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第 2 章 高精度電磁力計算のための アダプティブ・メッシング法

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(1)

アダプティブ・メッシング法

2.1 緒言

本章では,高精度電磁力解析のためのアダプティブ・メッシング法について述べる.

電気機器の性能評価では電磁力が重要であり,電磁界数値解析において得られた磁束密 度分布データの後処理でその値を算出する.そのため,計算精度の高い電磁力を得るには 電磁力密度分布を事前に予測し,その高密度領域が重点的に細分化されたメッシュモデル を用いることが望ましい.しかし,複雑な形状を有する電気機器において予め電磁力密度 分布を予測することは困難である.その解決策の一つとして,アダプティブ・メッシング 法[2.1]-[2.4]が用いられる.電磁界数値解析におけるアダプティブ・メッシング法は,数値 解析で得られる磁束密度分布に着目して,その連続性が大きく損なわれている部分を誤差 が生じている箇所として検出するプロセスと,その情報を元にメッシュを細分化するプロ セスに分かれており,その 2 つのプロセスを誤差が指定された閾値以下になるまで繰り返 す方法である.しかし,従来のアダプティブ・メッシング法では磁束密度分布を後処理し て求められる電磁力密度分布の誤差を十分に検知することができず,電磁力解析に適した メッシュで計算が行われているとは限らない.また,自動生成されるメッシュモデルの節 点・要素配置は不規則であり,その不規則性がもたらす離散化誤差のため,ユーザーが所 望する精度の電磁力が得られないことが多い.

そこで本章では,高精度電磁力解析のためにアダプティブ・メッシング法を改善するこ とを目的として,電磁力密度分布の滑らかさを誤差指標として取り入れる新しい評価方法 を提案し,さらに解析対象の形状の対称性・周期性を考慮して,自動生成されるメッシュ モデルにも対称性・周期性を持つようにメッシュ生成を制御する機能を開発した[2.5].数値 実験では,特に高い電磁力計算精度が要求される回転機の低コギングトルク解析を取り上 げ,提案手法の有効性を検証した.

(2)

2.2 電磁界解析におけるアダプティブ・メッシング法

2.2.1 アダプティブ・メッシング法

  電磁界解析におけるアダプティブ・メッシング法は,電磁界解析と要素分割を交互に行 い,電磁界解析によって求められた解析誤差の大きい要素を細分化していくことで,遂に は磁束密度の変化の激しい箇所のみが細分化された効率的なメッシュを用いて高精度の計 算を行う手法である.その処理手順を図2.1に示す.アダプティブ・メッシング法では,ま ず,デローニ法[2.6]に基づいてモデル形状が表現できる最低限の粗さのメッシュを生成する.

次に,この初期メッシュを元に,有限要素法(FEM)[2.7]による電磁界解析で解析誤差を計 算し,予め指定された誤差の閾値(許容誤差値)を超える誤差を含む要素を検出するプロ セスと,誤差を含む要素を細分するプロセスの 2 つのプロセスを繰り返す.この 2 つのプ ロセスは許容誤差値を超える要素が存在しなくなるか,もしくは予め指定された繰り返し 回数の上限まで繰り返される.

Start

End

Generation of initial mesh using Delaunay method

Calculation of Magnetic field analysis

Find elements with over acceptable error range

Element with error does not exist

or Loop counter reached

maximum number

Re-meshing of elements with error Increment loop counter

Magnetic field analysis process

Re-mesh process

Y N

Preset maximum number of loops, acceptable error range

Start

End

Generation of initial mesh using Delaunay method

Calculation of Magnetic field analysis

Find elements with over acceptable error range

Element with error does not exist

or Loop counter reached

maximum number

Re-meshing of elements with error Increment loop counter

Magnetic field analysis process

Re-mesh process

Y N

Preset maximum number of loops, acceptable error range

図2.1  電磁界解析におけるアダプティブ・メッシング法

(3)

