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中医体質理論を用いた黒部地域住民の健康関連情報のデータ解析

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【原 著】. 中医体質理論を用いた黒部地域住民の健康関連情報のデータ解析 Data Analysis of Health-related Information of Kurobe Local Resident by Constitution Theory of Traditional Chinese Medicine. 許 鳳浩 1,2,*,上馬塲和夫 3,朱 燕波 4,王 琦 5,鈴木信孝 2,金谷重彦 1 Hoko KYO1,2,*, Kazuo UEBABA3, Yanbo ZHU4, Qi WANG5,. Nobutaka SUZUKI2, Shigehiko KANAYA1. 1 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 計算システムズ生物学研究室 2 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 臨床研究開発補完代替医療学講座. 3 医療法人ホスピィー 浦田クリニック 統合医療研究所 4 北京中医薬大学管理学院. 5 北京中医薬大学中医体質 生殖医学研究センター. はじめに. 近年,疾病構造のパラダイムシフトに伴い,病気に対 する治療や予防対策にも変化がみられている 1-5).生活環 境やライフスタイルが疾病の発生に影響を与えるという 考えから,日常生活における一人ひとりの状態,例えば, 生活パターンや飲食習慣などを総合的に把握することが 極めて大きな意味を持っている.こうした考え方に対す る取り組みには,もちろん現代西洋医学の知識が基盤的 な役割を果たしているが,未解な問題点も少なくない.. 日本補完代替医療学会誌 第 17 巻 第 2 号 2020 年 12 月:145-153. 【要 旨】 今回,黒部市の協力下に,体質九分類を用い た基礎調査と体質別指導プログラムによる介 入調査を実施した.基礎調査は,黒部群(黒 部川扇状地湧水飲用者 n=155,60.6 ± 10.4 歳)と非黒部群(黒部市以外の北陸地域に在 住する通常の水道水飲用者 n=99,50.7 ± 12.8 歳)を対象に,体質調査票 (CCMQ-J) を用いて計 3 回実施した.結果は,健康体質 である平和質の割合が,黒部群では 44.6 %, 非黒部群では 22.5 % と黒部群の方が明らか に多かった.各未病体質の割合で,黒部群が 非黒部群より少なかったのは,湿熱質 (4.5 % vs 11.8 %),気鬱質 (5.4 % vs 10.7 %),陰 虚質 (7.1 % vs 12.3 %),痰湿質 (5.8 % vs 9.6 %) であった.基礎調査終了後,黒部群 を介入群(n=65,62.3 ± 9.3 歳)と非介入 群(n=68,62.7 ± 9.8 歳)の 2 群に無作 為に分け,さらに非黒部群を対照群(n=80, 51.9 ± 13.6 歳)として 3 群を比較検討した. なお,調査デザインは単純比較試験とし,主 評価項目は,黒部群に対する五大養生法を用 いた体質別指導プログラムによる介入前後の 体質得点の変化を層別解析した.結果は,陽 虚質において 3 群間の介入前後での比較では,. 受理日:2020 年 12 月 2 日 * 〒 920-8640 石川県金沢市宝町 13-1 Tel : 076-265-2147 Fax: 076-234-4247 E-mail : [email protected]. 介入後 1 回目においては有意差がみられた が (One-way ANOVA p=0.04), 介 入 後 2 回目では変化がみられなかった.痰湿質 における比較では,介入後 2 回目において 体質得点の変化量に傾向がみられた (One- way ANOVA p=0.087).以上のことから, 体質調査は健康と未病の状態を把握できる だけでなく,体質別指導法を組み合わせる ことにより未病を改善し得ることが示唆さ れた.. 【キーワード】 中医学,体質理論,体質九分類,体質調査票, CCMQ-J,平和質,偏頗体質,未病体質, 介入調査. 許 鳳浩 他146. 一方,西洋医学と異なる理論体系と実践体系を持つ伝統 医学,なかでも中国医学は,日常における小さな変化にも 着目し,病気になる前の段階で生活環境の改善や生活習慣 の見直しを行い,健康の維持・管理に努めようとするもの である.