わが国におけるホリスティックな医療マネジメント の研究
著者 齋藤 頼香
学位授与大学 東洋大学
取得学位 博士
学位の分野 経営学
報告番号 甲第261号
学位授与年月日 2010‑09‑25
URL http://id.nii.ac.jp/1060/00003940/
第5章 医療における統合マネジメントシステム
本章では、医療マネジメントを考えていく上で切り離して考えることはできない、
医療の質向上に向けた病院機能評価への取り組みとISO9001の取り組みから、品質マ ネジメントシステムの有効性を検討するvまた、ISO9001とISO14001の統合事例から 医療における社会的責任を踏まえた、統合マネジメントシステムの構築に向けた探究 をする。またISO9001と病院機能評価とISO14001の統合の可能性についても考察する。
第1節 病院機能評価による第三者評価への取り組みとISO9001の比較検討
1.病院機能評価とISO9001の比較検討
佐々木は、「ISO9001と病院機能評価との相違点は一言で言えば、病院機能評価は病 院の建物や設備、組織、委員会、規定など主にstructureに関する審査が行われるの に対し、ISOはprocessにあるということである」(佐々木, p.5)という。また、 ISO 認証取得の意義としては、「内部監査による相互評価の意味が大きいと感じている」
(佐々木,p,5)(図表28参照)といわれる。このようにISO認証取得の意義としては、
内部監査を重視することにより、各部署の改善効果が強まるだけでなく、部署間の比 較による院内全体の底上げ、コミュニケーションの活性化など環境の変化をもたらし たことが挙げられる。同様に、ISO9001の認証取得を目指す施設が増えてきた理由と
して、「 病院機能評価 と ISO9001 の決定的な相違が考えられるわけであるが、
その最たるものは、審査そのものにあるともいわれている。つまり、病院機能評価は あくまで結果評価にウエイトを置くのに対して、ISO9001の場合、施設自体の継続的 改善システムの有無とその機能を問う、プロセス評価の重視にある」(古賀総合病院 ISO研究会, P.9)といわれる。そして武田は、 rlSOはプロセスの構造評価であるから、
ISOの規格にはレベル値の具体的基準は記載されていない。すなわちISOは 基準値 を不要としているのではなく、基準値は顧客と供給者の契約で決めるべき との考え に立脚している。一方の病院機能評価は、具体的で絶対的なアウトカム(成果)や保 有能力に対して、・あるか、ないか〃や しているか、していないか の詳細な基準 値を示し、適合度のマイルストーンやゴールを指示している」(武田監,PP.46−47)と
いい、エSO9001と病院機能評価との相違を述べている。病院機能評hiilの評価は、基準 値に対する結果が問われることになり、プロセスの構造評価ではない。ISO9001では、
pDCAサイクルプロセスを評価するため、病院機能評価とISO9001では、相互補完的に 活用できるものではあるが、評価を受ける者が取り組む、構築する過程は全く異なっ ている。ISO9001に取り組んでいく上では、部分的に病院機能評価での取り組みを活 かしていくことができると考えている。 ISO9001の特徴として、マネジメントプロセ スの確立があり、「医療の質向上のために何を目標として掲げ、どう推進していくかが 重要で、そのプmセスを確立する手段がISO9001であり、ISO9001は最終目的ではな い」(増井他,pp.127)とされる。また、「ISO9001導入によって病院で不手際があった ら、それを病院全体で必ず是正していく仕組みづくり、PDCAサイクルがあると様々な ことに応用でき、この仕組みが非常に有効だと思われる」(増井他,p.130)ともいわれ る。更に、「ISO9001の認証を取得し、継続的に審査が行われることがISO9001におい ては非常に重要となる。そして、内部監査の役割も大きく、適度な緊張感を持った職 員のよい関係作りにつながっている。ISO9001の良いところは言い出しっぱなしでは なく、必ず実行すること、それを最終チェックするところにある」(増井他,pp.130−131)
ともいっている。つまり、「ISO9001は継続的な改善が主体であり、その仕組みの中に 監視体制が組み込まれている。内部監査と共に、年に1〜2回の外部監査が実施される」
(竹股・原,p.24)のである。
病院機能評価は、機構のスタンダードに基づく達成度を医療の専門家が評価する。
評価基準は専門職としてその質にダイレクトに抵触する内容なので、わかりやすくま た緊張感もある。しかし、この第三者が決めた基準、考え方による評価は、受審側の 考え方の違いを選択する余地は与えない(質問することはできる)。施設が認定を受け たいと思えば、第三者の基準・考え方に賛同するしか道はない。しかし、受ける側の
日常の努力の結果を評価されるわけであるから、説得力のあるエビデンスや理由が示 されなければ、この第三者評価はただ認定を受けるための目的で終わってしまい、真 の意味での質改善のモチベーションにつながらなくなる恐れがある(竹股・原,2006,
P.24)。
ISO9001と病院機能評価両者の違いは評価後の活動に出てくるといわれ、竹股らは、
「ISO9001は、 継続的改善 が主体であり、その仕組みの中に監視体制が組み込ま れている。内部監査とその他に年に1〜2回の外部監査が実施される。内部監査は、組
織の中の要員で行われるが、外部監査は、教育を受けた1S. 09. 001のプロの審査員が行 う。(中略)病院機能評価は、評価を受けた後は、どうしても一安心し、5年後の再評 価まで到達した状態を維持するような監視体制は整備されてないt、しかし、ISO9001 では進歩する医療水準と医療そのものの質とは何かを示すことはできない。両者の特 徴、違いはそのままそれぞれの利点を表しているといえる。つまり、医療の質評価に は、病院機能評価の 専門性の質指標 とISO9001の 継続的質向上システム を兼 ね備えることが最善の方法であろう」(竹股・原,2006,P. 24)といっている。
図表28 1SO9001、医療機能評価の各特徴の比較
ISO9001 病院機能評価
評価の基準となるもの 規格要求事項:品質保証体系 領域専門ごとのスタンダード
審査内容 マネジメント中心の審査
i内部監査、標準化、相互評価
@など主にProcessに関する審
@査)
医療機能中心の審査
i建物、設備、組織、委員会、
K定など主にStructureに関す
髏R査)
文書管理 継続的管理 審査時に対応
求めるもの 仕組みづくり 着地点
更新 3年
N1回の内部監査と、1年毎の外 狽フ維持審査
5年
@ 一
自己評価システム システム化(内部監査) 審査前の自己採点
評価者 ISO認定登録審査員 R査登録機関
サーベイ研修受講iの経験豊富な e専門職有資格者
(出所:佐々木,2008,p.5;竹股・原2006, p.23)
また、「病院機能評価は評価項目を作成し、認定証を発行するのも日本医療機能評価 機構であるため、受審する医療機関は受動的となる」(梅原,P, 365)といわれる。一方 ISO9001では、「品質マネジメントシステムの継続的改善が課題であり、いわゆるPDCA マネジメントサイクル・プロセスを評価するのであり、すなわち品質の内容を決定す るのはその事業所(経営者)ということになり、それを継続的に向上させるシステム になつているかを問うものであり、受審事業所にとっては、主体的な取り組みとなる」
