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「ロシア語とロシア文化の魅力」 ~おすすめのロシア文学 3 作品~

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Academic year: 2021

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学外の皆様からの      ご支援  ロシア語の魅力(あるいは障害?)といえば、

キリル文字ではないでしょうか。突然ですが、

次のロシア語は何と発音するか分かりますか。

(1)「Я」、(2)「МГУ」、(3)「СССР」。 正 解 は このコラムの最後をご覧ください。

 今春、京都外国語大学に外国語学部ロシア語 学科が開設され、過去にロシア語を学んだ私と してはとても嬉しく、心よりお祝い申し上げま す。付属図書館では「ロシア語図書書誌データ ベース」を構築され、4,000冊を超えるロシア 語の所蔵資料を分類毎に検索することができ、

学修・研究に快適な環境も用意されています。

日本との価値観の違いなどから「遠い隣国」と も呼ばれるロシアですが、ロシア語学科の開設 を機に、政治的・文化的な距離が一層近付くこ とを期待しております。

 ロシアは帝政時代、ソ連時代から現代に至る まで、それぞれの時代の過渡期(革命時代、ペ レストロイカ期)も含めて、多様な文化を生み 出してきた芸術大国で、欧米・アジアとは違っ た宗教観、価値観もまた魅力的です。ここでは、

トルストイ、ドストエフスキーといった文豪た ちが名を連ねるロシア文学から、私がおすすめ する3冊を紹介します。ただ面白いだけではな く、ロシアの政治や文化、アイデンティティを 感じていただけるものを選びました。

 1冊目は、チェーホフ(А. Чехов)『桜の園』

(浦雅春訳ほか)です。それまで時代や歴史的 な出来事を対象とした長編の物語(=大きな物 語)が主流とされていた文壇において、チェー ホフは市井に生きる人々の日常(=小さな物語)

を短編小説や戯曲でユーモラスに描くことによ り脚光を浴びました。チェーホフの文学には民 衆の喜怒哀楽や、人生の機微が文章から滲み出 ていて、とても味わい深いです。

 2冊目はソルジェニーツィン(А. Солженицын)

の『イワン・デニーソヴィチの一日』(木村浩 訳ほか)です。作者が体験したソ連のラーゲリ

(強制収容所)における1日を扱ったものです。

そこで生活する人々の生きがいや知恵、希望と 絶望など、極限状態に置かれた人々の思考・行

動がリアルに描かれています。短い作品ですが、

とても読み応えがあります。

 最後は、ブルガーコフ(М. Булгаков)の『巨 匠とマルガリータ』(水野忠夫訳ほか)で、こ れは私が大好きな小説です。作品を理由に精神 病棟に隔離された小説家を、彼を愛するマルガ リータが悪魔の力を借りつつ救出し、最後は2 人に天界での永遠の幸せが与えられるというの が物語の本筋です。しかしこの物語の魅力は、

悪魔たちが暴れ回るときの奇天烈さや、作中作 として描かれる約2000年前のキリストの処刑を テーマにした小説家の作品が、不思議と本作が 書かれた世界観(1930年代のモスクワ)と共鳴 しているところにあります。この小説は、ソ連 当局から発行を認められず、出版されたのはブ ルガーコフの死後20年以上も経ってからのこと でしたが、そうした運命を辿った理由について 考えてみることも、今日の私たちにとって有意 義なことではないでしょうか。

 ロシアの芸術はほかにも、チャイコフスキー、

ラフマニノフによるロマンチックな音楽、スタ ニスラフスキー、メイルホリドらによる伝統と 革新の演劇メソッド、エイゼンシュタインから ソクーロフに至る常に新しい映画など、枚挙に いとまがありません。マトリョーシカやイク ラ(ロシア語で魚卵全般を意味する「イークラ

(икра)」が語源)など、日本でもお馴染みのも のや言葉も沢山あります。

 確かに、動詞の活用や格変化など、外国語を 学ぶ際の試練は当然ありますが、言語を通じて これらの文化に直接触れられる魅力は、その苦 労を補って余りあるはずです。ロシア語学科か ら多彩な人材が世界へ羽ばたかれることを楽し みにしております。

●冒頭の答え(1)「ヤー」(「私」、ロシア語の一人称単 数)、答え(2)「エム・ゲー・ウー」(「モスクワ国立 大学」の略称)、答え(3)「エス・エス・エス・エル」

(「ソビエト社会主義共和国連邦」の略称)

たかべ さとし(株式会社紀伊國屋書店)

「ロシア語とロシア文化の魅力」

~おすすめのロシア文学 3 作品~

髙部知史

参照

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