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新出 鷺流狂言『宝暦名女川本』の離れについて

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新出 鷺流狂言『宝暦名女川本』の離れについて

著者 永井 猛

出版者 法政大学能楽研究所

雑誌名 能楽研究

巻 44

ページ 53‑66

発行年 2020‑03‑25

URL http://doi.org/10.15002/00023225

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53 新出 鷺流狂言『宝暦名女川本』の離れについて

新出 鷺流狂言『宝暦名女川本』の離れについて

永   井      猛

はじめに  

『宝暦名 かわ本』は、狂言鷺流の分家である鷺伝右衛門派のまとまった狂言伝書として、同派最古の享保保教本と幕末の常磐松文庫本(実践女子大学常磐松文庫蔵『鷺流狂言伝書』)との中間に位置し、同派並びに鷺流を研究する上で欠かすことの出来ない基礎資料である。名女川家は、鷺伝右衛門家の初代からの有力な弟子家である。『宝暦名女川本』の全冊は二〇冊程度と推定されるが、これまで檜書店蔵の七冊(「檜本」と略称。本狂言五冊、間狂

言一冊、伝書「萬 よろずききがき」一冊)のみ所在が確認され、研究に供されていた。ところが、このほど所在不明であった笹野堅氏旧蔵の七冊(本狂言二冊、本狂言秘伝集一冊、間狂言四冊)が古書展に出品され、法政大学能楽研究所(能研と略称)の所蔵となった(これまで「笹野本」と略称していたが、これからは「能研

本」と略称する)。 この新出の能研本七冊には、珍しい本狂言・間狂言も含まれ、注記も豊富で、能・狂言研究に資すること大である。能研本には間狂言が四冊二七〇曲あり、檜本一冊五〇曲と併せて三二〇曲となり、曲数の多さからも間狂言研究に

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た一冊が加われば、江戸中期の鷺流狂言の実態が把握しやすくなることであろう。 刻能にれこる。いてれさ翻本に年)三~元成平」文研二大とめ留き書を等伝秘のご冊曲にらさえ、加を曲五五国子女(「 彦屋関氏・彦忠川北に既曲が一一一冊五本檜は、言俊氏本名」六)~(一)』(本川女暦に宝言『狂流鷺刻翻り「よ狂 54 役立つことは間違いない。

能研本について

能研本の全容については、旧蔵者の笹野堅氏が「古本能狂言・間につきての研究(三)(四)」(『書誌学』昭和一二年

一〇・一一月)で「名女川六右衛門本」「名女川六右衛門間之本」として紹介されている。笹野氏は筆者を名女川家七代六右衛門とされたが、年代的に五代辰三郎がふさわしく、成立も宝暦一一年

(一七六一)頃と推定できる。詳しくは、拙稿

鷺流「宝暦名女川本」について(上)(下)(補遺)

(『観世』昭和五一・

一〇、一一。『能  研究と評論』一二。昭和五九・五。補訂を加えて『狂言変遷考』平成一四に収録)に檜本の全容紹介と筆者推定をしているので、参照されたい。笹野氏の報告を参考にしつつ、能研本の全容を紹介してみたい。

能研本七冊は、伝書二冊と共に桐箱(縦二三八×横一七〇×高さ二一五㎜)に収められている。能研の整理番号は「

14968

」、資料名は「名女川本狂言台本・伝書」。桐箱には、二個所に「鷺流名女川傳書」と墨書された題簽(縦七九×横二〇㎜)が貼付されている。箱には藍色の帙が三つ入っており、それぞれに「鷺流能狂言  名女川傳書」(縦九四×横二六㎜)、「鷺流能間  名女川傳書」(縦九五×

