【はじめに】
福岡・東アジア・地域共生研究所では、「文化資 源」「防災教育」「男女共同参画」「医療情報ネットワー ク」の4つのテーマを柱とした調査研究および実践 活動に取り組んでいる。今回は、「文化資源」に関 するプロジェクトである旧産炭地の大牟田・荒尾に おける取り組みについて取り上げたい。
本研究所の「文化資源」チームでは、「北部九州 の宗教民俗学調査事業」や「地域の博物館のあり方 検討事業」、城南区の「別府校区記憶プロジェクト」、
熊本県荒尾市の「宮崎滔天関連事業」など、行政や 博物館、地域住民等と連携して地域の文化資源の調 査・活用に関する研究プロジェクトを企画・実施し ている。
今回紹介する旧三池炭鉱に関する取り組みもその 一つであり、①元炭鉱労働者とその家族の方々を対 象とする聞き取り調査と②熊本県荒尾市からの受託 研究として、万田坑などの三池炭鉱に関する映像作 品の作成をおこなっている。
【北部九州の炭鉱の過去と現在】
明治維新後、日本は「富国強兵」「殖産興業」を スローガンに欧米の技術を積極的に導入しながら工 業の発展に尽力した。その際、中心となったのは長 崎を中心とした「造船」と現在の北九州市にあった 官営八幡製鉄所での「製鉄・鉄鋼」であった。そし て、これらの産業のエネルギーとなる「石炭」を供 給したのが北部九州にあった筑豊と三池の炭鉱であ る。日本の工業の発展は福岡をはじめとする北部九 州を抜きにして語ることはできない。
しかしながら、日本社会においては炭鉱は必ずし も良い印象をもって語られてこなかった。なぜなら、
暴力の行使もいとわない過酷な労働や頻発する事故、
あるいは囚人労働、さらには、アジア・太平洋戦争 中におこなわれた中国人や朝鮮人、連合国軍捕虜に 対する虐待など、数多くの悲惨な出来事とおびただ しい犠牲者を生み出したのが日本における炭鉱の歴 史に他ならなかったからである。
だが、このような炭鉱に対するネガティブなイメー ジは近年大きく変化しつつある。2007年より経済産 業省は、幕末・明治維新からアジア・太平洋戦争前 にかけて操業していた工場跡や炭鉱跡の建造物など を日本の近代化に貢献した「産業遺産」として認定 するようになった。この「近代化産業遺産群」の中 には筑豊と三池の炭鉱関連施設が含まれることに なった。さらに、万田坑をはじめとする三池炭鉱関 連施設については、「明治日本の産業革命遺産:九 州・山口と関連地域」の構成資産の一部として、2013 年に日本政府によってユネスコの世界文化遺産に推 薦された。これまで「負の遺産」ともいわれていた 炭鉱は、新たな「文化資源」として脚光を浴びるよ うになってきたのである。
― ―19 研究機関研究所近況
基盤研究機関 福岡・東アジア・地域共生研究所
大牟田・荒尾の「炭鉱遺産」調査・活用の取り組み
福岡・東アジア・地域共生研究所長 人文学部教授 星 乃 治 彦
福岡・東アジア・地域共生研究所 ポストドクター 山 田 雄 三
福岡・東アジア・地域共生研究所 ポストドクター 山 田 良 介
熊本県荒尾市の万田坑
【本研究所の取り組み】
このような状況をふまえ、本研究所では、三池炭 鉱があった大牟田・荒尾をフィールドとして、かつ て炭鉱で働いた方々とその家族を対象とする聞き取 り調査をおこなっている。
筑豊の炭鉱の様子については、森崎和江氏や故上 野英信氏らによる記録文学がすでに数多く出されて いる。一方、三池炭鉱に関する記録文学作品は比較 的に乏しいといわざるをえない。また、炭鉱労働経 験者に対する聞き取り記録もないわけではないが、
三池炭鉱の歴史や規模からすれば決して十分とはい えない。そのため、我々のプロジェクトでは、上記 のような「日本の近代化に貢献した炭鉱」といった 語りからは欠落しがちなテーマ、即ち労働の実態や 暮らしの様子、あるいは労働運動の体験や現在の状 況など、炭鉱にまつわる話を幅広く伺うことに努め ている。
聞き取り調査をおこなうもう一つの理由は、当事 者の肉声を記録として残すことにある。調査でお会 いした方々の年齢は年少の方でも既に70代である。
日本国内において炭鉱が消滅しつつある現在、炭鉱 で実際に労働に関わった人びとの肉声を聞く機会は、
今後急速に失われていくであろう。そのため、調査 では音声はもちろん映像での記録もできるだけおこ なうように心がけている。
この聞き取り調査は、現時点ではまだ予備的な調 査の域を出るものではないが、今後は自治体やNPO などの関係機関とも協力しながら、当事者の肉声の みならず写真をはじめとする関連資料の収集もおこ なっていく予定である。そして、調査対象者の同意
を得た上で調査内容を公開することについても検討 していきたい。
もう一つの取り組みとしては、万田坑をはじめと する三池炭鉱に関する映像作品の作成がある。荒尾 市には明治から昭和まで稼働した炭鉱施設である万 田坑があり、先に述べた「明治日本の産業革命遺産:
九州・山口と関連地域」の主要な構成資産にもなっ ている。しかし、三池炭鉱は1997年に閉山し、すで に20年近くの年月が過ぎているため、荒尾に住む青 少年は炭鉱があった時代を経験していない。
