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モジホコリの変形体の生きていく戦略とは 共生のひろば 第8号 兵庫県立 人と自然の博物館(ひとはく)

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Academic year: 2018

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モジホコリの変形体の生きていく戦略とは

吉橋佑馬 (兵庫県立三田祥雲館高等学校)

はじめに

変形菌は菌類と動物の中間の性質を持った生物で、一

見すると小さなキノコのように見えるが、えさを求めて

動き回る変形体と呼ばれる時期がある。この変形体の食

性に興味を持ち、2005 年からモジホコリ(Physarum

polycephalum)の変形体について研究している。その過

程で、変形体はある種の食品(納豆、味噌、梅干)に対

し阻止円を形成することを明らかにした。阻止円とは変

形体が生きていける限界のところで作る円のことである。

阻止円を形成する阻害物質を明らかにする<化学的観点>

と、自然界における微生物との生存競争の関係を明らか

にする<生物学的観点>から、モジホコリの変形体が自然

界で生きていくための戦略を探った。

検証方法

化学的観点では物質に対する阻止円半径を測定した。

生物的観点では培地や培養時間の違いが変形体の反応に違いが生まれ

るのかを実験した。

結果

塩分に対する反応では海水程度の塩分濃度

(3%)までなら、変形体は阻止円を形成しない。

5%以上の濃度になると塩(NaCl)は、阻害要因

となる。酸に対する反応では濃度が重要な条

件となる。

塩基性に対する反応でも濃度が重要である。

微生物に対する反応では枯草菌に対する反応

を除く全ての条件下で変形体が微生物を食べ

てしまうという結果になった。

考察

モジホコリの変形体の酸に対する阻止円形成には、酸の濃度が大きな要因となる。塩基は、酸性の

物質でできている細胞膜そのものに作用するため危険要因と言える。微生物との関係の検証で使った

カビや枯草菌は、変形体よりも酸に対しては圧倒的に強いという結果が得られた。他の微生物との関

係では、動くことができる変形体の方が優位になりやすく、変形体に対する阻害物質の有無が重要で

あると言える。ただし、変形体が阻止円を形成した枯草菌も、変形体が反応するような量の阻害物質

を作るには5日以上の時間がかかる。変形体は、「動く」という特質を活かし、動けないカビや枯草菌

が繁殖し勢力を増す前に、素早く動いて攻撃するという戦略をとっていると考えられる。この「動く」

という特質が、危険なものに対して阻止円を作り逃げるという行動にもつながっている。動くことで、

危険を回避し、動けなくなる子実体の時期までに、より良い環境に移動しながら成長することを変形

菌は戦略として選んだと結論づけられる。

c m

図 3 塩分に対する反応

塩分濃度(重量%)

図 1. 変形菌の子実体と変形体

図 2. 納豆に対する変形体の阻止円

納豆

参照

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