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―「字のない葉書」と「卒業ホームラン」の交流活動を通して―

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(1)

小説の比べ読みに関する言語活動の 提示形式の比較と、学習展開の実態

―「字のない葉書」と「卒業ホームラン」の交流活動を通して―

桃 原  千英子

TOUBARU

 

Chieko

はじめに

 比べ読みは、複数のテクストをもとに自ら読みの方略を駆使しながら、新たな 見方を発見したり、解釈を深めていくことを期待して展開される。それぞれを照 らし合わせ検討する中で、1 つのテクストでは気づかなかった世界の発見が可能 となり、 「深い学び」であるディープ・アクティブラーニングが促される。

 そこで、小説の「深い学び」を実現する「比べ読み」に関する言語活動につい て、中学

2

学年を対象に、教科書の「てびき」の提示形式と実際の授業実践を検 証する。その上で、深い学びにむけての「てびき」のあり方、実践上の留意点を 検討したい。

1 新旧教科書における文学作品の「比べ読み」のてびき

 東京書籍の中学校国語科教科書には、文学作品の比べ読みの言語活動が中学

2

年次に掲載されている。第

2

章という学年の早い段階に設定されており、

2

学年 の最初に学ぶ文学教材での扱いとなっている。教材は、 定番教材「字のない葉書」

向田邦子(随筆)の後に、 「卒業ホームラン」重松清(小説)が配置され、家族 や父親像について比べ読みする言語活動が、てびきの最終発問として用意されて いる。平成

23

年度検定版と平成

27

年検定版教科書の「てびき」 (平成

23

年版は

「課題」 )は、以下のように記載されている。

1.1【 『新しい国語 2』平成 23 年 2 月 28 日検定済 東京書籍株式会社】

p.7[領域別 学習材一覧]

第2章 読むこと領域[文学一]

学習材名 字のない葉書 卒業ホームラン

(2)

学習目標 

 ・登場人物の言葉や行動がどんな意味を持っているかに注意して、作品を読み味わ   う。

 ・登場人物のものの見方や考え方について、自分の考えを持つ。

「言葉の力」

 ・登場人物の言葉や行動の意味に注意する

「字のない葉書」向田邦子

p.30

課題

読み取る

   ①この随筆の前半部分(26・1 ~

27・11)を読んで、

「私」が手紙を通して父につい てどのようなことを発見したのかを捉えよう。

     たすけ  父の「手紙の言葉遣い」と「ふだんの言葉遣い」に着目しよう。

   ②後半部分(27・12 ~

29・13)を読んで、末の妹が「疎開に出発する前」と「帰宅

するとき」に父がとった行動や態度から、父のどんな思いが伝わってくるかを考え てみよう。

考えを深める

   ⓐ「あれから三十一年」 (29・12)が過ぎて、 「私」は父のことをどのような思いで振 り返っているのだろうか。話し合ってみよう。

    たすけ  少女時代の「私」と、大人になった「私」では、父に対する思いにどん な違いがあるのだろうか。

  言葉の力  登場人物の言葉や行動の意味に注意する。

   ・登場人物の言葉から心情を捉えるときには、言葉の内容だけでなく、どんな言葉     遣いをしているかということにも着目するとよい。

   ・行動や態度からは、言葉にならない思いが読み取れることもある。

「卒業ホームラン」重松清

p.50

課題

読み取る

   ①典子と徹夫の会話の場面(35 ・

13

38

1)から、

徹夫の「監督としての思い」と「父

(3)

親としての思い」を捉えよう。また、 このとき典子は徹夫にどんなことを伝えたかっ たのかを考えてみよう。

  たすけ  典子は、徹夫、智、典子自身についてどのように捉えているのだろう。

   ②「一瞬言葉に詰まった後、徹夫の両肩から、すうっと重みが消えていった。頬が内 側から押されるように緩んだ。 」 (44・5)とあるが、このとき徹夫は智の言葉を聞 いてどんなことを思ったのだろうか。

   ③「家族みんなで、ホームインしよう。 」 (49・9)という最後の一文には、徹夫のど んな思いが込められているのかを話し合ってみよう。

  考えを深める

   ⓐ小説中の四人の家族(徹夫、佳枝、典子、智)から一人を選び、どんな人物で、自 分はその人物に対してどう考えるかを紹介し合おう。

   ⓑ「卒業ホームラン」と「字のない葉書」とを読み比べ、作品に描かれている家族や 父親像について、感じたことや考えたことを書いてみよう。

    →

30

ページ「登場人物の言葉や行動の意味に注意する。 」

1.2 てびきの各設問と「比べ読み」の関係性

  「字のない葉書」の課題は、

1

行空きで前半と後半に分けられる作品構成に即し、

筆者の寄せる父親への思いが段階的に読み取れるよう課題が設定されている。 「読 みとる」課題である①では「言葉遣い」から、②では「行動」や「態度」から登 場人物の心情を理解させる仕組みになっている。これは、2 学年で習得すべき小 説の読解方略として、

p.30

「学習ポイント「言葉の力」 」に示されている。また「考 えを深める」では、 ⓐ作品の叙述に着目させ、 少女時代の「私」と大人になった「私」

の父に対する思いの違いを互いに話し合わせることで、作品の主題に迫ることが できるようになっている。 〔表

1〕

  「卒業ホームラン」の課題は、概ね「字のない葉書」の課題の構成順序を踏襲 している。 「読みとる」課題①では、 「会話」から徹夫の「監督として」また「父 親として」の思いを捉えており、 「字のない葉書」の①「言葉遣い」と「会話」

が対応する形を取っている。また、 「字のない葉書」の①手紙とふだんの言葉遣 いの違い、ⓐ少女時代と大人の「私」の思いの違いと、 「監督」 「父親」といった 役割の違いが対応し、 「対照性」 に着目させることで人間が抱える複数の心情など、

人間の多面性に迫らせている。 「卒業ホームラン」ではさらに、このときの典子

(4)

の思いを考える課題が追加され、視点人物を変えて中心人物以外の立場から考え させる事で、人間関係の中でそれぞれが抱える思いに気づかせるようになってい る。 〔表

2

  「読みとる」課題②は徹夫の「行動」描写から、③は最後の一文といった叙述 に着目させることで、徹夫の思いを読みとらせている。

③の最後の一文を考えることは、作品タイトルとの呼応関係や、象徴性を考える 事になり、作品の主題を考えることにも繋がる。

  「考えを深める」では、初めに、ⓐ

4

人の登場人物から一人を選び、どう考え るかを紹介し合う活動が組まれている。これは、 「読みとる」 ①の課題のたすけ 「典 子は、徹夫、智、典子自身についてどのように捉えているのだろう」を発展させ たものであり、別の人物の立場と思いや考えについて自分の意見を持つ言語活動 になっている。学習指導要領の、 〔C 読むこと〕 「自分の考えの形成 エ」に該当 する。

