西松建設技報 voL.24
TBM 仕様曲線 R‑3 0 0 m 用 連続コンベヤ
石井 正典 * 佐藤 隆信 **
Masanorilshii TakanobuSatou
S l. は じめに
本報告書 は,香港地下鉄MTR680工事 の うち,本線 ト ンネル掘削 に採用 した連続 コンベヤについて記述 した も のである｡本線 トンネルは,￠6.2mのTBM2台で各 々1500 mの掘削 を行 い,そのズ リ出 し設備 として連続 コンベヤ
を採用 した. トンネル平面線形 は,全体 の約半分がR‑
290‑300mの区間で あ り,その内1ヶ所 が 曲線 の相 反す るS字区間であった.
隻2,連続 コンベヤ本体
連続 コンベヤは, メイ ン ドライブ,ベル トカセ ッ ト, そ してTBM後方台車 に取 り付 け られ るテー ル ピー ス部 に大別 される.
(1)メイ ン ドライブ
表‑1にメイ ン ドライブ仕様 を示す.
ベル トは,戻 り側 のベ ル トが ラ ック ドプー リと呼 ばれ る2つのプー リに巻かれ る. この2個のプー リ軸が同径の 歯車で動力伝達 されるため,同 じ回転数で回転す る.そ の内,1つの プー リは,チ ェー ンとスプ ロケ ッ トに よ り モー タか ら動力伝 達 される.
表‑1 メイン ドライブ仕様
名 称 仕 様
ドライブモー タ 380V..′218A min】
ヘ ッ ドプー リ ￠457.2mmX1016mmLG 駆動用 プー リ ￠609.6mmX1016mmLG
(2)ベ ル トカセ ッ ト
カセ ッ ト全 長 は,38.4mで1回当 た りの プー リキ ャ リ ッジに巻 き込め るベ ル ト長 は150mであ る. (掘削延長75 mに1回のベ ル ト延長が必要)
このプー リキ ャリッジは,油圧 ジャッキで常 に一定の 張力で引かれ る.4本 の シリンダのバ ラ ンス は,各 々の シリンダにアキューム レ一 夕を装備 し, このアキューム レ一 夕のガス圧 を合 わせ ることで保 たれている.
制御盤の運転 開始 ボ タンを押す と,高圧力 で シリンダ
*中部支店小鳥 トンネル出張所 a*香港支店MTR680出張所
抄錦
が プー リキ ャリッジを引 き,ベ ル ト張力 を上げ,運転 開 始後 のベ ル トの横み を防止す る. メイ ン ドライブは, タ イマに よってその10秒後 に作動 を開始す る｡ メイ ン ドラ イブが作動 した後 に, シリンダの圧力 を常用 に戻 し,一 定圧力でベ ル トを引 く.
(3)テール ピース
図‑1にテー ル ピースサポー トア ッセ ンブ リを示す.
テール ピースは,サポー トア ツセ ンブ リの油圧 シリンダ によ り､上下 ･左右位置お よび方 向, ロー リングの修正 をす る こ とが で きる.TBMの蛇行等 に よ り, コ ンベ ヤ フ レーム位置がずれた場合 ,テール ピース内の コンベヤ ベ ル トがテールプー リの中央か らずれるため, このサポ ー トア ツセ ンブ リによって中央 に くるように修正す るこ
とがで きる.
図‑1 テール ピースサボ‑ トア ッセ ンブ リ図
$3.キ ャリア ロ‑ラおよび アングル ローラ
図‑2に曲線用 コ ンベ ヤ ア ッセ ンブ リ,写 真‑1に 曲 線用 ロー ラ配置 を示す.
曲線用 キ ャリアロー ラは, ロー ラの両側 にベル トの脱 落防止用 の押 さえロー ラが片側 もしくは両側 に付 いてい る. また, この ロー ラは左 右 そ れぞ れ15.45度傾 くこ と がで きる可動型であ る.
ア ングルロー ラは戻 り側ベ ル トを左右方向に移動 させ るために,上か ら寄せ たい方の反対側 を押 さえつけ,ベ ル トを寄せ る.設置す る位置の決定は,ベル トの状況 を みて,戻 り側ベ ル トがサ イ ドレールに当た りそ うな場合 に1ヶ所使用す る.但 し､ ア ングル ロー ラは,ベ ル トの 張力 を局所 的に高めるため,設置の間隔お よび リター ン ロー ラとの組み合 わせ を設置時 に考慮す る必要がある.
設置方法 は,直線用 キャリアロー ラをテール ピース位置 で取 り付 け,キ ャリア側 のベル ト蛇行が大 き くなる10‑
20m掘削後,曲線用 に全 てのキ ャリアロー ラを交換す る.
§4,施工結果
連続 コ ンベ ヤ は特 に大 きな問題 は な く,R‑300mで の使 用 が 十分 可 能 で あ った (写真‑2参 照).以下 に現 場で行 った改良点 を示す.
(1)ベ ル トカセ ッ ト内での蛇行
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抄録
ベル トカセ ッ ト内での コンベヤベル トは,プー リキャ リッジによって折 り返 されるが, この各々のコンベヤベ ル トが蛇行 し,プー リキャリッジ内で左右方向に偏 った ためベル ト両端が損傷 を受けた.カセ ッ トには,蛇行修 正方法がないため,プー リブロック内の各々のプー リ片 端 を前後 に約20mm程 度ス ライ ドで きる よ うに改造 し た.その結果,ベル ト蛇行時にす ぐに対応で き, カセ ッ
ト内での トラブルを防止で きた.
写真‑1 曲線用 口‑ラ配置 (2)テールピース内でのベル トの蛇行
TBMの掘進開始 当初,テール ピース内でベ ル トが蛇 行 し,左右方向に偏 りベル トを損傷す ることが頻繁 に発 生 した.原因はテール ピースサポー トによる調整が難 し いことにある.テールピースサポー トとブ ッリッジコン ベ ヤか らのズ リを受 けるホ ッパが一体 とな ってい るた め,テールピースを動かす とホ ッパお よびベル ト位置が 左右方向に偏 り,ズ リが戻 り側ベル トの上 にこぼれた.
よって, このホ ッパの位置 を動かす ことは不適切 と判 断 し,基本的にテール ピースは動か さずに,テールピー ス近傍の リター ンローラの角度を変 えることによって,
100
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テールピース内に入ってい くベル トの修正 を行 った.そ の結果,1方向に偏 ることは無 くなった.
また,以下に今後行 う必要があると考 えられる改良点 をあげる.
･曲線用 キ ャリアローラは2種類 あ り,両側 にガイ ドロ ーラを持つ タイプと,片側 に持つ タイプがある. この片 側の タイプは一方向に極端 に傾 き,ガイ ドローラの無い もう一端か らベル トが脱落す る. よって､片側の タイプ を使 う場合 は,傾斜角度 を限定す るス トッパ を取 り付 け る必要がある.
写真‑2 R‑300mS字状況
$5.おわ りに
￠6.2mのTBM工事 において,連続 コンベヤ を採用 し たが,ズ リ綱車 によるズ リ出 しに比べて,施工サイクル は短縮 された と判断す る.
R‑300mのS字 (‑3%,右300mR〜3%,左300mR) について も,当初予想 されたベル トの偏 りや張力増加 に よる切断は発生せず,問題な く施工す ることがで きた.
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図‑2 曲線用 コンベヤア ッセンブ リ
