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ドイツ産業連関分析論

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(1)

ドイツ産業連関分析論

著者 良永 康平

発行年 2001‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/00020468

(2)

第4編:国際産業漣関表からみたドイツ経緕と日独関係

(3)

第7章:ECの中のドイツ経済

‑EC国際産業連関表を利用して一

1.はじめに

ドイツは1951年の欧州石炭・鉄鋼共同体(ECSC)、 1957年の欧州経済共同体(EEC)の設 立以来、欧州共同体(EC)の加盟国として相互依存を深めてきた。当初6カ国だった加盟国も 1995年には15カ国となって外延的にも拡大し、共通農業政策(1962年)や関税同盟(1968年)

などの共通政策によって、内包的にも充実してきた。本章ではこのECの相互依存の進展を、国 際産業連関表を利用した分析によって確認しつつ、最終的には、 1993年発足の欧州連合(EU) におけるドイツ経済を分析するための枠組みとして、EU国際産業連関表の試作を提示した いl)o

国際産業連関表は、地域間産業連関表を国際間に応用したものとして、日本でも1980年代か ら通産省やアジア経済研究所を中心に、日米、日欧、日韓、日中等の2国間表(Bilateral表)、

先進国間(日米英独仏)やアジア諸国間の多国間表(Multilateral表)等、さまざまな国際産業 連関表が作成されて今日に至っている2)。日本ほど盛んではないとはいえ、EC諸国においても 同様であった。ただしEC統計局等の公式機関が作成したことはなく、あくまで研究者個人が中 心となって作成されているため、日本のように大規模な表は作成されておらず、また多国間表

もきわめて少ない。

EC諸国を包含した多国間表を作成する際の最大の問題は、日本の地域間表とは異なり、加盟 各国が必ずしも定期的には産業連関表を作成してはいないことである3)。たとえばギリシャ、

アイルランド、ポルトガル、ルクセンブルクなどがそうであり、ルクセンブルクは貿易統計も 独立には作られておらず、ベルギーの統計に包含されている。さらに、加盟国が6カ国から始 まって次々に増えてきたことも、時系列比較ができるような国際産業連関表を作成しづらかっ た理由の1つである。しかしEC統計局も、単なる貿易統計からの比率計算と異なり、産業連関 1)人によってECとEUの用語使用法はまちまちであるが、本書では、90年代をEUと呼び、それ以 前はECとする。しかし統計局(Eurostat)のように当初から存在するものの名称を呼び換えると、

別組織のような誤解を与えるため、EC統計局という名称で統一することにする。

2)通商産業大臣官房調査統計部編(1992)を参照。

3)Beutel,J. ,March,M. ,Ungar,P. ,Heuschling,J. (1994)や良永(1997a)に、定期的に公 表している国が紹介されている。

‑203‑

(4)

表にはシミユレーション等に独自の意義と役割があり、個々の加盟国の産業連関表だけでは不

十分であることは認識していた。そこで当初より、加盟国の産業連関表を総合したEC全体の産 業連関表は作成してきた。ECがEUとなり、ますます全体としての立場を明確にするようにな り、この全体表の意義も高まってはいるが、巨大化しつつあるこの連合体と個々の加盟国との 関連を検討するには、加盟国の産業連関表を並列的にネットワークした国際産業連関表も依然 重要であることは間違いない。

ドイツの産業連関表を中心とした本書では、過去のEC国際産業連関表をすべて検討するこ とはできない。あくまでECとドイツの関連が中心ではあるが、以下の順に考察を進めてゆく。

まず第2節ではOECDの貿易統計から、ドイツ等加盟国のECへの輸入依存度を調べてみる。

次に第3節では、本格的なEC国際産業連関表を初めて作成したJ.H.F.Schilderinckの産業 連関表を再現し、 1959〜1975年の相互依存度の変化を検討する。第4節では、通産省の作成し た日米欧(先進国)国際産業連関表から、EC域内の国際産業連関表を再構成し、 1985〜1990年 の変化を調べてみる。最後に第5節では、 1995年のEU15カ国(以下EU15と略す)全体を対 象とした産業連関表をもとに、ドイツと残るEU14カ国全体との国際産業連関表を作成し、EU の中におけるドイツ経済を検討する。

2. ドイツの域内輸入依存度

EC域内貿易の進展をみるために、通常よく利用されるのが貿易統計であり、貿易マトリック スという形で検討されることが多い4)。ここでも各年の貿易統計から作成した貿易マトリック スを、一部を特定国に関して時系列的な展開をみることができるように編集し、域内依存度を 検討してみよう。

