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問題解決学習と役割体験 (第2報) : 家庭科の授業 実践の分析を通して

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(1)

問題解決学習と役割体験 (第2報) : 家庭科の授業 実践の分析を通して

著者 青木 幸子

雑誌名 東京家政大学博物館紀要

12

ページ 1‑11

発行年 2007

出版者 東京家政大学博物館

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010276/

(2)

問題解決学習と役割体験(第2報)

一家庭科の授業実践の分析を通して一

青木 幸子

 The Problem Solving Study and Role Experiences(11)

−Through Analyzing the Class Work of Home Economics一

Sachiko AoKI

はじめに

 実践的・体験的学習は、家庭科の独自性の一つとして認識されている。それは、戦後の教育 改革がGHQ−CIE主導の下、当時アメリカの教育界を席巻していた経験学習の流れを汲む学 習指導理論が我が国に紹介されたことが大きい。当時の国民は、敗戦により生活の荒廃が進み、

食うや食わずの生活の中で、最低限度の生活を確保することに躍起になっていた。

 そうした現実の生活を題材にどうしたらこの状況から抜け出すことができるか、個人の資格 で家庭に参加するとはどういうことか、民主的とはどのような状態か、民主的な家庭建設とは どうすればできるのか、その中の家族関係はどうあるべきか、限られた食材でどうしたら家族 の空腹を満たすことができるのかなど、問題山積の家庭生活の復興をめざす取組みとして問題 解決学習は学校現場に迎え入れられた。

 生活現実からスタートして問題解決のための探究活動をし、それを生活に戻し、生活の改善 向上を図っていく学習は、家庭科の指導スタイルとして積極的に取り入れられた。学習者を主 体とした代表的な学習方法として提示されたのは、問題の発見、調査、話し合い(討論)、観 察、記録、実習、示範、説明・講義であった。1)それらの方法は、探究活動において有機的に 採用され授業効果を高めることが期待され、学習者が主体となって取り組む実践的・体験的活 動にウエイトを置く学習は、家庭科の教科の性格と相侯って独自性の一っとして認識されるよ

うになった。

 近年、子どもの実体験の不足からくる理解力の低下という現実を前に、体験的な学習活動を 重視しようとする傾向が強い。各教科とも、学習者の自主的・主体的な学習活動への参加を勧 あるべく、さまざまな学習指導の方法が工夫されている。

 本稿では、前報2)に引き続き、問題解決学習による家庭科の授業実践例を取り上げ、学び における役割体験の意義にっいて検討する。

教職教養科 家庭科教育研究室

1

(3)

1.役割体験の意義とその類型

 前報において述べたとおり、家庭科は、生活の中に潜む問題をとらえ、それを解決するため に必要な科学的知識と実践的能力を育成する。そして、学校で習得した知識・技能を現実の生 活に生かし、実際に生活を改善向上していくことをねらいとしている。この現実の生活への適 用は、学習者に現実世界と向き合う機会を再度にわたり提供し、習得した知識・技能をフル動 員して自己内対話を活発化し、家族や仲間との協同による問題解決の行動化を進める。っまり、

実践的態度の育成に効果的な活動となるのである。

 しかし、家庭科の授業において重視される探究活動としての実践的・体験的学習が必ずしも 問題解決に有益に作用していない現実が一方にあり、他方、学習内容の家庭生活への適用も円 滑に実践化されているわけではない。現実生活の問題的場面において問題を見っけ出すことの できる力は、学習者が感覚的・経験的・活動的に獲得してきた知識や能力などの生活知の豊か さや感性と密接に関わる。生活知はすべての子どもに平等ではない。きわめて私的な学びであ る生活知の落差は大きい。そして、全体的に現代の子ども達の生活知が貧しくなっていること が問題とされているのであり、学校教育において体験的活動が重視される所以である。

 そのような現実を前に、実践的・体験的活動の内容を役割体験の視点から検討し、家庭科の 授業における探究活動の活性化を図ろうとするものである。実践的・体験的活動を主体と環境 に照準を当て、学習効果と家庭生活への適用を促進する方策を探り、自ら学ぶ力を強化しよう とするものである。

