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密教文化 Vol. 1995 No. 192 006+大塚 裕晤「K. マンスフィールドとL. ハーン (小泉八雲)‘little’と‘miniature’ PL134-L99」

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(1)

密 教 文 化

K. マ ンス フ ィ ール ドとL. ハ ー ン(小 泉 八 雲)

1ittleとminiature

-「 園 遊 会 」と 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼

」-大

1 Katherine Mansfield(1888-1923)は イ ギ リ ス の女 流 短 篇 小 説 家 で ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド生 れ、 ロ ン ド ン のQueens collegeで 教 育 を 受 け、JohnMid-dletonMurryと 結 婚、34歳 で、 パ リ近 郊 のFontainebleau1)に 残 し た。 一 方LafcadioHearn(1850-1904)に つ い て 再 考 に な る の で 多 く を 語 ら な い。 両 作 家 は 全 然 交 流 が な い。 しか し、 同 時 代 の 作 家 で あ る こ と は 事 実 で あ る。 そ して、 マ ン ス フ ィ ー ル ドも ハ ー ン も有 名 な 短 篇 小 説 家 と 言 え る。 た だ し、 ハ ー ン は原 話 か ら創 作 して い く傾 向 を も っ た 作 家 で あ る。 原 話 の 創 作 過 程 は、 ハ ー ン の 妻 ・節 子 未 亡 人 の 話 し よ り い か に 厳 し い も の で あ る か が わ か る。 「あ の 話 は ま だ も う し ば ら く待 た ね ば な り ま せ ん。 多 分 一 カ 月、 一 年、 い や 五 年 も、 私 は一 っ の 物 語 を 書 き 終 え る ま で に七 年 も の 間、 引 き だ し の 中 に し ま っ て お い た こ と が あ り ま し た。」2)ハ ー ン の 中 で 原 話 が 完 全 に 発 酵 す る ま で 書 き上 げ な か っ た の で あ る。 今 回 取 り上 げ る 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 に も秘 め ら れ た 創 作 過 程 が あ る で あ ろ う、 今 回 は 文 体 論 の 見 地 よ り"little"と"miniature"の 世 界 を 考 察 す る。 1)研 究 社 英 米 文 学 辞 典 斎 藤 勇 監 修 西 川 正 身 ・平 井 正 穂 編 集(第 三 版)p. 815 1985. 2. 28 2)ラ フ カ デ ィ オ ・ハ ー ン研 究 一 愛 と 女 性 と 一 白 神 栄 子 著p. 77旺 史 社1993. 11. 30 (cf. ヨ ネ ・ノ グ チILafcadio Hearn in Japan)

(2)

一 方、 キ ャサ リン ・マ ンス フ ィ ール ドは、 ロ ン ドン物 で な く、故郷 ニ ュー

ジー ラ ン ドの愛 す る人 達 や風 物 を描 けば 「水 を得 た魚 」 の 感 が あ り、The

GardenParty「

園遊 会 」 は絶 品 で あ る。若 い女、 少 女、 子 供、 老 嬢、 老

女、 老 人 の心 情 を うま く描 い た、 感 情 移 入 し、「そ の 心 の 中 に 入 った り 出

た り しな が ら内面 独 自、 描 出話 法 を用 い、 現 在、 過 去、 未 来 を 自由 に往 来

して、 ジ ョイ ス や ウ ル フよ り も先 きに、 意 識 の流 れ の手 法 を創 り出 し、か

けが え の な い言 葉 を 選 び、 人 物 の心 の リズ ム に 合 わ せ、 適 確 なsimileや

symbolを

用 いて、 独 特 の文 体 を構 成 して い ま す。」3)こ こで は 「園 遊 会 」

の 中 の"Little"の

表 現 性 に ポ イ ン トを焦 って み た。 彼 女 は文 学 史

上、Che-khov(チ

エ ホ フ)の 面 影 を伝 え る ユ ニ ー ク な短 篇 作 家 な の で あ る。

この点 にっ いて、 江 上 照 彦 氏 は次 の よ うに言 って い る。 「彼 女 は チ エ ホ

フが好 きだ った し、チ エ ホフの短 篇小 説 に学 ぼ うと した ことは疑 いな い。… …

(中 略)……少く

と も修 辞 と用 語 の点 で は、 マ ンス フ ィー ル ドは チ エ ホ フ

よ り、 は るか に叙 情 的 で あ るよ うだ。」4)さ らに、 統 一 性、 形 式 美、 内 包

情 緒 の集 中 的表 現 を叙 情 詩 の特 色 と して、 マ ンス フ ィー ル ド自身 の言 葉 で

言 え ば 「お そ ら く詩 で は な い。 ま た散 文 で も な い。 たぶ ん 一 種 独 特 の散 文

と も い うべ き もの」 な の で あ る。

マ ンス フ ィー ル ドとハ ー ンと は 同 時代 の作 家 と は言 え、 一 方 は女 流 作 家

で あ り、 全 然 共 通 点 が な い よ うに思 え るが、 マ ンス フ ィー ル ドの 「

園遊 会」

とハ ー ンの 「あみ だ 寺 の比 丘 尼 」 に お い て、 不 思 議 な共 通 点 が あ る。 あみ

だ寺 の 境 内 と園 遊 会 の 庭 の相 違 点 も見 る の で あ る。 この あ み だ 寺 の 比 丘 尼

が マ ン ス フ ィ ール ドの 感 性 を も っ て い る。 そ もそ も 「

比 丘 尼 」5)の語 は、

周 知 の如 く出 家 した女 性 を 指 す、 そ れ故、 ハ ー ン は原話 を う ま く書 き上 げ

3)写 真 と文 によるマ ンス フィール ド雑記録

大澤銀作著p. 42文 化書房博文社

1989.

10.

14

4)「 園遊会」江上照彦訳 角川文庫pp. 266-267昭35. 4. 30

5)仏 教 と女性(「道元禅 師の比丘尼 ・女人観」吉 田道興)p. 79日 本仏教学会編

1991.

10. 1

K. マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(3)

密 教 文 化 た の で あ る。 マ ン ス フ ィ ー ル ドの 女 性 の 感 性 と比 丘 尼(お と よ)の 感 性 が 不 思 議 に 一致 して い る の で あ る。 イ. 1ittleとminiatureの 世 界 ロ. 歌 の 引 用 ハ. 音 感 イ. littleとminiatureの 世 界 っ い て は 後 で 論 じ る と し て、 ロ. 歌 の 引 用 で は 次 の 如 く で あ る。 「園 遊 会 」 で は、 ピ ア ノ に 合 わ せ て 次 の

歌6)-この世 は佗 び し

涙 一

溜 息

愛 は うつ ろ う

この世 は佗 び し

溜 息

愛 は うつ ろ う

い ざ………さ らば/

こ の 世 は 佗 び し 望 み む な し く 夢 力>-う っ っ カ〉

そ れ に対 して 「あみ だ 寺 の 比丘 尼 」 で お とよ が 出雲 の国 の わ らべ歌7)を 子

供 に歌 って 聞 か せ るの で あ る。

の の さん(あ

るい は、 お月 さ ん)い

くっ

十 三

こ この っ

そ れ は ま だ若 い よ

わか い も

道 理

赤 い い ろ の

帯 と

白 い い ろ の

帯 と

腰 に しゃん と

結 んで

6)「 園 遊 会 」 仏 教 と女 性(「 道 元 禅 師 の比 丘 尼 ・女 人 観 」 吉 田道 興)p. 70日 本 仏 教 学 会 編1991, 10. 1 7)心 一 日本 の 内 的 生 活 の 暗 示 と影響 一 ラ フカ デ ィオ ・ハ ー ン著 平 井 呈 一 訳pp. 72-73岩 波 文 庫1951. 2. 10

(4)

馬 に や る い や い や 牛 に や る い や い や こ の わ ら べ 歌 の 後、 「水 色 の 夜 」 と 「幾 里 も の 」 水 田、 そ し て、 か え る の 一 大 合 唱 と 叙 情 的 世 界 が 広 が る の で あ る。 ハ. 音 感 お と よ は か え る の 言 葉 を 子 供 に 言 っ て き か せ る 「ほ らね、 メ カ ユ イ、 メ カ ユ イ。 目 が か ゆ い よ。 ね む くな っ た よ っ て、 蛙 が 鳴 い て る だ ろ。」 こ の 「メ カ ユ イ 」 はOnomatopoeia〔onoumeetoupie〕[擬 声(語)]で あ る。 そ の 他 の 擬 声 語8)を 調 べ る と、 山 鳩: ク ル ー ク ル ー(korup-korup) 土 鳩: オ ワ オ、 オ ワ ォ(owad, owad) 蝉: ミ ン ミ ン、 ジ ー ジ ー、 カ ナ カ ナ

(wheeze) (flute) (tinkle)

一 方、 マ ン ス フ ィ ー ル ドの 前 述 の 歌 の ピ ア ノ を ボ ー ン/タ、 タ、 タ、 テ、

タ/と 擬 声 語 で 表 わ して い る。 マ ン ス フ ィ ー ル ドの 他 の 擬 声 語9)を 調 べ る と、

booh〔bu:〕 ぶ 一 〔け ん お ・軽 べ っ を 表 わ す 〕 Zoom Zoom baa-baaing(メ エ ー、 メ エ ー) bah〔ba:〕 ば あ、 へ ん 〔軽 べ つ ・に 張 し、み な ど 〕 Baa/Baaa/creak(ギ ィ ギ ィ)

こ れ ら の 擬 声 音 の ほ か に ハ イ フ ン の 入 っ た 語 が 多 い の が 特 徴 で あ る。 Lid. Lid-lid-lid-, /Qua. Qua-qua-qua-qua-,

moo-e-koo-e-oo-e-a/mooe-ooo-er/ Pom Ta-ta-ta Tee-ta.

