「 ほとんどすべて」は
《 ほとんどすべて》か?
渕野 昌
神戸大学大学院 システム情報学研究科
数理の翼 大川セミナー
年月日
年月 日於 大川
!
実数の全体の完備性
「ほとんどすべて」?Ê
で実数
数直線の上の点に 対応するような数
の全体の集まり
集合
をあらわす.
Ê
は,区間
としてあらわされることもある.
Ê
は物理的な
直線
の理想化のようなものだが,物理的な直線 そのものではない !
Ê
の基本性質の一つとして,通常,次の性質を仮定する.
Æ
で 自然数
の全体の集合をあらわす.
Æ ! "
である.
Ê
の完備性
単調有界列の収束
# Æ
を実数の上昇列として,ある実数
Êに対し,
がすべての
Æに対し成り立つ
つまり,数列
#Æ
は上に有界
なら,この数列は極限
を持つ
つ
まり,
となるような実数
Êが存在する
.
実数の全体の完備性
「ほとんどすべて」?Êの完備性
単調有界列の収束
# Æ を実数の上昇列として,ある実数 Ê に対し,
がすべての Æ に対し成り立つつまり,数列 #
Æ は上に有界なら,この数列は極限 を持つつ まり, となるような実数Êが存在する.
É
で 有理数
#分数
$としてあらわせ る数
の全体からなる集合をあらわす.
Æ É Êである.
É
は
Êの中に
ぎっしりと
つまっている
%Éは
Êで 稠密
ちゅ うみつ,
である.つまり,すべての 区間
に対し,
Éと
の共通部分
Éは空
くう
でない.しかし
&&&演習
Éは上の意味での
完備
ではない.
実数の全体の完備性
「ほとんどすべて」?Êの完備性
単調有界列の収束
# Æ を実数の上昇列として,ある実数 Ê に対し,
がすべての Æ に対し成り立つつまり,数列 #
Æ は上に有界なら,この数列は極限 を持つつ まり, となるような実数Êが存在する.
定理
#Æを閉区間の包含関係に関する下降列
¼ ½
¾
とする.このとき,
である
つまり
は少なくとも一つは要素を持つ
.
証明. 各
Æに対し,
' (とする.このとき,
#Æ
は実数の上昇列で,
¼がすべての
Æに対し成り 立つ.したがって,
Êの完備性から,
が存在する が,
である.
演習
定理
!の主張は,開区間の列に対しては必ずしも成り立
たない.
カントルの定理
「ほとんどすべて」?定理 #Æ を閉区間の包含関係に関する下降列¼
½
¾
とする.このとき,
であるつまり
は少なくとも一つは要素を持つ.
集合
が 可算 であるとは,
は空集合であるか,ま たは,
の要素を
#Æとならべあげることができる
つま り,
% Æとあらわせる
こととする.
定理
Êが可算なとき,任意の区間
に対 し,
の要素で
に属さないようなものが存在する.
証明.
が空集合なら主張は明らかである.
% Æとする.閉区間の下降列
# Æを次が成り立つように作る
%
¼
#
·½
&
定理
!から,
¼
がとれるが,
はどの
#Æ
とも異なる.
上級者のための
演習
上の定理
)の証明は選択公理を用い
ず行なうことができる.
カントルの定理
「ほとんどすべて」?定理
Êが可算なとき,任意の区間
に対 し,
の要素で
に属さないようなものが存在する.
系
すべての区間は可算でない.
可算でない集合は 非可算
または不可算, であると いう.
この用語を用いて系
*を言い換えると
%すべての区間は非可算で ある.特に
Êは非可算である.
補題
Éは可算である.
証明のスケッチ
演習
加藤先生の講義で出てきた
Éは可算である.
実数の可算集合
「ほとんどすべて」?'Ê(
¼
Ê %
は可算
は以下の性質を満たす
%Ê 'Ê(
定理
)+ É É 'Ê(補題
,#演習
,&
すべての
Êに対し,
'Ê(+'Ê(
で
なら
'Ê(+# 'Ê(
なら
'Ê(+'Ê(
# Æ
なら,
'Ê(
+
上の
が言えるためには選択公理
の弱いヴァージョン
%可算選択公理
が必要.
Ê
の可算な部分集合は,
無視していいくらい小さい
Êの部分 集合であると考えることができる.
「
Êの
無視していいくらい小さい
部分集合」を,可算な部分 集合のことだと解釈したときには,補集合が可算集合であるよう な
Êの部分集合
Êの 補可算集合
-は
ほと んどすべての実数を含む集合
だと考えてよい.
可算性を拡張する
Êの無視していいくらい小さい部分集合
の
概念が幾つか知られている.以下でこれについて話す.
痩集合
「ほとんどすべて」?
注意. ここでは,区間と言ったときには,
!つの異なる端点を持 つ区間のこと.
#' (は区間とは考えていない.
Ê
が
全疎
.であるとは,任意の区間
に 対し,
で
と共通部分を持たないようなものが存在するこ とである.
例
%一点集合,カントル集合
Ê
が
痩,昔は第一類
/ 0と言った
で あるとは,
1な
Ê# Æで,
と なるものがとれること.
0
な
Êは
1とは限らないし,
Êの中で稠 密であることすらあり得る.
