漢 繹 如 意 輪 法 軌 に 關 す る 研 究 ( 長 部 )
漢
繹
如
意
輪
法
軌
に
關
す
る
研
究
長
部
和
雄
こ こ に 私 が 漢 課 に 限 定 し た 理 由 は、 中 國 密 敢 史 上、 特 に 唐 代 密 教 史 上、 漢 課 如 意 輪 法 に 關 す る 儀 軌 の 成 立 に 關 し て、 8 そ の 成 立 の 前 後、 1 [内 容 の シ ナ 的 要 素、 以 上 二 つ を 明 か に し、 私 の 企 圖 し て い る 中 國 密 教 史 研 究 の 一 部 分 と す る も の で あ る。 に つ い て は 疑 義 は な い が、 口 に シ ナ 的 要 素 と い う の は、 必 ず し も 中 國 思 想 の 加 味 だ け を 意 味 す る も の で は な く し て、 寧 ろ シ ナ 的 な 構 成 と そ の 展 開 と い う こ と が 問 題 と な る。 漢 繹 如 意 輪 法 軌 は、 未 出 版 の 本 邦 寺 院 所 有 の 爲 本 も 若 干 あ る が、 こ こ で は 大 正 藏 経 巻 二 十 に 集 中 牧 録 せ ら れ て い る 漢 課 十 二 課 中 唐 課 十 一 本 を 問 題 と す る。 か よ う に 異 課 の 多 い と い う こ と は、 イ ン ド 呪 術 の 唐 代 流 行 を 意 味 し、 唐 代 中 國 風 密 教 の 一 好 例 で あ る。 こ の 種 の 實 例 は、 千 手 観 音 法 の 九 課、 不 室 絹 索 法 の 八 課、 そ の 他 に も 實 例 は あ る。 さ て 同 本 異 課 と い う 術 語 を 耳 に す る が、 こ れ は 一 梵 本 原 典 と そ の 二 つ 以 上 の 漢 課 本 を 意 味 す る。 し か し 漢 繹 現 本 を 仔 細 に 匙 見 す る と、 一 梵 本 を 原 典 と し て 一 漢 繹 が 出 來、 こ れ を 再 治 し た 異 本 も 同 本 異 繹 と し て 扱 わ れ て い る 場 合 も あ る。 如 意 輪 法 は、 所 謂 雑 密 で あ つ て、 學 者 に よ り 異 論 あ る も、 純 に 封 し て 雑、 唐 代 で は こ の 匠 別 は な い が、 形 式 上 ビ ル シ ヤ ナ の 説 法 が 純 シ ャ キ ャ ム ニ の 説 法 が 雑 で あ る。 若 し ビ ル シ ヤ ナ ・ シ ャ キ ャ ム ニ 同 髄 説 上 に 立 て ば、 此 の 匠 別 は 不 可 能 と な る。 内 容 上 で は 純 密 は 如 來 の 一 切 智 智 上 に 説 か れ た 爾 部 の そ れ、 大 乗 佛 敏 本 來 の 姿、 雑 密 は 然 ら ざ る も の、 生 活 に 直 結 し た 息 災 ・ 増 盆 ・ 調 伏 ・ 敬 愛 等 の 地 人 關 係 ・ 人 間 關 係、 し か し 純 密 で も 此 の 四 種 法 を 読 く が、 観 念 的 で 精 神 生 活 上 に 基 盤 を 置 い て い る。 私 見 に よ れ ば、 開 元 以 前 初 唐 の 雑 密 は イ ン ド 渡 來 の ま ま、 盛 唐 以 降 不 室 以 後 中 晩 唐 の そ れ は シ ナ 的 に 再 整 味 付 け さ れ た も の、 い ず れ に せ よ、 雑 密 の 歴 史 は 全 唐 代 に わ た り、 唐 代 密 敏 史 上 の 意 義 は 頗 る 重 大 で あ る こ と を 喚 起 し た い。 漢 課 如 意 輪 法 軌 の 系 列 は、 大 正 藏 経 編 者 に よ れ ば、 二 系 列 と 系 列 外 の 三 通 り で あ る。 (一) 一 〇 八 ○號 ( 菩 提 流 志 課 ) 1 一 〇 八 一 號 ( 義 浮 繹 )--358-(3) 一 〇 八 二 號 ( 實 叉 難 陀 繹 )-(4) 一 〇 八 三 號 ( 寳 思 惟 繹 ) 以 上 麗 本。 (二) (7) 一 〇 八 六 號 ( 不 室 課 )-(8) 一 〇 八 七 號 ( 金 剛 智 課 ) 11 以 上 麗 本。 日 系 列 外-(5) 一 〇 八 四 號 ( 寳 思 惟 繹 東 寺 三 密 藏 本 ) ・ (6) 一 〇 八 五 號 ( 不 室 繹 麗 本 ) ・ (9) 一 〇 八 八 號 ( 唐 失 繹 麗 本 ) ・ (10) 一 〇 八 九 號 ( 解 睨 師 子 課 豊 山 版 ) ・ (11) 一 〇 九 一 號 ( 不 室 繹 豊 山 版 ) ・ (12) 一 〇 九 〇號 ( 遼 慈 賢 繹 ) で あ る。 右 の 系 列 中 一 〇 八 ○ 號 ( 流 志 課 ) は 四 本 中 ボ リ ュ ウ ム 最 大 に て、 出 秘 密 無 障 擬 経 と あ り、 壇 法 も 呪 法 も 説 く が、 (2) 一 〇 八 一 號 ( 義 浄 課 ) は 呪 法 を 説 く だ け で、 ボ リ ュ ウ ム は 最 少。 私 案 に よ れ ば、 若 し 四 本 が 次 々 と 抄 略 を か さ ね て 來 た の な ら ば、 (A) 一 〇 八 ○ 號 ( 流 志 課 ) 一 〇 八 二 號 ( 難 陀 課 )← (4) 一 〇 八 三 號 ( 寳 思 惟 繹 )← (2) 一 〇 八 一 號 ( 義 浮 繹 ) と な る し、 若 し 一 四 本 が 次 々 と 修 増 補 せ ら れ て 來 た の な ら ば、 (2) 一 〇 八 一 號 (義 浄 繹 )← (3) 一 〇 八 二 號 ( 難 陀 繹 ) ・ (4) 一 〇 八 三 號 ( 寳 思 惟 課 ) ← (1) 一 〇 八 二 號 (流 志 課 ) と な る。 い ず れ に せ よ、 此 の 二 つ の 系 列 の 諸 本 に は 未 だ 金 ・ 胎 爾 部 合 行 の 意 圖 が 現 わ れ て い な い。 次 に 口 系 列 中 の (4) 一 〇 八 六 號 ( 不 室 課 ) と (8) 一 〇 八 七 號 ( 金 剛 智 課 ) は、 全 篇 偶 頚 と 眞 言 と か ら 成 り、 長 行 の 部 分 が な く、 共 に 順 喩 伽 金 剛 頂 経 説 と あ つ て、 西 崖 居 士 ( 密 敬 獲 達 志 巻 三 -五 輻 三 ) は 金 界 の 如 意 輪 法 で あ る と 解 説 す る。 今 爾 本 を 比 較 す る に、 字 面 も 全 く 一 致 す る が、 不 室 課 末 尾 の 五 言 二 十 六 句 の 頒 が 金 剛 智 課 で は 三 十 三 句 に 引 き 伸 さ れ て い る の で、 (2) 一 〇 八 六 號 (不 塞 課 ) か ら (8) 一 〇 八 七 號 ( 金 剛 智 繹 ) が 派 生 し た も の で あ ろ う と 思 う。 し か し 観 前 八 葉 蓮 其 上 置 阿 字 と い う 一 節 が あ る か ら、 や は り 金 ・胎 合 行 の 傾 向 は 見 え る 〇 日 系 列 外 の (6) 一 〇 八 五 號 ( 不 室 課 ) は 依 灌 頂 道 場 経 と あ り、 不 室 自 撰 の 請 入 藏 表 ( 表 制 集 巻 三 所 牧 ) 中 に 載 つ て い る か ら、 大 暦 六 年 十 月 に は 出 來 上 つ て い た も の で、 典 撮 も 釧 つ て い る か ら、 軍 な る 課 本 で は な い。 此 の (6) 一 〇 八 五 號 ( 不 室 課 ) は、 幾 多 の 唐 代 漢 繹 如 意 輪 法 軌 中、 そ の 成 立 時 期 の 規 準 と な る も の で あ る の み な ら ず、 同 じ く 不 室 課 無 量 壽 儀 軌 と 共 に 後 の 十 八 道 次 第 契 印 の 原 型 で あ る こ と は 密 教 學 者 周 知 の 通 り で あ る が、 私 を し て 言 わ し む な ら ば、 蘇 悉 地 法 に 依 る 胎 ・ 金 未 分 状 態 の 合 行 軌 で あ つ て、 胎 藏 三 部 三 昧 耶 以 下 の 印 明 と 上 中 下 三 種 悉 地 法 が 中 心 と な つ て い る。 (5) 一 〇 八 四 號 ( 寳 思 惟 課 ) は、 不 簡 在 家 出 家 飲 酒 食 肉 有 妻 子 と あ り、 在 家 法 と し て 如 意 輪 法 を 説 い た 儀 軌 で あ つ て、 盛 唐 開 元 天 寳 時 代 の 宮 廷 に お け る 阿 閣 梨 の 圭 宰 せ る 密 敏 が 中 晩 唐 期 の 民 間 庶 民 の 密 教 に 移 行 し て 來 た 事 實 を 物 語 る 有 力 な 資 料 で あ る。 故 に 此 の 儀 軌 は、 開 元 以 前 寳 思 惟 の 作 と は 考 え ら れ な い し、 不 室 三 藏 儀 軌 依 十 八 道 と あ る 如 き も 正 し く 逆 で な け れ ば 其 の 意 を 通 じ な い か ら、 恵 果 以 後 の 人 師 の 作 と 断 定 せ ざ る を 得 な い。 (10) 一 〇 八 九 號 (解 脱 師 子 課 ) は、 漢 繹 如 意 輪 法 軌 に 關 す る 研 究 ( 長 部 )
-359-漢 繹 如 意 輪 法 軌 に 關 す る 研 究 ( 長 部 ) 西 崖 居 士 ( 密 教 獲 達 志 巻 三 -四 四 四 ) が 善 無 畏 課 の 胎 藏 系 如 意 輪 法 だ と す る も、 順 於 蓮 花 部 略 説 如 意 摩 尼 輪 と あ り、 こ れ は (2) 一 〇 八 六 號 ( 不 室 課 ) ・ (8) 一 〇 八 七 號 ( 金 剛 智 繹 ) に、 順 喩 伽 金 剛 頂 経 説 摩 尼 蓮 華 部 如 意 念 諦 法 と あ る の と 全 く 同 意 義 で あ る と す れ ば、 四 種 護 摩 法 を 読 く の と 併 せ て 以 て 金 界 法 と 見 ら れ る か ら、 胎 ・ 金 交 用 だ と す べ き で あ る。 亦 こ の (10) ↓ ○ 八 九 號 ( 解 脱 師 子 課 ) に は、 不 室 課 略 出 念 諦 経 巻 一 と 不 室 課 十 八 會 指 婦 に 依 り、 三 種 法 乃 至 四 種 法 が 説 か れ て い る の は、 三 本 比 較 す れ ば、 文 字 面 上 自 明 で あ る の み な ら ず、 已 に 略 出 経 に 合 行 的 傾 向 の 存 す る の を 指 摘 し た い。 ( 正 藏。 + 八。 二 二 五 上 下。 同。 二 +。 二 一 七 中。 )。 こ と に 阿 毘 遮 羅 迦 (降 伏 ) の 梵 名 だ け を あ げ て 他 の 三 者 の 梵 名 を 示 さ な い 如 き は、 一 〇 八 九 號 ( 解 脱 師 子 課 ) が 略 出 念 諦 経 に そ の ま ま 準 嫁 し た 結 果 で あ ろ う と 思 う。 (11) 一 〇 九 一 號 ( 不 室 課 ) に 封 す る 西 崖 居 士 の 批 評 は 如 意 輪 観 音 法 の 一 攣 化 で あ る と い う が ( 密 教 獲 達 志 巻 四 -六 七 )、 如 意 輪 に 七 寳 輻 輪 を 加 え、 如 意 寳 輪 王 菩 薩 の 出 現 と な り、 護 國 法 特 に 敵 國 降 伏 の 性 格 を 具 髄 的 に 明 確 に 打 ち 出 し て い る。 恐 ら く 中 晩 唐 期、 邊 境 は さ わ が し く、 藩 鎭 節 度 使 の 横 暴 は 京 畿 の 政 靡 に 波 及 し、 國 家 安 泰 を 所 る や 急 に し て、 北 斗 七 星 に 關 す る 呪 法 も 併 せ て 此 の 経 文 に 見 え る。 