密 教 文 化
英 国にお け る民 営 化政 策 と
社 会 福 祉 行 政 の動 向(上)
Privatization
and Pricing
Social
Services in UK(PartI)
山 本
隆
I「
福 祉 国 家 の危 機 」 と福 祉 制 度 の 見 直 し
1970年 代 以 降 、 英 国 経 済 の停 滞 を背 景 とす る緊 縮 財 政 の下 で、 社 会 サ ー
ビ スの 見 直 しが 行 われ て き た。 と りわ け サ ッチ ャー政 権 の登 場 以 来 、「
小 さ
な政 府 」 を旗 印 とす る財 政 支 出 の 削減 が 実施 され、 社 会 福 祉 の分 野 に お い
て も、80年 代 に入 って か ら様 々 な改 革 が行 わ れ て き た。
と同 時 に、 「
福 祉 国 家 」の評 価 を め ぐ る議 論 も再 び展 開 され て きた。 そ の
底 流 に あ る思 潮 と して 、 欧 米 社 会 に お い て、 反 福 祉 国 家 的 気 運 の高 ま りが
み られ、 「福 祉 に対 す る反 動 」(welfare backlash)と して 注 目され た。 と り
わ け、 財 源 調 達 の結 果 と して生 じ る重 税 ・負担(感)が 問 題 とな り、 新 旧 中
間階 級 を中 心 とす る「
福 祉 国 家 」
攻 撃 の社 会 運 動 が繰 り広 げ られ た。 例 え ば
1978年 、 米 国 に おい て 、 固定 資 産 税 の 大 幅 な減 税 を求 め る住 民 運 動 が 展 開
され た が、 こ の 出来 事 はそ の典 型 で あ ろ う。 そ れ は、 カ リフ オル ニ ア の 「
納 税 者 の 反 乱 」(Tax Revolt)と 称 され た。 固 定 資 産 税 の 減 税 を 求 め る
「
提 案13号」(proposition 13)が
住 民 投 票 にか け られ て 可 決 され 、 その結
果 、 減 税 と引 き 換 え に、 カ リフ オル ニ ア 自治 体 当局 は それ ま で実 施 して い
た行 政 サ ー ビス の縮 小 、 職 員 の解 雇 、 給 与 の 引 き下 げ を伴 う人 件 費 の大 幅
な削 減 を断 行 した。
ま た、 民 衆 レベ ル に お け る反 福 祉 国 家 的 感 情 の高 ま りに拍 車 を か け た の
-90-英 国 に お け る民 営 化 政 策 と社 会 福 祉 行 政 の動 向(上)
が 、「不 正 受 給 」 問題('SCrmging,
iSSUe)で あ る。 「未 婚 の母 とな った テ ィ
ー ンエ イ ジ ャ-の た め に税 金 を使 う の は よ ぐない」ある い は 「勝 手 に 離
婚 して お き な が ら、 子 供 の養 育 の援 助 を求 め るの は お か しい 」 等 の声 が 聞
か れ た 。 マ ス コ ミも こ う した声 に同 調 して 大 々的 な キ ャ ンペ ー ン を展 開 し
て い った。 い ず れ に して も、 イ デ オ ロ ギー の 次元 に お け る 「
福 祉 国 家 の危
機 」 の背 景 に は 、 先 進 資 本 主 義 社会 に共 通 す る経 済 停 滞 とい う底 流 が市 民
全 般 を保 守 化 させ た こ とは看 過 で きな い。
なお 、 「
福 祉 国 家 の 危機 」を め ぐる理 論 と現 実 に対 して 、 新 保 守 主 義
義の福
祉 国 家 批 判 が あ る。 そ れ に よれ ば、 福 祉 国 家 の社 会政 策 は問 題 を解 決 す る
とい うよ りは 、 問 題 を大 き く し、 問 題 を変 え 、新 た な 問題 を生 み 出 した と
か、 国 家 が統 治 能 力 の 喪失 に 陥 って い る とい う主 張 を行 って い る。 そ の主
な論 点 は以 下 の5点 に要 約 され よ う。
(1)政府 の 巨 大 化 、 (2)政府 の 失 敗 、 (3)政府 に 対 す る 加 重 負 担 、 (4)福祉 国 家 に よ る 経 済 危 機 、 (5)福祉 国 家 に よ る 社 会 解 体 。い ず れ に して も、 戦 後 の 「
福 祉 国家 」 の歩 み の 中 で、 社 会 変 動 の 過 程 に
伴 って 、 伝 統 的 秩 序 に よ る欲 求 の制 限 が緩 和 して い る とこ ろ に、 い わ ゆ る
「期 待 上 昇革命」が押し 寄 せ て 選 挙 民 の要 求 水 準 が高 ま りを み せ て きた。
社 会 問題 の 解 決 を国 家 に求 めて 、 様 々な 利 益 集 団 が 政 府 に圧 力 を か け、 こ
う した メ カ ニ ズ ムの 中 で 、「蓄 積 」と 「正統 化 」 の機 能 を果 た す べ く国家 は
過 重 な財 政 負 担 を課 され て きた。
しか し経 済 危 機 、 財 政 危 機 の 中 で、 資 本 主 義 国 家 が な し うる こ と は、 福
祉 国家 の 「解体 」 で は な く、 福 祉 国 家 の 「再 編 成 」 で あ る。 す な わ ち、 資
本 の ニ ー ドに応 じた 再 編 で あ る とい え る。 そ の 政策 骨 子 は、
(1)良質 な労 働 力 を再 生 産 す るた めの政 策 に 力 点 をお き、
(2)社会 平 和 を撹 乱 す る恐 れ の あ る集 団 の社 会 統 制 を強 化 し、
密 教 文 化 (3)社会 サ ー ビ ス に お け る 生 産 性 を 高 め 、 (4)「福 祉 国 家 」 の 一 部 を 民 営 化 す る こ と で あ る 。 II「 サ ッ チ ャ ー 改 革 」 の 推 進 1979年 に 発 足 し た サ ッ チ ャ ー 保 守 党 政(権 は 、 市 場 原 理 の 導 入 を 通 し て 経 済 の 活 性 化 と 国 際 競 争 力 の 強 化 を 図 り、 イ ン フ レ抑 制 を 基 調 と した 金 融 政 策 、 労 組 法 改 正 を 通 じ た 労 働 運 動 の 抑 制 、 国 営 企 業 の 民 営 化(privatization) とそ れ に 伴 う国 民 の 株 式 所 有 の 促 進 、 公 営 住 宅 の 払 い 下 げ に よ る 持 家 取 得 の 促 進 、 財 政 赤 字 の 解 消 と所 得 税 の 減 税 お よ び 地 方 財 政 の 改 革 等 々 を 矢 継 ぎ 早 に 実 施 し て き た 。 こ れ ら一 連 の 「サ ッ チ ャ ー 改 革 」 は 、 第 二 次 大 戦 後 以 降 、 英 国 が 築 き 上 げ て き た い わ ゆ る 「福 祉 国 家 」 路 線 と 決 別 して 、 新 た な 英 国 の 社 会 経 済 の 基 盤 を 築 く と い う政 策 ス タ ン ス を 取 っ て い る 。 政 権 発 足 当 初 、 失 業 者 が 増 加 す る な ど、 国 民 一 般 の 支 持 を 受 け て い た わ け で は な い が 、1980年 代 中 葉 か ら は イ ン フ レ 率 は 低 下 し 、 む し ろ3%程 度 の 経 済 成 長 率 を 維 持 しつ つ 、 近 年 で は 失 業 率 も減 少 を続 け る な ど一 定 の 成 果 を 上 げ て い る 。 こ う して 、 サ ッ チ ャ ー 政 権 は 長 期 安 定 政 権 と し て 福 祉 、 教 育 、 医 療 、 地 方 税 制 等 の 改 革 、 ス ラ ム 化 し た 大 都 市 の 再 開 発 へ の 取 り 組 み 等 「サ ッ チ ャ ー改革」としての 一 連 の 諸 施 策 を 推 進 で き る 環 境 に 恵 ま れ て き た 。 た だ 現 実 に は 、 サ ッ チ ャ ー 政 権 が 誕 生 す る1979年 以 降 に お い て も、 政 府 支 出 は 増 加 を 見 せ て お り、 そ れ は 、 国 防 、 老 人 人 口 の 増 加 、 失 業 給 付 の 増 大 等 に よ る も の で あ る 。
1980年 代 の 社 会 保 障:「 期 待 阻 害 革 命 」ARevolution of Reducing Ex-pectations こ の よ う に 、1979/80年 を 分 水 嶺 と し て 、サ ッ チ ャ ー リ ズ ム の 下 で 、 国 家 の 役 割 が 大 き く見 直 さ れ て き た 。 以 来 、 公 共 財 政 と英 国 経 済 が 密 接 に リ ン ク さ れ 、 支 出 カ ッ トは 避 け ら れ な い 状 況 と な っ た 。 「福 祉 見直し」の下で、勤労意 欲 の 刺激、公務員の削減、簡素化、も っ と も ニ ー ドの 高 い も の へ の 援 助 の 特 定 化 、 自 立 の 促 進 、 不 正 受 給 摘 発