 続くⓑは、先行教材の「字のない葉書」と読み比べ、家族や父親像について考 えを書く活動となっている。それまでの課題で、中心人物とその周りの人物の気 持ちを考える学習が段階的に組まれているため、そこで導いた答えを比べ読みに 生かせるように設定されている。これまでに学んだことをもとに、自分で二つの 作品を比較しまとめるという活動になっている。学習指導要領の 〔C 読むこと〕 「自 分の考えの形成 ウ・エ」 「読書と情報活用 オ」 に該当するが、 学習者によっては、

新たな読みの創造がなされるのではなく、学習したことをつなぎ合わせて答えを 作ってしまう可能性が出てくる。

 教科書のページの最後の行には、↓というアイコンにより、 「30 ページ「登場 人物の言葉や行動の意味に注意する」 」と「基礎編」との関連が示され、 「言葉の力」

への着目がなされている。 「字のない葉書」 を基礎的学習とし、 習得事項として 「言

葉の力」で身につけた読みの方略を活用させることが指摘されていると言うこと

ができる。

(5)

H23 年版・てびきの各設問と「比べ読み」の関係性

〔表 1〕 H23 年版・ 「字のない葉書」 向田邦子   

「字のない葉書」向田邦子 課題 各設問と「比べ読み」の関係性 読み取る

①この随筆の前半部分を読み、 「私」が手紙を通 して父についてどのようなことを発見したのかを 捉えよう。

 たすけ 父の「手紙の言葉遣い」と「ふだんの 言葉遣い」に着目しよう。

作品構成に即し、筆者の思いが段階的に読み取れ るよう設定。

・ 「言葉遣い」から登場人物の心情を理解

②後半部分を読み、末の妹が「疎開に出発する前」

と「帰宅するとき」に父がとった行動や態度から、

父のどんな思いが伝わってくるかを考えよう。

・ 「行動」や「態度」から登場人物の心情を理解  ↓

習得すべき小説の読解方略( 「学習ポイント「言 葉の力」 」 )

考えを深める

ⓐ「あれから三十一年」が過ぎて、 「私」は父の ことをどのような思いで振り返っているのだろう か。話し合ってみよう。

たすけ 少女時代の「私」と、大人になった「私」

では、父に対する思いにどんな違いがあるのだろ うか。

「あれから三十一年」  → 作品の叙述に着目 少女時代の「私」と大人になった「私」の父に対 する思いの違いを交流 → 作品の主題に迫る

〔表 2〕 H23 年版・ 「卒業ホームラン」  重松清       

字のない葉書 卒業ホームラン 各設問と「比べ読み」の関係性 課題 読み取る 課題 読み取る 「字のない葉書」の課題構成を踏襲

①随筆の前半部分を読み、 「私」

が手紙を通して父についてどの ようなことを発見したのかを捉 えよう。

 たすけ 父の「手紙の言葉遣 い」と「ふだんの言葉遣い」に 着目。

考えを深める

ⓐ「あれから三十一年」が過ぎて、

「私」は父のことをどのような思 いで振り返っているのだろうか。

話し合おう。

た す け  少 女 時 代 の「 私 」 と、

大人になった「私」では、父に 対する思いにどんな違いがある のだろうか。

①典子と徹夫の会話の場面から、

徹夫の「監督としての思い」と

「父親としての思い」を捉えよう。

また、このとき典子は徹夫にど んなことを伝えたかったのかを 考えよう。

  た す け  典 子 は、 徹 夫、 智、

典子自身についてどのように捉 えているか。

「監督として」また「父親として」

の思いと、 「手紙の言葉遣い」と

「普段の言葉遣い」が対応

役割の違い

少女時代と大人の「私」の思い の違い。 「監督」 「父親」→「対 照性」に着目

人間が抱える複数の心情、人間 の多面性に迫らせる。

典子の思いを考える課題が追加。

視点人物を変え中心人物以外の

立場から考えさせる事で、それ

ぞれが抱える思いに気づかせる。

(6)

〔表 3〕 H23 年版・ 「卒業ホームラン」  重松清

卒業ホームラン 各設問と「比べ読み」の関係性 課題 読み取る

②「一瞬言葉に詰まった後、徹夫の両肩から、す うっと重みが消えていった。頬が内側から押され るように緩んだ。 」とあるが、このとき徹夫は智 の言葉を聞いてどんなことを思ったのだろうか。

②徹夫の「行動」描写(徹夫の知覚)

③最後の一文

→ 叙述に着目させることで、徹夫の思いを読み とらせる。

③「家族みんなで、ホームインしよう。 」という 最後の一文には、徹夫のどんな思いが込められて いるのかを話し合ってみよう。

③最後の一文を考える

→ 作品タイトルとの呼応関係・象徴性   作品の主題

課題 考えを深める

ⓐ小説中の四人の家族(徹夫、佳枝、典子、智)

から一人を選び、どんな人物で、自分はその人物 に対してどう考えるかを紹介し合おう。

「読みとる」①の課題のたすけ「典子は、徹夫、智、

典子自身についてどのように捉えているのだろ う」を発展。

別の人物の立場・思い・考えについて自分の意見 を持つ活動

ⓑ「卒業ホームラン」と「字のない葉書」とを読 み比べ、作品に描かれている家族や父親像につい て、感じたことや考えたことを書いてみよう。 

→ 30 ページ「登場人物の言葉や行動の意味に注 意する。 」

【比べ読み】

課題は、中心人物とその周りの人物の気持ちを考 える学習が段階的に組織 

→ 答えを「比べ読み」に生かせるよう設定。

・学習者によっては、学習したことをただつなぎ 合わせてしまう危険性。

・ 「基礎編」との関連。 「言葉の力」への着目。

・ 「字のない葉書」を基礎的学習とし、習得事項と して「言葉の力」で身につけた読みの方略を活用 させる。

1.3【 『新編 新しい国語 2』平成 27 年 3 月 6 日検定済 東京書籍株式会社】

   ※下線は、平成 23 年版との変更点を示す。

p.7[領域別 学習材一覧]

第2章 感想を深める 読むこと〈文学一〉

学習材名 字のない葉書 卒業ホームラン 目標

 作品から感じたことや考えたことを伝え合おう

 ・登場人物の言葉や行動がどんな意味を持っているかに注意して、作品を読み味わう。

 ・登場人物のものの見方や考え方について、自分の考えを持つ。

(7)

  「言葉の力」 ・登場人物の言葉や行動の意味に注意する

「字のない葉書」向田邦子

p.35(教材文の最終ページ)

