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日本点字図書館の国際協力事業 (特集 図書館と障害者サービス -- 情報アクセシビリティの向上 -- 各国事情)

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Academic year: 2021

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日本点字図書館の国際協力事業 (特集 図書館と障

害者サービス -- 情報アクセシビリティの向上 --

各国事情)

著者

田中 徹二

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

234

ページ

20-21

発行年

2015-03

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003252

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アジ研ワールド・トレンド No.234(2015. 4) 私が初めて国際協力事業に関わ ったのは、一九八五年である。当 時、東京都のリハビリテーション センターの職員だったが、東京ヘ レン・ケラー協会に頼まれて、ネ パールの盲人福祉協会を訪ねた 。 点字教科書を製作するプロジェク トを成功させたが、それから三〇 年。その間の経験について、以下 に紹介する。 ●コンピュータ点字製作技術 指導講習会 一九九二年に国連の国際障害 者年の一〇年が終わった 。しか し、日本からの働きかけもあって 国連のアジア太平洋経済社会委員 会︵ ESC A P ︶では、一九九三 年から﹁アジア太平洋障害者の一 〇年﹂を始めることになった。こ の一〇年は今も続いていて、二〇 一三年からは第三次に入っている。 これを機に、 日本点字図書館 ︵以 下、日点︶では、国際協力事業と してアジア盲人図書館協力事業を 立ちあげた。アジア四カ国を調査 したところ、点字教科書は印刷さ れていないうえに、盲学校でさえ、 先生が点字タイプライターで手打 ちした点字教科書を使っている有 様であった。生徒はそれを回し読 みしていた。 一方、点字書の製作方法はパソ コンの出現で一変していた。点訳 ソフトで点訳されたデータから 、 紙に点字を打ち出す点字プリンタ で容易に点字図書を製作できるよ うになっていた。この点訳ソフト が入ったパソコンと点字プリンタ を提供すれば、一、二週間の講習 で点字教科書が製作できたのであ る。これなら提供する機材の費用 もそれほど高額ではなく、日点で もささやかな国際協力ができると 思ったものだった。 初年度の一九九四年は安田財団 の助成で実施したが、費用の関係 で、講習会をマレーシアで開催し た 。マレーシアを選んだ理由は 、 経済的に安定しており、国民生活 もある程度のレベルにあることと、 政情も安定していたからだ。また、 たいへん親日的でもあり、マレー シア盲人協議会︵ NCBM ︶とい うしっかりした組織があることも 大きな理由だった。それに何とい っても、マレーシアまでの旅費や、 当地での宿泊費は、東京に比べる と格段に安い。同じ金額で、それ だけ大きな成果が得られる。日点 の独自の予算はなく、助成金に頼 る身分としては、当然だと考えた わけである。 一九九五年からは当時の郵政省 の国際ボランティア貯金の助成金 が得られた。二〇〇二年、バブル がはじけてボランティア貯金の利 子がなくなり、助成が打ち切られ るまで続けた 。提供した機材は 、 パソコン、ダックスベリー点訳ソ フト ︵アメリカ︶ 、スウェーデン のインデックス社製点字プリンタ だった。これらの機材は、講習会 が終わった後、それぞれの国に持 ち帰ってもらい、すぐに点字資料 が作成できるようにしたのである。 結局この講習会では、アジア各地 の一二カ国から盲学校や盲人施設 の教職員一〇三人を指導したこと になった。 ところが、国際ボランティア貯 金の利子がなくなり、助成を切ら れてしまった後も、アジアの各地 では、まだ点字資料を作ることが できない施設や盲学校がたくさん 残った。要望が多かったので、霞 会館の助成で続けることにしたの である。しかし、それまでのよう にマレーシアに呼び寄せて講習会 はできない。そこで第三国研修と して、年に一カ所ずつ、マレーシ アの指導員に同じ機材を携えて行 ってもらうことにした。二〇〇三 年のマーレ︵モルディブ︶を皮切 りに現在まで続けている。ちなみ に二〇一四年は東ティモールだっ た。