例
%É Ê定理
!"#カテゴリー定理
Êが
0なとき,
任意の区間
に対し,
の要素で
に属さないようなものが存 在する.
証明. カントルの定理
定理
)と同様に示せる 演習
$.
痩集合
「ほとんどすべて」?Ê %
は
0は以下の性質を満たす
%Ê
定理
2+
すべての
Êに対し,
+
で
なら
+#
なら
+#Æ
なら,
+
で非可算なものが存在する
例
%カントル集合
.
# #
から,
'Ê(が成り立つ.
Ê
の
0な部分集合は,
無視していいくらい小さい
Êの部 分集合であると考えることができる.
「
Êの
無視していいくらい小さい
部分集合」を,
0な
/ 0
部分集合のことだと解釈したときには,補集合
が
0であるような
Êの部分集合
Êの
%な部分集
合
は,カテゴリーの意味で
ほとんどすべての実数
を含む集
合 だと考えてよい.
零集合
「ほとんどすべて」?区間
Êに対し,
の端点を
#Êとするとき,
の 長さ を
で定める.
Ê
が 零集合
あるいは,測度
の集合
であるとは,すべての
に対し,区間の列
#Æ
で,
かつ,
となるものが存在す
ることをいう.
零集合
「ほとんどすべて」?Ê
が 零集合
あるいは,測度
の集合
であるとは,すべての
に対し,区間の列
#Æ
で,
かつ,
となるものが存在す ることをいう.
補題
Êとして,
も
も零集合である.
!
# Æ
が零集合のとき,
は零集合である.
"
すべての可算集合
Êは零集合である.
証明.
%として,
Æに対し,
! ¿
3! ¿
とすれば,
で,
! ¾
½
¾
である.
!%
として,
Æに対し,区間
#Æを,
かつ
! ¾
となるようにとれば,
で,
! ¾
½
¾ &
"%
と
!から明らか.
零集合
「ほとんどすべて」?定理
&!任意の区間
Êに対し,区間
# Æが
を覆う
つまり,
4
が成り立つ
なら,
である.
系
すべての区間は零集合ではない.
定理
の証明.
が閉区間
たとえば
' (で,各
#Æ
は開区間の場合に定理を示す.一般の場合は,この場合の 結果を用いて証明できる 演習
.
Æ
と
#
を以下のように構成する
%
¼
¼
を,
となるような最初の
つまり添字
が最小の
ものとする.
4によりこのようなものは存在する.
¼なら,
として構成を終える.
¼なら,
½ ½を
¼とな るようなもののうちの最初のものとする.
½なら
!と して構成を終える.
½
なら,
&&&.
零集合
「ほとんどすべて」?証明の続き.
この構成は有限回
の後停止する
%もしそうでなければ,
# Æ
は増加列で
で押えられているから,
Êの完備性から,
極限
を持つ.
Æを
となるよう なものとすると,ある
Æをとると,すべての
に対し,
となるから,
·½·½
は
より小さい添字
を持つ
とならなくてはならないが,そのようなものは有限個しかない ので矛盾である.
ここで,
だから,
となり,得たい不等式が示せた.
零集合
「ほとんどすべて」?以上から,
Ê %は零集合
は以下の性質を満たすこ とがわかる
%Ê
系
!+
すべての
Êに対し,
補題
# +
で
なら
+#
なら
+#Æ
なら,
補題
# !+
で非可算なものが存在する
例
%カントル集合
.
# #
から,
'Ê(が成り立つ.
Ê
の零集合は,
無視していいくらい小さい
Êの部分集合であ ると考えることができる.
「
Êの
無視していいくらい小さい
部分集合」を,零集合のこ
とだと解釈したときには,補集合が零集合であるような
Êの部分
集合
Êの
%'な部分集合
は,測度の意味で
ほとんどすべ
ての実数
を含む集合 だと考えてよい.
Ê
の
小さな
部分集合の概念たち
「ほとんどすべて」?
Ê
Ê
の
小さな
部分集合の概念たち
「ほとんどすべて」?
°
Ê
例
カントル集合
「ほとんどすべて」と《ほとんどすべて》
「ほとんどすべて」?定理
Êの分割
Êで,
は零集合で,
は
0となっているようなものが存在する.特に,
はカテゴリーの 意味でほとんどすべての実数を含んでいるが,
は測度の意味 でほとんどすべての実数を含んでいる.
証明.
É % Æとする.
#Æに対し,
!
´· µ
3!
´· µ
とする.
!
´· µ·½
だから,
!
´·¾µ
である.
したがって,
Æ
として
とすると,
は零集合である.
一方,各
Æに対し,
Ê
は
1だから,
ÊÊ
は
0である.
よって,これらの
#は求めるようなものとなっている.
Ê
の
小さな
部分集合の概念たち
「ほとんどすべて」?
±
°
°
Ê
定理
参考文献
「ほとんどすべて」?É
は可算である.
有理数の全体
Éは可算である
%
(無限)平面に座標を入れて
5軸より上にある,各格子点
上に分数
を置く.
格子点を蛇行しながら辿って,格 子点に乗った分数を
番目
#番目
#!番目
#… と数え上げてゆく.