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雑誌名 明治学院大学法律科学研究所年報 = Annual Report of Institute for Legal Research

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利金(特許のロイヤルティ)の使用とは、商人より 供給された商品に属しないため、民法第125条の規 定により、その消滅時効は、15年とされる事例

著者 黄 瑞宜

雑誌名 明治学院大学法律科学研究所年報 = Annual Report of Institute for Legal Research

巻 29

ページ 131‑138

発行年 2013‑07‑31

URL http://hdl.handle.net/10723/2068

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規定により、その消滅時効は、15年とされる事例

権利金(特許のロイヤルティ)の使用とは、商人よ り供給された商品に属しないため、民法第125条の

規定により、その消滅時効は、15年とされる事例

―知的財産裁判所民事判決97(2008)年民専訴字第61号 特許権ロイヤルティ使用の請求、2012年12月28日判決―

台湾・玄奘大学・法律学系 助理教授 黄   瑞 宜

【判旨概要】

 特許権者がその技術により研究発明された各種のコンパクトディスクを製造する者は、必ず合 法的に特許権者から特権に関する授権(以下では、使用許諾と称する)を取得しなければならな い。さもなければ、特許権者の特許権を侵害することとなる。

 特許権者は特許授権契約(使用許諾契約「Licensing Agreement」)の法律関係に基づき、被 授権者(利用者)に対してロイヤルティの給付を請求することができる。

 また、特許権のロイヤルティに関する紛争は、商人により供給された商品に属するものではな いため、民法第127条第8号の規定に適用することではなく、民法第125条の規定により一般請求 権の15年の消滅時効に適用されるとしている。

【事実の概要】

一、手続きについて:

 1 .「特許法、商標法、著作権法、コンパクトディスク管理条例、営業秘密法、積体電路(集 積回路)(Integrated Circuit、IC)電路布局保護法(回路配置保護法)、植物品種および種 苗法(The Plant Variety and Plant Seed Act)あるいは独占禁止法などにより保護される 知的財産の権益により生じた第1審および第2審の民事訴訟事件、ならびにその他法律の規 定あるいは司法院より知的財産裁判所の管轄と指定される民事事件については、知的財産裁 判所に属する管轄となる。これは、知的財産裁判所組織法第3条第1号、第4号および知的 財産事案審理法第7条に、それぞれに関する条文の規定が明らかに設けられている)。

    「したがって、本件は、特許法が知的財産の権益を保護することにより生じた第1審の民 事事件に係属するものであって、前掲した条文の規定により、本裁判所には、それに関する 管轄権を有するものとする。

 2 .「次に、国際裁判管轄の合意に基づき、当事者より明示あるいはその他の特別の事情によ

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当然、排他的管轄の効力を有するものではない」としている。

    また、「本件につき両当事者は、本判決付属資料2で示したように、いわゆる係争中の特 許ロイヤルティ契約には、当事者間は本契約により生じたあらゆる争い(それに関する成立、

有効あるいは終止の問題)が審理権限を有するオランダにあるハーグ裁判所に提起すること と約定した」という。

    「ただし、原告(コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクスは電機、家電製品 のメーカーで、オランダのAmsterdamに本拠を置く多国籍企業である。以下では、Xと称 する)は、そもそも当該争いについて被授権者(利用者)の登録した管轄権限を有する裁判 所、あるいは台湾(注:本契約Territoryの定義を台湾とした)にある管轄権限を有する裁 判所のいずれかに対して提起する権限を選択することができる」。「すなわち、両当事者の約 定の間には、原告は被告が登録した所在地を裁判所として起訴する権限を有することができ る」としている。

    「まして、被告であるYの主な営業所はわが国の新竹県に設けられているとのことで、上 記の手続き第1項からすれば、本裁判所の所管に属するものである。それに、原告は、約定 したロイヤルティ契約(ライセンス契約)と異なって、オランダ裁判所の管轄をあきらめた のに対して、本裁判所に本件を提起したことは差し支えない。それは被告に対して出頭しや すく、専属管轄の規定にも反しないため、本裁判所は、本件に対して管轄権を有する」。

    本件における「係争中のロイヤルティ契約には、ただ、オランダのハーグの裁判所に契約 により生じた争いが管轄権を有すると約定しているだけであって、当該裁判所の管轄権は排 他的であることを有すると約定していない。最高法院91(2002)年度台抗字第268号の裁定 要旨によれば、それを併存した管轄の約定と解すべきであって、その他の裁判所が本来の管 轄権を行使することに影響されない」としている。

