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漏斗造民家の地域社会的意味-犬井道集落における事例分析を通して- [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)漏斗造民家の地域社会的意味 -犬井道集落における事例分析を通して-. 入江 奈津子 はじめに. しも古いわけではなく,同時期に建設されたと考えら. 佐賀県南部の有明海沿岸地域には,「漏斗造」と呼ば. れるものが多い。つまり,犬井道集落における漏斗造. れる茅葺き民家が存在する。漏斗造最大の特徴は,棟. の普及は近世末から明治期にかけての集落拡大期に起. をロの字形にまわした屋根形態にある。この特異な屋. こった現象であり,その背景には何らかの社会的意味. ひら. 根は,四方に平 を見せ,また中央部に漏斗のような谷. の存在が予想される。. を形成するため,雨が降ると雨水は屋根を伝って谷に. 2. 主屋の構成原理. 落ち,家の内部に作られた「雨樋」を通り外に流れ出. そこでまず,本章では漏斗造民家の空間特性につい. るという複雑な構造をもつ(図 1)。. て分析し,構成原理を明らかにする。ここでは,実測. 屋根形態の特異さゆえに,漏斗造に関する研究の多. 調査やヒアリング調査によって得られた 8 事例に加え,. くは,主屋のみを切り出し,屋根形態の発生要因や発 『佐賀県の民家』3) に取り上げられた 10 事例の計 18 事 展過程について論じたものである 1)。しかし,民家は. 例を対象とする。. あくまで人々が生活を営む場であり,当然ながら単独. 2-1. 平面構成の特徴. では存在せず,一定のまとまりをなしてひとつの地域. まず,平面構成について機能的視点から分析する。. 社会を形成する。したがって,民家を理解するには, 漏斗造の平面は,居室群とニワナカと呼ばれる土間の 特定の地域社会を構成する一要素として,その在り方. 二つの部分で構成され,居室群には 3 室型・5 室型・6. を把握する必要がある。本研究は,漏斗造を,集中的. 室型が存在する(図 3)。室数や規模は様々であるが,. な立地がみられた犬井道集落を対象に,集落を構成す. 漏斗造の平面構成には共通した特徴が見受けられる。. る住居群として読み解くことで,地域社会的視点から. まず,居室群とニワナカの間には機能的な優劣が存. 捉えなおすことを目的としている。. 在する。特に,ザシキとニワナカの境界には必ず壁が. 1. 犬井道集落における漏斗造の分布状況. 配置されるため,ニワナカから直接ザシキへ入室する. 本研究で取り上げる佐賀市川副地区犬井道集落は, ことはできず,空間的にも不連続な構成となっている。 漏斗造民家が多数存在した川副地区の中でも,突出し. また,6 室型への展開は,5 室型のザシキの横にナカノ. た分布がみられた集落である。犬井道集落は,近世後. マが付加され,さらにニワナカからの分離が進む。. 期には複数の塊状集落だったものが,近代にかけての. 次に,居室群をみると,5 室型以上では居室が 3 室. 大幅な屋敷増殖によりひとつの巨大塊村となり,現在 総戸数 1500 戸に及ぶ高密な居住空間を展開している 2)。. ①. 図 2 は,空中写真をもとに,犬井道集落における. ⑧⑦. ②. ⑥. 1962 年の漏斗造民家の分布を示したものである。漏斗. ③ ⑤④. 造民家は,明治期以降新たに形成された居住域に色濃 ⑩⑨ ⑪. く分布していることから,犬井道集落において漏斗造 は古くから採用された民家形式ではなく,集落が拡大 する時期に集中的に建設されたものと考えられる。近 世の居住域に立地する漏斗造民家も,建設年代が必ず. 漏斗造民家 40. 近世居住域(1793) 明治期居住域(1868-1912). 屋根に形成された谷. 小屋裏の雨樋. 0. 雨樋は家の内部を通る. 図 1 漏斗造の特徴. 50. 100. 図 2 犬井道集落における漏斗造民家の分布. 9-1. 200(m).

