原 著
Original article精神疾患合併妊娠 137 例における
胎児・新生児の合併症と服薬との関連性について
高田 宏宗
*1柳田 誠
*1富岡 孝仁
*1金井 講治
*1高屋 雅彦
*1木村 亮
*1影山 祐紀
*1竹村 昌彦
*2丸山 朋子
*3田尻 仁
*3松永 秀典
*1Examination of pregnancies in patients with psychiatric disorders: the relationships
between fetal or neonatal complications and maternal psychotropic drug use
Hiromune Takada*1, Makoto Yanagida*1, Takahito Tomioka*1, Koji Kanai*1,
Masahiko Takaya*1, Ryo Kimura*1, Yuki Kageyama*1, Masahiko Takemura*2,
Tomoko Maruyama*3, Hitoshi Tajiri*3, Hidenori Matsunaga*1
*1 Department of Psychiatry, Osaka General Medical Center, 3-1-56 Bandaihigashi, Sumiyoshi-ku, Osaka city, 558-8558, Japan
*2 Department of Obstetrics and Gynecology, Osaka General Medical Center
*3 Department of Pediatrics, Osaka General Medical Center
Abstract:In this study, we assessed the relationship between the use of psychotropic drugs and fetal and neonatal complications encountered in patients with psychiatric disorders. From July 2007 to March 2012, 137 mothers with psychiatric disorders gave birth in our hospital. Ninety-nine mothers used psy-chotropic drugs within 12 weeks of pregnancy. There were 7 cases of miscarriage. However, they were not associated with the use of psychotropic drugs. There were 8 cases of malformation. All these moth-ers used psychotropic drugs within 12 this period. Among them, older mothmoth-ers were more vulnerable to malformation risk (≥35 years: 6/30 cases; <35 years: 2/69 cases; p = 0.0041). The number of psychotropic drugs used was associated with higher malformation risk (p = 0.0021). Complications other than miscar-riage and malformation were classified as complications that would be induced by the use of psycho-tropic drugs just before delivery and other complications. The incidence of each complication was 50% higher in the group that used psychotropic drugs after 12 weeks of pregnancy than in the group that did not. Thus, our findings indecate that the co-existence of psychotropic drug use, especially multidrug use, and older age may be associated with malformation in neonates of mothers with psychiatric disorders. Key words: Pregnancies in patients with psychiatric disorders, Psychotropic drugs, Neonate,