読書案内  同じ筆者の作品を読もう  父の詫び状 向田邦子

p.36

てびき 読み取る

   ①この随筆の前半部分(32・1 ~

33・11)を読んで、

「私」が手紙を通して父につい てどのようなことを発見したのかを捉えよう。

     たすけ  父の「手紙の言葉遣い」と「ふだんの言葉遣い」に着目しよう。

  ②後半部分(33・12 ~

35・6)を読んで、末の妹が「疎開に出発する前」と「帰宅す

るとき」に父がとった行動や態度から、父のどんな思いが伝わってくるかを考えて みよう。

考えを深める

   ③「あれから三十一年」 (35 ・

5)が過ぎて、

「私」は父のことをどのような思いで振り返っ ているのだろうか。話し合ってみよう。

     たすけ  少女時代の「私」と、大人になった「私」では、父に対する思いにどんな 違いがあるのだろうか。

  言葉の力  登場人物の言葉や行動の意味に注意する

   ・登場人物の言葉から心情を捉えるときには、言葉の内容だけでなく、どんな言葉     遣いをしているかということにも着目するとよい。

   ・行動や態度からは、言葉にならない思いが読み取れることもある。

「卒業ホームラン」重松清

p.37(教材文の最初のページ)

読む〈文学一〉 「言葉の力 登場人物の言葉や行動の意味に注意する」 (36 ページ)の 学びを生かして読もう。

(教材文全体)

(8)

ページごとの脚注が消え、文章末に野球用語の解説のみ掲載。学ぶべき漢字や、学び たい語句(意味・短文・類義語・対義語)は削除されている。

  

p.52

てびき 読み取る

  

①典子と徹夫の会話の場面(40・31 ~

42・10)から、徹夫の「監督」

「父親」として の思いを捉えよう。また、典子は徹夫、智、典子自身についてどのように思ってい るのだろうか。

   ②次のそれぞれのときの徹夫の思いを考えてみよう。

   ・ 「一瞬言葉に詰まった後、徹夫の両肩から、すうっと重みが消えていった。頬が内 側から押されるように緩んだ。 」 (46・39)

   ・ 「家族みんなで、ホームインしよう。 」 (50・25)

考えを深める

   ③徹夫、佳枝、典子、智から一人を選び、どんな人物で、自分はその人物に対してど う考えるかを紹介し合おう。

   ④「卒業ホームラン」と「字のない葉書」とを読み比べ、作品に描かれている家族や 父親像について、感じたことや考えたことをまとめてみよう。

   読書案内  さまざまな作品に触れよう      『きみの友だち』重松清

   『父のようにはなりたくない』阿部夏丸

   『カメレオン』アントン・チェーホフ/原卓也・訳(→資料編

272

ページ)

    目標 作品に描かれている人物像に着目して読んでみよう。

   広がる言葉

   ⓐ  「卒業ホームラン」には、 「負けず嫌いの性格だった。 」 (43・13)のように、人物 の人柄、性格などの人物像を表す言葉が用いられている。 「負けず嫌い」の人とは、

どんな場面でどんな行動をとる人なのかを考えてみよう。

   ⓑ 例に倣い、1 ~

3

の人物像を表す言葉を考えて、書き出そう。

   例 ヘレン・ケラー → 努力家 理知的  など

(9)

1 サザエさん   → 2 織田信長    → 3 かぐや姫    →

ⓒ 次の、人物像を表す言葉のリストに、一つ付け加えよう。

真摯   ロマンチスト   さばさばしている   傲慢 冷静沈着   自信家   一筋縄ではいかない   陽気 熱しやすく冷めやすい    (       )

307

ページ「言葉を広げよう」

   広がる漢字

次の傍線部の漢字を読んでみよう。

ⓓ りっしんべん・こころ(忄・心)の漢字 1~8(省略)

1.4  「比べ読み」に関する新旧教科書の比較

 平成

27

年版教科書は、旧版教科書からの改訂により「比べ読み」の言語活動 がより意識化されたものになっている。

 まず、章にタイトル名「第2章 感想を深める」がつき、学習の深化が求めら れる事が示された。

 目標に関しても、旧版の2つの目標の上位目標として「作品から感じたことや 考えたことを伝え合おう」という言葉が追加され、対話による学習によって最終 的に「比べ読み」を促すことが示されている。 

 学習材本文の扱い方にも変更がある。 「字のない葉書」では、作品の最終ペー ジに読書案内が挿入され、 「同じ筆者の作品を読もう」とした上で『父の詫び状』

が紹介されている。 「卒業ホームラン」では、作品の前に「 「言葉の力 登場人物 の言葉や行動の意味に注意する」 (36 ページ)の学びを生かして読もう。 」と、 「言 葉の力」への注意が挿入された。さらに、学ぶべき漢字や学びたい語句(意味・

短文・類義語・対義語)の脚注は削除され、文章末に野球用語の解説のみの掲載

となった。教師主導による詳細な読解の授業に偏らないよう、また生徒自身が調

べたり考えたりしながら感想を深められるよう、主体的な読みの展開に向けた教

材提示の仕方になっている。また、読書案内が手引きの最後に示され、 「さまざ

(10)

まな作品に触れよう」とした上で『きみの友だち』 (重松清) 、 『父のようにはな りたくない』 、 『カメレオン』 (アントン・チェーホフ/原卓也・訳)が紹介され ている。 『カメレオン』は関連する読み物として、教科書の資料編に作品が掲載 されている。これは、学習指導要領の〔C 読むこと〕 「自分の考えの形成 ウ・エ」

「読書と情報活用 オ」に該当する。

 広がる言葉では、教材文で学んだ人物像を表す言葉について、習得事項が社会 生活の実の場で適切に使用できるよう、言語知識の充実が図られている。

1.5  「てびき」に関する新旧教科書の比較

  「字のない葉書」のてびきは、 平成

23

年度版教科書の「課題」との変更点は無い。

  「卒業ホームラン」のてびきは、平成

23

年度版教科書の「課題」を整理、再編 成して提示されている。てびきの変更点の具体は、以下の通りである。

  「読みとる」の①について、平成

23

年度版では、 「また、このとき典子は徹夫 にどんなことを伝えたかったのかを考えてみよう。 」となっており、 たすけ と して「典子は、徹夫、智、典子自身についてどのように捉えているのだろう。 」 というヒントが示されていた。それが平成

27

年度版では、 たすけ が削除され、

たすけ の言葉を設問に取り込む形で「また、典子は徹夫、智、典子自身につい てどのように思っているのだろうか。 」という問いに置き換わっている。典子が 父親に伝えたかった思いは、叙述のみで答えてしまい表面的な読みを導く可能性 を有するが、 たすけ をメイン課題とすることで、典子のものの見方や考え方に ついて「自分の考えを持つ」ことが可能になる。

2

つの学習目標に関わる問いと なっている。

平成 23 年度版 平成 27 年度版

①「また、このとき典子は徹夫にどんなことを伝 えたかったのかを考えてみよう。 」

①「また、典子は徹夫、智、典子自身についてど   のように思っているのだろうか。 」

【たすけ】 「典子は、徹夫、智、典子自身につい てどのように捉えているのだろう。 」

(ヒントが示される)

