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HIV 陽性者の地方コミュニティーでの受け入れに関する 研究

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Academic year: 2021

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研究要旨

本研究は平成 27-29 年度の 3 年間、関西圏において、HIV 陽性者と高齢化へのセーフティーネット構築の ために必要な環境作りと NPO による地域での HIV 陽性者に対する生活・精神的支援の在り方を検討し、5 つの研究を行った。

研究 1:HIV 陽性者の医療・生活支援のニーズの把握と有効な支援方法を検討するフォーカスグループに よる研究会の実施。研究会では、医療従事者、福祉関係者、地域で支援を提供する NGO、そして当事者が 3 年間共に様々な課題について知識を深め、協議する事により各専門の範囲を超えた見地を得る機会となり分 野をこえたネットワークを築く事ができた。顔と顔がつながることでお互いが協力しやすい環境を構築して いくことができることを実証した。

研究 2:先駆的実践例の視察。医療と福祉の枠組みを越えて支援を提供している実践例を 2015 年度には講 演で学び、2016 年度に千葉県の「メディカルシェアハウス安心の絆」、東京都の「在宅ホスピスケア対応集 合住宅 きぼうの家」、大阪府の「よどまちステーション ホスピス型賃貸住宅かんご庵」で聞き取り調査を行っ た。その中で「医療と福祉の両方に手厚い」支援の内容は施設を運営する組織の理念によって異なることが 分かった。また、セーフティーネットを構築する際、支援の対象者を誰にするのか、どのような制度を使う のか、理念をどのように形にしていくのかについて充分検討する必要があることが確認された。

研究 3:関西圏における HIV 陽性者支援体制の構築。2015 年度には、生活の自立が困難な人達に生活上 の困難について聞き取りを行った。2016 年度には「お助けシスターズ」を組織して必要なサービスを提供し 始めた。人間が「助けて」と言えるためには早い段階からの関係性の構築によってつくられる信頼が必要で

HIV 陽性者の地方コミュニティーでの受け入れに関する 研究

研究分担者: 榎本てる子(関西学院大学神学部)

研究協力者: 青木理恵子(特定非営利活動法人 CHARM)

福嶋 香織(特定非営利活動法人 CHARM)

狭間明日実(特定非営利活動法人 CHARM)

伊達 直弘(特定非営利活動法人 CHARM)

小西加保留(関西学院大学人間福祉学部)

平田  義(社会福祉法人イエス団 常務理事)

出上 俊一(社会福祉法人イエス団神戸高齢者総合ケアセンター真愛)

中谷 幸子(社会福祉法人イエス団神戸高齢者総合ケアセンター真愛 ケアハウス樟葉新生園)

山本  誠(( 社会福祉法人聖隷福祉事業団宝塚せいれいの里)

井上 洋士(HIV Futures Japan プロジェクト代表/

放送大学慢性看護学・健康社会学)

細川 陸也(名古屋市立大学地域保健看護学)

片倉 直子(神戸市看護大学地域・在宅看護学)

市橋 恵子(日本バプテスト看護専門学校)

白野 倫徳(大阪市立総合医療センター)

岡本  学(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)

来住 知美(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)

梅田 政宏(株式会社にじいろ家族)

澤田 清信(つぼみ薬局)

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研究 1

HIV 陽性者の医療・生活面のニーズの把握と有 効な支援方法を検討するフォーカスグループに よる研究会の開催

2015 年度研究会 第 1 回研究会

「研究協力者との研究計画の立案及び現状確認」

日時:2015/5/19( 火 ) 18:30-21:00 会場:NPO 法人 CHARM 事務所 参加者:9 名

内訳 : 研究者 2 名、医療関係者 3 名、施設関係者 2 名、

NPO 法人関係者 1 名、事務局 1 名

内容:研究課題の内容や目的、参加者がもつ各現場 の現状や課題などについて共有した。

第 2 回研究会

「先行事例から学ぶ」

日時:2015/8/2( 日 ) 13:30-17:30

会場:関西学院大学梅田キャンパス 1407 号 参加者:14 名

内訳:研究者 2 名、医療関係者 2 名、施設関係者 7 名 ( 講師 2 名含む )、NPO 法人関係者 2 名、事 務局 1 名

内容:千葉県木更津市【有限会社 安心の絆】の村 串恵子氏、佐久間勲氏をお招きして、「施設で暮 らす HIV 陽性者を支えて」のタイトルで先駆的試 みであるメディカルシェアハウスの具体的業務内 容、ミッション、運営方法、課題等について示唆 を受ける。その後、関西でのサービス付高齢者住 宅の可能性について検討する。

第 3 回研究会

「施設建設参加予定福祉事業団の理念の共有」

日時:2015/10/10 ( 土 ) 10:30-13:00

会場:関西学院大学梅田キャンパス 1002 号 参加者:13 名 

内訳:研究者 2 名、医療関係者 3 名、施設関係者 4 名 ( 講師 2 名含む )、NPO 法人関係者 1 名、当 事者 2 名、事務局 1 名

内容:

1) 京都市愛隣館研修センターの平田義常務理事より

「イエス団のミッションと愛隣館の働き」

2) 神戸高齢者総合ケアセンター真愛の出上俊一施設 長より「高齢者施設の可能性について」

第 4 回研究会

「HIV と高齢者 – ニーズアセスメントー」

日時:2015/12/19 ( 土 ) 15:30-18:30

会場:関西学院大学梅田キャンパス 1407 号 参加者:22 名

内訳:研究者 4 名 ( 講師 2 名含む )、医療関係者 4 名、

施設関係者 5 名、NPO 法人関係者 2 名、当事者 6 名、

事務局 1 名 内容:

1) 放送大学の井上洋士先生、名古屋市立大学の細川 陸也先生より「HIV と高齢化に焦点を当てた調査 結果発表」

2) NPO 法人 CHARM の福嶋香織氏より

「HIV 陽性者への聞き取りから学んだこと」イン タビュー調査結果の発表

ある事が分かった。家族や地域社会との関係が希薄な HIV 陽性者が孤立することなく健康に生きていく為に は、HIV 陽性の人達が、市民団体や友達とインフォーマルな関係を作り信頼関係を構築できるコミュニティー を形成していくことが有効である。

研究 4:HIV 陽性者の地域支援や施設入所時の困難に関する聞き取り。エイズ拠点病院で患者支援を行っ ているソーシャルワーカーに聞き取りを行った。介護保険のサービスを利用する際施設に入所する際に HIV に関する情報が地域に知られることを家族が嫌がり、公的支援の利用につながらない例が複数あることが分 かった。家族の懸念は社会一般がもつ偏見の反映である。今後とも一般社会への啓発活動が重要な役割であ る事が分かった。

研究 5:施設職員に対する HIV に関わる課題の研修。研修の中では、HIV に関する基礎知識を学ぶことに 加えて、HIV 陽性者が持ち合わせるセクシュアリティ、依存症に関することを当事者が自分の経験を語った。

その結果、具体的に理解できて良かったという反応が多かった。当事者と出会い、その語りを聞くことは有 効であることが分かった。

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第 5 回研究会

「HIV 陽性者と高齢化

—地域における支援ネットの構築—」

日時:2016/3/12( 土 ) 15:00-20:00 場所:同志社大学良心館 RY401 バザールカフェ ( 交流会 ) 内容:

1) 前 JANP+ 代表長谷川博史氏より「HIV 陽性者と 高齢化—地域における支援ネットの構築」

加藤雄治氏「お助けシスターズ発足の事例報告」

2) 医療に手厚い高齢者施設の建設を目指して

フォーカスグループによる研究会についての考察及 び結論

2016 年度研究会 第 1 回研究会

公開講座『HIV 陽性者の老後、ゲイ男性の老後 〜 法律家と NPO 法人に問題点と解決策を聞いてみ よう〜』

日時:2016 年 6 月 4 日 ( 土 ) 13:00-16:30

参加者:研究者 2 名、医療関係者 2 名、福祉関係者 3 名、

NPO 関係者 3 名、HIV 陽性者を含む一般 37 名  合計 47 名

場所:同志社大学今出川キャンパス良心館 306 号室 内容:

1) 入院治療が必要になった時どんなことが起きるの か 岡本学

2) 法律家の立場から 大畑泰次郎

3) 自分たちの問題として NPO 法人パープルハンズ  永易至文

非血縁者、法的に関係性が保証されていない者が、

一人暮らしや様々な背景のある人に関わる場合にど のような準備が必要か、社会制度や法律の専門家か ら起こりうる問題や具体的な対応、解決策について 話を聴いた。

第 2 回研究会

日時:2016 年 9 月 24 日 ( 土 ) 13:30-17:30

参加者:研究者 2 名、医療関係者 4 名、福祉関係者 3 名、

HIV 陽性者 1 名、NPO 関係者 1 名 合計 11 名 場所:関西学院大学梅田ハブスクエア 1402 号室 内容:医療、生活、支援体制が厳しい状況における

在宅看護、介護、施設入所が難しいケース等、医 療機関が経験した困難事例とは ( 大阪医療セン ター / 白阪琢磨 )

第 3 回研究会

日時:2016 年 11 月 12 日 ( 土 ) 13:30-17:00

参加者:研究者 2 名、医療関係者 4 名、福祉関係者 2 名、

HIV 陽性者 2 名、 NPO 関係者 1 名 合計 11 名 場所:日本キリスト教団東梅田教会

内容:家で暮らすのは大変なんやけど ( 大阪医療セ ンター / 岡本学 )

第 4 回研究会

日時:2017 年 1 月 14 日 ( 土 ) 13:00-17:00

参加:研究者 2 名、医療関係者 4 名、福祉関係者 1 名、

HIV 陽性者 3 名、NPO 関係者 1 名 合計 11 名 場所:日本キリスト教団東梅田教会

内容:HIV 陽性者の支援のこれまでとこれから ( 関 西学院大学人間福祉学部 / 小西加保留 )

2017 年度研究会 第 1 回研究会

日時:2017 年 6 月 10 日 ( 土 ) 14:00-16:30 会場:日本キリスト教団東梅田教会 参加者:10 名

内訳:医療関係者 2 名 ( 講師含む )、研究者 1 名、

NPO 法人関係者 2 名、当事者 1 名、事務局 1 名、

学生 1 名、ボランティア 2 名

内容:居宅支援事業者として、そして大阪市内でケ アマネージャーの立場から制度活用による支援の 調整と HIV 感染症啓発に取り組む㈱にじいろ家族 の梅田政宏氏に経験を共有していただき公的制度 の支援内容を理解し、ケアマネージャーの役割を 認識した。

第 2 回研究会 「就労支援制度と HIV」

日時:2017 年 7 月 15 日 ( 土 )14:00-16:30 会場:日本キリスト教団東梅田教会 参加者:10 名

内訳:医療関係者 2 名、施設関係者 2 名 ( 講師含む )、

NPO 法人関係者 2 名、当事者 1 名、事務局 1 名、

学生 1 名、ボランティア 1 名

内容:精神障がい者を中心に就労支援を行う団体を 立ち上げ運営を行っている社会福祉法人ミッショ ンからしだねの坂岡理事長から施設が行っている 事業について報告を受け、HIV 陽性者の居場所、

就労を支援する可能性について協議した。

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第 3 回研究会

日時:2017 年 8 月 5 日 ( 土 ) 14:00-16:30 会場:日本キリスト教団東梅田教会 参加者:14 名

内訳:医療関係者 2 名、施設関係者 4 名 ( 講師含む )、

NPO 法人関係者 2 名、当事者 1 名、研究者 1 名、

事務局 1 名、学生 1 名、ボランティア 2 名 内容:京都南部障害者地域生活支援センター「あい

りん」の相談員として障害を持つ人達を支援して いる太田正人氏から障害者総合支援法、福祉事業 の枠組みについての情報提供をいただいた上で HIV 陽性者の支援が福祉の枠組みの中で行われる 可能性について検討を行った。

第 4 回研究会

「長期療養時代の HIV 陽性者が必要とする医療 / 生 活支援」

日時:2017 年 12 月 10 日 ( 土 ) 16:00-18:00 会場:榎本てる子宅 

参加者:12 名

内訳:医療関係者 3 名、施設関係者 2 名、NPO 法 人関係者 2 名、当事者 1 名、研究者 2 名、事務局 1 名、

ボランティア 1 名

内容:エイズ拠点病院で患者の地域での生活支援や 退院時調整に当たっているソーシャルワーカーを 対象に行ったフォーカスグループディスカッショ ンの結果を市橋恵子 ( 日本バプテスト看護専門学 校 ) が報告し、医療と地域の連携の課題とその解 決法について協議した。

研究 2

先行実践例に学ぶ今後の支援体制・サービスの 検討 医療に手厚い介護施設の視察

目 的

すでに実践している施設の設立経緯、組織の理念、

受け入れている対象者、支援内容と運営について学 ことを目的とする。

方 法

研究班では、すでに医療と介護の両方を提供して いる施設を 3 ヵ所訪問しその運営について学ぶ機会 を得た。訪問した施設は、以下の 3 ヵ所である。

1) メディカルシェアハウス 安心ハウス絆・木更津

壱号館 ( 千葉県木更津市 )

2) 在宅ホスピスケア対応集合住宅 きぼうの家 ( 東 京都台東区 )

3) よどまちステーション ホスピス型賃貸住宅かん ご庵 ( 大阪府大阪市 )

(倫理面での配慮)

特になし

結 果

1) メディカルシェアハウス 安心ハウス絆

メディカルシェアハウス ( 以下安心ハウス ) の趣 旨は、医療・看護・介護の一体化事業であり、病院 でも自宅でもない新しい包括的な在宅医療の場を作 り出している。ハウスでは、障害や難病をもって生 きる人がその人らしく暮らすことができるために 24 時間の看護・介護を提供している。

事業を開始した同有限会社社長の村串恵子氏は、

訪問看護師として働いていた時に出向いた先で重度 の身体状態にある人たちを家族だけで介護している 現実に出会った。重度の障害を持つ人を家族だけが 支える負担を何とか軽減できないかという思いから 弱者を社会全体が支えていくためのシステムが必要 であると痛感し、医療と介護の両方を提供する施設 を設立するに至った。