日本点字図書館の国際協力事業

︻各国事情︼

図書館

障害者サービス

―情報アクセシビリティの向上―

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アジ研ワールド・トレンド No.234(2015. 4) 日本点字図書館の国際協力事業 わが国をはじめ先進国では、視 覚障害者の点字離れが懸念されて いるというのに、途上国では点字 の教科書さえ不足しているという 現状を、まだまだ当分無視できそ うもないのである。 ●池田輝子 ICT奨学金事業 コンピュータ点字技術指導講習 会が最初の一〇年間で一定の成果 をあげた頃、日点のごく近くにお 住まいの池田輝子さんから賃貸マ ンションを寄贈したいという申し 出があった。家賃でどんな事業を するか、池田さんと相談している なかで、 ICT 事業を立ち上げる 提案に賛成してもらった。アジア 太平洋地域内の途上国から、視覚 障害を持つ若者を招聘して、情報 コミュニケーション技術 ︵ ICT ︶ を学んでもらい、将来のリーダー としてそれぞれの国で活躍しても らおうという企画だ。 このころになると、アジアでも パソコンの質は毎年のように向上 し、企業などでは仕事にパソコン を活用するようになっていた。し かし、視覚障害者の間では、たと えエリートであっても、パソコン を持っている人はほとんどいなか った。パソコンが使えれば職業に 結びつくこともあるだろうし、視 覚障害者の世界だけでなく、地域 でもリーダーになれるだろうと考 えた。 第一回︵二〇〇四年︶の講習会 に選ばれたのは、ミャンマー、ベ トナム 、スリランカ 、ネパール 、 バングラデシュの若者だった。研 修生たちは三〇歳以下で 、点字 、 英語に堪能な人たちであった。日 点での開講式には、池田輝子さん にも出席してもらった。講習会の 内容は、コンピュータの基本説明、 Windows の仕組み 、エディタの 操作、テキストやワード文書の作 成と保存、 E メールの仕組みと送 受信、インターネット検索など初 歩的なものだった。ただ、日本で の講師陣には問題があった。講習 会で使用するアメリカの J A W S という視覚障害者用画面読みソフ トの操作に詳しく、英語で指導で きる人が少なかったのである。み んなの時間をやり繰りしてもらっ てなんとか一回目の講習会を終え たが、こんな状況では、とても東 京で講習会は開けないと痛感した。 そこで第二回からは、最初の一週 間をクアラルンプールのマレーシ ア盲人協議会でコンピュータの基 礎訓練をすることにし 、その後 、 日点に来てもらい、池田さんに会 ってもらったり、わが国の視覚障 害者福祉について勉強してもらう ことにした。三回目の講習生が東 京に来たときに、池田さんはたま たま入院していた。講習生が全員 そろって病院に行き、池田さんに 感謝の言葉を述べると、池田さん の感激ぶりは相当なものだった。 しかし、この年あたりから、こ の講習会はアジアの視覚障害者に 広く知られるようになり、応募者 が急増してきた。そこで考えたの は、講習生が東京に来る旅費を節 約して、その分講習生数をふやす ことだった。池田さんに了解を得 て、二〇〇七年からは、ペナンに ある聖ニコラスホームで講習会を 開催することにした。このホーム は、イギリスの教会によってマレ ーシアで最初に設立された盲学校 で、宿泊もできるし、教室もある。 安く講習会をあげるには最適な施 設といえた。 数年間でアジアのパソコン環境 は一変し、視覚障害の若者のニー ズも変わってきた。初級の希望者 は消え、高度な技術の指導を希望 するニーズがふえたのである。そ こで二〇一〇年からは中級と上級 を置くことにし、講習生数も二〇 人近く受け入れることにした。 この講習会で育った修了生たち は、自国に帰ってパソコン技術を 視覚障害者や晴眼者に伝えている。 また、初めのころの講習生は、ま だ三〇代という若さにもかかわら ず、自国の盲人協会の会長や幹部 になっている者が出ている。プロ グラマーとして企業に雇用されて いる者もいる。さらに、修了生同 士のために Teruko Ikeda ICT と いう名前のメーリングリストが作 られていて、みんなが手に入れた 情報が交換されたり、質問や回答 が飛び交っている。毎日のように、 このメーリングリストには投稿が あり、アジアのインターネットの 世界では、池田さんの名前が飛び 回っていることになる。 今後もこの事業が続くことによ って、アジアの国々における視覚 障害者の情報コミュニケーション 環境が大きく改善・発展していく ことを望んでやまない。 ︵たなか   てつじ/日本点字図書館 理事長︶

参照

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