二六㎜)、「名女川六右衛門手記」(縦九〇×横二一㎜)と墨書された題簽がある。

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55 新出 鷺流狂言『宝暦名女川本』の離れについて

本   狂   言

「鷺流能狂言  」と題された帙には、本狂言を記した三冊が収められている。  三冊とも半截の美濃紙を用いた袋綴中型横本(縦一三〇×横一九〇㎜)で藍色表紙を持ち、題簽はなく、背に「盗類雑」「遠雑類」とあり、もう一冊にも三文字が書かれているが、薄くて読めない。読めない冊の開巻に目録があり、そこに「本書綴外物目録」とあるので、「本書綴外物」を集めた冊と知られる。この背書き「盗類雑」「遠雑類」と「本書綴外物」とをもって各冊を呼ぶことにする。本文は一丁表裏各一五行書き。「盗類雑」「遠雑類」の開巻に目録があり、番号は朱筆になっている。「本書綴外物」は、本狂言の口伝等が付記されているが、「大笑道人」なる後人が目録を付け装釘をしたものである。各冊の目録は次の通り。目録と本文の曲名表記等が異なる場合は[  ]で示した。

【盗類雑】盗人の類と雑狂言。本狂言二五曲。墨付一〇三丁。遊紙三丁。

  一、連歌盗人   二、子偸児   三、瓜賊徒[瓜盗人]   四、盆山   五、金藤左衛門   六、磁石   七、長光

  八、茶壺   九、筍   拾、太刀奪   拾一、真奪   拾二、文山立   拾三、昆布賣   拾四、舎弟    拾五、鵆   拾六、仁王   拾七、棒縛   拾八、合柿   拾九、隠狸   廿、八句連哥   廿一、胸突    廿二、包橘   廿三、附子   廿四、口真似   廿五、颯花

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56 【遠雑類】遠い雑狂言の類。本狂言三〇曲。墨付七六丁。遊紙二二丁。

  一、縜粥   二、鈍根草   三、饅頭   四、樋酒[樋の酒]   五、保昌[ほうぜう]   六、猪狸   七、鹿狩

  八、恋聟   九、口真似聟   拾、鶯聟   拾一、折紙聟   拾二、無縁聟[   同、銀三郎] 

  拾三、岩橋聟   拾四、右流左死   拾五、手負山賊   拾六、受法   拾七、忠喜[忠義]

  拾八、登知波呉[どちはくれ]   拾九、昆布布施   廿、六人僧   廿一、双六僧   廿二、六地蔵   廿三、拄杖

  廿四、腥物   廿五、牛座頭[牛座當]   廿六、済頼   廿七、馬口労   廿八、餓鬼十王   廿九、東大名

  三拾、泥閑[※※]

「同、銀三郎  無縁聟ト同事也。此銀三郎狂言ハ長門ノ江山氏ヨリ来ル

※※「三拾、泥閑  是ヲ春作共云。春作ハ外ニ狂言有。テイカント云所ヲ春作ト替テ是ヲモ用ル

この「遠雑類」には、曲名のみ知られていて内容不明だった〈鶯聟〉を始め、〈受法〉〈牛座頭〉〈東大名〉などの稀曲が集められている。ただ、〈樋酒〉〈手負山賊〉〈昆布布施〉〈六人僧〉〈双六僧〉〈六地蔵〉〈拄杖〉〈腥物〉などは、狂言記系諸本と同文であったりして、どうもその影響下にあるらしい。

