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明日を拓く漁業創出のための技術開発事業

景平真明・白樫 真・田北寛奈・尾上静正

1.マハタ

事業の目的

マハタを新規養殖魚種として県内魚類養殖業者へ 普及するため、人工種苗の生産技術を確立する。

事業の方法

親魚養成 親魚は2007 年 6 月に発生した赤潮で生き残った 4 尾と、2008 年 1 月に購入した群 47 尾の合計 51 尾を 海面小割網生簀(5m×5m×5m) で養成したものを用 いた。平均体重は 6.9kg であった(表 1)。全ての親 魚はピットタグで個体識別した。餌料はモイストペ レット(サバ:イカ:アミ:配合飼料=1:1:1:3 に大豆レシ チン 1.5%、SD ミックス 0.5%、ダイペット C1.0%を 添加)を週2 回飽食給餌した。採卵 1 ヵ月前からは E フィードオイル0.5%を添加した。 表1 親魚の体重 人工授精 1、2 回次は当試験場の保有親魚のうち、雌はカニ ューレで卵径がおおよそ450μm 以上の卵巣卵が採取 できた個体、もしくは生殖孔の突起から肉眼で成熟 が判別できた個体、雄は腹部を圧搾して放精した個 体を親魚に用いた。1 回次は 5 月 25 日(水温 18.3 ℃) に雌6 尾、雄 2 尾、2 回次は 6 月 8 日(水温 19.6 ℃) に雌11 尾、雄 2 尾の背筋部にヒト胎盤性生殖腺刺激 ホルモン(HCG)(ゴナトロピン:帝国臓器製薬株 式会社)を約500IU/kg 注射した。 ホルモン注射48 時間後に圧搾法、乾導法により人 購入年度 飼育尾数 体重範囲 平均体重 (年度) (尾) (kg) (kg) 1994 1 7.8 7.8 2003 2 5.4~7.5 6.5 2006 1 6.2 6.2 2007 47 4.4~16.0 7.1 合計(平均) 51 (6.9) 工授精した。受精卵は洗卵後に卵管理水槽(200L ア ルテミアふ化槽)に収容し、沈下卵を除去した。卵管 理は10 ~ 15 回転/日の換水で行った。水温は、卵を 飼育水槽へ収容するまでに徐々に 22 ℃まで加温し た。翌日再び沈下卵を取り除き、浮上卵はオキシダ ント海水(0.3mg/L)に浸漬した後、各飼育水槽にバ ケツで収容した。得られた受精卵のうち、採卵数が 多く浮上卵率の高かったものを種苗生産に用いた。 ウイルス性神経壊死症(VNN)対策として、雌は 卵巣卵もしくは卵巣内液、雄は精液を用いてRT-PCR および nested-PCR により親魚のウイルス検査を行っ た。 希釈海水濃度別ふ化率 マイクロプレートでの個別飼育法 1)にならい、48 穴プレートのウェルに各希釈海水濃度 100%(殺菌 海水)、80%、60%、40%、20%、0%(水道水)を 1ml ずつ分注した。胚胎形成後の卵をパスツールピペッ トを用いて1 粒ずつ収容し、24 ℃の恒温室内で無給 餌で飼育し、ふ化率およびその後の生残率を比較し た。また、殺菌海水にポリエチレングリコール 60001μg/ml の濃度で溶解し、同様に飼育した。 80%希釈海水による仔稚魚飼育 1t 水槽 4 面を使用し、100%海水(殺菌海水)およ び80%希釈海水の 2 区(各 2 面)を設け、水槽中央 および周囲4 点の合計 5 点による微通気飼育を行い、 生残率を比較した。 仔稚魚量産飼育 飼育には 45kL 長方形コンクリート水槽を 4 面使 用した。通気及び飼育水循環の方法を図1 に示した。 水槽の No.6、No.7 および No.8 は昨年と同様に水槽 四隅底部に設置した長さ 1m のユニホースにより時 計回りの水流をつくり、さらに中央付近に配置した エアーストーンで上下混合を起こした。ただし、水 槽No.8 は日令 3 の夜から日齢 6 の昼まで 24 時間照 明を点灯し、日齢6 以降は夜間は消灯した。水槽 No.5 は通気はおこなわず、水槽中央底層部に設置した水 中ポンプ(ポンスターPX650:株式会社工進)(最大 吐出量 260L/min)から飼育水を吸水して水槽 4 隅底

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層部からシャワーで吐出することにより時計回りの 水流をつくった(以下、ポンプ水槽)。なお、吐出口 のシャワ ーは長さ 1m の硬質塩化ビニールパイプ VP13 にφ 5mm の穴を 100mm 間隔で開けたものを 用いた。 図1 通気及び飼育水循環の方法 ふ化仔魚数及びふ化率は、飼育水槽における柱状 サンプリングの結果から算出した。また、仔魚の水 槽内での鉛直分布を把握するため、水面から水深1m (中層)、水槽底(底層)について塩ビパイプ(VP50) の一端にバルブを付けた器具を用い、目的水深まで バルブを閉じた状態でパイプの一端を沈めた後、バ ルブを開放して各層をサンプリングした。層別サン プリングは各水槽(No.5、No.7、No.8)3 点行い、 同一点で水面から水槽底までの柱状サンプリングも 行った。照度は水槽から 3m ほど上に張った半透明 ビニールシートで直射日光を防ぎ、蛍光灯により水 面がほぼ1,000Lux 以上になるよう調節した。飼育水 は光触媒方式による殺菌海水を飼育水槽の中層から 注入し、換水は日齢21 までは止水、それ以降は 1 日 5%から開始し、徐々に 100%まで増加させた。また、 市販の淡水クロレラ(スーパー生クロレラSV12:ク ロレラ工業株式会社)(120 億 cells/mL)12mL/kL を 30L の海水に希釈し飼育水槽へ毎日添加した。水温 は徐々に加温し26 ℃とした。 飼育水のDO は 5 ~ 7mg/L を維持するようにし、日0 から酸素発生装置を用いて中央のエアーストー ンから酸素を供給した。 飼育時は底質改善を目的に貝化石5 ~ 20g/kL を殺 菌海水に溶かして、日没後に飼育水へ添加した。日 齢40 からは週に 1 ~ 5 回サイホン方式により底掃除 を行った。 餌料はS 型ワムシを使用し、開口時に 20 個体/mL になるよう給餌した。開口以降は10 個体/mL を維持 するようにし、不足時には適宜追加した。日齢31 か らアルテミア幼生、日齢36 から配合飼料を順次重複 させながら給餌した。ワムシは淡水クロレラ(生ク ロレラ V12:クロレラ工業株式会社)で培養し、強 化にはスーパー生クロレラ SV12 を使用した。アル テミア幼生は強化剤(バイオクロミス:クロレラ工 業株式会社)で栄養強化した。 エアーブロック水槽(水槽No.6,7) ポンプ水流水槽(水槽No.5) エアーストーン 見た目の水流の向き エアーブロック ポンプ吸入口 注水位置 ポンプ吐出口 酸素 酸素 45kL水槽 45kL水槽

事業の結果

採卵・採精および人工授精 採卵・採精などの結果を表 2 にまとめた。1 回次2 回次に比べて 1 尾当たりの採卵数が少なかった が、これは採卵時の水温が 18.3 ℃と低く、まだ成熟 しきっていない個体が多かったためと考えられる。 1、2 回次合わせて雌 15 尾から合計 1,804 万粒を採卵 した。PCR 検査した個体はすべて陰性であった。当 試験場では 、1 回次に得られた受精卵のうち 25 万 粒と、2 回次で得られた受精卵のうち 75 万粒を用い て種苗生産をおこなった。 希釈海水濃度別ふ化率 生残率の結果を図 2 に示した。海水濃度 0%(水 道水)および20%では日齢 1 および日齢 2 までに全 て死亡した。海水濃度 40%、60%、80%、100%区に ついては低塩分なほど長期間生残したことから、キ ジハタと同様 2)にマハタでも低塩分飼育の有効性が 示唆された。 また、ポリエチレングリコール(PEG)を 1μg/ml 溶 解 し た 100%海 水区では、PEG を 入れなかった 100%海水区と比較してふ化率や全個体死亡するまで に要する日数に差はなかったが、日齢 2 から 6 まで に死亡する個体数は少なかった。これは、PEG を加 えたことで仔魚が水面に張りついて死亡するのを防 いだためと考えられる。この結果は、マイクロプレ ートを用いた簡便なウナギの卵質評価法の結果 1)と 一致する。 80%希釈海水による仔稚魚飼育 100%海水区に比べて、80%希釈海水区では、ふ化 仔魚が底層で遊泳している様子が観察された。しか し、日齢 1 に水槽底部に設置しておいたチタンヒー ターにふ化仔魚が接触し、大部分が斃死したため、 飼育試験を中止した。 仔稚魚量産飼育 仔稚魚飼育結果を表 3 に、生残率と成長の推移を3 と図 4 に示した。日齢 10 における生残率は 1.120.3%、日齢 60 ~ 62 の取り揚げ時には、生残率0.2 ~ 4.2%、全長は 26.6 ~ 39.8mm、合計取り揚 げ尾数は17,523 尾であった。 ポンプ水槽はタイマー制御(3 分稼働 1 分停止) でポンプを稼働したところ、ポンプ吸入口のネット にふ化前の卵が吸われ、大量の卵がふ化できずに死 亡したのが確認できたが、ふ化率は収容卵数よりも 多い結果となった。また、ふ化仔魚へのネットへの 吸着は見られなかった。