a) Initial mesh

b) Mesh of second adaptive stage

c) Mesh of final adaptive stage a) Initial mesh

b) Mesh of second adaptive stage

c) Mesh of final adaptive stage

図2.2  アダプティブ・メッシング法による永久磁石電動機モデルのメッシュ分割図

図2.2に電気学会で検証された永久磁石電動機モデル[2.8]にアダプティブ・メッシング法 を適用した例を示す.アダプティブ・メッシングの反復ごとにメッシュが細分化されてい く様子がわかる.回転機の電磁界解析では,モーターギャップ部のメッシュ分割が重要と なるが,アダプティブ・メッシング法を用いることによりモーターギャップ部が重点的に 細分化され,計算効率および計算精度が良いメッシュが出来ている.

(4)

  誤差を含む要素の細分は,誤差要素を検出するプロセスでピックアップされた要素のリ スト(誤差要素リスト)の先頭から順に,図2.3に示すようにその要素の最長辺を分割する ことで行われる.分割された要素はデローニ法に基づいて図2.4に示す周辺要素と辺の交換

(フリップ)が行われる場合がある.フリップにより誤差要素リスト中の要素が分割され た場合には,誤差要素リストから除外される.この最長辺の分割による細分化では,要素 がさらに扁平して解析誤差が悪化する場合がある.その回避策として,図2.5に示す隣接要 素を新たに誤差要素リストに加える方法がある.誤差要素の最長辺がその辺で隣接する要 素においても最長辺でない場合には,その隣接要素を誤差要素リストに加える.誤差要素 リストに新たに加わった要素についても同様に最長辺とその隣接要素をチェックし,再帰 的に誤差要素リストへの追加を繰り返す.誤差要素の最長辺と隣接要素の最長辺が一致し たところで誤差要素リストへの追加を中止し,リストに追加された逆順で要素の最長辺の 分割を行う.これにより多くのフリップが促されて,図2.5に示すように結果的に扁平した 要素が生成されにくくなることが期待できる.

図2.3  誤差を含む要素の細分化

図2.4  デローニ法に基づく要素辺のフリップ

(5)

Original error element

Added error element

Original error element

Added error element

図2.5  誤差要素に隣接する要素の誤差要素リストへの追加と細分化後のメッシュ

電磁界解析では可動部の移動を考慮した過渡応答解析を行うことが多く,FEM による電 磁界解析で運動を扱う方法として,有限要素法と境界要素法の結合手法(FEM+BEM)

[2.9][2.10]や摺動要素法[2.11]がある.FEM+BEMでは導体および磁性体部は有限要素で扱い,

空間部分は境界要素で扱うため任意の運動に対応することが可能であるが,数値計算にお いて非対称のフルマトリクスを解かなければいけないため,使用メモリ量や計算時間の点 でFEMより劣る場合が多い.一方,摺動要素法は可動部および固定部に分けられた有限要 素モデルをその境界上でラグランジュの未定乗数法を用いて結合する手法で任意の運動に 対応が可能であり,FEM での計算となる.しかし,アダプティブ・メッシング法の課程で 可動部および固定部の境界部分のメッシュが増大するとラグランジュの未定乗数が増大し,

使用メモリや計算時間だけでなく,その収束性においても問題となることが予想される.

そこで本章では,可動部と固定部の対向面をスライドインターフェースで結合する方法 [2.12]を用いる.この方法ではFEMのみの計算が可能であり,数値計算において余分な未知 数が追加されることもないため,使用メモリ量,計算時間,収束性の点で前述までの方法 より優位となることが期待できる.ただし,可動部が動くたびにスライドインターフェー ス上で可動部と固定部のメッシュが整合しなければいけないため,運動方向が制約され,

解析ステップごとの移動量を等しくしなければいけない.そのため,スライドインターフ ェースは運動方向に等間隔で分割される必要がある.しかし,可動部と固定部の対向面は 通常複雑に入り組んでいるため,等間隔に分割することはできない.そこで,図2.6に示す ように可動部および固定部を覆うダミーの空気領域を追加し,その対抗面が常に同じ分割 数で等間隔に分割されるように制御する.そのため,アダプティブ・メッシングの過程で 対抗面の一部の要素辺が分割された場合には,それに合わせて対抗面に属する全ての辺を 分割しなければいけない.図2.7に,この手法で生成される可動部と固定部の対抗面近傍(ギ

