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重身学会2017

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Academic year: 2022

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気管切開

東 京 女 子 医 科 大 学 東 医 療 センター新 生 児 科

1.気 管 切 開 の適 応 1)-3)

気 管 切 開 の目 的 は大 きく分 けて3つある。1つ目 は上 気 道 の閉 塞 性 病 変 に対 し て、気 道 確 保 のバイパスとしての気 管 切 開 で、2つ目 は長 期 呼 吸 管 理 に伴 う安 定 した気 管 内 挿 管 の 手 段 と し ての気 管 切 開 で、 最 後 の1つ は脆 弱 な気 道 を 支 えるための内 ス テント 効 果 を期 待 して行 う場 合 である。以 下 に代 表 的 疾 患 を示 す。

・上 気 道 閉 塞 のバイパス:喉 頭 狭 窄 、声 門 下 狭 窄 、など

・長 期 呼 吸 管 理 :神 経 筋 疾 患 、奇 形 症 候 群 、など

・気 管 内 ステント効 果 :気 管 軟 化 症 、壊 死 性 気 管 炎 、など

気 管 切 開 を行 う利 点 は、直 接 的 に呼 吸 に関 わることとして、 1)安 定 した気 道 の確 保 、 2)死 腔 換 気 量 の 減 少 、などがある。 呼 吸 に関 わること 以 外 に、 3) 経 口 摂 取 が 可 能 、4) 在 宅 管 理 への移 行 が可 能 、などの利 点 がある。欠 点 と しては、 1)小 手 術 が必 要 、2)気 管 切 開 の方 法 によっては抜 去 まで時 間 が必 要 、 3)吸 引 などの医 療 行 為 の習 得 、吸 引 器 などの 購 入 等 の 家 族 への 負 担 、 4)気 管 切 開 による肉 芽 形 成 などの 合 併 症 、 などが ある。利 点 が欠 点 を上 回 った場 合 、気 管 切 開 を積 極 的 に考 慮 する必 要 がある。

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2.気 管 切 開 の方 法

気 管 切 開 の代 表 的 な方 法 としては、前 方 切 開 法 と逆 U字 切 開 法 がある(図 1)。前 方 切 開 法 は気 管 全 面 に縦 に割 線 を入 れ、割 線 の左 右 に糸 をかけて引 き、紡 錘 状 に気 管 を開 けて気 管 切 開 チューブを挿 入 する方 法 である。逆 U字 切 開 法 は気 管 全 面 に逆 U字 型 に 割 線 を 入 れ、 窓 を 開 くよ うに 気 管 を 開 けて 気 管 切 開 チューブを 挿 入 する 方 法 であ る。前 方 切 開 法 は軟 骨 を外 さ ないため不 要 になればいつでも 抜 去 可 能 と いう利 点 があ る一 方 、気 管 切 開 上 部 の 肉 芽 形 成 が多 い、術 直 後 のチューブ入 れ替 えが困 難 な どの 欠 点 がある。逆 U 字 切 開 法 は術 直 後 のチューブ入 れ替 えが容 易 、気 管 切 開 上 部 の肉 芽 形 成 が少 ないなどの利 点 がある一 方 、軟 骨 を外 すため2歳 前 後 まで抜 去 が困 難 とい う欠 点 がある。

前 方 切 開 法 と 逆 U字 切 開 法 は、それぞれ長 所 と 短 所 があり、気 管 切 開 の目 的 に応 じ て方 法 を選 択 する。短 期 間 での抜 去 が期 待 できる場 合 には前 方 切 開 法 を、2歳 頃 まで は気 管 切 開 が必 要 な場 合 には逆 U字 切 開 法 を選 択 するようにしている。

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3.気 管 切 開 に必 要 な物 品 1)気 管 切 開 チューブ

気 管 切 開 チューブは各 社 より様 々なタイプのものが販 売 されている。通 常 はカフなしの 気 管 切 開 チューブを用 いるが、喉 頭 から のたれ込 みが多 かっ たり 、陽 圧 換 気 で高 い圧 をかける必 要 がある場 合 などにはカ フ 付 き気 管 切 開 チューブを 用 いる。 特 殊 な気 管 切 開 チューブとして、T-チューブ、アジャストフィット NEO などがある。アジャストフィット NEO

