鹿児島国際大学考古学ミユージアム調査研究報告122015. 3
BulletinofthelnternationalUniversityofKagoshima,ArchaeologicaIMuseumVol.12March2015
報告
薩摩川内市手打貝塚周辺遺跡の発掘調査
大西智和l) 。鐘ヶ江賢二I)
1)891‑0197鹿児島市坂之上8‑34‑l鹿児島国際大学
I.はじめに
鹿児島国際大学国際文化学部大西ゼミは古墳時代の貝 塚である薩摩川内市下甑町手打貝塚の発掘調査を, 2012.
2013年度に実施し(大西・鐘ケ江2013 ・2014),古墳時代 に形成された貝層を確認することができた現在発掘調査 で出土した土器や,貝層のサンプルを分析し,当時の人々 の食生活の実態解明を進めている
今年度は手打貝塚に近接する手打貝塚周辺遺跡の発掘調 査を実施した(図1) 今回の調査は,手打貝塚の調査成 果をふまえ,古墳時代の貝塚以外の生業体系. とくに水田 など農耕に関する土地利用の手掛かりを得ることを目的と して. 2014(平成26)年9月11日から17日まで行った 調査参加者は,大西智和(鹿児島国際大学国際文化学部教 授),鐘ケ江賢二(鹿児島国際大学考古学ミュージアム学 芸員). 中村直子(鹿児島大学埋蔵文化財調査センター准 教授),別府佳祐(鹿児島国際大学国際文化研究科学生).
山之口享今井直緒,新美乃里,野元勇介(鹿児島国際大 学国際文化学部学生)である本稿では,発掘調査の概要
と成果今後の展望について報告したい.
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図1手打貝塚周辺遺跡の位置
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2.調査の概要
調査地点は手打貝塚の北側約200mの地点である.手打 貝塚を残した人々が水田耕作をはじめとする農耕を行って いたかどうかの手がかりを得る, という調査目的から、調 査地点は手打貝塚からそれほど離れていない,砂丘の後背 地域を予定したしかし,当該地域は圃場整備が行われて いたため旧地形が改変されていることが予想された.そこ で,その中でも自然河川の流域は圃場整備の影響をあまり 受けておらず,旧河川の利用を含めた土地利用の実態を把 握しうると想定し、そのような条件を満たす地点を選定し た(図2.写真1) なお,調査地点の標高は6.2mほどで ある.以下各トレンチの状況について説明したい.
図2調査地点
1トレンチ
1 トレンチは2m×2mの範囲を設定し掘り下げを開始 した(写真2)40cInほど掘り下げたところで,水が湧き 出したため(写真3),湧水部を避けて,東側にlm拡張し,
掘り下げを進めたしかし,その後も湧水は続いたため,
掘り下げを中止した.
土器が1点出土したが層位は不明である.
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1. 7.5YR4,'3 (褐色)を呈する砂(表土・現代の水田)で、粘性有を有し、 しまり弱い。
2. lOYR4/2 (灰茂褐色)を呈する砂で、炭化物、鉄分わずかに含む。粘性を有し、しまり弱い。
3. 10YR3/3(暗褐色)を呈するシルト質砂で、鉄分を多く含む。粘性を有し、 しまりが有る 4. 5Ⅷ3/2 (オリーブ照色)を呈する粘土で、鉄分を少斌含む。粘性を有し、しまりが有る。
5. 5Ⅷ3/2 (オリーブ色)を呈する粘質シルトで、粘性を有し、しまりが有る。
6. 7.5YR4,'1 (灰色)を呈する砂(川砂>で、粘性としまりは弱い。
7. 7.5YR3/1 (オリーブ肌色)を呈する粘質シルトで、川砂を少且含んでいる。
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図32トレンチ層位断面図(1/20)
2トレンチ
2トレンチは1 トレンチの湧水が止まらないため, その 0.Sm南側に設定したl.5m× lmのトレンチである(写 真4).やはり水が湧き出してきたが,排水しながら掘り 下げを進めた.上層では現代の水田層と思われる層位を確 認できた. 5層までは粘質シルトあるいは粘土質の層が続 き, 4層までは鉄分の沈着がみられる. 4層.s層は黒色
〜オリーブ色の還元色を呈することから,現代の水田層に 関連する層とみられる. さらに深く掘り進めると, 6層.
7層は砂層で,川砂とみられる粗砂を包含し, 7層から湧 水がみとめられる. これらは,旧河川にともなう砂層の可 能性がある.
このように,約l.6m掘り下げても,下位の層からは水 田層のなど生業に関する状況を見出すことができなかった (図3.写真5).ただし,本調査区の層位の状況は,旧河川,
またそれにともなう氾濫原を示す可能性があり,一帯は湿 地帯として過去にさまざまな形で利用されていた可能性が ある. なお,遺物の量が少ないため,それぞれの層の時期 を把握することは現状では困難である.種々の自然科学分 析を行うため, このトレンチから,土壌サンプルを各層ご
とに採取した.
3層と考えられる部位で土器1点と, 6層から木材1点
が出土している.
3.出土資料
出土品には土器の小破片2点(写真6)と木材1点がある.
lはl トレンチから出土したが層位は不明である.器壁 は比較的薄く,弱い屈曲が見られるため,蕊の口縁部付近 の可能性もある.その場合,古墳時代のものであれば成川 式の辻堂原式などに該当するかもしれない.手打貝塚出土 土器によく見られるハケメはこの破片には確認できない が,黒雲母の粒子は多く含まれている.
2は2トレンチの3層に相当すると考えられる部位で出 土した. 口縁端部が残っているようにも見えるが不明であ る. また,緩く湾曲しているが,小破片のため,表裏を決 めることは難しい。内湾していると考えれば鉢,外湾して いると考えれば認の可能性を指摘できる.器壁は比較的薄 く,工具痕と思われる窪みが見られる.表面は磨滅のため か調整はよくわからないが,黒雲母の粒子は観察できる.
木材は2トレンチの6層から出土した.炭化はしておら ず,長さ10cm,幅2.5cm程で, とくに加工痕などは認めら れないため, 自然遺物の可能性が高い.
4.おわりに
筆者らはこれまでに甑島出土土器を対象に圧痕調査を実 施してきた. その結果, イネの検出が少なからず確認され た(大西・真邉ほか2010). また,我々が行った手打貝塚
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薩摩川内市手打貝塚周辺遺跡の発掘調査
写真21トレンチの設定 写真1調査地点
写真42トレンチの設定 写真3 1トレンチ湧水の様子
合 呼埠
藻蕊霧
凸〆 ← 〜
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