・重症な人ほど受け入れる

入所の対象となる人は、日常的に医療ケアーが必 要な人たちであり、これまで ALS, パーキンソン病、

ヤコブ病、マルファン症候群、ミトコンドリア病、

強皮症、全身性エリスマトーデス(SLE)、末期がん、

HIV/AIDS, 末期腎不全、気管切開、人工呼吸器、

胃瘻などの患者を受け入れケアーしてきた。

生活をする住居は、個人の家であり滞在制限はな く第二の家として本人が必要とする期間滞在できる。

居住空間は、14 室あり内 2 室はショートステイのた めに確保している。入所者は、千葉県内の病院のみ ならず全国の病院から紹介される。ニードは高く、

現在の壱号館に続けて近々弐号館も開設予定である。

・医療ケアーの担い手

日常的な医療ケアーは、同法人が経営する訪問看 護ステーション、訪問介護ステーションの専門スタッ フが行っている。法人の案内パンフレットでは、日 頃のケアーをする人たちは、「ケアラー」と呼んでい る。ケアーする人との絆を大切にしており、病気を

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持ちながらも健やかに生きることを可能にしている のは人との関係と信頼であるとこの法人は確信して いる。そのためケアーの主体は、日々入所者に関わ るケアラーの人たちだ。訪問看護ステーションには、

看護師が 6 名 ( 内常勤職員 2 名 ) が看護に当たり、訪 問介護ステーションには、介護福祉士、介護ヘルパー 等が 15 名おり、そのうち 9 割の職員が喀痰、吸引支 援を担当できる技術を習得しており、日々対応して いる。ケアラーは入所者との人間関係を大切にしな がらもプロフェッショナルとしての役割は明確にし いる。

・訪問診療の重要性

また同法人がファミリークリニックを運営してお り、クリニックの医師が訪問診療を担うことによっ て入所者の日常的な状態の確認や変化への早い対応 が可能となっている。また医師は、入所者それぞれ の疾患の専門医とも連携を取ることによって必要に 応じて専門医療機関につなぐ判断も行う。HIV や他 の難病は、限られた拠点病院が治療に当っており、

地域の医療機関では対応していないことが多いため、

医療的対応が地域の医療機関でできない場合が多い。

地域で患者を見守ることができるプライマリーケア 医師の存在は大きい。これによって患者は、日常生 活を病院ではない場で不安のない形でおくることが 可能となっている。

・多職種によるチームケアー

入所者に対して医師、看護師、介護師、医療機関 の専門医など異なる職種の医療従事者が関わる。こ れらの従事者は属する組織も異なり、地理的にも離 れている場合も多い。この人達が一人の入所者に関 して情報を常に共有できるための方法としてハウス 以外の場所からのカルテへのアクセスができるシス テムを導入し、必要な情報を共有している。これに より多職種の人が関わった最新の情報を他の職種の 人が入手することが可能となっている。

・ゆったりとした居室空間

安心ハウスは 2 階建てで各部屋は人工呼吸器など の器具を置いてもゆったりとできる広さがあり、自 分の家らしくそれぞれの生活感があふれている。共 有部分の廊下やリビング部分は充分な広さをとって おり、入居者同士やスタッフとの交流ができるスペー スがある。また風呂にはミスト特別浴槽が設置して おり、各自の部屋からストレッチャーで移動できる 設備となっている。

利用料は、家賃・共益費・管理費が 11 万円、見 守り費が 3 万円、プライベートナース費が 12 万円、

食費が 5 万 400 円、合計で一人の人が 1 ヵ月滞在す るために 31 万 400 円かかる計算となる。24 時間医 療と介護の支援を提供するサービスは金額に変換す るとこれだけ費用がかかることになるが、実際には 利用者の自己負担をできるだけ少なくするためにハ ウスでは様々な制度を駆使している。その結果、生 活保護受給している人も受け入れをしている。経済 状態によって医療へのアクセスが制限されないよう にすることを保障している。

・長期療養 HIV 陽性者への意味

HIV 陽性者の中で複数の疾患を持つ人、腎機能や 肝機能の低下による様々な症状がある人が居る。又 精神疾患の発症によって医療と介護の両方を必要と する状態となる人たちがいる。現在の制度では、医 療と介護の連携が充分できていないことによって受 け入れ先がない HIV 陽性者が存在する。その数は今 後増えていくことが予想される。安心ハウスの存在 は、医療も介護も受けられる場が存在するという意 味で画期的であり、その社会的意義は大きい。また 一人暮らしの長期療養 HIV 陽性者にとっても生活保 護費でも入所できる施設があることは、安心である。

2) 在宅ホスピスケア対応集合住宅 きぼうの家 ( 東京都台東区 )

在宅ホスピスケア対応集合住宅 きぼうの家 ( 以下 きぼうの家 ) は、日本最大のドヤ街である山谷の真 ん中にある。日雇い労働者の街としてバブル期には 活気のあったこの街も今は元日雇い労働者である高 齢者が多く暮らしている。家族との関係を絶ってい る人、友達や知り合いも居ない人など孤立している 人達が多いこの街で、人知れず命の終わりを迎える 人達の姿に出会った山本雅基氏は、この人たちを看 取る家を作ろうと決心しきぼうの家を設立した。

・医者からさじを投げられた人

入所の対象となるのは、生活保護受給者で医療の 余地がないと医師からさじを投げられた人。疾患と して多いのは、癌、心不全、末期の腎不全、HIV など。

滞在期間は 2 日から 2 年 ( 平均 500 日 ) で殆どの人が 医師の告知より長く生きている。2002 年に設立して から 15 年間で 260 人を看取って来た。これは 2 ヵ月 に 3-4 人の割合である。入所者は、21 名。4 階建て の建物に個室が並ぶ。自称「中規模多機能施設」。小

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規模多機能施設の定員 9 人では気の合わない人がい ると居づらくなるが、21 人いると他の人と関われば 居続けられる規模である。

・こじんまりとした個室とリビングルーム

居室は、4 畳半ほどの広さでシャワー、トイレ、

などはフロアーで共用。リビングルームは煙草を吸 う場所となっている。行動できる人は外にでかけて いるためか人々が集っているという感じはない。

・施設の運営

入所者が受け取る生活保護費から個人の小づかい を除いた分を入所費として納める。費用は、家賃、

食費、水光熱費、消耗品、人件費に充てる。その他 に助成金を申請し寄付も募っている。必要なスタッ フを雇うために収入が必要である。

・きぼうの家のケアー

きぼうの家ではスタッフが親密に関わることを もってケアーしている。スタッフはフルタイム 9 名 を雇用している。入所者は、元労働者が多い。日雇 いで使われ、働けなくなったら保障はなし、家族と の関係も切れて誰からも相手にされない人生を送っ て来た人が多い。その人達がきぼうの家で親密に関 わる若者と出会い、もう一度人間性を取り戻してい く。入所者の中にはアルコール依存症になっていた 人達もいるが、きぼうの家でアルコールよりおもし ろい人間との関わりを見いだして自然にアルコール が遠ざかる。アルコールを飲む飲まないは、本人の 選択であり強制しない。

・きぼうの家の医療と看取り

往診診療をしてくれる地域の診療所との連携はあ り、定期的に医師が 1 階の部屋を使って診察を行う。

腎臓透析をしている人は、医療機関に通って行って いる。元気な人は昼間地域のデイサービスに通って いる。きぼうの家では中心静脈による栄養投与 (IVH) は行わず、痛みを抑えて自然死を迎える。亡くなっ た方は、きぼうの家の 5 階にある礼拝堂で葬儀を行 う。礼拝堂にはこれまで亡くなった方達全員の写真 が飾られている。