(図 2)は長 さ可 変 型 シリコン製 気 管 切 開 チューブで、難 治 性 気 道 病 変 の児 の管 理 など で威 力 を発 揮 する。

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2)人 工 鼻

人 工 鼻 は気 道 の加 湿 や異 物 の侵 入 を防 ぐ目 的 で用 いられる。代 表 的 な人 工 鼻 は、フ ィルターが前 に付 いている縦 型 のものとフィルターがT字 の両 横 に付 いているT字 型 のも のがある(図 3)。縦 型 は死 腔 量 が少 ない利 点 があるが、喀 痰 がフィルターにつきやすい 欠 点 がある。T字 型 はこの逆 で、死 腔 量 が多 いも のの喀 痰 がフ ィルターに付 きにくい特 徴 がある。人 工 鼻 の選 択 としては、死 腔 量 が問 題 となる。体 重 1kg あたり死 腔 量 2ml 以 下 の人 工 鼻 を児 の状 態 、活 動 性 などを考 慮 した上 で選 択 する。。

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3)スピーキングバルブ

スピー キングバルブは発 声 を行 うための特 殊 な人 工 鼻 で、簡 単 な構 造 の一 方 向 弁 に なっ ている (図 4 ) 。人 工 鼻 と し ての加 湿 効 果 は 期 待 できないため、覚 醒 時 のみ に用 い る。一 方 向 弁 で、水 などが入 ってきやすいため、入 浴 時 などは通 常 の人 工 鼻 を用 いる。

小 児 で は、カフ( 空 気 漏 れ を防 ぐための小 さ な風 船 ) なし の気 管 切 開 チューブと 組 み合 わせて用 いるが、カフ付 きで上 部 に孔 が空 いていないタイプの気 管 切 開 チューブを用 い る児 でスピーキングバルブを用 いると 、窒 息 の危 険 性 があるので、気 管 切 開 チューブと の組 み合 わせには注 意 を要 する。孔 空 きの気 管 切 開 チューブを用 いる場 合 、成 人 で使 用 するような大 きな 孔 の空 いた 気 管 切 開 チューブを用 いると 、気 管 膜 性 部 の 延 びやす い小 児 では、この孔 に膜 性 部 が入 り込 み、肉 芽 を形 成 しやすい。このため小 児 では、大 きな孔 でなく 、 小 さ な複 数 の 孔 の空 いた 気 管 切 開 チューブ用 いら れる。スピー キングバ ルブは発 声 以 外 に、喀 痰 の自 力 排 出 を促 す効 果 や、唾 液 の気 道 内 流 入 を防 ぐ 効 果 も 期 待 できる。

4.気 管 切 開 中 のトラブル

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4.気 管 切 開 中 のトラブル 1)事 故 抜 去

気 管 切 開 児 が換 気 不 全 に陥 った場 合 の原 因 を想 定 する記 憶 法 として DOPE がある。

これは 、 displacement ( 事 故 抜 去 ) 、 obstruction ( カ ニュー レ 閉 塞 ) 、 pneumothorax( 気 胸 ) 、equipment failure ( 器 具 の ト ラ ブル ) の 頭 文 字 を 並 べ たも のであ る 。 乳 幼 児 の 場 合 、この中 でも事 故 抜 去 の頻 度 が最 も高 い。

目 の前 で気 管 切 開 チューブが抜 けてしまった場 合 には、速 やかにチューブを再 挿 入 す る必 要 がある。在 宅 に移 行 する場 合 には、家 族 への指 導 も 重 要 で、家 族 が気 管 切 開 チ ューブの入 れ替 えの手 技 を習 得 しておく必 要 がある。通 常 は2人 で行 い、1人 が両 手 を 肩 の下 に入 れ、手 のひらで児 の頭 を挟 むようにして後 ろにそらし、気 管 切 開 孔 が真 上 を 向 くように固 定 する。気 管 切 開 チューブを入 れる人 は、左 手 はチューブの左 側 の羽 を持 ち、右 手 はチューブの右 側 の 羽 と 挿 入 用 の内 筒 ( スタイ レット) を挟 むように持 ち、 気 道 の形 に沿 ってスナップをきかすようにしてチューブを挿 入 する。1人 しかいない時 には、左 手 で下 側 から 首 を支 えるように持 ち、後 ろ側 にそらし、同 様 に気 管 切 開 孔 が真 上 を向 く ようにする。気 管 切 開 チューブは右 手 の親 指 と中 指 で持 ち、人 差 し指 でスタイレットを押 さえる。右 手 のスナップをきかすようにしてチューブを挿 入 したら 、左 手 で羽 を押 さえ、右 手 で内 筒 を 抜 く。 滑 り をよくするためのゼリーをつ け、気 管 切 開 孔 が真 上 を 向 くようにし っかり固 定 できれば、必 ず挿 入 できるので、あわてずに行 うことが肝 心 である。