そのため、荒尾市教育委員会は、一般向けの万田 坑のプロモーション映像とあわせて、小学校高学年 向けの教育用映像作品の制作を企画した。本研究所 は荒尾市からの受託研究として、これらの映像作品 の作成に携わっている。教育用映像は、荒尾の子供 たちを主対象に、石炭産業の役割や万田坑の仕組み、
炭鉱があった時代の荒尾の様子などについて理解し てもらうための15分程度の映像作品である。海外か らの訪問者にも見てもらえるように、英語、中国語、
韓国語の字幕も付ける予定である。
万田坑のプロモーション用映像はすでに完成して おり、教育用映像の制作作業も今年度中に終わる予 定である。これらの映像は DVD に収められて、関 係機関等に配布されることになっている。
【おわりに】
「明治日本の産業革命遺産:九州・山口と関連地 域」が世界遺産として登録されるかどうかは、2015 年の夏に判明する。富士山や富岡製糸場の例にみら れるように、世界遺産に登録された場合、内外から の観光客が大幅に増加することが期待されている。
世界遺産に対する日本社会の関心も高く、いわば
「世界遺産ブーム」ともいえる現象が生じている。
もちろん、炭鉱施設などの「文化資源」を地域の 観光資源として活用しようとする動きを一概に批判 するわけにもいかない。近年、北部九州に残されて いる炭鉱関連施設や資料に対する関心は高まってお り、現地を訪れる観光客は増加している。旧産炭地 のほとんどはかつての炭鉱に匹敵する産業の創出に 苦闘している。そのため、地域振興のための観光資 源として炭鉱という「文化資源」を有効活用しよう とすることは当然のことである。
― ―20
聞き取り調査の様子
とはいえ、「日本の発展に貢献した炭鉱」といっ たストーリーのみを強調しては、地域の人々が抱い ている様々な思いを切り捨てることにもつながりか ねない。また、地域にある「文化資源」の発掘と活 用は、本来地域住民が中心となって進められるべき であるとするならば、我々のような「外部者」がど のような形で協力すべきかという問題は簡単には解 決できないものである。このような難しい課題も考 慮しながら、今後も旧三池炭鉱に関する活動を進め ていきたい。
― ―21
はじめに
膵島研究所では糖尿病に対する新規再生医療開発 の一環としてインスリン産生細胞創生に関する研究 を行っている。本稿では最近進歩が著しいこの領域 における世界のトピックスについて、紹介したい。
糖尿病再生医療の背景
糖尿病は生体内で唯一の血糖降下ホルモンである インスリンの相対的、絶対的不足により高血糖を招 来する疾患で、様々な病態に対応した治療が行われ る。中でも重症の1型糖尿病はインスリン産生細胞 が特異的に破壊される自己免疫疾患で、罹患すると 生涯に渡り、欠失したインスリンの補充療法が必須 となる。具体的には毎日4回(毎食前、就寝前)血 糖自己測定ならびにインスリン自己注射を行う。イ ンスリン注射による血糖管理を厳格に行うと結果と してインスリン過剰投与による低血糖を生じること がある。低血糖になると通常は冷汗、頭痛、手指震 振などの自覚症状があり、それを目安に自ら糖を摂 取し、対処することができる。しかしながら、罹病 期間が長期化すると自律神経障害が発現し低血糖症 状を自覚できなくなり、突然意識障害を発症し、生 命予後に重要な影響を与える事態となる。更には血 糖管理が良くないと糖尿病合併症が進展する。この ような病態に対して、インスリン産生細胞の移植医 療が行われている。すなわち、欠落したインスリン 産生細胞を移植により補充する治療法である。イン スリン産生細胞は膵臓内に散在する細胞塊(膵島)
に存在している。従って移植医療は膵島を含む膵臓 器移植と、目的とする膵島のみを取り出し移植に供 する膵島移植がある。いずれも臓器提供者の膵臓が 用いられる。インスリン産生細胞には血糖に対する センサーがあり、血糖値に応じてインスリンを生合 成し血中に分泌する。従って、移植後のレシピエン
トの血糖は移植膵島により制御され、移植後直ちに 正常となり、更には低血糖発作がなくなるのみなら ず、低血糖を自覚できるようになる。
この様な利点を有する移植医療であるが提供臓器 不足という本質的課題があり、その解決を指向する のが再生医療である。糖尿病に関する再生医療は ES細胞や iPS細胞から試験管内でインスリン産生細 胞を新たに作り出し、移植のドナーとして用いる方 法と、障害または欠落したインスリン産生細胞を生 体内で再生させることにより糖尿病を治療しようと する2つの方向性がある。我々は後者に関して、我々 独自の膵島移植の手法を用いて移植膵島再生の観点 より研究を進め、画期的成果を得ている。その詳細 は後日、提示するが、本稿では前者に関して2014年 に顕著な進歩が報告されており、その概要を紹介す る。
ES
細胞、iPS
