• 検索結果がありません。

Microsoft Word 認知症高齢者のケアマニュアル.doc

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Microsoft Word 認知症高齢者のケアマニュアル.doc"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1.目的

「『高齢者が、尊厳をもって暮らすこと』を確保することが最も重要である。 またその中で、「本人なりの生活の仕方や潜在する力を周囲が大切にし、その人の人格を尊重してその 人らしさを支えることが必要であり、『尊厳の保持』をケアの基本としなければならない」ともうたわ れています。そのことは、本人主体の生活の実現ということであり、パーソンセンタードケア (T.Kitwood)の実現ということではないでしょうか。利用者が、自分の意思を伝えそれをサポートす る意識・体制、もし伝えることが困難なら、我々ケアに携わるものが推察し、実現・継続していくこと が大切です。ユニットケアなどの流行のスタイルをもとめるのではなく、常に人間の多様性と本人の意 向や満足を第一に考えるケアを目指すところにきています。本人が、私たちの都合により、生活を変え るのでなく、本人の生活に合わせて私たちケアに携わるものの、考え方、知識、技術、体制、環境を変 えていく必要があります。

2.責任

認知症の利用者等へ対応業務の責任は以下の通り。 施設長、介護主任、生活相談員

3.状態に合わせたケアポイント

状態 ケアポイント 1.認知症を正しく理解する。 ・定義「いったん発達した知能が様々な原因で持続的に低下した状態で ある。認知症とは、通常、慢性あるいは進行性の脳の疾患によって生 じ、記憶、思考、見当識、概念、計算、学習、言語、判断等多数の高 次脳機能の障害からなる症候群である。」(WHOの定義より) ・認知障害により、社会生活や職業上の機能に支障をきたす状態・症状。 認知とは、覚える、見る、聞く、話す、考えるなどの知的機能を総称 する概念であり、記憶機能の低下のほか、失語(言語障害)、失行(運 動機能が正常にもかかわらず、運動活動を遂行することができない)、 失認(感覚機能が正常にもかかわらず、物体を認知同定することがで きない)、実行機能障害(計画を立てて、それを実行することができな い)などの症状が見られる。 2.認知症の人を正しく理解す る。 ・認知症の人は、記憶障害などが進行していく一方で、感情やプライド は保持されるため、外界に対して強い不安を抱くと同時に、周りの対 応によっては、焦燥感、喪失感、怒りなどを感じやすくなる。このた め、認知症高齢者にこそ、その人の人格やそれまでの生活を尊重する という「尊厳の保持」の姿勢をケアの基本とする必要があります。 ・認知症の人の症状や特性を正しく理解する。(例えば「何もわからない」

(2)

状態になってしまっているのではない。) 「私たちに希望をください。私たち一人ひとりが、自分の内なる豊か さを持ったかけがえのない存在であることをわかってください。」「私 たちに耳を傾け、きめ細かく対応をし、私たちの気持ちを認めて、価 値ある人間として敬意を示してくれることが何よりも助けになりま す。」(クリスティーン・ブライデンさん) ・認知症の人の場合、自分が出来ていたことが出来なくなったり、思う ように言語表現できなかったりする体験を多くすることによって、自 分がどうなっていくのかという不安が強いと言われています。特に初 期の頃は、活動が低下したり、怒りっぽくなったり、性格が変わって しまったように見えます。自分でできていた家事や生活の中での用事 をこなすことが出来なくて、実は本人が一番悩んでいるのです。 3.認知症の人の行動障害を正 しく理解する。 ・認知症の人は、その病気の進行に伴って、さまざまな混乱を起こし始 めます。その混乱した行動は、私たち援助者の体験世界とは違った行 動のため、「問題行動」と呼ばれてきました。しかし、この一連の行動 は、認知機能の障害が原因で起こる混乱した行動であることから、「行 動障害」と呼ばれるようになりました。「物忘れ」「判断力の障害」(基 本症状)は、ほとんどの認知症高齢者にみられますが、「行動障害」は 全ての人におこるわけではなく、基本症状に加えて、その人を取り巻 く全ての環境による不安感やストレス、身体不調などの様々な要因が 加わって起こってきます。 4.認知症の人との接し方 ・コミュニケーションは、社会生活を営む人と人との感情や気持ちを伝 え合うこと。言葉だけに限らず、表情や身振りや手や身体にやさしく 触れるなど、様々な方法を活用してお互いの心を通わせることをいい ます。良いコミュニケーションは、親しみや安心、心地よさをもたら し、互いの信頼関係をもたらしますが、悪いコミュニケーションには、 相手に対し不快や怒りなどの感情を起こさせる場合もあります。認知 症の高齢者と良いコミュニケーションを図ろうとする場合には、相手 幻覚 妄想 徘徊 異食 攻撃的言動 危険行為 夕方の不穏状況 不潔行為 性的逸脱行為 ケアへの抵抗 行動障害(BPSD) 不安感 不快感 焦燥感 被害感 体調不良 ストレス 物忘れ 見当識障害 判断力障害 基本症状 認知機能障害 出典 加藤信二「痴呆による行動障害(BPSD)の理解と対応」

