後バリマックス回転を施した。結果は表1に示されている。第一因子は、 No.12
攻撃性と共感による攻撃行動と向社会的行動の予測 o<>
「なんとなくむしゃくしゃして、どうなってもよいとおもうことがあります」、 No.14「やろうと していることを、先に言われるとムッとしてやりたくなくなることがあります」、 No.16「先生 に注意されると、ムカッとします」などが比較的高い因子負荷量を示していることから、 Fいら だち』因子と命名した。第二因子は、 No.2 「そばにいるだけでも、いやな人がたくさんいます」、
No.7 「できるならば、しかえしをしてやりたい人がいます」、 No.10 「人を苦しめてやりたいと 思うことがあります」などが高い負荷量を示すことから、 『敵意』因子と命名した。この二つの 因子は、 Bussand Durkee (1957)の日本語版を作成した秦(1990)の結果でも抽出されている。
本研究ではこの2因子がきれいに分かれ、しかも両因子とも12%程度の説明率を示していること から、比較的独立性の高い重要な因子といえよう。第三因子は、 No.1「人にからかわれると、かっ として頭に血がのぼりやすいです」、 No.3 「人に自分の欠点をいわれると、すぐに腹立たしくな ります」などが高い負荷量を示していることから、 『報復』因子と命名した。この因子は比較的 高い因子負荷量をもつ項目が少なく、寄与率も小さいので今後さらに検討して行きたいと考えて いる。なお、本尺度のどの項目もいずれかの因子に.30以上の因子負荷量を示している。以後の 分析では15項目全体の総合得点を用いることにする。
C.信頼性 内部一貫性の指標であるクローンバックのO,係数は.80であり、一貫性が確認さ れた。また、再検査法による信頼性係数は、 5年生1クラス40名を対象に、 2か月後に検討した ところ.72であり、安定性はかなり高いことが示された。信頼性は問題がないと判断される。
d.性差と学年差 性別、学年別の平均と標準偏差が、表2に示されている。性×学年の分散 分析を行ったところ、学年の主効果(F(l,318)‑7.06,/><.01)と交互作用(F(l,318)‑8.91,p
表2 諸変数の平均値とsD
6年生 全 体 評走者/変数
男子 女子 全体
<自己評定>
攻撃性 43.1 40.0 41.4
(ll.3) (ll.9) (ll.7)
共 感 17.9 22.9 20.6
(5.8 (5.9) (6.3)
<教師評定>
攻撃行動 3.5 3.0 3.2
(2.1) (1.3) ( 1.7)
向社会的行動 5.8 6.8 6.4
( 1.8) ( 1.2) ( 1.6)
<仲間評定>
攻撃行動 3.4 2.4 2.7
(10.6) (4.2) (7.9)
向社会的行動 4.2 5.3 4.J
(5.9) (6.6) (6.3)
男子 女子 全体 男子 女子 全体
36.2 40.4 38.5 39.7 40.2 40.0 (10.9) (9.3) (10.2) (ll.6) (10.6) (ll.1)
16.1 22.8 19.7 17.0 22.9 20.1 (4.8) (5.0) (5.9) (5.3) (5.4) (6.1)
5.4 3.9 4.6 4.4 3.5 3.9 (2.4) ( 1.8) (2.2) (2.4) (1.6) (2.1)
5.4 6.4 5.9 5.6 6.6 6.1 (1.8) ( 1.6) ( 1.8) (1.8) (1.4) ( 1.7)
4.23.43.83.82Q
・03.2
(6.8)(6.8)(6.8)(8.9)(5.7)(7.4) 4.36.15.34.25.75.0
(5.7)(6.8)(6.4)(5.8)(6.7)(6.3)
注) ( )内はSDを示す
228 桜 井 茂 男
<.Ol)が認められた。交互作用が認められたので、学年、性要因別に単純効果の検定を行った。
その結果、 6年生では女子の方が男子よりも有意に高く(F(l,318)‑5.89,/><.05)、男子では 5年生の方が6年生よりも有意に高かった(F(l,318)‑15.89,/.<.01)。前者の結果は秦(1990) の「いらだち」因子の結果と類似している。彼によれば、一般に女性は男性に比べて直接的な攻 撃行動を抑制するために、表面に現れない「いらだち」や怒りなどの情緒的な興奮が強くなるも のと解釈されている。本尺度は「いらだち」だけを測定した尺度ではないが、この部分の傾向が 強くでたものと考えられる。後者の結果は、より詳細な検討を行わないと何ともいえない。秦 (1990 の研究でもこのような傾向は見られていない。今後の課題である。