細胞からインスリン産生細胞創生 ES細胞からインスリン産生細胞を作り出したとの 最初の報告は2006年になされた。この基本的手法 は ES 細胞を試験管内で分化誘導させ、最終的にイ ンスリン産生細胞ができたとの報告であった。最初 は1個の受精卵が母親の胎内で成熟し、胎児、出産 を経て成人となる過程で体のあらゆる構成細胞が分 化誘導され、組織、臓器となるわけで、普通に考え てもその過程は極めて複雑で解析は容易ではない。2006年の最初の報告では最終産物としてインスリン 産生細胞がとにかくできたというレベルの報告で あった。その後、インスリン産生細胞ができるまで の発生過程が詳細に研究され、特に転写因子の解析 が進み、それらを指標にして、大きく7つの段階を へてインスリン産生細胞が生じることが明らかにさ れた。この間、8年を要しており、欧米のベンチャー 企業がこれらの成果に貢献している。創生したイン
― ―22 研究機関研究所近況
基盤研究機関 膵島研究所
糖尿病再生医療:世界のトピックス
膵島研究所長 安 波 洋 一
スリン産生細胞と単離膵島細胞との相同性の検索は 極めて重要で、グルコース応答性インスリン分泌能、
組織像(光顕、電顕)、インスリン生合成、分泌に 関わる細胞内カルシウム動態、糖尿病マウスへの移 植による機能評価、網羅的遺伝子解析などの結果が 示されている。
iPS 細胞からインスリン産生細胞創生の最初の報 告は2008年で、上記ES細胞発表とほぼ同時期の2014 年にほぼ完成された報告がなされた。これは患者 さんの皮膚線維芽細胞から作成した iPS細胞を出発 点として、ES細胞と同様に分化誘導課程を7つに分 類し、各成長段階における(幹)細胞の転写因子を 明らかにし、それぞれの効率良い発現条件を見出し、
最終的に膵臓内膵島とほぼ同等なインスリン産生細 胞の創生に成功している。
臨床応用への今後の課題
さて、上記のようなES細胞や iPS 細胞から作ら れたインスリン産生細胞が実際の糖尿病治療に使用 されるにはどのような課題が存在するであろうか。
まず最も重要な点は安全性である。すなわち、ES 細胞や iPS細胞から分化誘導してインスリン産生細 胞を作成できたとしても未分化細胞が混じ、その細 胞により移植後悪性腫瘍が発生する可能性がある。
どのようにして未分化細胞を除去するか、また除去 できたとしても移植細胞が腫瘍化することも考えら れる。この安全性の検証にはin vivo 実験モデルを要 するが、どのようなモデルであるべきか今後慎重な 検討が必要である。当然、サルなどを用いた前臨床 試験が必須となる。
次に作成したインスリン産生細胞そのものの特性 に関して、インスリン生合成、分泌機構、グルコー ス応答性、薬剤応答性などが正常膵島と同等である かどうか、増殖性はないか、長期間にわたって機能
(インスリン生合成、分泌)維持できるかなどをあ きらかにしなければならない。
上記課題を全て解決できたとしても、拒絶反応の 問題がある。すなわち、ES細胞由来のインスリン産 生細胞の場合は他人(同種)の細胞であり、移植後 拒絶反応が発現する。更に1型糖尿病はインスリン 産生細胞を特異的に免疫細胞が破壊する自己免疫疾 患であり、作成されたインスリン産生細胞も移植後
は標的になりうる。これは自分の細胞(皮膚、血液 など)由来の iPS細胞から作成したインスリン産生 細胞にも当てはまる。従って、これらの細胞移植後 には従来の移植医療と同様の免疫抑制療法は避けら れない。この問題は免疫隔離膜の開発により解決で きる可能性がある。免疫隔離膜は拒絶反応に必須の 免疫担当細胞は通さず、栄養素やインスリンなどは 自由に通過する特性を有する。従って免疫隔離膜内 に封入された移植細胞は拒絶反応を免れる。この方 法の最大の利点は、レシピエントへの免疫抑制療法 を必要としない、いわば局所の免疫制御法であり、
成功すれば理想的治療法と言える。ただ、この治療 法は隔離膜の材質、移植後生体反応、生着効率、移 植細胞機能保持期間、移植部位など未解決の課題も 多い。特に移植部位は万が一にも移植細胞に腫瘍化 を含めて何らかの不具合が生じた場合は移植細胞を 容易に摘出、回収できる部位でなければならない。
おわりに
糖尿病に対する再生医療としてES細胞や iPS 細 胞からのインスリン産生細胞の創生と課題について 紹介した。実際の臨床応用にはまだ時間を要すると 思われるが、この領域は急速に進歩しており、意外 に早く実現するかもしれない。膵島研究所では独自 色を出しながら、今後も糖尿病治療としての再生医 療に取り組んでいく所存であり、今後も皆様方のご 支援をお願いしたい。
参考文献
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3. R Maehra, S Chena, M Snitowa, T Ludwigb,
― ―23
L Yagasakia, R Golandc, RL Leibelc, DA Melton.
Generation of pluripotent stem cells from patients with type 1 diabetes. PNAS 106: 15768-15773, 2009.
4.FW Pagliuca, JR Millman, M Gürtler, M Segel, A Van Dervort, JH Ryu, QP Peterson, D Greiner, DA Melton. Generation of functional human pancreatic βcells in vitro. Cell 159: 428-439, 2014.
