学生を対象とした環境意識と学習効果についての一考察
A Study of Environmentally Awareness and Learning Effect for University Students
沖縄国際大学 経済学部地域環境政策学科 渡久地 朝央 Tomochika Toguchi
1.背景
普段の生活において,環境問題を見聞 する機会は多くなった.
環境問題の多くは日常生活や社会全体 の経済活動で生じる環境負荷の蓄積が要 因であり,解決にあたっては社会を構成 する私達一人ひとりの環境問題への関心 や知識が必要であろう.これは既存の消 費生活から環境を意識した生活へ行動を 選択することが,個人や社会における共 通認識として重視されるようになったた めであり,特に次世代の社会の担い手で ある若年世代にとって,経済活動と環境 への節度ある判断力や環境保全に関する 知識は,社会の未来への持続的可能性と して必要と考えられている.結果,学校 における環境教育の関心を高める要因の 一つとなった.
実際にユネスコが主導機関となって,
「持続可能な開発のための教育(ESD)に 関するユネスコ世界会議」が承認され,
世界的にも学校教育への導入が進められ
ており,その流れを受けてか沖縄県内で も「持続可能な開発のための教育」が進 んでいる.この導入目的は,学習を通し て身近な問題を解決する新たな価値観や 自主的な行動を生み出し,持続可能な社 会を構築する担い手を育むというもので,
2002 年のヨハネスブルグ・サミットから 提唱され,ユネスコが主導機関となって 2014 年愛知県で開催された「ESD に関 するユネスコ世界会議」に引き継がれて いる.
国内でも平成 13 年に循環型社会形成 推進基本法が施行されたが,学校教育の 場に環境教育の推進が導入されるのは平 成 18 年の教育基本法の第 2 条改定から であり,学習指導要綱によって全面実施 されたのは平成 23 年以降である(小学校 H23,中学校 H24,高校 H25).
学習指導要綱の基本方針では,客観的・
論理的思考力や多様な視点から考察する 力を育むことを基本方針の1つと置き,
学校教育の教科において環境に係わる内 要旨:
学校指導要領に環境教育が導入され , 近年では「持続可能な開発のための教育(E S D)」の提案を受けてたことからさらに学校での環境教育が重視される傾向にある . そこ で本論文では大学生の環境意識及び環境負荷軽減の意識を調査すること , 車社会である沖 縄県の特徴の 1 つである学生の車通学における環境意識の有無を測ることで大学生の環境 意識の実態を把握する . ここから , 大学での環境教育の拡充を図る今後の環境教育の拡充の 一助としたい .
容の充実と「総合的な学習の時間」を使っ た横断的な学習を行っている.
具体的には地域の廃棄物等のリサイク ル問題,地球環境とエネルギー資源,環 境負荷を意識した生活様式の見直しなど が挙げられる.これらの内容は小学校の 授業から中学校,高等学校と段階を踏み ながら学習していくようになっているお り,大学ではこのような学校の環境教育 を踏まえて,より高度な専門知識を学生 に付与しながら次世代を担う社会人とし て自覚を促す必要がある.
このような背景から大学生の環境意識 及び環境負荷軽減の意識を調査すること,
車社会である沖縄県の特徴の 1 つである 学生の車通学における環境意識の有無を を把握するために本大学の学生を対象に したアンケート調査の結果を分析した.
ここから,大学での環境教育の拡充を図 る今後の環境教育の拡充の一助を考えた
い.
2.アンケート調査方法と基本統計量 本論文のアンケートは,小学校から学習 指導要綱に基づき環境教育を受講してき た大学生を対象に,本学で実施している エコ・アクション 21 事業の一環で行われ たアンケート調査のデータを基にしてい る.
実施時期は 2018 年 7 月〜 9 月で,調 査 対 象 者 は 学 習 指 導 要 領 に 従 い 環 境 教 育を受けてきた沖縄国際大学に在学する 176 人で,その基本統計量は表1のとお りである.
3.アンケート集計結果と分析
アンケートに回答してもらった本学生 の環境意識を単純集計したものが図 1 で ある.