 3 .「また、わが国の渉外民事法律適用法(以下では渉外法と称する)第6条1項の規定によ れば、法律行為に債権関係が生じた場合には、その成立要件および効力は、当事者の意思に よって、その適用すべき法律を定める」としている(注:なお、注意すべきは、後で【解説】

のところで述べるように、本件における渉外法本条の規定が、民国98(2009)年7月8日に よるものであった。その後、渉外法は大きな改正を行った。すなわち、1999年に司法院は国 際私法に精通している学者や実務家等を招き、渉外民事法律研究修正委員会を結成させ、法 改正作業に着手した。2010年5月26日には、総統により華総一義字第09900125551号をもっ て公布がなされた。そして、公布された後の1年(2012年5月26日)に施行することとなっ た)。

    「両当事者は上記の条文規定に基づき、係争中のロイヤルティを約定したことで、当該契 約の効力、解釈および履行が、オランダ法によるものであるとみられる。したがって、本契 約はあたかもすべてオランダにおいて締結し、履行されるかのようであって、本件の準拠法 はオランダ法によるものである」としている。

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規定により、その消滅時効は、15年とされる事例 二、実体について:

 1.原告の主張:

    原告であるXは、これまでコンパクトディスクに関する技術、研究開発に対して、莫大な 資 本 と 人 力、 お よ び 時 間 を 尽 く し て き た(そ れ はCD-R、CD-RW、DVD+R, DVD-R、

DVD+RW、DVD-RWなどが含まれる)。それに加え、更なる莫大な資本金と時間を費やして、

各国の法律の規定にしたがい、特許権を申請し、取得するに至ったのである。

    つまり、これは、上記した特許がそれに関するコンパクトディクスの仕様を製造するのに 必要な特許であり、上記のコンパクトディクスを製造する場合には、原告からすべて合法的 に特許に関する授権を取得しなければならない。さもなければ、原告の特許権を侵害するこ ととなる。

    よって、本件は両当事者の特許権ロイヤルティの紛争にかかわるため、民法第125条の規定、

いわゆる一般的な請求権の15年の消滅時効に適用すべきである。しかして、原告と被告は個 別的なコンパクトディスクの商品および使用許諾契約の依拠が異なるため、ロイヤルティを 給付すべく行為を生じた当初の時期は、民国90(2001)年6月20日以後である。原告は民国 97(2008)年12月16日に本件を提起したので、15年の消滅時効にかからない。

    したがって、本判決について、被告は原告に対してロイヤルティ1千万元を給付すべきで あるとしている。

 2.被告の答弁:

    「本件につき、原告は被告に対して、ロイヤルティ1千万元を給付すべきであると請求す ると同時に、民国94(2005)年12月30日の日付で、1米ドル対32.85ニュー台湾ドルという 為替レートを基準とすると主張している。ただし、原告はわが国の通用貨幣の給付を請求す ることにつき、法律の依拠および当事者間には特別の約定があるか否かは明らかにしていな い」。

    また、「原告は被告に対して自分の特許を使用し、コンパクトディスクを製造することに 同意したという事実に基づき、民法第127条第8号の規定により商人より供給される商品は、

その代金請求権が2年間という短期時効に適用すべきである。ともかく、原告は起訴した時 点において、本件のロイヤルティ履行の請求がどの使用許諾契約書に基づいていたか説明を 行わなかった。つまり訴訟標的金額の請求権の依拠が明確ではなかった」。

    また、「もし、原告が被告に対して、民国94(2005)年12月30日の日付で、1米ドル対 32.85ニュー台湾ドルとの為替レートを基準としてロイヤルティ1千万元を給付すべきであ るならば、原告は明らかに民国94(2005)年12月30日における本件のロイヤルティを請求す ることができると認識した。しかして、原告が民国97(2008)年12月になって、本件を提訴 したことは、すでに2年間が過ぎているため、その請求権が消滅時効にかかり、被告として

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クを製造したことを報告した。原告もこれを了承した。ただ、原告はコンパクトディスク市 場調査機構(Understanding&Solution)の94(2005)年12月の報告により、被告が実は 8千8百万枚を製造したということを認定していた。しかし、当事者の間では、商品の数量 の製造につき、まったくコンパクトディスク市場調査機構Understanding&Solutionの調査 報告を計算の基準として約定合意していなかった。コンパクトディスク市場調査機構

(Understanding&Solution)の調査報告はどのように作成されたか?どのくらいその報告 に信憑性があるのか?それについて、原告からの説明はなかったため、原告は上記の調査報 告を計算の基準としたことは、明らかに疑義がある」。

