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幼児を持つ母親の「母性愛」信奉傾向と養育状況における感情制御不全 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)幼児を持つ母親の「母性愛」信奉傾向と養育状況における感情制御不全 キーワード:母性愛信奉傾向,原因帰属傾向,発達水準,怒り制御不全,両刃の剣仮説 行動システム専攻 心理学コース 江上 園子 1.問題. 「規定因(determinant)」を探るものが多いうえに、稀に. 「母性」は「女性が母親として持っている性質、また. 「母性」 ・ 「母性愛」がどういう帰結をもたらすかという. 母たるもの」 、 「母性愛」は「母親が持つ、子に対する先. 研究があったとしても、それは社会学的な実態調査の域. 天的・本能的な愛情」であると理解されている。このよ. を出ないものや少数エピソードに基づいた臨床的なもの. うに「母性」 ・ 「母性愛」が疑いなくすべての女性に存在. が多いのが現状である。 「母性」 を重視しすぎるが故に弊. する positive なものとして認知されるようになった背景. 害が生じる危険性を指摘した大日向の研究は根強い伝統. には様々な文化的風土や宗教が介在していると考えられ. 的母性観が残っているわが国に警鐘をならすものとして. るが、それは男女の「分業」を通して経済効率を引き上. 有効であると評価できるが、 「母性」 ・ 「母性愛」が養育に. げるという政治的経済的要請によっても強化されたこと. negative に作用する可能性およびそのメカニズムを探. が指摘される。そしてイギリスの医師 J.Bowlby(1951). る体系的かつ精緻な心理学研究は未だほとんど行われて. が「母性剥奪(Maternal deprivation) 」の概念を提唱す. いないというのが現状である。本研究はこうした現状を. ると、ますます「母性」 ・ 「母性愛」の肯定的側面が「科. 打破すべく企図されたものである。. 学的に」打ち出され、 「母性」の生物学的規定性が当然視. 本研究では、「社会文化的通念として存在する伝統的. され、母親が育児に専念する重要性が強調されるに至っ. 性役割観に基づいた母親役割を過剰に肯定・信奉しそれ. たのである(大日向, 2001) 。要するに、社会通念である. にしたがって育児を実践する傾向」を「母性愛信奉傾向」. 肯定的な母性観が存在する土壌のうえで医学界での母子. と呼び、この母性愛信奉傾向が実際の養育場面に何らか. 研究の結果が一定のパラダイムのもとで拡大解釈された. の影響を及ぼし得ることを仮定した。もっとも本研究で. のである。さらにその研究によって再び社会通念として. はこの母性愛信奉傾向の高さが“直接的に”育児に阻害. の「母性」 ・ 「母性愛」が決定的なものとされるという繰. 的な影響をもたらすという影響過程を想定しなかった。. り返しが行われてきたと言えよう。どちらにしろ「母. この傾向の高さは、ある意味、養育に対する高い意識や. 性」 ・ 「母性愛」が疑いなく positive なものとして時には. 動機づけに通じることが考えられ、それ自体に negative. 礼賛さえなされ、世間一般をはじめ小児医学・発達心理. な要素は含まれないと判断されたからである。本研究で. 学界においても理解されてきたということは事実である。. は、むしろ、この母性愛信奉傾向の高さが、母親自身の. しかし今日、この「母性愛」なるものについて疑問を. ある人格特性や子ども自身の特質や発達状態など、他の. 投げかける研究者・学識者が多く存在する。具体的には. 要因との組み合わせによって self-efficacy の低下や育児. Bowlby にはじまる「 『母性』における科学的知見」につ. 不安の増大を招来し、結果として negative な養育行動を. いて一連のレビュー及び追跡調査によって批判を加えた. 引き起こすという影響過程を想定し、その検証を試みる. Rutter(1972,1974,1979,1981)らはもとより、Eyer. ことにした。先行研究を参考に、その母性愛信奉傾向と. (1988)は「 『母性』とは科学的なフィクションである」. 結び付いて作用し得る要因として「母親の原因帰属傾向. と、Kristeva(1985)は「 『母性』は大人の描く失われ. (Twentyman,1982;Golub,1984) 」と「子どもの発達水. た大陸のファンタジーである」と述べている。またその. 準(O’Conner&Altermeir,1979)」を考えた。また、今. 「虚構」が与える影響に関して大日向(2000)は「母性. 回 negative な養育つまりは子どもへの不適切なかかわ. 愛」を一方的に賛美してやまない従来の母性観こそが虐. りを反映する一指標として「怒り制御不全」を仮定し、. 待をはじめとする悲惨な事件を発生させる素地をつくっ. 次のような仮説を設定した。 〔仮説1:母性愛信奉傾向. ていると説いた。よってこのような社会文化的な思い込. ×母親の原因帰属傾向→育児場面における. みが養育の現場にいかなる「帰結(outcome)」をもたらす. self-efficacy・育児不安→怒り制御不全〕 ・ 〔仮説2:母性. かについて見過ごすことはできないと言えよう。. 愛信奉傾向×子どもの発達水準→育児場面における. ところが従来の心理学研究では「母性」 ・ 「母性愛」の. self-efficacy・育児不安→怒り制御不全〕仮説1は、母性.