 役割体験の類型は前報のとおりであり、主体と環境の二っの項目に、現実と仮想の次元をク ロスさせた4類型である。(表1)

表1 役割体験の四類型

「場」現実 「場」仮想

「主体」現実 第一類型 第二類型

「主体」仮想 第三類型 第四類型

2.役割体験からみた授業実践例の選定基準

 前報と同様、第一の基準は、学習者がみずから問題を見っける実践であることである。見っ けられない場合、学習者の気づきを促す実践であることとする。第二の基準は、学習対象への 認識の広がりがあることである。自己内対話が個人的、あるいは他者との認識の交流によって 促され、社会的・文化的実践への参加に繋がる広がりをもっ実践例であるものとする。

2

(4)

3.第一類型の実践:中学校

 第一類型の実践例として、忽那啓子の「『文化的実践参加』から拓くr学び』一中学家庭分 野『高齢者宅配弁当』の開発と実施検討一」を取り上げる。3)

 授業者は、学校教育が抱えるさまざまな課題を授業の変革によって解決することが近道であ ると考え、学びの転換という視点から迫ることとした。佐伯絆の提唱する「教育を文化的実践 として再構築する」視点から授業開発を行った。

 地元で高齢者向けの弁当の宅配サービスが始まったことを受けて、この実践に参入すること にした。「弁当実習」から始あるのではなく、「実践参加」から始める、この出発点の違いが学 びの転換にっながると考えた。4)

 題材構成と授業内容は表2のとおりである。

表2 「高齢者宅配弁当」探究・実践活動の展開(中学校1年生 20時間)

主題設定

(第一段階)

  ←

探究活動

(第二段階)

  旦

企画実践

(第三段階)

発信評価

(第四段階)

地域の実践「高齢者宅配弁当」に参加しよう         【1時間】

 目標、社会福祉協議会との共同参加(写真パネルによる活動紹介)、実  践者と実践紹介

 「本当に宅配するの?」「160個もっくるの?」

主題に向けて必要な探究活動の展開

 (世の中に通用する知恵と技をめざして、一段と熱が入る)

 食生活 (栄養バランス、食品、お弁当づくりの公式)

 家族生活 (高齢者や家族からの聞き取りより意見交換)

 基本実習 (実習注意、包丁検定、計量検定、調理検定)

探究活動をもとに企画を進めて実践

 献立決定 (全員のアイデア発表により決定、表3参照)

 実習計画 (調理の手順、4つの各栄養班毎に分担考案)

 弁当グッズ (草木染めのお弁当袋づくり、箸入れ、手紙)

 試しづくり (各班同じ献立の調理、試食後アイデア交換)

 実践本番 (実践者来校、各班担当献立調理)

地域の高齢者の方に届けて食べていただこう

 高齢者、社会福祉協議会、他クラス(ビデオ)より評価

【7時間】

【10時間】

【2時間】

「テーブルにおいしそうなお弁当がありました。近所のすみれちゃんが 学校でっくったハンバーグ弁当のプレゼントでした。色合いも詰め合わ せも大変美しく早く頂くことにし、先ずひじきを食しました。おいしい、

プロも負けそう……これからも学生生活を楽しくがんばってください」

(実践記録に筆者加筆作成)

(5)

       表3 4種類のお弁当

(太字は本番前に全員が試しづくり実習した料理。値段には米、調味料、弁当箱代を含む。)

ネーミング 炭水化物班 たんぱく質班 無機質班 ビタミン班 値段 1組  栄養満点

「なりずし弁当 いなりずし

さけのムニエル カゃこだし巻き卵

わかめの酢のもの

@チーズちくわ

肉じゃが

@かき 250円 2組 元気いっぱい

nンバーグ弁当 たきこみご飯 和風ハンバーグ

ひじきととり肉の

@ 煮もの

青菜の卵とじ

@りんご 220円 3組 寿あずきご飯

@ 弁当 あずきご飯

 さばの黄金焼き ノらしょうがだし巻き卵

昆布と大豆の

@煮もの

かぼちゃ煮

@みかん 220円 4組 秋松竹梅

@弁当 四色ご飯

牛肉の野菜巻き ルうれん草卵焼き

ひじきと大豆の

@ 煮もの

大根サラダ ォんとん 300円

(忽那啓子、日本家庭科教育学会誌49−3、p.199より)