(ボ ー ン タ、 タ、 タ、 テ、 タ)〔 前 述 の ピ ア ノ の と こ ろ 〕

8) 同 書p. 76

9)"Little"の 表 現 性-Katherine Mansfieldの 場 合 一 大 塚 裕 曙p. 69大 阪 商 業 大 学 論 集 第34号(語 学 ・文 学 特 集)1972. 11 K・マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(5)

密 教 文 化 Coo-roo-coo-coo-coo Roo-coo-coo-coo/Pit-pit-pit も っ と 短 か い も の も あ る が、 こ こ で は 上 述 の ピ ア ノ 音 ボ ー ン タ、 タ、 タ、 テ、 タ に 注 目 し た。

再 度 「園 遊 会 」 の 中 の 「こ の 世 は 佗 し い 」(This Life is Weary10))の

原 文 を 示 し て み る。

This Life is Wee-ary, (こ の 世 は 佗 び し)

A Tear-a Sigh, (涙 一 溜 息)

A Love that Chan-ges, (愛 は う っ ろ う)

The Life is Wee-ary, (こ の 世 は 佗 び し)

A Tear-a Sigh, (涙 一 溜 息)

A Love that Chan-ges, (愛 は う っ ろ う)

And then…good-bye (い ざ …さ ら ば)

But at the word "Good-bye," and although the piano sounded more desperate than ever, her face broke into a brilliant, dreadfully unsym-pathetic smile. "Arent I in good voice, mummy." she beamed.

しか し、 こ の 「さ ら ば 」 と い う言 葉 の と こ ろ で、 ピ ァ ノ は こ と さ ら に 絶 望 的 に 響 い た の で あ っ た が、 彼 女 の 顔 は ほ こ ろ び て、 輝 か し い、 音 に は お

よ そ そ ぐわ な い 微 笑 が 浮 ん だ の で あ っ た。

「い い 声 で し ょ う、 母 さ ま 」 彼 女 は に っ こ り笑 っ た。 The Life is Wee-ary, (こ の 世 は 佗 び し)

Hope comes to die, (望 み も む な し く) A Dream-a Wa-kening, (夢 か-う っ っ か)

2節 と3節 目 の 間、 「さ ら ば 」 が 絶 望 的 に 響 く矛 盾 に 満 ち て い る が、 微 笑 が ほ こ ろ ぶ。 そ し て 母 に 向 っ て 「い い 声 で し ょ う」(beam)明 る く ほ ほ え む。 再 び 歌 が う た わ れ、 そ の 中 にdie死 と い う言 葉 が 表 わ れ る。good

10) MODERN BRITISH SHORT STORIES

(The Garden

Party

by

(6)

bye/の と こ ろ で 複 雑 な 表 情 一 絶 望 と 微 笑 が 交 差 す る。 こ の 表 現 の 裏 を 探 ぐ る こ と が 必 要 で あ る。 文 体 と は コ イ ンで あ る。 そ の 裏 を 知 る こ と は不 可 欠 で あ る。 「水 晶 の よ う に 澄 ん だ 」11)境地 を 解 明 し な け れ ば な ら な い。 マ ン ス フ ィ ー ル ドが こ の 「園 遊 会 」 を 書 い て い た 頃 の 日記12)に よ れ ば, 次 の よ う な 一 節 が あ る。 「……お茶 の あ と疲 老 を 感 じ て 仕 事 を す る か わ り に や す ん で し ま っ た。…… 私 は 悪 い 事 を し た と い う感 じ に さ い な ま れ る。 し か し 同 時 に 休 息 す る こ と が 私 に 出 来 る一 番 よ い こ と だ と い う こ と も知 っ て い る。 ……地につ い た 堕 落 の し る し が 私 を 追 い か け て い る。 私 は 水 晶 の よ う に 透 明 に な う こ と が 出 来 な い。 な か ん ず く勤 勉 に か け て い る。 ……」 1922年2月23日 マ ン ス フ ィ ー ル ド は 「園 遊 会 」 出 版、 そ の7月 に は 精 神 的 に 不 安 定 に な り、 筆 も 進 ま ず、 最 後 の 作 品The Canary(「 カ ナ リ ヤ 」) が 出 来 上 る。1923年1月9日、 喀 血 し、1月12日Avon13)の 共 同 墓 地 に 埋 葬 さ れ る。 こ の 「園 遊 会 」 の 中 で 歌 わ れ る 「こ の 世 は 佗 し い 」 と い う歌 は、 今 ま さ に 燃 え 尽 き よ う と す る キ ャ サ リ ン ・マ ン ス フ ィ ー ル ドの 悲 鳴 で あ っ た の で は な い か、 従 っ て 「さ ら ば 」 と い う 言 葉 で 感 き わ ま っ て、2節 目 と3節 目 で 前 述 の 如 く、 絶 望 か ら微 笑 が 生 ま れ る と い う葛 藤 の 中 で の 一 瞬 の や す ら ぎ が あ る。 こ れ が 水 晶 の よ う な 透 明 な 境 地 な の で あ る こ と は 前 述 の 通 り で あ る。 さ ら に、 「こ の 世 は 佗 し い 」 の 一 言 一 言 に ポ ー ズ が っ け ら れ て い る。Wee-ary14)(Weary)〔 佗 し い 〕、(わ-び し い)/Chan-ge(Change)〔 う っ ろ う〕 (う つ ろ-う)/Wa-king(Waking)〔 うっ っ〕(う っ-っ)と 情 緒 的 に 表 現 さ れ て い る。 こ の よ う に 考 察 し て く る と、 マ ン ス フ ィ ー ル ドの 文 体 と い 11) マ ンス フ イ-ル ド雑 記 録p. 41 12) K. MANSFIELD.20世 紀 英 米 文 学 案 内p. 41研 究 社1966.9.30「 ジ ャ ー ナ ノレ」p. 255 13) 同書p. 8 14) Littleの 表 現 性p. 70 K ・ マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(7)

う の は、Crystal Cut Style(水 晶 カ ッ ト文 体)と 言 え る。 歌 で も語 で も、 感 き わ ま っ て ポ ー ズ が 加 え ら れ、 歌 や 語 の 感 動 が 高 ま り、 読 者 の 心 に 水 晶

の よ う に 透 明 な 心 境 が 伝 わ っ て く る の で あ る。

一 方、 ハ ー ン の 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼-」(THE NUN OF THE TEMPLE

OF AMIDA)の 中 で 歌 わ れ る 出 雲 の わ らべ 歌15)を ハ ー ン は 次 の よ う に 英 訳 して い る。

Nono-San, の の さ ん(お 月 さ ん)

Little Lady Moon,

How old are you い く つ

"Thi

rteen days,- 十 三 こ こ の っ

Thirteen and nine."

That is still young, そ れ は ま だ 若 い よ

And that reason must be 若 い も 道 理

For that bright red obi, 赤 い い ろ の 帯 と

So nicely tied,

And that nice white girdle 白 い い ろ の 帯 と

About your hips. 腰 に し ゃ ん と 結 ん で

Will you give it to the horse 馬 に や る

Oh, no, no い や い や

Will you give it to the cow 牛 に や る

Oh, no, no い や い や

ち な み に、 こ の ハ ー ン の 「心 」 も ドイ ツ 語 訳16)が あ り、 ハ ー ン が 世 界 的 作 家 で あ る こ と を 物 語 っ て い る 証 拠 で あ る。 参 考 に挙 げ て お く。

15) LAFCADIO

HEARN "KOKORO" Hints and Echoes of Japanese

Inner

Life p. 75 CHARLES

E.TUTTLE

COMPANY,

1972

16) FRANKFURT

A.MAIN LITERARISHE

ANSTALT

RUTTEN

&

LO-ENINO 1906 p.105 cfタ ウ フ ニ ッ ツ社. 1907. 4 (ラ フ カ デ ィ オ ・ハ ー ン ジ ョ ゼ フ ・ ド ・ス メ 著)

(8)

Nono-San,

kleine Mondfrau,

wie alt bist du

Dreizehn Tage,

dreizehn and neun.

Noch so Jung

Ja, well du den Gurtel tragst,

den schonen roten Gurtel (obi),

so prachtig geknupft2

um deine Huften.

Willst du ihn dem Pferd geben

Nein, o nein

Willst du lhn der Kuh geben

Nein, o nein

Und in die blaue Nacht stieg aus all den feuchten meilenweiten

Feldern

der groBe, weiche wogende Chor, der die ureigenste Stimme der Erde

selbst zu sein scheint, -der

Sang der Frosche. Und O-Toyo deutete

dem Kinde den Sinn des Sangs:

Me Kayui, Me Kayui, meine Augen

brennen mich, ich will schlafen.

Das Waren gltckliche Tage and Stunden

こ の ドイ ツ 語 訳 で もMe Kayui, Me Kayui(目 が か ゆ

い)とOnomato-peia(擬 声 語)に な っ て い る の は 面 白 い、 こ の 蛙 の 大 合 唱 のchantが、 す な わ ち 大 地 の 声(voice)で あ る と い う大 自 然 の 中 に す べ て 溶 け 込 ん で 大 ら か に 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 が 受 け 入 れ て い る と い う す ば ら し さ は 実 に ダ イ ナ ミ ッ ク で 宗 教 的 で あ る。 した が っ て、 上 述 の ドイ ッ 語 訳 の 下 に 雲 海 の よ う な 神 秘 的 な デ ザ イ ン が 施 さ れ て い る。

「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 の お と よ は あ み だ 寺 の 境 内 でthe children of the children of the children17)と 共 に 遊 ん だ と 書 か れ て い る の で、 マ ン ス フ ィ ー

K・マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(9)

ル ドが34歳 で 他 界 し た の に 比 べ る と3倍 近 く 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 と し て 幸 せ な 寿 命 を 全 う し た の で あ ろ う。little とminiatureな 世 界-「 園 遊 会 」 と 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 の 境 内 で 人 生 の 明 暗 が 展 開 さ れ る の で あ る。 2 マ ン ス フ ィ ー ル ドの 「園 遊 会 」 の 冒 頭 を 考 察 し て み る と、crystal cut styleの 一 端 を 窺 え る の で あ る。

And after

all the weather

was ideal.