    「原告は、多国籍企業であって、その主張された特許権は、日本ソニー社(Sony Corpora- tion of Japan)、と日本太陽誘電会社(Taiyo Yuden Co.,Ltd, Japan)との提携で享有したも のである;かつソニー社は原告に自社と太陽誘電の両社の代表として、世界中にCD-Rを製 造販売しようとする非専属の授権(転授権)を授与することを許諾した。これらの授権はあ らゆる利用者を通して適用できると同時に同様な条約の定型化特許許諾契約を具有する。そ して、そのロイヤルティの分配は、原告とソニー社および太陽誘電より約定された比率によ るものである」。

    「被告が販売したコンパクトディスクは、DVD+Rのみでその数量は、僅か4千7百万枚 であり、原告が主張した8千8百万枚とは異なる。また、原告は当該4千7百万枚の部分に ついては、ただ、ソニー社に契約された商社という立場で製造したため、本件のロイヤルティ を請求する根拠がない」と主張している。

三、本裁判所が得た心証の理由:

1 .原告が投資したコンパクトディスクに関する技術の研究開発には、CD-R、CD-RW、

DVD+R、DVD-R、DVD+RW、DVD-RW等の各種コンパクトディスクのハイテック技術が含 まれている。わが国において、それらを同時に申請し、本判決添付資料1に示された特許権を 取得した。消費者に多様的な選択肢を与えるように、当該商社らとコンパクトディスクの仕様 を共同制定した。例えば、CD-ROM、CD-R、および各種のDVD(以下では、「相関仕様」、詳 細については、本裁判所巻第34頁から第38頁を参照)については、被告もこれを認めている。

   したがって、上記のコンパクトディクスを製造する場合には、原告からすべて合法的に特許 に関する使用許諾を取得しなければならない。さもなければ、原告の特許権を侵害することと なる。しかし、これは上記したようにそれに関するコンパクトディクスの仕様を製造するのに 必要な特許である。

2 .被告は合法的にそれぞれのコンパクトディスクに関する仕様を製造した。本判決添付資料2 に示された期間において、原告といくつかの特許使用許諾契約を締結した。その中で原告は、

CD-Rコンパクトディスクに対して、新しい授権のあり方を推し出した後、原告と「VeezaCD-R コンパクトディスクの製造登録契約」を締結したほかに、民国90(2001)年6月20日のCD-R

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規定により、その消滅時効は、15年とされる事例

DISC PATENT LICENSE AGREEMENT、民国95年(2006)12月31日の Registration Agree- ment for CD-R Disc Manufacturers、民国93(2004)年1月1日のDVD+R DISC PATENT LICENSE AGREEMENT、民国93(2004)年4月7日のDVD-R DISC PATENT LICENSE AGREEMENT、民国95(2006)年12月31日の DVD+R DISC PATENT LICENSE AGREE- MENT、 民 国95(2006) 年12月31日 のDVD-R DISC PATENT LICENSE AGREEMENT、

Understanding & Solutionの民国94年12月の報告などが含まれる(本裁判所巻第39頁~163頁 に参照)。

   被告は、使用許諾期間において何度も本判決に示された添付資料2の契約に違反すると同時 に、それに関する契約の履行義務を拒絶した。あるいは原告から契約の終止、または契約満期 になってから使用許諾契約の継続を拒絶させられた(本裁判所巻第164頁~167頁を参照)。そ こで、原告は被告が上記した各使用許諾契約に給付すべきロイヤルティを主張したことを認め る。

   したがって、本裁判所は、「上記のとおりに、本件における当事者間の争点について、被告 は年間に給付すべきロイヤルティの金額は、契約にしたがって、給付された金額と符合するか 否か?すなわち、原告はまだ支払っていない1千万元のロイヤルティを被告に対して請求する 理由があるか?」と説明してから、次のように判断する。

   「しかしながら、原告が以前本裁判所に対して申し立てた保全証拠についてだが、本裁判所 は民国98年2月18日に98年度民全字第7号の裁定をもって、被告が各当該特許授権契約の期間 に製造販売したコンパクトディスクの財務資料を保全したが、同時に、本裁判所より台湾新竹 地方法院に委託した証拠の保全を執行した(本裁判所98年度民全字第7号巻第119頁~124頁、

第132頁~136頁)に参照)。また、原告は、上記の争点につき、証拠待ちの鑑定を申し立てた ため、本裁判所は,台北市会計士協会方法および会員順番名簿の順序によって○○○を鑑定人 とした」。

   「したがって、本裁判所は、鑑定人の鑑定の結果について、原告の主張した事実を認め、被 告は原告に対してロイヤルティを給付すべきである」とした。

3 .「被告は、原告からその特許の使用により、コンパクトディスクを製造する同意を得たとい う事実自体が、民法第127条第8号の規定により、商人より供給される商品であって、その代 金の請求権は2年間の消滅時効に適用されると抗弁した」。