 第一類型は、「主体」は現実、「場」も現実である。本実践例は、生徒が問題発見をしている わけではない。授業展開の第一段階では、教師の学びの転換を意図する強い信念に導かれて、

教師から授業テーマが提示され、生徒はいっもの授業とは異なること察知し、「本当に宅配す るの?」「160個もつくるの?」と声を上げるなど、質問やアイデアが飛び交い、教室は熱気に 包まれる。主題の設定者は教師である。生徒にテーマの課題性や学習の必要性は理解されてい

ない。

 そこで、生徒の課題意識を喚起させるために社会福祉協議会の活動を写真パネルで紹介し、

高齢者の宅配弁当と社会福祉協議会の関連をそれとなく気づかせている。

 実践先行で始まった授業ではあるが、「素人ながら世の中の実践に参加するのだから」生半 可な参加はできないとばかりに学習に熱が入る。生徒の意欲を引き出すことに成功している。

 第二段階は、探究活動。クラス全体で目標を達成するための学び合いがスターとする。クラ スで一っのお弁当(40食分)をっくるたあに、クラス毎に「炭水化物班」「たんぱく質班」「無 機質班」「ビタミン班」の4班に分け、全員の料理を担当する「完成方式」を導入する。各班 のメニューの調理を一手に引き受け、しかも量が多いことからグループの協力は不可欠である。

各栄養素を多く含むおかずや高齢者の好み、他のおかずとのバランスなど、活発な意見交換が 展開され、学び合う共同体が構築されていく。同時に、各自が責任を持って実習をするために 各種検定が行われ、「世の中の実践に参加する」ことの意識づけを随所にみることができる。

一般的な調理実習では、事前に実習題材が決められ、各班5〜6名が作業手順を確認しながら 随時分担して取り組む。分担しなかった作業を授業中に体験することは難しいが、共同作業と

して献立を完成し、試食する、という授業展開が多い。

 第三段階は、探究活動の結果に基づいていよいよお客様向けの開発商品を決定し、それを商 品化する段階である。ここでは、単にお弁当づくりだけを体験するのではなく、「お弁当と一 緒に弁当袋、箸入れ、手紙も届けよう」と学習内容が広がりをみせ、ミシン実習、草木染あと

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その技能を習得していく。お弁当を届けるという目標に、自分達の心も併せて届けたいという 生徒たちの心意気が伝わる実践活動の広がりをみることができる。

 第四段階は、いよいよ宅配と試食による評価である。生徒は教師の目論見とした文化的実践 を実感できたのであろうか。生徒は、ある意味、授業のテーマにっいて学習の必要性を意識し ていたわけではなかった。しかし、「高齢者宅配弁当という社会でやっていることができて、

役に立っということがあってうれしかった。これからも学んだことをいっぱい使っていこうと 思えた」「社会福祉協議会の人に来てもらって、本当に自分が高齢者弁当をっくることころで 働いている感覚を感じた」「一番大きく学び得たものは、人とのふれあいだと思う。班の人と 一緒に社会福祉協議会の人にアドバイスしてもらい、高齢者の人に届ける。たくさんふれあっ た。いろんな人の立場になって考えられた」5)にみられるように、当初の無関心さはいっしか 実際のお弁当製作者へとその立場と意識は変換しており、臨場感を持ってお弁当づくりに携わっ ていたことが分かる。このことからも、この授業が文化的実践の学びに有効であったと評価で きるであろう。また、「お弁当づくりという大きな目標があり、それに向けて大変だった授業。