They could

not

have had a

more perfect

day for a garden-party

if they had ordered

it. Windless,

warm,

the skv without

a cloud,18)

「で、 っ ま り、 天 気 は理 想 的 だ っ た。 た と え 注 文 し て み た と こ ろ で、 こ れ よ り園 遊 会 向 き の 日 は 手 に 入 ら な か っ た で あ ろ う。 風 は な く, 暖 か で、 空 に は 一 点 の 雲 も な い19)。」

下 線 部 はCrystal Cut Styleで あ る。 文 と し て は 破 格 的 で あ る が、 文 が 高 ま る ク ラ イ マ ッ ク ス で の み、 も っ と も効 果 的 な 名 文 と な り う る、 も し、

It was windless, warm, and the sky was without a cloud (Modern

Bri-tish Short Stories p. 112)の よ う な 文 法 的 な 文 な ら、 な ん ら の 感 動 も伝 わ ら な い の で あ る。

こ の 続 き の 文 は 色 彩 感 覚 が す ば ら し い。

Only the blue was veiled with a haze of light gold, as it is sometimes

in early summer.

The gardener

had been up since dawn,

moving

the

lawns

and sweeping

them,

until

the grass

and the dark

flat

rosettes

where the daisy plants

had been seemed to shine.20)

17) The nun of the temple of Amida p.85

18) Modern British

Short stories p.30

19) 園遊 会 p. 62

(10)

「た だ、 そ の 蒼 さを 初 夏 にお りお り見 か け る よ う に、 淡 い金 色 の もや が

あ お って いた。 夜 明 けか ら庭 師 が 立 ち現 わ れ て、 芝 生 を 刈 り、掃 き、 もう、

芝 草 か ら、 さ き ご ろ まで ひ な菊 の植 って い た黒 ず ん だ花 床 まで が、 磨 い た

よ うに な った。」21)

こ の 数 行 の 文 の 中 に 「蒼 き 」 「淡 い 金 色 」 「芝 生(緑)」 「ひ な 菊(黄)」 「黒 ず ん だ 花 床 」 「バ ラ」 と 多 彩 で あ る。 しか も 色 調 は 「淡 い、 女 性 ら しい 繊 細 な 官 能 を 表 現 し た 自 由 な 」22)もの で あ る。 これ は3歳 年 上 の 画 家 マ リー ・ ロ ー ラ ンサ ン(1885-1956)が、 こ の 「園 遊 会 」 の 挿 絵 を 描 い て い る こ と か ら も 十 分 う な づ け る の で あ る。 大 澤 銀 作 氏 は この 二 人 の 出 会 い に 驚 嘆 し、 次 の よ う に 述 べ て い る。 「小 説 家 マ ン ス フ ィ ー ル ドと フ ラ ン ス の 生 ん だ パ ス テ ル カ ラ ー と 幻 想 の 女 流 画 家 マ リー ・ロ ー ラ ンサ ン との 出 合 い で あ っ た。 ……(中略)……マン ス フ ィ ー ル ド文 学 の 特 性 の 一 つ は、 そ の 豊 か な 美 意 識 に あ る と私 は 思 う。」23) Crystal Cut Styleの 観 点 か ら す れ ば、 下 線 部moving and sweeping,

21)The garden-party p. 30 22)マ ン ス フ ィ ー ル ド雑 記 録p. 35 23) 同 書p. 30 K ・ マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(11)

密 教 文 化 until……。「……を刈り……を掃き……(磨 い た よ う に)な っ た。」 こ の 数 行 の 文 を 生 き生 き さ せ る 文 体 で あ る、 マ ン ス フ ィ ー ル ド ら し い 繊 細 さ と 官 能 美 に あ ふ れ て い る。 分 詞 構 文(後 続 型)24)十 分 詞 構 文(後 続 型)、until ……の ス タ イ ル は 付 帯 状 況+付 帯 状 況 を 重 ねuntil以 下 で 見 事 に 完 結 さ せ

て い る。 ひ き締 っ た 文 体 と な っ て い る。 す な わ ち、Crystal Cut Styleの 骨 組 み で あ り、crystal(水 晶 の よ う な)透 明 な 語 彙 選 択 が な さ れ ね ば な

ら な い。 光 り に 関 す る 語 が 用 い ら れ て い る。a haze of light gold, (淡 い 金 色 の も や)、early summer, (初 夏)、had been seemed to shine(磨 い た よ う に な っ た)こ れ ら はCrystal Cut Styleを 構 成 して い る の で あ る。

さ ら に、 バ ラ の 花 にarchangels(天 使)を 見 る と い っ た 具 合 に マ ン ス フ ィ ー ル ドは 透 明 な 心 を 見 出 す の で あ る。

As for the roses, you could not help feeling they understood that roses are the only flowers that impress people at garden-parties; the only flowers that ererybody is certain of knowing. Hundreds, yes, liter-ally, hundreds, had come out in a single night; the green bushes bowed down as though they had been visited by archangels.25)

バ ラ は と い え ば、 バ ラ こ そ 園 遊 会 で 人 の 心 を と ら え る 唯 一 の 花、 誰 一 人

知 らぬ 者 と て な い 唯 一 の 花 だ と、 ち ゃ ん と み ず か ら心 得 て い る 風 情 だ っ た。 何 百 の 文 字 通 り何 百 の バ ラ が 一 夜 に して 咲 き 出 で た の で、 ま る で 天 使 の 群 が 舞 い 降 り て 来 た か の よ う に、 緑 の 茂 み は う な だ れ た。26)

roses-roses, the only flowers-the only flowers, hundreds (of roses) -hundreds(of roses), と く り返 しthe green bushes(緑 の 茂 み)を 入 れ、 バ ラ、 す な わ ち、archangels(天 使)と 思 う程 に 純 化 さ れ て い く風 情 も ま

さ にCrystal Cut Styleと 言 え る の で は な い か。 こ の 「園 遊 会 」 の ス ト リー の 起 状 を ま と め て み る と、

24) 分 詞 構 文 の先 行 型 と後 続 型 にっ い て(大 塚 裕 曙)「 英 語 教 育 」(大 修 館)1969. 5月 号

(12)

1・(主 人 公 ロ ー ラ は 母 の 代 行 を す る)

Forget I am your mother, Treat me as an honoured quest.27) 「お 母 さ ま だ と い う こ と を 忘 れ て、 お 客 さ ま 待 遇 に お 願 い よ 」 2.(背 の 高 い 職 人 に ロ ー ラ は好 感 を 抱 く、 階 級 的 差 別(class distinctions)

な ど 感 じ な い。)

Well, for her part, she didnt feel them Not a bit, not an atom,28)

さて、 彼 女 と して み れ ば、 そん な差 別 は感 じな か った。 少 し も、露 ほ

ど も……

3.(「 園 遊 会 」 の お だ や か な様 子)

And there were two tiny spots of sun, one on the inkpot, one on a silver photograph frame, playing too.29)

そ う して 日光 の落 した小 さ な点 が二 っ、 一 っ は イ ンク壷 に、 一 つ は銀

の写 真 枠 に、 や は り戯 れ て い た。

4.(母

の シ ェ リダ ン夫 人 は沢 山 の カ ンナ百 合 を買 う)

And I suddenly thought for once in my life I shall have enough can-na lilies. The garden-party will be a good excuse.30)

そ う した らふ と、 生 涯 に た っ た一 度 で い い か ら、思 い っ き りカ ンナ百

合 を買 って み た い気 にな った の よ。 園 遊 会 は そ の い い 口実 に な る わ

ね。

5.(ク

リー ムパ フを売 る店 員 の人 殺 しの 話 を 料 理 人 が 話 す)

"Dead" Laura stared at Godbers man "Dead when they picked

him up," said Godbers man with relish.31)

「死 ん だ の 」 ロ ー ラ は、 ゴ ッ ドバ ー の 店 員 を 見 っ め た。 「引 き 起 し た 時 に は死 ん で ま し た 」 ゴ ッ トバ ー の 店 員 は 面 白 そ う に い っ た。(奴 27) The garden-party p. 31 28) 同 書p. 34 29) 同 書p. 36 30) 同 書pp. 36-37 31) 同 書p. 42 K・マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(13)

密 教 文 化

の馬 が牽 引車 に お ど ろい て跳 び の い て、 奴 は あ お む け に放 り出 され て

頭 を打 った ん で す。 そ れ っ き りで さ あ)

6.(ロ

ー ラは園 遊 会 を 中止 しよ うとす る)

"But we cant possibly have a garden-party with a man dead just

outside the front gate.32)

「で も、 表 門 の 鼻 先 に、 人 死 にが あ っ た と い う に、 園 遊 会 なん て とて

もで きな いわ 」

7. (母 は ロ ー ラ の意 見 を無 視 す る)

"Mother, a mans been killed, " began Laura, "Not in the garden"

interrupted her mother.

「お母 さ ま、 男 の人 が死 ん だ ん で す わ」 ロー ラは話 しは じめ た。 「ま

さか、 庭 で、 じ ゃな い で し ょ うね

」 と母 は 口 を は さ ん だ。

8.(園

遊 会 は大 成 功 に終 った。 しか し父 は そ の 事 件 に つ い て シ ェ リ ダ ン

夫 人 に尋 ね る)

"I suppose you didnt hear of a beastly accident that happened

to-day" he said.