(2) 愛信奉傾向が高い状態であるにもかかわらず、negative. 3)結果と考察. な事象が生起した際にそれを自分自身に原因帰属する母. ・因子分析 母性愛信奉傾向尺度(原案)35 項目におけ. 親は「子どものためにいい母親でありたいのに自分はダ. る全データについて主成分分析を行い、固有値の因子ス. メな母親だ」と考え、self-efficacy の低下および育児不. クリープロットテストにおける後続因子との差から一次. 安の増大を経験し、結果的に怒りを抑えられなくなると. 元性が判断された。第一主成分での説明率は 27.1%であ. いうものである。仮説2は、母性愛信奉傾向が高く子ど. る。最終的には、成分負荷が.60 以上である 12 項目を採. もの発達水準が低いと、「自分が子どものために心身尽. 用することとした。結果は Table1 の通りである。. くしているにもかかわらず子育てがうまくいっていない、 Table1 母性愛信奉傾向尺度因子分析結果. 子どもがそれに応えていない」と考え、self-efficacy の 低下および育児不安の増大を経験、さらには怒りを抑え られなくなるというものである。 本研究はこれらの仮説を検証して、本来 positive なも のとしてあるはずの「母性愛」を信奉する傾向こそが、 他の要因との交絡によって、養育場面で negative なもの に転化する場合があるということを実証することが目的 であり、そのために第一研究および第二研究を行った。 2.第一研究 1)目的 第一研究においては「母性愛信奉傾向」を測定するも のとして「母性愛信奉傾向尺度」の作成を行った。 2)方法 ・調査期間 2001 年 6 月 15 日∼7 月6日であった。 ・調査対象 2 歳~6 歳の子どもを持つ母親 183 名 ・手続き 福岡県内の幼稚園及び保育園に調査への協 力を依頼し、園ごとに質問紙を配布・回収した。 ・質問紙 フェイスシート項目の他、母性愛信奉傾向 尺度 35 項目(原案)と、伝統的な性役割態度の一 端として想定される母性愛信奉傾向と強い負の関係 にあるだろうとして基準関連妥当性を測りうると考 えた、平等的な性役割態度について測定するものであ る平等主義的性役割態度尺度(SESRA) 〔鈴 木,1987,1991〕17 項目についてそれぞれ5件法で評定 させた。また性役割観について測る M-H-F スケール 〔伊藤,1978〕も、男性性をあらわす M 得点とは負の 関係、女性性をあらわす F 得点とは正の相関関係があ ると想定して、同時に評定させた。なお母性愛信奉傾 向尺度の各項目については、母性理念質問紙〔花 沢,1992〕からの 15 項目および母性意識尺度〔大日 向,1988〕からの 9 項目の他、独自に作成した 11 項目 を含む。 (範 ・調査対象の特徴 調査対象者の平均年齢は 34.68 歳 囲:23-48 歳,SD=3.92)であった。就業状態は、常勤 職が 33 名(18%) 、パートタイムが 51 名(27.9%) 、 就業していない者が 97 名(53%)であった。. 項目 18.母親であれば、育児に専念することが第一である。 19.育児は女性に向いている仕事であるから、するのが 自然である。 17.わが子のためなら、自分を犠牲にすることができる のが母親である。 13.子どものためなら、どんなことでもするつもりでい るのが母親である。 14.子どもを産む母親だからこそ、子育ては何にもさし おいて母親が行うべきことである。 