 削除

  「読みとる」の②は、 平成

23

年版の「課題」②③をまとめたものとなっており、

それぞれのときの徹夫の思いを考える問いになっている。平成

23

年版では、③

の課題として「 「家族みんなで、ホームインしよう。 」 (

49

9

)という最後の一文

(11)

には、徹夫のどんな思いが込められているのかを話し合ってみよう。 」と、作品 の主題について自分の考えや読みを交流し合う機会が設けられていた。続く「考 えを深める」のⓐ「…自分はその人物に対してどう考えるかを紹介し合おう。 」 の交流活動との繋がりを考えたものと考えられよう。しかし、平成

27

年版では それが削除されている。

平成 23 年度版 平成 27 年度版

②「一瞬言葉に詰まった後、徹夫の両肩から、す うっと重みが消えていった。頬が内側から押され るように緩んだ。 」 (44・5)とあるが、このとき 徹夫は智の言葉を聞いてどんなことを思ったのだ ろうか。

②次のそれぞれのときの徹夫の思いを考えてみよう。

・ 「一瞬言葉に詰まった後、徹夫の両肩から、すうっ と重みが消えていった。頬が内側から押されるよ うに緩んだ。 」

  ・ 「家族みんなで、ホームインしよう。 」

③「家族みんなで、ホームインしよう。 」

(49・9)という最後の一文には、徹夫のどんな 思いが込められているのかを話し合ってみよう。

(次の交流活動との繋がりを意識。作品の主題に ついて読みや考えの形成。 )

 削除

  「考えを深める」の③は、平成

23

年版と同じ設問である。④は、 「比べ読み」

に関する設問である。平成

23

年版はⓑ「 「卒業ホームラン」と「字のない葉書」

とを読み比べ、作品に描かれている家族や父親像について、感じたことや考えた ことを書いてみよう。 」となっており、 平成

27

年版は④「 「卒業ホームラン」と「字 のない葉書」とを読み比べ、作品に描かれている家族や父親像について、感じた ことや考えたことをまとめてみよう。 」となっている。設問の最後が、 「書いてみ よう」から「まとめてみよう」に変わっており、まとめの活動、集大成としての 意味合いを含んだ書き方となっている。

平成 23 年度版 平成 27 年度版 b「卒業ホームラン」と「字のない葉書」とを読

み比べ、作品に描かれている家族や父親像につい て、感じたことや考えたことを書いてみよう。

④「卒業ホームラン」と「字のない葉書」とを読 み比べ、作品に描かれている家族や父親像につい  て、感じたことや考えたことをまとめてみよう。

③「家族みんなで、ホームインしよう。 」

(49・9)という最後の一文には、徹夫のどんな思 いが込められているのかを話し合ってみよう。

 削除

 平成

27

年度版は、 「てびき」の最後に読書案内が入った。 さまざまな作品に

触れよう と前置きし、3 冊の本が紹介されている。その中の『カメレオン』アン

トン・チェーホフ/原卓也・訳は、資料編に

6

ページにわたって作品が掲載され

(12)

ている。また、目標を「作品に描かれている人物像に着目して読んでみよう。 」 と設定し、 「字のない葉書」や「卒業ホームラン」で学習した父親像の読み取り が活かせるようになっている。さらに、 その後に学ぶ「広がる言葉」の学習、 ⓐ「人 物の人柄、性格などの人物像を表す言葉」を具体的な場面や行動をもとに考える 活動が生かせるように、学習の繋がりを意識した編成になっている。

 また、平成

27

年版から追加された「広がる言葉」は、言語の知識を増やせるよ う、さらに学習した習得事項を実生活場面において適切、具体的に使用できるよう、

いくつかの問いで構成されている。 「広がる言葉」に取り組む際に活用する資料編 の「言葉を広げよう」は、

p.307

「たくさんの言葉を知ることで、考えを深め、表 現の幅を広げることができる。 」として、人物を表す言葉・比喩的に使われる言葉・

頻度を表す言葉・喜怒哀楽を表す言葉が

4

ページにわたって紹介されている。

平成 27 年度版  読書案内 平成 27 年度版   「広がる言葉」

・ 「てびき」の最後に設定

・ 「さまざまな作品に触れよう」  3 冊の本が紹介。

・ 『カメレオン』→資料編に作品掲載

・目標「作品に描かれている人物像に着目して読 んでみよう。 」

(→「字のない葉書」や「卒業ホームラン」で学 習した父親像の読み取りが活かせる。

・その後に学ぶ「広がる言葉」の学習、a「人物 の人柄、性格などの人物像を表す言葉」を具体的 な場面や行動をもとに考える活動が活かせる。 )

・平成 27 年版から追加

・言語の知識を増やせ、学習した習得事項を実生 活において適切、具体的に使用できるよう、いく つかの問いで構成。

・ 「広がる言葉」に取り組む際に活用する資料編「言 葉を広げよう」→「言葉を知ることで、 考えを深め、

表現の幅を広げることができる。 」として、人物 を表す言葉・比喩的に使われる言葉・頻度を表す 言葉・喜怒哀楽を表す言葉が 4 ページ紹介。

学習の繋がりを意識した編成 ・言葉の知識

・実生活での適切な使用

・資料編(思考力・表現力)

 以上のことから、平成

27

年版教科書は、 「比べ読み」などの中心となる言語活 動に応じた教材文の掲載の工夫、習得事項・活用事項の関連性を緊密に持たせた 教材の配列、手引きの系統性、読書活動や言語活動との関連性の明確化、といっ た点で、

23

年版教科書よりも学習目標の達成や言語活動の充実に根ざした編成 となっている。

1.6  「比べ読み」に関する言語活動の、取り立て指導とその都度指導の繋がり 

  「比べ読み」では、作品同士を比較し分類する力が求められる。また、話し合

いや紹介し合う活動など、他者と読みを交流し合う力も必要となる。

(13)

 取り立て指導としての言語活動が、その都度指導とどの程度の関連性を持たせ ているのか、学習の繋がりを考える事は重要である。

  「卒業ホームラン」におけるその都度指導としての「分類すること」 「話し合う こと」と、既習事項の取り立て指導との関係性は、以下のようになっている。

【 『新編 新しい国語 1』平成 27 年 3 月 6 日検定済 東京書籍株式会社】

【話すこと・聞くこと】

 2

章「思いを捉える」読む〈文学1〉学びの扉「質問する」 (p.54)

   基礎編◆学びを支える言葉の力・論理的な言葉の力-議論する力「質問する」

(pp.239-241)

 2

章「思いを捉える」読む〈文学1〉話す・聞く〈聞く〉 「会話が弾む質問をしよう」

(pp.55-57)

 7

章「表現を考える」読む〈言葉とメディア〉話す・聞く〈話し合う〉 「話し合いで理解 を深めよう-グループディスカッション-」 (pp.197-202)