一 〇 八 八 號 ( 唐 失 課 ) は 恵 果 作 の 金 界 軌 の 如 意 輪 法 で あ る と い わ れ て い る が、 讃 ん で み る と、 西 崖 居 士 の い わ れ た 通 り、 や は り 如 意 輪 法 の 繹 経 で あ る と 見 た 方 が よ い。 巻 首 か ら 梵 字 庵 以 下 六 字 の 字 義 を 繹 す る と こ ろ は、 不 室 課 喩 伽 金 剛 頂 経 繹 字 母 品 と 善 無 畏 課 と 傳 え る 撮 大 儀 軌 に 共 通 す る。 上 來 説 述 の 跡 を ま と め る な ら ば、 不 室 時 代 の 作 は 胎 ・ 金 ・ 蘇 の 合 軌 と し て 書 か れ、 (6) 一 〇 八 五 號 ( 不 室 繹 ) ・ (7) 一 〇 八 六 號 ( 不 室 課 ) ・ (8) 一 〇 八 七 號 ( 金 剛 智 繹 ) ・ (10) 一 〇 八 九 號 ( 解 脱 師 子 繹 ) の 四 課 が そ れ で、 口 不 室 以 前 初 唐 の 作 は、 非 合 行 軌 で、 (1) 一 〇 八 ○ 號 ( 流 志 課 ) ・ (2) 一 〇 八 一 號 ( 義 浮 繹 ) ・ (3) 一 〇 八 二 號 ( 難 陀 繹 ) ・ (4) 一 〇 八 三 號 ( 寳 思 惟 課 ) は 恐 ら く 一 原 典 と そ の 一 漢 繹 と 更 に そ の 再 治 と 再 再 治 の 増 補 本 で あ ろ う。 日 不 室 時 代 以 後 の 作 は 種 々 雑 多 に て、 ・ に 該 當 し な い 在 家 法 を 圭 に 説 い た も の や、 護 國 法 と 占 星 法 特 に 北 斗 法 と 合 髄 し た も の や、 或 は 繹 経 の 類 で あ る。 さ て 以 下 こ れ は 如 意 輪 法 軌 に 限 つ た わ け で は な い が、 唐 代 密 敢 に 閉 鎖 的 な 風 と 開 放 的 な 風 と の 二 つ の 傾 向 が 観 取 出 來 る。 9 閉 鎖 的 と は (1) 一 〇 八 ○ 號 (流 志 課 ) に、 斯 経 秘 要、 當 密 秘 持、 無 識 之 人、 不 鷹 宣 傳、 若 謹 此 秘 密 三 昧 耶 者、 當 自 秘 持、 勿 妄 宣 傳、 (5) 一 〇 八 四 號 ( 寳 思 惟 繹 ) に、 此 呪 密 不 得 妄 説、 時 露 験 皆 散 去、 是 故 妄 不 可 傳、 と あ る の が そ れ で、 口 開 放 的 と は、 (i) 一 〇 八 ○ 號 (流 志 課 ) に、 能 依 斯 法、 不 生 疑 惑、 書 爲 讃 諦、 常 受 持 者 と、 (5) 一 〇 八 四 號 ( 寳 思 惟 課 ) に、 凡 諦 此 呪、 不 簡 在 家 出 家 飲 酒 食 肉 有 妻 子、 但 諦 此 呪、 必 能 成 就、 と あ る の
-360-が そ れ で、 此 の 種 の 表 現 は 決 し て 珍 ら し い も の で は な い。 し か し こ こ に 問 題 と し て 提 起 し た い の は、 無 識 之 人 不 鷹 宣 傳 と い う 一 節 で あ る。 そ も そ も 無 識 と 有 識 と の 匿 別 の 要 は 純 密 に 於 て 認 め ら れ、 雑 密 に あ つ て は そ の 要 は な い。 こ こ に い う 無 識 有 識 の 意 味 は、 術 語 に あ ら ず し て、 イ ン テ リ と 衆 愚 と い つ た く ら い の 意 味 で あ る。 大 日 経 疏 を 讃 め ば、 此 の 封 立 用 語 に 屡 々 出 遇 う か ら、 正 し く 爾 者 の 相 違 は 純 密 に お け る 問 題 で あ る。 然 る に、 純 密 傳 課 以 前 の 流 志 繹 や 寳 思 惟 課 の 中 に、 爾 者 旺 別 の 筆 法 が 用 い ら れ て い る と い う こ と は、 異 し む べ き で あ り、 純 密 傳 課 以 後 の 補 修 で は な か ろ う か と い う 疑 問 が 持 た れ る。 