(6)

ャップ)のメッシュ図を示す.可動部および固定部は別々にデローニ分割で三角形もしく は四面体で分割され,その隙間は最終段階で四角形もしくは三角柱で充填される.スライ ドインターフェースは運動方向に等間隔で分割されているため,可動部をその等間隔幅で 動かす限りでは可動部と固定部のメッシュは常に整合する.

Constrained arc lines for dividing same pitches

a) Original model b) Model with overlap regions Constrained arc lines

for dividing same pitches

a) Original model b) Model with overlap regions

図2.6  スライドインターフェース作成のためのダミー空気領域

Slide interface Infilled elements

a) Mesh at first analysis step b) Mesh at 3rd analysis step Slide interface

Infilled elements

a) Mesh at first analysis step b) Mesh at 3rd analysis step

図2.7  スライドインターフェースを含むメッシュ

(7)

2.2.2 電磁界解析における解析誤差評価

  本章では,解析誤差の計算方法としてZienkiewicz-Zhuの誤差評価法[2.13]を用いる.

電磁界解析で算出された各要素の磁束密度 Beは,三角形要素の場合,各要素で一定値と して算出されるため,物性境界でなくても隣り合う要素間で磁束密度が完全に連続となる ことはない.Zienkiewicz-Zhuの誤差評価法では,Beが不連続となる境界部分でBeを平均化 し,それを形状関数で滑らかにつないだ分布Betrueを考え,その分布がBeに比べてより真値 に近い分布を示していると仮定している.そのため,次式に示すようにBeBetrueの差を要 素内で面積分した値eがゼロとなった時にその要素の誤差がゼロとなると考える.

( )

− Ω

= B B d

e e truee

(2.1) 図2.8にその概念図を示す.この評価方法では,隣り合う要素の磁束密度が連続なほど,解

析誤差が小さく算出される.

B

x B

e1

B

e2

B

e3

B

etrue

B

x B

e1

B

e2

B

e3

B

etrue

図2.8  各要素の磁束密度値とその仮の真値

(8)

この考えに基づき,Betrueは次式で算出される.

=

=

n

i i i e

true

N B

B

1 (2.2)

=

=

=M

e e M

e e e i

S S B B

1 1

(2.3) ここで,Seは各要素の面積である.三角形要素の場合,Betrueはその要素に属する節点iでの

磁束密度Biから形状関数Niを用いて要素中心で値が補間され,各節点での磁束密度Biは節 点i廻りのM個の要素における磁束密度Beを平均して求められる.

最終的に,各要素の解析誤差Error は次式の誤差磁気エネルギーEerrと平均磁気エネルギ ーEaveをもとに算出される.

( ) ( )

= e

S

e true e e

true e

err B B B B dS

E

ν

(2.4)

e N

e S

e e

ave

N

dS B B E

e

∑∫

= e

=

1

ν

(2.5)

× 100

=

ave err

E Error E

(2.6)

ここで,νは各要素の磁気抵抗率,Neは全要素数である.

なお,過渡応答解析など複数解析ステップの解析では,解析ステップごとに解析誤差の 最大値を要素ごとに記憶しておき,その最大値を最終的な解析誤差として採用する.

(9)

2.2.3 メッシュ対称化・周期化手法

通常のデローニ分割法による自動メッシュ分割では,解析対象の形状の対称性・周期性 を考慮したバランスの良いメッシュは生成されない.そのため,そのバランスの崩れに起 因する離散化誤差により,計算精度が悪化する場合がある.特に回転機の低コギングトル ク解析では,節点配置の不規則性に起因する誤差が顕著に現れる場合が多い.そこで本章 では,自動メッシュ分割において解析対象の形状の対称性・周期性に応じてメッシュ自体 も対称性・周期性を持たせる手法を提案する.