  ・ 「3. 話し合いを通して理解を深める」 (p.200)として、話し合いをしながら付箋を整 理する活動が組まれている。

【分類すること】

 3

章「分かりやすく伝える」読む〈構成・展開〉学びの扉「分類する」 (p.70)

   基礎編◆学びを支える言葉の力・実用的な言葉の力-整理する力「分類する」

(pp.230-232)  

 3

章「分かりやすく伝える」書く〈伝達〉 「構成を考えて書こう」 (pp.71-78)

  ・ 「言葉の力 材料を集める」 (p.72)では、観点を決め連想を広げていく方法として、

ウェビングが言語活動として取り上げられている。

  ・ 「言葉の力 材料を整理し、文章を構成する」 (p.73)では、材料どうしの共通点を 見つけてグループにし、見出しを考える言語活動が組まれている。

 7

章「表現を考える」読む〈言葉とメディア〉書く〈感性・創造〉 「作品のよさを表現し よう-歌の鑑賞文-」 (pp.203-208)

  ・ 「言葉の力 作品を鑑賞し、考えをまとめる」 (p.204)では、 「作品の中で印象に残っ た部分から読みとったことや感じたことを書き出す。作品の全体から感じたことと、

部分から感じたことの繋がりを考えてみる。 「場面」 「心情」 「表現」など、 観点を持っ

(14)

て 作品を鑑賞するのもよい。 」とされ、自ら文章を読みとり、相互の関連性や観点 を持って分析する活動が組まれている。

【 『新編 新しい国語 2』平成 27 年 3 月 6 日検定済 東京書籍株式会社】

【人物像を捉えること】

基礎編◆学びを支える言葉の力・創造的な言葉の力[解釈する力]人物像を捉える。

     (pp.248-250)

  ・1 年(文脈を捉え、伏線に気づく)2 年(人物像を捉える)3 年(人物どうしの関係 に着目する)

  ・ 「人物の言葉や行動・態度に着目する」 「人物の多面性に気づく」の

2

つのポイント が示されている。 「人物の言葉や行動・態度を描き出した表現に着目し、その意味を 考えていくと、人物像が明らかになってくる。 」と説明され、イラストの人物の吹 き出しによるヒントには「何気ない表情やしぐさといった人物の態度も、人物像を 捉える手がかりになる」と書かれている。また、続きの場面を紹介しながら「人物 像とは必ずしも一面的な者ではなく、さまざまな側面を持った多面的なものであり、

そのときの状況に応じて異なった面が見えてくることもある。 」 ことも示されている。

  ・ 「学習のつながり」には、読むことから「字のない葉書」 「卒業ホームラン」 「走れメ ロス」が挙げられている。

 以上のように、 「卒業ホームラン」におけるその都度指導としての「分類する こと」 「話し合うこと」に対して、 「比べ読み」をする前段階での「取り立て指導」

では、会話が弾む質問やグループディスカッション( 「話し合うこと」に対応) 、 付箋の利用、相互の関連性や、観点の持つためのウェビングの仕方、共通点の見 つけ方( 「分類すること」に対応)など、言語活動に関する学習が系統的に編成 されている。これらの知識や技能を用いて、 「比べ読み」が可能となるように段 階的に学習が積み重ねられている。

 ただし作品の読解に関わる「人物像を捉えること」に関しては、その後に学ぶ

2

年次教科書の第

6

章「走れメロス」の「学びの扉」において漸く「基礎編」が 示される。人物像の把握に関しては、 小学校の段階から学習していることもあり、

既習事項として扱われ系統性は保たれていない。 「卒業ホームラン」の授業にお

いても学習者によっては「基礎編」を確認させる必要性があるが、 「比べ読み」

(15)

の後段階に示されることで、教師にも学習者にも見過ごされてしまう可能性がある。

  「卒業ホームラン」におけるその都度指導としての「分類すること」 「話し合う こと」と、既習事項の取り立て指導との関係性は、以下のようになっている。

「卒業ホームラン」のその都度指導 取り立て指導(前段階) 取り立て指導(後段階)

・分類すること

・話し合うこと

・会話が弾む質問

・グループディスカッション

・付箋の利用

・相互の関連性や、観点の持つ ためのウェビングの仕方

・共通点の見つけ方

・ 「人物像を捉えること」

(2 年次・第 6 章「走れメロス」

の「学びの窓」で「基礎編」

が提示)

思考操作・言語活動 言語活動 → 系統的に編成 読解方略 → 系統性なし

2 学習展開の実態

授業日:平成

28

7

11

日(月)

5

校時 授業者:那覇市立O中学校 植前秀一郎教諭 教科書: 『新編 新しい国語 2』東京書籍

     (那覇市では、平成

27

年度まで光村図書の教科書を使用)

【授業の概要】

(1) 単元名:感想を深める(重松清「卒業ホームラン」 ) (2) 単元の目標

①作品から考えたことを伝え合う学習に関心を持ち、意欲的に作品を読もうとす る。 (関心・意欲・態度)

②登場人物の言葉や行動がどんな意味を持っているかに注意して、作品を読み味 わう。 (読むこと)

③登場人物のものの見方や考え方について、自分の考えを持つ。 (読むこと)

④人物像を表す言葉などに注意して、語感を磨く。 (伝統的な言語文化と国語の 特質に関する事項)  

(3) 単元について

①生徒について

 1

学年時の「にじの見える橋」 「星の花が降るころに」 「少年の日の思い出」 (光

(16)

村図書)の3つの文学的文章では、風景描写、心情描写、情景描写の読み取りに 焦点を合わせて学習活動を展開した。その際にはひとつひとつの言葉、表現に着 目させ、何が読み取れるかを、グループでの交流などをとおして考えさせてきた。

しかしながら、その学習している際には、ひとつひとつの言葉、表現に着目して 学習を進めることができるが、次の教材に移ると、既習事項を生かした学習を進 めることができない場面が多く見られた。まだまだ定着が不十分である。

②単元構成及び教材について

 本単元は「読むこと」のウとエ、及びそれに関連する〔伝統的な言語文化と国 語の特質に関する事項〕

(1)

(

)

を効果的に指導するために、 「 「字のない葉書」

との読み比べを行い、家族観、父親像について意見の交流を行う。 」という言語 活動を設定する。

 本教材は、徹夫という人物を中心に置いて、 「生きがい」の問題と「家族」の 問題が縦糸と横糸になって織り込まれている。結末では家族四人が家へ向かう場 面で終わる。家族一人一人が異なる悩みを抱え、互いに葛藤しながら最後はみん なが帰ってくる原点、それが家族であることを示唆する内容となっている。そし て今回読み比べを行う「字のない葉書」もまた、時代背景は違うとはいえ、やは り「家族」をテーマとしており、その中心は「父親」である。作品としては随筆 であるが、自分の感情をできるだけ抑え、客観的な描写を重視して書かれた文章 である。思春期の生徒にとっても一昔前の家族、父親として単に捉えるのではな く、そこに普遍的なものを感じ取れる作品である。