【本書綴外物】本狂言八四曲の秘伝に関わる記述を含む数丁を綴じからはずし、集めた物。本文には「五、太刀奪」に続いて、目録にはない〈瓜盗人〉がある。墨付九五丁。

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57 新出 鷺流狂言『宝暦名女川本』の離れについて

  一、真奪   二、隠し狸   三、仁王   四、千鳥   五、太刀奪   六、児盗人   七、筑紫奥   八、牛馬

  九、相合烏帽   十、佐渡狐   十一、雁かり金   十二、鍋八撥   十三、祝詞神楽   十四、福之神

  十五、鞍馬参   十六、宝之槌   十七、隠れ笠   十八、末廣   十九、夷毘沙門   二十、煎し物

  廿一、髭櫓   廿二、河原太郎   引括   比丘貞   大般若   若市   呂蓮   花折   宗論   金津

  名取川   米市   井杭   同   武悪   止動方角   素袍落   富士松   豊三   鱸包丁   酢薑   皹

  船ふな   鞠座頭   三人支離   瞽女座頭   川上座頭   花見座頭   不聞座頭   伯養   梟山伏

  犬山伏   祢宜山伏   柿山伏   鬮罪人   朝比奈   八尾   首引   節分   神なり   ぬけがら   鶏聟

  同   渡聟   大名事ノ名ノリ・果(過)   鼻取相撲   秀句傘   今参り   萩大名   岡大夫   墨塗

  入間川   靱猿   老武者   唐相撲   花合戦   横座   鳴子   水汲   歌僊   薬水   枕物狂   祐禅

  楽阿弥   通圓   布施無経

目録の最後に、「右、通計八拾有六種、天保五年十月/十日装釘

大笑道人」の署名と、「思ふに是ハ口伝をこと

〳 〵

く書たれハ、もし/本書をもよふものゝありしためにのそ/きけるもしらす、しからハいよ

〳 〵

秘書/爲事語をまたず」との付記がある。「大笑道人」について、笹野氏は「八代目名女川辰三郎か」としておられるが、岡田紫男氏の「叢柏居漫筆  四」(『能楽』明治四〇年五月)に「大笑といふは(吉見)儀助の號で、嘗て村田直景翁の談に大笑と書てダイサクと読しと、それか自筆に大咲と書いたものもあ」ると記されているので、吉見儀助のことである(『狂言変遷考』二二一頁参照)。「本書綴外物」について、田口和夫氏から「本書をもよふ(読む)もののありしために、除きける」とあるので、「狂

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なお、本冊の中に、印章の変更をした旨を記し、押印した紙片がはさまれている。 により曲名が分かり、本冊を利用する際に便利である。 名らか中途も文本く、なも曲一に半大の』物外綴書『で本見笑しこるあが録目の人道と大曲い。何のてかからな分 できるのである。(『狂言変遷考』二〇七頁参照) 大〉無施か布〈」、部経聟聟は「でま〉鶏ら〈か老〉ら〈の武冊靱定推も列配の目曲各者で、」雑老唐は「でま〉猿〈 、能研本・檜本にない曲目は散逸本にあったもので、目録の順番とは逆に〈煎じ物〉から〈筑紫奥〉は〔脇狂言部〕 指摘もいただいた。 ぼ逆の順序になっており、各冊の上から順にはずして重ね、そのまま綴じたために並びが逆になったのだろうとのご 外能が、列配目曲の」物書綴本本ら「か氏口田た、ま研盗の「類ほと」座山鬼」「部主」「類女出の「本檜」、雑類 るのである。 は書かれていない。狂言本は、この「本書綴外物」と併せてみて初めて鷺伝右衛門派独自の演出等を知ることができ た部分は、はずしたことが分からないように、詞章が続く形のものを作って綴じ込んでいる。ただ、それには秘伝等 58 しを、」物たし外らかじ綴分「部るす属に伝秘らか本で、綴ず当はた。得を示教ごのと適じがのむ読と」物しずは言

   「鷺傳四郎改印

  (印)

  \文化十四年丑年九月廿八日改之」鷺伝四郎は鷺伝右衛門家の八代目である。鷺仁右衛門の次男綾之進が養子となって伝四郎と改め、文化一四年

(一八一七)九月四日に家督を相続した。相続に伴う改印と思われる。

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59 新出 鷺流狂言『宝暦名女川本』の離れについて

間狂言

「鷺流能間  」と題された帙には、間狂言を記した四冊が収められている。四冊とも半截の美濃紙を用いた袋綴中型横本(縦一三〇×横一九〇㎜)で藍色表紙を持ち、題簽はなく、背に「脇末鱗」「語立雑」