― ―24
4年目(2014年度)は、1つの委託事業と1つの 連携事業、2つの協力事業に取り組みました。
<委託事業>
・中高生夢チャレンジ大学(福岡市役所)
<連携事業>
・企業再生を現場とする人材育成プログラム(朝 日ビジネスコンサルティング)
<協力事業>
・書く力をきたえるプログラム(福岡大学地域ネッ トセンターの地域連携事業)
・城南区役所の若手人材育成事業(商学部の講義
「ソーシャルイノベーション」をプラットフォームに)
中高生夢チャレンジ大学
夢チャレンジ大学は福岡市役所こども未来局がは じめて手がけた中高生向け事業であり2012年度にス タートした。次世代研究所は初年度から3年にわた り、プログラム全体の企画・監修と、入校式(2014 年8月9日)、閉校式(9月29日)、講座2つのプロ グラム開発・運営を担った(所長である田村は夢チャ レンジ大学の学部長)。
本研究所が開発した創造性発掘プログラムの効果 は図表に示すとおりである。
企業再生を現場とする人材育成プログラム 単なる座学ではなく、またインターンシップでも ない人材育成の場をつくりたい。その思いを共有す る朝日ビジネスコンサルティングと連携して、企業 再生を現場とする人材育成プログラムを開発し運営 する事業は3年目。今年度はプログラム開発に注力 した。具体的な展開は2015年度を予定する。
書く力をきたえるプログラム(書くP)
2013年度は梅林中学校、城西中学校、修猷館高校 に書くPは入った。本研究所はプログラム開発にお いて協力した。今年度はメタファーワークをプログ ラムとして開発した。たとえば、人生なんて考えた ことがなく、またイメージできない中学2年生が人 生を絵にするワークだ。その幾つかを示すが、ここ から中学生は自らの志を発見する。
― ―25 研究機関研究所近況
産学官連携研究機関 次世代人材開発研究所
4年目の次世代人材開発研究所のこの1年
次世代人材開発研究所長 商学部教授 田 村 馨
創造性発掘プログラムを受講する前と後での「創造性に対する自己認識」の変化 単位:%
高 校 生 中 学 生
全 体
After Before After Before After Before
17.1 5.7 21.9 12.3 20.4 10.2 全くその通り 2012年
(108)
自分には 創造的な ところが ある
45.7 8.6 39.7 19.2 41.7 15.7 その通り
22.9 37.1 34.2 35.6 29.6 36.1 どちらでもない
47.1 11.8 20.6 2.9 25.9 4.7 全くその通り 2013年
(85) その通り 16.5 58.8 13.2 60.3 29.4 52.9 0.0 29.4 13.2 51.5 10.6 47.1 どちらでもない
11.1 0.0 17.9 9.0 16.5 7.1 全くその通り 2014年
(85) その通り 24.7 64.7 20.9 65.7 38.9 61.1 22.2 16.7 14.9 47.8 16.5 41.2 どちらでもない
注①数値は全体、中学生計、高校生計に対する構成比。
②100から引いた数値は「そうではない」と「全くそうではない」の合計。
③創造性発掘プログラムは2012年、13年は合宿研修の中、2014年は開校式の中で実施。
④中学生、高校生の人数は2012年(73人、35人)、2013年(68人、17人)、2014年(67人、18人)
創造性発掘プログラム受講前後で比較した「創造性に対する自信」と
「前向きの思いや気づき」との相関関係
自分の人 生は自分 で創るん だと思え るように なった 自分の未 来 が イ メージで きるよう になった 自分の未 来の可能 性を信じ ることが できるよ うになっ た 他者と協 力し助け あうこと で自分も 他者も創 造的にな れる 大学生に 思いを引 き出して もらった 社会が創 造的な人 材を求め ている
― 0.259***
0.220**
― 0.036 0.150 Before 2012年
(108) After 0.375*** 0.299*** ― 0.668*** 0.413*** ― 0.113 0.256**
0.257**
0.102 0.094
-0.098 Before 2013年
(85) After 0.130 0.391*** 0.432*** 0.379*** 0.340*** 0.242**
0.215 0.173 0.337***
0.096 0.034 0.168 Before 2014年
(85) After 0.381*** 0.247** 0.461*** 0.548*** 0.527*** 0.509***
注:**は5%、***は1%で統計的に有意なことを示す。
城南区役所の若手人材育成事業
城南区役所は入庁2、3年目の若手の育成を考え ていた。業務の延長線上ではない、まったく新しい 場となる大学の講義に参加させることを田村が提案 した。区役所からは5人の若手が派遣された。大学 生と一緒にグループワークに参加し、福岡大学が城 南区役所にあることで可能になるプロジェクトを構 造するワークを進めた。プロジェクトの発表時には 吉村城南区長も参加され、今年の1月には区役所内 で成果報告が行われた。
― ―26
大学生に混じって城南区役所の若手職員も グループワークに参画
城南区役所若手職員が参加する講義「ソーシャルイノベーション」(2014年度後期)の構成と流れ デビッド・ケリー(IDEO 創立者、デザ イナー) 「自分のクリエイティビティに 自信を持つ方法」(TED)
なぜいまソーシャルイノベーションなのかをここ20年の歴史、 経緯
( NPO の変遷(挫折を含む)、社会起業家の登場、ビジネススクール からデザインスクールへの流れ等)から解説
10月2日
山田崇(長野県塩尻市職員 ひとりじゃ円 陣組めない」(TED)
デザイン思考的な試行をまちづくりの現場で実践する山田氏の取り組 みを素材に、デザイン思考とは何かを解説しグループで議論 10月9日