   また、「原告が被告に対して、ロイヤルティ1千万元を給付すべきであるという民国94(2005)

年12月30日の日付で、1米ドル対32.85ニュー台湾ドルとの為替レートを基準としたので、原 告は明らかに民国94(2005)年12月30日における本件のロイヤルティを請求することができる と認識した。しかして、原告が民国97(2008)年12月になって、本件を提訴したことは、2年 間がすでに過ぎているため、その請求権が消滅時効にかかり、被告としては給付を拒否するこ とができるなどと抗弁した」。

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れている一般的な請求権である15年の消滅時効が適用される」。

   というのは、「原告と被告はそれぞれのコンパクトディスクの商品および使用許諾契約の依 拠が異なるためである。原告が、最初にロイヤルティを請求したのは、民国90(2001)年6月 20日の後に生じたロイヤルティを給付すべき行為である。したがって、原告が97(2008)年12 月16日に、本件を提起したのは、まだ15年という請求権の時効が過ぎていないので、被告は消 滅時効として抗弁する理由がない」としている。

【解説】

1.ロイヤルティについて:

 ロイヤルティとは、他人の特許発明を利用(実施)させてもらうときに、利用者(実施する人)

が特許権者に支払う使用(実施)料、つまりライセンス料のことである。特許権者は自分の特許 発明について独占的に実施(製造、販売など)することができることを言うまでもない。

 本件における被告は原告に対して支払うべきロイヤルティは、そもそも商品の売買契約と異な り、使用許諾(ライセンス)契約では、製造物責任についてはライセンシーの責任と負担におい て処理される。ライセンス製品を製造するのは、ライセンシー自身であるし、取り扱い上注視す べきことがあれば、それについて警告・指示しなければならないのもライセンシーだからである。

 しかしながら、本件につき、被告は民法第127条8号に所定した商品製造者に関する2年間短 期の消滅時効を主張したが、商人間の売買について、何故、裁判官はこれを民法第127条8号の 規定に適用できないと判断したのか?また、いったい供給された商品とは、有体物に限るか?そ れとも無体物(知的財産)も含まれるか否かについて、大変残念でありながら、何の説明も行わ れなかった。ただ、一般民事債権の15年消滅時効に適用されるとしている。

 こうすると、あらゆる外国との国際的な商事売買の締結に関する準拠法を台湾法としたすると、

とんでもないことになると思う。というのは、国境を越えて商取引が頻繁に行われ、その商人間 にある商事債権の決済期間を民事債権15年の一般時効消滅に適用すると、取引の当事者にとって、

法律関係が長期間の不安定におかれ、取引の円滑化、迅速化の妨げになるであろう。

 したがって、本件につき、供給された商品とは、無体財産を含めるべきであり、裁判官の判断 が時代に遅れているといっても過言ではないであろう。この点につき、別稿に譲り、ここで割愛 せざるをない。

2.台湾民法第127条第8号に関する規定について:

 台湾民法第125条によれば、「請求権は15年間で行使をしなければ、消滅する。但し、法律より 短い期間の定めがある場合には、その規定による」と規定している。すなわち、一般消滅時効の 期間の規定である。また、商事の場合では、民法第127条は2年間の消滅時効に関する短期間の 規定について定めている。たとえば、本件の争点となる民法第128条8号の規定によれば、「商人、

製造人、手工業人により供給された商品および産物に関する請求権については、2年間これを行 使しなければ、消滅する」と規定している。このほかにも、たとえば、民法第126条によれば、「利

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規定により、その消滅時効は、15年とされる事例

息、紅利(配当)、家賃、慰謝料、退職金およびその他1年あるいは1年に及ばない定期給付債権、

その各期給付請求権については5年間これを行使しなければ、消滅する」としている。

 台湾法で、このような債権に関する請求権の規定をそれぞれ民事と商事に区別させているのは、

まさに民商合一制を採用した結果である。

 といっても、民商合一制を採用したものの、実務においては、民事と商事をはっきりと区別し ている。とりわけ民法第127条8号に関する規定では、いままで多数の判決が行われた。たとえば、

民国31(1942)年上字第1205号(本条本号の規定では、目的物の請求権を交付することは含まれ ていない);民国39(1950)年台上字第1155号(本条本号の規定では、代金債権の発生はほとん ど日常的に頻繁に取引が行われるため、その法律関係を迅速に短期間で確定解決すべきであると している。もし、商品と産物が給付すべき債権であるなら債権者は商人、製造人、手工業人でな くても、一般消滅時効(15年)に関する規定が適用される;民国51(1962)年台上字第294号(本 件では上告人は発行された新聞を被上告人に委託し販売してもらい、その販売された代金は約束 した期間に支払ってもらった。これは、委任関係に基づき、生じられた債権であって、商人、製 造人、手工業人により供給された商品および産物といったような代金とは異なる);民国63(1974)