③指導について

 本単元では、学習形態としてグループ、個人の2形態を用いて学習活動を進めて いく。漢字、語句の確認、登場人物の言動からの思いの読み取りなどは個人で行い、

人物像を文章中に根拠を求めて考える場面と、 「字のない葉書」との読み比べを通 して家族や父親像の意見交流をする場面では、4~5人のグループで学習を行う。

 グループ学習では、付箋紙を使い、それぞれの考えをグループ内で共有し、自 分の考えとの共通点や相違点に着目させる。その活動を通して、自分の考えを明 らかにさせていきたい。

(4) 単元の指導と評価の計画(全5時間)

1

時:新出漢字、 難語句を確認し、 登場人物と大まかなあらすじについて捉える。

(17)

2

時:会話や行動の描写から、登場人物の思いを捉える。

     【てびき:読み取る・①②】

3

時:登場人物の人物像について考え、意見を交流する。

     【てびき:考えを深める③】

    ・自分にとって印象に残った人物を一人選び、その人物像を考える。

    ・4~5人のグループで意見を交流する。 【※話し合い】

    ・自分の考えをノートに改めてまとめる。

4

時: 「字のない葉書」と読み比べ、自分の意見をまとめる。

     【てびき:考えを深める④】

    ・ 「卒業ホームラン」と「字のない葉書」との読み比べを行い、家族や      父親像について付箋紙にメモする。

    ・メモを元にグループで意見を交流する。 【※話し合い】

    ・自分の考えを文章にまとめる。

5

時:今までの学習を振り返る。

    ・単元全体を振り返り、学んだこと、考えたことをワークシートにまと      める。

(5) 本時の指導(4/5時間)

①目標

  「字のない葉書」との読み比べを行い、共通点や相違点を見つけ、自分の考え を持つ。

②本時の授業の工夫

 他の生徒と意見を交流する場面で付箋紙を使い、家族の形や父親像に関する共 通点・相違点についてグループで意見を交流させることで、自分の考えをまとめ させる。 

③指導過程(本時の展開)  

主な学習活動 指導上の留意点 評価(方法)

導入5分

①前時までの活動を振り返り、

本時のめあてを確認する。

②読み比べの方法を確認する。

・ 「字のない葉書」でのノートを使 うことを確認する。

・ 「 「父親」についての共通点・相違 点を付箋紙にメモする。

・付箋紙 1 枚には一項目。

「字のない葉書」と読み比べ、自分の意見をまとめる。

(18)

展開 35 分

③付箋紙に読み比べてわかっ たことをメモする。

④グループに分かれ、付箋紙 のメモをもとに意見を交流す る。

⑤グループごとに整理した意 見を発表させる。 (ミニホワイ トボードに記入し黒板に掲示)

⑥両作品の「父親」に対する 自分の意見をまとめる。

・ 「字のない葉書」の父親について は既習であることを改めて確認し、

ノートに記述があることを確認す る。

・台紙に自分の書いた付箋紙を説明 しながら貼らせる。

・同じ意見の付箋紙をまとめさせ、

意見を整理させる。

・時間をみてグループを指名して、

発表させる。

・グループでの意見や、他のグルー プの意見を参考に改めて自分の意 見を文章でまとめさせる。

(努力を要する生徒への支援)

付箋紙に書かれたメモをもとに 文章にまとめるよう促す。

【言語についての知識・理 解・技能】

メモ、交流、ノートの観察

〈十分満足できる〉

具体的な言葉の意味を説明 したり、人物に応じて、人 物像を表す言葉を的確に挙 げたりしている。

【読む能力】② ノート

〈十分満足できる〉

キーワードを基に、複数の 表現から共通点や相違点を 挙げ、自分の立場を明確に するとともに、時代による 違いや時代を超えた「家族 像」 「父親像」について自 分の考えを述べている。

終末

10

⑤本時の振り返りと次時の予 告。

・まとめた意見を指名して2~3人 に発表させる。

・次時では単元全体をまとめる ことを知らせる。

3 指導案の分析

 第

1

時では、初めに、前時までのノートを振り返りながら、 「字のない葉書」

との比べ読みを通して、家族の形や父親像について考えを交流することを確認し ている。船津啓治は、比べ読みの目的として「目的の違いによって読むときの観 点も決定づける。読者の読書行為の出発点に目的がある。 」 「比べて読むことで、

読みの観点を持ちやすい。その観点を持つことで、読み方も焦点化が図られ、よ り理解しやすくなる。 」

1

としている。学習に入る前に、 目的を示し「家族の形」 「父 親像」といった読みの観点を押さえることで、学習者は読みを焦点化し作品を相 対化しやすくなることが期待できる。

 また、登場人物の状況やあらすじを確認する事で、家族の人間関係など読解上 の要点を共通確認し、比べ読みに向け足並みを揃えられるようにしている。

 第

2

時では、てびき「読み取る」①②の学習が組まれ、心情把握の方略として 会話や行動描写に着目する活動や、作品のキーワードとなる「ホームイン」とい

1

船津啓治『比べ読みの可能性とその方法』渓水社,

2010.7

pp.108-110

(19)

う言葉についての確認が行われている。必要な箇所を音読させることにより、文 章の長さや野球用語といった読みのハードルに対応する手立てが取られている。

 第

3

時では、てびき「考えを深める」③の学習が、交流活動を中心に設定され ている。その際、自分の考えの根拠を本文中から抜き出させ、他者との交流後、

再度自分の考えをまとめさせている。 これは、 学習指導要領の 「自分の考えの形成」

を目指したものである。対照的なものの見方や考え方をする姉と弟、その間で悩 み迷う父親など、それぞれの人物に対する思いは学習者によって異なるが、それ を交流し合うことで、別の視点で登場人物の思いに深く迫ることを可能にしてい る。読み取りの浅い生徒にとって、他者の考えを聞く機会は、読みを補ったり誤 読に気付く支援となる。主人公が父親であるため、中学生にとっては感情移入が しにくいといった教材のもつ課題についても、学習者と同じ年代の典子や智の立 場に立って考える事で、父親の思いを汲み取ることが可能になるであろう。

 第

4

時では、てびき「考えを深める」④の比べ読みの学習が、付箋紙を用いた 意見交流を中心に設定されている。指導上の留意点として前に学習した「字のな い葉書」のノートの記述を参考にすることが示されており、比べ読みの方法を具 体的に示している。しかし、 「ノートに記述があることを確認する」ことで、比 べ読みにより新たに自分の考えを形成するといった本来の目的から離れ、既に出 された解答をそのまま比べ読みに利用する危険性も生じる。また、付箋紙

1

枚に 一項目、読み比べて分かったことをメモするとしたことで、情報を比較検討する ための活動が、短い言葉で抜き出し整理するといった表面的な活動へとすり替 わってしまう危険性がある。