併 し こ の 封 鎖 的 ・ 開 放 的 の 二 つ の 流 儀 は、 イ ン ド 密 教 以 來 の こ と 故、 殊 更 に 問 題 と し て 提 起 す る こ と が お か し い。 密 敏 相 傳 付 法 の 上 か ら は 當 然 す ぎ る ほ ど 當 然 の 事 を 宣 傳 流 行 の そ れ と 混 同 し、 わ ざ わ ざ 書 き た て る こ と が 更 に お か し い。 弘 布 宣 傳 と も な ら ば、 師 資 相 傳 と の 聞 に 自 か ら 性 格 の 相 違 が あ る。 と も 角、 い ず れ に し て も、 一 繹 本 中 に 矛 盾 す る 二 流 儀 が 並 列 す る と い う こ と は お か し い こ と で あ る か ら、 一 方 は 後 世 の 補 修 で あ ろ う か。 否 こ う い う 矛 盾 の 存 在 こ そ 雑 密 の 實 態 で あ ろ う か。 開 放 的 な 風 は、 如 意 輪 法 以 外 不 室 羅 索 法 そ の 他 の 儀 軌 に 徴 す る も、 初 ・ 盛 唐 期 の 圭 傾 向 で あ り、 封 鎮 的 な 風 は 中 ・ 晩 唐 期 の そ れ で あ る か ら、 イ ン ド 以 來 の 二 流 儀 と 錐 も 新 ら し く 問 題 と な る。 そ う し て 無 識 有 識 の 矛 盾 は 更 に 許 せ な い。 何 故 な ら ば、 こ れ は 中 國 的 構 成 上 の 画 別 か ら の 矛 盾 で あ り、 そ の 基 盤 は 唐 代 肚 會 に あ る。 密 教 の 士 庶 爾 階 暦 へ の 浸 透 と 士 庶 爾 階 級 の 密 教 受 容 の 上 か ら 問 題 に す る な ら ば、 當 然 有 識 と 無 識 す な わ ち 士 と 庶 と の 旺 別 が 問 題 と な る。 受 容 の 問 題 を 究 明 す る に は、 外 典 を 弘 く 渉 猟 す る 必 要 が あ る が、 密 教 史 家 を 満 足 さ せ て く れ る よ う な 呪 法 儀 軌 の 匿 別 ま で 記 し た 史 料 を 獲 る こ と は 困 難 で あ る。 こ れ を 要 す る に、 漢 課 儀 軌 を 通 し て 見 た 中 國 風 密 教 と し て の 唐 代 密 敏 の 形 態 は、 形 式 上 か ら は 合 行 軌 の 霧 た し い 出 現 で あ り、 そ の 内 容 は、 唐 代 肚 會 に 基 盤 を 有 す る 思 想 の 反 映 と し て、 そ の 必 要 に 封 え よ う と し た 呪 法 呪 術 が 榮 え た。 つ ま り 形 式 に 於 て は 綜 合 的 と な り、 内 容 に 於 て も 亦 そ の 通 り で、 唐 代 の 風 俗 を 遺 憾 な く 現 し て い る。 肚 會 階 暦 に 於 て は 有 識 ・ 無 識 を 匠 別 し な が ら、 世 間 ・ 出 世 間 す な わ ち 在 家 出 家 を 旺 別 し な い 坊 間 の 密 教 へ と、 宮 廷 密 教 か ら 庶 民 の 密 教 へ と 接 大 し て 來 た の が 唐 代 の 密 教 で あ る。 こ の よ う な 結 論 は、 不 室 羅 索 法 や 千 手 観 音 法 の 儀 軌 そ の 他 に 例 を と つ て も、 言 い 得 る と こ ろ で あ る が、 雑 密 は 数 多 し と 錐 も、 観 世 音 菩 薩 の 経 軌 が 厘 倒 的 に 優 勢 あ あ る 鐵 に 注 意 し た い。 こ の 事 實 は 本 朝 の そ れ と も 密 接 な 關 係 が あ る が、 唐 代 に 榮 え た 観 音 の 信 仰 が 必 ず し も 本 朝 で 盛 ん で あ つ た と 言 え な い し、 亦 そ の 逆 も 言 い 得 る。 漢 繹 如 意 輪 法 軌 に 關 す る 研 究 ( 長 部 )