このような取り組みは,古くから受け継がれてき ているが,新たな視点や評価ツールを用いてデータの収集, 解析を行う必要がある.このような観点から我々は,未病 を治す「治未病」を実践するため,すでに中国では国策と して導入されている「中医体質理論」とそれに基づく「体 質九分類法」の活用を試みている 6-9).. 体質理論とその評価ツールである体質調査票 (CCMQ) は,中国医学の陰陽五行説をベースに生活環境,生活習慣,. 遺伝的要素などの個人差に基づいた体質の判定や特定の病 気のなりやすさなどを定量化できる利点があるほか,体系 化された,個々人に合った健康の維持増進を図るための指 針である養生法を提供できる 10).体質九分類は,人を平和 質,気虚質,陽虚質,陰虚質,痰湿質,湿熱質,血瘀質, 気鬱質,特稟質に分類する 11,12).平和質は健康体質であり, 心身の良好な状態を表すが,平和質以外の体質は病気にな りやすい未病体質(偏頗体質:へんぱたいしつ)とされる. 体質の違いは,先天的要因と生後の生活習慣による身体の 外見,生理機能,心理状態の相違に起因するとされている. そこで未病体質に対し,飲食,メンタル,ライフスタイル の改善,運動,ツボのセルフケアの 5 つの分野から個々人. 263. 254. 77 78. 99. 65 68 80. 12 10. 9. 155. 19. 図1 調査のフローチャート. 同意書取得. 体質調査票. 説明・登録. 基礎調査 介入調査. 図2 調査の流れ. 中医体質理論による黒部住民健康関連情報のデータ解析 147. に合った対策を実施することができ,これを五大養生法と 呼んでいる.五大養生法を自ら実践することにより未病体 質を改善し,より健康な状態を維持・増進することが可能 である.なかでも,陽虚質(冷え),痰湿質(メタボ),血 瘀質(血行不良),気鬱質(メンタル症状)は生活習慣と の関連が指摘されており,各体質に特化した対処法も確 立されつつある.我々も日本国内において,様々な視点か ら体質理論ならびに体質九分類を検討してきた 13-17).しか し,日本における体質分布の基礎調査は始まったばかりで あり,基準となる基礎データも不足している.そこで今回, 我々は富山県黒部市に着目した.. 黒部市は富山県東部の黒部川扇状地に位置し,人口は 約 36,000 人である.山側には黒部ダムがあり,海側は富 山湾に面している.また,黒部市は豊富で良質な「名水の 里」として全国に名を馳せている.市民はこの “ 名水 ” と いう資源を古来,生活に取り入れてきた.これらのことか ら,黒部市が有する地域資源である “ 黒部川扇状地湧水群 の水 ” の健康への影響を実証することができれば,地域の 活性化に結びつくことも期待される.そこで今回,黒部市 の協力を得て,体質九分類を用いた基礎調査と体質別指導 プログラムによる介入調査を実施した.. 材料・方法. 1. 黒部川扇状地湧水飲用の有無による体質の分布(基礎調査) 20 歳以上の重篤な疾患を有しない男女 500 名を目標に. 協力者を募集した.群分けは,黒部群(黒部川扇状地湧水 飲用者)と非黒部群(黒部市以外の北陸地域に在住する通 常の水道水飲用者)とし,両者の体質分布を比較した(図 1). なお,黒部川扇状地湧水飲用者は,黒部川扇状地湧水群の 地下水を自家採取して飲用する者もしくは黒部川扇状地の 地下水を用いた水道水を飲用水として用いている者とした. 調査期間は平成 28 年 10 月から平成 29 年 3 月とした.. 具体的な実施方法としてはまず,被験者募集のための 住民説明会を開催した.その後,協力の意向を示した者に は詳細な実施方法と注意事項等に関する説明会を再度開催 し,同意書を取得した.基礎調査は体質調査票 (CCMQ-J ver.2.0) を使用し,上記期間中に計 3 回郵送により実施し た(図 2).また,調査票の回収率を上げるために問い合わ せ専用フリーダイヤルを設置し,調査票未返送者には調査 票の督促を行った.さらに,電話連絡により記入漏れの防 止に努めた.なお,調査実施事務局は NPO 法人代替医療 科学研究センターに設置した.. 調査の中止基準は,1) 調査の継続が困難であると判断さ れる事故,疾病などが発生した場合,2) 被験者が調査の中. 図 3 体質別指導プログラム(例). 許 鳳浩 他148. 止を希望した場合,3) その他,医師または調査担当者が継 続困難と判断した場合とした.. 2. 五大養生法を用いた健康指導による体質の変化(介入調査) 基礎調査終了後,黒部群を介入群と非介入群の 2 群に無. 