表7−1は、EC域内だけではなく、他の主要国・主要地域を含めて輸入地域構成比を計算し たものである。また発足当初のEC6は、今日ではEU15となっているが、当初のEC6地域 は今日ではどうか、逆にかつては今日のEU15にあたる地域ではどうだったか、さらには拡大 ECといわれたEC9や、南欧を包含したEC12にあたる地域も検討できるように計算している。

まず当初よりの加盟国代表としてドイツをみてみよう。60年代は関税同盟や共通農業政策な どの効果が働き、EC6への輸入依存度が大きく上昇している。フランスとの関係は当初より深 かつたが、この時期特にベネルクス3国との依存度が増している。その一方で、イギリスやオー

4)良永(1996a)や棚池(1991)等を参照。

‑204‑

(5)

表7‑1 :EC加盟国の輸入地域構成比

弓壼〒雨壼T而早緤脅語蒜mU̲

5.1% 7.7% 9.5% 8.6% 7.2% 6.3% 7.1%

8.5% 9.8% 12.2% 14.1% 11.6% 10.9% 9.3%

1995 6.5%

8.0%

1ベルキー 2オランダ 3ドイツ 4フランス 5イタリア 6EC6 7デンマーク 8アイルランド 9イギリス 10EC9

TT卒ワヲr

12スペイン 13ボルトガル 14EC12 15オーストリア 16フィンランド 1フスウェーデン 18EU15 19ヨーロッパ 2oアメリカ 21北米大陸 22日本 23アジア 24オセアニア 25中南米 26アプリ力 27世界