・長期療養 HIV 陽性者への意味

孤独、孤立、拒絶、排除などを長年経験して来た 人達は、自分一人で生きているが、身体の状態が悪 くなったり、高齢化と共に心身が弱くなることで将 来に対する漠然とした不安を感じる。自分が居る家 がある、誰かが看取ってくれる、葬式をしてもらえる、

他界した後も誰かが自分のことを覚えていてくれる、

ということが安心につながる。また人と関わってこ なかった人達が親密な人との関わりを経験し、もう 一度人間関係の良さを見いだすことに意味がある。

3) よどまちステーション ホスピス型賃貸住宅かん ご庵 ( 大阪府大阪市 )

ホスピス型賃貸住宅かんご庵は、多目的施設よど まちステーションの一つの事業としてある。よどま ちステーションの1階は、広く明るいガラス張りの 多目的交流スペース。そこには、健康に関する地域 の情報や健康状態をチェックできる器具が並び、よ どまち保健室では医療従事者が健康の相談にのる時 間を定期的に設けている。よどまちライブラリーに は地域の人達が持ち寄った本が並び自由に借りるこ とができる。よどきりケアプランセンター、よどき り訪問看護ステーション、訪問介護事業所やさしい 手、の事務所が同センターの中にあり包括的な地域 ケアーを担う専門機関がそろっている。多目的交流 スペースでは、ワークショップやセミナーなどを通 して地域に暮らす様々な世代の人達が多世代交流で きる場となっており、一つのコミュニティーを形成 し、さらに地域に定着していこうとしている。

・最後まで自分らしく、心地よく暮らしたい

かんご庵は、ホスピス型賃貸住宅としてよどまち ステーションの 2 階に位置している。看護師が 24 時 間常駐しており、医療への依存度が高い人でも入所 できる。フロアーには、6 つの個室と真ん中に広い リビングルームと食堂がある。各部屋には小さなキッ チンとトイレ、シャワーが完備されており、フロアー に大型の風呂も完備している。個室は 8 畳ほどの広 さがあり、廊下部分も車いすが双方向に行き来でき る。毎日の昼食と夕食は真ん中のキッチンでスタッ フが手作りしている。

利用料は、月額で家賃が 4 万円、食費が 4 万 5 千円、

共益費が 1 万 5 千円、暮らしサポート費 (24 時間看 護費用等 )15 万〜 45 万円、合計で 25 万円から 55 万 円 ( 収入に応じて異なる ) となる。利用期間は、原則 1 年以内。

・かんご庵の医療

かんご庵では、入所者のかかりつけ医や淀川キリ スト教病院と連携して必要に応じて医療につなげる という体制をとっている。日常的な支援は、訪問看 護や訪問介護を利用するが、痰の吸引などの支援に は訪問介護 1 日 3 回では足りないためかんご庵常駐

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の看護師が対応する。

・長期療養 HIV 陽性者への意味

ホスピスとして位置づけられている施設であり、

比較的短期間に集中的に医療者も関わることが前提 となっている。細く長く生きる者が抱える苦悩とは 異なる明るさがある。

現状では最低でも月 25 万円支払うことが難しい 人は利用できない。病気をかかえることで切れてし まいがちな地域との関係、人とのつながりを積極的 につくることをよどまちステーションが担っている。

体力があればプログラムに参加する事で地域との関 係を築くことが可能である。

考 察

HIV 陽性者が長期的な入院と加療が必要となった 際に、メディカルシェアハウス安心絆のような施設 があることは心強く、最期に安心して過ごすことが 可能なきぼうの家やかんご庵のような施設につなが ることを希望する人はいるであろう。これらの施設 を拠点病院のソーシャルワーカーが把握しているこ とは個々のクライアントのニードに対応する施設を 紹介できることにつながる。一方、長期療養者の多 くは自分で動けなくなる少し手前の段階から様々な 不安や生活上の不具合を感じており、その人たちの 身体的、精神的ニーズに対応できる支援方法を見い だす必要が明らかになった。

研究 3

地方コミュニティーでの HIV 陽性者支援体制、

「お助けシスターズ」の構築  目 的

家族や地域社会との関係が希薄な HIV 陽性者が孤 立することなく健康に生きていく為には、今後何ら かの支援が必要となる HIV 陽性者が、市民団体や友 達とインフォーマルな関係を作り信頼関係を構築で きるコミュニティーを形成していくことが有効であ る。その一環として CHARM では「お助けシスター ズ」という HIV 陽性者支援体制の構築に取り組んで いる。本研究では、まず地域で暮らす高齢期 HIV 陽 性者の現在の暮らしを把握し、将来に対する不安や 心配を明らかにし、必要なサービスや支援を整理し、

「お助けシスターズ」の支援体制のシステム化とその 課題を明らかにする。

方 法

2015 年度は 60 〜 70 歳代の一人暮らしの HIV 陽 性者に対して、個々の暮らしにおける問題点やニー ズについて聞き取り調査を実施し、収集した情報の 整理とアセスメントを行った。2016 年度、2017 年度 はインフォーマルに対象者を募り、関西圏拠点病院 からの紹介を受けて面談ののち、必要があれば家庭 訪問もしくは事務局に来所してもらい個々のニーズ に沿った支援を実施。またボランティア要員の募集 や地域連携の必要性について、研修・講演会のほか 拠点病院が実施する医療従事者研修での呼びかけを 行った。

(倫理的配慮)

本研究における聞き取り調査を実施するにあた り、ご本人には研究の目的と方法、研究実施時や成 果発表時の個人情報の保護、研究参加の同意の拒否・

撤回・中止の権利および説明を受ける権利について 研究同意書に沿って説明を行い、同意を得た。

結 果

これまでの対話から得た情報から、老年期におけ るライフステージにおける問題に加え HIV 陽性者 固有の問題が重なって存在していることがわかった ( 表 1)。

1) 健康維持を脅かす問題:加齢、HIV 感染症やそれ 以外の病気のほか、抗 HIV 薬の副作用などにより健 康維持に不安があるものの、健康管理に対する億劫 さ、正しい情報を得る機会の不足、相談できる地域 の病院がないことで、健康管理に対する意識や意欲 がわきにくい。

2) HIV 陽性であり、老後を迎える不安:加齢や持病 の影響で活動に制限が生じ、自立した生活が出来な くなっていく不安はあるが、HIV 陽性者を受入れる 施設や介護事業所を探すのは難しく、安心して老後 を迎える具体的な方策や環境が整っていなければ、

長生きすることが不安になる。

3) 仕事やお金に関する問題:高齢で仕事が出来なく なる不安、貯蓄・収入がなくなるなど金銭的な不安 がある。

4) 他者との関係の希薄さ、または孤立:地域の人々 とのつながりがなく、HIV 陽性者・ゲイなど同じセ クシャリティーのコミュニティーにも属していない、

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家族と疎遠になっている、相談相手がいない、また はどうせ理解してもらえないので相談しないなど、

孤立しやすい状態にある、または孤立している。

5) サポートの脆弱性:家族と疎遠で頼れる人がいな い、コミュニティーに属しておらず連絡を取り合っ たり助け合える仲間がいない、他者に迷惑を掛けた くない、病気のことを色々な人に知られたくないの で訪問看護や介護サービスは利用しようと思わない、

などの理由でサポートに繋がりにくい状況にある。

表 1

2016 年度の HIV 陽性者支援実施延べ件数合計は 96 件、その内訳は相談・話し相手 39 件、グループミー ティング 35 件、通院介助 10 件、入院時の面会 7 件、