作為に分け,さらに非黒部群を対照群として 3 群を比較検 討した.なお,調査デザインは単純比較試験とし,主評価 項目は,黒部群に対する体質別五大養生法指導(介入)前 後の体質得点の変化により介入効果を検討した.. 介入群においては,すでに行った 3 回の基礎調査から得 られた判定結果を開示し,それぞれの体質別指導プログラ ムとしてテキストと DVD を作成し,各人に実施させた(図 3).未病体質と判定された者については,最も改善すべき 未病体質を選出し,体質別指導プログラムを実践させた. 一方,平和質と判定された者には,平和質を維持・向上さ せるための指導プログラムを使用した.. 指導プログラムとは体質九分類に基づく五大養生法(飲 食の養生,メンタル養生,ライフスタイルの改善,運動に よる養生,ツボのセルフケア)を中心としたものである. DVD は体質九分類の理論と実践について約 5 時間半の講 義を収録したものである.さらに,介入群には合計 19 回 の研修会を開催した.調査期間は平成 29 年 4 月から平成 30 年 2 月であり,調査は基礎調査と同じく体質調査票を 用いて,上記期間中に計 2 回郵送により実施した.. なお,黒部群の非介入群ならびに非黒部群(対照群)に 対しては,引き続き今まで通りの通常生活を送るよう指示 した.. 3. 統計解析 群内の変化については paired t-test を行い,群間比較に. は One-way ANOVA(一元配置分散分析)を用いた.有意 水準は p<0.05 とし,傾向は p<0.1 とした.なお,統計解 析ソフトは SPSS 11.5v を使用した.. 4. 倫理審査 本試験はヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守し,. 倫理審査は日本補完代替医療学会倫理審査委員会による審 査・承認を経て実施した.なお,日本補完代替医療学会効 果安全性評価委員会が倫理的・科学的観点から本研究にお いて有効性,安全性の情報を客観的に評価し,本研究の中 止・中断・再開および研究実施計画書の変更について審議 し,提言を行うこととした.. 結 果. 1. 基礎調査結果(図 4) 被験者の内訳として,黒部群 155 名,60.6±10.4 歳(男. 性 97 名,62.8±9.4 歳,女性 58 名,57.1±11.0 歳),非 黒部群 99 名,50.7±12.8 歳(男性 48 名,50.2±13.9 歳, 女性 51 名,51.2±11.3 歳)であった.. 健康体質である平和質は,黒部群が 44.6 %,非黒部群 が 22.5 % と黒部群の方が明らかに多かった.. 各未病体質の割合において,黒部群が非黒部群より少な かったのは,湿熱質 (4.5 % vs 11.8 %),気鬱質 (5.4 % vs 10.7 %),陰虚質(7.1 % vs 12.3 %),痰湿質(5.8 % vs 9.6 %) であった.両群間で大きな差が見られなかったのは,特稟 質 (7.1 % vs 7.5 %),血瘀質 (5.8 % vs 7.5 %),陽虚質 (12.1 % vs 13.9 %) であった.黒部群がより多かった体質は気虚 質 (7.6 % vs 4.3 %) のみであった.. 2. 介入調査結果 被験者の内訳として,介入群 65 名,62.3±9.3 歳(男性. 39 名,64.5±6.8 歳,女性 26 名,58.9±11.3 歳),非介入 群 68 名,62.7±9.8 歳(男性 42 名,65.3±8.1 歳,女性 26 名, 58.4±10.9 歳),対照群 80 名,51.9±13.6 歳(男性 41 名, 51.6±13.9 歳,女性 39 名,52.3±11.5 歳)であった.. 介入前後の体質分布の変化について,健康体質である 平和質は,① 介入群においては,介入前は 43.4 %,介入 後 1 回目は 45.6 %,介入後 2 回目は 46.4 % であった.. 図4 黒部群と非黒部群の体質構成の割合. 中医体質理論による黒部住民健康関連情報のデータ解析 149. ② 非介入群は,介入前は 47.4 %,介入後 1 回目は 43.3 %, 介入後 2 回目は 50.7 % であった.③ 対照群は,介入前は 36.2 %,介入後 1 回目は 42.3 %,介入後 2 回目は 27.3 % であった.なお,未病体質の割合については表 1 に示す.. 