  提案手法では,形状のアウトラインが予め対称性・周期性のある領域に分割されており,

その対称性・周期性の関係が既にフラグで指定されているものとする.各領域は親,もし くは子の属性を持ち,子は親から見て形状的に対称性もしくは周期性を持つ.親は各領域 の形状パターンごとに1 つのみ存在し,複数の子を持つ場合がある.子を1 つも持たない 親は唯一の形状パターンであり,どの領域とも対称性・周期性を持たないこととなる.提 案手法では,領域内部への点の挿入やアダプティブ・メッシングにおける要素の細分化は 全て親の領域の内部要素にのみ行われる.アダプティブ・メッシングでは,子の領域内の 要素で発生した誤差は,それに対応する親領域の要素の誤差と比較され,値の大きい方が 親要素の誤差値として採用される.

提案手法によるメッシュ分割の流れを図2.9に示す.ここでは,線対称の領域が2つあり,

右側が親,左側が子として,その周辺を空気領域が覆っているものとする(図2.9-a).アウ トライン上の節点に対するメッシュ分割は全ての領域に対して行われるが,領域内への点 の挿入やアダプティブ・メッシングにおける要素の細分化は親に対してのみ行われる(図 2.9-b).親と子のメッシュに対称性・周期性を持たせるためには,まずそのアウトライン上 の節点の位置関係が対称性・周期性を持つ必要がある.そこで,親のアウトライン上の節 点を子にコピーする(図2.9-c).なお,既に対応する節点が子にある場合には節点のコピー は不要となる.また,子にある節点が親に無い場合には,同様に親にその節点をコピーす る.次に,コピーされた節点を元にデローニ分割を行い,親子周辺の領域の要素との整合 性を保つ(図2.9-d).親および子のアウトライン上の節点の位置関係が一致した時点で子の 内部の要素および節点を削除し(図2.9-e),親の内部の要素および節点をそのまま鏡面もし くは回転コピーして,要素および節点の接続関係を再構築する(図2.9-f).この操作は,ア ダプティブ・メッシングによる要素細分化の後,数値計算の前に行われる.図 2.10に提案 手法を用いて生成した回転機の 2 次元メッシュ分割図を示す.形状の対称性・周期性に合 わせて,メッシュ自体も対称性・周期性を持つことがわかる.

(10)

a) Regions b) Initial mesh

c) Copied nodes on child region d) Remeshed by using boundanry nodes

e) Removed elements in child f) Copied elements from parent

a) Regions b) Initial mesh

c) Copied nodes on child region d) Remeshed by using boundanry nodes

e) Removed elements in child f) Copied elements from parent

図2.9  メッシュ対称化・周期化手法

(11)

Mirror symmetry Rotational symmetry

Mirror symmetry Rotational symmetry

図2.10  メッシュ対称化・周期化手法により生成されたメッシュ

2.2.4 電磁力分布を考慮した解析誤差評価

  有限要素法による電磁界解析では,部材全体にかかる電磁力およびトルクは磁束密度分 布を元に計算される節点力[2.14]の合算値として求められる.高精度な電磁力およびトルク 計算を行うには,電磁力およびトルクへの影響が大きい節点力の急激な変化を抑え,その 分布が滑らかであることが望ましい.アダプティブ・メッシングでは,磁束密度分布が急 激に変化する箇所は重点的に細分化されてその分布は滑らかになるものの,磁束密度の高 密度領域が節点力の高密度領域と一致するとは限らないため,節点力分布の変化の激しい 箇所が十分に細分化されず,その結果電磁力およびトルクの真値との誤差が磁束密度の真 値との誤差に比べて大きい場合がある.

  そこで本章では,節点力分布の滑らかさを解析誤差指標として用いることを提案する.

提案手法では,要素辺の両端に位置する節点に発生する節点力の大きさを比較し,その大 きさの比が係数αより大きい場合には,図 2.11 に示すように,その辺を分割する.係数α はユーザーパラメータであり,本章ではα=1.2を採用している.