入退院 / 転院時の手伝い 3 件、行政手続き他 2 件で あった ( 図 1)。

図 1

2016 年度支援にかかった延べ時間数の合計は 363 時間、その内訳は相談、話し相手 115 時間、グルー プミーティング 140 時間、通院介助 65 時間、入院時 の面会 25 時間、入退院 / 転院時の手伝い 12 時間、

行政手続き他 6 時間であった ( 図 2)。一件にかかっ た平均時間を見ると 3.4 時間であったが、中でも対 象者自宅から病院 ( 主に拠点病院 ) までの往復時間 を含む通院介助は平均が 6.5 時間であり、遠方から

通院や、車椅子介助または対象者の身体機能に合わ せたペースで行動するため時間を要する場合があり、

さらに受診する診療科が複数ある場合には 4 〜 5 時 間の病院滞在時間があるため、通院介助のみで一日 7 〜 8 時間かかることがあった。

図 2

2016 年度支援に関わった延べボランティア数合計 は 82 人、その内訳は相談・話し相手 43 人、グルー プミーティング 15 人、通院介助 10 人、入院時の面 会 9 人、入退院 / 転院時の手伝い 3 人、行政手続き 他 2 人であった ( 図 3)。ほとんどのケースは 1 人で 対応するが介助に人出が必要な場合に 2 人で対応す ることがあった。

図 3

現在までの支援対象者を年代別の割合でみると 70 代が 30%、60 代が 30%、30 〜 40 代が 40%で「他 者との関係が希薄、コミュニケーション困難、ひき こもり、就労困難から他者や地域社会との繋がりが 少ない、あるいはない」「抑うつ、精神疾患、身体機 能障害、他の病気があるなど心身の健康状態が良く ない」「遠慮がちな性格、頼れる他者の不在、ひきこ もり、他人に頼ることで自立した生活が出来なくな ることへの不安から助けを求めない、求めることが 出来ない」といった共通点がみられた。

訪問を開始し約 1 年以上を経過する 2 人の対象者 は月に 1 〜 2 回、訪問を開始した一昨年から数える とそれぞれ 20 回以上の訪問を継続しているが、定期 表1

図1 39件

35件 10件

7件 3件

2件

延べ件数

相談・話し相手 グループミーティング 通院介助

入院時の面会 入院/転院時の手伝い 行政手続き他

図2

115時間 105時間 65時間

25時間 12時間 6時間

延べ時間数

相談・話し相手 グループミーティング 通院介助

入院時の手伝い 入退院/転院時の手伝い 行政手続き他

図3

43人 15人

10人 9人

3人 2人

延べボランティア数

相談・話し相手 グループミーティング 通院介助

入院時の手伝い 入退院/転院時の手伝い 行政手続き

(9)

的に訪問をしていたことにより対象者から入院など 緊急時の連絡がくるようになった。また 2016 年度か ら月に一度の通院介助支援を行っていた 70 代の対象 者は 2017 年度に入り HIV 感染症以外の持病の悪化 により死亡。先の 2 名についても 60 〜 70 代であり、

HIV 感染症ではない病気に伴う症状の悪化により、

日常生活の自立への不安が強くなっていると話して いる。

地域で支援をしている対象者の中で孤立しがちな 人や、CHARM で行われているグループミーティン グに参加することが良い効果をもたらすのではない かと思われる場合に来所を勧めている。

これまでに拠点病院からのお助けシスターズへの 問い合わせは 6 件ほどあったが、実際に継続支援に 繋がったのは 1 件であった。孤立している、通院や 日常生活の中での手伝いが必要と思われての紹介で 面談を実施したが、ご本人からはすぐに支援の希望 がなかったため、その場では直接支援に至らなかっ た。新規の対象者受け入れについては、拠点病院と の連携の強化、お助けシスターズの支援について フォーマルな形で告知することの必要性についても 検討した。

また拠点病院以外では、以前に当事務局での研修 を受けた訪問看護ステーションからの問い合わせが 1 件あった。HIV 感染症以外の障害もあり、地域で の独居生活を支えるために連携したいという依頼で あった。訪問看護ステーションの看護師とともに来 所面談を実施し、地域での生活を協働して支援して いくこととなった。

お助けシスターズを始めるにあたり、インフォー マルに支援ボランティアの募集と、ボランティア志 願者には HIV 陽性者理解の講義、オリエンテーショ ンをそれぞれ 2016 年度に 2 回実施した。現在のボラ ンティア数は 4 名、不定期であるが対象者との面談 や自宅訪問を行っている。また 2017 年度はボラン ティアミーティングを 1 回開催した。支援中の対象 者の情報共有と、今後必要な支援や確認事項、訪問 が必要になる可能性のある対象者についての情報共 有、各ボランティアが感じていること、問題点を話 し合った。死亡した事例については、支援を行う中 で対象者の死に向き合うことはあるということにつ いても共有した。

考 察

ライフステージとしての老年期では社会関係、社 会的存在、生きがいの喪失や経済的不安という社会 生活における問題があると言われている1)。今回の 調査結果にも同様の問題はみられたが、HIV 陽性者 固有のものとしては Futures Japan『HIV 陽性者の ためのウェブ調査第 1 回』2)にあるように、病気や 治療に関すること、HIV 感染症を理由とした支援者 の不在、在宅サービスや施設入所に関することが挙 げられており、これは今回の調査対象者にも見られ た。そしてこれらの問題は HIV 陽性者を取り巻く社 会環境が大きく影響している。未だに HIV/AIDS に 対する社会の偏見や差別、地域医療や介護に携わる 医療者や介護者の理解不足があり、診療拒否を多く の HIV 陽性者が経験し、感染を隠して生活している 人や感染したことで家族やパートナーと疎遠になっ た人など、HIV/AIDS に関する外的・内的スティグ マの存在が HIV 陽性者を孤立させ、支援に繋がりに くい環境をつくりだしていると言える。

このような状況の中でお助けシスターズは HIV 陽 性者の孤立を防ぎ、安心して地域の中で暮らしてい くために重要な役割を担う存在となり得る。これま で継続して関わってきた中で、日常生活に支障をき たすことがあっても我慢していたが、相談すること で支援者からのアドバイスを受けてそれが改善した り、緊急事態のときに連絡があり支援を求めること ができるようになるなど、対象者に行動変容が見ら れるようになった。一人で生きてきたので自分で対 処するのが当然、他人に迷惑をかけられないとの思 いから助けを求めなかったが、継続して関わり「い つでも助けを求めていい」というメッセージを送り 続けることで、彼らとの間に信頼関係が構築され、

助けを求めることが出来たと考える。

しかしながらお助けシスターズが対象者の日常生 活の困難に対し全てを担えるものではない。NPO の 活動として出来ることは何か、出来ない場合にはど こに相談すればよいか、ということについて支援者 が把握すること、特に地域における訪問看護・介護 などの医療・福祉サービスを理解し、また関連機関 と連携をとることも重要である。拠点病院との連携 は必須であるが、それぞれの機関と協働し個々の対 象者のニーズに応じた支援体制を整えていくことが 必要であると考える。

また現在のところ、お助けシスターズの支援につ

(10)