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柱状サンプリングおよび層別サンプリングの結果 を図 5 に示した。柱状サンプリングは水槽 No.8(24 時間照明)に比べて、水槽 No.5(ポンプ区)および 水槽 No.7(通気区)では日齢 3 以降の生残尾数の減 少が著しかった。また、中層および底層の生残尾数 の合計は、各区によってばらついたが、仔魚の分布 は、いずれの区でも大きな差はなかった。

今後の課題

水槽 No.5(ポンプ区)は日齢 12 から珪藻が水槽 表面を覆うほど増殖し、水槽内の観察が困難になっ たが、原因は不明である。また、タイマー制御を行 っても卵の吸着が見られたため、ふ化まではエアに より水流を発生させ、ふ化後にポンプによる水流に 切り替えるなどポンプの使用方法を改善する必要が あると考えられる。水槽No.5(ポンプ区)と水槽 No.824 時間照明)では日齢 10 までの生残率は 9.9%、 8.8%と水槽 No.7(通気区)の 1.1%に比べて高い結 果となり、その有効性が示唆された。マイクロプレ ートによる飼育試験では、40%希釈海水が最も長期 間生残したことから、希釈海水を用いた飼育が有効 ではないかと考えられる。またPEG を用いることで 浮上斃死を抑制できる可能性も示唆された。

1)Unuma et al. Determination of the rates of fertilization, hatching and larval survival in the Japanese eel, Anguilla japonica, using tissue culture microplates.

Aquaculture 2004; 241: 345-356. 2)御堂岡あにせ.低塩分飼育によるキジハタ種苗生 産技術開発について.平成20 年度広島県立総合技術 研究所水産海洋技術センター研究発表会要旨集. (白樫 真) 表2 採卵及び人工授精結果 個体No. 親魚購入年度 体重kg) 4F35 2007 7.0 測定不可 30.0 17.2 57.4 陰性 3810 2007 6.1 473 43.9 22.9 52.2 陰性 6 0D07 2006 6.2 457 46.5 46.5 100.0 陰性 2974 2007 6.1 488 71.2 71.2 100.0 陰性 0466 2007 6.5 479 117.0 21.0 17.9 陰性 1271 2007 8.1 410 採取できず 陰性 合計(平�) 308.6 178.8 (65.5) 1266 2007 6.1 494 252.5 224.5 88.9 陰性 534A 2007 6.7 451 236.7 197.0 83.2 陰性 046D 2007 7.1 460 191.7 174.2 90.9 陰性 1B0F 2007 5.6 吸水卵 27.2 22.0 80.9 陰性 2B71 2007 9.9 測定せず 97.5 75.0 76.9 陰性 3931 2007 5.1 481 89.2 35.2 39.5 陰性 0309 2007 6.4 467 252.7 189.5 75.0 陰性 3A66 2007 7.0 510 測定せず 陰性 3C6C 2007 5.2 298 採取できず 陰性 255C 2007 7.1 測定不可 289.0 261.0 90.3 陰性 5、7,8 2935 2007 5.6 407 59.2 39.5 66.7 陰性 合計(平�) 1495.7 1217.9 (76.9) 2 6月10日 1 5月27日 回次 採卵日 親魚 HCG打注時 の卵径 (μm) Nsted-PCR 収容 水槽 No. 総採卵数 (万粒) 浮上卵数 (万粒) 浮上卵率 (%)

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図2 マイクロプレートによる希釈海水濃度別飼育試験の生残率の推移 表3 仔稚魚飼育結果 図3 生残率の推移 図4 成長の推移 図5 中層、底層および柱状サンプリングにおける1リットル当たりの生残尾数 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 生 残 率 ( % ) ( 日 齢 0 で は ふ 化 率 ) 日齢(日) 海水濃度0%(水道水) 海水濃度20% 海水濃度40% 海水濃度60% 海水濃度80% 海水濃度100% 海水濃度100%+PEG 1ug/ml 0  20  40  60  80  100  0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 生 残 率 ( % ) 日齢 水槽No.6(通気区) 水槽No.5(ポンプ区) 水槽No.7(通気区) 水槽No.8(24時間照明) 0  5  10  15  20  25  30  35  40  0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 全 長 (m m ) 日齢 水槽No.6(通気区) 水槽No.5(ポンプ区) 水槽No.7(通気区) 水槽No.8(24時間照明) 0 5 10 15 20 25 30 35 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 生 残 尾 数 /L 日齢 No.5(ポンプ区) 中層 底層 柱状 0 5 10 15 20 25 30 35 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 生 残 尾 数 /L 日齢 No.7(通気区) 中層 底層 柱状 0 5 10 15 20 25 30 35 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 生 残 尾 数 /L 日齢 No.8(24時間照明) 中層 底層 柱状 1 6 通気 44 25.4 17.5 69.2 3,988 62 29.2 7,359 4.2 2 5 ポンプ 44 25.0 28.1 112.3 6,381 61 31.3 5,975 2.1 2 7 通気 44 25.0 36.9 147.8 8,396 60 39.8 610 0.2 2 8 通気 44 25.0 29.2 116.8 6634.6 60 26.6 3,579 1.2 100 111.761 (111.5) (6,350) (31.7) 17,523 (1.9)     注:ふ化仔魚数及びふ化率は、飼育水槽における柱状サンプリングの結果から算出 合計(平均) 日齢 飼育水の 循環方法 密度 (尾/kL) 水槽 ふ化率 (%) 取り揚げ時 ふ化仔魚数 (万尾) (全長mm) 生残率(%) 回次 量 (kL) (万粒)卵数 収容時 尾数 (尾) No.

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2.カワハギ

事業の目的

カワハギの人工種苗の安定量産技術を確立する。

事業の方法

親魚養成 親魚は 2007 年から養成している天然由来の養殖 魚、2007 年産人工種苗の他、県内の養殖業者から 20094 月 28 日に 54 尾(平均体重 1,058g)を購入し、 水産試験場地先の海面小割生簀(5×5×5m)で養成し た。餌料はモイストペレットを週 2 ~ 5 回飽食給餌 した。 採卵 採卵は親魚を適宜陸上水槽へ収容し、水槽内での 自然産卵とした。親魚を収容した水槽の飼育水はろ 過海水を流水にして自然水温(19.5 ℃前後)で行っ た。 採卵のための親魚の水槽収容は5 月 18 日から 6 月 25 日まで計 8 回行った(表 1)。1 回次は産卵に適当 な雌雄比を調べるため、雌雄比の異なる 3 試験区を 0.5kL パンライト水槽 2 基ずつ設けた。3 回次と 5 回 次は測定やカニューレ、腹部圧迫による放精確認等 のハンドリングが採卵に与える影響を調べるため、 ハンドリングを行う区と行わない区を設け、4 回次6 回次以降はハンドリングは行わないこととした。 受精の有無は胚胎形成期に判断し、胚胎形成期の卵 の割合から受精率を求めた。 種苗生産 採卵で得られたふ化仔魚を用い、6kL 円形キャン バス水槽2 面、10kL 円形キャンバス水槽 1 面、45kL 長方形コンクリート水槽 1 面で種苗生産を行った。 ふ化仔魚はサイホンまたはバケツで収集し、バケツ 輸送で各飼育水槽に収容した。飼育水は 6kL 円形キ ャンバス水槽と10kL 円形キャンバス水槽では紫外線 殺菌海水を、45kL 長方形コンクリート水槽ではろ過 海水を使用した。換水は日齢10 頃までは止水、それ 以降は1 日 5%から徐々に増加させた。通気は 6kL 円 形キャンバス水槽と10kL 円形キャンバス水槽では中 央にエアーストーンを1 個と周囲に樋を 4 基設置し、 45kL 長方形コンクリート水槽では水槽 4 隅底部に長 さ約 1m のユニホースと中央付近にエアーストーン を設置して、仔魚の沈下を防ぎながら飼育水全体が 対流するようにした。底質改善を目的に貝化石10 ~ 20g/kL を殺菌海水に溶かして、日没後に飼育水へ添 加した。また、市販の淡水クロレラ(120 億 cells/mL) を毎日、飼育水1kL あたり 10 ~ 12 mL ずつを 30L の殺菌海水に希釈し飼育水槽へ添加した。水温は自 然水温から徐々に 24 ℃まで加温した。飼育水の DO5 ~ 7mg/L を維持するように酸素を供給した。日30 頃からは週に 1 ~ 5 回サイホン方式により底掃 除を行った。 餌料は、開口前日から日齢30 までは S 型ワムシを 飼育水槽内で10 ~ 25 個体/mL になるよう給餌した。 日齢 12 頃からアルテミア幼生を、日齢 15 頃から配 合飼料を順次重複させながら給餌した。ワムシは淡 水クロレラ(生クロレラ V12:クロレラ工業株式会 社)で培養し、強化剤(スーパー生クロレラ V12: クロレラ工業株式会社)で栄養強化した。アルテミ ア幼生は強化剤(バイオクロミスパウダー:クロレ ラ工業株式会社)で栄養強化した。 現地養殖試験 2007 年 11 月に開始したヒラメ用陸上水槽での養 殖試験を継続した。