図 1 の 回 答 数 は 172 人 で, そ の 内 訳 3.アンケート集計結果と分析
アンケートに回答してもらった本学生の環境意識を単純集計したものが図
1
である.図
1
の回答数は172
人で,その内訳は環境に対して「とても関心がある」(32.6%
),「少し関心が有る」(
61.6%
),「あまり関心がない」(5.2%
),「関心がない」(0.6%
),「わ からない」(0.0%
)であった.単純集計の結果,大半の本学生は環境意識に多少の関心があることがわかる.
図
1
本大学の学生の環境意識Sample Mean Median Mode S.D.
問4 172 2.797 3.000 3.000 0.458
問10 172 2.436 2.000 2.000 1.135
問14 173 3.636 4.000 4.000 0.724
問1 172 1.738 2.000 2.000 0.578
問2 172 2.506 2.000 2.000 0.895
問3-1 172 2.936 3.000 3.000 0.859
問3-2 172 3.419 3.000 3.000 0.924
問3-3 171 2.965 3.000 3.000 1.040
問3-4 172 3.483 4.000 4.000 0.713
問3-5 172 3.453 3.000 4.000 0.744
問5 155 2.819 3.000 3.000 1.365
問6-1 172 1.970 1.000 1.000 1.028
問6-2 171 2.094 3.000 3.000 0.990
問6-3 172 1.767 1.000 1.000 0.981
問6-4 171 1.930 1.000 1.000 1.032
問6-5 172 2.581 3.000 3.000 0.851
問6-6 171 1.181 1.000 1.000 0.560
問6-7 172 2.738 3.000 3.000 0.754
問6-8 172 2.523 3.000 3.000 0.939
問6-9 172 2.913 3.000 3.000 0.550
問7 172 3.488 4.000 4.000 1.520
問8 172 2.413 2.000 1.000 1.422
問9 169 2.124 2.000 3.000 1.048
環境負荷軽減のための公共交通機関利用に関する項目
問11 173 1.566 2.000 2.000 0.497
問12 73 1.562 2.000 2.000 0.500
問13 100 1.820 2.000 2.000 0.386
問15 173 2.075 2.000 2.000 0.374
問16 173 1.734 2.000 2.000 0.443
環境知識に関する項目
環境意識に関する項目
日常生活に関する項目
時間割引率に関する項目
回答者の属性に関する項目
表
1
学生へ実施したアンケートの基本統計は 環 境 に 対 し て「 と て も 関 心 が あ る 」
(32.6%),「少し関心が有る」(61.6%),「あ まり関心がない」(5.2%),「関心がない」
(0.6%),「わからない」(0.0%)であった.
単純集計の結果,大半の本学生は環境 意識に多少の関心があることがわかる.
次に図 2 のように日常生活における本 学生の環境保全を集計した.
図 2 の回答数は 172 で,その内訳は環 境保全について「とても意識しいている」
(10.5
%),「少し意識している」(44.2%),「た まに意識している」(30.8%),「あまり意 識していない」(13.4%),「まったく意識 していない」(1.2%)であった.
単純集計の結果,大半の本学生は環境 保全を意識していることがわかる.
本学生の大半は環境意識や環境保全を 持っている様子が図 1,図 2 から分かっ たので,普段の生活で目にする環境に対 する認識について聞いてみた.結果は図 3 で,図中の左が身近な環境に対して良い 認識を持つ学生の割合を,図中の右が身 近な環境に対して悪い認識を持つ学生の 割合を表している.
「動植物の状態」について「良い状態だ と思う」(2.3%)また「まあ良い状態と思う」
(33.3%) と 答 え た 学 生 の 割 合 が 計 35.6%
ともっとも多く,次いで「海の状態」に ついて「良い状態だと思う」(2.9%) また「ま あ良い状態と思う」(27.3%) であった.
とても関心がある , 32%
少し関心がある ,62%
■とても関心がある ■少し関心がある ■あまり関心がない ■関心がない ■わからない
図 1 本大学の学生の環境意識
■とても意識している ■少し意識している ■たまに意識している
■あまり意識していない ■まったく意識していない
図 2 本大学の学生の日常生活における環境保全の有無
「ゴミの状態」については「悪い状態だ と思う」(4.1%) また「あまり良くないと 思う」(45.3%) でもっとも多く.次いで
「騒音の状態」について「悪い状態だと思 う」(4.7%) また「あまり良くないと思う」
(44.8%) であった.
回答の割合からは,普段の生活で触れ る機会の多いゴミや騒音問題について良 くないと認識する学生が多いことがわか る.