いては、まだシステムが整備できていないことから 医療機関等に対する正式な告知を行っていない。シ ステムを構築するには、支援者として関わるボラン ティアの確保と、お助けシスターズのサービス内容 を明確にすること、ボランティア活動のルールを作 ること、その上で広報を行い、支援を広げていくこ とが必要と考える。

結 論

HIV 陽性者が地域で安心して暮らしていくために NPO がまずやるべきことは、HIV 陽性者がいつで も相談できる関係性をつくるために、定期的・継続 的に連絡を取りながら、その時々にある問題につい て支援を行うことである。そして NPO の支援だけ では支えきれない部分を他機関と協働することでカ バーし、また地域にあるリソースに関しての情報網 も張り巡らせて必要な支援を必要なときに提供でき るような体制と、そのために動ける人材を確保する こと、また支援が必要な人に情報が届くよう、お助 けシスターズの広報も広く進めていくことが重要で ある。

脚注

1) 横田ケイ子、川原礼子:老年看護学概論・老年保健、

P7-10、2012

2) Futures Japan 調査結果 HIV 陽性者のための ウェブ調査第 1 回 (2013 年 7 月〜 2014 年 2 月、P21)

研究 4

エイズ拠点病院に勤務する医療社会福祉士によ るフォーカスグループディスカッション

目 的

我が国における HIV 陽性者の判明から 30 年あま りが経過し、抗 HIV 薬による薬物療法で多くの陽性 者が疾病のコントロールを行いながら生活すること が可能となった現在、高齢化を迎えつつある。

一方で生活面ではスティグマの付与は今現在も持 続している。

本研究は、高齢 HIV 陽性者が老化のゆえに介護的 ケアーが必要となった時、どのような既存の社会資 源 ( 介護保険サービス、障がい者へのサービス、イ ンフォーマルなコミュニティサポート、家族からの

支援 ) を受けているか、また受けようとするときに どのような困難をきたしているかを在宅や施設への 移行支援に携わる MSW の視点から探ることで、今 後必要なサービスとは何かを検討する。

方 法

1) データ収集方法

フォーカスグループインタビュー法を用いた。グ ループインタビューはグループダイナミクスを用い て質的な情報を複数の人間のダイナミックなかかわ りによって情報把握を行うことが可能である ( 安梅  2001)。インタビューはプライバシーに配慮した場 所で行われた。インタビューは参加者の同意を得て 録音し時間は 1 時間 30 分であった。報告者が司会、

共同研究者が書記を行った。

2) インタビュー参加者

インタビュー参加者は、関西地区の 5 か所のエイ ズ拠点病院において、HIV 陽性者に対しての福祉資 源の提供、退院支援及び退院調整に従事するメディ カルソーシャルワーカー ( 以下 MSW と略す ) で研 究への同意が得られた 5 名とした。研究参加の際は、

研究目的や方法、インタビュー内容を具体的に伝え た。

3) 倫理的配慮

対象者に研究の目的、インタビューの方法につい て文書で説明した。研究への参加は途中でやめられ ることについても説明した。本研究は関西学院大学 の研究倫理審査の承認を得た。記録した逐語録は参 加者に再度読んでもらい確認、承諾を得た。

4) インタビューガイド

「高齢 HIV 陽性者が受診する際に高齢であるがゆ えに受診困難をきたしている状況はないか」の発問 を皮切りに高齢 HIV 陽性者が直面している問題につ いて発言してもらった。

5) データ分析方法 

逐語録をもとに参加者の発言の中から、記述分析 法によって「高齢・療養生活にまつわる発言」をコー ド化し HIV 陽性者が直面している課題について分析 した。

(11)

結果

日時:2017 年 7 月 1 日 ( 土 )

会場:NPO 法人 CHARM 事務所会議室 参加者:8 名

内訳:医療ソーシャルワーカー 5 名、NPO 法人関 係 2 名、学生 1 名

高齢 HIV 陽性者が経験している問題は、以下の 1 〜 11 に分類できる。

1) 加齢による受診トラブル

① ADL の低下により受診時に移動が困難になる。

院内移動の介助者がいない。

長期歩行が困難。

家族 ( 子ども ) にとっての交通費などの受診負担。

②認知症 (HAND) による記憶力低下 ( 服薬・受診日 )。

通院日がわからない。

通院までの道のりがわからない。

受診ができない。

2) 施設入所困難

①施設側の受け入れ困難

②家族・本人側の入所困難

・( これ以上 ) 他に伝えたくない知られたくないから サービス使いたくない。

・隣町の施設を使いたい。

・(HIV を ) 言わずに施設に入りあとで判明して騒ぎ になり退所させられた。

・(HIV を ) 言わずに施設に入りあとで判明して、そ こには 2 年もいたのに職員全員が HIV 抗体検査を 受けた。

・大都市でも特養で入所 OK は 3 件。

・入所条件に HIV は大抵×と書いてある。

・入所条件に HIV 〇とかいてあるから問合せするが、

わかってなくて〇にしている。

・入所はできても一部のワーカーだけがケアーして いて、施設内ネグレクトがおきている。

・HIV でもいいですよという施設に行ってみるとス プリンクラーがなかったり、エレベーターが狭 かったり。

3) 在宅サービスを受ける際の困難

・ヘルパーくらいはいいが、ショートステイなど薬 を管理してもらうところは話さざるを得ないので いやと家族が言う。

・本人の住所で介護保険の申請をしたくない。別居

している子どもの家に住民票をうつして申請す る。

・訪問看護は受け入れを断らない。

・訪問看護でも、決まったスタッフだけが担当して いる場合もある。

・往診医探しに困る。

・ヘルパーさんの家族が HIV にかかわることにク レームをいってくる。

4) サービス提供者間の HIV の情報取り扱い

・HOT の業者に HIV のこといわなくていいのか。

・感染の事実を言わないことは倫理的に問題ではな いか。

・主治医意見書に HIV 感染を書く、書かないの議論。

・余命短い人が家族に未告知の場合、緩和ケアチーム、

病棟、HIV 担当者間で HIV 感染症について情報 共有はしなくていいのか。

5) 孤独 ( 孤立 )

・成年後見制度を考える。

・一般的な終活に課題が追加される。

・HIV だということで家族と関係が悪くなった。

・ゲイの友人と HIV を理由に交流が途絶えて 20 年。

・孤独であることによるメンタルな問題で精神科受 診。

6) 緩和ケアー病棟の受け入れ困難

・抗 HIV 薬中止し緩和ケアーだけいっても受けてく れない。

・院内患者なら緩和ケアー病棟でみてくれる。

・療養型病院なら最期までみてくれるところもある。

・公立病院でとってくれるところもある。

・大阪府下ではホスピスは 2 か所しか受けてくれな い。

・拠点病院で最期まで。

7) 家族の介護困難

・サービスを入れず家族介護の中で褥瘡ができても 放置されている。

・第三者がいない状態で虐待の通報が困難なケース。

・診察に同行して来る家族から家庭内暴力の報告が あっても本人は理解が低下している状態で「いや たたかれても僕は構わない、僕が悪いからだ」と 言うと家族の関係性のなかで第 3 者は手が出せな

(12)

い。

・虐待ケースで施設への入所を依頼したが HIV を理 由に引受を断られた。高齢者虐待として措置入所 を考えられないかといって役所に家族と一緒に働 きかけたが、、、

