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日本点字図書館の取り組み ‑‑ アクセシブルな電子 書籍の製作と活用 (特集 図書館と障害者サービス

‑‑ 情報アクセシビリティの向上 ‑‑ 国内情報)

著者 天野 繁隆

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名 アジ研ワールド・トレンド

巻 234

ページ 12‑13

発行年 2015‑03

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00039868

(2)

12

アジ研ワールド・トレンド No.234(2015. 4)

日本点字図書館は

︑﹁本を読み

たい﹂﹁さまざまな知識を得たい﹂

という視覚障害者の情報へのアク

セスを支援する図書館であり︑二

〇一四年現在︑年間一五万タイト

ルの図書を貸し出すわが国最大の

点字図書館である︒

図書の貸し出しには︑点字図書・

録音図書といわれるメディアを用

いている︒点訳・朗読ボランティ

アの協力を得て自ら製作した図書

の貸し出しは郵送により行い︑全

国どこからでも無料で利用するこ

とができる︒近年はIT技術の進

歩とパソコンの普及によって︑点

字図書・録音図書はデジタルデー

タ化され︑インターネットを介し

ての読書が可能になっている︒

●日本点字図書館の新たなビ

ジョンと取り組み

点字と録音という二つのメディ アを使って︑視覚障害者に対する情報提供サービスを行ってきた当館であるが︑一方︑ここ数年点字図書館を取り巻く状況が変化してきている︒﹁サービス対象の拡大﹂

と﹁点字図書館に関わる関係法令

の改正﹂

︑更には

﹁情報提供技術

の進化﹂という三つの変化である︒

⑴新たなサービスビジョンの構築

二〇一一年四月︑館内に﹁電子

書籍の利用と製作に関する検討プ

ロジェクト﹂を立ち上げた︒取り

巻く環境の変化やIT技術の進化

に対応した︑これからの日本点字

図書館の役割や情報提供のあり方

について検討を行うためのもので

ある︒

二〇一三年三月︑プロジェクト

︑当館の使命を

︑﹁見ること

読むことが困難な人々の情報への

アクセスを支援すること﹂と定義

し︑﹁多様なニーズへの対応﹂︑﹁迅 速な情報提供﹂そして﹁アクセシブルな電子書籍の積極的活用﹂を柱とした提言をまとめた︒

多様なニーズへの対応とは︑こ

れまでは主に全盲の視覚障害者を

サービス対象者としてきたことに

対して︑今後はロービジョン︵弱

視者等︶をはじめ︑活字の利用に

障害を持つ人々へのサービスの拡

大を意味するものである

︒更に

娯楽を中心にした蔵書の製作・提

供から﹁知る︑学ぶ﹂ことを支援

する図書館を目指すことも含むも

のである︒

⑵アクセシブルな電子書籍の活用

新たなサービスビジョンの実現

には︑新たな情報提供メディアが

必要である︒これまでの既存のメ

ディアでは︑ロービジョン︑肢体

不自由者等の読書困難者︑知的障

害者︑発達障害︑脳機能障害︑L

D︵Learning Disability

学 習 障

害︶に対応することは困難であり︑

また︑情報の迅速な提供という面

からも︑製作に長い期間を要する

現在の点字図書︑録音図書は︑ス

ピードが重要とされる今日におい

て︑利用者の支持を得ることは難

しい︒様々な障害を持つ利用者の

ニーズの特性に合った情報提供を

可能にするために︑テキストDA

ISYやマルチメディアDAIS

Yといった﹁アクセシブルな電子

図書﹂の積極的な活用を進めてい

かなければならない︒一般社会で

も︑電子書籍が注目されるように

なって久しいが︑電子書籍が注目

され話題になるにつけ︑電子書籍

の利便性とさまざまな優れた機能

は︑これからの点字図書館のサー

ビス提供メディアとしての有用性︑

可能性を探りながら導入に向けた

研究を進めていかなければならな

いと考えている︒

⑶新たなサービス実現に向けた取

り組み

テキストDAISY︑マルチメ

ディアDAISYは︑それぞれに

特徴を持っている︒

テキスト

D A ISY の最大の メリットは

︑比較的製作が容易

で︑迅速な提供が可能なことであ

る︒活字で書かれた情報を︑DA

日本点字図書館の取り組み

アクセシブル

な電子書籍の製作と活用︱

  繁

︻国内情報︼

図書館

障害者サービス

―情報アクセシビリティの向上―

(3)

13

アジ研ワールド・トレンド No.234(2015. 4)