21.子どものためなら、たいてのことは我慢できるのが 母親である。 31.育児に専念したいというのが、女性の本音である。 29.何といっても子どもには産みの母親がいちばん良い のである。 22.母親の愛情ほどに偉大で、気高く無条件なものはな い。 10.母親になることが、女性にとって存在のあかしと見 なされる。 26.子どもを産んで育てるのは、社会に対する女性のつ とめである。 33.子どもが小さいうちは、母親は家庭にいて子どもの そばにいてやるべきである。 寄与率(%). 成分 .776. 共通性 .603. .735. .540. .721. .520. .696. .484. .684. .467. .658 .648. .433 .420. .635. .403. .631. .398. .613. .376. .612. .374. .605. .367. 27.1. ・信頼性の検討 12 項目は Cronbachα=.90 であった。 ゆえに内的整合性は十分に高いと言える。 ・妥当性の検討 基準関連妥当性について、母性愛信奉 傾向尺度 12 項目の評定値の加算得点と SESRA およ び M-H-F スケールの尺度得点との連関によって判断 された。その結果、SESRA とは r=-.567 であり、M 得点とは r=-.204、F 得点とは r=.258 で、1%水準で 有意な相関が見られた。このように M-H-F スケール との相関が弱いものであったのは、尺度項目に「おし ゃれな」等があり母性愛信奉傾向と必ずしも強い関連 があるものとは限らないためであろう。 よって信頼性・妥当性ともに認められたと考え、母性 愛信奉傾向尺度(12 項目)を決定した。 3.第二研究 1)目的 第二研究においては先述した仮説1および仮説2の検 証を行った。.

(3) 2)方法. 向が高いと怒りに翻弄されにくくなり、怒りを自覚的. ・調査期間 2001 年 10 月 31 日∼12 月 7 日であった。. に制御できる傾向にあるということが示された。ゆえ. ・調査対象 1 歳~5 歳の子どもを持つ母親 724 名. に、母性愛信奉傾向は単独では positive に作用したこ. ・手続き 福岡県内の幼稚園及び保育園に調査への協力. とになる。さらに、 「怒りの内的経験」において母性. を依頼し、園ごとに質問紙を配布・回収した。 ・質問紙 フェイスシート項目の他、母性愛信奉傾向尺. 愛信奉傾向と原因帰属傾向との交互作用効果が認め られた(Figure1 参照) 。. 度〔第一研究において作成したもの〕 ・発達水準尺度 〔柏木・東による期待水準尺度(1977)を改作したも による一般性セルフ・エフィカシー尺度(1986)を育 児場面に適用させたもの〕 ・育児不安尺度〔牧 野,1981〕 ・怒り表出尺度〔鈴木・春木,1994〕につい てそれぞれ評定させた。原因帰属傾向については、 negative な事象が生起したが、その原因を判断しかね る、つまり曖昧であるという場面を独自に作成し、そ. 怒りの内的経験. の〕 ・育児場面における self-efficacy 尺度〔坂野・東條. 10 9.5 偶然性 母親自身 子ども. 9 8.5 8 7.5 L群. M群. H群. 母性愛信奉傾向. れについて偶然性,自分自身(母親) ,子ども、のう ち誰が(何が)原因であると思うのかということを選. Figure1 母性愛信奉傾向と原因帰属傾向の交互作用効果. 