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(1) 全面深化改革領導小組 組長 に習近平氏が就任 昨年 11 月に行われた三中全会は2020 年くらいまでの中国改革を占う上で極めて重要な政治会議であった 本レポートでも紹介してきたように 同会議の 決定 という公式ドキュメントの起草グループのリーダーを習近平氏が 兼任 していた 本来であれば

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加藤嘉一中国研究会チャイナレポート(12) 2014年1月15日 皆さんこんにちは。加藤嘉一です。 旧正月前というこの期間の中国における時間は比較的平穏に流れていたという印象を持った。地方 債務問題や長期金利の上昇、不動産バブルや成長の慢性的低迷など、不安要素は挙げれば切りがないが、 中国社会における信用リスクが急降下し、人民がお上を信用できなくなり、体制そのものの存続が危ぶ まれるような状況を作り出すきっかけとなる事件は起きなかったという意味である。トリガー(引き金) は何であれ、一触即発の危機が起きうるという緊張感を中国政府—社会—人民たちは共通認識として持っ ている。 12月の消費者物価指数(CPI)は+2.5%(11月は+3.0%)。党指導部が「合理区域」の “上限”に設定する3.5%以内に抑えられた。“下限”であるGDP 成長率は7.5%であるが、20 13年度を通じてどうやらこちらも問題なさそうである。GDP 成長率に関して、私は“成長 VS 改革” という綱引きの視点から現状をウォッチしている。

Citi Bank 中国チーフエコノミストの瀋明高(Shen Minggao)氏は2014年度の成長率は2 013年度からやや下がって7.3%くらいになるだろうと予測する。そして、仮に7.5%に達すれ ば「成長>改革」、7.0%にとどまれば「成長<改革」というひとつの構造が浮かび上がってくる。 大切なのは数字そのものではなく、習近平・李克強政権が最低限の成長を確保しつつも、どれだけ改革 を進めようとしているのかという党指導部の意思決定プロセスにこそ見いだせると私も考える。 北京大学で経済・金融を教えていて、しばしば英フィナンシャル・タイムズなんかにも登場する Michael Pettis 教授なんかは「成長率を5%に落としてまでも改革を強靭に実行すべきだ」と主張して いる。逆に、中国共産党の意思決定プロセスに影響力を持つ体制内経済学者の中には、「中国はまだま だ10〜20年間7〜8%の成長を持続する事が可能だ」と断定する人もいる。 2012年の下半期、私がハーバード大学ケネディスクールで同僚だった劉世錦(Liu Shijin)国 務院発展研究センター副主任(副閣僚級)は「2015年以降、中国経済は6〜7%、2020年には 6%成長率という段階に入る」と主張している。 経済指標をめぐる議論はかなり分裂しているということだ。私の実体験からしても、人民元の国 際化、政府と市場の関係、国有企業改革といったセンシティブな問題も含めて、経済レベルの政策議論 に関しては原則タブーなく、自由な議論ができる公共空間が実現されている。 以下、①昨年度末に開催された中央政治局会議における「改革」をめぐる重要な決定 ②同じく年 末に開催された《中央農村工作会議》の模様 ③2014年私が注目するアジェンダの3点に絞って今 回レポートの議題としたい。

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(1)《全面深化改革領導小組》“組長”に習近平氏が就任 昨年11月に行われた三中全会は2020年くらいまでの中国改革を占う上で極めて重要な政治 会議であった。本レポートでも紹介してきたように、同会議の《決定》という公式ドキュメントの起草 グループのリーダーを習近平氏が“兼任”していた。本来であれば、経済の首長である李克強首相が経 済改革のアジェンダ設定やワーキンググループのキャプテンを務めるべきだというのが“正論”だと言 えるが、習近平氏はとにかく「共産党の権力基盤が固まってこそ改革は前に進む」という意識が非常に 強い。言い換えれば「政治あっての経済」と言う意味である。 結果的に、2013年12月30日に開催された中央政治局定例会議(党最高意思決定機関の会議。 政策の方針を決める最重要会議といえる)にて、三中全会で公表された《全面深化改革領導小組》(全 面的に改革を深化させるための領導班組織)の“組長”には習近平氏が就任することが決定した。 同会議は、「“小組”は改革の総設計に責任を持ち、全体の進度を監視監督しつつ、統括と協調メカ ニズムをもって実践していく。経済体制、政治体制、文化体制、社会体制、生態体制、及び党制度改革 などの重大な原則、方針、方案の研究と確定を主要な職責とする。全国的な重大改革の統一部署として、 全体的局面を長期的視点に立って、地域や部門をまたがった改革問題を統括、協調していく。中央の重 大な政策の組織的実践を指導、監督、推進していく」と謳っている。共産党用語なので分かりにくいか もしれないが、私なりに翻訳すると、大切なポイントは、 ①“小組”のミッションは経済だけでなく、民生に関わる社会改革、環境や教育問題、そして政治 改革をも視野に入れる総合的なものである(総合性)。 ②“小組”は国務院所属の経済組織だけでなく、党中央組織の各部署にも指令や提言を出す権限を 持っている(権威性)。 ③“小組”は昨今の改革において最も困難な障壁のひとつである利益集団や既得権を突破すべく、 習近平氏を“組長”に招き入れた(突破性)。 となる。総合性+権威性+突破性という3つの性質を持って改革をダイナミックに進めていきたい という党指導部の意志の表れであろう。 “小組”が三中全会や中央経済工作会議で議題に上ったアジェンダを中心に扱っていくことは疑い ない。ただ一方で、改革プロセスが往々にしてデッドロックに陥ってしまう中国にとって、政治サイド のサポートや後押しなしに経済改革を抜本的に進めることはもはや不可能だ。 その意味で、李克強首相に“小組”の組長を任せるのは「かなり不安」と訴える関係者が党内には 大勢いた。 少し前の話になるが、私が共産党内の複数の関係者から聞いたところによると、李克強氏は自らが 常務副首相を務めた2008〜2013年の間、同じ共産主義青年団出身の兄貴分でもある胡錦濤元国 家主席に実質の“辞表”を4回提出している。任せられた行政改革もまともに実行できず、自らの器に 疑問を呈し、自信をなくしていた時期もあったという。 そもそも、太子党(プリンス)関係者は常に共産主義青年団出身者を「ガリ勉」と言って馬鹿にす る。「中国を統治できるのはお前らガリ勉じゃない。天下を獲るために命を削って闘ってきた我々だ。