(梅原,p.365)とされる。
また、病院機能評価とISO9001との最大の違いは、「病院機能評価が病院のみを対象 としているのに対して、ISO9001は業態、地域、範囲などの特定の対象を決めていな い点にある。今後、医療機関に押し寄せる民間企業の参入規制緩和や、少子高齢化に
伴う外国人医療労働者の流入など、グn一バル化に伴って起こる従来の病院スタイノレ の多様化とその変化の加速に、病院機能評価がどう耐え得るものにバージョンアップ
していけるか、ISO9001の考え方は病院機能評価に1つのお手本をみせている1(武田 監P.46)といい、病院機能評価は病院のみを対象としているが、ISOgOO1は特定の対 象を決めていないところに最大の違いがあると述べている。これからの病院の多様化 に向けてはISO9001が病院機能評価にお手本を示すことになろう。
2.病院機能評価とISO9001の双方の導入効果
武田は、病院機能評価とISO9001について、「ISO規格がモノそのものに視点をおか ず、モノを生み出すプロセスのストラクチャー(構造)に評価の的を絞ったのに対し て、病院機能評価は病院サービスを生み出す機能全般に着眼していることに差がある。
(中略)これら両者の差は、医療サービスがモノの質からヒトの質へ関心が集まる中、
ヒトの活性化においてどう実質的な活動プログラムとしての成果を得られるか、今後 両制度の普及状況に注目すべきところである」(武田監1998,pp,46−47)といい、病院 機能評価とISO9001の特徴を挙げている。この特徴を踏まえて、病院機能評価と ISO9001を活用していくことが必要なのである。
病院機能評価とISO9001の双方の認定を取得している病院の例をみる。2005年の医 療タイムスの記事からであるが、鳥取県の特定医療法人仁厚会藤井雅雄記念病院は、
2003年にIS9001の認証を取得し、2005年に病院機能評価の認定を受けた。藤i井雅雄 記念病院の院長は、「診療サービスを向上させるためには、ISO9001も病院機能評価も 有効な手段だが、その手法はまったく異なっている。それぞれの良い点を組み合わせ
ることで、医療の質はさらに向上する」という。そして、病院機能評価とISO9001の 認定後は、「5年に1度の病院機能評価更新に向けた取り組みをISOで定着させ、改善 を継続させている」といい、病院機能評価とISO9001の認定の効果を説明している。
そして、「もともと、病院機能評価が医療の質の具体的な目標を掲げているのに対し、
ISO9001は、その医療の質の維持・向上を管理するツールであり、その性質は異なる。
この二つの第三者評価を有機的に組み合わせることで医療の質の向上につなげていき たいという初期の目的を果たしている」とし、病院機能評価の認定とISO9001の認証 取得の双方に取り組む効果を述べている。さらに、「病院機能評価は経営的な項目が少
ないが、ISO9001は企業の品質管理からスタートしており、管理する対象によ一)て何 にでも利用できる。病院機能評価の認定取得とIoS9001の認証取得は、健全経営のた めでもあると院長は、医療の質の向上だけでなく、健全経営のためにも病院機能評価
と工OS9001の認証取得は有用であることを強調する」といっており、双方に取り組む ことで、質の向上と経営の健全化にもつながることが示されている。また、rPDCAサ イクルが定着し、職員中心の流れだったそれまでの業務が、患者さんを中心とする流 れに変わった」とし、ISO9001導入の効果を述べているが、一方、「ISO9001はあらゆ る業種で利用できるシステムであり、具体的な医療の質の目標・着目点等が表示され ない。そのため、それらを客観的に求めることが必要となっていた。また、認証機関 に医療の専門家が少ないので、医療の質を向上させるためには弱い部分もあったよう な気がする」(医療タイムス,2005)ともいい、ISO9001認証における問題点も示して
いる。
鳥取県の特定医療法人仁厚会藤井雅雄記念病院の例では、先にISO9001の認証取得 をし、その後に病院機能評価の認定を受けている。しかし、多くの病院は病院機能評 価の認定はされているが、ISO9001への取り組みはまだであるといった状況であろう。
病院機能評価の認定を受けた後にISO9001に取り組む場合には、中原は、「これらの病 院では病院機能評価項目による施設構造や体制に関する基準を満たしているので、こ
こにPDCAのマネジメント・サイクルを追加することによって、医療サL−一一ビスの質の保 証、患者さんの満足の向上、そしてマネジメント・システム自体の継続改善を図るこ
とが可能となる」(中原,2006,P。3)と示唆している。
亀田総合病院では、1999年に病院機能評価Ver. 2. Oの認定を、2000年にはISO9001 の認証を取得した。亀田総合病院薬剤部長の話によると、rlSO9001と病院機能評価の 相違点については、一言で言えば、医療機能評価機構は病院の建物や設備、組織・委 員会、規定など、主にstructureに関する審査が行われているように思われるのに対
し、ISO9001はprocessにあると思う」(BS病薬アワ・−2002年12月20日放送資料)
といい、病院機能評価とISO9001の相違を説明している。また、 ISO9001認証取得を 機に内部監査や標準化を通して、他部門他部署がどういう考え方でどんな仕事をして いるのか良くわかるようになった、というISO9001の認証に向けた取り組みの効果を 挙げ、「内部監査を重視することにより各部署の改善効果が強まるばかりか、部署間の 比較による院内全体の底上げ、コミュニケーション活性化など環境の変化をもたらし
た。医療において、特にチーム医療が叫ばれるなか、他部署スタッフに対する理解あ るいは情報の共有は医療の質を考える上で重要なことであるL、そのためにISO{}oe1は 大切なツールとして有用であると実感している」(BS病薬アワー・2002年12月20日放 送資料)とし、第三者評価の重要性もさることながら、ISO9001導入による内部監査 の重要性を挙げている。そして、「認証を取得することが目的ではなく、いかにシステ ムを運用するかを目標にして、その方向を持ちつつ、全ての患者さまの幸福に貢献で きるように活用したい」(BS病薬アワー−2002年12月20日放送資料)といい、 ISO9001 のマネジメント・サイクルを活用し、患者の視点に立った医療の質の向上にいかに向 かっていけるかを論じている。
さらに、ISO9001の認証を取得した病院の事例についてみていくと、富士ゼロック スのホームページから、ISO9001を認証取得した埼玉県の三浦病院の事例をみること ができる。そこにはISO9001認証取得の背景を、「日本医療機能評価機構が行なう第三 者評価もあるが、日本医療機能評価機構が行なっている評価制度では、あらかじめ定 められた機能水準をクリアすることが求められる。一方、ISO9001の場合、自ら基準 を検討し、作り上げ、達成していく。また、日本医療機能評価が認定を受ければ5年 間有効というのに比べ、ISO900]は毎年、外部審査機関によるサー一ベランス(定期的 チェック)がある。であるから、構築したQMS(品質マネジメントシステム)が実際 に機能していないと、外部から指摘を受けることとなる,、私どもは、組織の仕組みを 構築するいい機会と捉え、形式上の認証でなく、実際に当病院に根付いたしくみの構 築を目指すという観点から、QMSの導入を決定し、職員全員参加の活動への取り組み を開始した」(富士ゼロックスのホームページ)としている。また、ISO9001導入の目
