当院における胃生検 Group 2 病変と NBI 拡大内視鏡像の比較検討
昭和大学藤が丘病院消化器内科
文 園 豊
*髙 橋 寛 花村祥太郎
五味 邦代 長濵 正亞
抄録
:胃癌取扱い規約第 14 版で Group 2 は腫瘍(腺腫または癌)か非腫瘍性か判断の困難な 病変とされた.そこで当院において胃生検で Group 2 とされた病変のうち NBI(Narrow Band Imaging)拡大観察が行われた病変について最終診断との関連を検討した.2010 年 5 月 から 2013 年 5 月まで当院で施行された上部消化管内視鏡検査のうち Group 2 の診断がなされ たのは 118 病変であった.このうち NBI 拡大観察が施行され,その後のフォローで最終診断 まで追跡可能であった49症例53病変を対象とした.53病変の最終診断は非腫瘍13例(24.5%),
腺腫 11 例(20.8%),癌 29 例(54.7%)であった.検査時に 菌(以下,ピ ロリ菌と記載)感染していたのは 18 例(34.0%),除菌後を含め非感染例は 29 例(54.7%),6 例(11.3%)は不明であった.NBI 拡大観察を含む内視鏡所見から癌を疑った症例は 33 例で 25 例は最終診断も癌であった.非癌と診断した症例は 20 例で 16 例は最終診断も非癌であっ た.Group 2 の診断後のフォローアップ(治療を含む)は 3 か月以内に 41 例(77.4%)がされ ており,6 か月以内には 50 例(94.3%)がされていた.内視鏡所見での癌の正診率は高く NBI 拡大観察が有用であった.除菌後胃癌では表層が癌とは異なる上皮で覆われ診断が困難になる ことが報告されており,Group 2 診断に至る一因と考えられた.Group 2 病変は再検を要し,
半数以上は 3 か月以内にフォローアップされているが,確実に行われることが重要である.
キーワード
:Group 2,NBI 拡大内視鏡,ピロリ菌除菌
緒 言
胃癌の診断や治療を行う際には正確に術前診断を 行うべきことは言うまでもない.しかしながら内視 鏡所見で癌が強く疑われたが,組織検査では確定診 断がつかない場合の方針をいかにするかが重要であ る.2010 年 3 月に発刊された胃癌取扱い規約第 14 版
1)の Group 分類で,Group 2 の取扱いは「腫瘍(腺 腫または癌)か非腫瘍性か判断が困難な病変」で再 検査を行うとされ
2)(表 1),Group 2 の中に胃癌が 含まれる可能性を示唆しているからである.
内視鏡診断学においてはヘモグロビンに吸収され やすい狭帯域光を投射する狭帯域光観察(Narrow Band Imaging:NBI)がオリンパスメディカルシス テムズとがんセンター東病院によって共同開発され,
2006 年に内視鏡システムに搭載されて新たな診断
ツールに加わった.NBI は粘膜表層の毛細血管,粘 膜微細模様を強調して表示するため,胃拡大内視鏡 と併用することによって,通常内視鏡では観察不可 能であった微細血管構築像や表面微細構造の視覚化 が可能となり,現在では high volume center から クリニックまで広く用いられている.
当院では,スクリーニングの上部内視鏡検査にて 全例 NBI 拡大内視鏡観察が行える GIF-H260Z を用 いており必要時にいつでも NBI 拡大観察を行うこ とができる.今回筆者は当院での Group 2 病変につ
いて NBI 拡大観察所見, 菌(以
下,ピロリ菌と記載)感染の有無や萎縮の進展度な ど複数の項目について情報を収集した.また,その 病変のフォローから最終診断を得,検討したので報 告する.
原 著
*責任著者
研 究 方 法
2010 年 5 月 7 日から 2013 年 5 月 27 日まで昭和大学 藤が丘病院内視鏡センターで施行された上部消化管 内視鏡検査のうち,生検にて Group 2 の診断がな された 118 例中,NBI 拡大観察が施行され,その 後の診療録にて最終診断まで追跡可能であった 49 症例 53 病変について検討した.検査当時の内視鏡 検査報告書,内視鏡画像から年齢,性別,病変の部 位の情報を得たほか,診療録から検査当時のピロリ 菌感染の有無,Group 2 診断から同病変を次に評価 するまで(再生検または治療)の期間をフォローアッ プ期間として検討した.