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権力がモノを言う」というのが太子党の自己認識である。その意味で言えば、習近平氏を始め、党指導 部を占める太子党関係者は、改革を実行するためには、学者肌の李克強ではなく、国家・党・軍におい て最高責任者に君臨し、権力基盤が厚い習近平が“改革の首長”にならないと何も進まないという認識 を抱いている。“小組”の組長に習近平が就任した経緯には、習氏の価値観や統治観が切実に体現され ている。 私は個人的には、“改革派”の代表格である習仲勲元副総理を実父に持つ習近平は本質的に「政治 改革無き経済改革無し」という認識の下、自らの就任任期である2022年までの間に政治改革を達成 すべくいまから動いていると見ている。実父の生誕100周年(2013年10月15日)を盛大に祝 ったことも、習仲勲氏が右腕として仕えた“中国民主化の星”胡耀邦元総書記を間接的に評価し、政治 改革への道筋を示す用意があったとされる。昨今の若干“左傾化”した言論(“中国の夢”、“社会主義” など)を見て習近平を左派と判断するのは軽率&拙速であると私は考える。習近平は根本的には“改革 派”だと私は確信している。政治改革が彼の任期内でどこまで進むのかは彼の手腕とそれをとりまく国 内外の情勢による。共産党政治の内幕を知る多くのウォッチャーたちが予測するように、「政治改革を 進めるならこの10年が最大のチャンス。そこから先はより保守的になるだろう。軍部も掌握できない」 と私も考える。その意味で、“小組”をめぐる人事やアジェンダは経済レベルだけでなく政治レベルで も解釈していく必要があり、組長に習近平が就任した事実は、「政治改革への着手→経済改革の促進」 というロジックから言えば、極めてオーソドックスであり、且つ正しいと言える。 (2)《中央農業工作会議》ににじみ出る李克強の思慮 昨年12月23〜24日にかけて、《中央農業工作会議》(以下“会議”)が北京で開かれた。同じ く12月に開かれた《中央経済工作会議》、《中央都市化工作会議》同様、2014年以降の中国改革の 道筋を定めるキックオフミーティングである。中国共産党は各セクションや利益集団などのあらゆる利 害調整を経てこのような会議を開き、方針を固め、その上で政策に移していく。中国理解には欠かせな い極めて重要な政策指標なのである。 私は今回の《会議》で中国という得体のしれない巨人が持つ本来的な“内向き”傾向を垣間見た。 鄧小平が改革開放を打ち出して以来、外需型モデルで経済成長を図ってきた中国であるが、伝統的には 「自分でできることは自分でやるのが本筋」、即ち「人民が食べていくに必要な食料やエネルギーは極 力自分で解決し、他人には頼らない」という保守的な飢餓感・危機感が根底にはある。 裏を返せば、時の為政者がそれだけ外との関係を一つのリスクと捉え、対外関係に問題が発生して も(想定しうる究極のケースは、何らかの政治事件が原因で海外諸国から経済・政治制裁を受け、実質 的な鎖国状態に陥ること)、自分で食べていけるようにストックを貯めこんでおこうという発想を再び 強く持ち始めているということだ。 《会議》では、最優先事項として食料安全保障が謳われ、「穀物の95%を自給自足、食料の絶対 的安全」を最低限の政策目標として掲げた。これは共産党のボトムラインと私は見る。政府系シンクタ