・(これ以上 ) 他に伝えたくない知られたくないから サービス使いたくない。

・ヘルパーくらいはいいが、ショートステイなど薬 を管理してもらうところは話さざるを得ないので

(利用は ) いや。

・家族がそこの地域で過ごすということを守りたい という気持ちそこが侵害されるのではという不 安。

・本人は ( 家族に ) 会いたいと言っているが家族がそ れを難しくしている。

・子どもが同じ小学校などを理由に訪問看護を拒否。

8) 転院困難

・近距離の病院への転院を家族が拒否。

・支援者が転院に反対する。

・転院相談が軒並み断られる。

・「HIV 対応の体制がとれていません」。

・薬は出来高払いといっても「いやいや・・」と。

・診療協力病院でも救急搬送断られて ( 拠点病院に ) 来院するパターンもある。

・今まで診てくれた医師が交替して断られた。

・HIV 理由の入院ではないのに「なんでこんなん民 間に任せんの、こんなん公立がみるべきちがう」

といわれた。

・HIV を理由に精神科デイケアを断られる。

・内科は OK でも小児科の医師がかたくなに拒否。

・過去 10 年で変化した。施設入所した人もそこの関 係協力医療機関が診てくれる。

・施設関連の医療機関の医師が拠点病院に営業に来 て受けてくれた。

・一人受けてくれて「こんなんやったら全然普通に 受け入れられますね」意識変わった。

・救急は輪番制なので HIV でも見てくれる。

・精神科は個人的な関係つくりでみてくれるように なった病院がある。

9) 地方での介護サービス利用困難

・デイサービスが一か所しかないような地域では、

そこがアウトだと次がない、役所巻き込んで交渉 してもうまくいかない ( 結果的に入浴できない生 活 )。

・デイサービス職員が「入浴で、利用者間で本人の 理解力が低下しているんだったら、片隅でやりか ねないのでは」と懸念する。

・デイサービスで過ごしてもらうのはいいが入浴は 断られる。

・通所ではなく居宅のサービスを利用する。

10) 医療施設間の連携困難

・自宅から拠点まで遠距離通院。

・片道 3 時間かけて高齢の家族が通院援助。

・尿路感染症だけなのに HIV を理由に近くの医者が 診ない。

・近くに診てくれる担当医がいても、不在であると 他の医者は拒否する。

・施設に入所しても拠点病院を受診することが負担。

・拠点病院院内でも他科 ( 整形、手術 ) ではみてくれ ないこともある。

11) HIV 陽性について未告知であることに関連した 関係性や法的手続きの困難

・家族にはずっと未告知。どのタイミングで告知す るか?

・死んだ後に手帳が出てきた時の不安。

・自分が倒れた時、カバンを開けて手帳がでたとき、

薬が出てきたときどう反応されるの。

・病名は言いたくないが、民法上頼らなくてはなら ない人との関係をどうするのか。

・余命短い人が家族に未告知な場合、万が一な場合 スタッフは家族にどう対応するか。

・亡くなられたら守秘義務は家族に移行するのでカ ルテ開示も拒否できない。

・70 歳代、呼吸器の病状で入院 HIV 陽性と初めて判 明。介護保険の意見書に HIV を書くかが議論に なった。

・同居の息子、娘に (HIV 陽性を ) 言いたくない。

考 察

今回の MSW によるフォーカスグループディス カッションではその記述分析から、高齢 HIV 陽性者 の生活の課題として以下の事柄が浮上した。

- ADL 低下や認知症による受診困難に直面する。

(13)

- 他の疾患への医療アクセスに困難をきたしている。

- 介護保険による施設サービスを利用する際に HIV を理由に利用の選択の幅が狭まることがあるだろ う。

- 介護保険による居宅サービスを利用する際に、家 族がその利用について躊躇する状況がある。

- 高齢者虐待が見受けられるが HIV を理由に解決の プロセスに困難さがみられる。

- 転院先への連携が整わない。

- 未告知のまま老年期に達しその解決方法に悩んで いる。

またこれらの課題を解決する手がかりとしては、

介護事業者のなかで経験のある人と共に直接 HIV 陽性者に関わる経験をしたことで受け入れが可能に なった例や訪問看護やヘルパーが拠点病院で研修を 受けた例が報告された。新規にオープンする施設に 働きかけるといった提案がなされた。

高齢者の増加は待ったなしの状況であり、HIV 陽 性者が年老いても安心して生活できるケアーへのア クセスと整備が必要である。家族が持つ HIV に関す るスティグマは社会一般の持つ負のイメージが反映 されたものであり、継続的に一般社会向けの啓発活 動を行うことが重要である。

研究 5

施設職員を対象とした研修の実施 目 的

本研究は、高齢者施設等の福祉施設に勤務する職 員を対象に研修を実施することで参加者が HIV 及び 関連することらがについて理解を深め当事者と出会 うことでイメージが変わることを目指して実施した。

福祉に従事する人たち一人一人の認識が変わること によって HIV 陽性者を受け入れることへの抵抗が低 くなることが目的である。

対象と方法

関西圏の複数の地域で福祉サービスを提供してい るイエス団の職員を対象に HIV、セクシュアリティ、

薬物依存症に関して全 3 回の研修を実施した。

(倫理面での配慮)

特になし

研究結果 第 1 回研修

「みんなで考えよう施設における HIV」

日時:2017 年 9 月 2 日 ( 土 ) 13:30-16:30 会場:賀川記念館メモリアルホール 参加者:12 名

内訳:医療従事者 1 名、施設関係者 9 名、研究者 1 名、

事務局 1 名 内容:

1) 陽性者支援のための HIV 基礎知識 松浦基夫 陽性結果を告知し病気について説明する場面の

ロールプレイ

HIV に関する医療情報の基礎知識 

2) HIV 陽性者・エイズ患者を地域でケアーして 市 橋恵子

地域の訪問看護を行ってきた経験から医療や生活 の援助を必要とする HIV 陽性者の現状について

第 2 回研修

「みんなで考えよう施設におけるセクシュアリティ」

日時:2017 年 9 月 30 日 ( 土 ) 13:30-16:30 会場:賀川記念館メモリアルホール 参加者:14 名

内訳:医療従事者 1 名、施設関係者 6 名、研究者 2 名、 保育関係者 3 名、事務局 1 名、牧師 1 名 内容:ジェンダーに関する基本的な知識、健康の概

念、多様性の概念を紹介した上で、施設の中で起 こりうるジェンダーの課題を具体例に基づいて参 加者が話し合い、施設で働くセクシュアルマイノ リティの当事者が職員として働く中で感じている ことを共有した。

1) おとなのための性教育  東優子 ジェンダーとセクシュアリティの違い。

国際社会に共通した認識 ジェンダーは人権であ る。

HIV 感染に関する誤解と固定観念そして神話。

世界的に女性に HIV 感染者が多い。力関係、暴力、

文化習慣の被害の結果。

トランスジェンダーの HIV 一般の人口に比べて 49 倍である。

健康とは身体的、精神的、社会的に完全に良好 ( ウェルビーング ) であること。

多様性 ( ダイバーシティー ) を包括する社会は色々 なあり方を肯定する。

(14)