事業の結果

採卵 採卵結果を表2 に示した。 1 回次では未受精卵は得られたものの、受精は確 認されなかったため、産卵に適当な雌雄比を判断す ることはできなかった。2 回次、4 回次、7 回次でも 未受精卵は確認されたものの、受精卵は得られなか った。 3 回次と 5 回次ではいずれもハンドリングを行っ た区で受精卵が確認され、それぞれふ化仔魚 15,625 尾、16,176 尾が得られた。受精率はそれぞれ 22.3%、 22.6%と低かった。ハンドリングを行わなかった区 では未受精卵のみ確認された。6 回次と 8 回次では それぞれふ化仔魚32,135 尾、20,548 尾が得られたが、 受精率は8.3%、24.1%と低かった。 種苗生産 得られたふ化仔魚のうち、6 回次のふ化仔魚につ いては水槽収容時に減損し、収容尾数が 15,686 尾と なったため、合計 63,129 尾を用いて種苗生産を行っ た。生残率を図 1 に、成長を図 2 に示した。水槽 1 と水槽4 では日齢 35 以降、異常遊泳やへい死個体が 多くなり、PCR 検査を行ったが VNN は陰性であり、 原因は分からなかった。日齢 52 ~ 60 の取り揚げ時 には合計 14,050 尾で、生残率は 8.5 ~ 32.8%、平均

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全長は 33.5.~ 38.8mm であった。形態異常はみられ なかった。 現地養殖試験 現地養殖試験の成長と生残を図 3 に示した。生残 に関しては2009 年 6 月 1 日時点で 58.8%であり、以 降はへい死個体数が少なかったため、計数されてい なかった。平均体重は 2009 年 12 月 24 日時点で 216.9g であったが、2010 年の 1 月以降は転覆遊泳な どの異常遊泳や衰弱個体が目立ったため、測定を中 断した。PCR 検査を行ったが VNN は陰性であった。

今後の課題

受精率が低く、 1 回の採卵で得られるふ化仔魚数が 少なかったため、種苗量産のためのふ化仔魚数を確保 するために時間と労力を要した。効率よく種苗量産する ために、受精率の向上と計画的な大量採卵が課題となっ た。低い受精率の原因は卵と精子の品質や親魚の健康 状態にあると考えられるので、採卵方法や親魚養成方法 について改良する必要がある。 (田北寛奈) 表1 採卵方法 雄 雌 容量(kl) 数(基) 5月18日 18 647 2:2,2:1,1:1 0.5 6 5月25日 8 825 4月購入養殖 2007年産人工 2:2 0.5 2 6月2日 12 910 4月購入養殖 2007年産人工 2:2 0.5 3 6月5日 12 - 水試養成天然 2007年産人工 2:2 0.5 3 6月10日 9 - 4月購入養殖 2007年産人工 1:2 1 3 6月17日 6 - 4月購入養殖 4月購入養殖 1:2 1 2 6月22日 6 - 4月購入養殖 4月購入養殖 1:2 1 2 6月25日 12 - 4月購入養殖 4月購入養殖 5:7 6 1 月日 親魚尾数 1水槽あたりの 雌雄尾数(雄:雌) 水槽 水試養成天然 平均体重 (g) 親魚由来 表2 採卵結果 図1 仔稚魚の生残率 回次 ふ化仔魚 回収月日 親魚 水槽数 ふ化仔魚数 (尾) 受精率 (%) 収容水槽容量 3 6月8日 1 15,625 22.3 6kL(水槽1) 5 6月15日 1 16,176 22.6 6kL(水槽2) 6 6月22日 1 32,135 8.3 10kL(水槽3) 8 6月29日 1 20,548 24.1 45kL(水槽4) 図2 仔稚魚の成長 図3 現地養殖試験の成長と生残

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3.ヒラメ

事業の目的

大分県は全国の養殖ヒラメの 3 割を供給する日本 一の生産地である。その中でも佐伯市蒲江の下入津 地区には養殖業者が集中しており、ヒラメ供給基地 となっている。 近年、大分県沿岸域では海水温の上昇傾向が続い ており、2008 年は特に夏場の高水温が著しく、下入 津のヒラメ養殖場では各種トラブルや疾病が頻発し て生残率が下がり、養殖経営を揺るがす事態となっ た。今後も水温の上昇が続くならヒラメ養殖の存続 が危ぶまれる。 本研究ではヒラメの高水温耐性品種を確立するこ とにより、当県のヒラメ養殖産業を支援することを 目標とする。

事業の方法

1.現地養殖選抜による高水温耐性魚の育種 下入津地区で 2008 年、2009 年の夏を越したヒラ メを親魚として入手し、種苗生産する。生産した種 苗を現地の養殖業者に供給し、2 夏を越えた養成魚 の中からコンディションが良いものを再度親魚とし て入手する。更に、それを親魚として種苗を生産し 現地供給する。これを繰り返すことにより、現地の 養殖環境に適した系統を作出する。 2.高水温負荷選抜による高水温耐性魚の育種 多様な遺伝資源を保有する野生群から親魚を導入 して種苗生産し、選抜育種する。 豊後水道で漁獲された天然雄と養殖雌(前述群)を を掛け合わせて種苗生産し、生産した種苗に高水温 負荷をかけ、その生残群の中から次世代の親魚を得 る。これを繰り返すことにより、高水温耐性系統を 育種する。

事業の結果

1.現地養殖選抜による高水温耐性魚の育種 親魚の確保 2009 年 11 月 12 日に下入津地区のヒラメの養殖業 者から平均体重 2.15kg ヒラメ 21 尾を購入し、50kL 水槽(実水量20kL)で給餌(ひらめ皇 8 号)飼育した。 これらはその業者が、2007 年の 12 月に民間から購 入した種苗を池入れし、2 年越で養成していたもの で、リンホシスチス病の発症履歴があるが過去に投 薬はされていない。12 月 8 日に全個体(平均体重 2.41kg)をカニュレーションしたところ、全て雌であ ることが判ったため、12 月 10 日に同じ業者の同じ ロ ッ ト の 水 槽 か ら 小 型 の も の を 20 尾 (平 均 体 重 1.10kg)購入し持ち帰り、雌とは別の水槽で給餌飼育 した。2010 年の 1 月 20 日に新規購入全個体(平均体1.26kg)をカニュレーションしたところ全て雄であ った。 親魚には全てピットタグを装着した。親魚は無加 温の濾過海水による換水飼育とし、餌は配合飼料(ひ らめ皇8 号)のみを与えた。飼育水温の変化を図 1 に 表した。 図1 ヒラメ親魚飼育水温の変化 自然採卵 親魚は入手後雌雄別々の水槽で給餌飼育したが、127 日に雌雄を合わせた。50kL-1 号水槽(実水量 20kL)に雄雌 10 尾ずつ、50kL-3 号水槽(実水量 20kL) に雌11 尾、雄 10 尾を収容した。1 月 27 日の移動の 時点で放卵する個体がみられ、1 月 28 日に卵受けネ ットを設置したところ、翌日には50kL-1 号で卵が得 られた。 その後順調に採卵できたが、3 月 1 日に 50kL-3 号 の雌親魚1 尾がエドワジエラ症により死亡したため、 3 月 3 日から 50t-3 号の採卵を中止した。また、3 月 24 日からは天然雄との人工授精のため、50kL-1 号も自 然採卵を中止した。 図2 に浮上卵の回収状況を示した。 2009年← | →2010年 12 13 1� 1� 1� 1� 1� 1� 2� 12�1 12�31 1�3� 3�1 3�31 水 温 � � �

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図2 浮上卵の回収量の推移 種苗生産 種苗生産は屋内50kL コンクリート水槽1面(50kL-4 号)を用いた。水槽壁面下の 4 ヵ所にエアーブロッ クを、中心にエアーストーン 1 個を設置し、仔魚の 沈下を防ぎながら飼育水全体が対流するように通気 した。水面照度が 1,000Lux 以上になるように水槽上 面に蛍光灯を点灯した。点灯時間は自然日長に合わ せた。飼育水温は加温により18 ℃に維持した。飼育 水は濾過海水に水道水を添加して 90%海水とし、当 初は無換水で飼育した。 2 月 21 日に採卵し、23 日から 24 日にかけて孵化 した仔魚を、24 日(日齢 0 日)に収容した。収容直後 に柱状サンプリングにより計数したところ、収容尾 数は46 万 6 千尾であった。 25 日(1 日齢)にはハイグレード生クロレラ V12(以 下、HG クロレラという)(クロレラ工業社製)を水槽100ml 散布後、ワムシ(HG クロレラで培養)を 3/ml に なるよう添加した。同時に HG クロレラ 250ml を水道水で希釈して桶に溜め、定量ポンプで 24 時間連続滴下するようセットした。 2 日齢には開口しワムシを摂餌する個体が出現し た。飼育水中のワムシ濃度の基準は 3 ~ 5 日齢の間5 個/ml に、6 ~ 10 日齢の間は 8 個/ml、11 日齢に12 個/ml、12 ~ 27 日齢の間は 15 個/ml になるよ う適時ワムシを添加した。ワムシの添加は 27 日齢 (3/23)で終了し、同時に飼育水への HG クロレラの 添加も止めた。 アルテミアは脱殻卵を使用し、栄養強化にはスー パーカプセル A-1(クロレラ工業社製)を使用した。 アルテミアの給餌は22 日齢から開始し、最初は 1 仔 魚あたり 5 個の量を与え、順次 8 個/尾、10 個、20 個、30 個、40 個と増やしていった。 換水は18 日齢の 5 %換水から開始し、10%、20%、 30%、40%、50%、60%、80%、100%と日々換水率を 上げ、最終的に100%を維持した 配合飼料(えづけーるS)への餌付けは 27 日齢から 開始し、31 日齢に自動給餌機を設置した。 配合飼料給餌後急速に水槽底が汚れてきたので、35 日齢(3/31)時に 50kL-5 号へ 50mm サクションホース 0.0 50.0 100.0 150.0 200.0 250.0 1�20 1�30 2�� 2�1� 3�1 3�11 3�21 3�31 回 収 卵 数 � � � � のサイホンによるヒラメ稚魚の移槽を開始した。 図 3 に柱状サンプリングによる生残尾数の推移を 表した。 2.高水温負荷選抜による高水温耐性魚の育種 天然親魚の確保 人工授精に用いる雌は前述親魚群のものを用い、 雄は豊後水道で漁獲されたものを大分県漁協鶴見支 店で入手した。入手した雄はエルバージュを添加し た 1kL 活魚タンクで持ち帰り、5 分間の淡水浴後、 ピットタグを装着し個体測定(全長、体重)した。また 図3 50kL-4種苗生産水槽の生残数の推移 胸鰭の一部をカットし 99.5%エタノール中に保存し た。そして再度 2 時間以上のエルバージュ浴後、 50kL-2 号水槽(実水量 20kL)に収容した。 3 月 12 日に 12 尾、同 15 日に 10 尾、19 日に 10 尾、 23 日に 10 尾、27 日に 15 尾入手した(表 1)。3 月 12 日の 2 尾が刺網で獲られたものである以外は全て底 曳網で漁獲されたものであった。 表1 入手した天然雄の測定値 入手日 尾数 平均全長(㎜) 平均体重(㎏) 3/12 12 444 ± 35 0.91 ± 0.25 3/15 10 536 ± 81 1.32 ± 0.27 3/19 10 517 ± 55 1.36 ± 0.40 3/23 10 493 ± 53 1.23 ± 0.48 3/27 15 501 ± 41 1.28 ± 0.32 人工授精 3 月 24 日に人工授精を試みた。自然採卵に使用し た雌 20 尾の腹部を圧迫し、卵を出した 1 個体を 0.5kL 水槽に隔離した。3 月 24 日までに確保した雄 39 尾(当日までに 3 尾死亡)の腹部を圧迫し精液をシ ャーレに受け、そのうち1ml をシリンジに吸い取り、 個体別にクーラーボックスに保管した。1ml の精液 が採れなかった個体が 3 尾あったが、平均 3.4ml/尾 の精液が得られ、概ね均等に採精できた。 次ぎに隔離した雌の腹部を圧し、搾出した卵をボ ールに受け、得られた 100g の卵に速やかに 39 尾の 雄の精液を掛け、羽根刷毛で混和後、殺菌海水を注 0 10 20 30 40 50 �0 0 5 10 15 20 25 � � � 生 残 数 � � � �

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ぎ媒精させた。受精卵は 200L の卵管理水槽に収容 した。浮上卵は5 万個、沈下卵は 3 万 5 千個で、浮 上卵の 7.7%に卵が不透明などの異常がみられた。卵 管理水槽で孵化させた後に飼育槽に移す予定であっ たが、翌朝にサイホンがエアを噛みオーバーフロー してしまい、卵を遺失させてしまった。

今後の課題

1 回目の人工授精の失敗は人為的な作業ミスであ り、その他は概ね順調に実施できたが、幾つかの課 題もあった。 まず、放卵雌の確保であるが、確認作業に大きな 労力を要した割には、得られた卵量が乏しかった。 今後は HCG(ゴナドトロピン)の打注による効率的な 採卵が望ましい。また、採精作業も多大な労力を要 するうえ、入手後日数が経過した雄は無給餌の影響 か採精量が少なかった(表 2)。今後は入手直後に採 精し、人工精しょう(精子の活性を数日維持できるも の)に保存して媒精に用いるなど、飼育管理を省く方 法も選択肢に加えた方がよい。 表2 入手日別の平均採精量 入手日 3/12 3/15 3/19 3/23 平均採精量(ml /尾) 2.3 2.7 4.2 4.9 (景平真明)

4.アコヤガイ

事業の目的

1997 年に顕在化したアコヤガイ赤変病は感染症が 原因とされているが、未だ病原体の特定には至って いない。当試験場では、県南部の赤変病多発漁場で の真珠養殖を再生するため、耐病貝の選抜育種を進 めてきた。本年度も、耐病貝を種苗生産し、養殖試 験を行った。

事業の方法

1.品種改良試験 1)親貝選抜と人工授精 採卵は6 月 26 日に 1 回行った。用いた親貝は 2007 年に種苗生産した耐病貝2 系統(表 1)で、雌には 2 月産の殻幅比が大きい系統、、雄には6 月産の通常形 状の系統を用いた。さらに形状、色合い、殻の厚さ、 刃先の伸びが良く閉殻筋の赤色度が低いものを、そ れぞれの系統から選抜し、親貝に用いた。人工授精 は切開法により行った。 2)種苗生産 種苗生産は屋内の 0.5kL 水槽を用いた。水温を 25 ℃に加温し、水槽換えを 3 ~ 5 日の間隔で行いなが ら随時ネットを用いて幼生の大小を選別し、大小で 水槽を分けて飼育した。餌料はChaetoceros calcitrans を適量与えた。日齢17 で付着器(20×60cm の黒色の 遮光幕)18 枚を水槽に垂下し、浮遊幼生を付着させ た。付着器の投入後は水槽換えを行わず、25 ℃の精 密ろ過海水で毎日1 回全換水した。採卵から 50 日経 過後に袋型の稚貝沖出しネットに付着器を入れ沖出 しした。 2.高水温負荷選抜試験 2008 年に種苗生産した耐病貝 4 系統(表 2)につ いて、もっとも衰弱する時期である 9 月 14 日~ 18 日の間、陸上の 10kL キャンバス水槽に収容して高 水温32 ℃で飼育した後、水産試験場地先へ垂下して 飼育し、11 月 5 日に生残率を調べた。 3.現地養殖試験 2007 年に真珠母貝養殖業者に委託後、2008 年 3 月 から真珠養殖業者に引き渡された 2 ヵ所、2008 年 5 月に開始した3 ヵ所、2008 年 9 月に開始した 6 ヵ所 で養殖試験を継続した。

事業の結果

1.品種改良試験 種苗生産幼生の成長、着底は順調であった。海面 への沖出し時の殻長は 1.5 ~ 3.0mm で、付着幼生数37,915 個体であった。この品種改良貝は沖出し後、 2007 年 10 月に養殖業者による現地養殖試験用とし て県南部の真珠養殖業者2 経営体に配布した。 2.高水温負荷選抜試験 高水温負荷を与えたアコヤガイ 4 系統の生残率は いずれも 98%以上と高く、大きな差はみられなかっ た(表2)。 3.現地養殖試験 2007 年に真珠母貝養殖業者に委託後、2008 年 3 月 から真珠養殖業者に引き渡された 2 ヵ所について、

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2009 年 1 ~ 6 月の間に浜揚げを行い真珠生産を終え たので養殖試験を終了した(表 3)。養殖中、目立っ たへい死はなく、挿核後、浜揚げまでの生残率も 5580%と高い結果であった。真珠の品質も他品種の 母貝に劣らなかったが、養殖試験を行った真珠養殖 業者が入札を行わなかったため、生産された真珠の 単価については分からなかった。

今後の課題

2008 年産貝の高水温負荷選抜試験では全ての系統 で生残率が高く、また、2007 年に開始した養殖試験 でも目立ったへい死はみられなかったことから、赤 変病への耐病性には問題はないと考えられる。しか し、真珠単価が低迷を続ける近年、耐病性に加え県 南の環境に適した、品質の良い真珠を生産する母貝 へと品種改良を進めていく必要がある。 (田北寛奈) 表1 人工授精に使用した親貝 表2 高水温負荷選抜試験 表3 現地養殖試験(2007年開始分) 採卵日 系統 親貝 雌雄 個体数 平均重量(g)  2007年産貝(耐病貝)4 76.8  2007年産貝(殻幅比大) 雌 6 65.9 2009年6月26日 耐病貝 系統 種苗生産年月 親貝の特徴 生残率(%) A 2008年3月 殻幅比大 99.0 B 2008年6月 殻幅比大 98.6 C 2008年6月 厚殻、殻幅比大 100.0 D 2008年7月 厚殻 99.7 養殖試験場所 浜揚げ日 挿核からの 生残率(%) 備考 県南海域 2009年1月20日 80 真珠商品率27.8%、2級以下72.2% 県南海域 2007年6月15日 55