真替間」「遠應立」とあり、この背書きをもって各冊を呼ぶことにする。共に開巻に目録があり、番号は朱筆になっている。各冊の目録は次の通り。

【脇末鱗】脇能と末社の神・物の精の登場する間狂言。五〇曲。墨付九一丁。遊紙二丁。

  一、高砂[相生トモ云]   二、老松   三、弓八幡   四、呉服   五、右近   六、志賀   七、養老

  [同、同・

里人立間   同・里人鷺仁右衛門流]  八、淡路[楪葉トモ云]   九、伏見   拾、放生川[放生河]    拾一、御裳濯   拾二、佐保山   拾三、草薙   拾四、逆鉾   拾五、箱崎   拾六、芳野[吉野]    拾七、代主[葛城加茂]   拾八、鵜羽   拾九、賀茂[矢立鴨]   廿、嵐山[子守トモ云]   廿一、大社    廿二、松尾   廿三、浦島   廿四、白髭   廿五、冨士山   廿六、岩船   廿七、江嶌   廿八、白楽天    廿九、源太夫   卅、鵜祭  道明寺有   [五拾、道明寺  白太夫トモ云]  卅一、雨月   卅二、和布刈

  卅三、九世渡   卅四、玉井〔玉の井〕   卅五、厳島   卅六、大般若   [同、大般若]   卅七、七夕    卅八、難波   卅九、絵馬   四拾、寝覚[三帰トモ云]   四拾一、東方朔   [同、東方朔]   四拾二、西王母

  四拾三、竹生嶋   四拾四、氷室   四拾五、金札   四拾六、輪蔵   四拾七、皇帝   四拾八、靏亀殿

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60    四拾九、春日龍神[三笠龍神トモ云][同、同・観世流語] 

  [同、同・

観世流立間里人]  五拾、道明寺

  五拾番  道明寺とげダいに有之候得とも間の有所ハ三拾番目鵜祭の間の次ニ五十番と云印ヲ付テ書テ有  げだいに書落し候故如此ニ候

【語立雑】語りアイと立シャベリ、その他の間狂言。五〇曲。墨付一〇〇丁。遊紙一丁。

  一、天鼓   二、藤渡   三、海士   四、船橋   五、項羽   六、阿濃   七、鵜飼   八、鵺   九、松虫

  拾、鍾馗   拾一、野守   拾二、融   拾三、熊坂   拾四、豊干   拾五、大瓶猩々   拾六、殺生石

  拾七、龍虎[観世流語間]   [同・下懸ノ間]  拾八、雷電   拾九、鞍馬天狗   〔中入間〕   廿、是我意[是界]

  廿一、石橋   廿二、大會   廿三、葛城天狗   廿四、車僧   廿五、一角僊人   廿六、昭君   廿七、飛雲

  廿八、紅葉狩   [同・中入ノ間]  廿九、第六天   三拾、合浦   [同・中入ノ間]  三拾一、枕慈童

  三拾二、絃上   三拾三、愛宕空也   三拾四、大蛇   三拾五、長郎   三拾六、忠信[空腹・吉野忠信]

  三拾七、鉢木[中入後]   三拾八、小鍛冶   三拾九、現在鵺   四拾、橋弁慶   四拾一、羅生門[綱トモ云]

  四拾二、土知蛛[土蜘蛛]   四拾三、夜打曽我   四拾四、檀風   [同・中入ノ間]  四拾五、烏帽子折    四拾六、千引   四拾七、錦戸   [同・語間]  四拾八、吉野天人〔芳野天人〕   四拾九、常陸帯    五拾、涿漉   [同、涿漉是ハ前方ヨリ相勤候間也。近代ハ右ニ書写間ヲ用ル]  [同・中入間

【真替間】真の間狂言と替のアイ。六八曲。墨付二六九丁。遊紙四丁。

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61 新出 鷺流狂言『宝暦名女川本』の離れについて

  一、高砂・真   二、同・中[中間]   三、同・上[真]   四、右近・真  五、同・社人   同・末社

  六、淡路・真   七、伏見・真   八、志賀・真   九、同・極真   拾、松尾・語   拾一、芳野・真

  拾二、老松・真   拾三、同・松笠   拾四、兼平・武者揃   拾五、同・真   拾六、八嶌・真   拾七、同・奈須与市   同・二番語〔二段語〕   拾八、朝長・懴法〔大崩  大乱トモ〕   拾九、同・大乱

