• 検索結果がありません。

英語における数量詞遊離の研究 : 移動による派生, 基底部生成,それとも?

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "英語における数量詞遊離の研究 : 移動による派生, 基底部生成,それとも?"

Copied!
17
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

英語における数量詞遊離の研究 : 移動による派生, 基底部生成,それとも?

著者 赤楚 治之

雑誌名 主流

号 62

ページ 41‑56

発行年 2001‑03‑10

権利 同志社大学英文学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015181

(2)

英語における数量調遊離の研究:

移動による派生,基底部生成,それとも?

赤 楚 治 之

1 .はじめに

数量調遊離 (Q‑F1oat)に関する分析は次のような事実を説明する必要が ある.

(1)  a.  The children would αII have been doing that.  b.  The children wou1d have αII been doing that.  c.  The chi1dren wou1d have been αII doing that. 

(2)  a.  ToαII have been doing that wou1d have been inconvenient.  b.  To have αII been doing that would have been inconvenient.  c.  To have been αII doing that wou1d have been inconvenient.  生成文法の典型的な分析では ,to不定詞のtoはINFLの補充形として考え

られているので, (1)(2)の平行性を捉えるのは容易に見える.しかし,問題 は(3)のような非対称性である.

a.  The chi1dren αII wou1d have been doing that.  b. *All to do that wou1d be inconvenient. 

もし ,toがINFLにあるとするならば,同じ分布にならなければならない はずである.例文(2)と(3b)から, αIIがtoの左側に置かれた場合,非文とな ることがわかる.しかし,常に,遊離数量詞αIIがtoの左側に現れないわ けではない.

(4)  a.  1 be1ieve these peop1e αII to have 1eft. 

b.  For these peop1e αII to 1eave wou1d be inconvenient. 

(3)

42  英語における数量詞遊離の研究:移動による派生,基底部生成,それとも?

c.  The DA proved the defendants αII to be lying. (Radford (1997: 441))  (4)からわかることは ,to不定詞の意味上の主語が明示される場合,つまり PROでない場合には, αIIがtoの左側に現れるということである.

以上の分布から次のような記述的一般化が得られる.

(5)  All can immediately precede to in infinitives only when the subject is  lexical;αII must follow to when the subject is  PRO. (Adapted from  Ba1tin (1995: 212)) 

本稿の目的は以上のような遊離数量詞の分布を説明する分析を提案すること である.

本論の構成は次の通りである. 2節では,これまでの研究を概観し,移動 分析の代表としてSportiche(1988)を取り上げ,その問題点を見る.その後,

基底部分析としてBaltin(1995)の分析を解説し,どのように上の問題を処 理しているのかを見た後, Baltinの問題点を指摘する. 3節では,移動を 基本とした新分析を提案し 1節で見たデータをどう扱うかを説明する. 4  節において,その分析がSporticheとBaltinの問題点を克服することを確 認し 5節で,新分析がアラビア語の分析からも支持されることを見る. 節において,本分析の持つ理論的意味合いと残された問題点を論じることに なる.

2胆先行研究概観

この節では,これまでの数量詞遊離の研究を概観する.

2‑1.初期の移動(=変形)分析

数量詞遊離の研究は,初期生成丈法の枠組で,変形規則を用いて処理する 方法から始まった.Postal (1974)は, (6ωからのゆが数量調後置変形 (Q‑ postposing)と呼ばれる変形規則によって生成されると分析した.

(6)  a. All the girls have brought the book.  b.  The girls have αII brought the book. 

(4)

この分析は,数量詞を右へ移動させる変形であり,その後,痕跡 (trace) が生成文法に導入され,要素の右側への移動を禁じた ProperBinding  Condition (Traces must be bound.")が整備されると, Postalの数量詞後 置変形は必然的に放棄されることになった.