ティム・ブラウン (IDEO の CEO、デ ザイナー)「創造性と遊び」(TED)
デザイン思考と切り離せない概念である創造性(クリエイティビティ)
について解説しグループで議論 10月16日
横田幸信(東大 i.school ディレクター)
「Composing innovation process」(TED)
イノベーションの肝となる「0から1」のプロセスをソーシャルイノ ベーションに繋げる方法論(creativity+collaboration)を解説しグ ループで議論
10月23日
ダニエル・カーネマン(行動経済学者、
ノーベル経済学賞受賞)「経験と記憶の謎」
(TED)
デザイン思考のあり方を左右するヒアリングや観察が人間理解に規定 されていることを解説
10月30日
参考資料:ルーク・ウイリアムス「デザ インコンサルタントの仕事術」
破壊的な仮説をたてるフレームワークを紹介し、学園祭を例にグルー プワークを行う
11月6日
「常識-仮説-洞察-チャンス」で地域の課題や現象を破壊的な仮説 同上 に転じるワーク
11月13日
「常識-仮説-洞察-チャンス(破壊的な仮説をたてるフレームワーク)を使って実際に地域の課題や現象をチャ ンスに転じる提案をし、提案者として推敲するワーク
11月20日
「福岡大学が地域にあることで地域にどのようなことが起こりえるのか、ギフトされるのか」ワーク 11月27日
12月4日 12月11日 12月18日
「福岡大学が地域にあることで地域にどのようなことが起こりえるのか、ギフトされるのか」プロジェクト発表 12月25日
城西中2年生が人生のメタファーとして描いた絵
城西中2年生が人生のメタファーとして描いた絵
1.はじめに
我々の研究所は、工学部と医学部との横断的連携 によって、さまざまな安全に関するテーマの研究を 行っている。
今回、自動車分野の安全に関して、最先端の技術 で、かつ急速充電など高電圧を安全に取り扱う必要 性や、さらに車両の使用方法によっては、電欠での 走行不能による生命の危険性をはらんでいること、
及びモーターの無音走行による危険性の問題、強大 な低速トルクの制御による安全性の向上など、電気 自動車(EV)に関する安全の分野に接する機会を得 ることができたが、その中で、根本的なEVの普及 という問題点が浮き彫りとなり、今回、やや狭義の 安全とは異なるが、行動学的視野に立った考察を加 味しながら、EV の早期普及や利便性向上のシステ ム構築に少しでも寄与できないか、研究者の視点で 調査、研究を行った。
現在、世界規模で、地球温暖化防止、低炭素化社 会の取り組みが行われ、太陽光、風力、波力、地熱、
バイオマス、水力など化石エネルギーを使用しない、
ゼロエミッションで環境負荷の少ない自然エネルギー への転換が押し進められている。
我々は、研究機関として、将来、電力受給におけ るSmart Grid の平準化機能としての役割を担うこと が可能であるEVの、普及の問題点の一つである集 合住宅における充電設備設置の困難さに関する現状、
及びその解決方法についてご報告する。
2.電気自動車の世界的潮流
昨年より日本では、温暖化の解決策として、日本 政府、東京都、トヨタ自動車、岩谷産業などが積極 的に導入の検討をしている、水素を用いた燃料電池 自動車(FCV: Fuel Cell Vehicle)が注目されている。ま
た水素の供給に関しては、全国の工場から排出され ている副産物としての水素の有効利用分だけでも、
年間1,300万台の FCV が賄える予測もあり、さらに 下水処理場の汚泥から水素を生成して利用する方法 など、資源に乏しい日本で、自前のエネルギーの生 産が可能であることがわかり、将来の水素利用の追 い風となっている。
ただし、FCVの本格的な普及には、インフラ整備、
水素の取り扱い上の規制緩和、水素ステーションの 安全性や周辺地域の理解への取り組み、燃料電池の 触媒となるプラチナの使用量の減少や代替触媒の開 発、水素の新しい貯蔵方法の開発など、少なくとも 10年以上の時間を要すると考えられる。
今回、発電供給源や送電ロス、バッテリー生産に 伴う環境負荷等の種々の考え方はあるが、エネルギー 利用効率の観点から、石油・石炭などの化石燃料の 使用量を減らす一つの方法として、また世界的にみ ても FCVよりも普及が早いと考えられているEVに ついて検討した。
EV はガソリン車と異なり、エネルギー供給源の 多様化が可能で、化石燃料以外からも電力を調達で きる。また最近では、熱効率を60%にまで高めたハ イブリッド型の発電プラントや、次世代型の70%の 変換効率の発電プラントも開発中であり、こうした 高効率、低CO2排出の発電プラントで発電された電 力も今後、利用可能である。また平均40%台である 発電効率の現在の火力発電所の電力を利用しても、
最終的には、Hybrid Vehicle(HV)の高効率のガソ リン車の1.5~2倍のエネルギー変換効率を有してい ると言われている(計算方法には諸説あり)。さら に、バッテリーの低価格化、高容量化の性能向上に よって、風力発電、太陽光発電等の電力変動時にお ける電力の平準化も可能となり、Smart Grid の蓄電/
― ―27 研究機関研究所近況
産学官連携研究機関 安全システム医工学研究所
安全システム医工学研究所近況報告4
安全システム医工学研究所 医学部講師 内 田 俊 毅
工学部教授 友 景 肇
平準化装置としての利用が期待でき、今後、エネル ギー利用方法の変革に繋がる技術発展が大いに期待 されている。
3.実際の
EV
普及の実態 a.日本の現状現在、まだバッテリーが高価なため、車両が高 額であり、また短い航続距離や長時間の充電時間 や充電インフラの不足等の諸問題によって、EV の普及は過渡的時期にある。
日本では、2009年6月より三菱自動車のi-MiEV