  廿、同・真   廿一、箙・真   廿二、實盛・真   廿三、敦盛・語   廿四、同・語無   廿五、同・常

  廿六、碇潜・替   廿七、巴・真   廿八、維盛・真   廿九、田村・由来   卅、軒葉梅・真〔真ハ四季トモ〕   同、同・四季   卅一、定家・真   江口入事[卅二、江口・真]   卅三、野々宮・真   卅四、同・中    卅二、江口・真   卅五、芭蕉・真   卅六、同・語好事[脇語ノ事]   卅七、誓願寺・語   卅八、同・真    卅九、同・極真   四拾、同・独事   四拾一、玉葛・真   四拾二、井筒・真   四拾三、胡蝶・真    四拾四、当麻・真   四拾五、龍田・真   四拾六、三輪・真   四拾七、同・替   四拾八、鵜飼・替    四拾九、賀茂・御田   五拾、同・神子神楽[御子神主]   五拾一、大社・神子神楽〔御子神主〕    五拾二、同・説詞[祝詞]   五拾三、白髭・道者   五拾四、江嶋・道者[江嶋]   [同、江嶋・道者]    五拾五、和布刈・鱗   五拾六、嵐山・猿聟   五拾七、白楽天・鶯蛙   五拾八、同・鱗[鱗精]  

  [五拾九、難波・替]

   [六拾、同・真]   六拾一、雨月・真   六拾二、真無原・御子[御子神主]    六拾三、御裳濯・末社   六拾四、放生河・鱗   六拾五、石橋・仙人   六拾六、鍾馗・立間    六拾七、一角仙人・真   六拾八、常陸帯・替   六拾九、西王母・替   七拾、春日龍神・町積    七拾一、同・町積   七拾二、同・真猿   七拾三、同・替   七拾四、同・真   七拾五、天鼓・真    七拾六、同・送り〔ヲクリノ事  楽器ノ事〕   同、同・楽器   七拾七、海士・楽器   七十八、藤渡・替  

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        九十九、同断百、車僧・替百四、葛城・替百一、龍虎・語百二、竹生嶋・替百三、同・霊宝         九十四、烏帽子折・替九十五、同断替九十六、同断九十七、黒塚・〔安達原〕九十八、同断         九十二、同断八十九、橋弁慶・替九十、夜打曽我・替九十三、同断九十一、同・大藤内           八十八、同・〔替〕名所事八十七、同断八十六、同・脇エ語好事〔狂言ノ語〕八十五、同・語           八十三、安宅・旅人八十四、舟弁慶・独言八十二、橘・語八十一、現在七面・蛙 62          八十、同・楽器[同、藤戸・ヲクリノ事]〔おくりの事〕七十九、同・送り[同、藤渡・楽器]

  百五、同・弱木   百六、七夕・〔和哥〕替   [同、同・織女替]   百七、降魔・四群   百八、山姥・四性    百九、雲雀山・鷹野   十〔百拾〕、同断[雲雀山]   十一[百拾一]、輪蔵・鉢扣御裳濯・御田(本文なし)   半蔀・立花供養(本文なし)  吉野静

【遠應立】遠い珍しい間狂言と立シャベリ。一〇二曲。墨付一三二丁。遊紙二丁。

  一、浦上[浦壁]   二、會盟   三、侍従重衡   四、濱平直   五、西寂   六、長兵衛[長兵衛尉信連]   七、小林   八、女沙汰   九、植田   拾、長郷寺   拾一、安字   拾二、室任[室住]   拾三、村山    拾四、信夫太郎[信夫トモ云ハ違有]   拾五、佐保川   拾六、千尋寺   拾七、岩瀬   拾八、大聖寺    拾九、武文   廿、鐘巻   廿一、守屋   [同]  廿二、身賣   [同、同]   廿三、清重    廿四、陰山[鬼黒]   廿五、磯崎   廿六、刀   廿七、連獅子

  [同、同]

   廿八、木幡   廿九、馬融    卅、権守   卅一、相場   卅二、光季   卅三、楠木[正行トモ]   卅四、更科物狂   卅五、三浦 

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63 新出 鷺流狂言『宝暦名女川本』の離れについて

  卅六、瀧口   卅七、政徳西王母   卅八、空也   卅九、贄田   四拾、神無月   四拾一、龍頭太夫    四拾二、真無井原   四拾三、岡崎[花小塩]   [同・中入間]   四拾四、悪源太   [同・後ノ間  二人