(2) 【3室型】. 2. ダ. 1.5. ナカ ナン. 1.5. ナン. チャ. ザ…ザシキ マ…ナカノマ ナカ…ナカエ チャ…チャノマ ネ…ネドコ ナン…ナンド イタ…イタシキ ダ…ダイドコロ ド…ドマ. ネ. ド. ド. 仏 仏. 2. ザ. 2. ザ. 仏. 2. 床. ド. ザ 床. 床. 2. 2. 2. [ 事例 96]. 2. 1. [ 事例 97]. 2. [ 事例 6]. 小屋組. 軒桁. 小屋梁 中引梁. 小屋梁と中引梁. 【5室型】. ナン. 2 チャ. ド. 1.5. ナン. イタ. ネ. チャ. ネ. 2. ネ. ド 仏. 2.5. ザ. 2. ザ. 床. 軸組 ナカ. ド. 仏. 仏. 2. ネ. 下屋. ザ 床. 床. 上屋 2.5. 2. 1.5. [ 事例 9]. 2. 2. [ 事例 35]. 敷桁. 1. [ 事例 38]. 下屋. 雨樋. 土間上部の棟は低くなる傾向にある. 上屋. 【6室型】. ナン. イタ. ナン. ナカ ド. 仏. ザ. ダ. ナン. チャ. 2.5. 2.5. 2. ナン. 【3 室型】 [ 報告書 97]4 間 ×3.5 間. マ. 2.5. ネ. イタ. 2 ド. ド. 【6 室型】 [ 報告書 103]5 間 ×5 間. ネ. チャ. 仏. ザ. 仏. 2. 床. ザ. 床. 床. 2.5. 3. 2. [ 報告書 103]. 2. [ 報告書 104]. 1.5. 2.5. [ 事例 2]. 図 3 漏斗造の平面構成. 【5 室型】 [ 報告書 100]4 間 ×5 間. [ 報告書 104]5.5 間 ×5.5 間. [ 報告書 102]5 間 ×5 間. [ 犬井道 34]5.5 間 ×5.5 間. [ 犬井道 38]3.5 間 ×5 間. [ 西古賀 ]5 間 ×4 間. 型の奥行き方向に付加される共通点が存在する。その うちニワナカに接する居室には,接客空間としてのザ シキ,日常の団欒の空間としてのナカエ,農作業の合 間の簡単な食事の空間としてのイタシキ,という使い 方のヒエラルキーが存在する。また,2 室あるネドコ の使い分けも,ザシキ側が家長夫婦,奥が若夫婦と決 まっていた。このように,居室群には居室の展開から 使い方,使い分けにまで及ぶ方向性が存在しているこ とがわかる。本研究では,この方向性を“オモテ-ウチ” と呼ぶことにする。これらの居室は,オモテ側にある ほど機能的に優位な空間となる。 以上より,漏斗造の平面には,居室群とニワナカの 明確な序列,オモテ - ウチの方向性,そして中枢的存 在としてのザシキという共通した構成原理が見出せる。 雨樋. 2-2. 架構の形成. 図 4 漏斗造の上屋架構. 次に,架構が判明している 8 事例を対象に,上屋架. 3. 屋敷の構成原理. 構について構法的視点から分析すると,平面構成の原. こうした特性をもつ漏斗造の,地域社会との関係性. 理は架構にも及んでいることがわかる(図 4)。. を明らかにするため,本章では犬井道集落に現存する. まず,軸組をみると,上屋の外形に合わせて軒桁が. 漏斗造民家を対象に,屋敷の構成原理について分析す. 配置され,ザシキは必ず上屋に取り込まれる点が共通. る。犬井道集落には,2010 年時点で 40 棟の漏斗造民. する。また,ザシキを囲うように敷桁が組まれ,ザシ. 家が存在している(図 2 数字)。. キ上部には中引梁と小屋梁が架けられる。. 3-1. 主屋と屋敷構えの関係. 次に,小屋組をみる。四辺の扠首の幅,つまり棟の. 漏斗造の屋敷構成は各々で少しずつ異なり,主屋と. 高さは,概して居室上部が高く,土間上部が居室上部. 屋敷構えの関係に一貫した形式はみられない(図 5)。. より高くなることはない。さらに,扠首は屋根の谷が. 例えば [ 事例 35],[ 事例 39] は類似した立地状況にあ. ザシキよりウチ側に形成されるように構成される。. るが,主屋正面は作業庭のある南側に向く [ 事例 35]. つまり,漏斗造は平面構成の原理を軸として空間化. とミチに面した北側に向く [ 事例 39] とで異なる。集. された,非常に形式的な住居形態であることが指摘で. 落内の主屋の向きは一定ではなく,また玄関の位置は. きる。また,空間化されることで,ザシキのある主屋. 右勝手・左勝手が混在する。つまり,主屋の空間構成. 正面が漏斗造において重要な一面として位置づけられ. の主軸となる原理は,住居以上には及んでいないこと. ているのは明らかである。. が指摘できる。. 9-2.