(12)

F

1

F

2

F

3

F

1

F

2

e

1

e

2

F

1

F

2

F

3

F

1

F

2

F

3

F

1

F

2

F

3

F

1

F

2

e

1

e

2

F

1

F

2

e

1

e

2

図2.11  電磁力分布の滑らかさを誤差評価指標とした時の要素の細分化

(13)

2.3 数値解析による検証

2.3.1 回転機のコギングトルク解析への適用

アダプティブ・メッシングにおいて電磁力およびトルクの計算精度が十分に得られない ケースは,低コギングトルクの回転機解析で多く見られる傾向にある.そこで本章では,

図2.12に示す電気学会で検証された薄型永久磁石電動機モデル[2.15]を取り上げる.このモ デルはアウターローター型の永久磁石電動機で,ローター磁石の着磁およびステーター表 面の突起の影響により低コギングトルクとなり,コギングトルク解析では極めて高い計算 精度が要求される.

検証は 2 次元解析で行い,アダプティブ・メッシングのコントロールパラメータとして 最大反復回数13回,許容誤差値1%を用いた.また,計算機にはPentiumIV 2GHzのCPU,

1GByte RAMを用いた.材料特性や永久磁石の磁化特性など解析仕様については,全て文献 [2.15]に従うものとする.

 

Magnet Stator

Magnet Stator

図2.12  薄型永久磁石電動機モデル

(14)

図 2.13に提案手法で最終的に得られたメッシュ分割図とそのティース先端での拡大図,

図 2.14 にティース先端での節点力分布とその拡大図を示す.最終メッシュはアダプティ ブ・メッシングの反復5回目で得られ,要素数は283,381である.ティース内側およびティ ース先端のメッシュを見ても形状の対称性・周期性に合わせてメッシュにも対称性・周期 性があることがわかる.また,節点力の変動が激しいティース先端が効率よく細分化され ており,節点力分布が滑らかであることがわかる.さらに,メッシュの対称性・周期性に より,節点力分布自体にも周期性・対称性があることがわかる.

図 2.15に最終メッシュで計算されたコギングトルク波形を示す.比較対象として,メッ シュの粗密や対称性・周期性に十分に気をつけ,事前に十分に精度検証を行った手動生成 の四角形メッシュによるコギングトルク波形を併記する.2 つの波形はよく一致しており,

波形の対称性やトルクがゼロとなる位置なども妥当なことがわかる.このことから,アダ プティブ・メッシングによる自動メッシュにおいても,提案手法を用いることにより十分 な計算精度で低コギングトルク計算が可能と言える.

  図 2.16に提案したメッシュ対称化手法と電磁力の分布を考慮した解析誤差評価の有無に よる最終メッシュでのコギングトルク波形の比較を示す.提案手法を用いない場合,最終 メッシュにおいても波形の対称性が大きく乱れていることがわかる.

(15)

a) Overall view

b) Enlarged view a) Overall view

b) Enlarged view

図2.13  最終メッシュ分割図(1/7領域,解析対象のみ)

(16)

a) Overall view

b) Enlarged view a) Overall view

b) Enlarged view

図2.14  ティース先端の節点力分布(1/7領域,ステータ部分のみ)

(17)

-1.5E-04 -1.0E-04 -5.0E-05 0.0E+00 5.0E-05 1.0E-04 1.5E-04

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0

Rotation Angle, degree

Torque, Nm

Mapped mesh (Reference)

Adaptive mesh with proposed method

図2.15  手動生成メッシュと提案手法による自動生成メッシュのコギングトルク波形

-1.5E-04 -1.0E-04 -5.0E-05 0.0E+00 5.0E-05 1.0E-04 1.5E-04

0 2 4 6 8

Rotation angle, degree

Torque, Nm

Nodal Force Error Estimation + Symmetric Mesh Nodal Force Error Estimation

Symmetric Mesh Standard Adaptive Reference

図2.16  提案手法の有無によるコギングトルク波形の比較

(18)

次に,アダプティブ・メッシングの各反復回におけるコギングトルク波形の乱れ(コギ ングトルク波形の誤差)と要素数の関係を図 2.17 に示す.なお,コギングトルク波形の誤 差は次式で評価する.

