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Academic year: 2022

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(1)

厚生労働科学研究費補助金(地球規模保健課題推進研究事業) 

分担研究報告書   

我が国の経験を踏まえた開発途上国における献血制度の構築と普及に関する研究 

(H23‑地球規模‑ 指定 009 ) 

分担研究:アジア諸国の血液事業の実態に関する研究   

分担研究者:福吉  潤、宮崎  泰司   

研究要旨 

我が国においては、1964 年に献血の推進が閣議決定されて以後、1960 年代後半には血液需要の 90%

近くが献血でまかなわれ 1973 年には 100%に達するという驚異的なスピードによって売血から献血へ と移行した。 

 その移行をもたらしたものが何であったのかを明らかにしたうえで、どのように献血というシステ ムをマーケティング(上手に広報)すれば献血に関して我が国が有するノウハウをパッケージとして 途上国へ「輸出」することが可能になるかを研究し、我が国としての新しい国際貢献のあり方を提示 することを目的にしている。 

1 年目の成果は 1964 年から現代に至るまでの売血から献血に至る過程で重要な要素であったことを

「法制度・インフラ整備・社会ムーブメント」というフレームワークの中で整理を行いノウハウのパ ッケージの素案を作成した。 

2年目の成果は、カンボジアにて国際会議を開催しパッケージを披露した結果、次年度に実際に活 用し献血率向上の取り組みを行うことが合意された。 

  3年目の本年度は、日本における献血率向上の成功要因の一つである学校献血を推進すべく、プノ ンペンにある7つの大学において学校献血イベントを実施した。献血者数の向上とともに、献血意識 の変化に関しても調査を行い、イベントの効果を測定し今後の示唆を得た。  

           

(2)

 

A.  研究目的 

  我が国の献血の推進において、社会啓発と教 育が、その構築と普及に果たした役割は大きい。

法律や制度、インフラ整備とともに、社会啓発 や教育により献血への国全体の意識を高める ことができたこと、また、献血制度の普及に関 して、特定の宗教が絡んでいない点で、啓発と 教育を中心に発展した我が国の献血推進の過 程は、開発途上国の今後のモデルとすることが 可能である。啓発においてコミュニティを巻き 込みドナーへの教育や啓蒙を行うことが、献血 推進において必要不可欠な要素であったこと が、日本の学校献血の経験から分かっている。 

  しかし、社会啓発と教育が、どのように献血 制度の構築と普及を後押しし、結果として、世 界まれに見るスピートで国内自給率を達成す ることができたのかに関しては、まだ国内でも 研究が進められておらず、本研究では、献血推   

進の方策に関するパッケージ化を行うととも に、パッケージを途上国において共有し広めて いく手法を明らかにすることを目的とする。 

 

B.  研究方法 

<1年目>  パッケージの開発 

  日本の献血制度に関わる文献レビュー並びに専 門家・関係者へのインタビューを行った。インタ ビューを行った関係者の所属組織は以下の通り。 

‑ 日本赤十字社 

‑ 厚生労働省医薬食品局血液対策課 

‑ 国立感染症研究所 

‑ 世界保健機構   

  売血が中心であった 1964 年時点での血液需要 量や、1974 年に献血自給100%を達成するに至 る過程での経年のデータなどは当時の厚生白書

(1963−1974 年)を用いた。 

  また、献血の社会ムーブメントを引き起こすう えで自治体や学校などで献血運動が実践されたわ けだが、当時の自治体広報紙なども参考文献にし た。 

 

<2年目>途上国における献血状況の把握とアジ ア各国に対するノウハウ共有 

  WHO と連携し、カンボジア・プノンペン市にお

いて国際会議を開催し、5 か国の代表者・WHO/オ ーストラリア赤十字などから総勢 300 名を超える 参加者が集まり 2 日間に渡り発表・ディスカッシ ョンを行った。 

献血推進を実際に途上国において実施するための 体制構築 

  WHO と連携しカンボジア政府と折衝を行い、現 地の NBTC(National Blood Transfusion Center) が中心となり7つの大学を巻き込み、次年度にお いて学校献血イベントを実施することで合意した。 

 

<3年目>日本の経験を活かした献血推進活動を カンボジアにおいて実施 

  日本が売血から献血に移行する過程で、多く のコミュニティを巻き込みそのコミュニティ の中で率先して献血を推進してきたことが成 功要因であることが1年目の研究成果から分 かっている。 

この経験にもとづき、カンボジア・プノンペ ン市の7大学において実際に学校献血を実施 した。効果検証として、献血者数の増加に加え、

献血意識の向上に関しても調査にて把握した。 

 

C.  研究結果 

  学校献血のイベントは、カンボジア・プノンペ ン市の7大学において2013年10−12月の 間に行われた。 

  イベントの前後の時点で、各大学において学生 に対するアンケート調査を行い、 

1  年齢  2  性別 

3  専門領域(study area) 

などの基礎情報に加え、 

4  過去に献血をしたことがあるか? 