表 1 では介入群,非介入群と対照群の相対的な分布状況 の変化を比較したが,さらに,特定検診の対象年齢を参考 に 40 ~ 70 代を抽出し,介入前後の個々の体質の変化につ いて層別解析を行った(図 5).. 結果は,陽虚質における 3 群間の介入前後での比較では, 介入後1回目で有意差がみられたが (One-way ANOVA p=0.04),介入後 2 回目では変化がみられなかった.痰 湿質では,介入後 2 回目において体質得点の変化量に有 意差はなかったが,傾向はみられた (One-way ANOVA p=0.087).. また,平和質,気虚質,陰虚質,湿熱質,血瘀質,気鬱 質ならびに特稟質における 3 群間の変化量に有意差は確認 されなかった.. 考 察. 体質九分類の体質とは,① 平和質,② 気虚質,③ 陽虚質, ④ 陰虚質,⑤ 痰湿質,⑥ 湿熱質,⑦ 血瘀質,⑧ 気鬱質, ⑨ 特稟質のことである 7).健康体質である平和質以外の② から⑨までの 8 つの体質がいわゆる未病体質であり,中医 学ではこれを偏頗体質とも呼称している.偏頗とは偏った という意味である.. 未病体質のうち,気虚質とは身体の機能が低下し,気が 虚(不足)した “ 気不足タイプ ” であり,一般には「カゼ ひきタイプ」と呼称されている.陽虚質とは,陽(エネル ギー)が不足して,冷えやすく,寒さに弱い「冷え性タイ プ」,陰虚質とは陰が不足しているため相対的に陰虚内熱. の状態になった「水不足タイプ」であり,口やのどが渇く, のぼせる,イライラしやすいなどの症状が特徴である.痰 湿質は痰(代謝産物)や湿気がたまりやすい「メタボタイプ」 であり,湿熱質は湿・熱が停滞し,ニキビができやすいこ とから「ニキビタイプ」と呼ばれている.血瘀質とは血(け つ)の流れが悪く,シミができやすい「シミタイプ」であり, 気鬱質は気分が沈みがちな「鬱積タイプ」であり,病気の うつ病ではない.特稟質とはいわゆる花粉症やアトピーな どの過敏タイプ「アレルギータイプ」である.. 今回使用した日本語版体質調査票 (CCMQ-J) は我々が日 本に導入したものであり,質問は 60 問で,男女を問わず 答えやすい問いになっている.各設問は「1. まったくない」 から 「5. いつもある」までの 5 段階から選択し,所定の計 算式に基づき得点化する.平和質の得点が 60 点以上でか つ未病体質の得点がいずれも 30 点未満の場合に平和質と 判定し,また,平和質の得点にかかわらず各未病体質の点 数が40点以上の場合にはそれぞれの未病体質と判定する7). 各体質はレーダーチャートとして表示でき,個別指導の際 に利用できる.. 今回の基礎調査で最も特徴的だったのは,平和質の割合 は黒部群が非黒部群と比較して多かったことである (44.6 % vs 22.5 %).これは,黒部市民の健康度がより高いこと を示している.未病体質については,湿熱質,気鬱質,陰 虚質,痰湿質は黒部群の方が比較的少なかった.したがっ て,黒部群ではこれらの体質に関連する症状があらわれた り,疾病に罹患したりする可能性が低いと考えられた.一 方,特稟質,血瘀質,陽虚質では両群間にほとんど差がな かったことから,症状発現や疾病のなりやすさに差はない ものと思われた.また,黒部群では非黒部群に比べ気虚質 の割合が多かったことから (7.6 % vs 4.3 %),気虚質に関 連する無気力,免疫力低下,風邪をひきやすいなどのリス. 表 1 介入群,非介入群,対照群の未病体質の割合 (%). 介入群 n=65 非介入群 n=68 対照群 n=80. 介入前 介入後1回目 介入後 2回目 介入前. 介入後 1回目. 介入後 2回目 介入前. 介入後 1回目. 介入後 2回目. 気虚質 7.9 7.4 13.0 7.7 7.5 2.9 0.9 1.9 7.6. 陽虚質 14.5 7.4 8.7 14.1 16.4 7.2 16.4 10.6 15.2. 陰虚質 3.9 4.4 2.9 2.6 7.5 5.8 7.8 4.8 6.1. 痰湿質 5.3 7.4 7.2 6.4 6.0 5.8 6.9 7.7 10.6. 湿熱質 5.3 4.4 2.9 3.8 4.5 7.2 12.1 7.7 12.1. 血瘀質 6.6 8.8 7.2 2.6 4.5 4.3 5.3 4.8 4.5. 気鬱質 3.8 5.9 8.7 7.7 3.0 2.9 8.6 7.7 3.0. 特稟質 9.2 8.8 2.9 7.7 7.5 13.0 6.0 12.5 13.6. 許 鳳浩 他150. クが高い可能性を示唆するものと考えた. さて,我々はこれまで日本全国における体質調査を実. 施し (n=545),その結果を蓄積してきた(未発表).