(3)

に対する思いやり、プライド、気持ちに対する十分な配慮の上で、言 語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションを場面、場面 に応じて使いこなすことが必要です。 コミュニケーションについて 1.基本姿勢 ① 同じ目線の高さで話したり聞いたりする。 ② 温かいまなざしと優しい仕草で接する。 ③ 相手の気持ちを受け入れ、聞き上手になる。 ④ 人生の先輩として尊敬の気持ちで接し、自尊心を傷つけない。 ⑤ 言葉や行動の背景にあることを理解する。 2.本人の世界と私たちの世界 のずれを理解する。 認知症の人は、記憶の障害、見当識の障害、判断力の障害から、現在と 過去の記憶があいまいになってきます。追想するときに過去の体験がよ り鮮明になり、現在とはずれた言動を示すことがあります。また、欠落 した記憶を埋めるために事実と反したことを答えてしまうことがありま す(作話)。そういう現在と今認知症の方の体験世界のずれは、様々なス トレスや環境により、様々な行動の障害に進んでいくことがあります。 私たちケアに携わるものは、「なぜそのようなことが起こったのか」とい う原因を探り、その体験世界を見極め、接することが必要になります。 もし私たちケアに携わるものが、否定したり、現実を認識させようと無 理強いすることで、認知症の人は、混乱し、自尊心を傷つけられ、不安 にかられることになります。その人の体験している世界を大切にし、受 け止めていくことが大切です。 3.非言語的コミュニケーショ ンの大切さ。 人と人とのコミュニケーションは、言葉だけではありません。その人の 持つ雰囲気、しぐさ、表情、まなざし、手に優しく触れるなど言葉を用 いないコミュニケーションも親しみや信頼関係を築くための大切な方法 です。認知症が重度となり、言葉による意思疎通が困難になった場合で も、親しみを込めた言葉以外のコミュニケーションにより、互いの信頼 関係や絆をつくることはできます。 4.人生の先輩から学ぶことの 大切さ。 援助する側のスタッフが高齢者から「昔とった杵柄」としての知識や技 術を教えてもらったり、手ほどきを受けたり、しようとする姿勢と、教 え子のような役割を演じるということは、本人の自信の回復や意欲回復 につながる大切な視点であると思います。本人が一生懸命打ち込んだ趣 味、活動、熟練した技術は、その人それぞれに違い、またその人となり を感じさせてくれるものです。それを教えてもらうという行為を通じて、 楽しい思い出、働き盛りの時代を生き生きと想起させることにもつなが ります。若いスタッフが人生の先輩から教えられることで、高齢者の意 外な能力を再発見し、高齢者に対する新たな尊敬の気持ちが生まれると したら、互いの関係もさらに深まることでしょう。スタッフと利用者と いう立場から、人生の先輩、後輩という立場に置き換えることは、新た な視点から互いの関係性を見つめる良い機会になります。 5.輝いていた時代、かけがえ のないものをコミュニケーシ ョンに織り込む。 人それぞれの人生において、楽しみ、喜び、かけがえの無いものは多様 です。一人ひとりの人生をひもといて、一つ一つ見つけ出し、そしてそ れらを会話や活動の中に織り込んでいくことの重要性を理解することが 出来るでしょう。また、高齢者が生きてきた時代、つまり、大正~昭和

(4)