変形分析が放棄されると基底部分析が主張されるようになった.基底部分 析とは,数量詞をS構造と同じ(遊離した)位置に元々置かれていると考 える分析方法で,数量詞とホスト NPとの関係を解釈規則によって結び付 ける方法である.この分析を支えるのは,遊離数量詞が副詞の生起位置と 類似しているという観察であるこの基底部分析は生成文法が変形規則に 制限を加えるという理論的方向に沿ったものとして広く受け入れられてき た.

2‑2.数量詞居残り (stranding)分析とその問題点

変形分析か基底部分析かの論争史の中で重要な役割を果たしたのは,

Sportiche (1988)による居残り分析 (thestranding analysis)である.1980  年代中期にGBの枠組で論じられたVP内主語仮説を利用して,移動するの はNPであり,数量詞はそのままの位置に居残ることによって,数量詞遊 離現象が起こるとする分析である.

Sporticheはそれまでに明らかになっていた(7)の4つの特性を, (8)のよう な観察と VP内主語から導けることを提案した.

(7)  a.白砂と

ω ω

の解釈が同じ

b.ホスト NPIDPと遊離数量詞とのagreement c.最大投射(特に, VP) の左端

d.  anaphorに似た局所性

(8)  (Floating) QS may appear in NP‑initial position. (Sportiche (1988: 427))  Postalの移動変形分析は,

(=数量詞)が右側へ移動するというものであ ったが, Sporticheは移動するのはホスト NPの方であり, Qが取り残され

(5)

44  英語における数量詞遊離の研究:移動による派生,基底部生成,それとも?

ることによって,遊離現象が起きると考えた.それを図示したのが下の図で ある.

(9) lestudentshave [all tJ finished the assignment 

~\\\\\

/ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥  

~\\

vp* 

all  the students 

¥

m v

p ¥

a V/

h

/

h

Sporticheのこの移動分析は,その後, Sh10nsky (1991)によるアラビア 語の研究から支持されることになった.Sh10nskyは, Arabicにおいて,数 量詞をheadとする QuantifierPhrase (=QP)を仮定し,移動する DPは, Qの補部にあり,まずQPの指定部にその DPが 移 動 し , そ こ で 接 辞

(pronomina1 clitics)を具現化して, QPから移動すると分析した.この研 究は, Sporticheの研究では明らかにされなかった取り出しの方法をより精 密化したという点において評価される.

同 a.Katafti  ?et  ko1/ *ku1‑am  ha‑praxim  bi‑zhirut  (1) picked  ACC  all / *all‑[3MPL]  the flowers  with‑care 

1 picked all the flowers carefully.' 

b. Katafti  ?et  ha‑praxim  ku1‑am / *ko1  bi‑zhirut  (1) picked  ACC  the flowers  all‑[3MPL] / *all  withcare '1  picked all the flowers carefully.' 

c.  Ha‑ye1adim  yanu ku1‑am/01

(6)

The‑children  slept  all‑[3MPL] / *all  The children all slept.' 

pronominal cliticは[Spec,QP]

DP移動した結果, spechead関係によ って現れるとShlonskyは仮定した.

しかし, Sporticheの居残り分析に問題がないわけではない.ここでは2 つの問題点を指摘しよう. 1つは,居残り分析は主語の場合はよいが, (11)の 例が示すように,目的語を移動させる場合が問題となる.主語からのNP 移動と同様の移動であるにもかかわらず,目的語からのNP移動は,非文

となってしまう.それを防ぐために,目的語からの取り出しを禁止するため の何らかの方策を考えなくてはならない.

仕1) *The studentswere seen αII t

cf. All the students were seen. 

もう 1つの問題点は,次のような文の派生である.

同 ThemenαII have given Up smoking. 

Sportiche流の移動分析で,同のような,主語NPにαIIが後続する例を派 生させるには, (9)に見られる文内部の階層に,さらに一つ何らかのphrase

X

を設けなければならない.つまり,その

XP

の指定部にallを残し,そこ から,一段高い主語の位置にthemenを移動させる必要がある.初期のミ ニマリストの枠組では, AGRs Phraseがその役割を担っていたが,

Chomsky (1995)ではAGRPの存在が否定されており,もしChomskyが 正しいのであれば,闘の派生には, AGRP以外のphraseを新たに設定し なければならないことになる.