択させるというものであった。 ・調査対象の特徴 調査対象者の平均年齢は 34.48 歳 (範. よって negative な事象を偶然性に帰属する母親なら. 囲:24-48 歳,SD=3.84)であった。就業状態は、常勤. ば母性愛信奉傾向の高さは positive に働いて怒りを内. 職が 110 名(15.2%) 、パートタイムが 79 名(10.9%) 、. 的経験させにくくなることに対し、子どもに原因帰属. 就業していない者が 530 名(73.2%)であった。. する母親においては母性愛信奉傾向の高さは. 3)結果と考察 各尺度において因子分析を行った結果、怒り表出尺度. negative に作用して怒りを内的経験させやすくなる ということが明らかになった。. 以外については一次元性が把握できた。怒り表出尺度は. ② 4,5 歳 児 の 母 親 の デ ー タ に お い て も 育 児. 「怒りによる翻弄状態」 ・ 「怒りの自覚的制御」 ・ 「怒りの. self-efficacy と育児不安を媒介する因果モデルは検証. 内的経験」の下位次元からなることがわかった。. できなかった。怒りの制御不全において母性愛信奉傾. また第二研究では子どもの発達水準について問うた. 向の主効果が見られたのは「怒りの自覚的制御」 ・ 「怒. が、これは子どもの年齢によって左右されるうえに、鋳. りの内的経験」であった。母性愛信奉傾向が高いと怒. 型となった期待水準尺度が測定可能な年齢を3歳 8 ヶ月. りを自覚的に制御できる傾向にある一方で怒りを内. 頃に限定していることから、分析についても①1,2,3 歳. 的に経験しやすいということが示された。ゆえに、母. 児・②4,5 歳児の母親のデータに分けて行った。. 性愛信奉傾向は単独で positive にも negative にも作. なお独立変数である母性愛信奉傾向と発達水準につ いては得点の高低によりH群;M群;L群にわけた。 ・母性愛信奉傾向×原因帰属傾向の分散分析. 用したことになる。 ・母性愛信奉傾向×発達水準の分散分析 ①1,2,3歳児の母親のデータにおいて、育児場面にお. ①1,2,3 歳児の母親のデータにおいて、育児場面におけ. ける self-efficacy および育児不安についての母性愛信. る self-efficacy および育児不安についての母性愛信奉. 奉傾向と発達水準との交互作用効果は認められなか. 傾向の主効果ならびに原因帰属傾向との交互作用効. った。つまり育児場面における self-efficacy 及び育児. 果は認められなかった。つまり育児場面における. 不安を媒介するような因果モデルは検証できなかっ. self-efficacy 及び育児不安を媒介するような因果モデ. た。そこで、母性愛信奉傾向と発達水準との組み合わ. ルは検証できなかった。そこで、母性愛信奉傾向と原. せが直接怒り制御不全に作用するパスを想定し、分析. 因帰属傾向との組み合わせが直接怒り制御不全に作. を行った。その結果、母性愛信奉傾向の主効果が見ら. 用するパスを想定し、分析を行った。その結果、母性. れたのは育児場面における self-efficacy と「怒りによ. 愛信奉傾向の主効果が見られたのは「怒りによる翻弄. る翻弄状態」であった。母性愛信奉傾向が高いと育児. 状態」 ・ 「怒りの自覚的制御」であった。母性愛信奉傾. における self-efficacy が高く保たれ、怒りに翻弄され.