また, すでに中国では大規模調査 (n=21,948) が行われており 11), これらを今回の我々の結果と比較検討した(表 2).結果は, 平和質では黒部群が 44.6 %,非黒部群が 22.5 %,日本全 国が 28.6 %,中国が 32.1 % であった.日中間では全体的 に中国の方が日本より健康度が高く,日本国内では黒部群 が高い健康度を有することが示され,これは中国を上回る ことから,黒部市民の健康度は非常に高いことが窺われた.. 個々の未病体質については以下のことが示唆された. 気虚質の割合は,中国 (13.4 %) が日本(黒部群 7.6 %,. 非黒部群 4.3 %,全国 5.7 %)より多かった.気虚質の特 徴の一つとして消化機能の低下が挙げられる 7).この観点 から考慮すると,中華は和食に比べ胃腸に対する負担が多 い食材やボリュームの多さなど食習慣の違いが一因と推測 される.また,日本国内での比較では黒部群の気虚質の割 合がより多かったことから,黒部地域住民は消化機能や免 疫力の低下,風邪をひきやすい可能性が高いと考えられた.. 陽虚質の割合は,日本(黒部群 12.1 %,非黒部群 13.9 %, 全国 19.1 %)が中国 (9.0 %) より多かった.これは環境要. 因のほか,生活習慣や食習慣の違いに関連すると考えられ た 7).また,日本は中国と比較し,冷えに対する防御意識 が低く,たとえば冷たい飲み物や体を冷やす食材に注意を 払わないことや防寒対策についての配慮が不足しているこ とが深く関与していると思われた.. 陰虚質と気鬱質の割合はともに黒部群 (7.1 %,5.4 %) が非黒部群 (12.3 %,10.7 %),全国 (10.3 %,8.3 %),中 国 (8.3 %,7.7 %) のいずれよりも少なかった.これらの 両体質に共通して関連するのは睡眠である 18,19).したがっ て,黒部地域住民は睡眠の量と質が良好である可能性が示 唆された.. 痰湿質の割合は,黒部群 (5.8 %) が非黒部群 (9.6 %),全 国 (7.0 %),中国 (7.3 %) のいずれよりも少なかった.痰湿 質はメタボ体質ともいわれ,体質の得点と内臓脂肪の関連 が指摘されている 20,21).これは黒部地域において,たとえ ば内臓脂肪が少ない住民が多い可能性も示唆されるので, 今後あらためて調査を継続したいと考えている.. 湿熱質の割合は,黒部群 (4.5 %) が非黒部群 (11.8 %), 全国 (7.2 %),中国 (9.1 %) のいずれよりも少なかった.湿 熱質は体内に「湿」と「熱」がこもりやすく,炎症などが 起きやすい体質とされている 22).これは黒部地域住民では,. p=0.087. 図 5 介入前後における体質の変化(40代から 70代男女の層別解析) 介入前の基礎調査(計3回)の各体質得点の平均値を基準とし,「後1」は介入後1回目,「後2」は介入後2回目の体質得点の変化量(⊿)を示す. 横軸は介入前後の時系列ポイント,縦軸は体質得点の変化量(⊿)を示す.ポイントにおける 3群間の比較検定はOne-way ANOVA を用いた, * p<0.05 † p<0.1 を示した.. 中医体質理論による黒部住民健康関連情報のデータ解析 151. たとえば多くの疾患の原因とされている慢性炎症などの発 生が少ない可能性を示唆していると思われた.この点につ いても再度調査したいと考えている.. 血瘀質の割合は,黒部群 (5.8 %) が非黒部群 (7.5 %),全 国 (6.8 %),中国 (8.1 %) のいずれよりも少なかった.血瘀 質では,毛細血管や静脈系における循環機能の不調やそれ に伴う新陳代謝の低下により,局所において老廃物が蓄積 されると考えられている.その結果,たとえばシミ,しわ や子宮筋腫などの新生物が生じやすいとされている 23).黒 部の女性は昔から肌質がよいと言われている.これは黒部 の扇状地湧水を常飲していることが関与しているのかもし れない.この点についても今後さらに検討を進めたい.. 特稟質の割合は,日本(黒部群 7.1 %,非黒部群 7.5 %, 全国 7.2 %)が中国 (5.0 %) より多かった.しかし,日本 国内の比較では,黒部群の特徴はみられなかった.なお, 日本に特稟質の割合が多かったのは,日本人に花粉症など のアレルギー体質が多いという事実とも一致していた.. 一方,介入試験における 40 ~ 70 代の層別解析では, 未病体質のうち陽虚質と痰湿質にのみ差がみられた.