今 日起 った とて も いや な 事 を 聞 いて は いな いだ ろ うね

」 と彼 はい っ

た。

9.(母

の提 案 で、 葬 式 を して い る貧 民 街 に バ ス ケ ッ トを 作 っ て、 ロ ー ラ

に残 った 御馳 走 を 持 って行 か せ る こ とに す る)

"Lets make up a basket. Lets send that poor creature some of

this perfectly good feed."

バ ス ケ ッ トを こ さ え ま し ょ う よ。 か わ い そ う な 人 に、 こ の お い し い 食 物 を 贈 っ て あ げ ま し ょ う。 10. (階 級 差 を 考 え る と、 場 違 い な 服 装 に 躊 躇 し っ っ も、 母 の 提 案 を 実 行 す る) 32) The garden-party pp. 42-43 33) 同 書p. 44 34) 同書p. 48 35) 同書p. 49

(14)

She wished now she had put on a coat. How her frock shone! And the big hat with velvet streamer-if only it was another hat 36)

上 衣 を着 て きた らよ か った、 と彼 女 は思 った。 な ん て ドレスが け ば け

ば しい ん だ ろ うお ま けに、 ビ ロー ドの長 い リボ ンの っ い た 大 き な帽 子

これ が 違 っ た帽 子 だ っ た ら よか った の に。

11.(ロ ー ラはす す り泣 きな が ら戻 る、 兄 にか か え られ、 「人 生 って」 話 し

か け、 「そ うい う もの 」 と兄 に言 わ れ 「園遊 会 」 の 幕 とな る。)

"Isnt life," she stammered, "isnt life-" But what life was she

couldnt explain.37) 「人 生 っ て 」 と、 切 り出 して は み た が 口 ご も っ て、 「人 生 と い うの は一 一 」 しか し人 生 が ど う い う の か 彼 女 に は 説 明 で き な か っ た。 11段 階 で ス ト リ ー の 流 れ を 要 約 して み た。 こ れ が 傑 作 中 の 傑 作 と い わ れ る の は人 生 の 明 暗 を こ の 「園 遊 会 」 に う ま く 表 現 して い る か ら で あ る。1922年 出 版 さ れ、 翌 年1923年 に わ ず か34歳 の 若 さ で こ の 世 を 去 っ た と は、 感 慨 無 量 で あ る。 し か し、 「園 遊 会 」 は 幼 少 の ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド時 代 の 日 々 の 回 想 で あ る。 十 分 に 発 酵 して 作 品 化 さ れ た 傑 作 と い え る。 こ れ を 作 品 化 す る 切 掛 は 弟Leslieの 戦 死 で あ る 「皮 肉 な こ と に 大 切 な 肉 親 を 失 な っ て 始 め、 一 度 は 捨 て た は ず の 故 郷 ニ ュ ー ジ-ラ ン ドが 彼 女 に と っ て は こ の 上 も な く貴 重 な も の に 思 わ れ て き た。」鋤 こ の 点 は ハ ー ンが 原 話 を 十 分 発 酵 さ せ て 立 派 な 作 品 を 書 き 上 げ た の で 同 じ で あ る。 3 マ ン ス フ ィ ー ル ドに は 「可 愛 い い も の へ の 愛 着 」 が 強 い。 彼 女 の 諸 作 品 の 題 名 か ら も納 得 で き る、Sixpence, the Dolls house, A cup of Tea, Mr.

36) The garden-party pp. 50-51 37) 同 書p. 54 38) 現 代 イギ リス短 篇 集The garden-Party(NOTES)p. 111 K・マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(15)

AndMrs. Dove, The F1y, TheCanaryと 挙 げ る こ と が で き る。 こ の 「園 遊 会 」 に 絞 っ て 考 察 す る、"Little"の 表 現 性-Katherine Mansfield の 場 合39)-で は、 横 書 き に し て い た の で あ る が、 一 目 瞭 然 に す る た め、 円 グ ラ フ を 用 い て 明 示 して み る。

特 にfrog(蛙)に つ い て 考 察 す る。

"My dear!" trilled Kitty Maitland, "arent they too like frogs for

words You ought to have arranged them round the pond with con-duetor in the middle on a leaf."40)

「ま あ!」 キ テ ィ ・メ ー ト ラ ン ドは さ え ず る よ う な 声 で、 「バ ン ドの 連 中 は 蛙 そ っ く り じ ゃ な い い っ そ、 み ん な 池 の ぐ る り に 並 べ て、 指 揮 者 を ま ん な か の 葉 っ ぱ の 上 に お い た ら よ か っ た の に 」41) マ ン ス フ ィ ー ル ドの 蛙 は コ ミ ッ ク な 蛙 の オ-ケ ス トラ で 可 愛 い い イ メ ー ジで あ る。 そ れ に 反 し て、 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 で は、 前 述 の 如 く、 出 雲

イ. 動 物

39) 大 阪 商 業 大 学 論 集pp. 63-83

40) Thegarden-partyp.

46

41)「 園 遊 会 」p. 78

(16)

の わ らべ 歌 の後 で大 地 の声 と して一 斉 に歌 い 出 す蛙 の宗 教 的 な まで に人 間

の 本 能 をか き立 て る エ ネ ル ギ ー を感 じ させ るの で あ る。 さ らに犬 につ い て

考 察 す る。

‘little’

を 好 む マ ンス フ ィ-ル ドが ‘Abigdog’ と言 って い るの は、 彼 女

は貧 民 街 へ 園 遊 会 のお い しい残 り物 を も って、 葬 式 に行 く とい う特 殊 な状

況 を示 して い る点、 大 へ ん 興 味 深 い。

It was just growing dusky as Laura shut their garden gates.

A big

dog ran by like a shadow.

The rood gleamed white, and down below

in the hollow the little cottages were in deep shade.42)

「ロ ー ラ が、 う ち の 庭 木 戸 を 締 め て 外 へ 出 た の は、 ち ょ う ど も う ほ の 暗 く な る 頃 で あ っ た。 大 き な 犬 が、 影 の よ う に 過 ぎ て 行 っ た。 道 路 は ほ ん の り と 光 を 漂 よ わ せ、 下 の ほ う の 窪 地 に は、 小 さ な 屋 な み が、 深 い 影 に 包 ま れ て い た。43)

上 述 のthelittlecottages(小 さ な 屋 な み)をthe mean little cottages と表 現 し、mean(卑 し い)と い う 一 語 を 入 れ た り、 同 じ表 現 でlittlemean dwellingと も あ り、 階 級 制 を 無 視 で き な い の が、 イ ギ リ ス 社 会 の 本 質 で あ る。 こ の 点 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 で は す べ て が 混 然 と な っ て い る。

動 物 に 関 して 蟹 に 関 す る 一 文 を 引 用 す る。

A low hum came from the mean little cottages. In some of them there was a flicker of light, and a shadow, crab-like, moved across the window.44)

む さ くる しい小 屋 か ら、低 い人 声 が 聞 え て き た。 あ る家 に は灯 火 が ゆ ら

め き、 影、 蟹 の よ うな影 が、 窓 を よ ぎ っ た。45)

こ の暗 さが あ って こそ、 上 流 社 会 の 園 遊 会 の明 る さが 一 層 感 じ られ る。

冒 頭 の明 る いす が す が しい朝 の表 情 か ら、 た そが れ の こ の 「む さ く る しい

42) The garden-party

p. 50

43) 同 書p. 8244) 同 書p. 50 45) 同 書pp. 82-83 K. マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(17)

密 教 文 化 小 屋 」 の 様 子 は 想 像 も っ か な い。 蟹 の 比 喩 が 用 い ら れ、 強 烈 な イ メ ー ジが 読 者 の 頭 か ら去 らな い、 最 後 の 「カ ナ リヤ 」 と い う作 品 で は、 窓 か ら の ぞ く死 の 恐 怖 と な っ て い くの で あ る。1日 の 中 で も朝 に 希 望、 夕 に 恐 怖 と 変 わ る の で あ る。 園 遊 会 の ラ ス トシ ー ンで 兄Laurieと キ ャサ ン ・マ ン ス フ ィ-ル ドの 分 身Lauraと の 会 話 で、 「そ う い う も の、 じ ゃ な い か い、 ね え 」 と ロ ー リー は い っ た。46)ま さ に 人 生 の 明 暗 で あ る。

特 にlilyが 多 い、cannalily, arumlily。

Pinklily・ 園 遊 会 を 盛 り立 て る役 割 を 果 し て い る。 cannalily-シ ェ リダ ン夫 人 が 園 遊 会 を 口 実 に 思 い 切 り沢 山 買 っ た ユ リ。 arumlilyロ ー ラが 母 シ ェ リ ダ ン夫 人 に た の ま れ て、 貧 民 街 へ 園 遊 会 で の お い し い 品 々 と共 に ア ラ ム 百 合 を も っ て 行 く こ と に な る。 ピ ン ク の 百 合 は、 扉 を 入 っ た と こ ろ に 浅 い 盆 に 入 れ て あ っ た。 カ ン ナ 百 合 と 同 じ。

ロ. 植 物

46) The garden-party

p. 86

(18)

Nothing but lilies-canna lilies, big pink flowers, wide open, radiant, almost frighteningly alive on bright crimson stems.47

百 合 ば っ か り 一 カ ン ナ 百 合 で、 大 き な ピ ン ク い う の 花、 大 き く 開 い て、 輝 く ば か り、 艶 や か な 真 紅 の 茎 の 上 に お そ ろ し い く ら い に 生 々 と し て い た。48) こ れ ま さ に、 マ リー ・ロ ー ラ ン サ ン の 絵 の よ う な 幻 想 的 色 感 に あ ふ れ て い る。 前 述 の 如 く マ ン ス フ ィ ー ル ド と の 出 合 い が、 不 思 議 に 思 え る の で あ る。 匂 の 文 学 は 珍 ら し い。lavenderの 表 現 を 引 用 す る。 ロ ー ラ が 好 感 を も っ て い る 背 の 高 い 職 人 の 仕 草 で あ る。

He bent down, pinched a sprig of lavender put his thumb and forefin-ger to his nose and sniffed up the smell.49)

彼 は 身 を こ ご め、 ラ ヴ ェ ン ダ ー の 小 枝 を 摘 み 切 っ て、 親 指 と人 差 指 を 鼻 に あ て が っ て 匂 を か い だ。50)

マ ン ス フ ィ ー ル ドの 若 か り し頃 の 多 感 な 官 能 的 セ ン ス が 窺 い 知 れ て 興 味 深 い。

色: dark blue, green, pink, yellow, silver, chocolate brown. 食 べ 物: extra icing sugar, bread and butter, lemon-curd, sandwich,

yellow fruit, egg, olive, cake, passion fruit, whipped cream, cream puff, cream cheese.