2‑3.  Baltin  (1995)の分析

移動分析に対して,基底生成をとる研究者も多い.その中で, 90年代の 前半に同じような分析が独立して提案された.Bowers (1993)とBaltin (1995)である.それぞれの分析の共通点はαIIがpredicationに関与してい

(7)

46  英語における数量詞遊離の研究:移動による派生,基底部生成,それとも?

るという視点である.二人の違いは,前者が統語的な範障として,叙述匂 (Predicate Phrase)を認めるのに対して,後者はそれを認めない立場を採 っていることである.Baltinは,第1節であげたデ)タを取り上げ,独自 のPredicationによる分析法で,説明することが可能で、あると主張する.

Baltinは,次のような三つの仮定を掲げる.

同A.遊離数量詞をpredicateを修飾するpredicatespecifierである.

B.ある要素がpredicateとしての資格を得るためには相互

c ‑

コマンド する主語が必要である.

c .

主語のPROはVP内主語の位置から移動せず¥その位置にとどま る.

まずQ3C)の仮定を見ょう.この仮定の下では, PROはVP内主語の位置で 格を付与され, IPの指定部へ移動することはない.これは,経済性の原理 (economy principle)によって支持されるという.この仮定に従えば,

PROを主語とする不定詞節の構造は,広く用いられているQ4aiではなく,

Q4b)のような構造となる.

~4)

~\\\

~ヘ\\

~ノ\\

(8)

b.  IP 

~ヘ\\

1  VP 

/ へ ¥ ¥ ¥ ¥ PRO  v' 

Q4b)の構造では, V'が,相互c‑commandする PROを主語として持つので,

predicateとしてのステータスを持つことになり, U3A)により, αIIは predicate specifierとしてV'の指定部に付くことができる.他方, IPは, 主語が現れないので, predicateとしての資格がなく, predicate specifier 

としてαIIが現れることができない.このように, Baltinは独自の Predication理論で、(5)への説明を試みた.

2‑4.  Baltinの問題点

PROが移動しないという前提をとるBaltinの分析には次のような問題点 がある.

先ず最初の問題点は, Bokovie(997)が指摘した省略 CEllipsis)の現象 が説明できなくなる点である.Bokovieは,同が示すように, functional  heads ((1功では, 1,s, [+wh]Cがそれにあたる)と,その指定部にある要素 がspec‑headagreementを起こす場合に限り, complementsの省略が可能 となることを指摘している.

同 a.John liked Mary and Peter [1' did e] too 

b.  *John believed Mary to know French but Peter believed Jane [I'to  e] 

c.  John's talk about the economy was interesting but Bill[D' 's  e]  was  boring 

(9)

48  英語における数量詞遊離の研究:移動による派生,基底部生成,それとも?

d.  *A single student came to the class because [0' the e] thought that  it was important 

e.  John met someone but 1 don't know who [c' [+wh]‑C e] 

f.  *John thinks that Peter met someone but 1 don't believe Lσthat e]  (15ゅのECM構文の場合, 1 (この場合はto)とJαmとの聞に agreement がないので, complement (i.e., know French)を省略すると非丈になってし まう.それに対して,下の同が文法的であるのは, PROの持つnull格と headのtoとの間にspec‑headagreementが成立するので, complement  (i.e., leαve)の省略が可能となっている.

(;l6)  John was not sure he could leave, but he tried PRO [1' to e] 

この対比を説明するには, PROがCase‑checkingのため,移動するという 仮定が必要である.PROが移動しないとする Ba1tinの分析では,この現象 が説明できない.

2つ目の問題点は ,promise構文に関するものである.Ba1tinは,制の 対比をpersuαdeとpromiseの補文構造の違いに求めている.

制 a.1 persuade the men αII  to resign  b.  *The men promised me αII  to resign. 