( )

θ τ

θ τ τ τ

d d

T T T

T

err

=

0 2 0

2

(2.7)

ここで,τは波形の位相θにおけるコギングトルク値,τTは位相θにおけるコギングトル クの真値,Tはコギングトルク1周期分の位相を表す.コギングトルクの真値には十分に細 かいメッシュで計算した時に得られた値を採用した.図 2.17より,メッシュ対称化・周期 化手法を用いない場合,アダプティブ・メッシングによるメッシュが細分化に対してコギ ングトルク波形の誤差の減少が鈍いことがわかる.また,電磁力の分布を考慮した解析誤 差評価を用いない場合,アダプティブ反復 1 回での要素数の増加量が鈍く,提案の誤差評 価を用いた場合に比べて多くのアダプティブ反復回を要していることがわかる.

0.01 0.1 1 10 100

1000 10000 100000 1000000

Number of Elemenets at each adaptive stage

L2  E rr or

Nodal Force Error Estimation + Symmetric Mesh Nodal Force Error Estimation

Symmetric Mesh Standard Adaptive

図2.17  提案手法の有無によるコギングトルク波形の誤差の推移

(19)

2.3.2 メッシュ対称化・周期化手法の効果に関する考察

前節では,提案したメッシュ対称化・周期化手法と電磁力の分布を考慮した解析誤差評 価がアダプティブ・メッシングにおけるコギングトルクの計算精度改善に効果があること を確認した.電磁力の分布を考慮した解析誤差評価がコギングトルクの計算精度の改善に 寄与することは理解しやすい.ここでは,メッシュ対称化手法によるコギングトルクの計 算精度改善について定量的に考察する.

コギングトルク解析において,その計算誤差を端的に表しているのはコギングトルク波 形の対称性の崩れと言える.それは,回転機の形状の対称性・周期性からコギングトルク がゼロとなるべき安定位置において,計算されたコギングトルク値がゼロから大きく外れ る,という形で顕著に現れる.そこで,以下ではコギングトルク値がゼロとなる初期位置 に着目する.

図2.18 に,アダプティブ・メッシングの各反復回におけるローター初期位置のコギング トルク値と要素数の関係を示す.メッシュ対称化・周期化手法を用いた場合,要素数に関 係なく初期位置のコギングトルク値がゼロとなっていることがわかる.つまり,コギング トルク波形の対称性にメッシュの細かさが決定的な影響を与えるものではないと言える.

0.0E+00 2.0E-05 4.0E-05 6.0E-05 8.0E-05 1.0E-04 1.2E-04

10000 100000 1000000

Number of elements at each adaptive stage

Torque at the initial position , Nm

Nodal Force Error Estimation + Symmetric Mesh Nodal Force Error Estimation

Symmetric Mesh Standard Adaptive

図2.18  ローター初期位置におけるコギングトルク値

(20)

モーターのコギングトルクはモーターギャップ中央の磁束密度分布により決定されるた め,提案手法の有無によりコギングトルクの波形に乱れが生じる原因は磁束密度分布の違 いとなって現れると考えられる.図 2.19 に,提案手法の有無による最終メッシュでのモー ターギャップ中央における磁束密度分布を示す.この磁束密度分布は,FEM によって算出 された磁性体および永久磁石の磁化を元に次式で計算される.