(軽自動車クラス)、2010年12月より日産自動車の リーフ(小型車クラス)が発売されているが、2009 年から2014年までの6年間のすべての EVの日本 国内での総販売台数は6487, 0台で、さらに2012~2014 年の3年間でみれば、 毎年の販売台数は16,000台 前後の横ばいで推移しており、年間の新車販売台 数に占める割合は0.17%(平成25年)前後に留まっ ている。
b.世界の現状
欧州では、環境規制から、ディーゼルより環境 負荷の少ないEV、HVへの転換が図られており、
ドイツではBMW、Volkswagen、Daimlerが、フラ ンスでは Renault がすでに参入している。英国で は2018年までに、ロンドンタクシーの電動義務化 を掲げており、また米国では、自動車の最大市場 であるカリフォルニア州の ZEV 規制(ZERO EMISSION VEHICLE REGULATION)によって、
一定割合の排出ガスゼロの車両(ZEV)を販売し なければ多額の罰金を支払うか、他社からZEVク レジットを購入しなければならない。さらに段階 的に規制内容は厳格化されており、2018年モデル からは、ZEVの対象車両に今までカテゴライズさ れていた HV が除外され、pure EV と FCV のみが 対象となる。さらに販売台数の少ないメーカーも 規制対象に入るようになるため、米国自動車メー カーを含めた多くの自動車メーカーが ZEV の発 売をしなければならない状況が存在する。
4.研究開発/調査メンバー、協力企業、及び 協力機関
福岡大学工学部、医学部(友景先生、内科/生理 学)、㈱ネットワーク応用技術研究所、Egretcom㈱、
㈱H&S、トーワテック、その他のご協力を頂き、
実用化への検討を行った。
また今回、(公益財団法人)九州経済調査協会の平 成23年度スマートコミュニティー構想普及支援事業 のメンバーにも参画させて頂き、EV 普及の障害の 一つ、集合住宅における充電設備設置の問題点を探 索した。
その他、(一般財団法人)電力中央研究所の池谷氏 からもご助言を頂いた。
プロジェクト推進過程で、工学部電子情報工学科 教授友景肇先生を中心に、Intelligent充電ケーブルへ の新たな発案がなされたため、内容を後述する。
5.集合住宅居住における
EV
購入希望者の現状 集合住宅(共同住宅+長屋建)に居住している世 帯数は、全戸数の52.8%(3,203万戸/6,063万戸、平 成25年)であり、都市部では、より高い比率を示し ている。そのため、EV 購入希望者が集合住宅に居 住している割合は高いことが予想され、実際に、EV専用の200V 普通充電設備設置をすることができず、
EV の購入を断念している事例が多く見られる現状 から、EV の販売台数の伸び悩みの大きな要因の一 つになっていることが十分推測される。
新築の分譲マンションは、初めから充電設備を設 置可能であるが、年間の新築マンション戸数は全戸 数の0.2%(127,599戸、全戸数:6,063万戸、平成25 年)しかなく、初期投資、キュービクル(変圧器)
の容量、需要予測の困難さ、販売価格の上昇などに より、新築でさえも、実際には充電コンセントの設 置をされているマンションはほとんどないのが現状 である。
そのため、集合住宅の大多数の人が居住する既築 の集合住宅の充電設備設置環境を改善することは、
EV普及に大きく貢献すると考えられる。
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6.課題の抽出
電力計メーカー、通信機器メーカー、住宅メーカー の協力の元、EV 普及のための既築集合住宅への普 通充電設備設置に関する障害を検討した。
既築集合住宅における電気自動車の普通充電設備 設置上の問題点
① 住居に充電コンセントを設置する場合、電気事 業法上、一敷地内一世帯につき電力メータは1つ しか設置できないため、新たに電力メータを増設 できず、既設の屋内分電盤より分岐して電灯線を 駐車場まで引かなければならない。
a.電灯線を屋外へ出すために壁に穴を開けたり、
外壁に電灯線を這わせたりしなければならず、
大掛かりな工事を要する。
② 入退居の多い賃貸集合住宅(マンション、アパー ト)では、オーナー、管理会社の判断になるが、
外壁や施設への加工の許可が下りないことが多い。
a.建物の美観を損ねることで物件の価値の低下。
b.建物・施設への加工に伴う耐久性の低下。
c.入居者の入れ替わりによる現状回復工事の繰 り返し。
③ 既設の各戸の分電盤からの配線工事を行わず、
共同電源から子電力メータを介して配線する場合。
(ビルのテナントの電気料金の管理と同じ考え方)
a.電力会社は子電力メータの管理を行わない。
b.運用上、分譲マンションの管理組合や賃貸マ ンションの管理会社が、毎月の検針、電力使用 量の計算、手数料を含んだ料金請求、料金徴収、
電力会社への支払い等の業務を行わなければな らないが、実際には不可能である。また管理組 合には報告業務の作業も新たに発生する。
④ 分譲集合住宅(マンション)では、共同の資産 部分の工事となるため障害が多い。
a.所有者全員の承諾が必要。
b.費用分担をどうするのか。
c.将来のEV購入利用者も含めて誰が利用でき るのか(共同利用の場合)。
d.共同電源等の電灯線使用料はどうするのか、
無料では平等ではないのではないか。
e.定款で共同部分の変更は禁止と書かれている ことが多く、定款の変更を行う必要がある。
f.一人に設置利用を認めてしまうと、将来、充 電設備設置希望者が増えた場合、集合住宅に設 置しているキュービクルの容量を上げなければ ならなくなり、電源契約内容の変更に伴う電気 料金の増加、及びキュービクル交換のための数 百万円規模の費用を誰が出すのか。
⑤ 高層では工事自体が不可能。電灯線の長さ、費 用から低層の建物に限定される。(集合住宅の7 割以上の人が、3階以上の中高層階に居住してい る)
◎これらの問題点を回避できる方法を発案し、実用 化の方法を検討した。
7.今回提案の解決方法