的として、
① 医療現場における問題点の把握と改善のための組織的な管理の仕組み (PDCA)の導入
② 安全管理(ヒューマンエラー・再発防止・潜在的問題解決等)の仕組みの 強化と、確実な是正および予防処置によるサービスの質の向上
③ 技術的確実性の確保やサービスの質のバラツキをなくすことによる医療サ ービスの質の向上
④ 第三者評価へ対応し、機関としての生き残り(保険点数への導入)を図る、
の4点を挙げている(富士ゼロックスのホームページ)。そして、ISO9001認証取得後
の効果としては、「医療業務に対して、誰が担当者で、誰が責任者かということを常に 意識することで、その対応が確実となり、かつ、原因追求や歯止め策がシステマチッ
クに行なえるようになり再発防止につながってきている。また、当病院では以前より 行なってきた、受付け部門でのお客様ケア(待ち時間や施設環境等に対する気配り等)
も改めて、医療サービス向上のための活動の一環として認識されるようになった」(富 士ゼロックスのホームページ)とし、Isogoel導入による、各業務における責任者の 明確化とそれによる対応の確実化が挙げられている。
安倍は、「医療サービスの質を高めるには、国際的なマネジメントシステム規格であ るISO9001に適合した病院の経営システムの構築とこれに対する第三者の適合性評価 制度、そして日本医療機能評価機構による病院機能評価制度が、互いに補強しあうこ
とが大事だという点である」(安倍,2007,p.40)といい、 ISO9001と病院機能評価との 相互の補強の必要を説明している。そして、「言い換えれば、経営実践のための基本的 な組織構造とそれを動かす人間系のソフトツールとしてのISO9001と、病院設備の充 実と管理というハード的な改善アプローチの機能評価の両面から、医療サービスを提 供する病院の経営を改革し、患者本位でしかも透明性の高い医療機関を作っていくこ
とが、社会的責任を果たすことにもなるという目的意識からである」(安倍,2007,p.40)
とし、ISO9001と病院機能評価の双方導入の効果を表している。
第2節 ISO9001とISO14001の統合
1.ISO9001とISO14001の導入事例
医療界においては、武田病院グループの健診センター一一Lが平成8年(1996)にISO9001 を、平成9年(1997)にISO14001の認証を取得したのがISO規格認証取得の始まりで ある。武田病院では、院内の帳簿整理とマニュアル化の推進の結果がほとんど出せな い状況のときに、日本医療機能評価機構の基本理念とも通ずる第三者評価という考え 方に興味を持った理事長がISO9001の柱が品質マニュアルとそれに伴う帳簿整理であ ることがわかり、結果を出せなかった院内帳簿整理とマニュアル化の取り組みと合致 するのではないかと考えたことがきっかけとなっているようである。ISO9001の認証 取得に向けた活動を通して、やはり経営のトップが強い意志を持って進めていかなけ
れば、ISO9001の認証取得は難しいということであった、,帳簿整理やマニ・・アル化が、
現場に任せて進まなかったことは、トップとしてISO規格でいう 経営者の責任 に おいて要求されている品質や環境の 方針 や 組織の責任と権限 、 経営者によ
る見直し などの基本的なことをなおざりにしていた結果だったといっている(武田
監1998,PP./4−16)。
武田病院グループは、「具体的な取り組みを開始した約1年後、ISO9001の認証を取 得した。そのころ産業界では、すでにISO14001の認証取得が始まっていた。産業界に おいては、ISO9001シリーズ取得では世界的に出遅れていた反省もあり、ISO1400シリ ーズへの対応は早く、京都でCOP3(地球温暖化防止京都会議)(19・97年に開催された)
の世界会議が開催される予定もあり急速な広がりをみせていた。現在、企業が環境に 対してマネジメントを行っていくのは当然の時代となりつつある、,世界的には環境に 対して企業が責任を持つことは義務であるとさえ考えられている。医療界、病院運営 においても医療廃棄物や感染性廃棄物のゴミの問題、院内清掃や院内感染防止の環境 問題、医療環境が厳しくなってきたことによる経営的見地からの省エネルギーなどの 環境問題は非常に重要な問題である。このことからISO14001への取り組みは今後必ず 武田グループに必要になってくることであると考えて、引き続きISO14001の認証取得 に取り組むことにした。ISO14001はISO9001に比べて概念的には医療機関にとって取
り組みやすいと考えていたのであるが、対象となる範囲の設定など意外と難しい問題 があり、それ以上の苦労が必要な部分があったと。しかし、ISO9001認証取得後の約1 年後にISO14001の認証を取得するに至った」(武田監,1998, PP.15−16)といい、ISO9001 認証取得後、ISO14001に取り組んだ。また京都では地球温暖化防止京都会議の影響も 大きく、ISO14001は急速な広がりをみせていたのであった。
ISO規格の認証をどのように活かしていくかという点について、武田病院グループ では、「 ISO9001の認証を取得しているからといって医療の質が高い ということは 決してない。(中略)ISO規格はマネジメントのシステムであり、これについて第三者 評価を受けて国際規格の保証を受けているだけなのである。重要なのは、これに基づ いて継続して組織運用がされていく中で、コールバックや年度計画を通してその組織 が持つ問題点が改善されていき、その積み重ねによって必然的に質が向上していくと いうことにある。また、職員にとってもマニュアル化がなされていることで業務が把 握しやすくなるだけでなく、責任の所在がはっきりすることで仕事に対する取り組み
姿勢に緊張感が生まれ・そのことが質の保証を支える重要な要素を形成していくこと にもなる。認証取得に対して外部から注目されることも、組織のスタッフとしての自 覚の向上につながる。また、医療サービスの各部門でも外注委託業務が進んでいるが、
委託をする場合もISO規格の要求に基づいて外注業者の質のチェックが行われていく。
外注委託業者がISO規格の認証を取得していれば、その業者のマネジメントは問題な く、安心して委託を任せられる」(武田監1998、PP.16−17)といい、 ISO規格の認証取 得の効果を表している。
武田グループでは、品質マネジメントシステムをべ一スとして、環境マネジメント システムを構…築し運用している。双方の主な違いは、ISO9001はモノやサービスの質 の維持に重きをおいているのに対して、ISO1400]は環境の質の改善の計画や緊急時の 対応が重視されているところである。
2、ISO9001とISO14001の統合