Group 2 診断後の生検または治療による病理組織 所見結果を最終診断とし,非腫瘍,腺腫,癌の 3 群 に,また癌・非癌の 2 群に分けて検討した.
NBI 拡大内視鏡所見は,八尾ら
3)の提唱による早 期胃癌診断の VS classification system によって癌・
非癌の診断を行った.すなわち病変の微小血管構築 像(microvascular (MV) pattern;V),表面微細構 造(microsurface (MS) pattern;S)を観察し,そ れぞれを別表(表 2)に示す 3 つのカテゴリーに分類 したうえで,さらに境界線(demarcation line;DL)
の有無を観察し,下記の①かつ / または②を満たし た場合に癌と診断し,それ以外を非癌と診断した.
①明瞭な DL を有し,病変内部に不規則な微小血 管構築像(irregular MV pattern)が存在すること.
②明瞭な DL を有し,病変内部に不規則な表面微 細構造(irregular MS pattern)が存在すること.
検査に使用した内視鏡検査機器は Olympus GIF type H260Z(オリンパスメディカルシステムズ株式 会社)であった.本研究は昭和大学藤が丘病院臨床 試験審査委員会の承認を得て行った(2017 年 5 月 25 日,承認番号 F2017C11).
結 果
1.症例の内訳
患者は年齢 60 〜 92 歳(平均 73.2 歳),男性 46 例,
女性 7 例であった.53 病変の最終診断は非腫瘍 13 例
(24.5%),腺腫 11 例(20.8%),癌 29 例(54.7%)で あった.また,癌の最終病理組織所見は全例高分化 型管状腺癌(well differentiated tubular adenocarci- noma;tub1)が含まれていた.
2.内視鏡所見と最終診断の検討
通常内視鏡所見で病変の部位は穹窿部1例(1.9%),
噴門部 2 例(3.8%),体部 20 例(37.7%)(体上部 5
表 1 Group 分類に対する病理および臨床対応表
Group 分類 病理学的意義 病理の対応 臨床の対応
Group X 診断不適材料 再検査 再検査
Group 1 正常および非腫瘍性
Group 2 非腫瘍性か腫瘍の鑑別困難 深切り,免疫染色 再検査
Group 3 腺腫 経過観察,粘膜切除
Group 4 腺腫と癌の鑑別困難 深切り,免疫染色 再検査,粘膜切除
Group 5 癌
文献 2)による
表 2 VS classification system 1)微小血管構築像(V),MV pattern
①規則的な微小血管構築像(regular MV pattern)
②不規則的な微小血管構築像(irregular MV pattern)
③微小血管が確認できない場合(absent MV pattern)
2)表面微細構造(S),MS pattern
①規則的な表面微細構造(regular MS pattern)
②不規則な表面微細構造(irregular MS pattern)
③表面微細構造が確認できない場合(absent MS pattern)
文献 3)より作成
例(9.4%),体中部8例(15.1%),体下部7例(13.2%)),
胃角部 9 例(17.0%),前庭部 21 例(39.6%)であった
(表 3‑1).病変の肉眼型を便宜上胃癌の肉眼分類を 用いてまとめたところ 53 例中 1 例(1.9%)のみ 3 型で 52 例(98.1%)は 0 型であった.0 型亜分類で は 0-Ⅱc 型が 31 例(58.5%)と最も多く 0-Ⅱa 型 12 例(22.6%),混合型5例(9.4%),0-Ⅱb型3例(5.7%),
0-Ⅰ型 1 例(1.9%)と続いた(表 3‑2).木村・竹本 分類による胃粘膜萎縮の分類では萎縮なし 1 例
(1.9%),closed type(C-Ⅱ)1 例(1.9%),open type 51 例(96.2%) (O-Ⅰ10 例(18.9%),O-Ⅱ21 例(39.6%),
O-Ⅲ19 例(35.8%),幽門側胃切除後のため分類困難 1 例(1.9%))であった(表 3‑3).