11.6%

9.3%

37.3%

1.9%

0.8%

6.6%

46.6%

0.6%

2.3%

0.9%

50.5%

4.2%

1.0%

2.3%

58.1%

68.0%

6.3%

7.3%

5.9%

15.1%

0.5%

2.5%

3.0%

100.0%

10.9%

8.5%

33.9%

1.8%

1.3%

6.5%

43.5%

0.5%

3.1%

1.1%

48.1%

3.8%

1.1%

2.1%

55.1%

68.0%

6.6%

7.5%

5.3%

16.8%

0.4%

2.1%

2.0%

100.0%

10.7%

8.1%

36.0%

1.7%

0.7%

7.9%

46.3%

0.7%

1.7%

0.6%

49.2%

3.3%

0.9%

2.3%

55.8%

64.8%

7.0%

7.9%

4.5%

12.8%

0.6%

3.8%

6.1%

100.0%

10.0%

6.8%

30.5%

2.6%

0.2%

4.2%

37.5%

0.5%

1.6%

0.3%

39.9%

2.8%

1.4%

4.4%

48.5%

56.9%

12.5%

15.0%

0.9%

10.3%

1.0%

7.8%

5.5%

100.0%

11.2%

9.4%

38.1%

2.1%

0.2%

4.4%

44.9%

0.6%

1.2%

0.3%

46.9%

2.4%

1.0%

3.5%

53.9%

61.6%

13.1%

14.8%

1.4%

8.8%

1.0%

6.4%

7.2%

100.0%

12.7%

9.9%

44.4%

1.4%

0.1%

3.9%

49.8%

0.6%

1.1%

0.2%

51.8%

2.1%

O.9%

2.9%

57.6%

66.1%

11.0%

12.9%

1.9%

8.4%

0.7%

4.7%

7.1%

100.0%

12.2%

9.4%

44.3%

1.5%

0.4%

3.7%

49.9%

0.9%

1.2%

0.3%

52.3%

2.1%

0.6%

2.3%

57.4%

65.0%

7.7%

8.9%

2.4%

14.1%

1.0%

3.5%

7.4%

100.0%

10.8%

8.0%

37.7%

1.7%

0.4%

6.7%

46.5%

0.8%

1.3%

0.4%

49.0%

2.9%

0.9%

2.1%

54.9%

64.0%

7.6%

8.7%

3.1%

16.0%

0.5%

3.1%

7.6%

100.0%

弓雨〒壼壼〒云需壽騨雰再壼壼F両

1.5% 2.1% 1.9% 3.5% 4.2% 4.7% 4.0%

3.9% 4.7% 5.0% 7.6% 6.4% 7.7% 7.4%

4.6% 4.8% 6.2% 8.4% 11.1% 15.1% 15.3%

3.3% 3.3% 4.0% 6.7% 7.1% 7.8% 8.7%

2.3% 2.5% 2.7% 3.4% 4.5% 5.1% 5.2%

15.6% 17.5% 19.8% 29.6% 33.4% 40.5% 40.6%

3.3% 3.4% 3.1% 2.6% 2.1% 2.0% 1.8%

3.3% 3.0% 3.6% 3.8% 3.4% 3.3% 3.5%

●●●●●■ ■■●。●■ 、●●●●● ●●●●■■ ●●■■■● ■■●●■■ ■q■■●●

22.1% 23.8% 26.5% 36.0% 38.9% 45.8% 45.8%

0.2% 0.2% 0.1% 0.3% 0.3% 0.4% 0.3%

1.6% 1.3% 1.4% 1.3% 1.7% 2.2% 2.2%

O.4% 0.7% O.7% 0.8% 0.6% 0.8% 0.9%

24.3% 26.0% 28.7% 38.3% 41.5% 49.2% 49.2%

0.3% 0.4% 0.8% 0.8% 0.6% 0.7% 0.8%

2.2% 2.0% 2.2% 1.7% 1.6% 1.6% 1.4%

3.7% 3.7% 4.0% 3.7% 2.8% 2.9% 2.7%

30.4% 32.2% 35.8% 44.5% 46.5% 54.4% 54.0%

35.8% 38.0% 42.1% 50.7% 52.0% 64.2% 60.6%

11.0% 11.7% 12.7% 9.6% 10.1% 11.9% 10.0%

19.1% 19.8% 20.1% 13.0% 12.8% 14.1% 11.8%

0.9% 1.4% 1.5% 2.8% 3.4% 4.9% 5.2%

20.8% 16.0% 13.3% 19.5% 16.3% 13.1% 14.5%

7.7% 7.6% 5.2% 2.3% 1.8% 1.5% 1.2%

6.7% 6.1% 4.5% 3.5% 2.3% 2.3% 1.8%

9.9% 12.5% 9.1% 6.1% 3.7% 4.5% 2.4%

100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%

1995 4.3%

6.4%

14.8%

9.2%

4.8%

39.6%

1.3%

4.0%

1ベルギー 2オランダ 3ドイツ 4フランス 5イタリア 6EC6

ラー字ラマ=了

8アイルランド 9イギリス 10EC9

TT卒ワヲr

12スペイン 13ボルトガル 14EC12 15オーストリア 16フィンランド 1フスウェーデン 18EU15 19ヨーロッパ 2oアメリカ 21北米大陸 22日本 23アジア 24オセアニア 25中南米 26アプリ力

Zラー笹=

僻一剛捌Ⅷ|Ⅷ棚馴恥一秘一岬Ⅷ一Ⅷ柵一Ⅷ|Ⅷ一測一岬

−205−

(6)