仰心の場合,the menがtoresignの相互Cコマンドする主語として機能す るので, αIIが現れることができるが, (l7b)のpromiseの場合では ,meとto resignが相互Cコマンドの関係にない構造であるために, αIIが現れること ができないとしている.この説明自体には問題がないのだが, Ba1tinはαII だけでなく ,everも同様に, predicate specifierと見なしている.しかし,

everの場合,筆者の調査では,同が示すように,どちらも文法的と判断す る母語話者がいることがわかった.

め a.  Do you think 1 persuade these people ever to find evidence?  b.  Do you think 1 promised these people ever to find evidence?  この観察が正しければ,everをαIIと同様に扱うことに問題があるのか,或

(10)

いは, Baltinのpromise構文の補文構造の分析に問題があるかのどちらか である.Baltinが指摘するように ,everとαIIには,問題のpromise構文 以外の点で,統語論的分布に共通性が見られるとすれば,promise構文の分 析に問題がある可能性が高いということになる.

3.提 案

以上見てきたように,これまでの分析にはどれも問題がある.この節では,

ミニマリストの枠組の中で, 1節でみたデータを説明する分析を提案するこ とになるが,その際に必要となる 3つの仮定を見ることにしよう

3つの仮定

A. PRO +αIIが併合 (Merge)する. Oexical DP +αIIも同じ) B. PRO +αIIはひとつのconstituentとして移動できない.

c.αII (=Q)は, PFで後続する[+PredicateJに付加される。

1 9

A1の仮説 (PRO+αIIの併合 (Merge))は,ミニマリストにおいては自 然なものである.この場合の構造は次のようなものと考えられる.

~ム\\

αIIはhead(=PRO)の付加調としてMergeすると考えられる.

1 9 B )

の仮説は,

αII はPROとMergeするが, PROの移動とともに移動することはできな いことを述べている.この仮説の根拠は, PROには音韻素性がないので,

lexical DPとは異なり, PROに付加する要素をいっしょに移動させること はできないのではないかという考察に基づくものである.もしPROが移動 する時にその他の要素Xをpied‑pipeするということになれば,現象面か ら見れば,

X

そのものを移動させることになってしまう.そのような移動で

(11)

50  英語における数量詞遊離の研究:移動による派生,基底部生成,それとも?

は, PROの移動が,結果的にはXそのものの移動と区別がつけられなくな ってしまう

(

l9C)の仮定は, Baltinの仮定, αIIはpredicatespecifierであるという仮 定に通ずるものである.ただし ,allが 後 続 の [+PredicateJに付加される のはovertsynt砿ではなく,PFであるという部分には説明が必要で、あろう.

問題となるのは, PFでの規則に統語的な情報が必要であるかという点にあ る.つまり,統語的な情報を必要とする音韻規則を仮定することは不自然で、

はないかという疑問である.この仮定がadhocでないことは,次のような 現象が存在することからも支持される.

a.You've upset her. 

b. *John and you've got a lot in common. 

c.  *Which one ofyou've they chosen? (Radford (1997: 330‑2)) 

制は,助動調縮約 (auxiliarycontraction)の現象であるが,通常,縮約は PFの規則であると考えられている.例えば, (21a)が示すように, auxiliary  (hαve)は,その直前にあるyouと縮約を起こす.しかし ,youとhαveが隣 接すれば必ず縮約が起こるわけではない.<21b,c)のように ,youがphraseの 最後にある場合には,縮約が阻止される.これは,縮約という PFの規則が,

phraseという統語的情報を取り込んで、いることを示している.このような 例から,

ω 0

の仮定も不自然なものとは言えないことがわかる.

αIIのPF移動を支持する根拠は次のような観察である.

同 a.The men, 1 think, allleft at dawn. 

b. *Themen αll

, 

1 think

, 

left at dawn. 

文体的規則と考えられる ,1 thinkのような挿入節の割り込みは, PF移動 後の構造に当てはめられた場合には, (22心のように文法的となるが, PF移 動の前,つまり syntaxの構造において,挿入節を割り込ませると非文とな

る. (= (22b)) 

このように 3つの仮定は,極端なものではなく,決して不自然でおあると

(12)

は言えないことがわかるであろう.