NBI 拡大観察併用による内視鏡所見についてまと めた.VS classification 併用によって癌と診断された 病変は 53 例中 33 例(62.3%)であり,最終診断では 癌が 25 例,腺腫が 6 例,非腫瘍が 2 例であった.内 視鏡診断で非癌とされた病変は 53 例中 20 例(37.7%)
で,腺腫と診断された 4 例(7.5%)の最終診断は非 腫瘍が 1 例,腺腫が 3 例であった.また非腫瘍と診 断された 16 例(30.2%)の最終診断は非腫瘍が 10 例,
腺腫が 2 例,癌が 4 例であった(表 4‑1).
以上の所見を癌,非癌としてまとめると,癌 29 例 のうち内視鏡所見で癌と診断したものは 25 例,非 癌 24 例のうち内視鏡所見で非癌と診断したものは 16 例で,内視鏡所見における正診率は 77.4%であっ た(表 4‑2).
癌 29 例のうち早期胃癌 28 例について通常内視鏡 所見と NBI 拡大観察所見をまとめた.通常内視鏡所 見において色調では発赤病変が 17 例(60.7%)と最 も多く,肉眼型では 0-Ⅱc 病変が 20 例(71.4%)と最 も多かった(表 5).また NBI 拡大観察所見は MV pattern では irregular MV pattern が 25 例(89.3%),
MS patternではirregular MS patternが19例(67.9%)
と最も多く,DLは 26 例(92.9%)に認められた(表 6).
3.ピロリ菌感染との関連
生検時のピロリ菌感染の有無を検討した.全 53 例中ピロリ菌感染陽性(以下陽性)は 18 例(34.0%),
ピロリ菌感染陰性(以下陰性)は 29 例(54.7%)で そのうち 20 例(37.7%)は除菌後であることが記録 で確認できた.6 例(11.3%)はピロリ菌感染不明で あった.癌では 29 例(54.7%)中陽性 13 例(24.5%),
陰性 11 例(20.8%)(うち除菌後 7 例(13.2%)),不 明 5 例(9.4%)であった.腺腫では 11 例(20.8%)
表 3‑1 通常内視鏡観察所見(病変部位)
穹窿部 1( 1.9%)
噴門部 2( 3.8%)
体部 20(37.7%)
体上部 5( 9.4%)
体中部 8(15.1%)
体下部 7(13.2%)
胃角部 9(17.0%)
前庭部 21(39.6%)
計 53
表 3‑2 通常内視鏡観察所見(肉眼型)
0 型 52(98.1%)
0 型亜分類
0-Ⅰ 1( 1.9%)
0-Ⅱa 12(22.6%)
0-Ⅱb 3( 5.7%)
0-Ⅱc 31(58.5%)
混合型 5( 9.4%)
3 型 1( 1.9%)
計 53
表 3‑3 通常内視鏡観察所見(胃粘膜萎縮の程度)
萎縮なし 1( 1.9%)
Closed type (C-Ⅱ) 1( 1.9%)
Open type 51(96.2%)
(O-Ⅰ) 10(18.9%)
(O-Ⅱ) 21(39.6%)
(O-Ⅲ) 19(35.8%)
分類困難(幽門側胃切除後) 1( 1.9%)
計 53
中陽性 1 例(1.9%),陰性 9 例(17.0%)(うち除菌 後 6 例(11.3%)),不明 1 例(1.9%)であった.非腫 瘍例では 13 例(24.5%)中陽性 4 例(7.5%),陰性 9 例(17.0%)(うち除 菌 後 7 例(13.2%))であった
(表 7‑1).
ピロリ菌感染不明例を除外し,癌と非癌でまとめ たところ癌では 24 例(51.1%)中陽性 13 例(27.7%),
陰性 11 例(23.4%)で,非癌では 23 例(48.9%)中 陽性 5 例(10.6%),陰性 18 例(38.3%)であった
(表 7‑2).
4.フォローアップ期間
フォローアップは全 53 例中 21 例が 1 か月以内に 生検または治療により施行され,3 か月以内には 41
例がされていた(表 8).なお 3 例はフォローアッ プ再検の結果が再度 Group 2 の診断であったが再々 検にて最終診断に至った.