小 物:petticoat, shirt sleeve, print shirt, kimono jacket, tool-bag,

door knob, wooden hammer, hand-mirror, dressing table, black hat, envelop, velvet ribbon, ink pot, bird cage, flag, silver photograph frame, mens cap, tweed cap.

特 にhatに 関 し て、 色 々 の 組 み 合 せnew hat, big hat, black hat,

top-47) The garden-party

p. 36

48) 同書p. 68 49) 同 書p. 33 50) 同書p. 65cfラ ヴ ェ ン ダ ー (芳 香 あ る しそ科 の植 物) K. マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(19)

ping hat。 これ らのhatを 追 求 す れ ば 園 遊 会 の 物 語 に も展 開 に もっ な が

る。 小 物 こそ、 マ ンス フ ィー ル ドと い う女 流 作 家 が 「園 遊 会 」 の重 要 な構

成 要 素 と いえ る。

文 体 に関 して、 描 出話 法(represented

speech)に

つ い て 一 言 して お か

ね ば な らな い。

「これ は直 接 話 法 と間 接 話 法 の中 間 的 な 伝 達 形 式 で す。 人 称 や 時 制 は作

者 の 立 場 か らあ らわ され ます。-ま

り作 者 の言 葉 の よ うに見 え ますが、

実 は作 中 人 物 の 想 念 や 言 葉 を描 出 して い るわ けで す。」51)

こ の 「

園 遊 会 」 で は、 人 が 死 ん だ の で、 園遊 会 を 中止 せ ね ば な らな い と

思 って い る娘 ロ ー ラ に対 して、 母 シ ェ リダ ン夫 人 は 「あ な た って、 と って

もお か しな 人 ね、 ロ ー ラ」 彼 女 は冷 然 と い った。 「あん な 人 た ち が、 あ た

した ち に犠 牲 を 払 わ せ るっ も りで なん か い る もの で す か。 それ に、 あ な た

み た い に して、 み ん な の愉 しみ を台 無 しにす るな ん て、 決 して 芯 か ら同 情

して る こ と にな らな いわ 」52)

そ の母 の 意 見 に対 して、 ロ ー ラが 自問 自答 す る場面:

Is mother right she thought. And now she hoped her mother was right. Am I being extra-vagant perhaps it was extravagant53)

「お 母 さ ま の お っ し ゃ る こ と が、 ほ ん と う か し ら と、 彼 女 は 思 っ た。 そ して 今 で は、 そ う で あ って くれ れ ば、 い い と ね が う の で あ っ た。 あ た し の 考 え は、 突 飛 な の か し ら お そ ら く突 飛 だ っ た の だ ろ う。54)

こ の よ う な 描 出 話 法 も含 め てCrystal Cut Style(水 晶 カ ッ ト文 体)と 主 張 した い。 そ の 文 体 を 通 し て、 マ ン ス フ ィ ー ル ドの 水 晶 の よ う な 透 明 な

51)「 英 語学 か ら英 文 学 へ 」 永 野 芳 郎 著p. 243英 宝 社, 昭57. 12. 10 52) 同 書pp. 77-78 53) 同 書p. 46

(20)

心 境 が 読 者 に伝 わ って くる ので あ る。

マ ンス フ ィー ル ドは ‘Little’

な 世 界 の もっ と も顕 著 に表 わ して い る 貧 民

街 の 様 子 を 引 用 す る。

That really was extravagant, for the little cottages were in a lane to themselves at the very bottom of a steep rise that led up to the house. A broad road ran between. True, they were far too near. They were the greatest possible eyesore, and they had no right to be in that neighbourhood at all. They were little mean dwellings painted a chocolate brown. In the garden patches there was nothing but cab-bage stalks, sick hens and tomato cans. The very smoke coming out of their chimneys was poverty-stricken. Little rags and shreds of smo-ke, so unlike the great silvery plumes that uncurled from the Sheridans chimneys. Washer-women lived in the lane and sweeps and a cobbler, and a man whose house-front was studded all over with minute bird-cages. Children swarmcd.55)

「そ れ こそ、 全 く気 狂 い じみ て い る、 そ の 小 さな 家 々 は ロ ー ラ達 の邸 の

と こ ろ へ来 る急 な坂 の下 に あ る、 小 路 に あ るの だ か ら。実 際、 そ の 家 々 は

あ ま りに近 い の だ。 この上 な く目 ざ わ りで、 ほん と うは この近 辺 に あ るべ

き もの で は な い の だ。 チ ョコ レー トい う に塗 った、 小 さ な み す ぼ ら しい住

宅 だ った。 そ の 庭 と き た ら、 キ ャベ ッ の株 と病 気 の に わ と り と トマ トの空

か ん が あ る ぐ ら い。 そ の煙 突 か ら出 る煙 まで、 いか に も貧 しか った。 きれ

ぎれ の ほ ん の ち ょっぴ り した煙 で、 シ ェ リダ ン家 の煙 突 か ら立 ち の ぼ る、

も く も く と した、 銀 い うめ い た煙 とは全 くち が って い た。 そ の小 路 に は、

洗濯 女 や、 煙 突 掃 除 夫 や靴 直 しや、 ま た家 の正 面 に小 ちや な鳥 か ご を い っ

ぱ い ぶ ら下 げ た男 な どが住 んで い た。 子 供 た ち が う じゃ う じゃ い た。

」56)

この文 の 中 か ら小 さ な もの を引 出 して み る と、the little cottages(小

55) The garden-party

p. 43

56) 同 書p. 75 K. マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(21)

密 教 文 化 さ な 小 屋) は よ ほ ど 小 さ な 家 で あ る。cottagesがhutと 同 意 語 で あ り、 そ の 前 にlittleが 前 置 さ れ て い る こ と か ら、 大 変 小 さ な 家 で あ る こ と が わ か る。 そ れ ら の 家 がlane(両 側 に 家 な ど の あ る 小 路)に あ る。 pathよ り も 小 さ なlaneの 両 側 に 建 っ て い る。 そ し て、 そ のlaneは 急 な 坂 の 下 に あ る。 急 な 坂 の 下 に と い う 表 現 に して もat the bottom of a steep riseと 書 か れ て い る。at the bottom of the cupと い う よ う な 小 さ な 感 じで あ り、 at the foot of a steep hillと の 表 現 の 違 い 一 目 瞭 然 で あ る。 道 を 一 っ へ だ て て、too near(あ ま り に も近 く)で あ る た めeyesore(目 ざ わ り)で

あ る。eyesoreと い う表 現 もeye+soreと い う 合 成 語 か ら 微 視 的 な 感 覚 が 読 者 に つ た わ っ て く る。 こ のeyesoreと い う語 が 生 き て く る の は、 こ の 引 用 文 の 前 に次 の 文 が あ る た め。

But we cant possibly have a garden-party

with a man dead just

outside the front gate."

「だ っ て、 表 門 の す ぐ外 に 死 ん だ 人 が あ る と い う の に、 園 遊 会 を す る な ん て い う こ と、 ど う し た っ て で き な い わ よ 」

結 局eyesoreの 対 象 は1ittle mean dwellings(粗 末 な 小 さ な 家 々)で あ る。 さ ら に 詳 細 な 観 察 が 細 部 を 説 明 し て い く の で あ る。garden patches と は小 地 面 を 表 現 し て い る の で あ る。 別 の 訳 者 は 「猫 の 額 の や う な 庭 」 と 訳 さ れ て い る。 そ の 小 さ な 地 面 の 中 に、cabbage(キ ャ ベ ッ)のstalks (茎)と い う表 現 で、 次 のsick hens(病 気 で や せ た に わ と り)と 奇 妙 に み す ぼ ら し く小 さ な 感 じ を 出 さ せ て い る。tomato cans(ト マ トの 空 か ん) で、 貧 困 を 象 徴 さ せ、chimney(煙 突)か ら 出 る 煙 もlittle rags and shreds of smoke(小 さ な 屑 切 れ 小 ぎ れ の よ う な 煙)で あ っ て、 シ ェ リ ダ ン 家 の 煙 突 か ら立 ち の ぼ るthe great silvery plumes(も く も く と 銀 色 の 羽 毛 の よ う に 軽 ろ や か な 煙)と は 雲 泥 の 差 で あ っ た。 貧 富 の 差 を 煙 の 比 喩 で 表 わ す 鋭 さ は マ ン ス フ ィ ー ル ドな ら で は の 感 が あ る。 こ の よ う なLittleな 世 界 に、 洗 濯 婆 さ ん、 掃 除 人 夫、 靴 直 し の ほ か に、minute bird-cages(小