-88-英 国 に お け る民 営 化 政 策 と社 会 福祉 行政 の動 向(上)
(tackling fraud and 'abuse')が 強 調 さ れ 、 「1980年 社 会 保 障 法 」か ら、 児 童 手 当 の 支 出 削 減 、 不 正 受 給 と統 制 、 不 正 受 給 キ ャ ンペ ー ン が 実 施 さ れ た 。 社 会 保 障 制 度 の 簡 素 化 と公 的 責 任 の 放 棄 、 勤 労 意 欲 の 刺 激 、 自 立 の 強 調 、 も っ と も大 き な ニ ー ドを 持 つ も の へ の 特 定 化 、 経 済 政 策 と の 相 互 性 、 そ し て 遂 に は 、 「貧 困 線 」の 終 焉 が 政 府 白 書 の 中 で 唱 え ら れ た の で あ る 。 民 営 化 の 推 進 1979年 に 始 ま っ た 民 営 化 計 画 は 、 第2次 世 界 大 戦 後 以 降 、 最 も 急 激 な 経 済 政 策 の 変 化 で あ る と言 わ れ て い る 。1979年 の 英 国 の 国 有 企 業 の 状 況 を 見 て み る と、GDP(国 内総 生産)の10分 の1、 総 投 資 の7分 の1、 小 売 価 格 指 数 の10分 の1を 占 め て お り、 約150万 人 の 雇 用 者 を 抱 え 、輸 送 、 エ ネ ル ギ 一、通信、鉄鋼、および造船部 門 を支 配 す る 領 域 で あ った。しかし、国有 企 業 の 業 績 は 芳 し い も の と は 言 え ず 、 供 給 す る 財 ・サ ー ビ ス の 価 格 は比 較 的 高 く 、 そ の 質 は 良 好 で は な く、 生 産 性 も 低 い と の 批 判 の 声 が 聞 か れ た 。 国 有 部 門 の 経 済 性 に 対 す る 保 守 党 の 対 応 は 、 市 場 機 能 の 活 用 に 切 り換 え よ う と す る も の で あ り、 競 争 原 理 の 働 く市 場 メ カ ニ ズ ム に よ り 「効 率 化 」 を 促 進 す る こ と で あ っ た 。 さ ら に 、 従 業 員 を 含 め 小 規 模 投 資 家 を 育 成 す る こ と に よ り. 国 民 の 株 式 所 有 の 拡 大 を 図 り、 国 民 自 身 に 企 業 ひ い て は 英 国 産 業 の 業 績 に 強 い 関 心 を 抱 か せ る 土 壌 を形 成 し よ う とす る も の で あ っ た 。 言 っ て み れ ば 、 国 家 で は な く、 人 民 が 資 本 を 所 有 す る 体 制 で あ る 「人 民 資 本 主 義 」(popular capitalism)の 石崔 立 が 企 図 さ れ た の で あ る 。 サ ッ チ ャ ー 夫 人 は 、 労 働 者 が 株 主 に な り、 ま た 住 宅 等 の 財 産 所 有 者 に な れ ば 、 企 業 や 個 人 の 利 益 を 第 一 に し て 、 も う二 度 と国 有 化 や 公 共 部 門 の 拡 大 、つ ま り「英 国 社 会 主 義 」 を 望 ま な く な る と考 え て い る よ う で あ る 。 こ の よ うな 民 営 化 政 策 は 、 規 制 緩 和(deregulation)や 減 税 と並 ん で 、 民 間 資 本 の 救 済 ひ い て は 資 本 主 義 経 済 の 再 活 性 化 を 狙 っ て お り、 同 時 に 、 保 守 党 支 配 の 政 治 的 思 想 基 盤 を 労 働 者 階 級 や 中 間 層 に ま で 広 げ て い く 新 保 守 主 義 と 一 体 と な っ て い る の で あ る 。 英 国 の 民 活 政 策 の 結 果 、15の 主 要 国 営 企 業 を 含 む 多 数 の 中 小 企 業 が 民 営
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化 され る と と もに、1979年 当時 の国 営 企 業 の3分 の1(約60万
人の雇用)が
民 間 部 門 に 移 行 し、 そ の売 却 収 入 は110億 ポ ン ドに達 した 。この よ うに英 国
の 民活 とは 、従 来 、 公 共 部 門 の所 有 して い た資 本 お よ び財 産 を民 間 へ払 い
下 げ 、 そ の事 業 を民 営 化 し、 あ るい は 「
民 間 活 力導 入 」 の名 で公 共 部 門 の
事 業 に民 間企 業 を参 加 させ る こ とに よ っ て、 民 間 資 本 の 活 動 領 域 を広 げ る
こ とで あ る。 国 有 産 業 の 中 に は利 潤 率 の低 下 の た め に資 本 家 が放 棄 した部
門 を国有 化 す る もの もあ った が、 同時 に国 民 生 活 の 安 定 の た め に企 業 の公
有 化 され た ケ ー ス も多 か った。 そ れ らを今 で は全 て 民 営 化 しよ う と して い
る わ け で あ る。
これ ま で、 英 国福 祉 国 家 の 神髄 は低 家 賃 の 公 営 住 宅(council house)の
大 量 供 給 に あ る と言 わ れ て き た。 実 際 、1970年 代 ま で、 住 宅 資産 の3分 の
1が 公 営 住 宅 で あ っ た し、 これ に よ り、 英 国 は住 宅 ・都 市 問 題 を緩 和 で き
た の で あ る。 と こ ろ が、 サ ッチ ャー政 権 の下 で、 従 来 の住 宅 政 策 が 転 換 さ
れ 、 民 間 活 力 に 委 ね て 公 営 住 宅 が 払 い下 げ られ た。 こ の結 果 、 公 営住 宅 の
5分 の1が す で に個 人 に分 譲 され た と言 う。
こ うした 民営 化政 策 は 、 財政 の 整理 と民 間 の過 剰 資 本 へ の 投 資 先 あ る い
は市 場 を作 り出 す とい う経済 的 目的 を もって 行 われ た の は 指 摘 す る ま で も
な い。 さ らに は、 労 働 組 合 の分 断策 と も相 ま って 、 一 般 中 間 層 を取 り込 ん
だ政 治 的 、 イ デ オ ロギ ー 的 色彩 を も有 して い る。 サ ッチ ャー の 「人 民 資 本
主 義 」 が脚 光 を浴 び る所 以 で あ る。
サ ッ チ ャー リズ ム と英 国 地 方 自治 の 危機 一 地 方 政 府 機 能 の民 営 化 と地 方
財 政 の 中 央 統 制
サ ッチ ャー リズ ム の 下 で 、「福 祉 国 家 」か らの離 脱 を最 も明 確 に表 して い
る の が行 財 政 改 革 で あ る。 す な わ ち、 これ まで は 聖 域 と され て い た社 会 保
障 、 社 会 福 祉 、 医 療 、 教 育 等 の社 会 サ ー ビス を漸 次 整 理 して 、 これ を民 間
部 門 に委 譲 し、 関 連 す る組 織 や公 務 労 働 者 の 削 減 を行 って い る。 ま た、 英
国 地 方 自治 は、 地 方 政 府機 能 の民 営 化 と地 方 財政 の 中央 統 制 とい う流 れ の
中 で 、 ま さ に危 機 的 状 況 に追 い込 まれ て い る。 公 共 住 宅 の払 い下 げ、 直 営
英 国 に お け る民 営 化 政 策 と社 会 福 祉 行 政 の動 向(上)
現 業 部 門 の 縮 小 、 民 間 委 託 の促 進 、 都 市 再 開 発 にお け る地 方 政 府 の 権 限 の
縮 小 等 を通 して 、 地 方 政 府 機 能 の 民 営 化 が推 し進 め られ、 他方 で 、 一 般 補
助 金 の 算 定 ・配 分 方 式 の 変 更 、 資 本 歳 出 の 削減 、 中央 政 府 の設 定 す る歳 出
基 準 を こえ る地 方 政 府 へ の 罰 金 と して の 一般 補 助金 の 削減 、 さ ら に は地 方
税 率 の決 定 権 の制 限(ra七e-capping)と い う形 で地 方 財 政 の 中 央 統 制 が強 め
られ て き た。
と りわ け、 地 方 税 率 の 制 限(Rates Act 1984)は 、 レイ ト(唯 一 の地方税 と