4 .

新 分 析 に よ る 説 明

ここで,闘の仮定を用いると,どのように1節でのデータが説明できるか を見てみよう.同と倒は, (5)の記述的一般化を関連部分のみ具体化したもの であるが,闘は ,to不定調節の主語がlexicalな場合の派生を示したもので ある .the kidsとαIIはMergeによって結合する.headがlexicalな場合 は,ひとつのconstituentとして付加詞のαIIといっしょに移動しでもよい しら23b), allを残してheadだけが移動しでもかまわないら23c).それに対して,

headがPROの場合は, ([9B)の仮定により, PROとαIIがいっしょに移動す ることができないら24ゆが, αIIを残してPROだけが移動することは可能であ るら24c)•

a.… to[ [DP the kids αll]+V'] 

b.  [the kids αIII  to [  t V' ]  c.  the kids to [  tiαII  V'] 

4) a.…  to [[DP PRO +αll]+V'] 

b.  *[PRO +αIII  to [  t V'] 

c.  PRO to [  tiαII  V'] 

このように,我々の仮定を採用すれば, (5)の一般化を説明することができる が,この分析が,これまでの分析法の持つ欠点をどのように克服するかを見 ることにしよう.

まずは, Sporticheの問題点であるが,彼の分析の大きな問題点は叫(=

伺として再録)のような非文を許してしまうことにあった.我々の分析では,

([9Oにより,数量詞としてのαIIはPFで後続する Predicateが必要なので,

伺のような文はcrashすることになる.

同 * 官1estudentswere seen αII ti • (=制)

もう 1つの問題点であった同(=凶として再録)のような文は,文の主語

(13)

52  英語における数量詞遊離の研究:移動による派生,基底部生成,それとも?

の位置にDPが移動する前に,一度立ち寄ることのできる何らかのphrase (例えば, AGRs Phrase)を仮定する必要があった.しかし,我々の分析で は, DP +αIIが移動するので,何ら余計なphraseを設定する必要がない.

凶 ThemenαII have given up smong.(=同)

次に, Baltinの問題点がどのように解決できるかを見ょう.

第2‑4節で見た省略の問題は我々の分析では生じない.この分析はミニマ リストの仮定に従い, PROはnull格を持ち ,toのSpecへ移動することで checkingされると考えるので, PROの移動によってBokovieの挙げた省 略の現象が説明できる.

Baltinの2つ自の問題であった ,promise構文の内部構造であるが,

Baltinの分析では,。ゅのような構造であるのに対し,我々の分析では(27b) のようになる.Ba1tinの分析では,なぜ¥αIIと同じ分布を示すeverが, (18b)のように ,promise構文に現れるのかを説明することが出来なかった.

我々は ,persuade構文もpromise構文も同様の補文構造を持つと仮定する.

そうすれば, Q8b)におけるeverの生起を,説明することが可能となる.この 場合,問題は

Q

7b)の例をどのように説明するかということになるが, (ZTb)が示 すように,これはmeとαzlがMergeすれば,意味的整合性(つまり ,all  は複数名詞と Mergeする)を損なうからであると考えられる.

例 a.*The men promised me αII [to PRO resign].  b.Themen promised型企笠互[PROto resign]. 

以上のように,我々の分析では, SporticheとBaltinの持つ問題点を回避 することができることを見た.

5.  Arabicからの裏付け

Benmamoun (1999)で, Shlonsky (1991)の分析に対する反論がなされて いる.Benmamounは,次のような例を挙げ, pronominal  cliticが必ずし

も, NP移動を前提としないことを指摘した.