  四拾五、木曽願書   [同・中入間]   [同・立間二人]   四拾六、鐘引   [同・後ノ間]   四拾七、引鐘

  [同・中入ノ間

  鐘引ノ間ヲ云也]  四拾八、河水   [同・後ノ間]   [同、同・間]  

  [同・中入間

  五人]   四拾九、池贄   [同・後ノ間]   五拾、菊慈童[菊水]   [同・後ノ間]    五拾一、佐々木[馬乞佐々木]   五拾二、大施太子[大世太子]   [同・後間]   [二人間]   [中入ノ後]    五拾三、桜間 

  [    ノ、鹿鈴四間拾同・] 人二後五

  [   同・後ノ間] 五拾五、小環

  [同・後ノ間]

  五拾六、帰雁   五拾七、巴園   五拾八、薗田〔園田〕   [同・中入間]   五拾九、承久   [同・後ノ間]    六拾、廣基   [同・後  二人出ル]  [同]  六拾一、韋多天   六拾二、鳳来寺   六拾三、樒天狗    六拾四、花軍   六拾五、鳶窩〔鴟〕   六拾六、松山天狗[松山]   六拾七、橘   六拾八、孫思邈  

  [同・一人間]

   六拾九、降魔   七拾、橋立龍神[祝言橋立トモ云]   七拾一、玉津島龍神   七拾二、宮河   七拾三、八幡   七拾四、日光山   七拾五、香椎   七拾六、駒形猩々   七拾七、玄弉[三蔵トモ]    七拾八、現在七面   七拾九、和泉賢将   八拾、清時田村   八拾一、湛海   八拾二、信貴山    八拾三、犀   八拾四、九穴   八拾五、内府   八拾六、一来法師   八拾七、菅丞相   八拾八、今生巴    八拾九、楯尾   九拾、異国退治   九拾一、松鶴西王母   九拾二、武王   九拾三、二度掛    九拾四、融通鞍馬   九拾五、仲算   九拾六、星   [同・立間]   九拾七、飛鳥寺   九拾八、真田    九拾九、比郎   [比良]   [同・後間]   [同・中入ノ間]   百、大木   百一、大子   [同、同・立間]    百二、野干   [同、同・語間]  

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伝書

宝暦名女川本七冊と同じ桐箱に「名女川六右衛門手記」と題された帙に入った伝書二冊が納められている。宝暦名女川本と筆者、時代も異なるが、鷺伝右衛門家・名女川家と仁右衛門家の関係など、興味深い記述があるので、この場を借りて紹介しておく。二冊には、「鷺流間狂言口傳書」と「名女川六右衛門手記」と墨書された題簽がある。それぞれの内容は次の通りである。

【鷺流間狂言口傳書】茶色表紙の中型横本(縦一二五×横一七〇㎜)。左に「鷺流間狂言口傳書」と墨書した題簽(縦八四×横二五㎜)貼付。もとは、「間狂言口伝書」「間記」と題された二冊の共表紙本で、それを後人が合綴し、表紙・題簽を付けたもの。「間狂言口伝書」の題の左側に「外ニすへきこと有候事」と書かれている。これについて、田口和夫氏から「綴じはずして(秘伝として)ほかにする(別書にする)必要があります、要注意」という意味だろうとのご指摘をいただいた。

〔間狂言口伝書〕「間狂言口伝書」(墨付二六丁)には、名女川家の由緒、「囃子方規定之事」「鉢扣瓢箪本形」、「清水御殿狂言面作者附」、嘉永五年(一八五二)の〈隠狸〉の替謡、安政二年(一八五五)の〈安宅〉の「貝立」、〈唐相撲〉の唐音・手合わせの仕方、嘉永元年の〈合浦〉の一つ拍子、天保四年(一八三三)の〈船弁慶〉の「後の出留の傳」、〈釣狐〉の衣を脱い