IntegratedManagement System(IMS)とは、ISO9001やISO14001、Occupationa1 Hea]th and Safety Assessment Series(OHSAS)18001等のマネジメントシステムを1つのマ ネジメントシステムとして統合化することである。多くの企業等では、ISOのマネジ メントシステム導入時は個々の関連会社または事業所が単独でシステムを構築し、品 質、環境、安全など別々の機能ごとにシステムを構築していた。そうして、システム 構築の初期の目的は達成した。しかし、長期的にこれらのシステムを維持し、効果を 発揮させるには、従来からのTQMなどとの融合、一体化、 ISOマネジメントシステム の統合化を図ることにより、全体マネジメントシステムの重複部分や無駄な部分を削 除し、より経営に役立つようにすることが必要であるという(清水監,2002,P.1)。
組織のあるべきマネジメントシステムの原点に戻れば、他の財務、人事、環境、情 報セキュリティなどのマネジメントシステムとの両立、統合は当然の帰結であるとさ れる。ISO9001には、 EMS、労働安全衛生マネジメント、財務マネジメント、リスクマ
「 ジメントなどの他のマネジメントシステムに固有な要求事項は含まれていない。し かし、組織がQMSを、関連するマネジメントシステムの要求事項にあわせたり、統合
したりできるようにしているという(久木田他,P.8)。
ISO9000シリーズ2000年版改定のポイントとして、ISO14000との両立性がうたわれ、
ISOgOOOシリーズ以外のマネジメント規格とくにEMS規格(ISOHOODとの両立性に 最大限の考慮を払うと明示されている(図表29参照)(JABホL−一ムページ)v
ISO14001の2004年改訂版では、 ISO9001と同様に、 ISO9001との両立性の向Eがう たわれ、要求事項についてISO9001との共通性の一層の改善が図られている(吉田・
寺田編PP.9−29)。両規格共に共通し、類似する要求事項は多いことが確認できる。両 規格とも、顧客満足の向上を目的にするのか、環境影響の低減・向上といった改善を
目的とする活動に着目するかが異なるだけであり、方針策定や活動の展開、その結果 の記録とレヴューによってスパイラルアップすることにより、PDCAサイクルを回す(運 用する)という点では同様の活動であるということができる(長崎,2004,PP、337−338)、,
こういった観点から、ISO9001やISO14001の統合は、両方の規格を有している企業・
組織であるならば自然な流れであり、首尾一貫したマネジメントを展開していく上で も必要なこととの提言がある(長崎,2004,pp.338)。
図表29 1SO9001とISO14001との要求事項の共通項目
項目 ISO9001:2000 ISO14001:2004 方針 5.3 品質方針 4.2 環境方針
融勺及び目標 5.4.1品質目標 4.3.3目的、目標及び実施計画 責任及び権限 5.5 責任、権限及びコミュニケーション 4.4.1資源、役割、責任及び権限
文書管理 4.2.3文書管理 4.4.5文書管理 記録管理 4.2.4記録の管理 4.5.4記録の管理
教育・訓練 6.2.2力量、認識及び教育・訓練 4.4,2力量、教育訓練及び自覚 内部監査 8.2.2内部監査 4.5,5内部監査
マネジメント・レザ。一 5.6 マネジメントレウ 亡 4.6 マネジメントレヴ亡
(出所:長崎,2004,p.337;日本工業標準会ホームページ)
JABによるISO14001とISO9001の認証登録件数において、病院としての登録で2つ のマネジメントシステムに重ねて登録があったのは、徳島大学医学部・歯学部附属病 院の1件であった(2010年4月10日現在、JABホームページ)。組織の価値向上と社 会的信頼の獲得のために、複数のマネジメントシステム規格に取り組む組織は年々増 kており、財団法人日本品質保証機構(JQA)が開発した統合マネジメントシステム
(lntegrated Management System:工MS)審査は、組織の中で、複数のマネジメントシ ステム規格をひとつのマネジメントシステムとして統合し、有効に運用しているかを 審査するものであるとされる(JQAホームfR−一ジ)。組織は複数のマネジメントシステ ムの統合によりマネジメント全体のパフォーマンスの向上を実現することができ、そ
の結果として、システムの維持費用の軽減を可能にし、経営システムの有効性や効率 の向上に結びつけることができる(JQAホームベージ)。このような統合マネジメント システムの審査についても提案されている。
また、IMSに取り組むメリットとして、経営システムの部分最適から全体最適への 転換が図れ、マネジメントシステム全体の整合性及び効率の向上によるパフォ…マン スの向上、また組織体制の強化が期待でき、システム維持費用の軽減、複合審査以上 の効率化が挙げられる(JQAホームページ)。
ISO規格をはじめ、各種のMS規格を導入する際には大きなネソクとなるのが、その 費用であると考えられる。梅原は、「病院機能評価を受審する際の費用は、]50万〜300 万円とされ、ISO9001の審査に際しては認証審査(初回審査)や定期審査を含めた登 録維持費用を含めて300万〜1,000万(組織の人数により変化する)が必要とされる」
(梅原,p.366)といっている。従って「組織にとって核となるMSを一つ認証取得し、
その後ニーズに応じて必要となるMSを認証取得費用の必要のない 自己宣言 など で補っていく方法も、IMS構築の有効な方法と考えられる」(長崎,2004, p.344)といわ れる。自己宣言に取り組む地方自治体の長野県飯田市の例をみると、「審査登録の経験 から内部監査の役割の大きさを確認し、審査登録より厳しいものへの挑戦として、徹 底した成熟したシステムを目指していることが確認できる」(石井,2006,pp.102−107)
とされる。審査登録制度による第三者審査に劣らず、その成果を挙げてきていること
も看過できないものとなっている(長崎,2004,p. 344)。
また医療におけるマネジメントシステムの統合については、一般的には、品質マネ シメントシステム後にEMSを導入するのがよいとされている。それは、 ISO19001は、
モノやサービスの質の維持に重きをおいているのに対して、ISO14001は環境の質の改 善の計画や緊急時の対応が重視されているからである。また、外部との関係について は、品質マネジメントシステムは対象が顧客であり、品質を安定したレベルで供給す ることにより顧客の満足を得ることにあるが、EMSは、対象が地域や社会の環境、更 に地球規模にまで至るきわめて広範囲のものとなるからである(武田監,P.141)。医療 においては、質の追求が必須の課題とされ、組織として取り組むことが重視されてい る。そのため、ISO9001の取得から取り組むことが現在のところ自然な流れのようで
ある。
もともと企業または組織のマネジメントシステム、すなわち経営のシステムは、1
っのはずである。それを 審査登録 というお墨付きの都合でいろいろな個別のマネ ジメントシステムをつくることは本来おかしい、という意見もある、、企業の活動には 色々な側面があり、その側面は見る側の位置により見え方や大きさが異なる、,また、
この各側面自身の大きさも、時代の要請により変わってくるものといわれる。従って、