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ヒラマサ種苗生産技術開発事業

景平真明・白樫 真・田北寛奈・尾上静正

事業の目的

2008年の農林水産統計によると本県のヒラマサの 養殖生産量は1,444tで長崎に次ぎ、全国の生産総量の 1/4を担っている。その一方、種苗は全て県外の天然 種苗に頼っており、その中でも主力は中国産種苗で ある。そのため、種苗の安定確保に不安があるとと もに、2005年秋には中国産の天然種苗を用いた養殖 カンパチにおいてアニサキスの寄生が確認され、ヒ ラマサについても同様の事態が懸念される。 本事業では安心・安全な「大分ブランド」のヒラ マサ養殖を推進するため、良質で安定した人工種苗 の生産技術を確立することを目的とする。

事業の方法

親魚養成 4歳魚群-2007年12月11日に県内の養殖業者から 5kgサイズの養殖魚を85尾購入し、水産試験場沖筏の5 ×5×5m小割網生簀で養成した。2009年4月20日に全 個体をカニュレーションしたところ雌が29尾、雄が1 尾であった。 3歳魚群-2008年12月16日に新たに県内の養殖業者 から3~5kgサイズの養殖魚60尾を購入し、同様に飼 育した。2009年4月20日に全個体カニュレーションし たところは雌29尾、雄22尾、不明4尾であった。 搬入後から親魚養成用(アジ41.6%、イカ10.4%、 オキアミ10.4%、配合餌料27.7%、総合ビタミン剤等 4.2%、3月以降フィードオイルを5.6%添加)のモイ ストペレット(以下、MP)を週5回飽食給餌した。個 体識別のため全個体の背筋内部にピットタグを装着 した。 体表に寄生するハダムシと口腔内と鰓に寄生する カリグスを駆除する目的で、3週間毎に淡水浴をおこ ない、エラムシを駆除するために3週間毎にマリンサ ワーSP30(薬浴用H2O2製剤-片山化学工業研究所製) 浴をおこなった。 成熟度調査 採卵時期を把握するため、2009年1月27日、2月28 日、4月2日、20日、27日、5月7日に成熟度を調べた。 成熟度はカニューレによって卵巣内卵を採取し、実 体顕微鏡を用いて卵巣卵の最大卵径群の30粒につい て、卵径を測定して平均値を求めた。この数値を成 熟度の指標としての平均卵巣卵径とした。 採卵 2009年4月20日には平均卵巣卵径が700μmを越える 個体がでてきたため、4月27日にヒト胎盤性生殖腺刺 激ホルモン(以下、HCG)600IU/kgを雌雄の親魚に打 注し、屋外50kL水槽に収容した。採卵水槽の換水率3回転/日とした。1回目のHCG打注で産卵しなかっ たため、20℃への加温と再打注(1000IU/kg)をしたと ころ、産卵を誘導できた。回収した受精卵は浮上卵 と沈下卵に分離し、浮上卵を200Lアルテミアふ化水 槽で卵管理した。換水率は14回転/日、水温は20℃に 設定し、卵が撹拌されるように通気を行い、特にふ 化直前には卵の沈降を防ぐため通気を強めた。また、 死卵は適宜除去した。 陸上での飼育が長期化したため、親魚には不定期 にMPを与えた。 種苗生産 孵 化 後 の 飼 育 は 屋 内50kLコ ン ク リ ー ト 水槽 4面50kL-1,2,3,4)を用い、飼育水量は45kLとした。 50kL-1,2,4号 は互いに対向する水槽壁面の底部4ヵ 所に散気管(ユニホース)によるエアーブロックを、 水槽中央底にエアーストーン1個を配置し、仔魚の沈 下を防ぎながら飼育水全体が流れるように通気した。 生産2ラウンド(以下、R)目から使用した50kL-4号は 仔魚収容時の飼育水を80%海水とした。 一方、50kL-3号は2007年度に引き続き、水槽中央 底近くに設置した水中ポンプ(金属枠で囲いその周囲 を60目のネットで被覆)を用いて水槽壁面底部の4ヵ 所(50kL-1,3,4号のエアブロックと同じ場所)から斜め 上方向へ吐出させ、水槽中央底部に1個エアーストー ンを配置し、仔魚の沈下を防ぎながら飼育水全体が 流れるように送水量や通気量を調整した。いずれの 水槽も水面照度が1,000Lux以上になるように水槽上 面に蛍光灯を設置し、点灯時間は5:00~19:00とし た。 孵化仔魚は0から1日齢で種苗生産水槽(以下、生産

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槽)に収容し、水温は23℃まで毎日1℃ずつ昇温させ た。仔魚が開口(卵黄有り)した後、ワムシを生産槽 に接種すると同時に、クロレラ工業社製のスーパー 生クロレラV12(以下、SV12)1Lを水道水で希釈のう え定量ポンプで終日滴下した。1Rは11日齢から換水 を始めたが、2Rは透明度を低く保つことにより共食 いを防止する目的で、日齢30日から換水を開始した。 稚魚の大小差が拡大し、小型の劣位魚が大型魚の追 撃や捕食を受け水面で蝟集する集団逃避行動がみら れるようになると、長柄杓で劣位個体の集団を掬い 取り、生産槽内に設置したモジ網や別水槽に隔離し た。 餌料系列はS型ワムシ、アルテミア幼生、配合飼 料を順次重複させながら切り替えた。ワムシは生ク ロレラV12(クロレラ工業社製)で培養し、SV12で必 須脂肪酸(DHA)を強化した。生産槽内のワムシ密度 が常に15~30個体/mlとなるように、不足する場合は 強化ワムシを補給した。アルテミア幼生はバイオク ロ ミ ス ( ク ロ レ ラ 工 業 社 製 ) を 用 い て 必 須 脂 肪 酸 (DHA)を強化し、残餌がでない程度を給餌した。配 合飼料の投与には自動給餌器を用い、適宜給餌時間 と給餌量を調整した。配合飼料の粒経は稚仔魚の成 長にともない順次大きくした。 中間育成及び種苗出荷 商品サイズに至るまでに、人工種苗にどのような 課題が生ずるかを知るために、本年度は海面での中 間育成後に、一定量(全長約13cm、3000尾以上)を養 殖業者に引き渡して実際に養殖生産してもらい、そ の経過(約2年間)を毎月観察することにした。

事業の結果

親魚養成 表1 親魚の測定結果 尾叉長 体重 親魚群 測定日 雌雄(尾) 肥満度 (㎝) (㎏) 4 2008 ♀(29) 78.6±2.3 7.4±0.6 15.3±1.1 12/19 ♂(1) 78.0 7.1 15.0 歳 2009 ♀(29) 79.2±2.4 8.0±0.7 16.1±1.2 2/23 ♂(1) 78.0 6.6 13.9 魚 2009 ♀(29) 80.2±2.4 8.9±0.6 17.3±1.2 4/2 ♂(1) 80.0 8.2 16.0 3 2009 ♀(29) 72.8±2.3 5.2±0.5 13.4±0.7 2/23 ♂(22) 71.2±1.7 4.9±0.4 13.5±1.1 歳 不明(4) 71.3±1.4 4.7±0.4 13.0±1.4 2009 ♀(29) 73.5±2.6 5.5±0.6 13.8±1.3 魚 4/3 ♂(22) 71.8±1.6 5.2±0.5 14.0±1.3 不明(4) 71.5±2.4 4.9±0.5 13.5±2.3 ※肥満度=体重(㎏)/尾叉長(㎝)3 ×1,000,000 定期的に淡水浴とH2O2 (過酸化水素水)製剤浴を施 すことによって、親魚養成は特に支障無く、養成飼 料も予定どおりに与えることができた。 また、これまでカリグスCaligus spinosusに 対する 淡水浴は駆除効果が無い1)とされていたが、淡水はカ リグスに対して短時間で致命的に作用することを確 認した。 成熟度調査 親魚の平均卵巣卵径と水温の推移を図1に示した。 2009年1月27日の平均値は194±8μm(12尾)、2月28日 は201±5μm(11尾)と変化はみられなかったが、4月2 日 は417±25μm( 14尾 ) と 増 大 し 、 同 月 20日 に は 631±25μm( 8尾)に達し、750μmを 越える個体が出現 した。続く27日は654±27μm(8尾)、5月7日は612±29μm (12尾)であった。 図1 親魚の平均卵巣卵経と海水温の推移 採卵 採 卵 の 状 況 に つ い て は 表2に示した。4月27日に 600IU/㎏のHCGを雌雄の親魚に打注し、屋外50kL水 槽2号(親B群)と3号(親A群)に収容した。収容尾数は それぞれに4歳魚の雌7尾と3歳魚の雄12尾とした。430日になっても産卵しなかったため、親A群の飼 育水温を無加温時の約16℃から20℃まで加温した。5月1日に親A群を取り上げHCGを1000IU/kg再打注 後、20℃に設定した屋外50kL-4号に移したところ、53日朝にまとまった量の受精卵(16分割~桑実胚)が 得られた。翌4日の卵は胚体形成期であり前日の未回 収卵であった。その後5、6日にも大量の受精卵を得た が、一見して4日間の最大卵量と判断した6日のもの は卵回収槽のトラブルによりそのほどんどを消失し た。1Rの種苗生産には5月3、4日回収分を使用した。 一方、HCGを再打注をしなかった親B群からは卵 を得られなかった。 更に種苗生産用の受精卵を得るため、5月7日に沖 0 �00 �00 �00 �00 �00 �00 �00 �00 �00 ��� ��� ��� ��� ��� ���� � � � � � � � �� � � �� �� �� �� �0 � � � �� �

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筏で養成中の残りの親魚から、4歳魚の雌7尾(うち3 尾 は カ ニ ュ ー レ に よ り 成 熟 を 確 認 ) を 取 り 上 げ 600IU/kgのHCGを打注し、屋外50kL-3号に収容した。 また親B群の全雄12尾を取り上げ、600IU/kgの HCG を再打注後、同じく屋外50kL-3号に収容し、新たな 親魚群(親C群)とした。親C群の収容完了後に飼育水 温を20℃に設定した。親B群の雌は沖筏の親魚養成 用小割生簀に戻した。 親C群は収容当初から20℃で飼育したが、1回目の HCG打注では予定(打注後48時間)どおりに産卵に至 らず、6日後の5月13日になって最初の産卵を確認し た。15日以降は産卵しなかったので、18日に再度HCG1000IU/kg打注したところ、2日後に今シーズン最大72.6万粒の浮上卵を得た。これを2Rの種苗生産に 用いた。 表2 採卵結果 浮上卵数 沈下卵数 浮上卵率 月 日 処 置 (粒) (粒) (%) ●親A群 4月27日 【HCG(600IU/kg)打注、自然水温】 4月30日 【20℃に加温】 5月1日 【HCG(1000IU/kg)打注】 5月3日 172,000 103,000 62.6 「屋内1号」 5月4日 54,000 84,000 39.1 「屋内1号」 5月5日 268,000 48,000 84.8 「屋内2号」 5月6日 大量の産卵を確認するも事故により消失 5月7日 少量の卵のため回収せず 廃棄 5月8日 216,000 18,000 92.3 廃棄 5月9日 - 140,000 0.0 廃棄 5月10日 170,000 60,000 73.9 「屋内3号」 5月11日 15,000 123,000 10.9 廃棄 ・・・・5/11に加温切り、5/15に全個体沖筏に戻し・・・・ ●親B群 4月27日 【HCG(600IU/kg)打注、自然水温】 4月30日 【20℃に加温】 5月7日 収容から一度も産卵せず ・・・・5/7に雌は沖筏に戻し、雄はHCG打注後親C群に・・・・ ●親C群 5月 7日 【 沖 筏 か ら の 雌 と 親B群 の 雄 に HCG (600IU/kg)打注、20℃に加温】 5月13日 90,000 79,000 53.5 廃棄 5月14日 96,000 20,000 82.8 廃棄 5月18日 【全個体にHCG(1000IU/kg)打注】 5月20日 726,000 150,000 82.9 「屋内2,3,4号」 5月21日 62,000 59,000 51.2 廃棄 ・・・・5/22に全個体を沖筏に戻し・・・・ 種苗生産 ○1R(10日間無換水飼育) ・50kL-1号水槽(通常区) 0日齢の仔魚を14.3万尾/45kL収容した。その後の 成育は順調で、7日齢での生残率は86.3%であった。10 日齢からアルテミアを与え、25日齢から配合飼料の 餌付けを始め、27日齢から自動給餌をおこなった。23 日齢には共食いが確認され、30日齢には共食いが激 しくなり、35日齢頃から劣位個体の密集団が目立ち 始めたため、長柄杓で劣位個体を掬い取り、飼育水 槽内に張り込んだ1.2×1.0×0.8mのモジ網に隔離し た。しかし、モジ網内で斃死魚が多数発生したため、 毎日サイホンで斃死魚を計数廃棄し、その後、50kL-3 号水槽(エアブロック水流に転換)に移動させた。結 局、モジ網を設置していた5日間で生産槽から掬い出 し隔離した7,781尾のうち生残したのは2,940尾だけで あった。モジ網撤去後も引き続き1号の劣位個体を3 号水槽に移動させた。移動直後はまとまった量の斃 死がみられたが、次第に落ち着いた。3号水槽には合4,678尾収容し(1Rモジ網生残の2,940尾と2Rの1,233 尾を含む)、63日齢(1R分)で沖の筏に移動させたと きには2,658尾であった。 41日齢時の1号水槽(優位個体群)と3号水槽(劣位個 体群)の 各抽出50個体の平均全長はそれぞれ29.8± 4.0mm、20.7±1.9mmで明瞭な格差があった。また、1 号水槽の最大魚は41.1mmであった。 1号水槽の取り上げ尾数は41日齢から47日齢の間に 8.828尾で、屋外50kL-4号に移動させ配合飼料による 飼育を継続した。 ・屋外50kL-4号(陸上での中間育成) 屋外50kL-4号水槽の上面は降雨やゴミの迷入を防 ぐために白色のテントシートで覆った。水槽内面は 熱交換パイプやその他の構造物があり、小型魚の取 り上げは困難であるため、3×3×3mのモジ網を張り 込み6月18日から24日の間に1R50kL-1号 の8,828尾を 収容した。その後は沖出しまで選別せず、共食いを 緩和させるために、できるだけ飽食に近い量を与え る(配合飼料自動給餌)よう努めた。しかし、トビの 出現は避けられず、給餌時に蝟集した群を狙って補 食する大型個体を日常的に目撃するようになった。 8月18日に104日齢で全個体を取り上げ、形態異常 魚や小型魚を除いたものを沖出しした。そのうち、 トビを除く標準的な大きさの群は1,366尾で、サンプ ル等のために抜き取ったものを除く1,279尾を沖出し した。抽出34尾の平均全長は122.2±14.1mmで、平均 体重は28.2±9.4gであった。無開鰾のものは1個体の みで開鰾率は97%であった。 選別によりハネた形態異常魚は全個体の中で23尾 のみで、表3にその内訳を示した。