一両T「耐祠雨語鶚總辮耐壼テ

1.3% 2.6% 2.3% 2.1% 1.6% 1.7% 3.1%

2.5% 3.8% 2.8% 2.7% 2.2% 2.1% 3.7%

11.1% 14.3% 12.8% 10.5% 8.4% 10.7% 16.6%

8.7% 10.9% 9.4% 8.4% 8.2% 9.2% 14.7%

2.8% 6.1% 5.2% 5.2% 5.0% 4.6% 10.2%

26.4% 37.6% 32.6% 29.0% 25.4% 28.3% 48.2%

0.5% 1.1% 0.6% 0.6% 0.5% 0.5% 0.8%

0.2% 0.2% 0.1% 0.3% 0.4% 0.5% 0.7%

7.5% 9.2% 7.1% 4.8% 4.6% 6.5% 6.8%

34.6% 48.2% 40.4% 34.7% 30.9% 35.8% 56.5%

0.2% 0.1% 0.2% 0.5% 0.1% 0.2% 0.2%

●。●●●● ●●●■■■ ●D●■■● ●、●●●● ●●●●●● ●、●●●● ■●●■■■

O.5% 0.6% 0.4% 0.3% 0.5% 0.8% 2.5%

35.2% 48.8% 41.0% 35.5% 31.5% 36.8% 59.3%

0.5% 0.5% 0.6% 0.4% 0.4% 0.6% 0.8%

0.5% 0.6% 0.6% 0.4% 0.4% 0.4% 0.7%

2.4% 2.5% 2.3% 2.1% 1.1% 1.3% 1.8%

38.5% 52.4% 44.5% 38.5% 33.4% 39.1% 62.7%

43.3% 57.6% 48.9% 43.0% 36.1% 42.1% 65.7%

25.2% 17.5% 19.0% 16.1% 13.0% 10.9% 8.4%

27.9% 19.1% 21.0% 17.2% 17.6% 17.1% 10.6%

0.3% 1.1% 3.1% 2.4% 2.5% 3.4% 4.5%

15.2% 9.1% 11.5% 23.3% 28.5% 17.2% 13.4%

0.6% 0.5% 0.6% 0.8% 0.5% 0.6% 0.3%

8.6% 8.5% 9.2% 8.4% 6.6% 5.7% 3.0%

4.3% 5.1% 8.8% 7.4% 10.7% 16.9% 6.8%

100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%

1995 3.5%

4.3%

15.3%

16.7%

9.0%

48.7%

0.8%

1.1%

7.9%

58.4%

0.3%

3.0%

61.8%

0.9%

0.9%

1.3%

64.9%

68.6%

6.5%

7.9%

3.4%

13.7%

0.4%

3.5%

5.9%

100.0%

1ベルギー 2オランダ 3ドイツ 4フランス 5イタリア 6EC6

ラ亭ラマーア 8アイルランド 9イギリス 10EC9

7T卒ワヲ〒−

12スペイン 13ポルトガル 14EC12 15オーストリア 16フィンランド 17スウェーデン 18EU15 19ヨーロッパ 2oアメリカ 21北米大陸 22日本 23アジア 24オセアニア 25中南米 26アプリ力

回ラー琶舂

1995 3.9%

7.6%

20.6%

5.5%

3.2%

40.9%

7.5%

1.4%

9.9%

59.6%

0.2%

1.2%

0.8%

61.8%

1.2%

6.2%

69.2%

80.9%

5.7%

6.2%

3.0%

10.7%

0.3%

1.4%

0.5%

100.0%

−206−

(7)

ストリア、スウェーデン等の当時のEFTA(EuropeanFreeTradeAssociation)地域や、ア メリカを中心とした北米大陸、中南米への依存度は、明らかに低下している。その後の70年代

は、石油ショック前後からのECの停滞、アジア諸国の新興と成長等がよく指摘されるが、それ

がドイツの輸入にも反映されている。1980年にかけて、アジアからの輸入割合が上昇した分、

域内からの輸入割合は低下している。70年代は、イギリス、デンマーク、アイルランドといっ た加盟国が増え、拡大ECと呼ばれたが、ドイツの貿易にその効果が表れるのは80年代である。

そして80年代は、中盤の単一欧州議定書(SingleEuropeanAct)前後から域内活動が活発化 し、90年にかけて域内からの輸入割合も上昇している。特に86年加盟のスペイン、ポルトガル からの輸入割合の上昇が顕著である。そして95年にはスウェーデン等の3カ国が加盟したカヨ、

域内からの輸入割合はむしろ低下し、他のヨーロッパ諸国、特に体制転換を遂げた東欧諸国か らの輸入割合が上昇している。またこの間一貫してアジアからの輸入割合が上昇し、北米大陸 や中南米からの輸入は低下傾向をたどっている。

以上は、当初から加盟していたドイツの場合であるが、ECは次々に外延的拡大をしていっ た。では新規に加盟していった諸国の場合はどうか、次にイギリスのケースをみてみよう。当 初EFTAを結成しECとは別行動をとっていたイギリスも、その劣勢が明らかになるにつれ ECへの加盟を希望するようになったが、 60年代はフランスのドゴール大統領に拒否され続け た。したがってこの期間は加盟国ではなかったため、域内貿易への依存は多少上昇しているが 10%台に留まっていた。しかし加盟後の1975年には一挙に10%近く上昇し、EC6からの輸入 構成比は約30%になった。逆にドゴールにその密接な関係を嫌われたアメリカからの輸入割合 は大きく低下している。その後、発足当時からの加盟国であるドイツやフランスの域内貿易依 存度が低迷するなか、イギリスは域内からの比率が上昇を続け、90年代にはドイツとほぼ同等 の割合に追いついている。もともと島国であり、大陸からは多少距離もあるために、EC以外の ヨーロッパ諸国からの輸入は少ない。したがってイギリスにとっては、ヨーロッパからの輸入 というのはECからの輸入とほぼ同義であるが、その輸入割合が加盟後上昇を続けた点に、EC 加盟の効果をみてとることができる。

では80年代に加盟したスペインの場合はどうか。スペインは大陸の西の端にあることもあっ て、もともと北米大陸への輸入依存度が高かったが、60年代半ばには域内からの輸入割合が大 きく上昇した。率からみればドイツとほぼ同等なほど高くなった。しかしその後は、関税同盟 に入っていないこともあり、域内からの輸入割合は低下を続けた。その間、石油ショックによ

−207−

(8)

る原油価格の高騰もあり、アジアからの輸入割合は逆に2倍以上に上昇している。その傾向に 変化の兆しが現れるのが加盟直前の1985年であり、加盟後の1990年には域内からの輸入割合 は大幅に上昇している。特にドイツ、フランス、イタリアといったEC発足以来の加盟国からの 輸入が急増している。その結果、EC12からの輸入率は、 1985年からのわずか5年で20%以上 という驚異的な率で上昇している。これは同時期に加盟したポルトガルにもみられる現象であ