マネジメントシステムに関する基本的な要求事項は本来同一一一一のものであり、この運用 のために用意される個別のマネジメントシステムの内容の間に矛盾がなく、それぞれ 両立できるものでなければならないともいわれる。また、企業はその事業活動を通し て、各種の社会的責任(CSR)を果たさなければならず、それは、品質、環境をはじめと
する他のマネジメントシステムとしての労働安全衛生マネジメントシステム
(OHSAS 18001)等すべてに関係してくる。この社会的責任が果たせない場合には、企 業に損害を与えるというリスクが存在する。このリスクを低減あるいは回避できない と、企業は大きな損失をこうむることになる。ISO9001/ISO14001/OHSAS18001は、ど れも共通してリスクマネジメントをべ一スとした規格と捉えることができる。
ISO14001規格の環境側面の特定と環境影響評価、 ISO9001では、顧客満足の調査を行 い、その他のデータの分析を求めるのはリスク予防といえる。またOHSAS1800規格に
も危険源の特定とリスクアセスメントはリスクの大きさを評価するためのものである
といえる(小野,pp.23−26)。
企業における1っの行動や活動は安全、品質、環境など、それぞれ別の側面でとら えているだけであり、安全や品質、環境などの活動は同時に行われている,、そのため 安全の手順書、品質の手順書、環境の手順書などを個々に作成し、これを別々に管理 することは無駄であるしロスも大きい(清水監,2002,P.5),,
日本的経営の1っとして、全員参加による小集団活動や改善提案制度があり、これ はISOマネジメントシステムの予防処置の提案や種々の改善機会を検討するのによい しくみであると思う。しかし、現実的にはISOマネジメントシステムに取り入れてい ないケL−一・スが多い。一般的にKYT(危険予知訓練)は、安全面での訓練に取り入れられ ているケースが多いが、自動車業界などでは、品質面にも応用し、品質KYT、品質ヒ ヤリハットという名称で予防処置につなげている例もある。これはTQMのしくみ、こ れは工SOのしくみ、更に、これは環境、品質、安全のしくみと境界線を引くのではな
く1・ 一タルとして成果を期待できるようなシステムづくりが必要となる(清水監2002,
PP・5−6)。
病院においての、IMS構築の効果と可能性は確認することができた.、また、 IMS構築 の方法として、組織にとって核となるMSを…つ認証取得し、その後ニ…ズに応じて必 要となるMSを認証取得費用の必要のない 自己宣言 などで補っていく方法もあり、
取り組みによっては、自己宣言でも大きな成果が挙がっていた。また、IMSに取り組 む意義としては、経営システムの統合が図れ、パフォーマンスの向上、組織体制の強
/ヒが期待できることも確認でき、これからは医療施設も、IMSに取り組んでいくこと の有効性が示された。
医療機関においては、長く医師の診療行為に従って成り立ってきた経緯があり、経 営という視点から、マネジメントシステムを構築する、PDCAサイクルを回していく、
といった概念はなかった。市場原理が導入された後、病院も閉鎖に追い込まれる時代 となり、病院も経営を意識していかないと継続していけないと、病院マネジメントに っいて考えられるようになってきた。医療においては経営というものに疎く、マネジ
メントシステムを構築することには大変な努力が必要となる。マネジメントシステム の構築には、リーダーとなる病院長の牽引力、意志の大きさが影響する。また、その 意志を受け取り、更にマネジャーたちに強力にその必要性や取り組みの方法を伝えて いくサブリーダー的副院長、事務長等の力量も問われる。
また、良いマネジメントと悪いマネジメントを分けるのは、組織の問題解決力の違 いであるとされ、クロスビーは、未成熟な組織と成熟した組織を比較し、品質向上が 可能となる組織のあり方を明らかにした。それによると、成熟度の低い組織のマネジ メントの特徴は、目的が不明確で、その場しのぎの状況対応が中心に行われ、問題の 対処もさまざまで、結果として提供される製品・サービスの質が低くなる。当然、顧 客満足も低くなる。これとは対照的に、成熟度の高い組織マネジメントは、戦略的要 素を経営に取り込み、顧客価値を実現するための明確なプロセスが定義され、計画さ れたプロセスに従った活動が行われ、その結果が把握されている。クロスビーは品質 問題を組織の問題解決力としてとらえ、それには組織のマネジメントの成熟が必要と 説明している(沖他,PP.96−97)。クロスビーに従うと、統合マネジメントを構築し、
改善に向けることで、組織力の向上が図れ、顧客満足に対応できることになるといえ
る。
医療界においては、2005年に医療法人豊田会刈谷豊田総合病院が、ISO9001と ISO14001を統合したマネジメントシステムを構築し、品質・環境マネジメントシステ
ムの統合審査を受審し、2006年に認証を取得した。この品質・環境マネジメントシス テムを構築した意義として、医療界と環境は精神的観点で密接な関係を持っていると し、「我々医療に携わるものは、人々の健康を常に考えた活動をしているが、その活動 を更にグローバルに捉え、地球の環境を保全することにより、人類の健康を保ってい く活動を医療界が率先して取り組むことに大変意義がある」といっている。その結果、
各セクションに与えられた品質向上への取り組みの結果として、環境への取り組みも 十分に達成されることとなっている。そして、豊田会の理念が社会貢献であり、コン セプトをわかりやすく「本当に患者さんにとって良いことなのか?」としている、、患 者に十分納得、満足して医療を受けていただくために顧客満足の視点に基づいた様々 な取り組みを行ってきた。また併せて職員満足への取り組みも行っている。職員満足 なしには顧客満足への積極的な取り組みはあり得ないからである。感染性廃棄物の処 理をしっかり行うことは、人類全体に対する顧客満足への活動であり、また院内での 処理方法を明確にすることにより、院内感染防止という品質向上に寄与するばかりで なく、誤刺(誤って使用して汚染されている注射針を人や自分に刺してしまうこと)
事故防止など、職員の安全衛生を高める職員満足としての活動にも直結する。まさに 病院における品質と環境への積極的な取り組みは、豊田会理念に直結する仕組みなの
である(祖父江,2006,pp.54−57)。
医療のマネジメントにおいては、質の維持向上は欠かせずISO9001の認証取得に向 け取り組む事例は増えている。そして、病院の社会的責任を考えた場合には、健康に 影響を与える環境問題に取り組むことが使命と考えることができる。従ってISO9001 にみならず、工SO14001にも取り組んでいくことが必要と考え、医療法人豊田会刈谷豊 田総合病院のように品質・環境マネジメントシステムの統合審査を受審し認証を取得 していく意義が確認されよう。またISO9001と病院機能評価は評価内容を互いに補完 しあっているともいえ、ISO9001と病院機能評価の双方に取り組んでいく効果も確認
できる。
第3節 統合マネジメントシステムとHSR(Hospita]Socia]Responsil)ility)
1 CSR(Corporate Social Responsibility)の意義