( ) ( ) ( ( ) ( ) )( )

⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

− ′

− ′

− ′

′ ⋅

′ −

− ′

= 0 2 2 4 4 dS

4 r r

r r r r r M r

r r r M

B

π

µ

(2.8)

ここで,rは計算点の位置ベクトル,r’は磁化ベクトルを持つ要素の中心位置ベクトル,B(r) は計算点における磁束密度ベクトル,M(r’)はr’に位置する要素の磁化ベクトル,μ0は空気 の透磁率である.どのメッシュにおいてもローターギャップ中央部の同じ計算点で計算す るため,モーターギャップ近傍のメッシュの違いによる影響がない状態で比較が可能とな る.図 2.19 から,提案手法の有無によってモーターギャップ中央部の磁束密度分布にほと んど違いが見られないことがわかる.そこで,このギャップ中央部での磁束密度分布を元 にMaxwell応力を算出し,そのMaxwell応力からコギングトルクを算出する.そのMaxwell 応力によるコギングトルク波形を図 2.20 に示す.磁束密度分布ではほとんど差が見られな かったにも関わらず,コギングトルク波形では提案手法の有無で明らかな違いが見られる.

つまり,コギングトルクの計算には磁束密度の小さな桁数の値までが反映されており,低 コギングトルク計算には,極めて高い計算精度の磁束密度分布が必要と言える.

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4

0 10 20 30 40 50

Angle position, degree

Magnetic flux density, T

Nodal Force Error Estimation + Symmetric Mesh Nodal Force Error Estimation

Symmetric Mesh Standard Adaptive

図2.19  ギャップ中央部における磁束密度分布

(21)

-2.0E-04 -1.5E-04 -1.0E-04 -5.0E-05 0.0E+00 5.0E-05 1.0E-04 1.5E-04

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0

Angle position, degree

Torque, Nm

Nodal Force Error Estimation + Symmetric Mesh Nodal Force Error Estimation

Symmetric Mesh Standard Adaptive

図2.20  Maxwell応力を基に算出されたコギングトルク波形

o

Maxwell stress, M

M

r

M

θ

R d

Calculation points of magnetic flux density

o

Maxwell stress, M

M

r

M

θ

R d

Calculation points of magnetic flux density

図2.21  Maxwell応力によるコギングトルク成分

(22)

しかし,提案手法を用いない場合でもアダプティブ・メッシングの最終メッシュは十分 に細かく,磁束密度分布の計算精度が極端に落ちているとは考えにくい.よって,電磁力 およびトルクの計算精度は,その特有の数値計算処理に左右されていると考えられる.そ こで,ローター初期位置におけるトルクへの寄与成分の分布を考える.ここでのトルクへ の寄与成分とは,図2.21に示すようにトルクを計算する際のMaxwell応力積分路上の各区 間におけるMaxwell応力の周方向成分Mθと積分路の区間長dおよび積分路の半径Rの積で ある.モーターギャップ中央部の各角度位置におけるトルクへの寄与成分を,コギングト ルクのピーク値に対する割合として規格化したものを図 2.22に示す.解析モデルは1/7 の 部分周期モデルであるため,横軸は360/7°までを示している.トルクへの寄与成分の分布 を見ても,磁束密度分布の場合と同様に提案手法の有無による差は見られない.トルクは トルクへの寄与成分の合算値で算出される.ローター初期位置の場合,コギングトルク値 はゼロとなるが,それはこのトルク寄与成分が形状の対となる位置でキャンセルされるた めである.そこで,対となる位置同士でのトルク寄与成分の差を図 2.23に示す.なお,ロ ーター初期位置では解析モデルの半分で Maxwell 応力分布が点対称となるため,横軸は 360/14°までを示している.また,評価点として図 2.19 で極値を示した角度位置を幾つか 代表的に抽出した.図 2.23より,提案手法の有無によるコギングトルク波形の違いは,ト ルクの寄与成分が正確にキャンセルされているかどうかによることがわかる.対称性・周 期性のあるメッシュではトルクの寄与成分が正確にキャンセルされ,コギングトルクがゼ ロとなる位置においてほぼ正確にゼロとなるのに対し,対称性・周期性のないメッシュで はトルクの寄与成分はキャンセルされず,その誤差がトルクに加算されてしまうため,コ ギングトルクがゼロとならない.