り、イギリスをも上回るドラスティックな展開である。域内加盟に伴う貿易転換効果が大きく 作用した、 ということができるであろう。

同じような効果は、1995年に加盟したスウェーデンの場合にもみることができるだろうか。

加盟した同年には完全な効果は期待できず、それ以後の経過を見守る必要があるだろうが、そ れでも1995年には、域内からの輸入割合は5%以上上昇している。ただしスウェーデンの場合 は地理的な位置も影響して、EC加盟以前の60年代当初から、ここで挙げたドイツ、イギリス、

スペインのどの国よりもECへの輸入依存度が高く、今日でいうEU15カ国からの輸入割合 は、すでに60%を超えていたという特殊事情もある。特にドイツからの輸入割合が高く、ベネ ルクス3国並に20%を超えていた。加盟直後の1995年に域内からの輸入割合が上昇したのは、

実はそのベネルクス3国からの輸入が増えたためである。

以上、EC加盟4カ国の貿易を、域内輸入率を中心にみてきた。当初からの加盟国は、70年代 から停滞がみられるものの、新規加盟諸国にとっては、加盟後の域内輸入依存度の上昇は明ら かである。その際、スウェーデンのように加盟以前からドイツヘの依存度の高い国もあれば、

イギリスやスペインのように加盟後にドイツに大きく依存することになった国もある。いずれ にしても、工作機械等の資本財供給国としての、ECにおけるドイツの意義・役割は大きかった。

それを各財貨ごとの貿易マトリックスで確認することもできるが5) 、本章では国際産業連関表 を用いた分析を試みよう。

3. 1959〜1975年のEC国際産業連関表分析

第1節でも触れたように、EC域内の国際産業連関表を本格的に作成したのは、オランダの Schilderinck,J.H.F.(Tilburg大学)である6) 。最近も、やはりオランダのOosterhaven,J.

(Groningen大学)がSchilderinckモデルの批判的検討の上に、独自のモデル(1980年等)を 5)良永(1996a)では、自動車、電気機械、一般機械、化学製品、事務・情報機械、食料品ごとに貿

易マトリックスを作成し、相互依存状況を検討している。

6)Schilderinck,J.H、F. (1984)を参照。

‑208‑

(9)

構築している7)。Oosterhavenの論点は主として、Schilderinckは国際産業連関表の内生部門 の他国からの輸入に当たる部分を、輸入マトリックスの分割によって求めており、価格評価が 生産者価格ではないので問題があること、また、EC各国の産業連関表を接続した国際産業連関

表は、必ずしもECの全体表とは調和がとれていないこと、等である。さらにまた、Oosterhaven は論じてはいないが、 60〜70年代は域内各国で次々に付加価値税(VAT)が導入されていった が、これをネット表示するためのデータが当時は整備されていなかったために、調和のとれた 国際産業連関表を作成するのは困難であった、といった問題も存在している。しかしSchilder‑

inckの国際産業連関表は、 1959年から1975年までをフォローしている点では貴重なデータで あり、他に例をみない。そこで本節では彼の作成した国際産業連関表をもとに、EC発足後の加 盟国間の相互依存状況を分析するが、今日ではSchilderinck本人がすでに他界しており、彼の 作成した内生220(44部門×5カ国)×220の国際産業連関表の磁気テープ自体が消失している

表7−2 : 1959年EC6間国際産業連関表(その1)

|雷 Intemational IO

TabIeforEC6

サービ inl959

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■■■フンス J61 囮16

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域外輸入

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1■■■■■■■

域外I

国定資本減矛 陣間接税

酎今.鰹給

】4 Hq【]