近年は企業の社会的責任:CSR(Corporate Social Responsibillty)が強く要求され ている。河口は、CSRについて、「 企業の内側と外側を再確認すること と定義して いる。これは言い換えると、己を知り相手(社会)を知ることである。内側から見直 すということは、企業のミッションを再確認し、企業の社会的な存在価値を問い直す ことを意味する。(中略)次に、 外側から見直す ということは企業を取り巻くステー クホルダー、すなわち社会との関係を再確認することである。そこで、社会(相手)
を知る時に重要な点が1つある。それは 何がビジネスチャンスなのか という切り 口以外の視点から社会を知るということである。地域の住民や、NGOなどビジネス上 あまり利害のないステークホルダーがその会社に対して何を期待しているのか、また 従業員などビジネスに直接関係の深いステークホルダーでも、会社とどのように関わ っていきたいと思っているのか。彼らの要求は、環境保全やワークライフバランスの とれた職場制度など直接ビジネスにっながらないように見えるものが多く、通常の企 業活動の中で無視あるいは軽視されがちであるが、これらは社会の変化とともにビジ ネス上も重要なテーマとなることが多い」(河口,2008,P.962)といっている。また、
持続可能性(サステナビリティ)とCSRとの関係も問われ、同義語として扱われると きもある。さらに河口は、「現代のように環境的・社会的アンバランスを前提にして拡 大し続ける今のグローバルな社会経済システムが持続可能でないことは自明の理であ ろう。(中略)そして企業・産業界に対して、企業の社会的責任として地球環境問題、
貧困問題など人類の持続可能性に関わる問題に積極的に取り組んでほしいという圧力 が強まっている。そして企業側も動き始めている。一方、IT社会の進展でグm一バル 化する情報ネットワークのおかげで市民やNGOの発言力が増えており、それが市民社 会形成に一役買っている。世界規模で多くのNGOが行政や企業の行動を監視、批判し、
協働して、市民社会をべ一スにした合意形成への努力を始めている。(中略)つまり、
工T社会によってNGOや従業員、地域社会などのステークホルダーの、企業に対する様々 な要求の声も大きくなってきており、これに企業として応えることがCSRとして求め
られるようになってきている。このように整理すると、持続可能な社会づくりに自社
の活動内容を拠点として貢献していくことがCSRの最大のテs−一 一マといえよう」(河口,
2008,p、964)といい、持続可能な社会づくりに貢献していくことがCSRとして求めら れていくことが重要であることを説明している。
このような流れの中で、企業の環境CSRとして求められることを、河口は、「今まで の環境CSRといえば、環境マネジメントシステムを構築して、自身の工場やオフィス あるいは物流段階での環境負荷削減が図られてきた」と説明している。しかし、自社 の取り組みだけでは環境負荷の低減は困難であり、河口はリコーの例を挙げ、「自社(リ
コー)の工場や拠点から排出する環境負荷だけでなく、製品の川上から川下までの環 境負荷にも配慮した製品作り、すなわちライフサイクルでの環境負荷削減を心がける 企業が増えている。これは、材料が自社の手に届く前から製品が自社の手を離れた時 まで、要するに自社がかかわる製品が広く社会に与える環境負荷の波及効果を配慮す るようになることを意味する。欧州ではCSRの取り組みを、 企業が企業を取り巻く広 い社会(wider society)に対して行う貢献 と捉えることが多いが、こうした環境負 荷削減は、まさにwider society(企業を取り巻く広い社会)への影響を考慮した取
り組みであり、これからの環境CSRを考えるうえでは、絶対に不可欠な視点である」
(河口,2008,p.965)といい、環境CSRのありようを説明している。
別の論点から環境と医療の関係を見ていくと、川野は、「環境は公共財といわれてい ますが、医療も公共財であると思います。つまり青い空、きれいな水、広い海原は誰 でもが無料で使えます。日本の医療は皆保険で誰でもが享受できる仕組みができてい ます。また、対象を選びません」といい、医療の公共性について示している。さらに、
「病院は、液体、気体、固体の廃棄物を排出し、さまざまな医療材料を環境中から取 り出しています。医療というサービス業を営み、公共財を利用している以上、社会、
市場のステークホルダーに対するアカンタビリティL−一一・(説明責任)があるはずです。
そもそも医療自体が公共財であるならば、医療従事者は、 ダブル でアカンタビリテ イーがあるといえます」(川野,2006,pp.309−310)とし、医療の説明責任について言及
している。
さらに川野は、「環境の問題が、公害から地球環境に変わってきたように、医療の世 界でも感染症から生活習慣病へとわれわれのライフスタイル起因の環境問題、病気へ と変ってきています。従前の公害、感染症には規制とか対症療法が有効でした。しか し・これからの地球温暖化問題、循環(ごみ)問題には規制より自主的取り組みや経
済的措置が有効です・(中略)同じように医療においてもライフスタイルに起因する生 活習慣病などは、対症療法より予防に重心をおくほうが効果的であるといわれていま す。(中略)ここで、最も重要なことは教育です。地球環境化、ごみ問題も消費者レベ ルでの理解が重要です。医療においても患者の理解がなければ予防医療の成功はない でしょう」(川$i, 2006,PP.310−311)といい、医療においても環境問題と同様に、対症 療法ではなく、自主的な取り組みが必要とされてきているといっている。
また川野は、「地球環境にやさしい病院とは、単に電気をセL−・・一ブしごみを減らすだけ でなく、患者、地域の市民、看護師はじめ病院職員、地方自治体との双方向のコミュ ニケーションをべ一スに先のトリプルボトムライン(環境・経済・社会)を達成し、
経済的にも自立した病院だと思います。そして、その成果としての環境が本物の環境 だと信じています」(川野,2006,p,311)と、病院もトリプルボトムラインを考えた経 営を展開していく必要を示している。ここでトリプルボトムラインとは、「経済、社会、
環境の3分野で持続可能な成長(Sustainability)を実現するという考え方」であり、
トリプルボトムラインにおいて、「CSRとしての企業の社会的責任が問われるようにな ったのである」といわれる(阿部,2005,p.455)。ここで問われる企業の社会的責任(CSR)
であるが、阿部は、「企業は経済的な役割を担うだけではなく、社会問題、環境問題、
あるいは人権、労働問題に積極的に責務を果たすこと」(阿部,2005,p.455)という。
さらに阿部は、「もっとも、経済学的には、企業の責任とは利潤(配当)の最大化につき るともいわれている。一方法令順守はリスクマネジメントであり、CSRは従業員の働 きがいを高めるという長期的な視野でのメリットは認められるとされる(中略)ここで、
CSRの構造を示すと図表30のようになる。あくまでもコンプライアンスを土台に、次 に企業の本来的な役割である経済的責任を果たし、さらに社会的貢献を行うという順 序を踏まなければならない。寄付など慈善活動をしているからといってCSRに熱心だ
とはいえず、不正に上げた利益で社会貢献をしても、もちろんCSRとは認められない」
(阿部,2005,P.455)といい、 CSRの構造を説明している(図表30参照)。
図表30 CSRの構造
コンプライアンス/倫理.