これからもこんな大きな目標があればもっと授業に力が入る。4っの流れのようにやっていき、

1つ1つの内容がよく理解できる授業が何個もあった」6)の記述にみられるように、問題解決 のプロセスを辿ることによって生活知をうまく取り込んだ系統的な学びをっくりだせる可能性 が高いことが推察された。

 生徒たちはこの授業をどのように評価しているのであろうか。第一に、生徒たちは達成感を 味わい、自信を獲得したことである。「自分から社会に向けていろんなことに挑戦したらたく

さんのことにっながり合える。自分はがんばればこんなにもやる気が出るんだなあと、自分の 新しい一面を見ることができた」7)という自由記述を裏付けるように、社会福祉協議会をはじ

めさまざまな人からアドバイスをもらい、互いにアイデアを出し合って40食分の調理をし、弁 当屋さながら盛り付けを工夫し、たくさんの人に喜んで食べてもらえたことなど、そこには人 や文化とのっながりがあったことが大きな理由となっている。

 第二は、学ぶ楽しさや学び合うことのおもしろさを実感したことである。班で協力しあいな がら調べ学習ができたこと、よりよいお弁当づくりに向けて黒板一杯のたくさんの意見が出さ れ、みんなの英知を集めて一っの献立を決定し・調理できたこと、さらに箸入れや手紙など弁 当グッズの作成へと興味が広がっていったこと、などから裏付けることができる。興味の広が りにより生徒が学習内容を決め、お弁当に潤いや癒しを提供する大きな役割を果している。

 第三は、当初、生徒は学習課題を課題として認識していなかった。それがさまざまな人や物 と繋がりあうことによって学ぶ意味を理解していった。「これなら真剣にやれるってやりなが ら思った」「お弁当を食べてもらい喜ばれ、いいこと家庭科の授業でやったなと達成感を味わ う。その気持ち、やる気を積み重ねる。それを勉強するのかなあ?」8)の記述にみられるとお り、学ぶ楽しさやおもしろさを実感できる授業は、意欲の喚起と持続にっながることを生徒自 身が自問している。

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 第四に、この授業を通して調理の技能や栄養・食品にっいて理解を深めることができたこと である。「自分で力がっいたとわかるぐらい勉強になった。今までは弁当の栄養バランスもよ くなかったけど、今はしっかり考えられるようになり、自分に自信が持ててとってもよかった。

ご飯中にお母さんにおかずの栄養素を知らせてご飯が楽しくなった」9)との記述がみられる。

また、「目標達成度と授業との関連」をみると、お弁当づくりをとおして栄養と食品の知識、

食品の選び方、包丁・計量検定による技能がよく分かったと答えている。

 以上のように、本実践例は、教師の社会的・文化的実践への参加を意図して開発された題材 であるだけに、授業展開も直接、実践参加にっながるよう工夫されている。生徒は学習課題の 意図も不十分なまま学習に取り組むことになったが、かって経験したことのない授業展開に楽

しさとおもしろさを感じながらその意図に気づき、目的をより鮮明にしていく。「主体」も

「場」も現実であることの強みであろう。主役は自分たちであり、お弁当という作品を通して 評価されるのも自分たちである。否が応でも熱意も意欲も湧き上がるシチュエーションとなる。

一っの作品をみんなで協力して知恵を出し合い、力を合わせて作り上げる喜び。そこに顔が見 えても見えなくても心を込めて作品を仕上げることのモラールを感じ取り、そのことに対して 喜びを返してもらえるという実体験に勝るものはないであろう。っながりあいながら、自分達 の作品を仕上げたことの達成感は新たな経験の再構成を生む原動力となろう。

 この教室での学びの感動を自らの実生活にどれだけ生かしていくことができるかも課題であ る。先に学習の成果が家族で囲む食卓での会話として家庭に還元されていたが、毎日の食生活 を見っめ、よりよい生活を志向する実践的態度の定着を図っていくような働きかけが必要であ る。また、このような授業実践を通して、生徒がみずから問題を発見できる力をっけるように なることも、こうした学習の積み重ねによってできるのではないかと考えられる。