① 共同電源に入る引き込み電灯線から電力の供給 を受け、EV の充電に要した電力使用量のデータ を送信する装置の付いた子電力メータと充電コン セントを、EVの駐車スペースに設置する。
② 各世帯に既設されている親メータ部分に、子電 力メータからの電力使用量のデータを受信可能な 親電力メータを設置する。
③ データ送信方法には、ワイファイ、ブルーツー
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図1 一般的な集合住宅における充電設備配線図
ス、国際無線通信規格(Wi-SUN)などのセキュ リティの高い電波を用い、電波の届きにくい場合 は電灯線を利用したPLC方式(充電コンセント用 電灯線が屋外に設置されるため、低情報量ではあ るが、屋外設置可能なナローバンドを使用する)
を用いる。
④ 親メータは、一般電力使用量に、EV の充電に 要した電力使用量を加算して総電力使用量を随時 表示する構造とする。そのため、電力会社の検針 業務、及び料金請求は従来通りの運用で変更する 必要がない(8.解決方法の利点の2)。
8.解決方法の利点
① 建物への工事・加工が最小となり、分譲、賃貸 の集合住宅でのEVの充電コンセントの設置の承 諾・許可を得やすい。
② 新たな料金計算等の管理・運用の業務が発生し ない。
③ 分譲マンションにおいて、共同電源へ供給され る電灯線や、引き込み電灯線から入居者の駐車エ リアに配線するだけで済み、設置利用者の負担の みとなり、他の入居者への負担や利用の権利等が 発生しにくい。
④ 電力使用量は、あくまでも親メータで完結され るため、契約者の契約アンペアを超えない。
例えば、契約アンペアを 50A にした場合、EV 充電用に20A、屋内用に30A となり、別枠で新た に使用量を増やすわけではないので、集合住宅全 体の電力量の許容範囲に留めることが可能である。
EV が大量に普及し、集合住宅全体の許容量が 十分に取られていない場合にのみ配慮する必要性 が出現する。しかし、その時には十分なEVへの ニーズと、キュービクルの容量アップのコンセン サスが得られると思われるため、これらの問題を 十分回避できると考えられる。
⑤ 今までEVの購入が不可能であった集合住宅居 住者にも、購入可能な対象者が増え、環境対応車 であるEVの普及に大きく貢献できる。
⑥ 一戸建て住宅においても、駐車場に近い電灯線 の近くに駐車場がある場合、屋内配電盤から配線 する必要がなくなり、大掛かりな外壁への工事が 不要となる。
⑦ 電力会社以外の、民間の集中管理型充電ではな いメリットが多い。
a.集中管理型のような管理会社が不要なため、
規模が最小で、費用も個人負担のみで済み、集 合住宅にとって非常に導入しやすい。
b.集中管理会社に支払う手数料や費用が生じな いメリットがある。集中管理型では、月額契約 料金や一回使用量による電気使用量徴収など、
システム上、充電コンセント使用量が非常に割 高となるため、EV のメリットであるランニン グコストの安さが大きくスポイルされる。
c.集中管理型では、充電場所の共同利用、及び カーシェアリングタイプが主であるため、新た に充電のための駐車スペースを確保する必要が ある。
d.通常、1台の充電時間には6~8時間必要で あり、1台に長時間占有されてしまうと、いつ でも充電できない状態となり、航続距離の短い EVにとって非常に利便性が悪いものとなる。
e.集中管理型では使用者の認証が必要となるが、
今回のシステムでは、個人専用のため使用者の 認証が不要である。
⑧ データの送受信が充電設置場所内だけで完結す るため、今後、スマートメータを使用した Smart Gridへシステムが置き換わっていっても、新たに 通信網・電線網に余分な負荷を増加させずにす む。
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図2 提案の充電設備配線図(無線通信)
9.解決事項と発展的課題 a.基礎的技術
本研究では、下記に述べる基礎的技術に関して、
すでに検討、解決済みである。
〇親電力メータ、子電力メータに、同システムを 組み込む技術的問題はなかった。
〇PLCについては、屋外に設置した配線から電波 が漏れるため、高周波では電波法上、使用でき ない。そのため問題のないナローバンドを使用 する。データ転送量はどうしても減少するが、
特に動画の配信などで、将来制限を受ける可能 性が考えられる。しかし、データを圧縮したり、
QRコードなどを転送し、利用者が個別にインター ネット環境へ接続して情報を見て頂くなどで対 応する。
〇無線通信のセキュリティ上の技術的問題はなく、
コストの問題、電力会社が導入予定のスマート メータとの互換性や相互作用など、今後検討の 必要がある。
b.共同研究の進展
本研究内容は、現在特許審査中で、権利取得後、
大手の電気通信機メーカーや電力計メーカーと共同 研究を検討して頂く予定である。
また今後、バッテリー性能の向上に伴い、EV 購 入希望者の増加が予想されるが、2016年から利用者 が自由に電力会社を選べる電力自由化によって、第 2電力会社のEV充電設備設置分野と屋内電力契約 の同時契約などへの参入が予想され、既存の電力会 社の契約数は大きく減少する可能性が高い。こうし た状況を踏まえて、今回の案件に対する電力会社へ の協力の働きかけをさらに進めていく予定である。
c.Intelligent充電ケーブルを発案
研究メンバーとのプロジェクト推進に伴い、友景 先生を中心に、新たに人工知能を持たせた EV の Intelligent 充電ケーブルを発案した。ケーブルは、
EVを駐車場に駐車中、200V 普通充電をしたい場合、
駐車スペースの充電コンセントに充電ケーブルを接 続するだけで、EV の車両データを送受信し、施設 内での充電管理とユーザーへの利便性を高める情報 発信などを行う機能を有する構造である。