しての不動産課税)に 基 づ く 財政 とい う 英 国 地 方 自治 の 根 幹 を 覆 す 制 度 改
変 とな って い る。 また 、1986年 の ロ ン ドン 都(GLC)と6つ
の 大 都 市 県
(MCCs)の
廃 止 は、 ロ ン ドン都 に代 表 され る労 働 党 支 配 の大 都 市 圏 自治 体
を解 体 す る こ とに よ って 、 対 立 す る勢 力 を敗 北 に追 い や る とい う象 徴 的 な
出 来 事 で あ っ た。 そ して 、90年か ら、伝 統 あ る レイ トが法 人 や 財 産 所 有 者 に
重 税 に な る とい う理 由 で 廃 止 され 、 平 等 負担 の人 頭 税(Poll Tax)に
か え
られ た 。 こ の税 制 改 革 の背 景 に は、 国 民 の所 得 格 差 が 縮 小 し 所 得 が 平均
化 した こ と、 社 会 サ ー ビス が救 貧 事 業 か ら一 般 市 民 対 策 へ と普 遍 化 を見 せ
て い る こ と か ら、 そ の 負 担 は受 益 者 に平 等 に課 せ られ るべ き とす る政 府 の
見解 が あ る。 この よ うな 中 央 政 府 に よ る強 硬 な地 方 自治 へ の対 応 に は 、新
保 守主 義 の政 策 が 地方 レベ ル に まで 貫徹 して い る こ と は指 摘 す る ま で もな
い。 福 祉 国家 政 策 を転 換 して公 共 部 門 の 解体 を図 り、 市 場 原 理 の導 入 を進
め る サ ッチ ャー政 権 の下 で の、 地 方 政 府 の民 営 化 と地 方 財政 の 集 権 化 政 策
の動 向 につ いて 予 断 を許 さな い が、 い ず れ に して も、 英 国地 方 自治 が根 底
か ら覆 され よ うと して い る。
サ ッ チ ャ ー リ ズ ム の5つ のE-民 間 委 託.競 争 入 札 の 導 入 こ う した 徹 底 し た 地 方 行 政 の 民 営 化 策 の 背 景 に は 、 財 政 危 機 に 起 因 す る 政 府 支 出 の 削 減 の 要 請 、 老 人 人 口 の 増 加 等 が あ る 。1977-78年 のratesupPort grant order(地 方 税 援二助 金 令)か ら 、 と く に1979年 以 来 、 地 方 財
政 の 抜 本 的 見 直 し が 行 わ れ て お り、 特 にoverspending(支 出超 過)の 自 治 体 へ の 対 応 は 厳 し さ を増 して い た 。
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化
こ の よ うな 地 方 政 府 の 民 営 化 と地 方 財 政 の 集 権 化 の 下 で 、 サ ッ チ ャ ー リ ズ ム の5つ のEが 唱 え ら れ て き た 。 す な わ ち 、 (1)economy(経 済 性) (2)efficiency(効 率 性) (3)exellence(優 秀 性) (4)enterprise(進 取 性) (5)effectiveness(効 果性)が そ れ ら で あ る 。 地 方 公 共 団 体 の サ ー ビ ス の 効 率 化 と い う観 点 か ら、 民 間 活 力 の 導 入 を 図 る た め 、 サ ッ チ ャ ー 政 権 は 地 方 公 共 団 体 の 各 種 の 事 業 施 行 に つ い て 幾 つ か の 大 胆 な 制 度 改 革 を 行 っ て き た 。 そ の 根 拠 法 と な っ た の が 「1988年 地 方 公 共 団 体 法 案 」(Local Government Bill 1988)で あ る。 こ の 法 案 の 最 も 重 要 な 項 目 の 一 つ が 、 地 方 公 共 団 体 の サ ー ビ ス に お け る 民 間 部 門 の 参 入 で あ っ た 。 民 間 団 体 の 参 画 を 一 層 推 進 し、 公 正 な 競 争 を 実 現 す る こ と で 、 地 方 公 共 団 体 の サ ー ビ ス を 効 率 化 す る こ と が 企 図 さ れ た の で あ る 。 そ の た め 、 次 の4つ の 主 要 な 規 定 が 明 記 さ れ る こ と と な っ た 。 (1)地方 公 共 団 体 の 施 行 す る 事 業 に お い て 、 義 務 的 に 民 間 事 業 体 を 参 加 さ せ う る 事 業 領 域 と して 、o ご み の収 集 業 務
o 建 造 物 清 掃 業 務
o 車 輔 管 理 業 務(警 察車 輌を除 く)
o 土 地 管 理 業 務
o 食 事 の供 給 業 務(学 校給食を含む)
の6つ の領 域 を追 加 す る。
(2)そ の 他 の 領 域 に お い て も 、 地 方 公 共 団 体 直 轄 事 業 体(Local Authority Direct Labour Organizations, 以 下DLOと 略す)が 事 業 を 施 行 す る 場 合 は 、事 業ご と に 経 理 を 区 分 す る と と も に 、 も し民 間 事 業 体 が 施 行 した 場 合 の 費 用 と の 比 較 、 事 業 方 式 工 事 単 価 等 に つ い て 、 年 次 報 告 書 を作 成 準 備 し な け れ ば な ら な い 。 こ れ ら が 適 切 に 行 わ れ な か っ た 場 合 は 、 自治 大 臣 はDLOの 閉
英 国 に お け る民 営化 政 策 と社 会 福祉 行 政 の動 向(上) 鎖 等 を 命 ず る こ と が で き る 。 ま た 、 環 境 大 臣 は 、 地 方 公 共 団 体 が 公 正 な 競 争 を 阻 害 しDLOに 事 業 施 行 さ せ て い る よ う な 場 合 は 、 当 該 入 札 の 結 果 を 無 効 に す る な ど の 適 切 な 措 置 を 講 ず る 権 能 を 有 す る 。 す で に1970年 代 に お い て は 、 地 方 公 共 団 体 の 建 設 事 業 や 管 理 事 業 を 請 負 ・施 行 し て い る地 方 公 共 体 直 轄 事 業 体(DLO)に 関 し て 、 そ の 非 効 率 性 や コ ス トの 高 さ な ど に 世 間 の 批 判 が 集 中 し て い た 。 そ の た め 、 政 府 は 「1980
年 地 方 行 政 ・計 画 ・土 地 法 」(Local Government Planning Act 1980)を 制 定 し 道 路 お よ び 建 物 の 新 規 建 設 事 業 や メ イ ン テ ナ ン ス 事 業 に お い て 競 争 入 札 制 度 を 義 務 づ け 、当 該 事 業 ご と にDLOの 経 理 を 明 確 に 区 分 し、民 間 事 業 者 と公 正 な 競 争 を さ せ る こ と に よ り、経 営 の 効 率 を 図 ろ う と し た 。 そ の 結 果 、 時 代 遅 れ の 慣 行 が 一 掃 さ れ 、 請 負 報 酬 制 度 の 改 善 が 図 ら れ 、 さ ら に は 民 間 施 行 の 有 利 な 領 域 とDLOの 直 轄 施 行 の 有 利 な 領 域 の 区 分 が 明 確 に な る な ど 、 多 く の 成 果 を あ げ た と言 わ れ て い る 。 し か し、 一 方 に は 、 依 然 と し てDLOの 技 術 の 未 熟 さや 経 営 能 力 の 不 十 分 な 点 も 指 摘 さ れ 、 と り わ け 小 規 模 な 維 持 管 理 業 務 に お い て は 、 単 に 伝 統 的 に 内 部 施 行(inhouse employees)が 行 わ れ て い る と い う理 由 の み で 、 非 効 率 な 事 業 施 行 が 是 認 さ れ て い る と い う指 摘 も あ る 。 行 政 コ ス トに お け る 「費 用 価 値 」 の 重 視 こ の よ うな 状 況 を 受 け て 、 政 府 は 再 び 「住 民 か ら徴 収 し た 税 金 は 、 最 大 の 価 値 を あ げ る よ う に 使 用 さ れ ね ば な ら な い 」 と の 理 念 の 下 に 、 民 間 事 業 者 の 参 加 し う る 業 務 を 拡 大 し、 民 間 業 者 とDLOと の 競 争 、 民 間 業 者 間 と の 競 争 に よ り、 地 方 公 共 団 体 の 事 業 施 行 の 効 率 化 を 図 ろ う と した 。 同 様 に