(22)

じ ゃ う じ ゃ)し て い る と か い っ た 微 視 的 観 点 か ら の 表 現 に は 感 心 さ せ ら れ て し ま う。

華 や か な 園 遊 会 と 貧 し い 家 に 訪 れ た 死 を 対 比 さ せ る こ と に よ っ て 、 人 生 の 不 条 理 を 訴 え た こ のThe Garden-Partyでlight motiveに な っ て い る 帽

J

(black hat trimmed with gold daisies, and a long black velvet

ribb-on)も 小 さ き も の 可 愛 い も の へ の 愛 着 で あ る 。 死 人 の 顔 を 見 て 、 泣 き 出 し、 た だ 一 言"Forgive my hat,"(「 こ ん な 帽 子 を き て き て ご め ん な さ い」) と云 っ て 飛 び 出 し て 行 く。 マ ン ス フ ィ ー ル ドの 文 体 に は 「顕 微 鏡 を の ぞ い た や う な 精 密 さ 」 が あ り、 小 さ き も の 可 愛 い も の へ の 愛 着 が 、 軽 快 な 文 体 に よ っ て 、 奥 深 い も の へ 読 者 を 導 い て く れ る の で あ る。 軽 快 な 文 体 の 一 っ の 大 き な 要 因 と して 、 littleの 表 現 性 を 無 視 す る こ と は で き な い 。 4 ハ ー ン の 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 は ‘miniature’ の 世 界 を 主 題 と し て い る 点 、 前 述 の マ ン ス フ ィ ー ル ドの 「園 遊 会 」 の ‘1ittle’な 世 界 と は 少 し 異 な る の で あ る 。 ハ ー ン の 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 の 物 語 の 展 開 と ミニ チ ア の 世 界 を 考 察 して み る 。

イ. When O-Toyo's husband-a distant cousin, adopted into her

fami-ly for love's sake-had been summoned by his lord to the capital, she did not find anxious about the future.57)

お と よ の 夫 は 、 お と よ の ま た い と こ で 、 た が い に 思 い 思 わ れ た 仲 で 婿 に き た 男 で あ る そ の 夫 が 、 領 主 に 呼 ば れ て 京 へ の ぼ っ た 時 、 お と よ は 、 こ と さ ら さ き ざ き の こ と な ど案 じ も し な か っ た 。58) ロ. 夫 の 安 否 を 蔭 膳 で 占 う の で あ る。ハ ー ン はKags-zenを"Shadow-tray"59)

57) L. HEARN:

KOKORO p. 71

58) 岩 波 文 庫 「心 」 平 井 呈 一 訳p. 74 59) 同 書p. 72 K. マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(23)

密 教 文 化 と 説 明 し て い る 。miniature mealS'60)(お 供 え 膳 の ま ね ご と の よ う な も の)で 椀 の ふ た に 、 湯 気 の しず くが 大 き な 玉 に な っ て た ま っ て い れ ば 、 夫 は 無 事 息 災 で あ る と い う 占 い な の で あ る 。

ハ. 3歳 の 子 供 に 、 夕 方 、 仏 壇 や 神 棚 に 小 さ な お 燈 明(the little lamps')

を あ げ 、 父 親 の 無 事 を 祈 る よ う教 え る の も お と よ で あ っ た 。 そ し て 処 女 菩 薩 に 「世 上 三 切 の 祈 願 の 音 声 を 常 住 に 観 じ給 う 」61)(to that Maid "who looketh forever down above the sound of prayer.")62)と 祈 る 。 二. 嵩 山(ダ ケ ヤ マ)へ1日 も早 い 帰 宅 を 祈 り に 登 る 。 そ して 積 ん で い る

小 石 を1っ づ っ 持 ち 帰 り無 事 帰 っ て く る と 、 そ の 小 石 と お 礼 を も っ て 山 に お 返 しす る 。

ホ.し か し、 夫 は 不 帰 の 客 と な り 、 「こ の 世 の 借 り も の で あ る 一 切 の 形 骸

か ら、 も と の 塵 に か え っ て し ま っ た の で あ る 。」63)(-having been

return-ed unto that dust out of which all forms are borrowreturn-ed.)

へ. And in another little while she knew her boy slept so deep a sleep

that the Chinese physician could not waken him.65)

最 後 の 子 供 が 漢 方 医 で も 醒 せ ぬ 深 い 眠 り で こ の 世 を 去 る、-「 神 の 慈 悲 な る絶 対 無 明 の 闇 」66)(that absolute darkness which is the pity of the gods)67

ト. 悲 し さ の あ ま り、 子 供 の 死 霊 を 呼 び も ど し て も ら う。 死 霊 は 行 者 を 通 じ て 坊 や の 声 で 、 「こ と し は 年 ま わ りが 悪 うて 、 病 い の は や る 悲 し い 年 じ ゃ。 か か さ ま が 死 ぬ 罪 障 に な っ て い る こ と が わ か っ た ゆ え 、 坊 が 願 を か け て 、 か か さ ま の 身 が わ り に 死 ん だ の じ ゃ。」68)

"For the year was a year of sickness and of sorrow, -and it was

given me to know that you were to die; and I obtained by prayer that I should take your place."69)

60) 岩 波 文 庫 「心 」 平 井 呈 一 訳p. 71

61) 同 書p. 76 62)同 書p. 73 63) 同 書p. 79 64) 同 書p. 77 65) 同 書p. 77 66) 同 書p. 79 67) 同 書p. 77 68)同 書p. 82

(24)

‘Sickness’ と ‘sorrow’ が 並 列 し て 対 照 的 に 用 い ら れ て い

trast Style)‘ 身 代 り の 注 で は"substitude"is the religious term.上 述 の よ う にtake your placeも 平 易 な 表 現 と な っ て い る の は、 坊 の 言 葉 だ か ら で あ る。

チ. お と よ は、 ど ん な 品 に か ぎ らず、 き わ め て 小 さ な も の に、 ふ し ぎ な 嗜 好 を 見 せ は じ め て い た。70)(こ の 頃 よ り真 の 心 の 痛 み を 覚 え ぬ よ うに な っ た こ と は事 実 だ っ た。)

She had begun to show a strange fondness for very small things."

小 さ い 蒲 団-添 い 寝 を す る子 を 亡 く し た あ と の、 空 虚 な 感 じか らで あ る。 こ の 空 虚 な 感 じ(the sense of emptiness)も あ る が、 一 方、 「若 さ の 泉 」72)すな わ ち、 現 在 の 自 分 → 娘 → 赤 ん 坊 へ の 幻 想 が ミニ チ ア の 世 界 へ の 嗜 好 へ と っ な が っ て い る の で あ る。miniature chop-sticksを 平 井 呈 三 氏 は 「お 雛 さ ま の よ う な 箸 」 と訳 し て い る、 お 雛 さ ま は 無 言 の エ ネ ル ギ ー を

ミニ チ ュ ア の 世 界

(身 の ま わ り)

1 bed 2 dwelling 3 familiar room 4 alcove 5 flower-vase 6

7a very small bowl 8 miniature chop-sticks 69) 岩 波 文 庫 「心 」 平 井 呈 一 訳p. 74 70) 同書p. 83 71) 同 書p. 81 72)「 天 の川 幻 想 」 小 泉 八 雲(船 木 裕 一 訳)pp. 219-222 K ・ マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(25)

密 教 文 化

我 々 に与 え て くれ る。miniatureの

名 訳 で あ る。

リ. お とよ の両 親 は、お と よ の再 婚 に気 が進 ま ず、自分 た ち の寄 る年 な み も

考 慮 して、お と よを 比 丘 尼 に し、

小 さ な堂 で も建 て て や る こ と に決 め た。

法衣(nuns dress)「

そ り ゃお まえ、 ほか の物 な ら、 な ん で も小 さ く

して こ し らえ て 上 げ られ る け れ ど、 法 衣 だ け は だ め だ よ、 尼

さん とい う もの はね、 大 き な法 衣 を着 な けれ ば い け な い もの

な ん だ よ。 お 釈 迦 さ ま が、 そ う お き め に な っ た ん だ か ら

ね。

」73)

大 きな法 衣(alarge

dress)に

つ い て、 日本 文 化 と西洋 文 化 の面 か ら考

察 して み る と、 ハ ー ンは 日本 文 化 は 「

不 揃 い」74)の

美 学 だ と 言 っ て い る。

そ の よ うな観 点 か らす る と、「あ み だ寺 の比 丘 尼 」 の お と よ が お 堂 も す べ

てがminiatureで

あ る の で、 法 衣 も小 さな もの を 望 ん で い た が、 前 述 の 如

くヨ 両 親 が 法 衣 だ け は大 き くな くて は い けな い と主 張 す る。 そ れ もお 釈 迦

ミニチ ュ ア の 世 界

(仏 事)

1 a small temple 2 a small altar 3 little images

4 miniature altar furni-ture

5 a tiny copy of the su-tras 6 a tiny reading-desk 7 tiny screens 8 tiny bells 9 tiny kakemono 10 small rice-cakes 11 a small garden 12 narrow cloth 73)岩 波 文 庫 「心 」 平 井 呈 三 訳p. 85 74)「 ラ フカ デ ィオ ・ハ ー ン再 考 」(百 年 後 の熊 本 か ら)「 日本 人 と 自然 」pp. 218-219熊 本 大 学 小 泉 八 雲 研 究 会 編

(26)