5  前項で「ある」場合、何ヶ月前にしたか? 

6  今後、献血をする意思はあるか? 

7  献血キャンペーンが大学で実施していること を知っているか? 

を聞き、イベントの前後で比較を行った。 

  イベントの前後における各大学のアンケート回 収数は以下のとおりでる。 

アンケート回収数 

大学名  イベント前  イベント後  RUPP  99  100 

(3)

 

RUA  100  100  ITC  101  100  PUC  101  82  PPIU  99  101  HRU  101  100  UHC  112  98  合計  713  681 

なお、イベント前後におけるアンケート回答者 の属性に違いはほとんど見受けられなかった。 

 

献血経験 

イベントの前後において、回答者における献血経 験者の割合が著しく向上した。イベントを行った 大学の全体で大きく改善したことに加え、イベン トを行った全ての大学で献血率の向上が見られた。 

イベントの前後という短期間において、この献血 イベント以外の機会において献血をしたとは考え にくいことから、この献血イベントにおいて献血 を行ったものと考えられる。 

献血経験の有無 

大学名  イベント前  イベント後  差  RUA  12%  41%  +29pts  RUPP  10%  25%  +15pts  HRU  13%  24%  +11pts  PPIU  9%  18%  +9pts 

ITC  18%  22%  +4pts  UHC  7%  8%  +1pts  PUC  3%  NA  NA 

全体  11%  23%  +12pts    なお、PUC においてはイベント後の調査におけ る調査票がイベント前と異なっており、比較する ことができなかった。 

 

将来の献血意図 

  ほとんどの大学でのイベント日数が 1−2 日と 短かったため、献血したくても諸々の事情でイベ ントの日程において実際の献血までは至らなかっ た学生が多いであろうことから、将来の献血意図 に関してもアンケートにて聞いた。 

将来の献血意図 

大学名  イベント前  イベント後  差  RUA  45%  95%  +50pts  PPIU  55%  96%  +41pts 

HRU  78%  99%  +21pts  RUPP  80%  99%  +19pts  ITC  59%  77%  +18pts  UHC  49%  65%  +16pts  PUC  100%  NA  NA 

全体  61%  89%  +28pts    全体で 28 ポイントと著しく増加したことに加 え、すべての大学において増加が見られた。 

  なお、PUC においてはイベント後の調査におけ る調査票がイベント前と異なっており、比較する ことができなかった。 

    D.  考察 

  今回実施された大学における献血イベントを通 して献血経験者・献血意図者ともに著しい増加が 見られた。 

  大学生という若いコミュニティを巻き込むため に「Edutainment」(教育的・啓発的効果のあるエ ンターテイメント)というコンセプトのもとに、

バンドなどを呼んだイベント形式で行ったことが 成功要因と思われる。 

  また成果報告会での発表が予定されていたため、

大学間での競争意識が芽生え、イベント企画/実 施のリーダーたちのやる気が学校全体の雰囲気づ くりに大いに貢献したであろうことが、2014 年 1 月にカンボジアにて行われた各大学代表者からの 成果報告会で確認された。 

 

E.  結論 

  新しい行動(この場合は献血)を人が取るため には、「その行動を取ることは必要だ」という規範 の醸成が不可欠である。 

日本における献血の推進においては、学校・地 域・職場など多くのコミュニティでそれぞれに啓 発が行なわれ、結果としてコミュニティ単位で規 範が醸成されたことに日本の献血推進の成功があ ったということが、1 年目の研究より明らかにさ れた。 

日本の経験をカンボジアで活かすその第一弾 として学校献血の推進を行い大学というコミュニ ティで献血意識の醸成・献血行動を起こすことが できるかどうかを試みた結果、大きな成果をあげ ることができた。 

(4)

 

これはすなわち日本の経験を精緻に分析し成 功要因を抽出した上で(一年目の成果)、現地のニ ーズを取り入れながら現地に導入することで(二 年目の成果)、他の国(特に発展途上国)に活用す ることが可能であることが明らかにされたことに 他ならない(三年目の成果)。これはおそらく献血 にとどまらず他の多くの保健行政の分野において も同様のことと思われる。 

新しい行動が根付くためには時間がかかる。研 究班の支援を受けて今回の献血イベントは成功し たわけだが、献血という新しい行動が真に現地に 根付くためには、献血推進の学校イベントが何年 にもわたり継続されることが必要である。そのス タートをサポートした本研究班の意義は大きい。 

 

F.健康危険情報 

(総括研究報告書にまとめて記入) 

 

G.研究発表  2014 年 1 月 

        H.知的財産権の出願・登録状況(予定を含む) 

なし     

添付資料1:成果報告会での発表資料   

参照

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