日本点字図書館の取り組み ―アクセシブルな電子書籍の製作と活用―

ISY形式のテキストと合成音声

で︑利用者はいち早く情報を得る

ことができる︒当館は︑二〇一三

年一〇月から︑テキストDAIS

Y図書を迅速に製作・提供するた

めの基礎研究︑実証実験を行って

いる

︒﹁アクセシブルな電子書籍

製作実験プロジェクト﹂として取

り組んできたこの事業は︑日本I

BM東京基礎研究所と東京大学大

学院情報理工学系研究科広瀬・谷

川研究室の協力を得て実施してい

るものであるが︑クラウドソーシ

ングとコミュニティサイト︵SN

S︶を活用して︑テキストDAI

SY図書をスピーディーに製作す

ることができる︒現在五〇名の障

害当事者︵製作依頼者︶と︑二〇

〇名のボランティア︵製作・編集

者︶がこのシステムを使って製作

作業を日々進めている︒

テキストDAISY図書は︑文

字の拡大や合成音声での読み上げ

ができるほか︑一般の書籍のよう

に目次見出しやページごとの移動

が可能である︒全盲の視覚障害者

だけでなくロービジョン等の利活

用を可能とする電子書籍であるこ

とから︑当館のこれからのサービ

スの柱のひとつに成り得るメディ

アであると考えている︒ 一方︑マルチメディアDAIS

Y図書についても︑二〇一二年か

ら合成音声を用いたマルチメディ

ア D A I SY 製作ソフトウエア

﹁ChattyInfty3

﹂の開発と

︑中学

高校生徒用マルチメディアDAI

SY理数教科書の製作と提供をテ

ーマに︑三年にわたる実践的研究

に取り組んできた︒

マルチメディアDAISY図書

︑テキスト

D A ISY 図書に

︑ 更に音声データを加えたもので

テキストと同期した音声も利用す

ることができる︒学習障害者のニ

ーズが高く︑その他︑多様な読書

障害者にも有効なメディアとして

期待されているものである︒二〇

一三年から製作ソフトウエア操作

講習会を実施し︑編集ボランティ

アの養成を行っている︒今後数年

間︑教科書や学習教材を製作して

いくなかで

︑ノウハウを蓄積し

将来的には教養書や一般小説など︑

分野に分け隔てのないマルチメデ

ィアDAISY図書の迅速な製作

の実現を目指している︒

また︑現状のマルチメディアD

AISY図書の仕様では点字デー

タは含まれず︑点字を情報入手の

手段とする視覚障害者には︑マル

チとはいっても点字で利用するこ とができないのである︒この弱点を補うために︑二〇一四年の取り組みとして︑点字情報を含めることができるマルチメディアDAI

SY図書製作システムの開発を急

ぎ行っているところである︒

●目指すべき最終形として﹁ワ

の実現

当館は︑今後の多様なニーズに

対応するために﹁ワンソース・マ

ルチユース﹂の実現のための試行

錯誤を行っている︒﹁ワンソース・

マルチユース﹂とは︑特性の異な

る読書障害に対して︑それぞれ異

なる提供ツール︵メディア︶を用

いるのではなく︑同一のツールを

障害の特性に関わらず︑柔軟に活

用できるようにすることである︒

提供コンテンツを点字情報をも

含むことができるアクセシブルな

電子書籍︵=ワンソース︶として

製作することで︑例えば︑全盲者

は音声で利用する︒あるいはピン

ディスプレイを使って点字での利

用も可能になる︒ロービジョン者

は︑テキストをディスプレイに表

示し︑文字の大きさ︑色︑背景を

見易く︑自分の特性に合わせて自

由に変更して利用できる︒その他 の学習障害者︑読書障害者は︑テキストや画像を見ることもできるし︑音声と同期させて利用することもできる︑といった多様な障害者対応︵=マルチユース︶が可能になるのである︒

ただし

︑この実現のためには

これまでの点字︑録音と分断され

た製作スタイルを見直し︑デジタ

ルテキストを原資とする新たな製

作フローを構築し︑アクセシブル

な電子書籍の効率的な製作を実現

しなければならない︒

●おわりに

情報技術や障害者支援技術は日

進月歩で進化する︒点字図書館を

取り巻く状況も変化していくであ

ろう︒本稿で述べたビジョンと電

子書籍を中心としたサービスは

︑ 今後の方向性を示す

﹁道しるべ﹂

であり︑ひとつの﹁モデル﹂では

ある︒しかし︑未来永劫正しい方

向を示すものとは限らない︒状況

の変化に応じて修正を加えながら︑

柔軟に対応していく必要があるこ

とはいうまでもない︒

︵あまの  しげたか/日本点字図書館長︶

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