Miscarriage, Congenital malformation
序 言
近年,精神疾患に対する社会的な認識の変化や 保健所を中心とした地域支援体制の整備,治療法 *1 大阪府立急性期・総合医療センター精神科(〒 558-8558 大阪市住吉区万代東 3-1-56) *2 大阪府立急性期・総合医療センター産婦人科 *3 大阪府立急性期・総合医療センター小児科の進歩などに伴い,精神疾患を合併する女性の妊 娠・分娩が増加している1)。精神疾患合併妊婦の 管理や,新生児の sleeping baby や薬物離脱症状 といった出生直後の問題に対する管理についての 報告もみられる2)。 当センターでも精神疾患合併妊婦の受診が急増 し,多数の出産を経験している。精神疾患合併妊 婦の多くは計画的妊娠ではないため,妊娠が判明 した時点まで服薬していることが多い。また,ほ とんどの向精神薬は,催奇形性に関する明確な証 拠がなく,有益性投与が可能であるため,妊娠初 期に向精神薬を服用していても妊娠を継続するこ とが多く,必要最小限の薬物療法が継続されるこ とも少なくない。 今回われわれは,自験例 137 例について,精神 疾患合併妊婦の服薬と胎児・新生児の問題との関 連性を検討した。
対象と方法
2007 年 7 月 か ら 2012 年 3 月 に お け る 当 セ ン ターで出産した精神疾患合併妊婦で,精神科も受 診した出産 137 例(流・死産 7 例を含む。新生児 数は単胎 129 例,双胎 1 例で計 131 例)について, 後方視的に母親の分晩時年齢,精神疾患の診断, 向精神薬の服薬の有無を調べた。精神疾患の診断 は ICD-10 に基づき当センター精神科担当医が 行った。 今回の検討では,抗精神病薬,抗うつ剤,抗不 安剤・睡眠導入剤(ベンゾジアゼピン系薬剤,ゾ ルピデム,ゾピクロンなど),抗てんかん薬,そ の他(抗パーキンソン薬,炭酸リチウム,抗ヒス タミン剤など)を向精神薬に含めた。ベゲタミン A および B はクロルプロマジン,塩酸プロメタ ジン,フェノバルビタールの合剤のため 3 種類の 薬剤とみなし,フェノバルビタールは抗てんかん 薬に含めた。向精神薬以外の薬剤(ロキソプロ フェン,レバミピド,ファモチジンなど)を服用 していた例が少数あったが薬剤数の集計から除外 した。 妊娠中の内服は,一般的に 12 週を区切りとし て催奇形性が問題とされている3, 4)。そこで,12 週以前・以降に内服していた群を,それぞれ 12 週以前内服群・12 週以降内服群とした。同様に 12 週以前・以降に内服していなかった群を,そ れぞれ 12 週以前非内服群・12 週以降非内服群と した。 胎児・新生児に関しては,出生時の週数,体重, APGAR スコア,合併症を調べた。胎児・新生児 の合併症を検討する際には,まず,診療録に記載 されている新生児の身体的な病態を調査した。次 にそれらを,薬が胎児・新生児に及ぼし得る影響 という視点から,以下の 3 つに分けて検討した。 ①流産(死産含む):奇形:奇形の診断は ICD-10 の先天奇形,変形および染色体異常の項目に 基づき行った。 ②出産直前の内服によって生じ得る症状:妊娠 中の母体が摂取した薬物が分娩時まで胎児に残留 した結果起こり得る新生児薬物離脱症候群および 過鎮静を想定し,新生児一過性多呼吸,新生児仮 死,易刺激性・振戦,筋緊張低下,無呼吸発作, 呼吸不全を含めた。 ③その他の問題:低出生体重,新生児黄疸,胎 便吸引症候群,羊水混濁,低血糖,肺炎,軽度水 腎症,貧血,中毒疹を含めた。 なお,双胎,新生児合併症を検討する際には双 生児は 2 例として計算した。 データは匿名化し,報告にあたっては個人が特 定されることのないよう配慮した。本研究は大阪 府立急性期・総合医療センター倫理委員会の承認 を得て実施した。 2 群間の比較にはχ2検定を用い,奇形発生と 服用薬剤数との関連比較についてはマン・ホイッ トニ検定を使用した。結 果
今回検討した 137 例の妊婦に合併した精神疾患 は,F0 器質性精神障害 1 例,F1 精神作用物質に よる障害 7 例,F2 統合失調症 24 例,F3 気分障 害 27 例,F4 神経症性およびストレス関連障害 53 例,F5 摂食障害 2 例,F6 人格障害 15 例,F7 精神遅滞 5 例,G40 てんかん 3 例であった。なお 重複する診断を有する症例については臨床上重要な診断を採用した。 妊娠 12 週以前と以後に分けた内服・非内服群 の症例数および,それぞれの群に関する母体・新 生児の基本的データを Table 1 に示す。 妊娠 12 週以前に内服していた向精神薬の内訳 は,抗精神病薬 40 例,抗うつ剤 43 例,抗不安 剤・睡眠導入剤 77 例,抗てんかん薬 26 例,その 他 11 例であった。 