e.妥当性 MG攻撃性尺度のうちの内的状態としての攻撃性のみを問う4項目の合計得点と の相関係数は.76 (♪<.Ol)であり、併存的妥当性が認められた。
(2)使用された尺度の平均、標準偏差と信頼性係数について
表2には、本研究で使用された尺度の学年、性別の平均、標準偏差が示されている。攻撃性を 除く5つの尺度について以下に詳しく述べる。
a.共感 共感尺度は9項目を用いたが、項E]一全体相関係数を算出してみると、 N0.5と N0.6のそれが.17、 .20とかなり低かったので除き、 7項Hを以後の分析に使用した。表2の数 値もこの7項目に基づいている。 α係数は.68で、桜井(1985)の報告仁85)より低いが、一応 の内的一貫性は確認できたといえよう。性×学年の分散分析の結果、性の主効果 F 1,318)‑
92.70,♪<.001)が認められた。表2で明らかなように、女子の方が男子よりも高かった。性差 はこれまでの多くの研究で認められており、桜井(1985)でも同様であった。
b.教師評定による攻撃行動 2項目間の相関係数が.60 (♪<.001)であったため、両項目 の合計得点を尺度得点とした。表2の数値もこれである。性×学年の分散分析の結果、性の主効 莱(F(l,318)‑21.49,/><.001)、学年の主効果(F(l,318)‑42.13,/><.001)および交互作用(F (1,318)‑5.37,♪<.05)がすべて有意であった。交互作用が有意であったので、性と学年要因 に分けて単純効果の検定をした。その結果、 6年生では男子の方が女子よりも有意に高かった(F
l,318)‑24.02,/><.01)。男子では、 6年生の方が5年生よりも高く(F(l,318)‑38.61,p<
,01)、女子でも6年生の方が5年生よりも高かった(F(l,318)‑8.58,/><.01)c
c.教師評定による向社会的行動 2項目間の相関係数が.69 ♪<.001)であったため、両 項目の合計得点を尺度得点とした。表2の数値もこれである。性×学年の分散分析の結果、性の 主効果(F(l,318)‑30.70,/><.001)と学年の主効果(F(l,318)‑4.91,♪<.05)が有意であっ た。表2より明らかなように、女子の方が男子よりも高く、 5年生の方が6年生よりも高かった。
性差はよく見られるが、学年差は今後の検討課題であろう。
d.仲間評定による攻撃行動 4項目でのα係数が.88とかなり高かったので、 4項目の合計 得点を尺度得点とした。表2の数値もこれである。性×学年の分散分析の結果、何も有意になら なかった。教師評定による攻撃行動では性差や学年差が見られており、これと対照的である。評 定者間のこのような違いが何によるものかは本研究からはよくわからない。ただし、評定方法が、
教師では5段階評定であるのに対して、仲間ではノミネート法であり、この違いが影響している 可能性があろう。
e.仲間評定による向社会的行動 4項目でのα係数が.73(♪<.001)とかなり高かったので、
4項目の合計得点を尺度得点とした。表2の数値もこれである。性×学年の分散分析の結果、性
の主効果のみが有意となった(F(l,318)‑4.19,/><.05)。表2から明らかなように、女子の方
攻撃性と共感による攻撃行動と向社会的行動の予測 229
が男子よりも高かった。教師評定による向社会的行動でもこのような性差は認められており、一 般的な傾向と考えられる。
以上、本研究で用いられた各尺度について検討を加えたが、信頼性はいずれの尺度も高いこと が認められた。また、性差や学年差は一定しておらず、以後の分析ではこの点を考慮する必要が ある。
(3)尺度間の関係について
尺度間の相関係数が表3に示されている。表の右上が単相関係数で、左下が偏相関係数である。
表3 諸変数間の単欄関係数と偏相関係数(N‑322) 評定者/変数 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥
<自己評定>
①攻撃性 ‑ ‑.13" .09 ‑.09 .13* ‑.11‑
②共 感 ‑.18" ‑ ‑.17日 .28" .00 .20…
<教師評定>
③攻撃行動 .15" ‑.04 ‑ ‑.49… .41日 ‑.09
④向社会的行動 ‑.12* .17" ‑.43日 ‑ ‑.15日 .43*"
<仲間評定>
⑤攻撃行動 .14* .05 .41… ‑.12* ‑ .02
⑥向社会的行動 ‑.ll‑ .17" ‑.09 .43… .03 ‑
柱)右上の数値は単相関係数で、左下の数値は偏相関係数である。
偏相関係数は、性要因と学年要因がコントロールされている。
"・/.<.001、 "/><.01、 7><.05