5.症例提示
定期内視鏡で前庭部大弯の胃びらんを認め,同病 変からの病理検査結果が Group 1 〜 2 であったた め,フォローアップの内視鏡検査を施行した症例.
内視鏡検査所見では径 7 mm の発赤陥凹性病変を認 めた.通常観察で境界は明瞭.発赤面は平坦で凹凸 不整なし.NBI 拡大観察で微小血管構築像は腺管 周 囲 に 一 部 に 拡 張 血 管 を 認 め る が 全 体 と し て regular MV pattern,表面微細構造は regular MS pattern で非癌と診断した(図 1).病理組織所見は,
表 5 早期胃癌 28 例の通常内視鏡観察所見 色調
発赤 17(60.7%)
正色 2( 7.1%)
褪色 9(32.1%)
肉眼型
0-Ⅰ 1( 3.6%)
0-Ⅱa 3(10.7%)
0-Ⅱb 2( 7.1%)
0-Ⅱc 20(71.4%)
混合型 2( 7.1%)
表 6 早期胃癌 28 例の NBI 拡大内視鏡観察所見 (VS classification)
MV pattern
regular MV pattern 3(10.7%)
irregular MV pattern 25(89.3%)
absent MV pattern 0( 0.0%)
MS pattern
regular MS pattern 4(14.3%)
irregular MS pattern 19(67.9%)
absent MS pattern 5(17.9%)
DL
DL(+) 26(92.9%)
DL(−) 2( 7.1%)
表 4‑1 内視鏡所見と最終診断(癌・腺腫・非腫瘍)
内視鏡所見\最終診断 癌 腺腫 非腫瘍 計
癌 25(47.2%) 6(11.3%) 2( 3.8%) 33(62.3%)
腺腫 0( 0.0%) 3( 5.7%) 1( 1.9%) 4( 7.5%)
非腫瘍 4( 7.5%) 2( 3.8%) 10(18.9%) 16(30.2%)
計 29(54.7%) 11(20.8%) 13(24.5%) 53
表 4‑2 内視鏡所見と最終診断(癌・非癌)
内視鏡所見\最終診断 癌 非癌 計
癌 25(47.2%) 8(15.1%) 33(62.3%)
非癌 4( 7.5%) 16(30.2%) 20(37.7%)
計 29(54.7%) 24(45.3%) 53 感度 86.2%,特異度 66.7%,正診率 77.4%
表層上皮の一部に adenoma 様の所見を呈しており Group 2 と診断された(図 2).本例は NBI 拡大観 察所見と病理所見を総合的に判断して ESD を施行
した.病理組織所見は 0-Ⅱc 型の早期胃癌で,tub1,
m,ly0,v0,HM0,VM0 と診断され適応内完全切 除であった(図 3).
表 7‑1 ピロリ菌感染(癌・腺腫・非腫瘍)
ピロリ菌感染\最終診断 癌 腺腫 非腫瘍 計
ピロリ菌陽性 13(24.5%) 1( 1.9%) 4( 7.5%) 18(34.0%)
ピロリ菌陰性 11(20.8%) 9(17.0%) 9(17.0%) 29(54.7%)
除菌後陰性 7(13.2%) 6(11.3%) 7(13.2%) 20(37.7%)
感染歴不明 4( 7.5%) 3( 5.7%) 2( 3.8%) 9(17.0%)
不明 5( 9.4%) 1( 1.9%) 0( 0.0%) 6(11.3%)
計 29(54.7%) 11(20.8%) 13(24.5%) 53
表 7‑2 ピロリ菌感染(癌・非癌)
ピロリ菌感染\最終診断 癌 非癌 計
ピロリ菌陽性 13(27.7%) 5(10.6%) 18(38.3%)
ピロリ菌陰性 11(23.4%) 18(38.3%) 29(61.7%)
計 24(51.1%) 23(48.9%) 47
表 8 フォローアップ期間
1 か月以内 3 か月以内 6 か月以内 1 年以内 1 年超 計
非腫瘍 3 5 3 1 1 13
腺腫 5 4 2 0 0 11
癌 13 11 4 1 0 29
計 21 20 9 2 1 53
(%) (39.6%) (37.7%) (17.0%) (3.8%) (1.9%)
図 1 NBI 拡大観察像 図 2 Group 2 診断時の病理組織像(200 倍)
考 察
改定された胃癌取扱い規約第 14 版
1)では従来の Group 分類が改定された.すなわち Group 1 は「正 常組織および非腫瘍性病変」,Group 3 は「腺腫」,
Group 4 は「腫瘍と判定される病変のうち,癌が疑 われる病変」,Group 5 は「癌」である(表 1).大 きく扱いが変わったのが,Group 2 である.第 13 版
4)では Group Ⅱは「異型をしめすが良性(非腫瘍 性)と判定される病変」,Group Ⅲは「良性(非腫 瘍性)と悪性の境界領域の病変(持続性の病変とみ なされる異型上皮すべて)」とある.第 13 版の Group Ⅲが第 14 版の Group 2 に相当し,臨床的な 対応としては,再検査が必要とされる.