社 会 サ ー ビ ス 部(Soeial Serviees Department, 以 下SSDと 略 す)に お い て も企 業 管 理 的 マ ネ ー ジ メ ン トの 奨 励 が 近 年 強 力 に 進 め ら れ て い る。 と りわ け デ レ ク ・ レ イ ナ ー 卿(Sir Dereck Rayner)が サ ッ チ ャ ー 首 相 の ブ レイ ン と し て 指 名 さ れ 、 民 営 化 に 拍 車 が か け ら れ て い る 。 そ こ で は 行 政 コ ス トの 「費 用 価 値 」(vahe-for-mmey)の 重 視 が 徹 底 さ れ よ う と して い る 。 そ の た め 行 政 の 効 率 的 運 営 の 手 段 と し て 、 「会 計 監 査 委 員 会 」(Audit Commission)の
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活 用 が 図 ら れ 、 「英 国 地 方 政 府 会 計 監 査 委 員 会 」(The Audit Commission for Local Authorities in England and wales)か ら報 告 が 刊 行 さ れ て い る 。
と り わ け 「老 人 社 会 サ ー ビ ス の よ り 効 果 的 な 運 営 」(Managing Social Services for the Elderly More Effeetively)が 重 要 な 報 告 書 で あ ろ う。 英 国 に お い て も 、本 格 的 な 高 齢 社 会 の 到 来 を 迎 え て 、地 方 自治 体 社 会 福 祉 サ ー ビ ス の 仕 組 み の 再 編 成 が 大 き な 課 題 と な っ て い る 。(英国 の 人 口 は 、1986年 現 在 、 5,676万 人 一 男2,765万 人 、 女2,912万 人 一 で あ り、 人 口 の 伸 び 率 は1970年 代 が 年 率0.09%、1980年 代 が0.14%で 、80年 代 は 幾 分 上 昇 し て い る 。1986 年 の 年 齢 区 分 の 人 口 は14歳 以 下 が1,080万 人 、15歳 か ら64歳 以 上 の 人 口 は 安 定 的 に 伸 び て お り、65(歳以 上 の 人 口 は846万 入 で 老 齢 化 率 は15.3%と な っ て い る)そ こ で 、 将 来 避 け て 通 れ な い 課 題 が 財 政 問 題 で あ る と の 認 識 の 下 で 、 勧 告 が 提 示 さ れ て い る 。 と りわ け 老 人 福 祉 の 分 野 に お い て は 、 コ ミ ュ ニ テ ィ ・ケ ア の 推 進 を基 調 と し て 、 施 設 ケ ア の 分 野 に お け る 民 営 化 お よ び 在 宅 ケ ア の 分 野 に お け る イ ン フ ォ ー マ ル ・ケ ア(家 族 、親 族 、 近 隣 、 友 人 等 の 援助) の 重 視 と い う方 針 が 打 ち 出 さ れ て い る 。 こ の よ う に 、 戦 後 の 社 会 福 祉 、 社 会 保 障 の 基 本 的 な 枠 組 を形 成 し て き た 「福 祉 国 家 」 か ら 明 確 な 転 換 が 図 ら
れ よ うと して い る。
「
地 方 政 府 会 計 監 査 委員会」の新設
行 政 サ ー ビス の効 率 性 の検 討 とそ の追 求 とい う目的 で 、 「1982年 地 方 財
政 法 」 に基 づ い て地 方 自治体 の会 計 監 査 制 度 が改 正 され 、 「地 方 政 府 会 計
監 査 委 員 会 」 が83年1月21日
に設 立 され て い る。 「
地 方 政 府 会 計 監 査 委 員
会 」 の前 身 は 「地 方 会 計 監 査 サ ー ビ ス」 で あ る。 こ こか ら地 方 自治 体 の行
政 監 査 業 務 の責 任 を受 けつ いで お り、 会 計 監 査 に関 す る 権 限 を有 し、 また
「会 計 監査員」の任命
につ いても、以前よ
り民 間人 を 中心 に した 登 用 が行
われ る よ うに な っ た。
英 国 の地 方 自治 体(イ ングラン ドおよびウェールズ)の 会 計 監 査 制 度 は 、 内
部 監 査 と外 部 監 査 が あ る。 内部 監 査 に つ い て は、 予 算 管 理 お よび会 計 監 査
は財 政 担 当 部 長 の下 で 実 施 され て お り、これ は従 来 通 りで あ る。 「1982年地
英 国 に お け る民 営 化 政 策 と社 会 福 祉 行 政 の動 向(上)
方 財政 法 」 の 改 正 に よ り修 正 を受 けた の は 外 部 監 査 につ い て で あ る。 す な
わ ち、 新 た に 「全 国 自治 体 監 査委 員会 」 が設 け られ 、 地 方 自治 体 は 「全 国
自治 体 監 査 委 員会 」 が任 命 す る監 査 人 の監 査 を受託 しな けれ ばな ら ない こ
と とされ た。「
委 員会 」 は大 臣 に よ って 任 命 を受 け る13名 以 上17名 以 下 の 委
員 に よ って(構成 され、 大 臣 は委 員 の任 命 に 当 って、 事 前 に 自治 体 の 連 合 団
体 や 自治 体 職 員 の労 働 組 合 、 会 計 士 団 体 等 に協 議 しな け れ ば な らな い と さ
れ て い る 。 「経 済 合理性」の追求い ま 一 つ の 重 要 な改 正 事 項 は、会 計 監 査 の対 象 を これ ま で の 「
適 法 性 」
の み な らず 、 「
経 済 合 理 性」を も付 加 す る こ と とされ た こ とで あ る。 つ ま り
「
委員会」の責任は、イング
ラ ン ドお よび ウ ェ ー ル ズ に お け る地 方 政府、
そ の他 の公 共 団体 の会 計 監 査 に対 して で あ り、 そ の任 務 は、(1)地方 自治 体
が そ の政 策 に一 貫 性 を保 ち な が ら、 所 期 の 目的 達 成 のた め に財 源 を合 法 的
に支 出 で き る よ うに援二
助 す る こ と、
(2)地方 政 府 が供 給 を決 定 した サ ー ビス が、 で き るだ け経 済 的 、 効 率 的 、 効
果 的 に運 営 され る よ う援 助 す る こ とで あ り、 直 接 の会 計 監 査 を通 じて 、 ま
た 「委 員 会 」 の実 施 す る 「費 用 価 値 」 の調 査 研 究 を進 め て い くと され た 。
「
全 国 監 査 委員会」には、会
計 監 査 に関 す る役 割 の ほかに、自治 体 経 営
の経 済 合 理 性 に 関 す る調 査 研 究 を、 自 ら行 うか、 ま た は そ うした 調 査研 究
を助 成 す る とい う役 割 が あ る。 こ う した 調 査 研 究 を実 施 ま た は 助成 す る場
合 に は、監 査 委 員 会 は事 前 に 自治 体 の全 国 団体 と協 議 しな けれ ば な らない 。
ま た監 査 人 は、 地 方 自治体 の会 計 監 査 に 当 って 、 「
全 国 監 査 委 員 会 」が定
め る監 査 実施 要 領 に 即 して 、 次 の3点
を監 査 しな けれ ば な らな い。
(1)地方 自治 体 会 計 規 則 、 そ の 他 の法 令 の 規 定 に従 って 会 計 が処 理 され て い
る か。
(2)会計 の編 さん が適 切 に な され て い る か 。
(3)資源 の使 用 に 当 って 、 経 済 性(ecmmy)、
効 率 性(efficiency)お よ び 有
効性(effectiveness)を 石
崔保 す るた め に適 切 に 扱 わ れ て い る か。
密
教
文
化