陽虚 質は介入後 1 回目の調査(後 1)で 3 群間の体質得点の変 化量に有意な差がみられたが (One-way ANOVA p=0.04), 介入後 2 回目(後 2)では差はみられなかった.これは後 1 の実施季節が春,後 2 の実施季節が晩秋であったので, 北陸特有の季節的要因が深く関与していると考えられる. すなわち,陽虚質は冷えを主体とする体質なので寒さが厳 しい季節では介入の効果が得られにくかったのではないか と推察している.. 痰湿質では,介入後 1 回目の調査(後 1)では差は見ら れなかったが,介入後 2 回目(後 2)では体質得点の変化 量に異なる傾向がみられた (One-way ANOVA p=0.087). 対照群の体質得点の変化量は経時的に増加し,未病の傾向 がより強まったことが示された.しかし,介入群ではわず かではあるが,体質得点の変化量の減少が認められた.こ れも季節的な要因が関与しているものと考えた.すなわち, 一般的に熱量産出には糖質,たんぱく質,脂肪などの燃焼. が関与しているが,冬季は脂肪が減少しにくいとされてい る 24).今回の介入群の結果は体質別指導プログラムの実施 によって脂肪組織が消耗されやすくなったことを示唆して いる.. 結 論. 基礎調査により,黒部地域住民の平和質の割合は非黒部 群より多かった.また,体質別指導プログラムによる介入 の層別解析の結果,介入群,非介入群,対照群の 3 群間に おいて,陽虚質は有意に改善し,痰湿質は改善傾向が認め られた.以上のことから,体質調査は健康と未病の状態を 同時に知る手法として有用と思われる.また,我々が開発 した体質別指導プログラムは未病を改善するうえで今後活 用が期待できる.このように,体質調査と体質別指導を組 み合わせることにより国民の健康の維持・増進に貢献する ことが期待される.. 助成元. 地方創生推進交付金【A3007】平成 28 ~ 29 年. 利益相反. なし. 参考文献. 1) 桂敏樹,右田周平,星野明子ら.ライフスタイルの変化と 肥満度および生活習慣病のリスクファクターの変動との関 連.日健医誌.2000;9:25-37.. 2) Kanehisa M, Soichirou M. 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Hoko KYO1,2, Kazuo UEBABA3, Yanbo ZHU4, Qi WANG5, Nobutaka SUZUKI2, Shigehiko KANAYA1. 1 Computational Systems Biology Lab., Graduate School of Science and Technology, Nara Institute of Science and Technology. 2 Department of Complementary and Alternative Medicine Clinical Research and Development, Kanazawa University Graduate School of Medical Science. 3 Institute of Integrative Medicine, Urata Clinic 4 School of Management, Beijing University of Chinese Medicine. 5 Center for Studies in Traditional Chinese Medicine Constitution Research and Reproductive Sciences, Beijing University of Chinese Medicine. With the cooperation of Kurobe City, we conducted a basic survey using the nine classification of constitution and an intervention survey using a constitutional guidance program. The basic survey was conducted by the Kurobe group (Kurobe River alluvial fan spring water drinker n=155, 60.6±10.4 years old) and the non-Kurobe group (normal tap water drinker n=99, 50.7±12.8 living in the Hokuriku region