 また、 指導上の留意点の、 「同じ意見の付箋紙をまとめさせ、 意見を整理させる。 」

にも、学習者に付箋を使う意図がきちんと伝わっていない場合、意見を一つにま

とめることが目的であると誤解が生じたり、互いの読みの違いを検討する機会を

失うことにより、家族や父親像について考えを深める学習に繋がらなくなる可能

性が出てくる。

(20)

指導案 分析

【第 1 時】

前時までのノートを振り返りながら、 「字のない 葉書」との比べ読みを通して、家族の形や父親 像について考えを交流することを確認。

目的を示し「家族の形」「父親像」といった読みの 観点を押さえる

読みを焦点化し作品を相対化しやすくなる 登場人物の状況・あらすじの確認 家族の人間関係など読解上の要点を共通確認

→ 比べ読みに向け足並みを揃える

【第 2 時】

てびき「読み取る」①②

・心情把握の方略として会話や行動描写に着目

・作品のキーワードとなる「ホームイン」とい う言葉についての確認

必要箇所の音読   ↓

読みのハードル(文章の長さ・野球用語)に対応 する手立て

【第 3 時】

てびき「考えを深める」③

・登場人物の人物像について考え、意見を交流 する。

・印象に残った人物を一人選び、人物像を考える。

・考えの根拠を本文中から抜き出させる

・他者との交流

・再度自分の考えをまとめる

学習指導要領 「自分の考えの形成」 を目指したもの。

・登場人物それぞれに対する思いを交流し合うこと で、別の視点で登場人物の思いに深く迫ることが 可能

・他者の考えを聞く機会→読みの補足・誤読への気 付き(支援)

・ 【問題点】主人公が父親・・・感情移入がしにくい   ↓

学習者と同じ年代の典子や智の立場に立って考え る事で、父親の思いを汲み取ることが可能になる。

【第 4 時・本時】

てびき「考えを深める」④

【比べ読み】 「字のない葉書」と「卒業ホームラン」

とを読み比べ、自分の意見をまとめる。

・指導上の留意点・・・ 「字のない葉書」のノー トの記述を参考にする

・比べ読みの方法を具体的に示す

(家族の形・父親像に関する共通点・相違点を話 し合う)

・付箋紙 1 枚に一項目、分かったことをメモする。

・同じ意見の付箋紙をまとめさせ、意見を整理 させる。

・ 「ノートの記述を確認」→既に出された解答をそ のまま書き写す危険性(新たに自分の考えを形成 するといった比べ読みの目的からそれる)

・情報を比較検討するための活動が、短い言葉で抜 き出し整理するといった表面的な活動へとすり替 わってしまう危険性。

・学習者に付箋を使う意図がきちんと伝わっていな い場合、意見を一つにまとめることが目的である と誤解が生じたり、家族や父親像について考えを 深める学習に繋がらなくなる危険性。

【第 5 時】

学習の振り返り

(21)

4 学習の実態

 2 年

1

1

班(男子N・A、女子H・S)の話し合いの発話プロトコルと、ワー クシートの記述をもとに、分析する。下線は桃原による。

4.1 発話プロトコル分析

【話し合い初期】

 父親像をメモした付箋紙を貼り、班で分類していく場面である。前半は主に、

貼り方の確認が多くなされている。

 グループの仲はよく、インフォーマルな発話

10S

「=バーンてやってからさ、

これゴワーンてなるんじゃん

(8)」11A「((

))」12S「ああ、じゃあ始めよ。(5)  13S

 ああ、あ

(.)

ゆうじさんお願いします。 」から、互いに話し合える雰囲気が あることが確認できる。男子に比べ女子の発言力が大きく、司会者Sが男子の言 葉を引き出していく様子が見られた。

【父親像の形成過程①】

 叙述表現をもとに、父親像についての話し合いがなされる。

 97

H「知らん顔をしておいた(

2

)じゃあ信じることをやめさせたくない(

2

) 家族みんなを大事に

//

している」104 N「あー、信じさせてやりたいとちがう」

105

H「ホームインの瞬間を見届けてやる」のように、父親の言葉から父の子供 達へ伝えたい思いを確認し、父親像を見いだそうとしている。他にも、父親が自 分の息子を名簿から削除する部分について、

137

S「はい、俺ならそんなことは できなかった」と自分に置き換えて考える様子や、

154

S「 (6)二年生、あ(. ) 三年生になっても球拾いかもしれないぞ、そんなのでいいのか(. )ある?」

159

S「 (3)野球::では厳しいが普段は優しい。 」など、物語内容に踏み込み根拠 を示しながら父親像を考える様子が見られた。

 メンバー表の〈加藤〉を二重線で消した行動や、努力することが大事だという 考えをもとに、

205H

「これさ、負けず嫌いに入るんじゃん?=」

211H

//

だっ て勝つために

.

勝つためにさ、 メンバー表

.

二重線に加藤って書いたから」

212S

「し かも自分に厳しいと思わん?子供出さないでから」のように、てびきで考えたこ とをもとに、父親像について感じたことや考えたことを話し合っている。

 発話、223H「えっとね、監督と、監督と

.

父親だったら人柄が違う」229S「多

(22)

分これ几帳面だと思う

.

はい=」

231T

「=なんかいちいちほら書いてるさこうやっ て( ) 」は、 『字のない葉書』の妹に几帳面な筆で自分宛の宛名を書いた父親像 と対比して考える可能性を秘めていたが、学習の深まりは生じなかった。

 その原因として、100T「はい、あと二分でどんな性格を表すか話し合って

//

ください」

101S

//

ヤバいだろ

//

」のように、急いでまとめなければならない というプレッシャーがかかったことが挙げられる。また

238T「抜き出したもの

を書くだけ

.

書いてないものを書くだけ

.

文章に書いたら読めないから

.

そのま ま書くだけ」との指示により、239S「// まず負けず嫌いの部分さ

.

あるじゃん、

まとめればいいんじゃん?ね。 」

244S

「 ( )あ、 気が強い性格でいいんじゃん?」

245H「=んー、いいねいいね」の会話が導かれ、話し合いで出されたほどの内

容の充実は図られず、

270H

「負けず嫌い、あー間違った、几帳面

.

負けず嫌い

.

自 分に厳しい」273S「えっとー

.

優しい、家族思い、えー、気が強い

.

終わり。あ と実力主義

.

を貫く」のように、父親像をホワイトボードに羅列し発表するにと どまった。

 さらに、話し合い自体も、

261S

「もうおんなじところをやらないでもいいよ、

違うところでいいよ」のように、思考が中断され、二作品の父親像を比較し合う までには深まらなかったと考えられる。

【父親像の形成過程②】

148H えと卒業ホームランでは(2)暴君だったから子供たちは反抗できなかった

     けど、字のないはがき?は字のないはがきは.