3671 385 2682 453 3954 26

4893 2511 8434 2105 9358 2872

7551 4294 24763 4135 12269 3718

注)本表はSchilde両nck.J、H,F、<1984)を通常の産業連関褒形式に整理したものであり、以下表7−8まではその分析である。

7)Boomsma,P. ,Linden,J.A.,Oosterhaven,J. (1991) (1992)参照。

−209−

農林

水産菜 鉱業

ド〃

製造菜 建設菜

営利 サービ

非営利 サービ

農林

水産業 鉱業

フラ 製造菜

ンス

建設業 営利 サービ

非営利 サービ

農林

水産業 鉱業

イタ 製造業

リア 建設粟

営利 サービ 農林水産業

エネルギー・鉱業 製造菜 建設業 営利サービス 非営利サービス

126 54 3464 32 9 29

193 2905 3113 1239 840 255

1346 1226 17797 1100 2457 1104

35 61 82 153 553 438

350 779 5037 597 3399 1301

13 53 232 20 431 0

068000

018050

00700024

62501093

02000081

027000

農林水産業 エネルギー・鉱菓 製造業 建設粟 営利サービス 非営利サービス

227002

058080

01000011

1851302612

066050

518000

2 12 4632 7 3 −25

265 902 1796 944 994 130

1163 444 10067 1464 1352 1352

67 134 212 0 275 474

454 399 2647 821 2708 836

1 0 29 4 49 0

農林水産業 エネルギー・鉱薬 製造粟 建設菜 営利サービス 非営利サービス

11 1 50 0 0 411002

43080

52000

1707018

61010

11000 00400003101004701038401017032000011000

農林水産業 エネルギー・鉱菜 製造業 建設業 営利サービス 非営利サービス

13 1 60 0 0 531010

85010

55010

55110215

13030

21

34010 013000021010034000272000116031000

001000

農林水産業 エネルギー・鉱業 製造薬 建股菜 営利サービス 非営利サービス

116002

053050

056000

69909081

004030

115000 01300002202004000012

65300018

062000

011000

中間投入計(EC) 2121 5180 31283 3201 7842 3201 1967 2020 20208 3360 5421 2803 農林水産薬

エネルギー・鉱菓 製造業 建設業 営利サービス 非営利サービス

23 11 1929 0 2 10

21 680 529 49 154 27

37 24 2246 27 34 256061

010

440

429

080

000

102 3 1116 2 0 10

4 640 173 16 89 7

12 14 951010 39030 17090 89000

010

000

圃入計 82 733 4989 84 520 340 118 658 2251 60 115 105

尉入税 66 17 157 0 0 0 8 24 282 0 0 0

424 747 1931 223 2033 234

24 822 3814 477 2571 26

563 1872 10353 2557 7387 3469

62 268 1141 278 882 645

3012 1394 6522 1038 8961 190

433 794 1361 129 2077 67

149 1607 3615 431 1692 0

686 1227 6774 1641 5631 3003

104 324 1523 424 1434 962

4 2 673 3732 1271 7074 0

4085 5104 23762 4574 21833 4565 5374 4624 17006 3896 17908 4033

6353 11034 60191 7859 30196 8106 7466 7327 39747 7316 23443 6941

(10)

こと、また当時のデータはEC統計局(Eurostat)からも得難いことから、フルサイズでのデー

タの検討は困難である。彼が生前ペーパーに公表した内生30(6部門×5カ国)部門表を再構

成して、分析することにとどめたい8)。

表7−2 : 1959年EC6間国際産業連関表(その2)

IntemationaI IO

謎渥

TabIeforEC6 inl959 .J、H、F・SchiIdennck

̲自X

2186 0 0 279 72 2537

1290 0 236 50 406 1982

ドイツ

234 7122 0 0 0 7356

66 0 0 1 0 67

フランス

q■■■■■■

イタリア

■■■■■■■

J C

C

オランダ E700J3

ペルギ

■■■■■■

39499 7122 14393 1164 8493 70671

域外輸入

【]

■■■■■■■

940 0 318 84 0 1341

−.

域I

表7−2 : 1959年EC6間国際産業連関表(その3)