「地 方 政 府 に お け る 経済性、効率性、 お よ び 有 効 性 の 改 善 」 「監 査 委員会」は、1983年11月に、「地方政 府 に お け る 経済性、効率性、およ び 有 効 性 の 改 善 」(lmproving Ecmomy, Efficiency and Effectiveness in Local Government in England and Wales)と 題 す る ハ ン ドブ ッ ク を 作 成 し 、 全 自治 体 に 配 布 し て い る 。 これ は 、 元 来 、 地 区 監 査 官 や 民 間 会 計 士 の 研 修 用 の テ キ ス トで あ っ た も の を べ 一 ス に して 、 地 方 自治 体 の 監 査 の 参 考 書 と して 作 成 され た も の で あ る 。 こ れ に よ り、 効 率 的 な 地 方 行 政 の 運 営 管 理 の ノ ウハ ウ の 普 及 に 努 め て い る 。 こ の ハ ン ドブ ッ ク で は 、 第1章 で 、 他 の 自 治 体 と比 較 し て の チ ェ ッ ク の 方 法 が 紹 介 さ れ 、 第2章 で 、 自 治 体 経 営 に お け る 経 営 合 理 性 に 関 す る 全 般 的 な 考 え 方 お よ び 自 己 診 断 方 法 が 述 べ ら れ て お り、 第3章 で は 、1983年 度 の 会 計 監 査 に お い て 特 に 力 点 が 入 れ ら れ た 分 野 で あ る 成 人 教 育 、 警 察 、 ご み 収 集 お よ び 物 品 購 入 の4つ の 分 野 に お い て 、 具 体 的 な 方 法 論 が 紹 介 さ れ て い る 。 さ ら に 、 経 済 合 理 性 に 関 す る 調 査 研 究 に 加 え て 、 「監 査 委 員 会 」は 、 法 令 の 特 定 の 規 定 や 政 府 の 指 導 が 、 自 治 体 経 営 の 経 済 合 理 性 に 与 え る 影 響 に つ て 、 調 査 研 究 を 実 施 ま た は 助 成 す る こ と が で き る と さ れ て い る 。 ま た 、「監 査 委 員 会 」 は 、 特 定 の 自 治 体 の 要 望 に 応 じ て 、 そ の 自 治 体 の 経 営 改 善 策 を 有 償 で 調 査 研 究 す る こ と が で き る よ うに な っ て い る 。 社 会 福 祉 サ ー ビ ス に お け る 「費 用 価 値 」 の 検 討 行 政 福 祉 サ ー ビ ス の コ ス ト ・パ フ ォ ー マ ン ス を 効 果 的 に 進 め て い く上 で 「費 用価値」の分析に関 す る 特 別 研 究 が 積 極 的 に 推 進 さ れ て いる。「費 用 価 値 」 と は 、 経 済 的 、 効 率 的 、 効 果 的 な サ ー ビ ス の 運 営 に 投 入 さ れ た 資 金 か ら得 ら れ る 便 益(benefit)の こ と で あ る が 、 単 に 財 政 的 な 面 だ け で は な く ア ウ トプ ッ トの 経 済 性 、 運 営 の 効 率 性 、 結 果 の 効 果 性 と い う3つ の 基 準 か ら、 サ ー ビ ス 供 給 に 関 す る 分 析 が 行 わ れ て い る 。 企 業 管 理 的 な 方 式 に 関 連 して 、 「ア ー サ ー ・ア ン ダ ー セ ン社 」(経 営 、 財 政 、 マ ー ケ テ ィ ン グ、 製 造 、 契 約/企 画 等 の分 野 に お け る戦 略 的 な計 画 の立 案 や 、
英 国 に お け る民 営 化 政策 と社 会 福 祉 行 政 の動 向(上) 運 営面 で の経 営 を 指示 す る コ ンサ ル タン ト会 社)が 中 心 的 な 役 割 を 果 た して い る と 言 わ れ 、 民 間 の 経 営 手 法 を 公 的 サ ー ビ ス の 分 野 に 本 格 的 に 導 入 して 、 費 用 面 か ら 合 理 的 な シ ス テ ム の あ り方 を 検 討 し て い る 。 そ の 研 究 の 課 題 を 要 約 して お く と1) a. 各 地 方 政 府 の 社 会 サ ー ビ ス 部(SSD)が 老 人 に 提 供 し て い る ケ ア の タ イ プ に 格 差 が み ら れ る が 、 こ の 格 差 の 背 後 に あ る 要 因 は 何 で あ る か を 明 ら か に す る 。 b. こ れ ら の 要 因 が 、 提 供 さ れ た ケ ア の 費 用 と達 成 さ れ た 「費 用 価 値 」 に ど の よ う な 影 響 を 及 ぼ し た か を 検 討 す る 。 イ ン グ ラ ン ドお よ び ウ ェ ー ル ズ に お け る 老 人 人 口 の 増 加 の 見 通 し は 、19 81-91年 に お い て75歳 以 上 人 口 が15%増 、85歳 以 上 で30%増 と予 想 さ れ て い る 。 そ こ で 、 老 人 の た め の 施 設 ケ ア お よ び コ ミ ュ ニ テ ィ ・サ ー ビ ス(ホ ー ムヘ ル プ 、 デ イ ・ケ ア、 食 事 サ ー ビス 、ケ ア つ き住 宅等)に つ い て 、 地 方 自治 体 は 、 年 間10億 ポ ン ド以 上 支 出 して い る が 、 実 際 に は 、 老 人 福 祉 サ ー ビ ス へ の 支 出 割 合 に お い て 格 差 が み ら れ る 。 そ れ は 、 単 位 費 用 、 人 口、NHS の 長 期 入 院 施 設 、 そ の 他 の 諸 要 因 が 考 え ら れ る が 、 老 人 に 提 供 さ れ る サ ー ビ ス の 水 準 に つ い て は 、 そ の か な りの 部 分 が そ の 地 域 で の 政 治 的 選 択 の 問 題 と な っ て い る 。 現 在 、 施 設 ケ ア が 提 供 され て い る の は65歳 以 上 人 口 の 約2%に 対 して で あ り、 さ ら に13%の 老 人 に は 在 宅 に お け る 援 助 が 行 わ れ て い る 。 つ ま り、 施 設 ケ ア 利 用 数 は わ ず か な の で あ る 。1自 治 体 当 りの 施 設 ケ ア 費 用 は 、年 間 3,000ポ ン ド(75万 円)で あ り、 コ ミ ュ ニ テ ィ ・ケ ア の 費 用 よ り も30%か ら 50%も 高 い 。 も し こ れ 以 上 入 所 ケ ア 施 設 を増 加 す る と な る と、 膨 大 な 資 源 問 題 が 出 て く る 。 老 人 を で き る だ け在 宅 で 生 活 で き る よ う に 援 助 す る こ と が 重 要 で あ る 。 不 必 要 な あ る い は 早 過 ぎ る施 設 入 所 の 許 可 を 抑 制 さ れ る べ き で あ り、 現 状 で は 、 大 多 数 の 高 齢 者 は 自 力 で 頑 張 っ て い る か 、 適 切 な 援 助 を 親 族 、 友 人 、 非 営 利 団 体 等 か ら受 け て お り、 行 政 社 会 サ ー ビ ス に 援 助 を 求 め て い な い 。 も し、 こ の よ うな 事 情 が 実 質 的 に 変 化 し、 か な り多 く の
密 教 文 化
老 人 が 自分 の住 ん で い る行 政 か らの援 助 を求 め る とな る と、 行 政 側 で は、
現 在 の資 源 の範 囲 で対 応 す る こ とが で き な くな る。老 人 の た め の社 会 サ ー
ビス の潜 在 的 需 要 に は実 質 的 に限 度 が ない 。
大 多 数 の 自治 体 社 会 サ ー ビス部 の実 施 は うま く行 って い る。 しか しあ る
地 域 で は、 老 人 へ の社 会 サ ー ビス の実 施 につ い て運 営 上 の 弱 点 がみ られ 、
これ が改 善 され れ ば、 自治 体 へ の増 大 す る圧 力 を軽 減 し、 よ り多 く の資 源
を老 人 の ケ ア に振 り向 け る こ と がで き る。
具 体 的 な 課 題 と して は 、 1. あ る 人 々 は 、 施 設 入 所 が 不 適 切 な 状 態 に あ る 。施 設 定 員 に余 裕 が な い た め、施 設 ケ ア を必要 とす る者 に そ れ が 保 障 され
ず 、 危険 な が ら在 宅 で の 生 活 を して い る者 が み られ る。
あ る 自治体 で は、 必 要 な 資源 が あ れ ば、 在 宅 で援 助 を受 け て生 活 す る こ
とが で き る と判 断 され た 。 つ ま り、 どの 自治 体 の ホ ー ム に お い て も、 最 重
度 の 身体 障害 を持 つ 人 の数 は か な り少 な い。 こ の こ とは、 地 域 コ ミ ュ ニ テ
ィ と老 人 の特 性 を反 映 して い る の で あ る が、 一 方 効 果 的 な運 営 の 欠如 が そ
の 背 後 に あ る とみ られ る。
一 個 々 人 の ニ ー ドに関 す る必要 な情 報 が体 系 的 に分 析され、運営 に 生 か さ
れ て い な い。
一 入所 手続 きが 効果 的 でなく、それを 最 も必 要 とす る人 達 に 入所 が 認 め ら
れ て い な い。