上記の環境意識の持つに至る情報をど こで知ったのかを回答してもらった.結 果は図 4 であり,TV やニュース,SNS を通じて「マスメディアで情報を知った」
(45.2%) がもっとも多く,次いで「実感と して感じている」(28.4%),本大学の「授 業で知った」(16.1%) と続く.本大学の取 り組みである「エコ・アクション 21 で知っ た」(8.4%) による情報は低い結果となっ た.また,「行政機関からの情報で知った」
(1.9%) も低く,学生は手元にあるスマー
騒音の状態 ゴミの状態 動植物の状態 河川の状態 海の状態
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
■良い状態だと思う ■まあ良い状態だと思う ■普通の状態だと思う
■あまり良くないと思う ■悪い状態だと思う
図 3 本大学の学生の身近な環境に対する認識
■実感として感じている ■行政機関からの情報で知った
■マスメディアの情報で知った ■エコアクション 21 の取組で知った
■授業で知った
図 4 本大学の学生の環境に関する情報源
トフォンや TV,大学の授業といった身近 で接する機会の多い情報源から環境意識 を形成していると推測される.
このような本大学の学生の日常生活で の環境を意識した行動である環境配慮行 動を図 5 のように単純集計した.図 5 は 図中の左が環境配慮行動を「すでに行っ ている」,「行ってはいるが今後あまり行 いたくない」という行動を実行している 選択肢の割合であり,図中の右が「行っ た事はなく今後も行いたくない」,「行っ た事はないが今後は行いたい」の選択肢 の割合を表している.
環境配慮行動として「すでに行ってい る」行動としては「ゴミの分別に務める」
(90.1%) がもっとも多く,次いで「節水に 努める」(60.5%) であった.
ゴミの分別や節水は家庭でも大学生活 でも日常的に行われている行動がやはり 多くの学生に浸透していることがわかる.
「行っているが今後はあまり行いたくな い」行動は全体的に少ない割合ではある が「ゴミを出さないように努める」(7.0%) がもっとも多かった.
「行った事はなく今後も行いたくない」
行動も全体として少ない割合で,そのな かでは「環境への情報を伝達する」(5.8%) がもっとも多かった.
「行った事はないが今後は行いたい」行 動では「生物保護活動を行う」(86.6%),
次いで「環境学習活動に参加する」(78.5%) と普段の生活で触れる機会のない環境配 慮行動にも参加したい意識が学生にある ことが推測される.
上記のような単純集計から本大学の学 生の環境意識の有無やその対象,環境意 識の情報源,環境配慮行動を見た.
ここから学生の意識と行動が自発的に 行われているものか,規則や法律,道徳 観といった社会的な規律に基づくものな のかをみたい.
そこで環境意識の回答と環境配慮行動 の結びつきを明らかにすることで自発的 な行動か社会な規律に基づくものなのか を共分散構造分析の一つである Mimic モ デルから分析する.
また,人の行動選択においては自身の 利益と結びつく利己的な行動に積極的な
生物保護活動を行う 環境への情報を伝達する 環境学習活動に参加する ゴミの分別に努める 環境配慮型商品を購入する 節水に努める ゴミを出さないように努める 節水などの省エネ活動に努める
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
■すでに行っている ■行っているが今後あまり行いたくない
■行ったことはないが今後は行いたい ■行ったことはなく今後も行いたくない 図 5 本大学の学生の環境配慮行動
- 34 -
人もいれば,損得を考えずに利他的な行 動をとる人もいる.近年,人の行動選択 については行動の対象とその時間割引率 で説明されている.環境配慮行動と時間割引率については すでに多く既存研究がある [1],[2].本論 文で用いたアンケートでも日常生活にお ける環境配慮行動を回答してもらったが,
節水や節電という環境配慮行動は一人で も実行できる行動であり,月々の使用料 金の減額といった行動による利益を得ら れる.しかし,ボランティアや学校の授 業で行われるような環境教育や環境学習,
生物保護活動などは直接的な個人の利益 は得づらい利他的な行動である.
提唱されている「持続可能な開発のた めの教育」(ESD)の目的においては,後 者の利他的な行動を自発的に選択できる 学生を授業によって育成していくことに なるため,時間割引率を考慮して分析を 行う.