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65 新出 鷺流狂言『宝暦名女川本』の離れについて

だ後の所作の変化の段階、「三段の舞方」、「末社三段の舞方」を記す。最後の「御本丸大奥、仁右衛門、鬼あらそひ、アト相勤候節、化ものはなし之控」は、鷺流の狂言〈鬼争い〉で語られた魚が大男に化けた話の後に、「古吉見大笑先醒按之」とある。「大笑」というのは、「本書綴外物」を装釘した「大笑道人」で、「吉見大笑」とあることから「大笑道人」が吉見儀助であったことが判明する。それも「古」がついていることから、親子で「吉見儀助」を名乗った、その親のほうを指すものであろうことが分かる。「大笑道人」は、旗本ながら狂歌・黄表紙作者として知られた紀定丸、本名吉見義方(通称儀助。一七六〇~一八四一)だったのである。

〔間記〕「間記」(墨付八丁)には、安政三年(一八五六)の〈蝉丸〉〈唐船〉の間狂言を舞台図入りで記す。

【名女川六右衛門手記】茶色表紙袋綴中型横本(縦一二五×横一七三㎜)。題簽(縦八四×二五㎜)に「名女川六右衛門手記」と墨書。墨付五九丁。もとは共表紙仮綴本で、後人が新しく表紙・題簽をつけている。もとの共表紙には、本文とは別筆で、中央に「七代目病気/八代目不孝/九代目隠居/一件」、左下に「名女川六衛門」と墨書。これとも別筆で右下に「三」と墨書。内容は題の通り、鷺伝右衛門家の七代目、八代目、九代目について記されている。最初に、一つ書きの見出し風の目録がある。その中には本丸御能伝右衛門病欠、仁右衛門三男綾之進養子、養子願

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組女同様の署名・識語が鴻山文庫「名川家冊。番三五料史二一(」帳留組番 人故別して落涙候/名女川六衛門一生之骨折ニ/子孫大切ニすべし/吉見銕吉綴」との墨書がある。    配思ひ/やるへし無程中風したるは/此心配より事起りしなるへし/今へんわか筆もまわらず心も/ひろからぬ      

組番軽番津水利毛/一清/一都合三冊就中此一冊ハ/実ニ心組御に筆中本文は別とで、「此外両御丸 の子である小伝次を養子にしたと記しておられる。この記事のもとになったのが、本書であろう。 芸風を身につけようとしなかったので、六右衛門等と仁右衛門との間に確執が生まれ、伝四郎を廃し、伝右衛門の妹 の三男綾之進を養子に迎えて伝四郎と改名させ、家督を相続させた。しかし伝四郎は実父方で稽古して伝右衛門派の 楽」(『能は全書』第展開堅と生発の言狂が「氏巻)野笹五病で、な門衛右仁鷺め、たたっかが七子で弱門衛右伝目代 郎隠居之事、伝右衛門妹の倅小伝次養子家督願之事などの記事が含まれている。 堀江引払候事、鷺仁右衛門と名女川六右衛門流儀モメ合之事、仁右衛門・伝四郎・六右衛門流儀大モメ合之事、伝四 66 差出し候事、鷺伝右衛門由緒書、綾之進伝四郎と改名、伝四郎初役之事、伝右衛門出入屋敷之事、伝右衛門家作八町

名女川六右衛門は名女川家の七代目で、その手記を吉見銕吉が綴じたものであろう。 組」までの番組に「鉄吉」と見え、同人と思われる。(一八三六)から天保七年(一八二六)「吉見邸狂言番組」に文政九年

字れなくの鉄」の」が使わてでいるが、「名女川家番組は」帳銕番御方敷屋御の「中「吉見銕吉」について、「留 /三冊」が揃ったことになる。 、「清水家・毛利家・津軽家番組」には「二」との墨書があり、本書と合わせて「都合子御番組」の表紙右下に「一」 38る。「の中の二冊に両)御丸御能御囃あ

本)の成果の一部である。(代表:永井猛、稲田秀雄、伊海孝充)についての基礎研究」   〔究「出・言『れ(は、稿所「際・

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