(3) 3-2. 雨樋からみる屋敷の構成原理. これまでの分析より,犬井道集落では,ウラ空間を一. それでは,屋敷構成はどのように規定されるのだろ. 定方向ではなく,周辺状況や生活空間への要求に応じ. うか。漏斗造の特徴である雨樋に注目し,雨樋の向く. て臨機応変に設けていることが窺える。. 空間とその特性について分析する。. したがって,漏斗造民家の屋敷構成は,各家を取り. 3-2-1. 屋敷周辺と雨樋の方向に関する分析. 巻く環境と,その環境下での各家における空間要求に. まず,雨樋の方向と屋敷周辺の環境との関係につい. 対応した,柔軟性をもったものとみられる。. て分析する。表 1 は 40 事例の内,雨樋の方向がわかる. 4. 地域社会の中の漏斗造. 20 事例の周辺環境をまとめたものである。表 1 より雨. 4-1. 主屋における雨樋の位置付け. 樋は,隣接する屋敷の背面や側面,コミチに向きやすく, 雨樋は,特異な屋根形態がつくりだした装置である。 屋敷正面やヨコミチには向きにくい傾向がみられる。. しかし,雨樋の存在は主屋の形成に直接関与していな. 3-2-2. 屋敷内での雨樋の方向に関する分析. いことが推測される。まず,雨樋は架構と構造的に切. 次に,屋敷内の雨樋の方向について分析する(図 5)。 り離して設置され,その方向と棟の高さに必ずしも相 屋敷内では,雨樋が出る空間を敷地境界に寄せて狭く. 関はない。また,オモテ - ウチの方向性とウラ空間の. したり,その間に付属屋を設けるなどして,屋敷内に. 位置にも,明確な関連性はみられない。さらに,小屋. 作業庭や水路に接する空間を確保しており,限られた. 裏が利用を目的とした空間ではないことから,屋根形. 空間を有効活用している事例が多く確認できる。. 態は利用と結びついたものではないことが指摘できる。. 3-3. 屋敷構成における“ウラ”空間の設定. 4-2. 屋敷構えにおける雨樋の位置付け. 本研究では,屋敷内の雨樋が向く空間を“ウラ”空. 漏斗造採用の要因を雨樋による雨水の確保と論じた. 間と定義する。ウラ空間は,雨樋から流れ出る雨水を. 説 4) があるが,ウラ空間には雨樋に対する特別な設え. 処理する場所であり,雨樋をもつ漏斗造の屋敷内に必. が存在しない。むしろ雨樋を下屋上部に設け雨水を屋. 然的に一ヵ所形成される。雨が降ると,ウラ空間には. 根に流す事例が散見されるなど,ウラ空間は雨樋の利. 雨水が溜まり,使い勝手の悪い場所となるため,ウラ. 用を目的とした場になっていないことが指摘できる。. 空間の設定が屋敷構成に与える影響は大きいといえる。 つまり,雨樋には積極的な活用はみられず,ウラ空間 主屋. 畑. 付属屋. 玄関方向. 鑑賞庭. 屋敷地. 作業庭. 雨樋方向. [ 事例 9]. [ 事例 28]. [ 事例 35]. [ 事例 39]. 位置付けられる。 4-3. 漏斗造の社会的意味. ※40 棟のうち雨樋の方向が わかるものの屋敷構成を示す。. これらのことから,雨樋や複雑な屋根形態自体は,. ※方角はすべて北を上とする。 [ 事例 3]. [ 事例 6]. は屋敷における機能的なプライオリティの低い空間と. [ 事例 8]. [ 事例 12]. [ 事例 15]. [ 事例 18]. [ 事例 19]. [ 事例 21]. 目的ではなく結果として生じたものと考えられ,言い 換えれば,代わりに他に得たものがあることを示して いる。これまでの分析を踏まえると,漏斗造は,共通. [ 事例 22] [ 事例 25] [ 事例 30]. [ 事例 31]. [ 事例 33]. [ 事例 34]. [ 事例 38]. [ 事例 40]. の空間構成原理を展開させ類似した形態を得ている一 方で,その形態が住居内部の生活に応答したものでは ないことが窺える。つまり,漏斗造という民家形式の 本質は,外側に対する表現的作用,すなわち民家自体. 図 5 屋敷構成モデル 家屋番号 玄関 勝手 雨樋方向 ウラ(明治期) ウラ(1962) ウラ(2010) 他方(1962) 土間 左 南 03 タテミチ タテミチ 道路 屋敷正面 屋敷正面 境 南 左 06 宅地 屋敷背後 屋敷背後 屋敷側面 屋敷側面 土間 南 左 08 宅地 屋敷側面 屋敷側面 屋敷側面 水路 土間 東 右 09 宅地 屋敷背後 屋敷 屋敷正面 屋敷側面 土間 南 右 12 宅地 屋敷側面 屋敷側面 屋敷側面 水路 境 左 南 15 宅地 屋敷背後 空き地 タテミチ 屋敷側面 土間 南 左 18 タテミチ タテミチ 道路 屋敷正面 屋敷側面 土間 南 左 19 農地 コミチ コミチ ミチ 屋敷側面 土間 左 南 21 農地 屋敷側面 屋敷側面 屋敷正面 屋敷側面 土間 南 左 22 農地 屋敷背後 屋敷背後 屋敷側面 農地 土間 25 南 左 タテミチ タテミチ 道路 屋敷正面 屋敷側面 土間 28 南 左 コミチ コミチ コミチ 屋敷側面 水路 土間 30 左 南 宅地 屋敷側面 屋敷側面 屋敷正面 屋敷側面 土間 31 右 南 コミチ コミチ 道路 屋敷側面 農地 居室 33 北 右 コミチ 屋敷側面 屋敷側面 屋敷正面 屋敷側面 土間 34 北 右 コミチ コミチ コミチ ミチ 屋敷側面 土間 35 南 左 宅地 屋敷側面 屋敷側面 ミチ 屋敷側面 土間 38 南 右 農地 農地 道路 屋敷正面 屋敷側面 土間 39 北 左 農地 屋敷側面 屋敷側面 屋敷側面 農地 40 土間 北 左 農地 農地 屋敷側面 屋敷側面 農地 ※ヨコミチ:東西方向のミチ,タテミチ:南北方向のミチ,コミチ:宅地に引き込まれた袋小路. 表 1 屋敷の周辺環境. の表象性にあると推測できるのである。 ひら. その一因として,屋根外面が全て平である点が大き く影響していると考える。犬井道集落では,主屋正面 を重要と捉える民家形式を採用しながら,正面が周辺 と規定された関係にない。つまり,正面同様に四方に 平を見せる上屋の獲得には,家を様々な方向から見ら れる可能性に対する住み手の意識が窺える。また,そ の利点を積極的に活用した事例も存在する。[ 事例 37] は,主屋背面をヨコミチに向け,店舗として利用して いる。漏斗造を採用することにより,主屋の正面性を. 9-3.