1.流産(死産含む),奇形 今回検討した 137 例中,流産 6 例,死産 1 例, 末梢性肺動脈狭窄 1 例,末梢性肺動脈狭窄+漏斗 胸 1 例,口蓋裂 1 例,多嚢胞形成腎 1 例,動脈管 開存+心室中隔欠損 1 例,ダウン症 1 例,水腎症 1 例,耳介低位 1 例を認めた。流産・奇形を生じ た母の年齢,精神科診断,服薬内容・時期を Ta-ble 2,3 に示す。 流・死産と服薬の関連をみると,12 週以前内 服群 105 例中 6 例(5.7%)で流産が発生し,12 週以前非内服群 33 例では 1 例(3.0%)に死産が 発生した(p = 0.54,χ2検定)。他方,流・死産 の発生を年齢別にみると,35 歳未満の 98 例中 2 例(2.0%)に対して,35 歳以上では 40 例中 5 例 (13%)(Table 2),となり有意差を認めた(p = 0.011,χ2検定)(Fig. 1)。 次に奇形についての結果を示す。解析をするに あたって,流・死産症例を除く 131 例の新生児を 対 象 と し た。12 週 以 前 内 服 群 の 99 例 中 8 例 Table 1.母体・新生児の基本データ 基本データ 12 週以前 内服あり 12 週以前 内服なし 12 週以降 内服あり 12 週以降 内服なし 母体症例数(人) 99 32 80 51 分娩時年齢(歳) 31.80 ± 5.4 29.20 ± 5.5 31.80 ± 5.6 29.60 ± 5.1 分娩時週数(週) 38.0 ± 1.7 38.5 ± 1.7 38.0 ± 1.8 38.4 ± 1.4 体重(g) 2,846 ± 484 2,959 ± 378 2,841 ± 471 2,947 ± 422 Apgar score 1 分値(7 点以下:%) 12 12 11 1.9 Apgar score 5 分値(7 点以下:%) 3 0 3.7 0 Table 2.流産症例 診断 年齢(歳) 12 週以下内服 12 週以降内服 向精神薬 不安障害 31 あり ─ パロキセチン 10mg 解離性障害 レボメプロマジン 5 mg 双極性障害 34 あり ─ クロルプロマジン 25mg ゾルピデム 10mg ロルメタゼパム 2 mg ブロマゼパム 8 mg 不安障害 35 あり ─ エチゾラム 0.5mg ブロチゾラム 0.25mg ロフラゼプ酸エチル 2 mg ニトラゼパム 5 mg ゾルピデム 10mg クロラゼプ酸エチル 7.5mg 統合失調症 37 あり ─ リスペリドン 3 mg パニック障害 39 なし あり ロラゼパム 0.5mg 統合失調症 40 あり ─ ペロスピロン 8 mg 双極性障害 44 あり ─ セルトラリン 50mg ニトラゼパム 5 mg バルプロ酸 800mg ブロチゾラム 0.25mg アルプラゾラム 0.8mg
Table 3.奇形症例 診断 年齢(歳) 12 週以前内服 12 週以降内服 向精神薬 奇形 知的障害 21 あり あり オランザピン 5 mg 先天性水腎症 適応障害 クロナゼパム 0.5mg スルピリド 50mg 以下不定期服用 ブロチゾラム アルプラゾラム トリアゾラム エチゾラム ベゲタミン A バルプロ酸 ニメタゼパム 覚醒剤後遺症 34 あり あり フルニトラゼパム 2 mg 耳介低位 不眠症 ゾルピデム 10mg ベゲタミン A1T 情緒不安定性人格障害 36 あり あり エチゾラム 2 mg 多嚢胞異形成腎 パニック障害 ブロマゼパム 15mg ニトラゼパム 5 mg ロフラゼプ酸エチル 1 mg ミアンセリン 10mg ブロチゾラム 0.25mg 統合失調症 36 あり あり スルピリド 100mg ロラゼパム 1.5mg ブロチゾラム 0.25mg リスパダール 2 mg ハロペリドール 5 mg 末梢性肺動脈狭窄 パニック障害 37 あり あり アルプラゾラム 0.8mg 動脈管開存 心室中隔欠損 統合失調症 38 あり あり リスペリドン 6 mg ダウン症 知的障害 ロラゼパム 3 mg ブロチゾラム 0.25mg エチゾラム 1 mg ヒドロキシジン 25mg フルニトラゼパム 2 mg クアゼパム 15mg レボメプロマジン 100mg ハロペリドール 3 mg てんかん 38 あり あり バルプロ酸 1,600mg 末梢性肺動脈狭窄 パニック障害 カルバマゼピン 800mg フェニトイン 75mg イミプラミン 75mg エチゾラム 2.5mg トフィソパム 100mg ブロチゾラム 0.25mg ロヒプノール 2 mg トラゾドン 25mg 漏斗胸 パニック障害 40 あり あり パロキセチン 20mg ブロマゼパム 12mg ゾルピデム 20mg 口蓋裂