第 14 版改定以降,藤崎ら
5)は Group 2 病変 82 例 を検討し,33 例(40.2%)が癌であったことを報告 している.また,Group 2 病変と最終診断の関係を NBI 拡大観察から検討したものとしては吉田ら
6), 堀内ら
7)の報告があるが,NBI 拡大観察の感度は前 者 35.3%,後者 74.3%と施設により異なる結果が示 されており,当院での検討することは意義のあるこ とと考えた.今回当院での NBI 拡大観察の感度は 86.2%,特異度は 66.7%,正診率 77.4%であり NBI 拡大観察が有用と考えられた.
今回,われわれが経験した症例についてそれぞれ の内視鏡所見と病理組織所見について検討した.ま ず Group 2 病変 118 例のうち内視鏡検査の際に NBI 拡大観察までされていたものは今回対象となった 53 例であり,残る 65 例は NBI 観察がされていないか,
あっても NBI 拡大観察がなされていなかった.当
院の上部内視鏡検査では全例で NBI 拡大観察が可 能なスコープを使用している.したがってこの 65 例は,内視鏡検査施行医が NBI 拡大内視鏡観察の 必要はないと判断したものの,結果的に Group 2 の判定であったと推測された.内視鏡所見より癌と 診断した 33 例中 25 例が最終診断も癌で 75.8%の陽 性的中率であった.生検と比較して,病変全体を観 察し総合的に判断できる内視鏡診断の重要性があら ためて確認された.また,内視鏡診断で非癌ながら 最終診断が癌であった症例も 4 例あった.うち 2 例 は VS classification によっても非癌と診断された症 例であったが,1 例は粘膜炎症が強かった症例,1 例 は幽門側胃切除後で残胃炎のある症例であった.
癌であった 29 例の組織型は全例高分化型管状腺 癌(well differentiated tubular adenocarcinoma;
tub1)が含まれていた(詳細には focal carcinoma 1 例,very well differentiated adenocarcinoma 1 例,
tub2 > tub1 1 例を含む).このことより癌組織の 構造異型が軽度の場合には病理診断が困難であった と推測された.
また,ピロリ菌感染による炎症所見が病理診断に 影響する可能性を考え,ピロリ菌感染の有無につい て調べたが,結果はピロリ菌感染 18 例,非感染 29 例で非感染例が多かった.一方ピロリ菌非感染例に は除菌後胃も含まれ,現在広く行われているピロリ 菌除菌と近年報告の多い除菌後発見胃癌と Group 2 診断との関連が注目される.
ピロリ菌除菌が胃癌のリスクを減らすこと
8)が広 く知られるようになり,2013 年 2 月にピロリ菌感 染胃の除菌療法が保険適応となった.これにより全
図 3 ESD 切除標本の病理組織像 a:20 倍 b:a の白枠内の拡大像(200 倍)
a b
国的に広く除菌が行われ,臨床の場においても内視 鏡検査・治療ともに除菌後の症例に遭遇する機会が 増え,除菌後の胃癌症例も報告されるようになって きた.
本研究においては最終診断が癌であった 29 例の うち,ピロリ菌感染胃が 13 例,ピロリ菌陰性胃が 11 例(除菌歴が記録上明らかなものが 7 例)であっ た.感染が不明であった症例が 5 例見られたが,内 視鏡画像を見直したところ 4 例は除菌後であると推 測できた.