(14)

8) hadu  these 

L

dqba1 

before 

l<~-wladi l1i  mat

thechi1dren that  1eave.PAST‑3FS  may‑ZlW

NEG‑3comep

kull‑hum;]  all‑them 

'These are the childrenatshe 1eft before meeting them a11.'  付加調節からのNP移動は禁止される.しかし上の例文ではその付加詞 節の数量詞にpronomina1c1iticが現れている.この状況はresumptive pronounが出現する典型的な環境である。つまり,このpronominalclitic  は, NP移動によって出現したものではなく, resumptive pronounを通し て具現化されたものである可能性があることを指摘している.このことから,

Benmamounは,凶に見られるような, QP構造を仮定し,そのQPとNP がMergeするという分析を提案している.

同 ノ ¥

NP

, 

QP 

~\\

Q+clitic  NP

pro 

同の構造が正しいとするならば,細部は別として,我々の分析とほぼ同じ構 造を持つことがわかる.更なる詳しい研究が必要であるが,我々の英語の分 析とArabicの分析に極めてよく似た平行性が見られると言うことは,本稿 での分析が,普遍的な構造或いはそれに準ずる構造に近づいていることを示

しているのではないだろうか.

6.  Conclusion 

この論文では,英語の数量調遊離に関する(5)の一般化を,ミニマリストの 枠組で説明することが可能であり,提案した分析は, SporticheBa1tin

(15)

54  英語における数量詞遊離の研究:移動による派生,基底部生成,それとも?

の分析の持つ問題点を克服することができることを見た.さらに, Arabic  の分析とも平行性を示すことから普遍文法の立場からも支持される可能性が あることを論じた.

ここで,この分析の持つ理論的意味合いと残された問題点に触れておきた し¥

理論的意味合いとして次の2点が挙げられよう. 1つ目は,これまでの移 動分析では ,all the boysとthebIIの関係を移動(=変形)として扱 ってきたが,本稿の分析が正しいものとすれば,両者を移動で結びつけるこ れまでの分析は誤りであったことになる.つまり,この2つはMergeの段 階において別々のものとして派生したものであるを我々の分析は主張してい る.

さらに, PFでの移動の後,新たな意味解釈が生じることも理論的には大 きな意義を持つ.側が示すように, Q‑Floatの構文には,個別的読み Gndividual reading)が生じる場合がある.

0) a.  The guests αII began to aηive. 

b. *All the guests began to arrive. 

。。の動詞匂 (begαntoαrrive)は主語が個別的に解釈されることを要求する 述語であるが, Q‑Floatの(30a)の場合はこの述語でOKであるのに対し, Q が遊離しない(30ゅでは非丈となってしまう.文献では, (30心におけるαIIを

VP数量詞と呼び¥(30ゅのNP数量詞と区別することがある.ミニマリスト の枠組では, Spell‑Out以後, LFとPFに入力が分かれ, LFは意味部門へ の, PFは音声部門への,それぞれ入力となり, PFに入った入力が意味解 釈を受けることはないとされてきた.しかし,もし, GOa)で見たように, PF  移動の後の構造が,新しい意味解釈になるということは, PFの出力も LF 方面に再度戻る可能性があるということになる.これは,文法の枠組の大き な変更となるので,今後の研究動向を持つ必要があろう.

最後に我々の分析の持つ問題点を 2つ指摘しておきたい. 1つはHuang

(16)

(1982)の取り出し領域条件 (Conditionon Extraction Domain: CED)の制 約に違反することである.

(31)  Condition on Extraction Domain 

A phrase A may be extracted out of a domain B only if B is properly  governed. (Huang (1982: 505)) 

ここで問題となる部分のみに限定して,わかりやすく説明すれば, CEDと は,主語からの取り出しを禁止する条件である.Q‑Floatを,主語NP(或 いはDP)とQの分離・移動によって、派生させる分析は,すべてこのCED 違反となってしまう.その意味で,我々の分析も CEDに抵触するわけであ る.しかし,我々の分析では,従来の移動分析と異なり, headのNPが移 動した後に残るのは,付加詞(副詞)としてのαIIである点に注意されたい.

付加詞だけを残したheadの移動がCEDに本当に抵触するのかどうか見極 める必要がある.