法令遵守
(出元斤:「〜可音∬,2005,p.455)
医療においても企業の社会的責任に対応し、持続可能な活動の展開として、環境問 題に取り組むことや、社会貢献活動に取り組むことが求められてきている。医療機関 を運営すること自体も社会貢献活動とはいえようが、地域に密着し、その病院にしか できない活動が期待されているといえよう、、
神野は、近年の医療機関側の改善に向けた取り組みとして、「 医療の質 がますま す声高に叫ばれている。しかし、ここでいう 医療の質 の本質を確認しておく必要 がある。すなわち、 医療の質 には治療行為に伴う 診療の質 ばかりではなく、組 織体としての 経営の質 の追求も包含しているものと考えられる。それによって、
各々の医療機関で行われている医療が社会から必要とされているサービスであるかど うか判断されていくに違いない」(神野,2005,p.453)といい、医療の質を追求してい くことが社会から求められていくとしている。
そして神野は、「 企業の社会的責任(CSR:Corporate Socia!Responsibility)
は、企業にとってその存続をも左右する重要な視点となっている。今年、話題となっ た 企業価値 という言葉もまた、企業が社会に対して行うべきCSRをまっとうして こそ生きてくるものであると思われ、CSRをないがしろにしたマネーゲームだけでは 真の企業価値を産み得ないものと考える。企業に課せられているCSRでは最も原則的 なものとして 規範の遵守 、 製品(病院ではアウトカム)・サービスの提供 、 収益 の確保と納税 、 株主利益の保護 であるといわれる。さらに、 積極的な情報開示 、 環境への配慮 、 誠実な顧客対応 、 社員のキャリアアップ支援 、 社会活動への 関与 などへと拡大されているのである」(神野,2005,P.453)といっている。
さらに神野は、「病院は従来 地域医療 という視点のもとで公共性ばかりを主張し
てきた。しかし、今後は唯一 株主利益の保護 を除いて、CSRと同様に顧客満足、
安全、雇用、環境問題、個人情報保護から経営上の問題までへの透明性と対応が求め られていくに違いない」(神野,2005,P.453)と締めくくっている、,
そして、阿部は、「病院における社会的責任、HSR(Hospital Socia!Respons]bility)
にっいても、基本的にはCSRの構造に対応して考えることができる。 HSRの基本は、
医師の職業倫理でふれたように、やはりコンプライアンスであり、柱は病院ごとの行 動規範の策定である。はじめに当該病院のステL−一.・クホルダーを検討する。病院関係者
としては、医師以外の薬剤師や検査技師などの医療従事者、あるいは事務職員、救命 救急士やボランティアなども挙げられよう。そして、病院関係者がそれぞれ関係する 法令の病院経営上の遵守項目やリスク要因を列挙し、医療従事者間などの関係も整理
し、あるべき姿勢や行動の規範にまとめていく。(中略)さらに、患者・家族、地域社 会、医療関連業者、福祉関係者、行政機関、あるいは環境といったステークホルダー に対して、それぞれに誠実な姿勢とは何かを考えていかなければならない、,例えば、
医療関連業者への接待やキックバックの要求など優越的地位の濫用を戒めなければな らない。また、職員間でのセクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントの禁止 や人権の尊重、病院の職員に対する労働法規の遵守や働きやすい職場づくりというも のも盛り込まなければならない。病院全体として、パラメディカルからコメディカル に移行していくことが大切であろう。 医師の職業倫理指針 と同様に日本看護協会に よる 看護者の倫理綱領 が策定されている。これらも参考になる。行動規範策定を はじめとする倫理体制構築のPDCAサイクルも応用できる。このようにコンプライアン ス体制が整ったうえで、病院の本来の使命である診療あるいは研究の実績を高めてい く。そして、地域医療との連携、公衆衛生や保険医療への協力、国際活動への参加な ど、各病院に可能な独自の社会貢献を行っていく。これらの活動をステップごとに充 実させて整合性を持たせて総合的に取り組んでいくのがHSRと考えられる」(阿部,
2005,pp.456−457)といい、病院の社会的責任にっいて説明している。しかしながら「病 院の社会的責任、HSRは医師をはじめとする医療従事者や病院にのみ帰せられるもの ではない」とし、さらに、「医療は厚生労働省の所管で、いわば規制の下での制度とし て成立している。患者本位の医療を目指すうえで、例えば新しい治療法や医薬品のわ が国における認証体制は欧米と比べて十分なのか、医療行政のあり方にもかかわって
くる」(阿部,2005,P.457)といわる。
財団法人倉敷中央病院のCSRを踏まえた、すばらしい病院(Excel]ent H()spita!)
へのチャレンジについては、図表31のような基本スタンスがある.、そこでは、「医療 の質(A)の優れたものをGood Hospita1、 Aと経営の質(B)を満たしたものをStrong Hosplta!と名づけ」(相田,2005, p.470)ている。そして、「倉敷中央病院は使命の追 求とステークホルダーのニーズ対応を通して、真の社会貢献を求めることとし、A、 B、
社会的成果の質(C)すべてを満たしたEwc・ellent Hospitalでなければならないとした。
これが倉敷中央病院のCSRに対する基本スタンスである。これは 売り手よし、買い 手よし、世間よし の近江商人のいわゆる 三方よし に示される、日本の伝統的CSR のコンセプトに近いものがある」(相田,2005,p.471)とし、すばらしい病院としての ありようを述べている。
図表31 倉敷中央病院の病院目標一すばらしい病院
医療の質
・コアとしての医療技術
・患者対応(説明ある医 療、全人的医療)
・アメニティ(ハL−・一ド、
ソフト、人間関係)
A十B
A十B十C B.経営の質
経営システム
(戦略、経営計画、管理 システム、効率化)
・実行力ある組織風土
(変革基盤、人材開発)
C.社会的成果の質
・NPOとしての使命(ミッショ ン)の追求
(H寺†e、環境の要言青、倉」設の 理念)
・ステークホルダーのニーズ 対応
(地域住民、患者、地域医療 機関、行政、大学、関係企
業、職員)
(出所:相田,2005, p.471)
さらに相田は、「 医療施設は社会の公共財産 というフレーズがテJ9すとおり、医療 提供そのものが社会的責任の遂行であるという想いが一般的にある。もちろん立派な 社会的責任遂行の一つではあるが、今いわれるCSRはこの一一面にとどまることなく、
医療提供システムの中で、 医療の質提供責任 、 経営成果責任 、 ステークホルダー 関係責任 、 環境責任・社会的貢献責任 、 法的倫理責任(コンプライアンス) 、 ガ バナンス の各責任を果たしていくことが求められている」(相田,2005,PP.470−471)
と、医療施設のCSR、つまりHSRについて実際の取り組みを説いている。
病院においても社会の中での役割として、医療を担っていくのは当然であるが、更 に地域に密着してどのような役割を果たしていくべきなのかを病院ごとに十分に考え る時期に来たのである。病院においても企業の社会的責任に対応する、HSR(Hosplta Social Responsibi!ity)を果たしていくための取り組みに準じた活動が求められてき ているのである。
2.統合マネジメントシステムとHSRに向けた取り組み事例
病院は設置主体によって求められる社会的役割が異なっているといえ、その役割を 明確にし、その役割を果たしていくことが求められる。例として、日本赤十字社の社 会的責任にっいて言及したい。
国際赤十字は1864年にアンリー・デュナンによって発足した、,これは敵味方関係な く戦傷病者を救護する常設的な機関をっくろうというものであった。日本の赤十字は 赤十字の前身の博愛社として、佐野常民が西南の役時の1877年に設立した。このよ
うに赤十字は戦火の中に発足した。赤十字病院は戦時救護のためにも病院を設立し、
平素から医師や看護師などの救護員の養成に努める必要性から博愛社病院として1886 年に開院した。赤十字社の組織が全国的に伸張し、その事業も拡大するに従い、救護 活動をさらに発展させるには地方支部にも病院を持つことが必要とされ、その設立の 声が高まった。そして、宮下は「1903年には支部病院設立準則が制定されている。そ の準則には、①平時に於いては準備救護員を養成し、戦時に於いては傷病兵の救護に 供用すること②病床数は50箇以上とし、内5分の1以上を救助患者に充てること、と 定めている。病院が救護員の養成だけでなく、救貧事業を掲げたことは、赤十字の人 道博愛の実践の場として位置づけされたことが示されていよう」(宮下,2005,P.480)