鎌田ら
9)による除菌後 10 年未満と 10 年以上で発 見された胃癌についての論文では,どちらも高度萎 縮がみられると報告しており,本研究の症例でも 29 例全例が O-Ⅰ以上の高度萎縮例であった.
除菌後発見胃癌の特徴の一つとして癌の表層が別 の上皮で覆われることが知られてきた.Kitamura
10)らは除菌後発見胃癌の組織像において胃癌腺管と連 続的な異型度の低い上皮(epithelium with low-grade atypia;ELA)が除菌後症例に観察されることを報 告している.また,Saka ら
11)は除菌後発見胃癌が 非除菌群に比べて,通常内視鏡的にも NBI 拡大内 視鏡的にも胃炎様の胃癌が多く,病理組織像は表層 を非癌上皮が覆い,胃癌腺管と非癌上皮がモザイク に混在することを報告している.これらを前者は極 めて高度に分化した腫瘍としてとらえ,後者は非腫 瘍ととらえているなど意見が分かれているが,いず れにしても癌とは異なる組織が混在することが内視 鏡検査おいても病理検査においても診断を難しくし ているようである.特に生検においては病変の一部 であるがゆえに Group 2 と判断されてしまう可能 性がある.
名和田ら
12)は NBI 拡大内視鏡観察における除菌 後発見胃癌の胃炎様模様に伴う血管像からの癌の診 断は困難であるが,表面構造から癌の診断を行うこ とはできるとし,わずかな 形状不均一 や 方向 性不同 を認識することにより範囲診断は可能であ ると述べている.本研究においても内視鏡診断の癌 の正診率は高く,生検と比較して病変全体とその周 囲をも観察して総合的に判断できる内視鏡診断の重 要性があらためて確認できた.
また,胃腺腫と除菌の関係については古くはSugano ら
13)や Gotoda ら
14)が 1999 年に胃腺腫症例を除菌 し, 腺 腫 の 縮 小 ま た は 消 失 を 報 告 し て い る が,
Ljubicic ら
15)は除菌によって腺腫が縮小しなかった と報告している.そのほかの報告は少ない.最近で は 2014 年に鈴木ら
16)が胃腺腫 27 例に対して除菌 を行い,12 例で内視鏡上の消失を認め,7 例で組織 学的消失を確認したと報告している.この論文では 前述したような表層上皮の出現については述べられ てはいないが,胃腺腫でも同様の変化が起きている 可能性はある.
本研究ではGroup 2とされた53 例中41例(77.4%)
は 3 か月以内に再検されていた.半数以上の 29 例 が最終診断は癌であり,フォローアップがきわめて 重要であることが示された.そのため Group 2 病 変においては早期の再検が望まれるが,炎症が強い 場合は除菌やプロトンポンプ阻害薬などで炎症を抑 え,3 か月程度待ったほうが所見がはっきりする場 合もある
5).Group 2 病変のフォローアップについ て詳細に検討した報告はこれまでのところ確認され ていないが,実臨床においては 3 か月以内のフォ ローアップが望ましいと考える.
除菌後発見胃癌の増加が見込まれる現在,内視鏡 による観察時の NBI 拡大観察は有用といえる.
Group 2 病変においてはフォローアップを確実に行 うことが重要である.
謝辞 本論文執筆にあたり,鵜川医院鵜川邦夫先生にご 指導いただきました.ここに深謝いたします.
利益相反
本研究において開示すべき利益相反はない.
文 献
1) 日本胃癌学会編.胃癌取扱い規約.第 14 版.
東京: 金原出版; 2010.
2) 日本胃癌学会編.胃癌治療ガイドライン 医師 用.第 4 版.東京: 金原出版; 2014.
3) 八尾建史.VS classification system.胃と腸.
2017;52:724‑725.
4) 日本胃癌学会編.胃癌取扱い規約.第 13 版.
東京: 金原出版; 1999.
5) 藤崎順子,吉澤奈津子,山本智理子,ほか.新 旧分類での Group 2 病変の内視鏡再検,追跡結 果の検討.胃と腸.2012;47:174‑185.