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表3 1R屋外50kL-4号の取り上げ時の形態異常内訳 形態異常 異常の状況 尾 数 鰓蓋欠損 極僅かに欠損 18 頭背部陥没 (鰓欠損と重複) (12) 肛門部陥没 明瞭に陥没 3 顎異常 僅かに下顎長 1 脊椎異常 明瞭に背部波打ち 1 合 計 23 形態異常魚の平均尾叉長は106.9±9.0mm、平均体 重は17.5±3.6gで正常魚よりもやや小型で、開鰾率も 53%と低かった。 トビとして取り分けた44尾の平均尾叉長は216.0± 22.9mmで、最大のものは尾叉長265mmであった。こ の44尾を将来の親魚候補として確保した。 成長の劣る選別残(ヒネ)の560尾も1区画設け沖出 した。 ・50kL-2号(通常区) 0日齢の仔魚を11.7万尾/45kL収容した。収容当初 は1号の仔魚よりもサイズが大きく良好と思われた が、ワムシを与えても摂餌が極めて悪く、4日齢で生 残率が4割以下となった。その後も漸減したため廃棄 した。 ・50kL-3号(通常区) 0日齢の仔魚を7.8万尾/45kL収容した。同日夜に底 にまとまった量の仔魚と斃死魚を確認したため、中 央のエアを強めたが、その後も漸減したため廃棄し た。このロットは卵管理水槽でも大量の死卵が発生 しており、元々受精卵の質が悪かったか、卵管理の 失敗により孵化仔魚にダメージ与えた可能性もある。 ○2R(1ヵ月無換水飼育) ・50kL-2号(通常区) 0日齢の仔魚を15.1万尾/45kL収容した。その後も 順調で、9日齢の生残率は95.7%であった。 止水飼育中の生産槽内のワムシの湧きが良かった ため、アルテミアの給餌は21日齢から開始した。水 中の透明度を下げる目的でSV12やV12の水槽への添 加は取り上げ直前まで継続した。pHが7を下回りそ うになったため、30日齢から換水を開始した。換水 量は10%程度を維持し、再びpHが7を切りそうにな った65日齢あたりから徐々に増大させた。配合飼料 の自動給餌は42日齢から始めた。共食いは40日齢前 頃からみられ、50日齢頃には劣位魚の密集団ができ 始めた。52日齢から劣位魚の隔離を始め、5日間で904 尾を50kL-3号に移動させた。それ以降は業務の都合 で掬い出す時間を確保できず共食いを放置した。そ の代わりに、夜間に睡眠状態で表層近くを漂ってい る稚魚群の中から、トビを掬い出して除去する作業 を繰り返した。ある程度の効果はあったと判断して いるが、1回の作業で捕獲できるトビは限られており、 完全な除去はできなかった。次善の策として、稚ガ ニ付着器のポリモン(ブラシ状のポリエステル繊維) を連ねて水面に浮かべ、劣位個体のシェルターとし たが、設置当初は一定の効果があったが最終的には 残りの劣位魚は全て減耗した。 88日齢で取り上げ沖の筏に移動させた。取り上げ 総数は2,060尾、そのうち形態異常魚は99尾で、大部 分は僅かに鰓蓋が短い欠損であった。形態異常魚の 開鰾率は11.1%であった。筏には1954尾を出した。 表4 2R50kL-2号の取り上げ時の形態異常内訳 形態異常 異常の状況 尾 数 鰓蓋欠損 極僅かに欠損 87 明瞭に欠損 8 肛門部陥没 僅かに陥没 2 明瞭に陥没 2 合 計 99 トビは6尾で尾叉長は185~136mmと平均的集団か らかけ離れて大きく、減耗の主原因と思われる。 無作為に抽出した55個体の個体測定値を表5に示し た。形態異常は「極僅かに鰓蓋欠損」のみで、開鰾 魚(平均尾叉長85.9±5.9mm)の方が無開鰾魚(81.9± 7.6mm)よりも若干大きい傾向がみられた。 表5 2R50kL-2、4号の取り上げ時の個体測定値 50kL-2号 50kL-4号 測定尾数 55 58 平均尾叉長(㎜) 83.4±7.2 78.6±6.3 平均体重(g) 8.8±2.1 6.8±1.6 形態異常率(%) 7.3 27.3 開鰾率(%) 36.4 98.3 ・50kL-3号(ポンプ水流区) 0日齢の仔魚を16.5万尾/45kL収容した。4日齢頃か ら急減し、9日齢に生残率が11.5%まで落ちたため廃 棄した。ワムシ添加後急速にDOが低下し、4日齢時 には4.37mg/Lに なったため、急遽酸素供給を始めた が後手に回った。後日、2007年の担当者から、ポン プ水流水槽ではエア供給が不足するため、最初から 酸素供給をしなくてはならない旨の指摘を受けた。 ワムシ接種後のDOは他の2水槽よりも常に2mg/Lほ ど低かった。 ・50kL-4号(80%海水区) 0日齢の仔魚を他の2水槽とほぼ同量になるように 意図して移動収容した。収容直後から仔魚の多くが 沈降し、水中を漂う仔魚は少なく、柱状サンプリン グによる推計では6.9万尾/45kLであった。柱状サン プリングでは採水17.6L中に27尾みられたが、水槽底 から採水したところ2.4L中に273尾であったことか ら、収容仔魚の多くが沈んでいることが判った。全

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体のエアを強めて、底水が動くように調整したが推 計 生 残 尾 数 が 回 復 す る こ と は な く 、9日 齢時には 34,000尾/kLであった。 その後の飼育は、50kL-2号に対する作業と給餌量 以外は同調させた。ただ、飼育後半は4号の水温が2 号よりも常に高く、pHは常に低かったので、換水率 がやや低かったと思われる。劣位個体の隔離作業は5 日間で329尾を50kL-3号に移動させた。 4号は89日齢で取り上げ沖の筏に移動させた。表5 に示すとおり、外部形態の異常が目立ち全体の1/4以 上を占めると思われた。取り上げ時に形態異常とし てハネたもののうち55尾を調べたところ、「極僅かに 鰓蓋欠損」が34尾(62%)、「明瞭に鰓蓋欠損」が19尾 (35%)、「明瞭に肛門部陥没」が2尾(4%)で、開鰾率81.8%、 平均体重は6.4±2.1gと母集団よりもやや 低かった。 ハネた形態異常魚の数取りを忘れたため、取り上 げ総数は不明であるが、1,208尾を沖出しし、サンプ ル測定等で81尾を消費した。 母集団から無作為抽出した58尾のサンプルのうち、 形態異常がみられた15尾の平均尾叉長は79.9±6.7mm で、正常魚43尾の平均尾叉長78.2±6.1mmと の差は みとめられなかった。 中間育成及び稚魚出荷 種苗生産魚の沖出しの状況を表6に示した。 表6 種苗生産魚の沖出し状況 沖出日 沖出数(尾) 由 来 7月8日 2,658 隔離した劣位個体 8月19日 1,954 2R50kL-2号 8月20日 1,208 2R50kL-4号 8月20日 1,279 1R50kL-1号主群 8月20日 44 1R50kL-1号トビ 8月20日 560 1R50kL-1号ヒネ 合 計 7,703 7月8日出しの2,658尾は沖出し当初、防鳥ネットの 張り上げが悪く、鳥害により減耗し、7月末の赤潮に より壊滅した。 8月20日沖出しの1R50kL-1号 主群はヒラマサの飼 料試験に用いるため養殖環境班に引き渡した。EPを 毎日飽食給餌させ、良く成長していたが、その後類 結節症や緑肝症などが発生し、最終的には試験に至 らず廃棄した。 9月 14、 15日 に 8月 20日 沖 出 し の 2R50kL-4号 と 1R50kL-1号 ヒネと8月19沖出しの2R50kL-2号 を淡水 浴後5×5×5m生簀にまとめて収容し、養殖業者への 引き渡しに備えた。養殖環境班のヒラマサに類結節 症が出たため、9月15日から23日の間アンピシリンを 経口投与したが、23日にまとまった量の斃死があり、 衰弱魚も目立った。24日に診断したところ、ベコ病 とエラムシがみられ、死因はエラムシと判断し、同 日に「マリンサワー」浴をおこなった。その後も斃 死がだらだらと続き、ベコ病も顕著になったため、102日に全数処分した。 一方、親魚候補のトビは当初14尾をエラムシやカ リグスで斃死させたが、その後は大きなトラブルも なく現在に至っている。

今後の課題

HCG打注については2007年度と同様に600IU/kgで は採卵できなかった。2回目の1000IU/kgで いずれも 十分な量の採卵ができたことから、水温20℃の条件 下でのHCG打注量に問題がある可能性がある。適正 な打注量の解明が必要である。 網目等による一括選別は作業スピードと労力を要 し魚への負担も大きいので、日常の飼育管理による 共食いの防止を試みたがいずれもうまくいかなかっ た。歩留まりを優先するのであれば、トビを残させ ない一括選別が必要である。 種苗生産中期以降の減耗要因はほぼ共食いに限定 されていたが、沖出し後は各種疾病が頻発し、まと もに中間育成できなかった。ヒラマサの人工種苗を 定着させるためには、この疾病対策が大きな課題で ある。 本年度の種苗には顕著な奇形は少なく、2007年度 に多くみられた口顎の異常もほとんどみられず、多 くは鰓蓋の周縁部に僅かに隙間が生じる程度の鰓蓋 欠損であった。形態異常が少なかった要因について は不明であるが、形態異常魚が共食いによって選択 的に排除された可能性も考えられる。また、その後 成長したときに形態異常が生じる可能性も否定でき ない。残念ながら、養殖業者への引き渡し前に、疾 病が発生したため、その後の経過を追うことができ なかったが、今後は種苗期以降の追跡が必須課題で ある。

1)日本水産資源保護協会.鰓カリグス症.「かん水 魚 の 魚 病 Ⅰ 」 水 産 増 養 殖 叢 書37, 東 京 , 1988; 126-128.

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資源増大技術開発事業

カサゴ放流技術開発

白樫 真・尾上静正・景平真明・田北寛奈

事業の目的

大分県沿岸海域におけるカサゴの漁獲量は年々減 少傾向にあり、大分県漁協佐賀関支店ではカサゴ類 は1997 年の 43t をピークに、2008 年には 4t にまで 落ち込んでいる。このカサゴの資源量を増大させる ことを目的に 2003 年度から人工種苗の放流技術開 発に取り組んでいる。本事業は回収率の精度向上を 図りながら放流効果を明らかにするとともに、放流 手法を確立することを目的としている。