(8.0%)に奇形を生じ,12 週以前非内服群 32 例 には奇形はみられなかった(p = 0.097,χ2検 定)。12 週以前内服群を年齢別にみると,35 歳以 上の 30 例中 6 例(20%),35 歳未満の 69 例中 2 例(2.9%)に奇形を生じ,統計的に有意な差が 確認できた(p = 0.0041,χ2検定)(Fig. 1)。 次に,妊娠 12 週以前に内服していた向精神薬 の薬剤数と流・死産,奇形との関連を Fig. 2 に 示す。流・死産と薬剤数との間には関連を認めな かったが(p = 0.55,マン・ホイットニ検定), 奇形に関しては,薬剤数の増加と奇形の発生との 間に有意な相関を認めた(p = 0.0021,マン・ホ Fig. 1.流産・奇形の頻度(12 週以前内服群,年齢別) Fig. 2.流産・奇形の頻度(12 週以前内服群,服薬数別)
イットニ検定)。 2.出産直前の内服によって生じ得る症状 この項に含めた各症状の症例数は,新生児一過 性多呼吸 9 例,新生児仮死 4 例,易刺激性・振戦 3 例,筋緊張低下 2 例,無呼吸発作 1 例,呼吸不 全 1 例であった。12 週以降内服群は 80 例中 14 例(18%),12 週以降非内服群では 51 例中 6 例 (11%)でこれらの症状を認め,12 週以降内服群 のほうが問題発生率が高かった。しかし,有意差 は認めなかった(p = 0.37,χ2検定)。なお,12 週以降内服群のすべてが,出産直前まで内服を継 続していた。 母体の年齢別に検討すると,35 歳未満の 96 例 中 12 例(13%),35 歳以上の 35 例中 8 例(23%) でこれらの症状を認めたが,有意差は認めなかっ た(p = 0.14,χ2検定)。 次に 12 週以降内服群(合計 78 例)を年齢別に 検討した(Fig. 3)。35 歳以上では 28 例中 8 例 (29%),35 歳未満では 52 例中 6 例(12%)に問 題 を 認 め た が, 有 意 差 は 認 め な か っ た(p = 0.055,χ2検定)。 3.その他の問題 上記 1,2 以外の問題として,低出生体重 13 例, 新生児黄疸 5 例,胎便吸引症候群 3 例,羊水混濁 2 例,低血糖 2 例,肺炎 2 例,軽度水腎症 2 例, 貧血 1 例,中毒疹 1 例を認めた。12 週以降の内 服の有無に基づく比較を行ったところ,12 週以 降内服群は 80 例中 23 例(29%),12 週以降非内 服群は 51 例中 9 例(18%)に問題を認めた。し かし,両群間で有意差は認めなかった(p = 0.14, χ2検定)。 母体の年齢別に検討すると,35 歳未満の 97 例 中 24 例(25%),35 歳以上の 34 例中 8 例(24%) でこれらの症状を認め,両群間で有意差を認めな かった(p = 0.88,χ2検定)。
考 察
まず流産・死産に関しては,妊婦が高齢である ことが流産の明らかな危険因子であることが知ら れているが,本研究でも,35 歳以上で発生率が 有意に高かった。一般人口における流産の発生率 は,35 歳以上で 30%とされている5)。本研究に おける 35 歳以上の妊婦 39 例中 5 例(13%)とい う発生率は,一般的な発生率よりむしろ低かっ た。これは,流産してしまったために当センター 受診に至らなかった症例が少なからず存在したこ とによると思われる。本研究では,12 週以前内 Fig. 3.出産直前の内服によって生じ得る問題(年齢別)服群と非内服群の間に有意差を認めず,流産・死 産に関しては,妊娠中の向精神薬内服による影響 は認められなかった。 次に奇形に関しては,本研究では流産・死産を 除く 131 例中 8 例(6.1%)に奇形を認めた。12 週以前非内服群が 32 例と少数だったため,12 週 以前の内服の有無で有意差は認めなかったもの の,8 例全例が 12 週以前内服群に含まれていた。 12 週以前内服群のうち,妊婦が 35 歳以上では 29 例中 6 例(21%),35 歳未満では 69 例中 2 例(3%) となり,高齢群で奇形の発生率が有意に高かっ た。 服用していた薬剤の量に関しては,たとえば抗 精神薬であればクロルプロマジン換算という方法 があるが,このような等価換算は,抗精神病作用 に関して経験的に導き出されたものであり,抗精 神病作用が奇形をもたらす強さと一致するとは考 えにくい。他方,薬剤の種類が多ければ胎児の組 織への非生理的な刺激が多彩になり,奇形を引き 起こす危険は増大すると推測される。このため, 服用していた薬剤の種類と奇形の関連について若 干の検討を行った。 本研究では,12 週以前に服用していた薬剤の 種類数と奇形の発生との間に有意な相関を認め, 薬剤の種類が多いことが奇形の発生と関連してい た。薬剤の内容については,抗不安剤・睡眠導入 剤を服用していた例が 77 例と最も多く,この範 疇に含まれる薬剤の多剤併用も目立っており,最 多で 8 剤併用していた。