2つ目の問題点は, Aspect Phrases内でのPRO+αIIの移動をどう説明 するかという問題が残る点である.つまり,白域や包ゅの場合は,途中まで PROとαIIがconstituen tとして移動していることになる.これは,

iPRO +αIIはひとつのconstituentとして移動できない」とする

G

湖の仮定 に反することになってしまう.現在のところ,この問題に対する解決は見当 たらない.しかし,実のところ,類似の問題がBaltinの分析にも起こって いる.Baltinの場合, αIIは[+Pricate]を修飾する predicatespecifierで あるが, (2b)や(2c)でαIIが生起している場所は, [+Predicate]の直前ではなく,

predicateの内部である.つまり, Baltinの場合も, Aspect Phrases内で のαIIの生起を適切に処理するためには, Aspect Phrasesの持つ特殊な内 部構造を探る必要がある.これも今後の研究の課題である.

i

*本稿は,同志社言語学会夏季研究会 (2000715日)において口頭発表したも

(17)

56  英語における数量詞遊離の研究:移動による派生,基底部生成,それとも?

のに加筆修正したものである.

1 必ずしも同じ位置ではなく,遊離数量詞と副詞の分布が異なる場合もある.

i)  John will have ?probably/*rapidly been beaten by Bill.  ii)  John will be *probably/*rapidly being beaten by BilL 

(Jackendoff (1972: 81)) 

2 ここでの「ミニマリスト」とはChomsky(1995)までの, 90年代半ばあたりまで の枠組のことである.なお,本稿では,議論の単純化を図るために,初期ミニマリ ストで仮定されていた,いわゆる, Move‑日型の範幡移動を採用する.素性移動に ついては, Chomsky (19951999)を参照せよ.

3ω9の仮定は次のような非文の説明にも有効である.

i)  *PRO on the stage to be would make people nervous  ii)  *PRO to on the stage be … 

cf.  PRO to be on the stage would make people nervous. 

参考文献

Baltin, Mark R. 1995. "Floating quantifiers, PRO, and predication" LI 26: 199248 Benmamoun, Elabbas. 1999. "The syntax of quantifiers and quantifier float," 

LI 30: 621642. 

BokovieZeljko. 1997. The syntax of nonfinite complementαtion. Cambridge, Mass.:  MITPress. 

Bowers, John. 1993. The syntax of predication," LI 24: 591656. 

Chomsky, Noam. 1995. The minimαlist program. Cambridge, Mass.: MIT Press.  Chomsky, Noam. 1999. Derivαtion by Phαse, MIT Occasional Papers in Linguistics 

18. 

Huang, C.T. James. 1982. Logical relations in Chinese and the thoryof gram‑

mar," PhD dissertation, MIT. 

Jackendoff, Ray S. 1972. Semαntic Interpretαtion in Generαtive Grwηmαr.  Cambridge, Mass.: MIT Press. 

Postal, Paul M. 1974. On raising. Cambridge, Mass.: MIT Press.  Radford, Andrew. 1997 Syntαctic theoryαnd the structure of English: 

Aminimαlistα'Pproαch. Cambridge. Cambridge University Press.  Shlonsky, Ur. 1991.Quantifiers as functional heads: A study of quantifier float 

in Hebrew," Linguα84: 159180. 

Sportiche, Dominique. 1988.'A theory offloating quantifiers and its corollaries  for constituent structure," LI 19: 425449. 

参照

関連したドキュメント

ベクトル計算と解析幾何 移動,移動の加法 移動と実数との乗法 ベクトル空間の概念 平面における基底と座標系

特に、その応用として、 Donaldson不変量とSeiberg-Witten不変量が等しいというWittenの予想を代数

[r]

ヨーロッパにおいても、似たような生者と死者との関係ぱみられる。中世農村社会における祭り

注)○のあるものを使用すること。

【参考 【 参考】 】試験凍結における 試験凍結における 凍結管と 凍結管 と測温管 測温管との離隔 との離隔.. 2.3

 英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき

近年は人がサルを追い払うこと は少なく、次第に個体数が増える と同時に、分裂によって群れの数