6) 吉田尚弘,辻 重継,土山寿志.胃生検 group 2 病変に対する NBI 併用拡大内視鏡観察による
質的診断能の検討. .2013;
55 Suppl.2:2779.
7) 堀内裕介,藤崎順子,山本智理子,ほか.胃生
検 で Atypical Epithelium(Group 2) 病 変 の NBI 拡大内視鏡像.日消誌.2013;109臨増総会:
A321.
8) Fukase K, Kato M, Kikuchi S, . Effect of eradication of on incidence of metachronous gastric carcinoma after endo- scopic resection of early gastric cancer: an open-label, randomized controlled trial. . 2008;372:392‑397.
9) 鎌田智有,春間 賢,井上和彦,ほか.除菌後 発見胃癌の臨床的特徴 除菌後 10 年未満と 10 年以上で発見された胃癌の比較.胃と腸.2016;
51:750‑758.
10) Kitamura Y, Ito M, Matsuo T, . Character- istic epithelium with low-grade atypia appears on the surface of gastric cancer after success- ful eradication therapy.
. 2014;19:289‑295.
11) Saka A, Yagi K, Nimura S. Endoscopic and his- tological features of gastric cancers after suc-
cessful eradication therapy.
. 2016;19:524‑530.
12) 名和田義高,八木一芳,田中 恵,ほか.除菌 後発見胃癌の内視鏡的特徴と病理像 拡大内視 鏡像を中心に.胃と腸.2016;51:789‑797.
13) Sugano K, Satoh K, Kihira K, . Regression of gastric adenomas by eradication of
. . 1999;116:A511.
14) Gotoda T, Saito D, Kondo H, . Endoscopic and histological reversibility of gastric adeno- ma after eradication of .
. 1999;34 Suppl.11:91‑96.
15) Ljubicic N, Banic M, Kujundzic M, . The effect of eradicating Helicobacter pylori infec- tion on the course of adenomatous and hyper- plastic gastric polyps.
. 1999;11:727‑730.
16) 鈴木 翔,後藤田卓志,鈴木晴久,ほか.胃腺
腫に対する 除菌の影響.胃
と腸.2014;49:1871‑1878.
COMPARATIVE INVESTIGATION OF GROUP 2 LESIONS BY GASTRIC BIOPSY AND MAGNIFYING ENDOSCOPY WITH
NARROW BAND IMAGING IN OUR HOSPITAL
Yutaka F
UMIZONO, Hiroshi T
AKAHASHI, Shotaro H
ANAMURA, Kuniyo G
OMIand Masatsugu N
AGAHAMADepartment of Medicine, Division of Gastroenterology, Showa University Fujigaoka Hospital
Abstract According to the Japanese Classification of Gastric Carcinoma, 14th edition, Group 2 le- sions are defined as material for which the diagnosis of neoplastic or non-neoplastic lesions is difficult.
We evaluated the relationship between Group 2 lesions assessed by gastric biopsy using magnified nar- row band imaging (M-NBI) and the final diagnoses. In our hospital, from May 2010 to May 2013, there were 118 cases diagnosed with Group 2 lesions by gastroendoscopic biopsy. Among them, there were 53 lesions from 49 cases with both M-NBI results and final diagnoses. The final diagnoses of these 53 lesions were 13 non-tumor lesions (24.5%), 11 lesions (20.8%) with adenoma, and 29 lesions (54.7%) with carci- noma. There were 18 lesions (34.0%) with infection, 29 lesions (54.7%) without
infection including those after eradication, and 6 lesions (11.3%) considered unclear. Out of 33 lesions suspected to be carcinoma by endoscopy with M-NBI, 25 were confirmed as carcinoma on fi- nal diagnosis Forty-one lesions (77.4%) were followed up within three months. The accuracy of diagno- sis by endoscopy was high, indicating the effectiveness of magnifying endoscopy with NBI. It has been reported that non-cancerous epithelia can be found on the surface of gastric cancer after
eradication, thus making diagnosis more difficult; this may have accounted for one of the causes of the Group 2 diagnoses. This study highlights that all Group 2 lesions must be appropriately followed up.
Key words: Group 2, magnifying endoscopy with narrow band imaging (M-NBI),