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ンクの調査によると、一人の農民が農村から都市に移住すると食料消費量は一日平均20%増える。李 克強首相が戸籍・土地・社会保障政策などを伴う都市化政策を全面的に推し進めていく用意があるなか で、食料供給が困窮する事態を党指導部は恐れているということだ。環境問題と食料安全保障は都市化 政策を進めていく上での不確定要素だと私は考える。 2011年、中国は小麦、コメ、とうもろこしなどの農産品の純輸入国になった。この状況を党指 導部は「まずい」と感じている。国家発展研究センターの研究員によると、上記の“95%以上”には 小麦、コメ、とうもろこしの三大穀物を主要な対象にしているという。《会議》は、「自給が主軸、国内 に立脚、供給量を確保、適度に輸入、科学技術で支える」というスローガンを打ち出し、「中央・地方 双方でアプローチしていく」と両者が協調していくことの重要性を唱える。「面積で18億エーカーの 耕作地を確保することをレッドライン」(4 046.85642m2)とすると、供給目標を実現する上 での具体的な前提条件を掲げている。 《会議》は「2020年までに都市部に常住する1億人の農民に都市戸籍を付与しつつ、特に中西 部の都市化建設を進める」とも指摘。党指導部が“三農問題”と都市化建設と直接的にリンケージさせ ていることを物語っている。そこには、「農村において、5年以内に農民に対して土地請負経営権を保 証するライセンスを与える」など農村における土地運営に市場主義を運用するメカニズム、農村の土地 に対するコミットメントを保証する制度など「土地改革」に関わる内容が見て取れる。“農村の安定と 繁栄”と言うミッションを実現するための施策であるといえる。“農村社会管理”という造語にもある ように、中国独自の社会主義にこだわる一方で、如何に市場主義的な観点から農村をマネージメントし ていくか、という視点が押し出されている。 李克強首相は北京大学大学院にて修了した博士論文にて《農村工業化》を扱っている。“如何にし て農村の工業化を通じて都市化を実現していくか”は李克強氏にとっては1980年代からの研究テー マであり、いよいよその手腕を最高レベルの宰相として実践する時が来たと李氏は考えていることであ ろう。 最後に、《会議》は“食の安全”を大いに強調しており、猛毒事件などを懸念している。日中関係 の中でも発生した「毒ギョーザ事件」に見られるように、食の安全が軽視されることによって社会不安 が広範に広がってしまうことを党指導部は恐れており、ペナルティーシステムの構築を含め、監視監督 を徹底していく用意があるようだ。 (3)2014年、私が注目するアジェンダ 以下は、昨今において中国共産党が施しているアジェンダ設定、政府による解決能力の有無、国民 世論で議論されているポイント、客観的に見た政策のプライオリティー、政治改革との関係性などいく つかの視点から、2014年度私が注視していこうと考える5つの分野を紹介したい。

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① 環境問題 2013 年最も民意の関心があったテーマのひとつ。特に「スモッグ現象」は流行語大賞に挙げられ そうなほど議論は白熱。大気汚染は産業構造や国民の生活水準、対外交流など多くにリスクを与える不 確定要素として認識されている。 ② 食料安全保障 自給自足の再ニーズ化、国家運営における危機感、対外関係の不安定化、都市化推進に応じた需要 の増加などを露呈している。共産党による2014年最重要経済政策ミッションにも掲げられている。 ③ 地方債務問題 金融システムの健全化、中央—地方の税収関係、経済モデル転換、シャドーバンキング問題などに 関わる問題であり、党指導部は地方債務問題を経済問題の最重要事項として掲げている。 ④ 三農問題 都市化・戸籍・社会保障・土地改革など多岐にわたって影響力を及ぼす問題。今後、都市化政策の 推進に伴い、「農業」という分野が産業的にも重視されることは李克強首相の問題意識からも明らかで ある。 ⑤ 反腐敗闘争 共産党は引き続き“反腐敗闘争”を持って党正当性を強化すべく奔走するであろう。そこには、権 力闘争&世論対策という両義性が内包されている。2012年の18党大会から約1年で19人もの閣 僚級・省長クラスの高級官僚が「落馬」している。共産党による経済政策や産業構造にも深い影響を与 えるテーマであり、中国市場で活動する企業家や投資家は“闘争”の動向を適宜チェックして行く必要 があるのは言うまでもない。 本研究会は会員の皆様との相互交流・対話(インタラクション)をとても重視しております。 加藤嘉一は皆様からのご質問・ご意見に対して積極的に回答していく所存ですので、毎回のレポート内 容に直接関係あるか否かにかかわらず、どうかお気軽にお寄せください。 メールアドレス:info@katoyoshikazu.com ************************ ※お届けした情報の無断転載・転送は、一切お断りしております。 ※このメールにお心当たりのない方は、お手数ですが、下記お問い合わせ先までご連絡くださいますよ うお願いいたします。 ************************ ≪お問い合わせ≫ 株式会社ピー・ディー・ネットワーク内 「加藤嘉一中国研究会」事務局 電話:03-5405-2705 メール:info@katoyoshikazu.com

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