時間割引率に関しては表 1 のアンケー ト項目にある「時間割引率に関する項目」
(問 7 −問 9)を用いた.
また,本論文における時間割引率はア ンケート項目の内容から短い期間内の同 一対象について回答してもらったことか らその効用は消費量を伴いと考え一定割 引で指数型を用いた [ 註釈 1]. 上記の 様にアンケート対象者である学生を区分 したところ,時間割引率がほとんどない ことから利己的な行動を選択すると計算 された学生の数は 51 人,時間割引率 がみられたことから利他的な行動を選択 す る と 計 算 さ れ た 学 生 の 数 は 125 人 と なった.
まず,図 6 が時間割引率のほとんどみ られないことから利己的な行動選択をす ると計算された学生の分析結果である.
図 6 の図中の左側が表 1 のアンケート 項目における環境意識を表している.図 中から見ると「沖縄の海の環境状態」(Q31) と「沖縄の河川の環境状態」(Q32) は 0.06 という低い関連性があり,「沖縄の河川の 環境状態」(Q32) は「沖縄のゴミの環境 状態」(Q34) と 0.37 の低い関連性が,「沖
まず,図
6
が時間割引率のほとんどみられないことから利己的な行動選択すると計算さ れた学生の分析結果である.図
6
の図中の左側が表1
のアンケート項目における環境意識を表している.図中から見 ると「沖縄の海の環境状態」(Q31)
と「沖縄の河川の環境状態」(Q32)
は0.06
というとて も低い関連性があり,「沖縄の河川の環境状態」(Q32)
は「沖縄のゴミの環境状態」(Q34)
と低い0.37
関連性が,「沖縄の海の環境状態」(Q31)
と「沖縄のゴミの環境状態」(Q34)
の 関連性は0.01
と説明することができる.これらは被説明変数(SI)
という環境意識を構成し ている.図中の右側は表
1
のアンケート項目における日常生活における環境配慮行動を表してい る.被説明変数(SI
)から「節水に努める」(Q63
,1.09
)という環境配慮行動との関連性 がみられ,次いで「ゴミを出さないように努める」(Q62
,0.62
)の環境配慮行動もみられ た.これらの結果とモデル適合度をまとめたものが表2
である.結果,時間割引率がほとんどみられない利己的な行動を選択すると計算された学生の環 境意識は「沖縄の海の環境状態」
(Q31)
と「沖縄の河川の環境状態」(Q32)
,沖縄のゴミの 環境状態」(Q34)
で主に構成されていたが,それぞれは低い値となった.しかし,「節水に努める」
(Q63)
や「ゴミを出さないように努める」(Q62
)において高い値を示しており,利他的な行動を選択しているものの環境配慮行動を実行している.
図6 本大学における時間割引率がほとんどない学生の環境意識と環境配慮行動の関係
- 35 -
縄の海の環境状態」(Q31) と「沖縄のゴ ミの環境状態」(Q34) の関連性は 0.01 と 説明することができる.これらは被説明 変数 (SI) という環境意識を構成している.図中の右側は表 1 のアンケート項目に おける日常生活における環境配慮行動を 表している.被説明変数(SI)から「節 水に努める」(Q63,1.09)という環境配 慮行動との関連性がみられ,次いで「ゴ ミを出さないように努める」(Q62,0.62)
の環境配慮行動もみられた.これらの結 果とモデル適合度をまとめたものが表 2 である.
結果,時間割引率がほとんどみられな
い利己的な行動選択をすると計算された 学生の環境意識は「沖縄の海の環境状態」
(Q31) と「沖縄の河川の環境状態」(Q32),
沖縄のゴミの環境状態」(Q34) で主に構 成されていたが,それぞれは低い値となっ た.しかし,「節水に努める」(Q63) や「ゴ ミを出さないように努める」(Q62)にお いて高い値を示しており,利他的な行動 を選択しているものの環境配慮行動を実 行している.
これは自発的な環境意識は低いものの,
自身の利益のためか社会的な規律によっ て環境配慮行動が促されていると考えら れる.
次いで,時間割引率がみられたことから利他的な行動を選択すると計算された学生の分 析結果は図
7
である.図7
から時間割引率がみられた学生の環境意識は,「沖縄の海の環 境状態」(Q31)
と「沖縄のゴミの環境状態」(Q34)
,「沖縄の騒音の環境状態」(Q35)
から厚 生されており,このなかでもっとも強く意識されている対象は「沖縄の騒音の環境状態」(Q35)
で,「沖縄のゴミの環境状態」(Q34)
は負の値であることから低い値ではあるが意識されていないと読み取れる.