このように,全薬剤のう ち抗不安剤・睡眠導入剤の占める割合が高いこと は事実であるが,どの薬剤の危険性が高いかを比 較検討するにはさらに多くの症例数が必要であ り,薬剤の種類に関する言及はここまでにとどめ ておきたい。 一般人口の 35 歳以上の奇形発生頻度は 1〜2% といわれている6, 7)。今回の結果はそれと比べ, 高い頻度であった。向精神薬の催奇形性について は,抗てんかん薬のように因果関係がはっきりし ているものは少ない8, 9)。ベンゾジアゼピン系薬 剤や抗精神病薬,抗うつ剤の催奇形性に関する最 近のメタアナリシスなどの報告をみても,明確な エ ビ デ ン ス は 得 ら れ て い な い の が 現 状 で あ る10-12)。また,多剤併用例を検討した報告はほと んどないようである。本研究では,妊娠 12 週以 前に服用していた向精神薬の薬剤数と奇形の発生 との間に有意な相関を認めたが,これは向精神薬 が奇形を引き起こす可能性を示唆していると考え られる。さらに,35 歳未満の妊婦では奇形の発 生はさほど多くなかったが,高齢妊婦で発生率が 有意に高かったことから,向精神薬の催奇形性は 母体が高齢のときに顕在化しやすいことが示唆さ れた。 次に向精神薬が新生児の体内に残存しているこ とによる影響についての考察を述べる。胎児およ び新生児の肝腎機能は未熟であり,その薬物代謝 速度は成人に比べ遅延することが知られてい る13, 14)。向精神薬内服による児への Apgar score や薬物離脱症状への影響は,複数の文献で確認さ れており,やはり向精神薬の内服が悪影響を及ぼ し得ると考えられている15, 16)。新生児離脱症候 群と考えられる症状の頻度については 10 〜 50% との報告15)があり,今回の結果はそれらに比し て少なかった。新生児離脱症候群の診断について は,厚生省研究班が作成したチェックリストも含 めてさまざまなものが考案されているが,実際の 臨床で全症例に対して用いられているわけではな いため,今回のような後方視的な研究では一部の 症例が見逃されてしまうのかもしれない17)。い ずれにせよ,今回の症例のなかでも多量の向精神 薬の内服を行っていた母体から,重篤な薬物離脱 症状を有した新生児の例も存在したため,ハイリ スクと認識して可能な限りの減量および児への バックアップ体制を整えておくことが望ましい。 加えて,上記分類 3 のその他の問題に関して も,有意差こそないものの問題の発生頻度は非内 服群より高く,妊娠中を通して向精神薬の服用が 胎児の健康にいくらか悪影響を及ぼしている可能 性は否定できないと考える。 今回は向精神薬の減量・中止による母体の精神 状態の悪化は検討していない。一般的には精神疾 患合併妊娠では,胎児異常の有無,分娩,育児に 対する不安から妊娠中,産褥期に精神状態は悪化 しやすいといわれており1),向精神薬を減量・中 止する際には注意深い経過観察が必要である。ま
た,今回は新生児の出生直後にとらえられる問題 に限って服薬の影響を検討したが,さらなる長期 間の視点をもって児の精神・身体の成長に影響を 及ぼす可能性についても今後の検討が望まれる。 文 献 1) 新澤 麗,難波 聡,三木明徳,他:精神疾患 合併妊婦133例の転帰と問題点.産婦人科の実 際 60:491-496, 2011 2) 大久保鋭子,佐々本薫,上原博之,他:向精神 薬服用妊婦から出生した新生児の管理.日本産 婦人科学会沖縄地方部会雑誌 30:12-15, 2008 3) 塚田和美:妊娠・出産・授乳期における統合失 調症の治療ストラテジー.臨床精神薬理 7: 1875-1881, 2004
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【要約】 2007 年 7 月から 2012 年 3 月に当センターで出産した精神疾患合併妊婦 137 例を対象に,胎 児・新生児合併症と妊娠中の服薬との関連性を検討した。流・死産 7 例については向精神薬服用との 関連は明らかではなかった。奇形 8 例の母親全員が妊娠初期に向精神薬を服用していたが,妊娠 12 週以前に服用していた 99 例のうち,母体が高齢の場合に奇形発生率が有意に高かった(母体 35 歳以 上:30 例中 6 例,35 歳未満:69 例中 2 例,p = 0.0041)。さらに,服用した向精神薬の種類数も奇形 の発生に有意に相関していた(p = 0.0021)。流・死産,奇形以外の合併症については,出産直前の 内服によって生じ得るものとそれ以外に分けて検討した。いずれも服薬群のほうが非服薬群より発生 頻度が約 50%高かった。本研究から妊娠初期に向精神薬を内服していた症例では,高齢妊婦および 多剤併用という 2 つの因子が奇形発生のリスクを高めることが示唆された。 キーワード:精神疾患合併妊娠,向精神薬,新生児,流産,奇形
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