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Vol.19 No.1 原子力バックエンド研究

巻頭言

1

原子力施設の災害とバックエンド研究

平成 23 年度 バックエンド部会長 川上泰

東日本大震災とそれに起因する福島第一原子力発電所の事故から,早くも一年余が過ぎた.時の経つのを早く感ずる 此の頃であるが,この一年は,とくに,早かったように思う.

日本原子力学会においても,関連する分科会等を立ち上げ,事態の収拾に協力してきた.その成果は,現在,進めら れている除染活動などに有用な情報を提供するとともに,現場での実務に献身的に携わっていられる方々の姿もある.

福島第一原子力発電所の事故は,4 基の原子炉が関わり,広範囲な放射性物質による汚染が発生するという,他に類 を見ないものである.広範囲に亘る放射性物質による汚染の現実がある.

当面の対応として,大規模な除染活動が開始されているが,環境省のガイドラインにあるように,基本的には,除染 は放射性物質の移動である.これによって居住する方々,あるいは,その地域を訪問する方々の被ばく量を低減するた めの手段である.汚染された土壌,施設などを撤去すれば,その周辺の放射線量は低減されるが,放射性物質を含む撤 去物の移動先の放射線量は増加する.このような状況を最適化し,居住者等の放射線防護を適切に実施することが今後 の課題である.

今後のバックエンド研究は,このような状況に,どのように対応するかが課題となろう.当面の課題は,除染技術の 開発と除染によって発生する汚染土壌等の適切な中間貯蔵およびその後に実施される処分への対応がある.

除染技術の開発は,放射性廃棄物処理の分野,あるいは原子力施設の廃止措置に関連して開発されてきたが,今回の 福島第一原子力発電所の事故のような,大規模な事態に対応する形態ではなかった.このため,現在でも,多種多様な 除染技術の提案があり,実証されないまま,実地に適用される可能性もある.大規模災害における除染技術は総合的な 観点からの最適化が必要であり,例えば,屋根,側溝などを水で洗浄した場合,放射性物質が下水処理場に移行する例 もあり得る.このような場合,下水処理場に放射性物質に対応できる施設があれば,広範囲の除染活動を進めることが 可能である.

事故炉の廃止措置は,今後,30年~40年を想定すると言われている.事故炉の廃止措置,それに伴って発生する多様 な放射性廃棄物の処理,処分も,今後の大きな課題である.従来,原子炉の廃止措置に伴って発生する放射性廃棄物は

「余裕深度処分対象廃棄物」として,主に,炉内構造物を中心に検討が行われて来た.一方,事故炉においては,炉心 溶融に伴う高度な放射能汚染があり,従来の処分方式の範囲を超えるものである.このような放射性廃棄物に対応する 処分方式の検討も今後の課題となろう.

事故およびその対応の過程で発生した大量の放射性物質の処理,処分も大きな課題である.

今後,これらの施設の,いわゆるデコミッショニング,放射性廃棄物の処理,処分を実施するには,多方面の知見を 集約し,あるいは,新規の技術開発を行うことが必要であろう.一つの分野で解決できるような課題は限られると思わ れ,学際的な検討を重ねることが重要である.

以上は,膨大な課題の一例であり,バックエンドに関わる,今後の研究,技術開発とその実行は大きな社会的要求に なると思われる.バックエンド部会に関係される方々にとっては,大きなチャレンジであり,また,試練でもあろう.

長期に亘ると思われる,このような事態に的確に対応する努力と気概を期待したい.

(2012年4月)

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原子力バックエンド研究 June 2012

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参照

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