このような環境意識から時間割引率がみられた学生は,「ゴミを出さないように努め る」(
Q62
,0.60
)や「節水に努める」(Q63
,0.54)
といった時間割引率がほとんどみられない学生と同じ環境配慮行動がみられた.
しかし,前者の違いとして時間割引率がみられた学生は,「環境への情報を伝達する」
(Q68
,0.37)
や「生物保護活動を行う」(Q69
,0.37)
といった直接的な個人の利益は得づら 表2
標準化係数とモデル適合度(図6
)標準化係数
推定値
SI <--- Q32 -0.23
SI <--- Q34 0.227
SI <--- Q31 0.112
Q62 <--- SI 0.617
Q69 <--- SI 0.008
Q63 <--- SI 1.087
モデル検定
モデル
RMSEA LO 90 HI 90 PCLOSE
モデル番号
1 0.000 0.000 0.119 0.84
独立モデル0.141 0.077 0.203 0.015
図7 本大学における時間割引率がみられた学生の環境意識と環境配慮行動の関係
次いで,時間割引率がみられたことから利他的な行動を選択すると計算された学生の分 析結果は図
7
である.図7
から時間割引率がみられた学生の環境意識は,「沖縄の海の環 境状態」(Q31)
と「沖縄のゴミの環境状態」(Q34)
,「沖縄の騒音の環境状態」(Q35)
から厚 生されており,このなかでもっとも強く意識されている対象は「沖縄の騒音の環境状態」(Q35)
で,「沖縄のゴミの環境状態」(Q34)
は負の値であることから低い値ではあるが意識されていないと読み取れる.
このような環境意識から時間割引率がみられた学生は,「ゴミを出さないように努め る」(
Q62
,0.60
)や「節水に努める」(Q63
,0.54)
といった時間割引率がほとんどみられない学生と同じ環境配慮行動がみられた.
表
2
標準化係数とモデル適合度(図6
)標準化係数
推定値
SI <--- Q32 -0.23
SI <--- Q34 0.227
SI <--- Q31 0.112
Q62 <--- SI 0.617
Q69 <--- SI 0.008
Q63 <--- SI 1.087
モデル検定
モデル
RMSEA LO 90 HI 90 PCLOSE
モデル番号
1 0.000 0.000 0.119 0.84
独立モデル0.141 0.077 0.203 0.015
図7 本大学における時間割引率がみられた学生の環境意識と環境配慮行動の関係
次いで,時間割引率がみられたことか ら利他的な行動選択をすると計算された 学生の分析結果は図 7 である.図 7 から 時間割引率がみられた学生の環境意識は,
「沖縄の海の環境状態」(Q31) と「沖縄の ゴミの環境状態」(Q34),「沖縄の騒音の 環境状態」(Q35) から構成されており,こ のなかでもっとも強く意識されている対 象は「沖縄の騒音の環境状態」(Q35) で,
「沖縄のゴミの環境状態」(Q34) は負の値 であることから低い値ではあるが意識さ れていないと読み取れる.
このような環境意識から時間割引率が みられた学生は,「ゴミを出さないように 努める」(Q62,0.60)や「節水に努める」
(Q63,0.54) といった時間割引率がほと んどみられない学生と同じ環境配慮行動 がみられた.
しかし,前者の違いとして時間割引率 がみられた学生は,「環境への情報を伝達 する」(Q68,0.37) や「生物保護活動を行う」
(Q69,0.37) といった直接的な個人の利 益は得づらい利他的な環境配慮行動もみ られた点である.
これらの結果とモデル適合度をまとめた ものが表 3 である.
4.まとめ
以上のような単純集計と,時間割引率 に基づき区分することで学生の行動選択 を考慮した上で,その環境意識と行動を 分析した結果,単純集計では高い割合で 示された環境意識は,Mimic モデルでみ ると本大学の学生の両者とも環境意識は 低い値を示した.図 3 での単純集計と比 べると評価対象は似ていても低い値であ るし,図 2 の環境保全の意識の有無にお ける高い割合を示していることとも矛盾 する.