without Kurobe City). A total of three surveys were conducted using the constitution Questionnaire (CCMQ-J). As a result, the Gentleness type, which is usually called the healthy constitution, was clearly higher in the Kurobe group, with 44.6 % in the Kurobe group and 22.5 % in the non-Kurobe group. In the proportion of each biased constitution(Mibyo constitution), the Kurobe group had less Wet-heat type (4.5 % vs 11.8 %), Qi-depression type (5.4 % vs 10.7 %), Yin-deficiency type (7.1 % vs 12.3 %) , and Phlegm-wetness type (5.8 % vs 9.6 %) than the non-Kurobe group. After the basic survey was completed, the Kurobe group was randomly divided into two groups, an intervention group (n=65, 62.3±9.3 years old) and a non-intervention group (n=68, 62.7±9.8 years old), and compared with the non-Kurobe group (control group) (n=80, 51.9±13.6 years old). The survey design was a simple comparative study, and the primary endpoint was a comparative study of changes in constitutional scores before and after intervention. As a result, in the Yang-deficiency type, a significant difference was observed between the intervention group, the non-intervention group and the control group at the first time after the intervention (One-way ANOVA p=0.04). No change was seen in the second survey after the intervention. In the comparison of Phlegm-wetness type between the three groups, there was a tendency in the amount of change in the constitutional score (One-way ANOVA p=0.087). From the above, it was suggested that the constitutional survey can not only grasp the health and the pre- symptomatic state, but also improve the pre-symptomatic by combining the guidance methods according to the constitution.. Key words: Traditional Chinese Medicine, constitution theory, nine classification of constitution, Constitution in Chinese Medicine Questionnaire, CCMQ-J, Gentleness type, Biased constitution, Mibyou constitution, intervention survey

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