一 地 域 に お け る老 人 お よび老 人 を ケ ア して い る親 族 や 友 人 に対 す る援 助 が
欠 けて い る。
2. コ ミ ュニ テ ィ ・サ ー ビス が サ ー ビス を最 も必 要 とす る人 々 に提 供 され
て い な い。
あ る 自治 体 の調 査 で は、 老 人 の た め の コ ミュ ニテ ィ.サ ー ビス の た め の
支 出 の うち、 半 分 あ る い は それ 以 上 が、 明 らか に そ れ を必 要 と しな い 人 た
ち に 向 け られ て い た。
3. 不 適 切 な保 健 ・住 宅 ・社会 サ ー ビス 間 の協 力 関 係 。
英 国 に お け る民 営 化 政策 と社 会 福 祉 行 政 の動 向(上) ケ ア つ き 住 宅 の 提 供 、 ウ ォ ー デ ン(介 護 管 理 人)の 採 用 と研 修 、 あ る い は 社 会 サ ー ビ ス 部 の 対 象 で あ る 高 齢 の 身 体 障 害 者 に 対 す る 訪 問 看 護 援 二助 お よ び 医 療 的 な 処 置 等 に 関 す る 仕 組 み は 効 果 的 と い うに は 程 遠 い も の で あ り、 改 善 す べ き で あ る 。 4. コ ミ ュ ニ テ ィ ・サ ー ビ ス の 不 適 切 な 運 営 。 個 別 の サ ー ビ ス を 提 供 す る に 当 っ て 、 と く に ホ ー ム ヘ ル プ ・サ ー ビ ス に つ い て 、 全 体 的 な 目的 が は っ き り し て い な い こ と が あ る 。 5. サ ー ビ ス 提 供 に 当 っ て の 無 駄 。 一 配 食 サ ー ビ ス の 平 均 回 数が、週2回 か ら5回 ま で 多 様 で あ った。わずか 週2回 の 食 事 が 外 出 困 難 な 老 人 の 福 祉 に と っ て ど の よ う に 役 立 つ か は っ き り し て い な い 。 一 ホ ー ム ヘ ル パ ー の 勤 務 管 理 が 不 適当で、移動に 時 間 が 取 られ 過ぎ、サー ビ ス 水 準 を 落 と して い る 。 一 デ イ ・ケ ア の 送 迎 コ ス トが 必 要 以 上 に か か っ て いる。 一 入 所 施 設 に つ い て は 、 昼 間 の職 員 配 置 費 用 が か か りす ぎ る傾 向 に あ り、 不 必 要 な 超 過 勤 務 と 代 替 職 員 の 利 用 が み られ る 。 夜 間 に つ い て は 、 い く つ か の 自 治 体 で 、 実 際 の 夜 勤 職 員 が 任 命 さ れ て い る に も か か わ ら ず 、 宿 直 費 用 を 職 員 に 払 っ て い る こ と も あ っ た 。 「新 経 営 管 理主義」の胎動 「会 計 監 査 委員会」の設置を契 機 と して、社会サ ー ビ ス 部 に お い て も 「新 経 営 管 理主義」(New Managerialism)が 導 入 さ れ つ つ ある。その 中 身 は 、 o 施 策 の 優 先 順 位 づ け(prioritization) o ク ラ イ エ ン ト の 目 標 化(Targetting)
o ユ ニ ッ ト ・ コ ス ト の 抑 制(Containmellt of Unit Cost) o 割 当(Rationing)
o 料 金(Charges) o 販 売(Sales)
密
教
文
化
か ら成 り立 っ て い る 。 支 出 抑 制 の 下 に 、 社 会 サ ー ビ ス 部 の ア ウ トプ ッ トが 管 理 の 下 に 置 か れ よ う と して い る 。こ のNew Managerialismに つ い て は 、 後 段 に お い て 検 討 を 試 み た い 。III 自 治 体 労 働 の 民 間 委 託 化 の 現 実 と評 価
民 営 化 に は、 以 下 の3っ の方 法 が あ る と言 われ て い る。
(1)国家 が これ まで も って い た 資産 を売 却 す る方 法 。
地 方 自治 体 の住 宅 供 給 部 門 を廃 止 して 、公 営 住 宅 を売 却 した り、 また 病
院 の 清 掃(ク リ一ニング部門)や 給 食 を民 間 に放 出す る。
(2)国家 の補 助 金 の削 減 。
NHSで
受 益 して い た サ ー ビ スに 料 金 制 を導 入 した り、 学 生 へ の奨 学 金
を ロー ン に変 えた り、ま た公 共 的 な乗 り物 へ の補 助 金 を大 幅 に 削減 す る 。
(3)国家 の規 制 を ゆ る めて 、 民 間 との 競 争 を導 入 して 効 率 的 な方 を 選 択 す
る。
と くに 、 競 争 入 札 の導 入 につ い て は、 ご み処 理 、 道 路 清 掃 、 土 地 管 理 、
車両 の 維 持 補 修 、 建 物 清 掃 、 給 食 の6つ の部 門 に お い て 競 争 入 札 が義
義務 づ
け られ 、地 方 政 府 の 直 営 現 業 部 門 の解 体 ・合 理 化 、 業 務 の 民 間 委 託 が 推 し
進 め られ て い る。
一 般 的 に い って 、地 方 自治体 は直営現業事業 に従事す る多 くの職員 を抱
え て い る現 状 か ら、 民 間委 託 化 は直 営 事 業 に関 連 す る職 員 を解 雇 す る こ と
に な る。 英 国 で は、 わ が 国 の よ うに配 置 転 換 で 解 決 す る とい う方 法 は取 ら
れ て い な い。 労 働 党 支 配 の地 方 自治 体 は、 そ の 政 治 姿 勢 か ら職 員解 雇 の道
を選 択 しな い傾 向 に あ り、 ま た 自治 体 職 員 も一 般 的 に は 直 営 部 門 に支 持 的
立 場 にい る。 こ こ で は、 争 議 の発 生 に もか か わ らず、 民 間 委 託 を強 行 した
ワ ン ズ ワ ー ス の事 例2)を 見て い くこ とに す る。
ワ ン ズ ワ ー ス に お け る民 活
ワ ン ズ ワ ー ス(Wandsworth)は
、 人 口25万 人 の ロ ン ドン特 別 区 で あ り、
同 区 は1978年 の議 会 選 挙 で、 労 働 党 か ら区 の政 権(区 議会 の過半 数議席)を
英 国 に お け る民 営 化 政 策 と社会 福 祉 行 政 の 動 向(上)
奪 った 保 守 党 が、 サ ッチ ャ ー政 権 の 誕 生 と と も に同 政 権 の政 策 に した が っ
て 経 営 合 理 化 を開 始 し、ごみ収 集業 務 の合 理 化 交 渉 を労組 に対 して 始 めた 。
労組 は 、 交 渉 が 決 裂 す れ ば民 間 委 託 化 が 行 わ れ る との脅 威 の下 に、 ごみ 収
集車9台
お よ び]職員39名
の削 減(年 間40万ポン ド-1億4000万 円の経 費節減)
とい う合 理 化 に合 意 し、1981年1月
か ら合理 化 が 実 施 され た。
さ らに 区 当 局 は、1981年1月
、 現 業 職 員300名 お よび事 務職 員400名 の削
減 とい う合 理 化 案 を打 ち出 し、 労組 側 は 現 業 職 員 の組 合 と事 務 職 員 の組 合
との合 同 闘 争 委 員 会 を設 置 して 、組 合 員 の圧 倒 的 支 持 の下 に、 統 一 行 動 日
を設 定 す るな ど抵 抗 運 動 を開 始 した 。 そ こで 区 当 局 は、 道 路 清 掃 業 務 に焦
点 を 当 て て 、 組 合 に対 して 合 理 化交 渉 を開始 し、1981年12月 に 職 員100名
削 減 と勤 務 時 間 の 変 更 に合 意 した。 しか し区 当 局 は、 こ の合 理 化 交 渉 を進
め る一 方 で、 道 路 清 掃 業 務 を競 争 入札 に付 す べ く準 備 を行 い 、1982年1月
遂 に民 間委 託 を決 定 した の で あ る。
そ して 、5月
の 区 議会 選挙 で、 引 き続 き保 守 党 が 過 半 数 を獲 得 した 。 こ
れ が、 労 組 側 の 闘 争 力 を弱 め る こ と とな り、 も と も と強 力 な行 動 を好 ま な
い 事 務 職 員 組 合 が、 資 金不 足 等 の理 由 で戦 線 か ら離 脱 し、 現 業 員 労 組 は、
労 組 内部 か ら も離 脱 者 を 出 し始 め る。 こ うした孤 立 化 した 状 況 か ら、 労 組
は や む な く当 局 の通 告 を受 け入 れ 、5月 末 に 職 場 復 帰 を行 う と と もに、合 理