さ ま が お 決 め に な っ た こ とだ と述 べ て い る、 ハ ー ンの 「

不 揃 い」 の美 学 か

らす れ ば、 大 き い法 衣 が ア ク セ ン トと な って、 この庵 寺 を三 層 魅 力 的 な も

の に して い る ので あ る。 それ に反 して、 「西 洋 人 の 美 的 感 受 性 は 人 間 の 美

の認 識 に あ り、 そ こか ら均 衡 の観 念 が 生 ま れ る。」 そ こか ら 「

調和」 「

均斉 」

を 西洋 人 の 美 学 で あ る。 ハ ー ンは それ ら二 っ が果 して 至高 の もの か と疑 問

を投 げ か け、 庭 石 の美 しさ よ り 「

不 揃 い」 の美 学 と結 論 づ け た の で あ る。

「日本 人 は我 々 西洋 人 が幾 千 年 もの あ い だ、 「自然 」 の な か に見 の こ して き

た もの を 実 に よ く見 て い る」75)「

美 は乱 調 に あ り」 と い う言 葉 もそ れ を表

現 して い る。 竜 安 寺 の石 庭 の石 の不 思 議 な配 置 も西 洋 人 に は考 え られ な い

日本 人 の才 能 で あ る。

ヌ・ あ み だ 寺 の境 内 で、 お と よ は子 供 達 と仲 よ く した、 お な じ町 内 の母 親

達 も境 内 で遊 ばせ る こ とを好 ん だ。 この点、 前 述 の マ ンス フ ィー ル ドの

上 流 社 会 の 「

園 遊 会 」 と は異 な る の で あ る。 い た ず らっ子 に も 「あ の 比

丘 尼 さん は、 ご自分 にか わ い い坊 ち ゃん が お あ り にな った の を、 お 亡 く

しに な っ た もん だか ら、 そ の辛 さ が、 お母 さん と して 胸 い っぱ い にお あ

り に な るん だ か らね。 だ か ら、 お ま え た ち も、 比 丘 尼 さん に は、 み なお

とな しか った け れ ど も、失 礼 の な い よ う に しな くち ゃ い け な い よ。

」76)

こ の よ うな社 会 教 育 の場 と して の 「あ み だ 寺 」 の境 内 は計 り知 れ な い

ほ ど大 き な役 割 を果 して い る。 そ の子 が 父 や 母 に な る と又 そ の子 を境 内

で 遊 ばせ、 比 丘 尼 さ ん を好 きに な って い くの で あ る。 比 丘 尼 さん に不 自

由 な思 い を さ せ な か った、 犬、 猫 は もち ろん 鳥 た ち に も仏 さ ま の頭 な ど

に止 って は い け ま せ ん よ とお とよ はい って 教 え た。

ル. お と よ の葬 式 が す ん で か ら、あ る 日、9歳 ばか りの女 の子 が や って きて、

み ん な を代 表 して言 った。 比 丘 尼 さ ま は こ の よ う な大 き な 墓(aVery

large haka)よ

り、小 さな墓(a very little

haka)を

望 ん で お られ た の

で、 石 屋 さん に可 愛 い い墓 に して(to

make it pretty)も

ら い ま す の

K ・ マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 ) 75)同 書p.218 76)同 書p.87 K ・ マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(27)

密 教 文 化

で、 い く らか お金 を 出 して下 さ い と言 って きた。 快 諾 して や った。 そ の

時 比 丘 尼 さ ん が い な くて ど こで遊 ぶ の か と聞 く と、

"We shall still play in the court of the temple of Amida. She is

buried there. She will hear our playing, and be glad.77)

「い い え、 わ た い た ち、 や っぱ りあ み だ寺 の御 境 内 で遊 ぶ わ。 比 丘 尼

さ ん は、 あす ごに埋 め られ て ござ るで ね。 き っ と、 わ た い た ち の遊 ん で

い る の を聞 い て、 喜 ん で こん な さ るわ。」78)

以 上 でハ ー ンの 「あ み だ寺 の比 丘 尼 」 は終 るの で あ る。

5

マ ンス フ ィ-ル

ドの 「園遊 会 」 に お い て、 上 流 社 会 と貧 民 街 との 関係 と

生 と死 の 関係 を 図示 して み る と、

矢 印 は ロー ラが 園遊 会 の残 りの御 馳 走 を も って死 者 を訪 れ、 泣 きな が ら

帰 って く る こ とを示 す。 上 流 社 会 で は三 人 一 人 が生 き生 き と個性 的 で あ る。

しか も、 光 りか が や く花 々 で飾 られ て い る。ロー ラはバ スケ ッ トと花 を もっ

(第1図)

77)同 書p. 86 78)同 書p. 89

(28)

て貧 民 街 に 向 うが 華 や か な服 装 と帽子 と リボ ンに躊 躇 しな が ら、途 中、 出

会 っ た犬 が不 気 味 に大 き く"big"に 見 え る、Littleな

世 界 に 対 す る対 立

感 覚 で あ り、 み す ぼ ら しい家 並 で影-人 影 は蟹(crab)の

よ う にゆ れ 動 く

の で あ る。 光 の世 界 こそ、 色 で あ り、影 の世 界 で あ る貧 民 街 は 空 で あ

る。 ロ ー ラ は 色 即 是 空 を体 験 し、貧 民 街 と い う修 羅 場 で 死 者 の 姿 を見

泣 き泣 き戻 って きて、 兄 の優 しさ に触 れ、 空 即 是 色 を再 体 験 す る こ と に

よ って、 人 生 と は何 か を悟 る。 この 「園 遊 会 」 は幼 き 日 の 美 しきlittle

な世 界 の 「

生 」 と貧 民 街 の 「

死 」 とを す ば ら しいCrystal Cut Style(水

晶 カ ッ ト文 体)で

書 き上 げ られ た、 そ の 出 版 され た翌 年 に、 マ ンス フ ィー

ル ドは他 界 して しま う。人 生 の 明 暗 が二 重 に加 算 され、 こ の作 品 を一 層 魅

力 的 にか っ 哀 愁 を帯 び させ て い るの で あ る。

以 上、 ロ ー ラの立 場 よ りの見 解 で あ るが、 貧 民 街 の人 々 か ら見 れ ば、 逆

説 的 な見 方 もあ るの で は な いか、 す な わ ち、 貧 民 街 そ れ 自体 が 「

色 」 で あ

り、 園 遊 会 を 開 いて い る上 流 社 会 は 「

空 」 で は な か ろ うか、 貧 民 街 の人 々

が 園遊 会 に参 加 で き な い し、 そ の よ う な服 装 で 行 く と ロー ラの ドレスや 帽

子 や リボ ンが 場 違 い と同 様、 違 和 感 を 感 じるで あ ろ う。

ハ ー ンの 「あ み だ寺 の 比 丘尼 」 を 図 示 す る と、

(第2図)

死 ←大人←子供←(明

る さ)

(暗 さ)大人→子供→生

K ・ マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(29)

密 教 文 化 ハ ー ンの 「天 の 川 幻 想 」 の 中 で、 「若 さ の 泉 」 と い う一 文 が あ り、 泉 の 水 を 飲 ん で、 老 夫 婦 が 若 が え る と い う 話 が あ り、 夫 は 青 年 に、 妻 は も っ と た く さ ん 水 を 飲 ん で 赤 ん 坊 に な って しま う の で あ る。 若 さ の 泉 の エ ネ ル ギ ー は 老 人 →青 年 →赤 ん 坊 へ と進 む の で あ る。 赤 ん 坊 は 人 間 の エ ネ ル ギ ー の 源 泉 で あ る。 生 の 執 着 が 人 間 の 原 点 へ と 思 考 を 誘 うの で あ る。 フ ラ ン ス 文 学 で も プ ル ー ス ト79)は 「失 わ れ た 時 を 求 め て 」 で、 永 遠 性 を 追 求 し て い る。 少 年 時 代 の 小 さ な 出 来 事 コ ー ヒ ー の ス プ ー ン の 「カ チ ン」 と い う 音 を思 い 出 す 時、 思 考 は 現 在 か ら過 去 へ 瞬 時 に 到 達 す る。 そ の 時、 時 間 は 止 る ど こ ろ が 逆 回 転 す る。 そ こ に 永 遠 性 の 問 題 が 提 示 さ れ る。 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 で は、

お と よ は 「お も い で 」 を 百 年 の 敵(afoe whose name is Memory)80)と 言 っ た。 勿 論、 亡 き 息 子 の 「お も い で 」 な の で あ る。 「よ く 畳 の 上 に 小 さ な お も ち ゃ を 並 べ て み た り、 小 さ な 着 物 を ひ ろ げ て み た り し て 」81)「微 笑 」 か ら 「む せ び 泣 き」 に 変 わ る。 こ のminiatureへ の 強 い 嗜 好 が 小 さ な お 堂 (庵 寺)を 建 て る 方 向 へ と 向 う の で あ る。 円 心 力 の 如 く、 境 内 に 子 供 た ち が 群 れ 遊 び、 そ の 焦 点 に 比 丘 尼 お と よ さ ん が い る。 そ の子 供 達 の 背 後 か ら、 お と よ さ ん を 中 心 と す る 子 供 達 を 温 か く見 守 っ て い る の で あ る。 又、 そ の 子 が 大 人 に な り、 大 人 が 老 人 に な っ て い く、 比 丘 尼 お と よ さ ん の 死 後 も、 子 供 達 は あ み だ 寺 の 境 内 で 群 れ 遊 ぶ の で あ る。 マ ン ス フ ィ ー ル ドの 「園 遊 会 」 に お け る 階 級 制 は 皆 無 で あ る。 芥 川 竜 之 介 に 影 響 を 与 え た ア メ リ カ 短 篇 小 説 の 鬼 才Ambrose Bierce (1842-1914)はBitter Bierce82)と 呼 ば れ、 マ ン ス フ ィ ー ル ドや ハ ー ン と 同 時 代 で あ る。 「ビ ア ス 研 究 」お)(生 と死 の 狭 間 に)の 中 の 「源 初 へ の 回 帰 」

