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(様式7) 平成29年度 大学院派遣研修 研究報告書

キーワード:自閉症 就労支援 TTAP

1 研究の背景(目的)・主題設定の理由等 2 研究の内容・研究の方法

派遣者番号 29J04 氏 名 増田 知洋

研究主題

―副主題―

「知的障害特別支援学校におけるキャリア教育についての研究」

TTAP アセスメントを利用した ITP(個別移行計画)の作成

派遣先 早稲田大学大学院 担当教官 梅永雄二 教授

所属校 都立江東特別支援学校 校長 田邊 陽一郎

自閉症をもった生徒が就労後に様々な課題を抱 え、休職や離職を余儀なくされるケースが多く存 在する。

近年、ハローワークにおける発達障害者(自閉 症を含む)求人申込件数は大幅に増加している。

それに比例し、就業件数も増加傾向にある。精神 障害者福祉手帳所持者は「精神障害者」としてカ ウントされるため、発達障害者全体の数は不明で あるが、平成 18 年度の就業者数は全国で 110 人で あったが、平成 27 年度では 1307 人と大幅に増加 している(2017 厚生労働省)。

厚生労働省によると、発達障害者の職場定着率 は、就業後 3 か月で 85.3%、1 年で 71.5%となっ ている。厚生労働省は、「就労移行支援等を利用し、

一般就労に移行する障害者が増加している中で、

今後、在職障害者の就労に伴う生活上の支援ニー ズはより一層多様化かつ増大するものと考えられ る。」(2017)として、平成 30 年度から新たに就労 定着支援事業を開始することとなった。その背景 には、発達障害者の就労後の課題が大きな問題と なっていると考えられる。

就労後の課題として、職業的な技能の問題より も、人間関係やコミュニケーションなどのソフト スキルの問題が大きく影響していると考える。

このような課題を在学中に明らかにし、授業や 現場実習の中で課題として取り組むことによっ て、スキルの獲得を目指すことを目的とする。

また、生徒一人一人に合った仕事や職業をマッ チングできるようにすることを目的とする。

さらに、生徒一人一人の特性や能力に応じた有 効な支援法を明確にして、卒業後の資料として引 き継いでいける仕組みを考えていきたい。

① 自閉症生徒を対象として TTAP の検査を実 施する。検査対象生徒1名を対象としてシ ングルモデルで研究を進める。

② TTAP の実施で明らかになった課題につい て個別指導計画として具体化し、授業等の

課題として指導を進める。ソフトスキルを 中心に進め、社会性を高めるように指導す る。

地域性を考慮した CSC(地域でのスキルチ

ェックリスト)を作成し、生徒一人一人に合

った職業をマッチングできるようにする。

④ 地域性を考慮した CBC(地域での行動チェ ックリスト)を作成し、社会性の強み・弱 みを確認し、スキル獲得のためのツールと して活用する。

⑤ 日々の指導経過を記録し、スキル獲得まで の経緯を調べる。また、現場実習でのスキ ルの累積記録を作成し、スキル獲得までの 流れを確認する。

⑥ 現場実習で課題となった部分についての記 録を作成する。アセスメントで明らかにな った強みを有効に活用して、どのように変 容していったかを確認する。

⑦ 検査から、これまでで確認できた効果的な 支援(構造化)を整理し、これからの社会 生活に生かすことができるようにする。ま た、引き継ぎの資料として有効活用できる ようにしていく。

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3 研究の結果 4 研究の考察

アセスメントでは、卒業後の社会生活において 予測される課題として、「対人的な適切な距離を保 つこと」を見いだすことができた。

さらに、本人の強みである「図や文字によるル ール設定での理解や視覚的に確認できる支援方 法」も把握することができたことにより、学校での 指導も適切に進めることができた。

アセスメントの結果から、「対人的な適切な距離 を保つこと」の中心課題に対しての指導方法をソ ーシャルストーリーとロールプレイで実施した。

1~3 回目まではソーシャルストーリーとロー ルプレイを実施し、それ以降はロールプレイを実 施して理解を深めた。合計で 12 回実施して現場実 習を迎えるようにした。指導を重ねるごとに問題 行動が減少していったことを確認することができ た。

現場実習の中でもハードスキルとソフトスキル の両方の課題に対してアセスメントで見いだした

「図や文字によるルール設定での理解や視覚的に 確認できる支援方法」の強みを活用することによ って、「芽生え段階」と判断された項目を「合格」

にまで引き上げることができた。

TTAP で見いだされた強みや特性を実習の中で 記録して活用した実習日誌の内容を ITP(個別移 行計画)の中に引き継いだことにより、就労後1 年が経過しても問題なく仕事を続けることができ たものと考えられる。

指導前と指導後の結果から、中心課題として挙 げていた項目以外でも「不合格」が「芽生え」に、

「芽生え」が「合格」に、「不合格」が「合格」に 変容したことが確認できた。

特に家庭尺度では、指導前の検査後に保護者と 共通理解することによって、視覚的指示の支援を 家庭での様々な場面でも活用してもらうことがで きた。

学校の授業では、視覚的指示をいろいろな授業 場面で支援方法として実践したことにより、中心 課題として指導を進めていた「207 知らない人に 好ましい行動を示す」以外の項目でも「合格」に 変容した項目が見られた。

TTAPを実施したことにより、課題が明確に なり、指導方針や指導方法を教員間で共通理解 を図ることができた。また、生徒一人一人に合 った支援方法を確立することにより、現場実習 先の指導員にも分かりやすく説明することが でき、共通理解を図ることができた。

さらに、実習日誌をシート化することによ り、指導の経過や実習の経過が明確になり、生 徒一人一人の支援マニュアルとして、有効に活 用できるものと考える。

今回のケースでは、限定的な指導場面であっ ても体験を通して理解を深めることにより、生 徒が自ら意識して行動できるようになった。

これまでは、口頭での注意だけで指導に当た っていたが、フォーマル・アセスメントで見い だした視覚的指示(構造化)による支援を実施 することによって、「対人的な適切な距離を保 つこと」の課題を達成することができた。

CBC と CSC を活用した職場マッチング後の現 場実習先でも、適切な距離を保ち、他者と関わ ることができていた。就職後 1 年が経過した現 在も、大きな問題なく順調に働くことができて いる。

指導前の現場実習では、大きな課題を抱え就 労が難しいとされた生徒が、TTAP を実施し、指 導を進めることによって、課題と考えていたス キルを身に付けることができ、就労することが できた。

今回の結果から、社会生活に必要と考えられ るスキルを明確化し、適切な支援方法を見いだ しながら指導を進め、就労へ結び付けていくた めには、TTAP の活用が有効であると考えられる。

5 今後の展望

卒業していく生徒たちの社会生活を充実したも のにするために TTAP の活用が有効であり、課題を 一つ一つ達成していくことが重要である。

また、組織的に活用していく仕組みをつくるこ とにより、長い期間活用することができる。

そのためにも TTAP を活用するそれぞれの組織 が地域性を考慮した内容にアレンジしていくこと が必要である。

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