年2月26日最高法院民刑庭会議決議(民法第127条8号に規定されている商人あるいは産物の供 給人については、法律にはその身分および資格を限定していない。商人は一般の顧客に商品を売 り出した場合、その商品の代金の請求権は民法第127条8号に所定する2年間の短期の消滅時効 に適用すべきである);また、民国78(1989)年4月18日最高法院民刑庭会議決議(本条本号に いう商人により供給された商品とは、動産だけを指すものである)と説明している。

3.法改正後渉外民事法律適用法(以下では、渉外法と称する)に関する契約の準拠法の規定:

 法改正後第6条の規定では、「本法により、当事者の本国法に適用するとき、もし、その本国 法により当該法律の関係につき、その他の法律を定めなければならない場合には、その他の法律 に適用すべきである。ただし、本国法あるいはその他の法律は中華民国の法律に適用すべきであ る場合、中華民国の法律に適用する」としている。

 また、渉外法の改正は、国内における政治的、社会的、および経済的な環境の変化にともない、

国境を越えて国際的な取引の内容の複雑多様化しているという国際的な趨勢の変化に応えるため のものであった。

 とりわけ、渉外法における契約の準拠法について、今回改正の最大な特徴は、契約の当事者が 準拠法の選定がないとき、「最密接関係地法(most significant relationship)」、と「特徴的給付(特 徴性履行)の理論(doctrine of characteristic performance)」の導入である。したがって、契約 の準拠法に関する規定は第4章の債に置かれる。

 すなわち:①当事者自主原則に基づき、準拠法の選択(第20条1項):

 第20条1項の規定では、「法律行為は債の関係として生じる場合には、その成立及び効力が、

当事者の意思によりその適用すべき法律を定める」としている。すなわち、当事者が契約自由の

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ある。しかし、その意思が黙示的な合意に含まれるか否か、次の同条2項において述べる。

②当事者間による準拠法の選択がない場合、最密接関係地法による(第20条2項):

 また、当事者は前項の規定により、準拠法を選択せず、あるいはその明示した意思は所定した 適用すべく法律が無効となった場合には、渉外法が最も密接な関係地法主義を導入された。すな わち、同条2項では、「当事者は明示の意思が明らかでない、あるいはその明示の意思が所定し た適用すべき法律により無効になるとき、最も密接な関係がある法律による」と明文規定してい る。

 しかし、同条項は、当事者による準拠法の選択は、黙示的な合意をもってすることができるか 否かについて、明らかに定めていない。同項の文言の内容をよく吟味すれば、明示の意思に限ら れるのであろう。

 この点につき、草案説明によれば、本条2項は、ドイツ民法施行法第28の規定を参考し、最密 接関係地の原則を採用したものである。また本条の適用上を複雑にならないように、法改正前の

「当事者は意思が不明」という用語を「当事者は明示の意思が明らかでない、あるいはその明示 の意思が所定した適用すべき法律により無効になる」に変更され、前項にいう当事者の意思表示 は明示の意思に限るということを強調したいだけである。

③当事者による準拠法の選択がない場合 最密接関係地法の推定(第20条3項):

 同条第3項の規定では、「法律行為より生じた債務の中に、当該法律行為の特徴に足す場合には、

当該債務を負担する当事者の住所地の法は、最も密接な関係があると推定する。但し、不動産に つき、なされた法律行為は、その所在地の法を最も密接な関係があると推定する」としている。

本条項は、いわゆる「特徴的給付(特徴性履行)の理論(doctrine of characteristic perfor- mance)」の導入である。

 草案説明によれば、本条項は1980年ローマⅠ条約4条に参考したものである。特徴的給付の理 論は、契約上、その契約を特徴づける給付を行う側の常居所地や営業所所在地の法律を準拠法と するというものである。

参考文献:

1.邱聡智・民法研究・五南図書出版社・2000年

2.民法、刑法、刑事訴訟法法規彙編―新旧条文対照表曁修正説明(双榜文化事業出版社・1999年)

3.劉春堂・判解民法債編通則(三民書局・2010年)

4.黄立 等共著・民法債編各論(元照出版社・2004年)

5.黄瑞宜・中華民国(台湾)における民商合一制の展開

  ―台湾民法債編の性格および日本商行為法のあり方―(法学ジャーナル第23号)

参照

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