79)Marcel Proust(1871-1922)(A la recherche du temps perdu)16巻(フ ラ ンス上 流 社 会 を 一 人 称 体 の 自伝 的 回 想 意 識 小 説)

80) 同 書p. 77 81)同 書p. 79 82) 英 米 文 学 辞 典p. 115

(30)

で 内 田蓉 子 氏 は次 の よ う に言 って い る。

32才 で他 界 したHalpin Frayserの 人 生 は果 して短 か過 ぎた で あ ろ うか、

『32才を 老 年 と考 え る人 々が、 こ の世 の 中 に は何 百 人 と い る。 そ の 人 た ち

は ま た極 め て善 良 な者 た ち な の で あ る。 そ の人 た ち とは子 供 た ち で あ る。

こ こで も、子 供 が若 さ の原 点 とさ れ る、34才 で他 界 した マ ン ス フ ィ ー ル

ドに当 て は ま る の だ ろ うか、 さ らに次 の様 に続 け て い る。

まだ 出 船 の港 に残 って い る彼 らか ら見 る と32年 の人 生 航 路 は、 か な り遠

くまで 過 ぎ去 っ た よ うに見 え、 む しろ彼 岸 に近 い所 まで 行 って しま った と

も思 わ れ るだ ろ う。

上 述 ビア スの 見 解 は マ ンス フ ィール ドにっ いて 彼 女 のす ば ら しい天 分 か

らす れ ば、 半 ば 同 意 で き るが、 少 しBitter(き

び しい)よ

うだ、 さ らに、

内 田蓉 子 氏 は次 の よ う に要 約 して い る。

大 人 か ら見 て長 命 と思 わ れ る人 生 を全 う した と して も、 それ は高 々3、

40年 の差 で しか な い。 宇 宙 的 な規 模 で眺 め れ ば、 人 の一 生 は何 れ も はか な

く、夢、 幻 に過 ぎな い よ うに見 え て く る。

後 半 の意 見 は同 意 で き る と して も、前 半 は疑 問 が残 る。 「あ み だ 寺 の比

丘 尼 」 のお と よ は、 長 命 で、30才 前 後 で小 さな あ み だ寺 を 建 て、 境 内 で遊

ぶ 子 供 達 が 大 人 に な り、 そ の子 供 が 同 じ境 内 で健 全 に育 ち、 ます ます、 比

丘 尼 お と よ さん の 社 会 的 役 割 も高 く評 価 さ れ て くる の で あ る。 したが って、

マ ンス フ ィ ール ドや ビア ス の よ うな天 分 に恵 ま れ た文 学 者 に お いて の み言

え る誰 弁 で はな か ろ うか、 文 学 の万 神 廟 艇)に祀 られ た ラ フカ デ ィ オ ・ハ ー

ン も ビア ス流 の誰 弁 で 説 明 され るで あ ろ う。

最 後 に文 体 に つ い て 一 言 して お か ね ば な りませ ん。 マ ンス フ ィ ー ル ドの

「園遊 会 」 にっ い て のCrystal Cut Style(水

晶 カ ッ ト文 体)の1っ

と し

て描 出話 法 に つ い て は述 べ た が、 ジ ョ イ ス や ウ ル フ の意 識 の流 れ の小 説

84)ラ フカデ ィオ ・ハー ン その人 と作品 ジ ョゼ フ ・ド ・スメ著(西 村六 郎訳)

p. 6恒 文社1990. 12.

30

K. マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

(31)

(stream of consciousness novel)の 手 法 で あ る 内 的 独 白(interior mono-logue)の 先 駆 者 と して マ ン ス フ ィ-ル ドの 役 割 は大 き い。 内 的 独 白 の2 タ イ プ(「 直 接 」、「間 接 」)が あ る。 前 者 は ジ エ イム ズ ・ジ ョイ ス 「ユ リ シ ー ズ(Ulysses)85)」 後 者 は ヴ ァ ー ジ ニ ア ・ ウ ル フ 「灯 台 へ(To the Light-house)86)」 の 例 が 有 名 で あ る。 永 野 芳 郎 氏 は 次 の よ う に 言 っ て い る。(ユ リ シ ー ズ の 描 写 に つ い て)87) 「文 の 構 造 自 体 も論 理 的 一 慣 性 を 欠 く と 同 時 に、 い わ ゆ る 破 格 的、 不 安 全 な 形 を と っ て い ま す。 した が っ て、 こ の 独 白 の 意 味 す る と こ ろ は 明 らか に 意 識 の 混 沌 と した 状 態 の 展 開 で す。 しか も究 極 的 に は、 そ れ は誰 に 対 し て 話 しか け て い る も の で も あ り ま せ ん。」

マ ン ス フ ィ ー ル ドの 「園 遊 会 」 で もCrystal Cut

Style-(例)Wind-1ess, warm, the sky without a cloud.(動 詞 も な く、 文 と して 論 理 的 一 貫 性 も な く、 破 格 的、 不 完 全 な 文)で 見 事 に 書 か れ て い る が、 ジ ョ イ ス の 「ユ リ シ ー ズ 」 の よ う に、 独 白 が え ん え ん と40数 類 も 続 い て い な い の は 読 者 に と っ て 救 い で あ る と 同 時 に マ ン ス フ ィ ー ル ド のCrystal Cut Styleの 魅 力 で あ り ま す。 以 上 の 点 か ら判 断 して、 描 出 話 法 か ら発 展 し て 内 的 独 白 が 生 じた と 考 え ら れ る。 い ず れ も現 代 小 説 を 読 む た め に 必 要 不 可 欠 な 手 法 で あ る こ と は 証 明 さ れ て い る。 ハ ー ン の 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 の 文 体 に つ い て 考 察 し て み る と、 トマ ス は、 ハ ー ン の 文 体 に あ る熱 狂 的 な 装 飾、 雄 弁 あ る い は、 必 要 以 上 に 凝 っ た 言 葉 の 使 用 を 具 体 的 に 批 評 し て い る銘)さ ら に トマ ス は 初 期 の 美 文 体 の 文 章 を 反 省 し 「簡 潔 さ を 学 ぶ 気 持 に な っ て き た 」("forced to study simplity")

85)「 英 語 学 か ら英 文 学 へ」pp. 239-241 cf.「文 学 と文 体 」 越 川 正 三 著pp. 118創 元 社1976. 11. 20

86) 同書pp. 241-243 cf.「文 学 と文 体 」pp. 118-121 87)同 書p. 241 88)エ ドワー ド ・ トマ ス 「ラ フカ デ ィオ ・ハ ー ンー 翻 案 と研 究 一 」 飯 田 操p. 156 文 化 評 論 出版1990. 8. 30

(32)

と 言 う ハ ー ン 自 身 の 紹 介 す る こ と を 示 し て い る89)チ ェ ン バ レ ン教 授 の 指 摘 に よ れ ば 「細 部 の 科 学 的 な 正 確 さ」 と 「穏 や か で 選 び 抜 か れ た 文 体 」 を 強 調 して い る。90)一言 で い え ば 平 明 で 透 明 な 文 体 と い え る。 以 上 は ハ ー ン の 文 体 に つ い て 一 般 的 な 見 解 で あ る 「あ み だ 寺 の 比 丘 尼 」 の 文 体 に つ い て 前 述 し た よ う にContrast Style)「 対 照 文 体 」 と 言 え る。 名 詞 に2つ の 形 容 詞 句 が 限 定 修 飾 す る("the year of sickness and of sorrow")(病 い の は

や る 悲 し い 年)そ の 前 文 はTheyearwas ayearと あ り、 こ れ ま たSVC でSとCが 同 じyearと い う語 を 対 照 的 に 用 い て い る。 さ ら に 一and-; and-、 対 照 的 に 展 開 さ れ、 it was given to meに 対 し てIobtained by prayer that……論理 的 展 開 と な る。 宗 教 的 な 身 代 り の 話 し な の で 本 来 "substitute"を 用 い ず"take your place"と 平 明 な 語 を 選 択 し透 明 な 文 体

を 作 り上 げ て い る。 ハ ー ン の 文 体 は マ ン ス フ ィ-ル ドの 文 体 ほ ど 技 巧 的 で な い か ら、 平 明 な 文 体 と言 え る。 しか し、 共 に 透 明 な 文 体 と言 え る す ば ら し さ に は 圧 倒 さ れ る。 少 し語 に っ い て 一 言 す る と、 マ ン ス フ ィ ー ル ド のlittleは 他 の 形 容 詞 を 圧 倒 して い る こ と は、 次 頁 の 表91)で 一 目 瞭 然 で あ る。

The garden-partyで は19回 もlittleが 用 い ら れdarkが6回 用 い ら れ て い る。littleは 全 期 を 通 じて 用 い ら れ て い る が1910年 代 で-はgreen,young, 1920年 に はdark, black 1922年 に はold,cold 1923年 に はpoorが 用 い ら れ て い る。 生 →green,young→dark,black→old,cold→poor→ 死 へ で 形 容 詞 は 推 移 し て い く、 全 期 を 通 じ てlittleは 用 い ら れ て い る。1ittleは 子 供 時 代 を 89)エ ドワ ー ド ・ トマ ス 「ラ フ カ デ ィ オ ・ハ ー ンー 翻 案 と研 究 一 」 飯 田 操p. 156 文 化 評 論 出 版1990. 8. 30 90) 同 書p. I57

91) "Little"の 表 現 性-Katherine Mansfieldの 場 合 一 大 塚 裕 晒Style and Text (実 験 出 版)p. 64 K. マ ン ス フ ィ ー ル ド と L ・ ハ ー ン ( 小 泉 八 雲 )

参照

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