推測ではあるが,学生という身分であ ることからその多くが保護者の庇護下で,
節水や節電,ゴミの分別などの日常生活 での環境配慮行動を代替してくれる者い ることや,日常生活において環境に対し て大きな危機感を持ちづらいということ が考えられる.
環境配慮行動においては,時間割引率 のほとんどみられない学生と時間割引率 がみられた学生の高い値を示した行動は
「ゴミを出さないように努める」(Q62)
や「節水に努める」(Q63) と日常生活に 係わる一人でも実行できる行動で似通っ ていた.しかし,時間割引率がみられた 学生には「環境への情報を伝達する」(Q68) い利他的な環境配慮行動もみられた.
これらの結果とモデル適合度をまとめたものが表
3
である.4.まとめ
以上のような単純集計と,時間割引率に基づき区分することで学生の行動選択を考慮し た上で,その環境意識と行動を分析した結果,単純集計では高い割合で示された環境意識
は,
Mimic
モデルでみると本大学の学生の両者とも環境意識は低い値を示した.図3
での単純集計と比べると評価対象は似ていても低い値であるし,図
2
の環境保全の意識の有無 における高い割合を示していることとも矛盾する.推測ではあるが,学生という身分であることからその多くが保護者の庇護に下で節水や 節電,ゴミの分別などの日常生活での環境配慮行動を代替してくれる者いることや,日常 生活において環境に対して大きな危機感を持ちづらいということが考えられる.
環境配慮行動においては,時間割引率のほとんどみられない学生と時間割引率がみられ た学生の高い値を示した行動は「ゴミを出さないように努める」(
Q62
)や「節水に努める」
(Q63)
と日常生活に係わる一人でも実行できる行動で似通っていた.しかし,時間割引率がみられた学生には「環境への情報を伝達する」
(Q68)
や「生物保護活動を行う」(Q69)
といった直接的な個人の利益は得づらい利他的な行動もみられた.本論文では大学生の環境意識の実態を把握するために本大学の学生を対象にしたアンケ ート調査の結果を分析したが,学生の環境意識と行動は自発的に行われている要因は低 く,社会的な規律や月々の使用料金の減額といったことに基づく要因が大きいように見受 けられる.
それを示すように,表1のアンケート項目で聞いた「自動車よりも公共機関での通学の 方が,環境負荷が小さいことを知っていますか」という回答では図
7
のような単純集計の 結果がみられた.標準化係数
推定値
AL <--- Q34 -0.018
AL <--- Q35 0.077
AL <--- Q31 0.074
Q62 <--- AL 0.603
Q69 <--- AL 0.367
Q63 <--- AL 0.545
Q66 <--- AL 0.189
Q68 <--- AL 0.370
Q65 <--- AL 0.453
モデル検定
モデル
RMSEA LO 90 HI 90
モデル番号
0.033 0.000 0.083
独立モデル0.082 0.053 0.11
表3
標準化係数とモデル適合度(図7
)- 37 -
や「生物保護活動を行う」(Q69) といっ た直接的な個人の利益は得づらい利他的 な行動もみられた.本論文では大学生の環境意識の実態を把 握するために本大学の学生を対象にした アンケート調査の結果を分析したが,学 生の環境意識と行動は自発的に行われて いる要因は低く,社会的な規律や月々の 使用料金の減額といったことに基づく要 因が大きいように見受けられる.
それを示すように,表1のアンケート 項目で聞いた「自動車よりも公共機関で の通学の方が,環境負荷が小さいことを 知っていますか」という回答では図 7 の ような単純集計の結果がみられた.
環境負荷が小さいということから公共 交 通 機 関 で 本 学 に 通 学 し て い る 学 生 は 22.1% であり,41.9% の学生は環境負荷
を認知しているが利便性のために自家用 車での通学を,6.4% がバイクでの通学を 行っている.