■■■■■■■■■■■

肱t涯毎堂幸型10

T鹸紡E 生産師

輌1蝿9

−−■。●

凸■■

11皿 的191 7鰯9 1蝿 81

74 7327 39747 7316 23 3 イツフランス

6脚1 7551 4狸 247

4135 1型69 3718

1■■■■■■■■■■■■

1774 1函 9副3 1592 5356 15 11銅

タリアーオランダーペルギー

_

域外輸入一一

-210-

オラ 農林

水産菜 鉱菓 製造雲

ンダ 建設菜

営利 サーピ

非営利 サービ

ベノ 農林

水産菜 魅菜

,ギー・ル 製造粟

クセンブルク 建設菜

利モス宮サ

非営利 サーピ

中間 需要計

民間 最終 消費

政府 最終 消費

圃終需團 固定 資本 形成 農林水産薬

エネルギー・鉱梁 製造菜 建股菜 営利サービス 非営利サービス

038010

0渦卵0鯛0

01500024

86100025

01200041

042000 019000052010

073010

22901012

09201021

117000

3740 8990 26538 1322 11588 750 農林水産業

エネルギー・鉱菜 製造粟 建設菜 営利サービス 非営利サービス

001000

069030

046000

544000

032000

012000 01420002300011

063020

90602041

079010

517000

4712 5237 16798 1165 7958 85 農林水産菜

エネルギー・鉱菜 製造粟 建設粟 営利サービス 非営利サービス

001000

084020

021000

537000

041000

011000 001000012000012000314000

011000

201000

4638 3235 11799 387 3512 3 農林水産菜

エネルギー・鉱菜 製造粟 建設菜 営利サービス 非営利サービス

255 2 952 0 2 4

23 263 235 191 137 74

491 89 2453 227 357 102

17 15 48 117 126 46

71 59 480 91 676 153

2 3 0 0 35 0

065200

144000211

096010

645010110

067010

838000

1358 1119 4436 372 1688 41 農林水産菜

エネルギー・鉱菜 製造粟 建設錘 営利サービス 非営利サービス

024000

112090441

06400023

967000123

098000

178000

27 11 645 0 1 3

16 412 381 167 148 53

230 104 2533 252 24268600 6968030

000

03024

670

280

732 1398 4437 154 1058 3

中間投入計(EC) 897 532 5046 766 1632 409 387 725 4808 609 735 299 129253

農林水産業 エネルギー・鉱粟 製造菜 建設粟 営利サービス 非営利サービス

4 1 537 1 2 0

10 385 115 11 82 6

10 15 678 90 114 20020

070

000

000

000

000

24 1 373 0 0 047210

85010233

92010

370803415

3203001

37000 4927

4202 6289 10 983 50

入計 24 401 1330 101 305 37 34 319 1062 53 94 34 16461

入税 1 13 80 0 0 0 15 44 147 0 0 0 998

72 132 239 21 455 63

‑58 124 390 52 145 0

162 244 1309 352 1291 738

21 50 198 57 171 161

655 172 951 244 1356 37

62 192 310 34 449 17

148 320 45 173 0

65 476 1292 341 1282 885

3 75 193 44 114 42

572 78 687 184 21 39

15238 19634 63906 12064 56174

§ 計 852 723 3087 725 3418 999 696 970 2801 648 4179 983 167016

1774 1668 9543 1592 5356 1445 1133 2058 8818 1309 5 9 1315 313728

民間 量終 掴。

政府 且笹 迩。

柊撚異 固定 資本 影成

フランス 在庫 変動 I

EC 域外 輸出

量終 需宴計

民間 且軽 週唇

政府 丑終 渦費

祷要定本成 イタリア 在庫 変動 I

EC 域外 輸出

丑綴 儒要針

民間 最健 泪昏

政府 最健 消貸

緯播嬰 固定 資本 影成

オランう 在庫 変動

EC 垣外 輸出

且縛 爵要針

民間 且終 麺昏

政府 最侭 演費

蟹画質鮒

昏嬰1定本成 ベルギー 在血 皮動 .)