 「高齢者宅配弁当」の製作をとおして、人と文化と社会とのっながりをもちながら、ともに 学び合うことの楽しさとおもしろさを味わい、食生活への関心を高め、製作したお弁当を評価 してもらう、という一連のプロレスによる学びが次への意欲をわかせてくれる、っまり経験の 再構成を促す授業であったことを評価したい。この取組みに栄養や食品に関する系統的な知識・

理解がどの程度達成されているかを確認してみたいところである。

4.第四・三・二・一類型の実践:高等学校

 同じ高齢者を対象とした実践として、次に高等学校の実践例を取り上げる。「少子高齢化と わたしたち」1°)は、我が国における重大な社会問題である少子高齢化を生徒たち自身の課題と

して捉えさせるために開発された。本題材は、核家族化・少子化のなかで、高校生が乳幼児や 高齢者と接する機会は少なく、だからこそ理解しにくい状況を踏まえ、「異世代の交流」を盛

り込んだ授業計画である。この計画は、高校1年生を対象に、一年間をかけて、家庭科の衣・

食・住・家族・保育の各領域と係わり合いをもたせながら、高齢者・幼児を理解し、コミュニ

(8)

ティの一員としての役割を考え、行動できることをねらいとしている。

指導計画と授業ごとのねらいや内容、授業後の気づきは、っぎのとおりである。

表4 少子高齢化とわたしたち(14時間)

1.高齢化と少子化の到来とこれから ………・… ……・・…・………・…1時間  ・日本の人口推移と将来推計人口のグラフを基に、自分たちの高齢期を予測する  ・居住地域の高齢化率を調べ、50年後を予想し、社会に起こる変化を考える

2.高齢者のイメージ ・…・………・………・・…・・………1時間  ・高齢者の身体の各部の変化に気づく。また、それへの対応を理解する

 ・精神的な変化に気づき、心身の状況を的確に把握する  ・高齢者の身体の様子を想像してプリントに記入後、発表する

 *「あ一あ、年取りたくない」「最悪じゃあ」「高齢者のよさもある」(知恵袋、物知り、

 生き字引、穏やかさ、やさしさ)

3.高齢者模擬体験としてパソコンを使った白内障模擬i体験実習 …・・………1時間  ・コンピュータグラフィックソフトと黄色セロハンを利用して白内障の模擬体験をし、

 生活環境の改善の必要性に気づかせる

 *自分たちが見ている色と全く違う色があることに気づき、驚きの声が上がる

  「先生一見て見て〜」高校生の初めての発見。「白と黄色が同じように見えて見にくかっ   た」「紫が茶色に見えてショックを受けた」「私とお年寄りの見える色が違うことが初   あて分かった。予想外だった」「常に高齢者への気配りが必要」「危険なところに似て  見える色を使わない」「高齢者の気持ちが少し分かった」

4一①生活バリアフリー調査 …………・・……・・…・夏休みホームプロジェクト  ・新聞記事「文字を大きくした本が人気」と高齢者・障害者用に最近改良された商品例   を提示。

 *課題:工夫されているものの発見、不自由なものの改善策を考える

4一② バリアフリー調査報告会 …・………・……・……・・……・1時間  ・バリアの再発見、深化を促し、問題点をクラスで共有した

4一③消費者として企業ヘバリアフリー調査結果の提案 ………・……・…1時間  ・各自のレポートやクラスの意見を合わせて手紙を書き、関係企業や機関に送った  *例)シャンプー容器の改良

5一①昔からある遊びの聞き取り調査 ………冬休みホームプロジェクト  *身近な人から、子どもの頃の遊びやその遊び方、道具のっくり方を聞き取り調査

5一②昔からある遊びの調査と報告会 ………2時間

 *石蹴りやお手玉が外国でも同様に遊ばれていること、地域によりルールや呼び名が異

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  なることを発見。身振り手振り、黒板を使った笑顔の熱演に拍手