2) ちょっとした視点の変換ワークショップ岡本学 施設の中でありうる具体的ケースをとりあげて職

員としてどう対応するかを小グループで話し合 う。

3) 当事者からのメッセージ 施設で働くセクシュ アルマイノリティの立場から  岡嶋宙士 名前の呼び方 〜さん、〜君

何気なく使っている名称でもとまどう人も居るこ とを知ってほしい。

研修の参加者の内 10 名から以下の感想がよせられ た。

・なかなか自分をその場に置いて考える機会がなく 良い機会となった。

・「多様性」をみんなが考えられる職場が増えると良 いと思いました。

・一人ひとり、様々な課題や思いを持っていて、そ れにどう応えていけるか。考えさせられました。

・全く知らないわけでなく、これまでもいろいろ考 えていましたが、今回きちんと学ぶことができ良 かったと思います。ワークショップで自分の考え を他の人と考え合わせるのは何より学びになりま した。

・守秘義務に関して個別の配慮をすることは、どん な方にとってもその方にあった方法で考えること が大切だと思いました。

・実際に考えてみることが大切と思いました。

・ワークをすることで、自分がどんな所に悩むのか、

参加者と共有できて良かった。

・「性」という言葉が自分の中で一人歩きしていると 強く思いました。今後も勉強を続けたいと思いま す。

・性教育、性の課題、人権の課題 みんな個人的な 感情に左右されている。

・性の話は人権である。本当にそうだと納得。人権 を大事にしたいのに、性の理解がまだまだであっ た。良い情報をたくさんもらえました。

・それこそ、自分の中で無意識にもタブー視してい たと思います。でも、タブー視することのおかし さも自覚し、人間としての関係を築くことが大切 だと思いました。

・性の違いとは何かあらためて考えさせられました。

・小学校などもちゃんと配慮される時代になりまし た。思いが聞けて本当に良かったです。

・ありがとうございます。女性のことを「ちゃん」

と呼ぶのも仕事上 1 人前として扱われてないから か?と感じることもあります。

・本人の経験が施設の方針に反映していくのだとい うことが明らかになった。

・岡島”くん”と呼んでいてゴメンナサイ。ちょっ とした一言で傷つける。大切な視点を気付かさせ てもらいました。

・タブー視が少しくずれました。「少し」というのは もっと勉強すべきという意味。

・みんなちがってみんないい イエス団の理念をこ れからも大切に励みたいと心にドンときました。

ありがとうございました。来てよかったです。

・個別の配慮も大切だが、施設としての方針、守秘 義務…などが特に大事だと思いました。

・もっと自分のまわりでも環境をととのえることが 必要だと感じた。

・東先生の話し通り、性とは人権であると明確な考 えがもらえました。はずかしく思いがちな性のこ とを、話していきたいと思います。

・セクシュアリティもグラデーションである。発達 障がいと同じ考え方である。

第 3 回研修

「みんなで考えよう施設における薬物依存症」

日時:2017 年 9 月 30 日 ( 土 )13:30-16:30 会場:賀川記念館メモリアルホール 参加者:14 名

内訳:医療従事者 1 名、施設関係者 8 名、研究者 2 名、

事務局 1 名、牧師 1 名、事務職 1 名

内容:依存症の基本的な知識について情報提供をし た後依存症を抱えて生きる当事者が自分の話をし た。

研修の参加者 14 名から以下の感想が寄せられた。

・今までの文献ではイメージできにくかったが、今 回の講演でしっかり理解できた。

・様々な依存症があることを知った。

・何でもそうなりうると知った。

・水中毒のアドバイスで、「いつでも飲める安心感を 持つ」といわれていたのが参考になりました。不 安を減らし、安心感を持つことの重要性を再確認 できました。本を読んでもぴんとこない部分が、

お話を聞くことで、理解できました。

(15)

・依存と依存症について 依存することで周りに迷 惑がかかりすぎることが続くと「症」がつくと解 釈。依存自体はバランスさえ保てれば、悪いこと ではないと考えられた。

・別の角度からみると、まだ死を選んでいない良い 状態とも言えるという発言には、なるほどと思え た。

・自分自身のお酒の飲み方について考える機会にな りました。

・依存症の知識を知ると、アルコール依存症の人は じぶんの周りにたくさんいることに気づきまし た。

・意志でなんとかできるものと思っていた。やはり 依存症はだらしない、情けないという偏見をもっ ていたので、そうではないということがわかりま した。

・色々なバックグラウンドをもった人達と話せて様々 な考えがあると知った。

・参加者の思いえがいている依存症についての分か ち合いはよかった。それをもとに専門家からの説 明がありわかりやすかった。

・自分でまず考えてから、松浦さんだったらこう考 える、こう対応すると教えてもらえたのがとても 分かりやすかったです。

・施設に入所する際、「がん」などの一般的なもので あれば職員は周囲に病名等を言う必要はないとわ かっているのに、「依存性」だと急に「秘密保持」「利 用者中心」の部分などがゆらぐ…のが面白いと思 いました。対応したことがない、わからないこと に対する「不安」が通常とは違う対応を考えさせ るのでしょうか?わからないことを減らす、相談 できる先を持つ、正しい対応を知り・練習するこ とで、対応の幅を広げられるのか?とも思いまし た。

・当事者として、参加された方の的を射た言葉にな るほどと思える場面があった。

・設定がもう少し現実的な方がよかったかも…。

・ご自分のことをお話くださって、自分の弱さを正 直に話せるようになった、自分が支えられている だけではしんどい、利用者さんの笑顔を見ると やっていて良かったと思うというお話が心に残り ました。

・ ゆたかさんの真摯なお話から「しあわせ」「よろ こび」とはなんなのだろうかと、自分・家族・日

頃の仕事で関わる利用者の方について考え続ける 機会を与えていただけたと思っています。ありが とうございます。コンビニの利用などの「生活の 全てが薬に繋がる」というエピソードを通して、

依存症はやめてからが大変であるという当事者の 苦労について知ることができました。

・職場ではなかなか聞く時間がなかったので、非常 にうれしい時間となった。反対に、職場の人間が たくさんいたため、話しきれないこともあったの ではと気になる部分もある。

・サボることができない。→以前の自分に戻ってし まいそうで…、とても心が痛い発言だった。

・薬物依存症の人がどのような思いでおられるかを 知る機会になった。ご本人も周囲の者も向き合う ということは簡単ではないと思う。

・使用する理由があることに気づかしていただきま した。

・いろんな場面でいろんなことに気をつかわれなが ら生活しておられ、頭が下がりました。しかし、

人は変われるということを教えていただいたと思 います。

・依存性患者への支援は絶対に必要だと思った。

・だれでもなりうる身近なものであると感じた。

・依存症に苦しむ人も私たちと変わらないというこ とに気づくことができましたし、一方、いつも薬 物やお酒に 戻る不安があり、それを抱えて生活 をされているということを知りました。

・「依存性」「HIV」「セクシュアリティ」等を聞くと、

一般的な?参加者が自分とは遠い世界の話のよう に振舞うのが面白いと思いました。本当は区切り などなく、ひとつづきで濃淡が違うだけ、表に出 たときの見え方が違うだけのような感じがしてい ますが…

阪神淡路大震災、東日本大震災等の災害や事故、

それ以外でも日常の苦労 ( 受験・仕事・介護…) な どから、自覚なく依存症で苦労している人はたく さんいるような気がします。そういった方のため にも、いろいろなレベル・形で依存症について知 る機会は必要だと思います。

・「当事者からのメッセージ」を受けて、これまでよ りさらに積極的に関わりたいと感じられた。また、

多飲水のケースについてもう少し学びを深めたい と思った。

・僕が思っているより世間の目は冷たい。

参照

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