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学 位 論 文 の 要 旨

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Academic year: 2021

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(様式6号)「課程博士用」

学 位 論 文 の 要 旨

専 攻 名 材料科学 専 攻 氏 名

朝 岡 義 晴 ○

学位論文題目

抗体医薬精製用アフィニティークロマトゲルの開発

(Development of novel affinity chromatography resin for antibody drug purification)

【背景】

ヒトの免疫機能において重要な役割を担っているタンパク質に抗体がある。この抗体(IgG)は抗 原に対して高い親和性、特異性を有しており生体内にはさまざまな抗体が存在している。1975 年、

Köhler

Milstein

によって単一抗体であるモノクローナル抗体が開発された。これにより抗体はバイ

オテクノロジーの分野で幅広く用いられるようになった。近年ではモノクローナルを医薬品へと応 用した抗体医薬と呼ばれる医薬品が販売されるに至っている。

抗体医薬は、主に抗体遺伝子を導入したチャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO 細胞)を培養 することで生産される。生産された抗体は、キャプチャー工程、中間精製工程、ポリッシュ工程の

3

段階の精製工程を経て精製される。このキャプチャー工程には

1

ステップで高純度に抗体を精製す ることができるアフィニティークロマトグラフィーが用いられている。このアフィニティークロマ トグラフィーに用いられるゲルには、抗体に対して、高い特異性を有したリガンドが固定化されて いる。多くの場合、このリガンドには黄色ブドウ球菌の細胞壁タンパク質由来の組換えタンパク質 であるプロテイン

A

が用いられている。 しかしながら、プロテイン

A

は、抗体医薬の候補となる

IgG1、IgG3

のうち

IgG1

にしか結合することができないため、IgG3 を精製することができない課題

がある。

【目的】

本研究では

IgG1、IgG3

に高い親和性、特異性を持ち、ヒト生体内で免疫応答に関与している抗体 レセプターである

FcγRI(CD64)をアフィニティーゲルのリガンドとすることで、IgG1、IgG3

を高 純度に精製するアフィニティーゲルの開発を目的としている。

【結果】

1. CHO

細胞による組換え

FcγRI

の発現とリガンドへの応用

ヒト

FcγRI

が本当に

IgG1、IgG3

に高い親和性で結合し、抗体精製用のアフィニティーゲルのリガン

ドへ応用できるかを検討した。ヒト

FcγRI

分子の中で実際に抗体と結合する細胞外領域を組換え

FcγRI

(rFcγRI)として動物細胞用の発現ベクターpECE-dhfr にクローニングしジヒドロ葉酸レダクタ

ーゼ遺伝子(dhfr)欠損している

CHO

細胞株

DXB11

に遺伝子導入した。

rFcγRI

は発現したがその発 現量は低いため、dhfr/MTX(メトソレキサート)を用いた

rFcγRI

遺伝子の増幅を行い、その生産性 を向上させた。しかしながら、遺伝子増幅でも十分な生産性が得られなかったことから、遺伝子増

続紙 有■ 無□

(2)

(様式6号-続紙) 「課程博士用」

氏 名

朝 岡 義 晴 ○

幅し生産性の向上した細胞株をバイオリアクターにて高密度培養を行うことで

rFcγRI

を大量に発現 させた。発現した

rFcγRI

3

段階の精製工程を経て精製された。精製された

rFcγRI

IgG1、IgG3

への親和性を

Biacore

にて測定したところ、それぞれ

1.59×10-10

(M) 、2.81×10

-10

(M)であり高い親 和性を有していることが確認された。そこで精製した

rFcγRI

を親水性ビニルポリマーゲルにエポキ シ基を介して固定化した

FcR

ゲルを作製し、動物細胞用の培地からヒト抗体を精製したところ、高 純度に精製できることを確認した。しかしながら、FcR ゲルの安定性は低く、繰返し使用すること ができなかった。これはリガンドである

rFcγRI

の安定性が低いためと考えた。

2. 大腸菌よるrFcγRI

の発現

rFcγRI

の安定性を向上させるために分子改良を行う必要がある。そこでまず分子改良に必要な微

生物での

rFcγRI

発現に取組んだ。これまで

rFcγRI

は大腸菌で発現した封入体からのリフォールディ

ングで得られる報告があったが、可溶性発現の方向は無かった。本研究では分泌シグナルと

rFcγRI

の間に親水性のリンカーを入れることで大腸菌での可溶性での発現に成功した。

3. 進化工学によるrFcγRI

の安定化とリガンドへの応用

進化工学を用いて、rFcγRI の安定化に取組んだ。エラープローン

PCR

にて

rFcγRI

分子に

1~2

個 アミノ酸変異を導入した変異ライブラリーを作製した。ここから熱を指標としたスクリーニングを 行い

2700

クローン評価した。その結果、rFcγRI の熱安定性向上に寄与する

19

個の変異を同定した。

同定した変異を

1

つの分子に集積することで熱安定性を大幅に向上させた

FcRm19

を作製した。こ

FcRm19

は課題であった酸に対する安定性も向上しており、

IgG1、IgG3

への結合性も有していた。

そこで、安定化した

FcRm19

を親水性ビニルポリマーゲルに固定化し

FcRm19

ゲルを作製した。こ のゲルで抗体精製を行ったところ、高純度に

IgG1、IgG3

が精製できた。また課題であった繰返し安 定性も向上しており、抗体精製用のアフィニティーゲルとして使用できることが示唆された。

4. rFcγRI

の抗体結合領域の特定

rFcγRI

の細胞外領域は

3

つのドメインから構成されているが、これまで第

3

ドメインが

rFcγRI

高い親和性に重要だと考えられていた。そこで、

rFcγRI

から第

3

ドメインを欠損させた

rFcγRI-D1D2

を大腸菌にて発現させ、その親和性を

rFcγRI

と比較したところ親和性はほぼ同様であった。そのた め、第

3

ドメインは抗体との結合に寄与していないことが示された。

【まとめ】

ヒト

FcγRI

の細胞外領域を

rFcγRI

として大腸菌で可溶性発現することに成功した。また進化工学

的手法を用いることで

rFcγRI

の安定化に成功し、変異

rFcγRI

を固定化したゲルにてヒト抗体を培地 から精製することに成功した。その結果、ヒト

FcγRI

をリガンドとした抗体精製用のアフィニティ ーゲルの開発に成功した。

以上

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