化 の 可 能 性 を検 討 した もの の、 入 札 参 加 の民 間 業 者 に打 ち勝 つ ほ どの 合理
化 は不 可 能 とみ て 、 合 理 化 交 渉 を諦 めて 、 退 職 金 上 乗 せ 交 渉 を開始 した。
結 局、 ごみ 収 集 業 務 は民 間 業 者 に委 託 され 、 労 組 側 の全 面 敗 北 に終 わ っ て
しま うの で あ る。
民 間 業 者 の 質 の低 さ
とこ ろ が、 サ ッチ ャー首 相 や 地 方 行 政 を所 管 す る環 境 大 臣 が他 の 自治 体
も見 習 うべ き と した(主 として保守党支配の)自 治 体 で 実 施 され 始 め た 民 間
委 託 に 様 々 な トラ ブ ル が生 じて い る。 例 え ば、 先 の ワ ンズ ワー スで は、 道
路清 掃 、 ごみ 収 集 に続 い て 、 他 の事 業 にお い て も民 間委 託 を進 めた が 、 草
刈 り業 務 を受 託 した 業 者 が 、経 費 を落 札 額 以 下 に お さえ る た め に、 作業 員
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文
化
の給 与 引 き下 げ を行 い 、 そ の結 果 、 作 業 員 の4週 間 の ス トラ イ キ が起 こ っ
た。 ワ ンズ ワ ー ス で は、 同業 者 に対 し、 業 務 内容 不 十 分 を理 由 に罰 金 を課
す る と とも に、 同 区 職 員 が毎 日直 接 に業 者 を指導 す る とい う事 態 に至 った
の で あ る。
この よ うに、 ワ ン ズ ワー ス の例 にみ られ る よ うに、 受 託 業 者 の 業 務 の 質
の低 さ に悩 む 自治体 は 多 い よ うで あ る。 全 国新 聞 の記 事 に掲 載 され た だ け
で も他 に3市
あ り、 バ ー ス(Bath)で
は、 民 間 委 託 化 され た ごみ 収 集 に 関
して 、市 民 か らの苦 情 が週200件 を上 回 る とい う状 態 で あ る と伝 え ら れ て
い る3)。 受 託 業 者 の業 務 の 質 の 悪 さを改 善 す る た め に、 自治 体 側 で は、 職
員 の検 査 員 を配 置 して 、 業 務 を監視 させ た り、 要 求 され た 業 務 水 準 に達 し
な い場 合 に、 業 者 に罰 金 を課 す る条 項 を契 約 書 にい れ る と か、 種、
々の工 夫
を行 った よ うで あ る が 、 今後 の推 移 が注 目され る。
政 府 の意 に反 して 、 英 国 の 自治 体 にお い て 民 間 委託 が 普 及 しな い 背 景 に
は、 これ ま で伝 統 的 に直 営 方 式 で行 って きた とい う歴 史 的 事 情 が あ る。 し
た が って 、 自治 体 関 係 者 に とって は、 自治 体 の 業 務 は 自治 体 が 直 営 で 行 う
の は当 然 と考 え、 自治 体 職 員 に失 業 者 ま で 出 して民 間委 託 を 実施 す る とい
うこ と には 抵 抗 を感 じる とい うこ とが あ る。
一方、受託し た 民 間 業 者は、それま で 直 営 現業 部 門 で働 い て い た 職 員 の
一 部 を雇い、切り詰 めた 経 費 、低賃金で業務 を行 うため、 必要なサー ビス
の水 準 を維 持 で きな い とい う問 題 点 も、 民 間業 者側 に十 分 な態 勢 が 整 って
い な い証 左 とい え よ う。 い ず れ に して も、 民 営 化 後 の変 化 と して 表 れ た も
の は 、雇 用 機 会 の減 少 で あ り、 労働 密 度 の強 化 で あ っ た。 自治 体 と民 間 の
労働 条 件 の差 、 民 間委 託 後 の仕 事 の量 の変 化 が社 会 問 題 と な って い る。
総 じて、 サ ッチ ャ ー首 相 の地 方 行 革 は イ ギ リス社 会 の 貧 富 の格 差 を拡 大
し、 行 政 サ ー ビス の地 域 間格 差 を拡 大 して い る。 新 保 守 主 義 の下 で、 かっ
て の 「
福 祉 国家 」 の下 で の共 同 責任(Communal
Responsibility)は か な ぐ り
捨 て られ 、 税 に よ る再 配 分 の あ り方 を め ぐって 、 現在 で は 「持 て る もの 」
と 「持 た ざ る も の」 と の格 差 が拡 大 しつ つ あ る。「自治 体 社 会 主 義
義」を標 榜
英 国 に お け る民 営 化 政 策 と社 会福 祉 行 政 の 動 向(上) す る 福 祉 志 向 の 地 方 自 治 体(政 府 の表 現 に よれ ば支 出超 過high-spendingの 自 治 体)に 対 し て 制 裁 措 置 の 強 行 が な さ れ た 。 こ れ を 、 中 央 一 地 方 の 財 政 関 係 で み る と 、 「レ イ フ ィ ー ル ド委 員 会 」(1976年)以 来 、 地 方 行 政 の 費 用 負 担 の 課 題 が 議 論 さ れ て き た 。 近 年 、 補 助 金 の 比 率 の 動 向 を 見 る と 、 明 白 に そ の 低 下 が 表 れ て い る 。 地 方 財 政 に 占 め る 中 央 か ら の 補 助 金 の 割 合 は 、1979 /80年 に お い て61%、1984/85年 で は52%、1986/87年 に は46.6%と 大 き く減 額 さ れ て い る 。 こ う して 、 資 源 の 管 理 を 反 映 して 、 「会 計 監 査 委 員 会 」の 設 置 、 民 営 化 の 推 進 、 人 頭 税 の 導 入 等 が 相 次 い で 実 施 さ れ 、 こ こ に 財 政 を 強 力 に 抑 制 し て い く、 つ ま り 「福 祉 国 家 」 の 負 担 軽 減 と い う至 上 命 令 が 実 行 さ れ て い る 。 そ し て 、 近 年 、 ア メ リ カ 的 な 発 想 で あ る プ ラ イ バ タ イ ゼ ー シ ョ ン ・民 間 委 託 が 英 国 に お い て い よ い よ 浸 透 して き て い る 。 と り わ け 、 マ ー ク ス ・ア ン ド ・ス ペ ン サ ー((Marks and Spencer)・ モ デ ル が 民 活 の 雛 形 と さ れ て い る 。
IV 民営化政策 と社会福祉 の動向
「福 祉 の 混 合 経済」こ れ ま で 、民 間 セ ク タ ー が 商 品 と し て 社 会 保 障 の 給 付 サ ー ビ ス を 販 売 し、 社 会 的 ニ ー ドを 満 た す と い うこ と が み られ た 。 こ う し た 動 向 は 、「福 祉 の 混 合 経 済 」(mixed economy of welfare)と 称 せ られ て 、 と りわ け 、 今 日、 社 会 福 祉 サ ー ビ ス の 分 野 に お い て 注 目 さ れ て い る 。 「福 祉 国 家 」に お け る 経 済 セ ク タ ー の シ ス テ ム は 公 企 業 と私 企 業 と の 「混 合 経 済 」 で あ る が 、 福 祉 セ ク タ ー に お い て も、 公 的 サ ー ビ ス と非 営 利 的 民 間 サ ー ビ ス に 加 え て 、 私 企 業 的 サ ー ビ ス が 新 し く参 入 す る 傾 向 を み せ て い る 。 そ れ が 「福 祉 の 混 合 経 済 」 で あ る 。 社 会 福 祉 に お け る 民 間 の 重 要 性 を 強 調 し た 「ウ ル フ ェ ン デ ン 報 告 」 が 刊 行 さ れ た 翌 年 に 成 立 した サ ッ チ ャ ー 政 権 は 、 ソ ー シ ャ ル ・ポ リ シ ー の 分 野 に お け る 競 争 原 理 の 利 点 を 説 き 、 公 的 部 門 の 縮 小 と私 的 部 門 の 拡 大 に 努 め て き た 。 い ま の と こ ろ 社 会 保 障 、 医 療 に お け る 民 営 化 政 策 は 、 年 金 制 度 、
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文
化