といっている。更に宮下は、「終戦を迎えた後は、平和憲法の発市で、戦争を放棄した 日本にはもはや赤十宇はいらないのではないか、という考えも出された、、しかし、戦 後の日本には戦災者、傷庚軍人、引き揚げ者が都市に溢れ、国民の体位は低下、荒れ 果てた山河による災害の被害も多く、赤十字の救護活動、医療活動が従来にも増して 望まれていた。赤十字は 愛の赤十字 として再出発した」(宮下,2005,P.481)とし ている。このように、宮下は、「戦時救護に代わり、赤十字事業の中心には平時診療事 業が据えられ、赤十宇といえば病院をイメージする時代に変わってきた」(宮下,2005,
P.481)といっている。
また、宮下は、「赤十字病院を特徴づけている中核は国内外の 災害救護 である。
これは1947年の国の 災害救助法 と1955年の 日本赤十宇社救護規則 に則り行 われているものである。国際救援は、赤十字国際委員会と国際赤十字・赤新月連盟の 2つの国際機関を通じて、あるいは各国の赤十字社間で様々な援助を行っている。(中 略)国際救援には語学力をはじめ異文化と交わるタフネスが要求される。また、緊急性 を要し、常時スタッフの養成と確保が求められる。これらのことから2000年に 国際 医療救護拠点病院 として、赤十字の4病院が指定されている。(中略)国内救護では 全国赤十字病院に合わせて約500の救護班(要員7名)が設置されており、即応体制 を取っている」(宮下,2005,pp.481−482)と赤十字病院の特徴である災害救護について も言及している。
そして、宮下は、「日常的な救護である救急医療は、最も医療が必要とされている時、
それに応える医療の原点である。赤十字病院92病院中26病院が3次救命救急センタ ーを設置しており、これは全国の167の救急センターの16%となっている。また77 病院は2次救急医療機関に指定されている」(宮下,2005,P.482)といい、現在では日 本赤十字社の医療事業が平時の救急医療にも力を入れてきていることがわかる。
日本赤十字社における社会的責任遂行のための活動を追ってきたが、改めて一般企 業の社会的責任について考察する。
CSRについて小林らは、「企業の社会的責任であり、企業が1つの 行動主体 すな わち 企業市民 として、通常の市民が負うべき責任を果たすことである。すなわち、
企業の社会的責任は、単に法律を守ること(法的責任)だけでなく、ある行為を行う 際に、それをなす法律的義務や責任がない場合でも、社会の福利厚生の維持・向上、
すなわち、市民の幸福の維持・増大に貢献することであれば、その行為を自発的に行
うことである。(中略) 企業倫理 とは、企業活動の善悪、正邪を決定する規範であ り、企業におけるあらゆる決定は、この倫理規範に合致しなければならない。それゆ え、企業倫理は、ほとんどの企業が持つ。明文化された 経営理念 は、企業倫理の 具体的表現である。企業倫理が主として企業内部へ向けられたものであるのに対して、
企業の社会的責任は、その企業の倫理に基づいて、企業の外部に対して遂行される責 任である」(小林・齋藤編2008、P.2)といっている。
また、企業が継続していくために、小林らは、「経営戦略の設定前に企業理念があり、
企業の社会的責任観があるのである。たとえば、ドメイン(事業領域)の決定や製品・
エ程のイノベーションの実施に際しては、それらが企業倫理の要求するところの正義 とか社会性を満たすものであるかどうかという問いかけが、必要前提条件となってき ているのである」(小林・齋藤編,2008,p.8−9)。そして、「多様なステークホルダーた ちに取り囲まれている社会的存在といえるのである。見方を変えれば、そうしたステ ークホルダーを満足させなければ、企業が批判されるということである。どの程度満 足させればよいかは、一概に決定できない」(小林・齋藤編,2008,pp,9−10)という。
また小林・齋藤らは、ブローフィールとマリーの著作から、「企業責任の顕著な領域 は、企業倫理、法律遵守、フィランソロピーと地域への貢献、環境マネジメント、サ スティナビリティ、動物の権利、人権、労働者の権利と福祉、市場関係(フゴアトレ ードなど)、腐敗、コー一一・ポレート・ガバナンスである」(小林・齋藤編2008,p. 13)と いっている。
また、「企業のあらゆる意思決定において、単に 利益獲得のため とか 株主のた め ということは、もはや免罪符にはならないのである。いまや、トップ・マネジメ ント以下すべての企業メンバーが組織の一員として、社会=多様なステ・・一一一クホルダー を考慮した上で、それぞれの判断を下すことが要求されている時代に入ったのである」
(小林・齋藤編2008,P、14)とまとめており、以前では、企業は株主のためといわれ ていたのであるが、それが内部顧客といわれる職員に目が向くようになったことが重 要なところである。
これからのCSRのありようについては、「社会的責任は(SR)は、これまで企業中心に して議論され、(中略)、実践の時代を迎えている。しかし、このような推移の中で、
もう一つ変化を主張しなければならない。それはSRの主体は企業だけに限定されるの ではなく、すべての組織体(Organizations)であるという認識である。これがOSR
(Organizationa!Social Responslbillty)である。企業iは重要な組織体であるが、
現代の社会はその他の組織体によっても支えられている」(小林・齋藤編, 200,g,
pp,157−158)とし、さらに、「生活者が居住している地域には、自治体や町内会といっ たものがあり、これも活動を行っている。また、広く社会を見渡すと、学校や病院が あり、そして政治団体や宗教団体があり、さらにはいろいろな協会や団体がある。わ れわれ研究者たちも、学会や研究会を作って活動している。これらの組織体はそれぞ れが必要不可欠なものであり、活動を続けている。そして、活動を続けている以上、
それらの組織体はしっかりSRを実践しなければならない。要するに、いずれの組織体 も社会的責任を意識しつつ活動を行うことが求められているのである」(小林・齋藤 編2008,P.159)といい、 CSRからOSRへの転換の必要を述べている。
一方病院においては、病院の社会的責任をHSR(Hospita!Social Responsibility)
といって、そのありようを追求していく姿勢がみられている。その過程では、近年増 加している医療事故から、HSRが求められていると述べている。羽生は、「CSRの普及
の背景は日本企業の活動のグローバル化、続発した企業不祥事に対する反省、CSRへ の取り組み状況によって企業を格付けして投資先を決める社会的責任投資(SRI:
Socia]!y Responsible Investment)の広がり、そして消費者やNGO等のステs−一クホル ダーからの情報開示要請の高まり等が背景となったといえる」といい、CSRが日本企 業に広がってきた経緯を述べている。そして、 「CSRは、 法令、社会規範の遵守(コ ンプライアンス) 、 有用な製品・サービスの提供 、 収益の確保と納税 、 株 主利益の保護 等を大きな柱としている。このような動きは、医療機関においても看 過できない問題である。医療機関のCSRである HSR:Hospital Social Responsibility は、 法令、社会規範の遵守(コンプライアンス) 、 質の高い医療サービスの提 供 、 収益の確保と納税 をその柱としており、上記CSRの柱のなかで 株主利益
の保護 だけが非営利という性格上存在しないだけで、そのほかの要素は全く同じで あると言ってよい」 (羽生,2006,P.150)とHSRとCSRの相違と類似性を述べている。
医療機関に勤める者の多くは専門職であり、それぞれの専門職に応じた倫理綱領が 定められており、それに沿って実践することが求められる。医療機関に勤めている医 師の「医の倫理綱領」には、 「医学および医療は、病める人の治療はもとより、人び との健康の維持もしくは増進を図るもので、医師は責任の重大性を認識し、人類愛を 基にすべての人に奉仕するものである」(財団法人日本医師会,2007)とし、以下に「医