149S うん(2)

150H 字のないはがきは ::、父親が暴君だったから ::、

151S うん

152S 反抗できなかった//

153H 反抗できなかったけど卒業ホームランはのりこが反抗したからです。

154S はい(3)

155H つぎ。

(  )

 150H

153H

の発話から学習者は、威厳ある昔気質の父親と、娘に反抗されな

(23)

がら葛藤を抱えて生きる現代の父親の比較から時代背景を捉え直し、作品の読み に還元する事が可能であった。しかし、話し合いを通して理解を深めることが意 識されないまま学習が進んだため、

155H

「つぎ。 ( ) 」のように表面的なやり とりに終始し、ねらいとした比べ読みは達成されないこととなった。

 授業は、 各班の意見を全体で確認したあと、 教師から以下の指示が出される。 (下 線は桃原による)

 111T「

(前略-桃原-)どういうふうなことを見たらいいか比べるときの観点を挙げてみまし

た。どちらの父親があなたは好きか。それから、二人の父親についてどう思うか。ね。もしあな たならどちらの父親になるか。女の人だったらまあ女性だったら母親でもいいかな?と思います。

そしてあなたの家族と比べてみてどうですか?なぜ違いが出てきたんでしょう。何かの原因があ るのかな?それから、なぜ変わらない部分があるのか。ね。そういう観点を考えてみて、それを 文章にしてみてください。 」

 その指示の後、グループや他のグループの意見を参考に、 「父親像」を再考さ せる活動に移る。

 教師から示された観点は下線の

7

項目にわたる。いずれも

2

作品を読み比べ父 親に対する感想や評価を導くために、自分の家族と重ね合わせたり自分に置き換 えたりしながら、共通点や相違点を見つけていくことを比べ読みの観点としてい る。自分の家族との比較には、時代背景の違いに目を向けさせるねらいがあり、

観点が具体的な活動に踏み込んだものになっている。

4.2 ワークシート分析

 話し合いを受けて書いた、一班HとSの最終記述は以下の通りである。 (下線 は桃原による)

【ワークシートの記述】

●「字のない葉書 向田邦子・卒業ホームラン 重松清」1 年 4 組 H

3「字のない葉書」と「卒業ホームラン」とを読み比べて、「父親」についてあなた が考えたことを書きなさい。

※答えるポイント

・共通点は何? ・相違点は何? ・あなたの家族と比べてみてどう?

・なぜこのような違いがあるのか? ・なぜ同じ部分があるのか?

 字のない葉

がきの「父」と、卒業ホームランの「父」の共通点は、家族思いなとこ

(24)

ろだと思う。なぜ同じ部分があ るか理由は、みんな父は、子供のことを思っていて、

家族を大事にする気持ちは変わらないからだと思う。相違点は、 字のない葉

がきの

「父」

は、家族思いだが、それを表に出さない人で、卒業ホームランの「父」は、それを表 に出す人というところだと思う。なぜこのような違 いがある理由は、人それぞれ性格

は違うし、愛情を表に出すのが苦手な人もいれば、得意な人もいるからだと思う。私 の家族の父は、卒業ホームランに近い「父」である。私たちのことを、とっても大事 にしてくれて、それを行動に表したり、言葉に表したりする。でも、どちらの父親も、

家族を大事にしているところは、変わらないと思う。

 ワークシートの発問は、班での交流を通して考えたことももとにしながら書く ような指示はなされていない。また「※答えるポイント」として示された比較の 観点は、5 項目となっており、口頭で示した観点より

2

項目少ない。しかし、二 つの作品の叙述に基づいて共通点と相違点を出させるようになっており、読みの 観点が焦点化されて示されている。

 H

は、父親像の違いについて、 「表に出す人かそうでないか」という個人の性 格の問題に帰結させるに留まり、時代背景まで考察できていないことが読み取れ る。

●「字のない葉書 向田邦子・卒業ホームラン 重松清」1 年 4 組 S(女子)

1「字のない葉書」の父親はどのような父親か。説明しなさい。

 暴君だが、家族思いで心配性な几帳面で照れ性。また、性格で表に出せない部分が ある。教科書にだいたいかいていることだが、家族思いで心配性なのは、 「私」や「下 の妹」に手紙をかいたり、出させたりしていたし、葉書に丸をかかせているのは心配 しているからだと思うから。

2「卒業ホームラン」の徹夫は、どのような父親か。説明しなさい。

 負けず嫌いで、几帳面で愛情を出す人。また、自分や他人にも厳しく、決意はゆる

がない。愛情を出していると思ったのは、一緒に野球をやっていたから。何とも思っ

てなかったら、一緒に野球はしないだろう。自分を責めているのが、自分に厳しいと

思った。決意(一度決めたこと)して、ゆるがなかったのは、自分の子から長尾にか

えたのは、迷ったが後からゆるがなかったから、決意はゆるがない人でもあると思った。

(25)

3「字のない葉書」と「卒業ホームラン」とを読み比べて、「父親」についてあなた が考えたことを書きなさい。

 共通点は家族思いで几帳面、性格が場面や立場によって変わる点。

 相違点は、愛情表現の仕方と、 「照れ性」と「暴君」かどうかや子供に反抗されて るかされてないかという点。

 私の家族は、 父は卒業ホームランに似て、 雰囲気は「字のない葉書」みたいな感じだ。

卒業ホームランは家族間に壁がある気がするが、私の家にはないからちがう。

 なぜ、違いがでるかというと、 「愛情表現」が手紙か、実際かの違いや、 「性格」の 特徴「照れ性」なども影響していると思う。

 同じ部分があるのは、家族への愛情がどちらもあり、家族を大切にし、性格の似た 部分(几帳面)も少しはあり、二人共家族を養っているという自覚や責任もあるから だと思う。

 S

は、1の記述に「教科書にだいたいかいていることだが」とあるように、 「字 のない葉書」に関しては、話し合いから新たな父親像を見い出したのではなく、

叙述から抜き出していることが分かる。2の記述「迷ったが後からゆるがなかっ たから、決意はゆるがない人でもあると思った。 」は、話し合いを通して

S

自身 が見いだした父親像である。3の記述は、班での話し合い内容と同じものになっ ている。答えるポイントの「あなたの家族と比べてみてどう?」に答える形で書 かれているが、 「字のない葉書」との時代背景の違いを検討し比較することには 繋がらなかった。

5 授業者のインタビュー結果

 授業終了後、 授業者インタビューによりリフレクションを行った。 インタビュー は学習者の実態に関すること、教材や手引きに関する事、指導上の手立てや支援 に関する事に大別された。ここでは発話プロトコルから概要を示す。Qは桃原の 質問、Aは授業者のコメントである。

【学習者の実態】

・1 年次の標準学力調査では、国語の学力に課題を抱えると示された学習集団である。

・話し合いや交流活動に関しては、できる生徒から取り組もうとしない生徒まで、差が大

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