NHS機 構 を 対 象 に 展 開 さ れ て き た 。 ま た 社 会 福 祉 サ ー ビ ス の 領 域 に お い て 、 私 的 部 門 に お け る 営 利 シ ス テ ム は ま だ 揺 盤 期 の 状 態 に あ る と 言 え よ う。 民 間 の シ ェ ル タ ー ド ・ハ ウ ジ ン グ 、 ナ ー シ ン グ ・ホ ー ム お よ び レ ジ デ ン シ ヤ ル ・ホ ー ム の 動 向 先 に 触 れ た よ うに 、 サ ッ チ ャ ー 政 府 の 公 共 支 出 の 削 減 に よ り、 そ の 影 響 を 最 も大 き く受 け た の は 住 宅 部 門 で あ る 。公 営 住 宅 の 新 規 建 設 が 抑 制 さ れ 、 公 営 住 宅 の 民 間 払 い 下 げ が 進 め ら れ た 結 果 、 住 宅 供 給 に お け る 私 的 部 門 の 役 割 は7-8年 の 間 に 拡 大 した 。 か っ て 英 国 で は 、 公 営 住 宅 に 住 む 人 々 の 割 合 は 多 く、 持 家 居 住 者 は 少 な か っ た 。 し か し、1979年 に は32%を 占 め た 公 営 住 宅 の 比 率 が84年 に は28%に ま で 減 少 し 、 持 家 の 比 率 は 逆 に1979年 か ら84年 に か け て54%か ら61%へ と増 大 した 。 ま た 都 心 に 近 く 老 朽 化 し た 賃 貸 公 営 住 宅 を 不 動 産 業 者 が 安 く購 入 し、 そ れ を 高 級 分 譲 住 宅 と して 売 りに 出 す と い う こ と も行 わ れ て い る 。 シ ェ ル タ ー ド ハ・ウ ジ ン グ(shelterd housing)と 呼 ば れ る 老 人 用 ケ ア 付 住 宅 は 、 も と も と公 的 シ ス テ ム に よ る 老 人 用 賃 貸 住 宅 が 中 心 で あ っ た 。 と こ ろ が1980年 代 以 降 、 民 間 企 業 に よ る 分 譲 用 の シ ェ ル タ ー ド ・ハ ウ ジ ン グ が 増 加 し て き て い る 。80年 代 の 初 頭 で は 、 民 間 の シ ェ ル タ ー ド ・ハ ウ ジ ン グ は 約2500戸 あ り、 そ の 潜 在 的 市 場 は 年 間 約1万5000戸 と 見 込 ま れ て い た 。 公 営 の シ ェ ル タ ー ド ・ハ ウ ジ ン グ の 待 機 リス トが 相 当 数 に 及 ん で い る 現 状 か ら判 断 し て 、 英 国 で は 、 シ ェ ル タ ー ド ・ハ ウ ジ ン グ の 需 要 は 今 後 さ ら に 増 大 して い く こ と が 予 想 さ れ て い る 。 た だ 私 的 部 門 は 、 建 設 と販 売 が 中 心 で 、 シ ェ ル タ ー ド ・ハ ウ ジ ン グ に 独 自 の ウ ォ ー デ ン ・サ ー ビ ス 等 は 、 非 営 利 団 体 と契 約 を 結 ん で 、 ボ ラ ン タ リ ー ・シ ス テ ム の 協 力 の 下 に 運 営 さ れ る 場 合 が 多 い 。 老 人 ホ ー ム の 分 野 で も 、 私 的 部 門 の 役 割 が 近 年 大 き く な っ て き た 。 周 知 の と お り、 英 国 の 老 人 ホ ー ム は も と も と公 営 が 中 心 で あ っ た 。1970年 代 の 初 頭 、 老 人 ホ ー ム の 入 居 者 の 大 半 は 公 立 ホ ー ム に 入 所 して お り、 ボ ラ ン タ英 国 にお け る民 営化 政策 と社 会 福 祉 行 政 の動 向(上) リ ー に 設 立 さ れ た 老 人 ホ ー ム と 営 利 目 的 で 設 立 さ れ た 老 人 ホ ー ム に 入 所 す る 者 を 両 方 あ わ せ て も 、 公 立 ホ ー ム に 及 ば な か っ た 。 と こ ろ が 、70年 代 末 以 降 、 ボ ラ ン タ リー ・シ ス テ ム の 位 置 は ほ と ん ど変 わ りな い も の の 、 公 的 部 門 に よ る老 人 ホ ー ム 数 の 伸 び は 頭 打 ち と な り、 代 わ っ て 私 的 部 門 の 役 割 が 急 速 に 大 き くな り始 め て い る 。 も っ と も 、 私 的 部 門 と は い っ て も 個 人 経 営 に よ る 老 人 ホ ー ム が 多 い の が 特 徴 で あ る 。 一方、ナー シ ン グ ホ ー ム(nursing home)は 、 老 人 ホ ー ム や シ ェ ル タ ー ド ・ハ ウ ジ ン グ と は 異 な り、 英 国 で は 民 間 部 門 の 独 占 で あ る 。 国 民 保 健 サ ー ビ ス(NHS)の(一 環 で 、 老 人 の 長 期 慢 性 疾 患 の 医 療 費 軽 減 の た め に 、 実 験 的 に ナ ー シ ン グ ・ホ ー ム を 数 ケ 所 で 運 営 して い る が 、 そ れ 以 外 の ナ ー シ ン グ ・ホ ー ム は す べ て 営 利 団 体 な い し ボ ラ ン タ リ ー 団 体 が 経 営 し て い る 。19 70年 代 末 以 降 、 ナ ー シ ン グ ・ホ ー ム の 施 設 数 、ベ ッ ド数 が 急 速 に 増 え 始 め 、 1984年 末 現 在 で は 、 ナ ー シ ン グ ・ホ ー ム に 入 所 す る 老 人 の 数 は イ ン グ ラ ン ド と ウ ェ ー ル ズ で 約2万3,000人 に 達 した 。 ナ ー シ ン グ ・ホ ー ム は 利 用 料 が 非 常 に 高 く、 全 額 を 個 人 で 支 払 う こ と は 極 め て 困 難 で あ り、 実 態 と して は 、 多 く の 入 所 者 は 公 的 扶 助 の 援 助 を 受 け て い る 。 こ の た め 、 ナ ー シ ン グ ・ホ ー ム と い う営 利 シ ス テ ム が 拡 大 す る と 公 的 扶 助 財 政 が 膨 張 す る と い う こ と に な る。 英 国 で は 、 老 人 福 祉 に お い て も 民 間 の 福 祉 団 体 が 大 き な 役 割 を担 っ て い る が 、 営 利 団 体 の 活 動 も 盛 ん に な っ て き た 。 そ の 一 つ の 例 と して ・ レ ジ デ ン シ ャ ル ・ホ ー ム(residential home)が あ る 。 レ ジ デ ン シ ャ ル ・ホ ー ム は 家 庭 的 雰 囲 気 を 持 っ た 医 療 を施 さ な い 営 利 団 体 に よ る 老 人 専 用 の ホ ー ム で あ る 。 レ ジ デ ン シ ャ ル ・ホ ー ム に は20人 程 度 の お 年 寄 りが 入 居 して お り、 女 性 の 入 居 者 が 大 半 を 占 め る 。 フ ル タ イ ム で 働 い て い る 看 護 婦 の 資 格 を 持 っ た 者4人 が 中 心 に な っ て 介 護 に 当 っ て い る 。 パ ー トや 夜 勤 の ス タ ッ フ を 合 計 す る と総 勢18名 の ス タ ッ フ 数 と な る 。 レ ジ デ ン シ ャ ル ・ホ ー ム に 入 居 す る 条 件 は 、 最 低 限 自 分 の 身 の 回 りの こ とが で き る こ とで あ る 。2週 間 か ら1ケ 月 の テ ス ト入 所 も可 能 で あ る 。 入 所 者 は 近 隣 の 者 が 大 半 で 、 長 い 間
密 教 文 化 暮 ら し て き た 土 地 か ら 離 れ た く な い とい う気 持 ち が あ る 。 家 族 に 勧 め られ て 入 所 し た 人 が 多 い が 、 自分 か ら進 ん で 入 所 して き た 人 も あ り、 家 族 や 友 人 の 訪 問 も 自 由 で 、 帰 宅 の 時 間 を 知 らせ れ ば 、 外 出 は 自 由 で あ り、 ウ ォ ー デ ン は い な い 。 費 用 は 支 払 能 力 で 多 少 の 差 が あ り、 平 均 週 に200ポ ン ド (4万8000円)で あ る 。 ロ ン ド ン の 平 均 的 な ナ ー シ ン グ ・ホ ー ム の 相 場 が 週 340-360ポ ン ドで あ る か ら 、 そ れ よ りは か な り安 い 費 用 で あ る 。レ ジ デ ン シ ャ ル ・ホ ー ム は 続 々 と建 て ら れ て 、 過 当 競 争 の 状 態 に あ り、 ロ ン ド ン全 体 で は100を こ す と 言 わ れ て い る 。 (注) 1)『イ ギ リ ス 地 方 政 府 会 計 監 査 委 員 会 報 告 書 老 人 社 会 サ ー ビ ス の よ り効 果 的 な 運 営 』 財 団 法 人 老 人 福 祉 開 発 セ ン タ ー 、1989年 。(Managing Social Services for