 *例)缶蹴り、ゴム飛び、陣取り、縄跳び、葉っぱ飛ばし、竹とんぼ、じゃんけん、S   けん、囲碁、川遊び、ぶちごま、杉の実鉄砲、かごめかごめ、缶ぽっくり、石蹴り、

  くぎ立て、竹馬、氷鬼など

5一③福祉施設、保育所の訪問に向けた遊び道具作り及び遊び方の練習 ……4時間  ・福祉施設訪問に向け、交流のための班編成をし、交流計画とその準備計画を考える  *道具作りと遊びの実演練習をする。伝承遊びを知り、伝承者となる

 *例)お手玉、あやとりのひも、パズル、福笑い、折り紙、こま、紙工作など

5一④遊びを通して異世代交流一デイサービスセンター・保育所訪問一 ……2時間  *同じ建物内で隣り合うデイサービスセンターと保育所で、1クラス2班に分かれ交流。

6.評価とまとめ・今後の課題 ・・………・…・………・… 1時間

(実践記録に筆者加筆作成)

 高等学校の家庭科では、人の一生を生涯発達の視点でとらえ、各ライフステージの課題をと りあげ、家族の一員としてその役割を果し、家庭を築いていくことの重要性を認識させること をねらいとしている。本題材は、人の一生から見たら幼児期と高齢期の異なるライフステージ を「福祉」の視点から構成しなおし、日頃、高校生が触れ合う機会の少ない異世代を見っめ、

理解するために、一年間という長いスパンで交流体験を実践するよう計画されたところが目新 しい試みである。高校生にとって幼児は遠い過去のこと、高齢期はず一と先のことであり、そ の中に自分を投入して考えることは容易なことではない。

 本実践で試みられた体験は、取り立てて珍しい実践というわけではなく、逆にオーソドック スな授業展開であるともいえる。ただ、指導期間が一年の長きにわたることと体験の種類が多 いことを除いて。

 本授業展開の中には、生徒の主体的な学習活動がふんだんに盛り込まれている。それらの一 っ一っが題材の中心となる体験にも匹敵するものである。そうした体験活動は、あるものは第 四類型に、あるものは第三類型に、あるものは第二類型に、あるものは第一類型に分類するこ とができる。ここではさまざまな類型の体験活動を一度に体験することができるのが特徴であ

る。

 限られた授業時数の中で、このような多くの体験を計画することは、内容に関連する知識・

理解をどのように体系的に組み入れていくのであろうか、気になるところである。

 学習題材と生徒の距離を縮めるために、少子高齢化の現状と将来予測を自分たちに置き換え て学習させ、地域社会の変化の様子を併せて理解させ、学習題材の課題性を認識させる授業設 定をしている。学習課題の意味を理解した上で、次に高齢者の心身の変化と特徴を理解させる。

8

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表4中の1・2の少子高齢化社会の現状と課題、高齢者の心身に対する理解については科学的・

客観的・系統的な理解が求められる内容である。学習指導要領では、高齢期のライフステージ に関して、高齢者の心身の特徴と生活にっいて理解させ、高齢者の自立生活を支えるために家 族や地域・社会の果す役割を認識させることとしている。このような理解があって初めて、次 の段階の体験が意味のある活動になるわけである。

 パソコンによる高齢者疑似体験は、「主体」は仮想、「場」も仮想の第四類型の役割体験であ る。加齢とともに現れる白内障を患っている人の見え方を体験するもので、「主体」も「場」

も想像した状況設定で行われる体験である。ここで彼らは、自分たちが目にしている色とは明 らかに違う見え方をすることに驚き、改めて白内障を患う人の色の識別の困難さを実感する。

この気づきを、「高齢者への気配り」や「気持ちの理解」にとどめるのではなく、「危険なとこ ろに似て見える色は使わない」ための社会への働きかけにっながる実践的態度の育成が期待さ

れる。

  「生活バリアフリー調査」に基づく企業への提案は、第三類型の体験である。「主体」は仮 想であるが、「場」は現実の役割体験である。この中に先の色の識別に関する提案が含まれて いたかもしれない。自分たちの学習の成果を、高齢者政策として検討してもらうために提案す ることは、前述の中学校の忽那実践の「社会的・文化的実践への参加」に該当するものであり、