公共交通機関の手段が他県と比較して 少ない沖縄県という土地柄もあるが,自 身の利便性といった利己的な行動の方が 環境よりも優先されてしまう結果となっ た.また,これを改善するために通学手 当てを補助した場合,いくらから公共交 通機関を使用するかという質問を二段階 二肢選択によって聞いた結果が表 4 であ る.本論文で使用したアンケートの回答 者数では CVM といった高度な分析は標本 数から叶わなかったが,単純集計からで も自家用車の利便性の高さは伺える.表 4 からは学生一人あたり月々¥2,000 の 通学補助を与えることで,やっと 52.84%
の学生が公共交通機関を使用すると回答
■知っており実行している ■知っているが自家用車で通学している
■知っているがバイクで通学している ■知らなかった
図 8 通学方法と環境負荷の認知
環境負荷が小さいということから公共交通機関で本学に通学している学生は
22.1%
であり,
41.9%
の学生は環境負荷を認知しているが利便性のために自家用車での通学を,6.4%
がバイクでの通学を行っている.
公共交通機関の手段が他県と比較して少ない沖縄県という土地柄もあるが,自身の利便 性といった利己的な行動の方が環境よりも優先されてしまう結果となった.また,これを 改善するために通学手当てを補助した場合,いくらから公共交通機関を使用するかという 質問を二段階二肢選択によって聞いた結果が表
4
である.本論文で使用したアンケートの 回答者数ではCVM
といった高度な分析は標本数から叶わなかったが,単純集計からでも 自家用車の利便性の高さは伺える.表4
からは学生一人あたり月々¥2,000
の通学補助を 与えることで,やっと52.84%
の学生が公共交通機関を使用すると回答している.都市部での生活は利便性に富み,ゴミは集荷され節電や節水も手をかざすだけで行われ る.このような生活基盤の上で身近に大きな変化を伴う環境変化がない状態では利他的な
図
8
通学方法と環境負荷の認知提示金額
Yes No
¥500 18.18% 78.98%
¥1,000 42.61% 55.68%
¥2,000 52.84% 46.59%
表
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公共交通機関への代替を勘案する補助額している.
都市部での生活は利便性に富み,ゴミ は集荷され節電や節水も手をかざすだけ で行われる.このような生活基盤の上で 身近に大きな変化を伴う環境変化がない 状態では利他的な環境配慮行動を選択す ることは難しい.しかしながら,普遍的 で豊かな生活基盤も沖縄県に内在する環 境や文化・伝統があることで成り立って いる.月々の公共料金の減額といった目 に見える省エネに繋がる環境配慮行動も 大切であるが,環境教育を通して身近な 起こりえる環境問題を解決する自主的な 行動や価値を育むことも重要である.
特に都市部では多くの仕事が分業化さ れ,仕事上のノルマや目標をこなす利己 的な行動が賞賛される事が多いが,多数 の人で構成される社会でそのような利己 的な行動は多くの衝突問題を引き起こす.
沖縄県の環境や文化・伝統を次世代も 活用できるよう持続可能な社会を構築す る担い手を育成するために学生の視野や 新たな価値,自主的な行動を促す環境教 育の場としても大学教育は今後期待され ると感じる.
註釈 1 分析方法の詳細は同様の分析 を行った渡久地朝央「時間割引 率をもちいた島民の環境意識に ついて−久米島と伊是名島の比 較−」,経済環境研究,第 9 号,
2020.に記載した [7].
[ 参考文献 ]
[1] 今井芳昭 (2008)「環境配慮行動を促す ための社会心理学的アプローチ」エコ・
フィロソフィ研究 ,2,pp.107-128, 東 洋大学.
[2] 村上一真『環境配慮行動の意思決定プ ロセスの分析』中央経済社,2016.
[3] 文部科学省国際統括官付日本ユネスコ 国内委員会「ESD 推進の手引」2016.
[4] 日本ユネスコ国内委員会教育小委員会 ESD 特別分科会「持続可能な開発のた めの教育(ESD)の更なる推進に向け て」2015.
[5] 依田高典 , 西村周三 , 後藤励 (2009)『行 動健康経済学−人はなぜ判断を誤るの か』日本評論社.
[6] 渡久地朝央「座間味島を対象とした時 間割引と環境配慮行動の関係に関する 一考察」沖縄国際大学経済論集 , 第 10 巻 , 第 1 号 ,pp.55-63,2017.
[7] 渡久地朝央「時間割引率をもちいた島 民の環境意識について−久米島と伊是 名島の比較−」,経済環境研究,第 9 号,
2020
[8] 沖 縄 国 際 大 学 エ コ・ ア ク シ ョ ン 21
「2018 年度沖縄国際大学エコ・アク ション 21 学生意識調査」,2018.