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地震火災への備え・・悲観的に想定し、 楽観的に防備しよう

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Academic year: 2021

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- 2 - 東海地震や南海地震に加えて首都直下地 震などの巨大地震の発生の切迫度が高まり、

各方面でその被害軽減のための対策の強化 がはかられている。そのなかで、建物の耐震 補強や災害医療などの対策が積極的に展開 されていることは、喜ばしい限りである。が しかし、その中で非常に残念というかとて も気掛かりことが一つある。それは地震時 の市街地大火についての対策が軽んじられ ていることである。

内閣府などの大規模地震に対する被害軽 減戦略をみると、地震大火の対策としては、

遮断帯整備による延焼抑止、バケツリレー による初期消火、住宅耐震化による出火低 減などの対策が提示さている。だか、これら の対策で地震時の市街地大火が抑制できる とは思えない。このうち遮断帯については、

整備がなされれば効果があるものの、整備 を進めるためのリアリティがなく、絵に描 いた餅である。バケツリレーは、初動マンパ ワーが確保できる場合は有効であるものの、

津波の襲来が切迫している場合や、生き埋 めが大量に発生している場合にはマンパワ ーが期待できず、これまた絵に書いた餅で ある。

となると、住宅耐震化に大火抑制の期待 がかかるのだが、それは絵に描いた餅どこ ろか目くらまし的な幻想にすぎない。とい うのも、その被害軽減効果の根拠とされる

「倒壊率と出火率の関係式」の理解に重大 な誤謬があるために、住宅が倒壊しなけれ ば火災は起きないということにはならない からである。誤謬があるといったのは、倒壊 率と出火率の関係は、消防署の数と出火件 数の関係と同じで、見かけの関係であって 決して因果関係ではない、ということであ る。倒壊率と出火率は、地震の揺れの大きさ を媒介にして関連しているにすぎない。地 震の揺れを小さくしない限り、出火率は小 さくならないということを、肝に銘じて欲 しい。消防署の数を減らしても火災が減ら ないように、倒壊率を減らしても出火率は 減らないのである。もっとも、耐震化によっ て生き埋めが減り、初期消火などのマンパ ワーが確保できるという面では、被害軽減 効果が多少なりとも期待できるので、まっ たく無意味ということではない。

このように、地震火災への対策は極めて 不十分な状況におかれている。それは、地震 火災の危険性や地震火災対策の必要性が、

国民はもとより防災関係者にも正しく理解

●巻頭随想

地震火災への備え・・悲観的に想定し、

楽観的に防備しよう

室 﨑 益 輝

消防研究センター所長

(2)

- 3 - されていないため、と考えられる。そこで、

危険性が正しく捉えられていない一例を、

火災による死者の想定値でみておこう。内 閣府の被害想定では、東京湾北部の首都直 下地震では、焼失棟数が約 60 万棟、焼死者 が約 6 千人、という結果が得られている。

ここで指摘しなければならないことは、焼 失棟数に比して焼死者が異常に少ないとい うことである。過去の記録をみると、関東大 震災の東京では約 30 万棟が焼失し約 6 万人 が焼死している。北丹後地震の峰山では約 千棟が焼失し約 8 百人が焼死している。最 近の阪神・淡路大震災では約 7 千棟が焼失 し約 5 百人が焼死している。

これらの記録から経験的に言えることは、

地震時には焼失建物千棟につき百人程度は 焼死する、ということである。となると、首 都直下では数万人が焼死してもおかしくな いはずである。ところがどういうわけか、想 定による焼死者数は数千人前後に抑えられ ている。意図的に操作をして予測値を低く 抑えたとまでは言いたくないが、地震火災 の危険性を過小評価していることだけは確 かである。

このような被害想定における過小評価に 加えて、メディアによる短絡的な市民啓発 によっても、「関東大震災のような焦熱地獄 は起きない」「地震火災はもはや最重要の問 題ではない」といった誤った意識が国民に 植えつけられつつある。メディアによる「短 絡的な啓発」というのは、緊急地震速報の活 用に関わって「マイコンメーターが普及に より、初期消火する必要がない」ということ が繰りかえし報道されていることをいう。

この報道を聞いた多くの国民は、出火防止

はどうでもいいと思い込みがちである。地 震の直前直後において、ローソクなどの裸 火の消火をはかることは無論のこと、電気 ストーブなどのコンセントを切ることしな ければ市街地が火の海になってしまうこと を、ついこの前の阪神・淡路大震災で学んだ はずなのにと、言いたくなる。こうした「危 うい風潮」をみるにつけ、もっと地震火災の 危険性をしっかりと国民に伝えなければと 思う。

「悲観的に想定し、楽観的に備える」とい う言葉があるが、地震火災についてはもっ と深刻な事態を想定して、戦略的かつ攻勢 的に対策に取り組むことが求められよう。

ところで、地震火災の被害軽減は、決して不 可能なことではない。出火件数の大幅な低 減をはかるとともに、地域における初期消 火能力の飛躍的な向上をはかることができ れば、焼死者をゼロにすることも夢ではな い。なお、この被害軽減に関して、一筋の光 明が見えてきている。それは、通電火災対策 の進展である。阪神・淡路大震災では、地震 直後の電気の自動回復に伴う出火が、市街 地大火をもたらしたのだが、この直後の通 電火災を防止する技術開発が急速に進みつ つある。それは、東京電力が開発しているも ので、緊急地震速報あるいは感震器と連動 した無線信号によって、出火につながる恐 れのある機器の電気を自動的にシャットダ ウンしようとするものである。すべての熱 源や火花をシャットできるというものでは ないが、その普及により炎上火災件数の大 幅な削減がはかられることは確かである。

出火件数の削減をはかることができれば、

残された火災を常備消防と消防団の連携に

(3)

- 4 - より早期に鎮圧することはそう難しくない 私は、この通電火災防止システムの普及に 加えて、消防団の装備と人員の大幅増強、さ らには大容量の送水システムの整備によっ

て、地震火災死者ゼロは確実に達成できる と楽観的に考えている。地震火災死者ゼロ に向け、勇気と希望をもって大胆に挑戦し よう。

参照

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