地域社会の一員として自分たちにできることを実践させるものである。「手紙の書き方に戸惑 いがあった。また、考えを文章や図で表すことは生徒にとっては想像以上に難しい作業となり、

手間取った」11)そうである。このような経験をとおして、社会に参加することの意味を理解し、

自覚と責任を伴った実践的能力を養っていくものと思われる。この第三類型の体験には、バリ アフリー調査、昔からある遊びの聞き取り調査も該当する。

 福祉施設等の訪問に向けた遊び道具作りと遊び方の練習は、第二類型の役割体験である。

「主体」は自分たち、「場」は教室である。しかし、この場で遊び方を制御するのは福祉施設や 保育所であり、現実の場を意識しながら現実に近い仮想で練習を繰り返す。

 デイサービスセンターと保育所訪問は、第一類型の体験である。「主体」は自分たち、「場」

は現実の施設である。施設での体験は、現実社会のルールの下に行われる。そこには予期せぬ 発見もある。「(訪問前)訪問する前は、お年寄りと触れ合うのは正直いやだった。家には年寄 りはいないので、どう接すればいいかわからない。でも教室でする授業よりは楽しみがあった。

(訪問後)今回初めてお年寄りと触れ合った。お年寄りと百人一首をしたが、お年寄りは探す のが遅い。それで、手加減する自分の優しさに気が付いた。それに、お年寄りの中には目がよ く見えない人や一人では何もできない人がいた。だからその人達の手助けをする人は素晴らし いと思った。僕たちに何かを伝えようとするお年寄り達を見て、僕らが来るのを本当に楽しみ にしていてくれたんだなあと思った。今の時代、核家族が多いが、そんな中で今回はよい体験 ができたと思う。これからの社会はお年寄りが増えるであろうから、これからの人生の何らか

の役に立っであろう」。12)

(11)

 「(訪問前)訪問はとても楽しみだった。でも子どもたちが寄ってくるか不安だった。(訪問 後)保育所では、はないちもんめと砂遊びや鉄棒、ぶらんこをした。子供と触れると子供の体 温は温かかった。みんなが寄ってきてくれて嬉しかった。やっぱり、子供は元気だと思った。

子どもたちの意見がバラバラでまとめるのが難しかった。そして、いろいろな性格の子がいた。

保育所に行ってよかった。子供と一緒に遊ぶのは大変だけど自分まで子供に返ったみたいで楽 しかった。また行きたいと思った」。13)

 自分の優しさに気づいたり、学習したことを追確認したり、相手の気持ちを推し量ったり、

肌で感じる子どもの温かさと無邪気さ、自分への振り返りなど、現実体験は活字では実感でき ないことを分からせてくれる。

 このような多様な体験をした学習の中から、生徒はどのようなことを学んだのであろうか。

授業前後の評価結果から比較してみよう。評価の基準は、「5非常に関心がある」「4やや関心 がある」「3ふっう」「2あまり関心はない」「1全く関心がない」である。

 まず学習内容である「高齢者との交流」「幼児との交流」「高齢者にやさしい街」「高齢者の 生活環境づくり」「バリアフリーの必要性」「高齢者の身体的特徴」「自分の高齢化」「少子高齢 化」の8項目にっいて、すべて関心度は高くなっている。授業後の関心度の高い順に「バリア フリーの必要性」3.4、「高齢者の生活環境づくり」3.0、「高齢者との交流」「幼児との交流」

「高齢者にやさしい街」2.7、「自分の高齢化」「少子高齢化」2.5、「高齢者の身体的特徴」2.3で ある。これを授業前後の関心度の差でみると、もっとも差の大きかった、っまり授業効果の高 かった項目は、「バリアフリーの必要性」で、差は0.8である。以下1順に、「少子高齢化」「高齢 者の身体的特徴」の0.7、「高齢者との交流」「幼児との交流」の0.6、「高齢者の生活環境づく