事業の方法

1.標識放流 今年度は標識放流は実施せず、2003 ~ 2007 年度 までに佐賀関で放流した群および 2008 年度に佐伯 市上浦沖に放流した群(図 1、表 1)について、放 流効果調査を継続実施した。 2.放流効果調査 1)佐賀関 2003 ~ 2007 年度に標識放流した佐賀関において 2004 年 3 月から継続している大分県漁協佐賀関支 店魚市場での調査は、2009 年 4 月~ 2010 年 3 月に 6 回実施し、調査時に市場に水揚げされた全てのカサ ゴについて標識の有無を調べるとともに一部につい て全長を市場で測定した。 2)上浦 2008 年 10 月 9 ~ 10 日に放流した佐伯市上浦で は刺網試験操業、カゴ試験操業、潜水調査を 20094 月から 2010 年 3 月までそれぞれ概ね月に 1 回 ずつ上浦地先で実施した。刺網は三重刺網(中網の 目合いが6 節)2 反と一重刺網(目合い 10 節)2 反 を用い、夕刻投網し、翌早朝に揚網した。カゴは高 さ 85cm、底の直径 88cm の釣り鐘型のものを 1 回7 個使用し、カタクチイワシを餌として放流海域 内に 1 晩設置した。潜水調査は、放流海域に 200m の調査ロープを固定し、毎回このロープに沿って片 側1m の範囲の中のカサゴの大きさと数、出現位置 を野帳に記入した。潜水観察後は調査ラインの外で ヤスを用いてカサゴを採集し、精密測定を行い、胃 内容物などを調査した。 上浦沖に出漁する刺網漁船6 隻全てに漁獲したカ サゴの尾数と腹鰭異常の個体数の記録を依頼した。 また、遊漁船1 隻とカサゴ釣漁船 1 隻にも同様の記 録を依頼した。放流区域における操業実態を把握す るため、放流区域全体を撮影できる場所に定点カメ ラを設置し、15 分毎にインターバル撮影を行い、 画像から出漁隻数を把握した。さらに、実際の出漁 漁船のうち、カサゴをどのくらい漁獲しているかを 明らかにするため、月4 回漁船への聞き取り調査を 依頼し、カサゴの漁獲実態を把握した。 3)回収率の推定 腹鰭抜去した佐賀関放流群のうち、市場調査で確 認した再捕尾数から、回収率を推定した。回収率は、 確認した標識魚の数を飼育試験で求めた標識の有効 率および調査率で補正して推定再捕尾数を算出し、 推定再捕尾数の放流尾数に対する割合とした。

事業の結果

1.放流効果調査 1)佐賀関 再捕尾数 2010 年 3 月末までの再捕尾数を放流群別、調査 方法別に表2 に示した。今年度は佐賀関市場で計 6 回、合計93 尾の水揚げされたカサゴを調査したが、 放流個体は発見できなかった。 2)上浦 再捕尾数 2008 年度佐伯市上浦で放流した群のうち、2010 年3 月末までに再捕が確認されたのは、大型群が刺 網試験操業で6 尾、カゴ試験操業で 8 尾、小型群が それぞれ2 尾と 1 尾であった。また、潜水採集では 大型群40 尾、小型群 14 尾を再捕した。刺網試験操

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業における放流魚の再捕は全て目合い 10 節の網で あった。刺網で漁獲されたカサゴの全長は、目合い 10 節では 91mm ~ 264mm、 6 節では 157mm ~ 250mm であり、目合い 10 節の刺網における漁獲サ イズは90mm 以上であると考えられる。そのため、 72mm で放流した小型群が 85mm で放流した大型群 にくらべて刺網における再捕尾数が少なかったので はないかと考えられる。 潜水観察による放流後の個体数変化 潜水調査で観察された放流種苗および天然カサゴ の1m2あたりの個体数密度を図2 に示した。放流 6 日後(2008 年 10 月 16 日)から 47 日後(11 月 26 日)までは、1m2 当たり 0.28 尾~ 0.40 尾と天然個 体の3 ~ 6 倍の密度であったが、61 日後(12 月 10 日)以降は0.01 ~ 0.06 尾/m2と低くなり、257 日後 以降(2009 年 6 月 24 日)は、天然個体の方が個体 数密度が高いまま推移した。また、放流後 502 日2010 年 2 月 24 日)でも大型群および小型群各 1 尾が観察された。放流種苗のサンプリングには、調 査ラインの 40m 地点から南北にわずかにずれた場 所を主な採集地点としており、2010 年 3 月の調査 でも放流種苗が確認できた。この地点はクロメが生 えていない転石帯であった。これらのことから、1 年以上経過しても種苗が放流場所に定着しているこ とが明らかとなった。 3)放流後の成長 これまでに放流した標識魚の放流時および再捕時 の全長を、個体毎に放流群に分けて図3 に示した。 2003 年度第 2 回、2004 年度第 1 回放流群は全長 90mm および 91mm で佐賀関に、2008 年度 85mm 放 流群は全長85mm で佐伯市上浦に放流を行った。放 流後約 1 年で 100 ~ 120mm に成長しており、放流 場所による成長に大きな差はみられなかった。また 2008 年度は全長 72mm と 85mm の 2 群を放流した が、放流後の成長速度に大きな差はなく、同日にサ ンプリングした種苗の全長を比較すると、72mm 放 流群のほうが平均で約10mm 小さかった。 4)回収率の推定 佐賀関に放流した2003 ~ 2007 年度放流群は、今 年度は再捕が確認されなかった。 上浦で放流した 2008 年度放流群について、刺網 標本船および操業漁船への聞き取り調査を行った が、いずれも放流魚の再捕は確認されなかった。

今後の問題点

佐賀関での回収率が低い原因を明らかにするた め、放流場所を佐伯市上浦沖へ移し、定期的な試験 操業、潜水調査を実施したが、放流後1 ヵ月半ほど で個体数密度が減少し、以降は低密度で推移した。 今後は、個体数密度の減少要因を調査し、カサゴの 放流効果を明らかにして栽培対象種としての適正を 判断する必要がある。

1)田北寛奈, 平澤敬一, 東馬場大, 白樫真, 尾上静正. 資源増大技術開発事業カサゴ放流技術開発.平成19 年度大分県水試事業報告 2009;24-26.

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図1 放流場所 (左:2003~2008年度 右:2008年度放流場所の等深線図、黒太線が潜水放流ライン) 表1 2003年度から2008年度まで実施した標識放流の概要 表2 標識魚の再捕状況(2010年3月末まで) 注)表中0 は再捕無し、-は調査未実施 100m 放流尾数 平均全長 平均体重 放流時年齢 (尾) (mm) (g) (満歳) 第1回 2003年07月08日 17,000 130   39  佐賀関小黒  スパゲティ(赤) 1 第2回 2003年10月29日 9,700 90   13  佐賀関小黒  腹鰭抜去(右) 0 第3回 2003年10月30日 1,400 86   12  佐伯市上浦  ビーズ 0 第1回 2004年09月21日 32,000 91   14  佐賀関小黒  腹鰭抜去(左) 0 第2回 2004年10月31日 1,100 97   17  佐伯市上浦  アンカータグ 0 500 135   45  佐賀関小黒  スパゲティ(緑) 1 18,000 90   13  佐賀関小黒  腹鰭抜去(右) 0 第2回 2005年11月21日 2,400 123   36  佐伯市上浦  スパゲティ(橙) 1 2006 第1回 2006年10月03日 20,867 90   13  佐賀関権現バエ  腹鰭抜去(左) 0 2007 第1回 2007年08月21日 38,261 76   8  佐賀関権現バエ  腹鰭抜去(右) 0 17,934 85   -  腹鰭抜去(左) 0 17,975 72   -  腹鰭抜去(右) 0 放流年度 放流群 放流年月日 放流場所 標識方法 2003 佐伯市上浦沖 2004 2005 第1回 2005年09月20日 2008 第1回 2008年10月9~10日 佐賀関小黒 佐賀関権現バエ 佐伯市上浦 2003~2005年 2006~2007年 2003~2005年 2008年 放流尾数 平均全長 (尾) (mm) 刺網試験操業 刺網標本船 市場調査 再捕報告 カゴ試験操業 潜水採集 第1回 17,000 130  佐賀関小黒  スパゲティ(赤) 56 1 0 0 - -第2回 9,700 90  佐賀関小黒  腹鰭抜去(右) 4 0 0 0 - -第3回 1,400 86  佐伯市上浦  ビーズ - - - 0 - -第1回 32,000 91  佐賀関小黒  腹鰭抜去(左) 5 7 2 0 - -第2回 1,100 97  佐伯市上浦  アンカータグ - - - 0 - -500 135  佐賀関小黒  スパゲティ(緑) 0 0 0 0 - -18,000 90  佐賀関小黒  腹鰭抜去(右) 0 0 0 0 - -第2回 2,400 123  佐伯市上浦  スパゲティ(橙) - - - 0 - -2006 第1回 20,867 90  佐賀関権現バエ  腹鰭抜去(左) - 0 0 0 - -2007 第1回 38,261 76  佐賀関権現バエ  腹鰭抜去(右) - - - 0 - -17,934 85  腹鰭抜去(左) 6 0 - 0 8 40 17,975 72  腹鰭抜去(右) 2 0 - 0 1 14 2004 2005 第1回 2008 第1回 佐伯市上浦沖 放流 年度 放流群 放流場所 標識方法 再捕尾数 2003

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図2 潜水調査ラインで観察された放流種苗と天然種苗の個体数密度 (グラフ中の数値は放流種苗の個体数密度、(-)は放流種苗観察されず) 図3 放流群別の放流後の経過日数と再捕時の全長(mm) ( り た 当 ㎡ 1 度 密 数 体 個

図 2 クラゲ類の分布状況(2009年4月~2010年3月)3333.5131.51323333.5 131.5 1323333.5131.51323333.5131.51323333.5131.51323333.5131.51323333.5131.51323333.5131.51323333.5131.51323333.5131.51323333.5131.5132   0  to  1   1  to  10   10  to  30   30  to  100出現無し1~10個体/25㎡10~30個
表 4 豊後水道における塩分の平年偏差の評価(2009年)

参照

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