EC 域外 輸出

且終 露要計

緯繍要バランス 項目 農林水産錠

エネルギー・色婁製建 造段璽婁

営利サービス 非営利サービス

087000141

000000

000000

00識000

000000

m犯的000 370050

000000

020000

149000

000000

251050

2 0 009020 004000 000000 1郡1307070

00000

旧聞0幅0 4 0 0 0 0 5興馴010

04000

01000

0餌000

00000

鱒010 6298

11071

““8 78釦 且型 81

弱調釦8刈0−33

ー■■ー■一一一

エネルギー・陸婁製建 造段璽璽

営利サービス 非営利サービス

2335 0 0 202 118 25 1677 0 0 77 317 2071

14913 0 36 1m 3函2璽浬

2鋸 0 53 0 55 61駒

198 0 2釦 −42 723 154記 375 6455 0 0 29 6858

04706015

000000

100000

021000

000000

826060 21羽00000000000100000釦000000000218000 釦日浦0渦0

001000

201000

007000

000000

886050171

7“7 7326 狸璽9 7318 2坤0 6944

−1 0

−2 3

−3 目神水室■

エネルギー・墜象璽建 造設璽璽

註利サービス 非巻科サービス

33200029

000000

000000

005000

000000

32700023

2銅2 0 31 85 165 2812

7配 0 26 23 Z型 16

8737 0 釦14 292 1 5 12689

0 0 37組 0 0 3748

7797 0 192 1 671 8661 0 3718 0 0 0 3718

214000

000000

001000

001000

000000

212000 72型000001000100000000000

000000

621000 鋤麺74

247閑 4135 12174 3721

鯛Ⅷ釦一一一

9−053

農林水産錠 エネルギー・陸婁 国遭■

睡鐙垂 趣利サービス

子△■ヘ唾里▲且 ■昼■■

17700025

000000

030000

003000

000000

劃4000 716000

000000

100000

000000

000000

615000 郵郵咽唾麺皿皿郵浬唖

詣旧調02

0加咽岨測511

00000

旧洞諏馴的22詔錘

3 1371 14 0 5 1”3

調調0旧0

000000

302000

00鍋000

000000

蛇調猟0旧0

1噸 1714 95弱 15脚 5014 1434

四銅銅訓郵Ⅷ

農神水産璽 エネルギー・竺集 製造璽 建錘軍 巻利サービス

一色坐=凸▲企 ar−

旧W記000

000000

040000

00鐘000

000000

旧7聾000 246000

000000

000000

027000

000000

229000 79麺00000000000400001蝿000

000000

69000

349 0 1 4 19 373

“5 0 1 13 277 鯉6

2 0 377 0 1173 41釦

24 0 1131 0 0 1155 69 0 111 3 302 3785 0 1315 0 0 0 1315

1142 2052 29 1麺

45

1318 610

1“

−3 中間投入ロ (EC》 型3 55 101 3 41 561 …3718 6216 401 2715 3 1 57 1371 2皿 36 2ア 1… 7176 1315 17 1函12110313357 371 農林水産藁

エネルギー・越察 国遭丞 塗殴璽 営利サービス二一一■▲凸 凸●一

47826245

260

041

00釦

000

哩記42 000000000000000000 ︑8唖0釦0601000383000−−

24600018

000000

鯛Ⅲ0釦0 2100007221

幅3000

62600011

118010

000000

馴晦080 卵沌0輯0

71801021

旧7浬000

006000

000000

5040704344

5992 4471 8645 10 1095

迩外鰯入計 736 0 2 5 18 1019 374 0 −8 7 575 167 0 161 424 266 0 86 45 47 3 麺2型

(11)

表7−2が、Schilderinckの作成した1959年の国際産業連関表を編集したものである。ルク センブルクに関するデータは、貿易統計と同様にベルギーのデータに含まれている。このデー タをもとに、 1959年と1975年の生産誘発における各最終需要への依存度を求めたものが表 7−3及び表7−4である。行方向にみて、各国の各部門の生産が、どの国のどの最終需要項 目によって何%誘発されているかがわかる。たとえば1959年には、ドイツの製造業は93.7%は 自国の最終需要によって誘発されていたが、それ以外では、フランスの民間最終消費によって 0.9%、オランダの民間最終消費からは0.8%誘発されており、国別では、フランスの最終需要 から1.9%と最も高い生産誘発を受けていたことがわかる。そして域内依存度の列には、他の EC域内諸国の最終需要全体に生産の何%依存していたかが計算されている。 ドイツの域内依 存度はフランスやイタリアよりも高いが、いち早く1948年に関税同盟を成立させ、また国内市 場も狭硲なベネルクス3国よりは低かった。域内ではドイツの最終需要に、生産を最も依存し ていたのがオランダである。生産全体の8%をドイツの最終需要に依存し、特に農林水産業で は21.4%も依存していた。ベルギーもまた、オランダに次いでドイツの最終需要に4.3%を依 存し、特に製造業の依存が高かった。

このような初期の相互依存構造が、関税同盟や共通農業政策の成立した60年代を経て、1975 年にはどうなったか。表7−4を表7−3と比較すると、各国とも自国の最終需要への依存度 を低下させ、逆に域内諸国の最終需要への依存を深めていたことがわかる。 ドイツの国内生産 も、8.1%を域内各国の最終需要に依存するようになり、1959年の4.7%から大きく上昇してい る。このような相互依存の高まりは、各国ともに確認することができる。 とりわけドイツへの 依存度の上昇が顕在化しており、オランダの11.7%を筆頭に、最低のフランスでも3.1%に上 昇している。部門ごとにみると、オランダのエネルギー・鉱業では、国内生産の実に25.8%が ドイツの最終需要によって誘発されていた。そして表の域内依存度の列から明らかなように、

オランダやベルギーは国内生産全体の20%を域内に依存するようになり、農林水産業にいたっ ては実に40%を超えていた。フランスやイタリアにおいても、農林水産業、製造業の順に域内 依存度が高く、共通農業政策や関税同盟の効果をこの点にも検知することができる。

なお、表7−3〜4の最下段の数値は、各国の各最終需要が誘発した生産額が、域内の総生 産額に占める割合を示しているが、全体への影響力の大きさと考えることができる。 ドイツの

8)ペーパーに公表されているデータは、 4カ年分(1959.1965.1970.1975年)を一挙に掲載するた

めに各セルごとに記載されており、通常の産業連関表の体裁ではない。

−211−

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