(4) にくくなるということが示された。さらに、「怒りに. 達水準との交互作用効果が怒り制御不全に影響を及ぼす. よる翻弄状態」において母性愛信奉傾向と発達水準と. ことが特異的に明らかになったということは興味深いと. の交互作用効果が認められた(Figure2 参照) 。. 言えよう。またこれらの結果はいずれも3歳未満児にお. 怒りによる翻弄状態. けるものであり、4,5 歳児における母性愛信奉傾向と原 因帰属傾向ならびに発達水準との交互作用効果は認めら. 25. れなかったことにより、本研究のように幼児を持つ母親 発達L群 発達M群 発達H群. 20. を対象とした研究においては子どもの年齢についても十 分に考慮したうえで進めていく必要があると示唆された。 なお発達水準の低さに起因して原因を子どもに帰する傾 向が生じたという可能性も想定されたが、分析の結果両. 15 L群. M群. H群. 母性愛信奉傾向. 者の間に有意な連関はなくそれぞれが独立並行的に作用 しているということがわかった。 したがって、本研究は「母性愛」を「両刃の剣」であ. Figure2 母性愛信奉傾向と発達水準の交互作用効果. ると提唱し、これを「両刃の剣仮説」と呼ぶことにした。 従来とかく 「母性愛」 についての議論は positive/negative. よって子どもの発達水準が高く母性愛信奉傾向も高. の両極に収斂されてきたが、本研究はその状況や場面に. い母親は怒りに翻弄されにくいが、その母性愛信奉傾. よってまたはそれと結び付く他の変数によって positive. 向の高さも発達水準が低い場合には影響をなさなく. にも negative にもさまざまに形を変えるものであると. なり、むしろ negative に作用しうることが窺われた。. いう可能性を示唆したと言えよう。つまり本研究は「母. ② 4,5 歳 児 の 母 親 の デ ー タ に お い て も 育 児. 性愛」を positive と negative のどちらでもないものと. self-efficacy と育児不安を媒介する因果モデルは検証. して、またはその両方の可能性を秘めた複雑なものとし. できなかった。怒りの制御不全において母性愛信奉傾. て「母性愛」を解釈するものであり、一般的に自明のも. 向の主効果が見られたのは「怒りの自覚的制御」 ・ 「怒. のとして理解されていた感のあった「母性愛」の領域に. りの内的経験」であった。母性愛信奉傾向が高いと怒. 新たな視点を提示し得たと言える。そして今後もこうし. りを自覚的に制御できる傾向にある一方で怒りを内. た視点からのさらなる探求が望まれよう。. 的に経験しやすいということが示された。ゆえに母性. ここで、本研究における2点の反省点を通じて今後の. 愛信奉傾向×原因帰属傾向の場合と同様に、母性愛信. 展望につなげたい。まず、第一研究・第二研究のいずれ. 奉傾向は単独で positive にも negative にも作用した。. もが母子間のことに限定されていた傾向があったことで. よって年少児の母親において、 〔母性愛信奉傾向×原. ある。母親の葛藤やストレスはもちろん子どもとの関係. 因帰属傾向→怒り制御不全〕 ・ 〔母性愛信奉傾向×発達水. にのみ存在するものではない。よって、夫婦関係をはじ. 準→怒り制御不全〕というメカニズムが明らかになった。. めとした他の人間関係つまりは社会文脈的な関係におけ る母親の心理状態についても言及するべきであろう。. 4.討論 第一研究における主な目的は、本研究の根幹となる. さらに、本研究は第一研究・第二研究ともに質問紙法 による、 データの数量的な解析を主とするものであった。. 「母性愛信奉傾向」を測定するためにより現実に、すな. 氏家(1996)は「統計的操作によって再構成された事実. わち育児の現場に直面している母親を対象にしてその概. は、現実によってテストされなければならない。 」と指摘. 念を尺度化することであった。その結果、かなり高い信. しているが、今後本研究で得られた「量的」な知見を「質. 頼性・妥当性が認められ、使用に十分耐えうる「母性愛. 的」 に確かめる作業が必要であると考えられ、 「子どもの. 信奉傾向尺度」を構成し得た。第二研究における主な目. 発達過程やそこに及ぼす親の影響は実に多様であり個別. 的は第一研究で作成した「母性愛信奉傾向尺度」を使用. 性の高いものである(大日向,2001) 」とあるように、そ. して仮説検証することであった。結果的に、母性愛信奉. うした意味でも一人一人の母親「個人」を対象とした質. 傾向と原因帰属傾向及び発達水準との組み合わせが育児. 的研究を行うべきである。そしてより実際の養育場面に. 場面の self-efficacy および育児不安を媒介して怒りの制. 即した生きた知見を取り出し、一連の研究結果から得ら. 御不全に影響を与えるという因果プロセスは検証できな. れた示唆をもって母親への支援に対して何らかの提言を. かったものの、母性愛信奉傾向と原因帰属傾向および発. 行うことが最終的に求められることであろう。.

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