2)気 管 肉 芽

気 管 切 開 チューブは先 端 部 がいつも 同 じ 場 所 にあるため、症 例 によっ ては気 管 肉 芽 を合 併 する。肉 芽 が 小 さ な間 は問 題 にな らないが、大 きくなっ てくると 換 気 不 全 や出 血 などの原 因 となる。チューブ先 端 位 置 の変 更 、局 所 への薬 剤 投 与 (カ テコラミン、ステロ イド)などを行 う。通 常 の気 管 切 開 チューブで管 理 困 難 な場 合 にはアジャストフィット NEO な どの長 さ可 変 型 の気 管 切 開 チューブを用 いる場 合 もある。気 管 切 開 孔 周 辺 の肉 芽 、潰 瘍 等 に対 してはフランジの形 状 の変 更 が有 効 な場 合 もある。

3)気 管 腕 頭 動 脈 瘻 4)

長 期 に人 工 呼 吸 をしている症 例 では、同 じ 姿 勢 ( 主 に仰 臥 位 )になっている時 間 が長 くなり、重 力 の影 響 で進 行 性 に前 後 に薄 い胸 郭 になってくる。胸 郭 の前 後 径 が短 くなる ことにより 、この中 に含 まれている気 管 と 腕 頭 動 脈 が 接 近 すること により 、気 管 腕 頭 動 脈 瘻 を起 こすこと がある。気 管 腕 頭 動 脈 瘻 は致 死 的 エピソードとなる場 合 も 多 いため、

予 防 、早 期 発 見 が重 要 と なる.通 常 、前 兆 と なる少 量 の出 血 がみられる場 合 が多 いた め、気 管 内 吸 引 で血 性 痰 が引 かれる場 合 には積 極 的 に気 管 支 鏡 検 査 を行 い、血 管 性 拍 動 を確 認 することにより、気 管 腕 頭 動 脈 瘻 の危 険 性 を把 握 することが可 能 である。ま た、胸 部 CT 検 査 を併 用 することにより、より正 確 な病 態 の把 握 が可 能 である。

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5.気 管 切 開 チューブの抜 去

気 管 切 開 の原 因 となった基 礎 疾 患 が改 善 すれば、気 管 切 開 チューブの抜 去 が可 能 と なる。前 述 したように、気 管 切 開 には前 方 切 開 法 と 逆 U字 切 開 法 と があり、特 徴 が違 う ため、抜 去 時 期 、抜 去 前 に必 要 な処 置 等 が異 なる。抜 去 時 期 でみてみると、前 方 切 開 法 では 48.8±21.7 ヵ月 であったのに対 し、逆 U字 切 開 法 では 67.1±34.8 ヵ月 とより早 い 時 期 に気 管 切 開 抜 去 が行 われていた( 図 5)。気 管 切 開 抜 去 前 処 置 とし て、気 管 切 開 チューブ上 の肉 芽 に対 する処 置 を必 要 とする場 合 がある (図 6)。気 管 切 開 抜 去 時 に肉 芽 に対 するレーザー焼 灼 術 を必 要 とした割 合 は、前 方 切 開 法 では 18/31(58%)であった のに対 し、逆 U字 切 開 法 では 5/31(16%)であり、前 方 切 開 術 による気 管 切 開 を行 った例 の方 が気 管 切 開 抜 去 時 の処 置 を必 要 と する割 合 が多 かった(図 7)。

気 管 切 開 抜 去 後 は、すぐには気 管 切 開 孔 の閉 鎖 手 術 は行 わず、 1年 間 以 上 経 過 を みて、呼 吸 器 感 染 時 でも呼 吸 に問 題 がないことが確 認 された後 、気 管 切 開 孔 閉 鎖 を行 うようにしている。

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参 考 文 献

1) 長 谷 川 久 弥 : 気 管 切 開 が 必 要 な 新 生 児 の 病 気 と 管 理 . . 小 児 看 護 33(12):1596- 1600,2010.

2)長 谷 川 久 弥 :気 管 切 開 (基 礎 編 ) .Neonatal Care 17(9):926-930,2004.

3)長 谷 川 久 弥 :気 管 切 開 (応 用 編 ) .Neonatal Care 17(10):1011-1015,2004.

4)長 谷 川 久 弥 : 重 症 心 身 障 害 児 における気 道 病 変 ー内 視 鏡 を 中 心 と した管 理 ー.日 本 重 症 心 身 障 害 学 会 誌 38(1):27-32,2013.

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