り」「自分の高齢化」の0.5、「高齢者にやさしい街」の0.4である。

 この評価結果をどのように解釈したらよいだろうか。「ふっう」以上の項目からみる生徒の 意識は、「バリアフリーで高齢者の生活環境を整えましょう」で終わってしまっているように 思われる。その他の項目は「ふっう」以下、「あまり関心がない」のである。我が国の高齢者 政策が関心を持っ必要がないほど充実しているのであれば喜ばしいことである。

 授業者が、題材構成を工夫し、自分の問題として体験をとおして気づかせ、考えさせようと 意図した「福祉」の考え方、あり方であったが、認識を高めるためには継続した取り組みが必 要なことを示唆している。今後異世代交流を68%の人が「機会があれば希望する」と答えてい

ることも心強い。

 すべての役割体験の類型を備えた本実践であるが、体験が学習に対して新たな問いを準備す ることに繋がっていないように思われる。それは課題がいっも教師から提示されており、生徒 同士の意見のぶっかり合いや認識の違いによる問題の練り直しの場面が見当たらない。体験に 裏づけられた問いによる生徒の主体的な学習内容への参加を期待したい。それが、物事を相対 化してみる生徒の視野を広げることになる。そのことはまた、自己教育力を育むことにっなが

り、家庭科の実践的態度に不可欠の手続きとなると考えられる。

(12)

 以上、前報に引き続き家庭科の授業実践例を役割体験の類型により分析し、学習者を主体と した学びの特徴を理解してきた。実践的・体験的学習を独自性とする家庭科の役割体験の意義 を確認することができたが、同時に課題も明らかになった。体験はあくまでも学校知としての 科学的認識を育むための手段であり、体験が目的ではない。授業時数の削減の中で、体験に割

く時間数と科学的認識を育む時間数とのせめぎあいの中で、学習者にとって「主体」と「場」

の最良の組み合わせを模索していく中で、科学的な認識力と実践的態度を併せて育成すること のできるカリキュラムの編成をめざして検討を進めていきたい。

1)文部省:昭和22年度学習指導要領 家庭科編(試案).東京,日本書籍1947,pp.6〜8 2)青木幸子:問題解決学習と役割体験一家庭科の授業実践の分析を通して一.東京,東京家   政大学研究紀要 第47集(1)人文社会科学,2007

3)忽那啓子:「文化的実践」から拓く「学び」.日本家庭科教育学会誌49−3.東京,日本   家庭科教育学会,2006,pp.197−202

4) 3) p.197 5) 3) p.200 6) 3) p.200 7) 3) p。200 8) 3) p.201 9) 3) p.202

10)山野京子・入江和夫:異世代の交流による「福祉」理解のための授業展開の研究.日本家   庭科教育学会中国地区会:新しい時代に対応した家庭科の学習開発一福祉と総合学習を中   心にして一島根,日本家庭科教育学会中国地区会,2002,pp.49〜54

11) 10) p.51 12) 10) p.53 13) 10) p.53

参照

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出場者名  :  学校栄養職員 樋口宮子、調理員 柿崎由利子 エネルギー 685  kcal    マグネシウム 118  mg    ビタミンB 2  0.54  mg たんぱく質 26.0  g    鉄 3.0  mg     

栄養成分表示 1食(○g)当たり エネルギー ○kcal たんぱく質 ○g 脂質 ○g 炭水化物 ○g 食塩相当量 ○g カルシウム ○mg. 鉄

・ 総務班は,本部長が 5 号機 SE31

情報班 技術班 復旧班 保安班 発電班 資材班 厚生班 医療班 総務班 警備誘導班. 原子炉主任技術者

情報班 技術班 復旧班 保安班 発電班 資材班 厚生班 医療班 総務班 警備誘導班.

②復旧班員,発電班員 良 特になし 今後も継続的に訓練を行い,能力の 向上を図る。.

靴下加工班 受託作業 靴下・テーブルソックス表返し作業、ダンボール回収 野菜班 自主作業 野菜の栽培・収穫.. 受託作業

本部長は,2 号機,3 号機及び 6 号機の SFP 漏えい事象が同時に発生した場