の激動の時代を生きてきた高齢者の社会的背景、学校教育のあり方、風 習や風俗などを基盤とした社会的な価値観などを理解しようと努めるこ とが大切で、そのことによって、この世代の方々とのコミュニケーショ ンの質がより一層高まることと考えられるからです。 6.行動障害の背景にある心の 状態を理解する。 行動障害自体、物忘れが主な原因であるとしても、その背景には、その 時の援助者との人間関係、生活の状況や心理状況を映しだしているとも 考えられます。周囲になじみのいない寂しさ、不安、孤独、外部の人が 自分のスペースに出入りする嫌悪感やストレスなど、本人を取り巻く生 活全体が行動障害の背景にあることも考えられます。そのような本人の 気持ちを十分理解したうえで、本人へのいたわり、気分転換への配慮、 その気持ちを共有しその気持ちを伝えることも大切です。また、家族な どと協力しながら、できるだけ本人と一緒に過ごす時間を多く持つよう に心がけ、安心してもらえるような対応やコミュニケーションを心がけ ることが大切です。本人の気持ちにゆとりや安心感が得られることで、 いつの間にか消失していくこともあります。 私たちケアに携わるものは、常に自分たちの言動、表情、しぐさ、振 る舞いや偏見など、その人を取り巻く全ての環境を再度点検していく必 要があります。 7.不安や混乱の要因を五感で 感じ取り対応する。 この時期の悪いかかわり方として、言動による行動制限があります。混 乱を鎮めようと努めると同時に転倒させないよう配慮します。「どこへ 行くのですか」「ちょっと待っててください」「座っていてください」な ど無意識のうちに言葉や態度による行動制限を行い、本人の反発や意欲 低下を招くことがあります。例えば徘徊などの行動を考える場合、なぜ このような行動を起こすのかを考えることが大切です。その行動の全て に理由があると考える必要があります。また認知症高齢者は、環境の変 化に適応することが難しくなっており、そのダメージは大きいと考えら れています。認知症の人の表情、視線、顔色、体温や汗、臭い、痛み、 言動、気力、体力は一瞬一瞬変化していくと理解せねばなりません。そ の一瞬一瞬に私たち専門職は人間としての五感を最大限働かせて、その 人の置かれている心と体の状態を理解し対応しなければならないのでは ないでしょうか。 8.物忘れはあるが、情緒や感 情 は 豊 か な 人 と し て か か わ る。 認知症の主症状で記憶の障害があります。いわば物忘れです。そのこと が、わたしたちケアに携わるものに、「何もわからないから」「すぐ忘れ るから」という偏見を生み、そして言動などによる行動の制限を強いて しまうことがあります。それが更なる不安や焦り、不信感をあおること となります。もしかしたらそれらの経験が、その方の意欲をそぎ、あき らめることにつながるかもしれません。確かに認知症の方のほとんどは 短期記憶の障害により、今体験したことは忘れてしまうかもしれません。 しかし、体験したうれしさ、楽しさ、満足感、安心感…は残っていると 言われ、又そのことが、過去の経験や感情を想起させ様々な感情を導い ていくのではないでしょうか。その人たちそれぞれの経験してきた、大

(5)

切な思い出やプライドを思い起こすことになるのではないでしょうか。 またそのうれしさなどは人それぞれで、そのことが「その人らしさ」で はないでしょうか。 9.私たちケアに携わるものが 困ったなと思ったとき。 認知症高齢者は、様々な要因で、人それぞれ違う行動障害を示すことが あります。このことは、それぞれ違う生活様式や性格、経歴、習慣など が反映されてくると言われていますので、その行動障害に私たちケアに 携わるものが直面し、困ったなと思ったとき、「こういうふうにすればい い」という決まった方法では、対応しきれないことが多くあります。だ からそういう時こそ、パーソンセンタードケアに立ち返り、その人の経 てきた人生や性格、大切にしている人や家族、地域、習慣や役割などを 良く知った上で、今のその人の置かれている環境や、体験世界を理解し、 そして一人ひとりに合わせられるよう、考えられる要因を改善していく 感覚が必要になってきます。答えは一つではなく、要因として考えられ る多くの可能性の中から、一つ一つクリアしていくことが大切です。

4.特記事項

参考文献 新しい認知症介護(認知症介護研究・研修東京センター)中央法規 ケアプランに活かすICFの視点(諏訪さゆり・大瀧清作)日総研

参照

関連したドキュメント

断するだけではなく︑遺言者の真意を探求すべきものであ

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の