(様式6号)「課程博士用」
学 位 論 文 の 要 旨
専 攻 名 材料科学 専 攻 氏 名
ふ り が な
朝 岡 義 晴 ○
印学位論文題目
抗体医薬精製用アフィニティークロマトゲルの開発
(Development of novel affinity chromatography resin for antibody drug purification)
【背景】
ヒトの免疫機能において重要な役割を担っているタンパク質に抗体がある。この抗体(IgG)は抗 原に対して高い親和性、特異性を有しており生体内にはさまざまな抗体が存在している。1975 年、
Köhler
と
Milsteinによって単一抗体であるモノクローナル抗体が開発された。これにより抗体はバイ
オテクノロジーの分野で幅広く用いられるようになった。近年ではモノクローナルを医薬品へと応 用した抗体医薬と呼ばれる医薬品が販売されるに至っている。
抗体医薬は、主に抗体遺伝子を導入したチャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO 細胞)を培養 することで生産される。生産された抗体は、キャプチャー工程、中間精製工程、ポリッシュ工程の
3段階の精製工程を経て精製される。このキャプチャー工程には
1ステップで高純度に抗体を精製す ることができるアフィニティークロマトグラフィーが用いられている。このアフィニティークロマ トグラフィーに用いられるゲルには、抗体に対して、高い特異性を有したリガンドが固定化されて いる。多くの場合、このリガンドには黄色ブドウ球菌の細胞壁タンパク質由来の組換えタンパク質 であるプロテイン
Aが用いられている。 しかしながら、プロテイン
Aは、抗体医薬の候補となる
IgG1、IgG3
のうち
IgG1にしか結合することができないため、IgG3 を精製することができない課題
がある。
【目的】
本研究では
IgG1、IgG3に高い親和性、特異性を持ち、ヒト生体内で免疫応答に関与している抗体 レセプターである
FcγRI(CD64)をアフィニティーゲルのリガンドとすることで、IgG1、IgG3を高 純度に精製するアフィニティーゲルの開発を目的としている。
【結果】
1. CHO
細胞による組換え
FcγRIの発現とリガンドへの応用
ヒト
FcγRIが本当に
IgG1、IgG3に高い親和性で結合し、抗体精製用のアフィニティーゲルのリガン
ドへ応用できるかを検討した。ヒト
FcγRI分子の中で実際に抗体と結合する細胞外領域を組換え
FcγRI
(rFcγRI)として動物細胞用の発現ベクターpECE-dhfr にクローニングしジヒドロ葉酸レダクタ
ーゼ遺伝子(dhfr)欠損している
CHO細胞株
DXB11に遺伝子導入した。
rFcγRIは発現したがその発 現量は低いため、dhfr/MTX(メトソレキサート)を用いた
rFcγRI遺伝子の増幅を行い、その生産性 を向上させた。しかしながら、遺伝子増幅でも十分な生産性が得られなかったことから、遺伝子増
続紙 有■ 無□
(様式6号-続紙) 「課程博士用」
氏 名
ふ り が な
朝 岡 義 晴 ○
印幅し生産性の向上した細胞株をバイオリアクターにて高密度培養を行うことで
rFcγRIを大量に発現 させた。発現した
rFcγRIは
3段階の精製工程を経て精製された。精製された
rFcγRIの
IgG1、IgG3への親和性を
Biacoreにて測定したところ、それぞれ
1.59×10-10(M) 、2.81×10
-10(M)であり高い親 和性を有していることが確認された。そこで精製した
rFcγRIを親水性ビニルポリマーゲルにエポキ シ基を介して固定化した
FcRゲルを作製し、動物細胞用の培地からヒト抗体を精製したところ、高 純度に精製できることを確認した。しかしながら、FcR ゲルの安定性は低く、繰返し使用すること ができなかった。これはリガンドである
rFcγRIの安定性が低いためと考えた。
2. 大腸菌よるrFcγRI
の発現
rFcγRI
の安定性を向上させるために分子改良を行う必要がある。そこでまず分子改良に必要な微
生物での
rFcγRI発現に取組んだ。これまで
rFcγRIは大腸菌で発現した封入体からのリフォールディ
ングで得られる報告があったが、可溶性発現の方向は無かった。本研究では分泌シグナルと
rFcγRIの間に親水性のリンカーを入れることで大腸菌での可溶性での発現に成功した。
3. 進化工学によるrFcγRI
の安定化とリガンドへの応用
進化工学を用いて、rFcγRI の安定化に取組んだ。エラープローン
PCRにて
rFcγRI分子に
1~2個 アミノ酸変異を導入した変異ライブラリーを作製した。ここから熱を指標としたスクリーニングを 行い
2700クローン評価した。その結果、rFcγRI の熱安定性向上に寄与する
19個の変異を同定した。
同定した変異を
1つの分子に集積することで熱安定性を大幅に向上させた
FcRm19を作製した。こ
の
FcRm19は課題であった酸に対する安定性も向上しており、
IgG1、IgG3への結合性も有していた。
そこで、安定化した
FcRm19を親水性ビニルポリマーゲルに固定化し
FcRm19ゲルを作製した。こ のゲルで抗体精製を行ったところ、高純度に
IgG1、IgG3が精製できた。また課題であった繰返し安 定性も向上しており、抗体精製用のアフィニティーゲルとして使用できることが示唆された。
4. rFcγRI
の抗体結合領域の特定
rFcγRI