すでに特許申請をしており、今後、EV普及に伴っ て、Intelligent充電ケーブルの優位性を企業に働きか けていく予定である。
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図3 提案の充電設備配線図(PLC)
図4 駐車場におけるIntelligent充電ケーブルの使用例
○Intelligent充電ケーブルの利点
(設置場所)
一般の駐車場や商業モールの駐車場に設置
(機能と利点)
ケーブル内には、個人認証情報や課金情報を 事前に設定する。
Intelligent充電ケーブルは、PLCを使用して、
EVと、駐車場のコントロールユニット間で双方 向の情報のやりとりを行い、コンセントの ON /OFF の制御を行う。さらに、車両または登録 されたスマートフォンに、モールの情報、例え ば割引券などを配信し、利用者の利便性を向上 させることができる。
安価なON/OFFだけのコンセントをすべての
駐車場内に設置できるため、利用者はEV専用 のスペースに駐車する必要がなく、ケーブルを 接続して、スマートフォンで出庫予定時間や充 電量を入力するだけで、課金操作や認証作業を する必要がない。
駐車場設置者には、認証機能のいらない安価 なコンセント設置のため、すべての駐車スペー スにコンセントを取り付けても初期投資が低く 抑えられる。またEVの専用スペースを作る必 要がないため、常に駐車スペースを有効に使用 できる。さらに駐車場のキュービクルの容量に 応じて充電可能な台数を制限したり、時間帯別 電力使用量に基づいて充電時間の配分のコント ロールを行うことで、駐車場全体の電力需要を 平準化し、キュービクルの変更を来さないよう に設計できる。
10.今後の
EV
普及の展望と将来への対策の必 要性○EV普及への展望
世界で最多販売となっている日産リーフは、
現在、全世界で10万台を超えている。しかし、
EVの、ある程度の普及によって、今後、EVが ブレイクする基本性能も同時に見えてきた。現 在のリーフでは、一般的なガソリン車と同等の 使用方法では、1回の満充電での走行可能距離 は120~130km であり、エアコンを使用すると さらに23割減少する。実際、100 km 先の観
光地へ往復するとした場合、途中で合計2~3 回の急速充電が必要となる。つまり、充電のた めに充電場所への移動も含めると、約2~3時 間余分にかかってしまう。このことは、現状の 性能では近距離の使用しかできないことを意味 する。
リーフのバッテリー容量は24kWh であるが、
質量エネルギー密度(Wh/kg)、価格、一般ユー ザーの平均的一日の走行距離から、開発当時ベ ストと考えられた容量であるが、上記の通り、
現在、普及しているガソリン車に変わる基本性 能を満たしているとは言えない。多くの自動車 メーカー、電気メーカーがその問題点に気づき、
現在、バッテリー開発が本格的に行われている。
将来的には、現在の5~10万/kWh のバッテ リー価格を2万円前後にまで低下させ、さらに 質量エネルギー密度を1.3~2倍へ上昇させるこ とがここ数年~5年で達成されることが期待さ れている。
そして車両価格が普及価格にまで低下し、さ らに航続可能距離が現在の2倍の実走距離 250
~300km に達した時点で、フィルムカメラがデ ジタルカメラに一気に駆逐されて消滅してしまっ たように、新車販売の大部分がEVとPHEV(: Plug-in Hybrid Electric Vehicle、;バッテリー容量 が大きくEV走行が多い。またはEVにレンジ・
エクステンダーとして小型の発電機を搭載した 車両)に置き換わってしまう可能性が十分に考 えられる。
また過疎地域では、現在、ガソリンスタンド の減少が問題となっている。昨年3月までに自 治体全体の15%にあたる過疎地域を中心とした 265市町村で、ガソリンスタンドが3カ所以下 となり、深刻な状態となっている。今後、低価 格の軽自動車タイプのEVが発売された場合、
日常の足として使用しているガソリン車が EV に置き換わる可能性も非常に高いと言える。
○将来への対策
EV 普及に伴う、急速充電器の設置のあり方 について、ユーザー間のトラブル防止や利便性 に配慮した設置計画、及び課金方法や充電料金
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に対する配慮が必要不可欠である。特に、高速 道路の SAや PA での急速充電器の設置につい ては、利用者数と SAや PA 内の急速充電器の 設置台数とのバランスには十分な配慮が必要で、
また、エリアを色分けしたり、ややトイレや売 店から距離をとり、EV以外の車両が心理的に 駐車しにくい行動学的視点に立った充電器の設 置位置や待機スペース、将来的に増設する場合 の予備スペースなどに配慮した設計をしなけれ ばならない(図5参考例)。
さらにEVに使用されているバッテリーの熱 による劣化や、各社まちまちなバッテリー性能 の評価方法、曖昧な航続距離の表記方法等の改 善の諸問題もあり、今後、バッテリーの man-
agement の技術的な向上、公的なバッテリーの
評価基準の策定と、第3者による公正なバッテ リー性能の評価、及びEVに特化した走行条件
(冷暖房の設定温度、道路勾配、平均速度など)
に応じた各々の電費の測定方法など、中長期的 なEV使用に関する早急な取り決めが必要と思 われる。
また今後、大量にEVが普及した場合、日本 の電力供給量や管理・配電システムに関して、
抜本的な対策を講じていかなければならなくな ると考えられる。
さらに内燃機関からEVへ転換した場合、自 動車製造業のサプライヤーの業種の変換が進む ため、日本のものづくり産業の再編にまで及ぶ 可能性もあることにも目を向けなければならな いと思われる。
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図5 SA/PA の急速充電設備設置例(GSがない場合)