ここで重要な点は,メッシュに対称性・周期性を持たせることで,計算誤差自体も対称 性・周期性を持つことである.図 2.22 を見ると,提案手法の有無によりトルクの寄与成分 の分布にほとんど差が無いことから,提案手法を用いた場合においても提案手法を用いな い場合と同様の数値計算誤差が含まれていると言える.しかし,メッシュに対称性・周期 性がある場合には,その数値計算誤差も対称性・周期性を持ち,それが対となる位置同士 で正確にキャンセルされた結果,あたかも数値計算誤差が軽減した,と考えられる.ここ ではローター初期位置のみを考察したが,その他のローター位置においても同様の現象が 発生し,コギングトルク波形の誤差低減に効果があると考えられる.

(23)

-6.0E+03 -4.0E+03 -2.0E+03 0.0E+00 2.0E+03 4.0E+03 6.0E+03

0 10 20 30 40 50

Angle position, degree

Components of torque calculated by maxwell stress, %

Nodal Force Error Estimation + Symmetric Mesh Nodal Force Error Estimation

Symmetric Mesh Standard Adaptive

図2.22  初期位置におけるモーターギャップ中央での Maxwell応力の周方向成分のトルクへの寄与の分布

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

0.1 1.5 4.2 7.3 9.9 15.7 18.6 21.3 24.3 25.6 Angle Position , Degree

C om p on en ts  of  t orq u e ca lc ul at ed  by    m ax w el l  s tr es s

Nodal Force Error Estimation + Symmetric Mesh Nodal Force Error Estimation

Symmetric Mesh Standard Adaptive

図2.23  Maxwell応力が相殺する位置にある観測点でのトルクへの寄与成分の差

(24)

2.4 まとめ

本章では,電磁界解析のアダプティブ・メッシング法において,電磁力およびトルクが ユーザーの所望する精度で得られない場合が多いという問題を克服するために,高精度電 磁力計算のための新たなメッシュ生成に関する技術を開発した.本章で得られた成果をま とめると,以下のようになる.

(1) 解析対象の形状の対称性・周期性を考慮して,アダプティブ・メッシングにおいて自動 生成されるメッシュにも対称性・周期性を持たせるようなメッシュ制御手法(メッシュ 対称化・周期化手法)を開発した.提案手法は,予め対称性・周期性のある領域に分割 された解析モデルに対して,領域全体を自動メッシュ分割の対象となる親領域と,その 従属関係にある子領域に分類し,子領域内部の要素は親領域の要素を鏡面もしくは回転 コピーすることで充填する手法であり,生成されたメッシュは完全な対称性・周期性を 持つ.そのため,節点配置の不規則性による離散化誤差を軽減することが可能となる.

数値解析による検証では,電気学会で検証された特に低コギングトルクの薄型永久磁石 電動機において,定性的に妥当なコギングトルク波形が得られることを示し,アダプテ ィブ・メッシングにおいても高精度コギングトルク解析が可能となることを示した.

(2) 電磁力分布の滑らかさを評価する指標を考案し,その指標を従来の磁束密度の連続性に 基づく誤差指標と併用することを提案した.提案手法では,節点で計算される電磁力(節 点力)に着目し,要素辺でつながる節点の節点力の大きさを比較して,その差がある閾 値より大きい場合にその要素辺を分割することで,節点力の分布を滑らかにする.数値 解析による検証では,提案手法を用いることでメッシュの細分化が加速され,提案手法 を用いない場合より少ないアダプティブ反復回数で所望の電磁力およびトルク計算精 度を得ることを示し,アダプティブ・メッシングに要する時間を短縮することを可能と した.

(3) 形状的に対称性・周期性を持つ回転機モデルにおいて,そのメッシュモデルの対称性・

周期性と電磁力およびトルクの計算誤差の関連性について考察した.電気学会で検証さ れた薄型永久磁石電動機の計算結果を分析し,回転機のトルクを決定するモーターギャ ップ中央の磁束密度分布に着目して,トルクの計算誤差が発生する原因を明らかにした.

この考察により,提案したメッシュ対称化手法が電磁力解析全般に有効であることを定 量的に示した.

なお,提案手法は商用の電磁界解析ソフトウェアの一機能として既に搭載されており,

また特許記事3905373,3958962に登録済みである.

参照

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