(4) 保持しながら,主屋背面も店舗正面としての体裁を確 保しているといえる。 ネドコ. 5. 個別事例検討 以上の考察を踏まえて,事例検討を行う。ここでは,. イタシキ. ネドコ. [ 事例 33] と [ 事例 34] 外観. 集落南部に位置する [ 事例 34]Em 邸とその周辺を取り. ナカエ. ニワナカ. 卍 ザシキ. 上げる(図 6)。. ナカノマ. 5-1. 概要 【平面図】S=1:400. Em 邸の作業庭. Em 邸は,間口・奥行きともに 5.5 間の正方形の上屋 が架かる,比較的規模の大きな漏斗造民家である。建 設年代は,近世末期から明治初期頃といわれている。 5-2. 架構. ナカノマ. 小屋裏の谷と雨樋. ナカエ. イタシキ. 【断面図】S=1:400. Em 邸の小屋組をみると,居室上部 3 間,正面・背面 2.5 間,土間上部 2 間の扠首が架かっている。これら の扠首は各棟で自立した構造をとらずに,2 間扠首に. 複雑に組まれた 3 間叉首の端部. 依存する形で一体的な構造をとっている。また,3 間 扠首の端部は,細かい材の組み合わせによる処理が施 されている。屋根は大きくなるほど風圧に弱くなるた. 【架構】 居室上部を通り外に出た雨樋. め,こうした工夫によって屋根が受ける力を分散させ. 【屋敷図】S=1:800. ているのではないかと考えられる。. 農地. この複雑な小屋組は Em 邸における個別解であり,他 畑. の事例とは異なる。つまり,架構自体は平面の規模や. 付属屋. 構造的な技法などの摺り合わせによる個別解でありな. 作業庭. [ 事例 34]. がら,共通の原理が展開されることで,結果として形. [ 事例 33]. 式化した外観を獲得しているといえる。 コミチ. 5-3. 屋敷構成 Em 邸の主屋は,屋敷北側のヨコミチに面して建つ。 Em 邸では,ウラ空間をコミチの方向に設定しており, 主屋とコミチの間に付属屋を建て,主屋南側に広い作 図 6 [ 事例 34]Em 邸とその周辺. 業庭を確保するなど,限られた屋敷内の空間を有効活. 立つといえる。つまり,機能的なプライオリティの低. 用している。. いウラ空間も,社会的視点からみると重要な存在と位. ここで,Em 邸東側に建つ [ 事例 33] に注目する。[ 事. 置付けられる。犬井道集落では,大幅な集落拡大のた. 例 33] は,Em 邸の分家にあたり,主屋は本家に倣った. めに屋敷に関する集落規模の秩序が生じにくい状況に. 構成をとる。しかし,Em 邸は雨樋を土間上部に渡すの. あったと考えられる。そのため,集落拡大を経て高密. に対し,当家は居室上部に架け渡す稀有な事例である。 な居住環境を形成するには,各々が立地する環境に柔 [ 事例 33] では,自邸より本家に対する配慮を優先さ. 軟に対応できる屋敷構えが必要不可欠だったといえる。. せており,ウラ空間の設定は,物的環境だけでなく, したがって,犬井道集落における漏斗造の在り方は, 本家分家関係という社会的関係も大きく影響している. 漏斗造民家が集中的に集積し,ひとつの巨大な居住地. ことが読み取れる。. を形成したという特異な集落拡大プロセスの中に見出. 6. まとめ. せるのである。. 犬井道集落を通して描き出される漏斗造の本質は,. 1) 屋根形態の発生要因として多く挙げられるのは,台風と地盤沈下に対する対策である。また,. 共通の空間構成原理を用いた表象性の獲得にある。一. 漏斗造に関する研究の中で最も代表的なものは,青山賢信による民家緊急調査に基づいた研究 である。青山は, 『佐賀県の民家』の中で佐賀県の茅葺き民家の屋根形態と間取りの分類を行い,. 方で,特異な屋根を用いた表象性の獲得には,代価と. 漏斗造民家の発展過程について熊本県の別棟形式から発展したものだという見解を述べている。. しての雨樋に対する配慮が必要であり,こうした主屋. 村落の空間特性に関する研究 その 3-」,日本建築学会 2010 年度大会学術講演梗概集,2010. 2) 牛島朗・菊地成朋・宮崎晴加:「巨大塊村犬井道集落の形成 - 有明海沿岸地域における干拓. 3) 佐賀県教育委員会:『佐賀県の民家』,佐賀県,1974. を許容する屋敷構えが存在してはじめて漏斗造は成り. 4) 千手正美:『日本地理風俗大系〈第 11 巻〉九州地方』,誠文堂新光社,1960. 9-4.

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参照

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